JP3933486B2 - スチレン系樹脂防曇シート - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主に真空成形、圧空真空成形、熱板圧空成形などの手段で2次成形され、軽量食品包装容器やその他各種容器に使用されるスチレン系樹脂シートに関する。さらに詳しくは、シート及びその成形容器の低温防曇性および高温防曇性に優れた透明なスチレン系樹脂シート関する。
【0002】
【従来の技術】
二軸延伸ポリスチレンシートに代表されるスチレン系樹脂シートは、主に熱板加熱式圧空成形法、輻射加熱式真空成形法、圧空成形法等の各種熱成形方法で成形され各種包装容器等に使用されている。特に延伸シートは、主に熱板加熱式圧空成形法により成形され、食品包装用途をはじめ各種成形容器として多く使用されている。これらスチレン系樹脂シート成形容器、特に食品包装容器は、容器の曇り止め(防曇剤)として成形品の内側に界面活性剤が塗布されているのが一般的である。
【0003】
包装用容器、特に食品包装容器に市場で要求される防曇性能とは、高温の内容物を包装した場合の水蒸気に対する防曇性(高温防曇性)、水分を含む食品等の内容物を包装し冷蔵保存した場合の結露に対する防曇性(低温防曇性)、更に冷蔵後加熱される内容物に対しては結露、水蒸気両方に対しての防曇性であり、そして防曇性能は包装直後から内容物が消費されるまでの間持続する必要がある。その要求レベルは、包装用シート・フィルム業界全体の防曇技術水準の向上と共に高くなっている。しかし、スチレン系樹脂シートの成形品は、一般に他素材の包装用シート・フィルムに比較して特に低温防曇性レベルとその持続性が低いとの指摘がある。スチレン系樹脂シートの成形品の防曇性不足は、特に絞り比の深い成形容器で低温での防曇性低下が顕著であり、この改良のために種々の技術が提案されている。
【0004】
例えば、特公昭63−62538号公報には、ショ糖脂肪酸エステルとシリコーンオイル(エマルジョン)およびポリビニルアルコールを主成分とする混合物を二軸延伸ポリスチレン系シートに塗布する方法が記載されている。また特開平5−287097号公報には、ショ糖脂肪酸エステルとシリコーンオイル(エマルジョン)およびポリビニルアルコール以外の水溶性高分子を主成分とする混合物を二軸延伸ポリスチレン系シートに塗布する方法が記載されている。これら方法は、ポリビニルアルコールに代表される水溶性高分子の添加に特徴があり、これらは、シリコーンエマルジョンの安定化と塗膜の密着強度向上による防曇性改良のために添加しているとされている。しかしこれら方法のシートの防曇性は、防曇剤と共存するシリコーンエマルジョンが防曇性に悪影響を与えるため他素材フィルム(例えばポリオレフィン系のストレッチフィルム)の防曇性に比較して著しく劣るものである。
【0005】
また、2種以上の界面活性剤を組合せて、防曇性を改良する方法も提案されており、例えば特公昭59−19584号公報にはHLBが13以上の界面活性剤とショ糖脂肪酸エステルからなる防曇剤が記載されているが、この技術は多量の防曇剤を塗布しているため、例えば、シートを熱板圧空成形法で成形する際に防曇剤が熱板や金型に転写しやすく、結果として得られる成形品の外観が低下することが多く、実用性に乏しいものである。また特開平9−221661、特開平2001−164011等には、非イオン性界面活性剤と陰イオン性界面活性剤とからなる防曇剤で、また特開平2001−145983には非イオン性界面活性剤とカルボン酸塩との混合物からなる防曇剤でシートの防曇性改良が試みられている。これら方法により得られたシートは、成形前のシートでは防曇性の改良効果が見られるものの、シートを成形した容器、特に深絞り成形容器では防曇性の低下が見られる傾向に有り、さらに防曇剤の被覆量が比較的少量(約30mg/m2以下)のシート成形容器では、低温防曇の持続性において、市場の要求レベルを完全に満たしているとは言い難い場合もある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このような現状下、本発明の目的は、多量の防曇剤を被覆することなくシート成形品での実用防曇性が向上された透明なスチレン系樹脂シートを供給すること、すなわち、スチレン系樹脂シート成形容器、特に深く絞った成型品においても低温での初期防曇性レベルの向上とその持続性の向上、及び高温での初期防曇性、持続防曇性に優れた、スチレン系樹脂シートを提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するため検討の結果、特定の防曇剤組成物を使用し、該防曇剤組成物が被覆されたスチレン系樹脂シートと水との接触角を15°以下にすることが必要な事、さらに単に界面活性剤をシートに塗布してスチレン系樹脂シートと水との接触角を15°以下にするだけでは、十分な防曇性は得られず、異なる表面張力の2種以上の非イオン性界面活性剤とポリビニルアルコールとを組合せ、かつスチレン系樹脂シートと水との接触角が15°以下の場合、良好な防曇性が見られることを見出し本発明に至った。
【0008】
すなわち、本発明のスチレン系樹脂防曇シートは、以下の通りである。
なくとも1表面に防曇剤組成物が被覆されたスチレン系樹脂シートにおいて、防曇剤組成物が下記特性をもつ(A)、(B)2種の非イオン性界面活性剤混合物80〜99wt%とポリビニルアルコール20〜1wt%とからなり、かつ該防曇剤組成物が被覆された少なくとも1表面と水との接触角が1〜15゜の範囲であることを特徴とするスチレン系樹脂防曇シート。
(A):HLBが12〜18で、ウィルヘルミー法(プレート法)によって測定した0.1wt%水溶液の25℃での表面張力が30〜39mN/mであり、かつ多価アルコールと脂肪酸とのエステル類である非イオン性界面活性剤:30〜95質量部。
(B):ウィルヘルミー法(プレート法)によって測定した0.1wt%水溶液の25℃での表面張力が40〜60mN/mであり、かつオキシエチレン骨格を含む界面活性剤である非イオン性界面活性剤:70〜5質量部。ただし、(A)、(B)合計100質量部とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい態様を詳細に説明する。まず、本発明のシートに被覆される防曇剤組成物について説明する。本発明のシートに被覆される非イオン性界面活性剤(A)は、主に防曇効果を与える界面活性剤であって、HLBが12〜18でありウィルヘルミー法(プレート法)によって測定した0.1wt%水溶液の25℃での表面張力が30〜39mN/mであり、かつ多価アルコールと脂肪酸とのエステル類である非イオン性界面活性剤である。
【0011】
非イオン性界面活性剤(A)のHLBの範囲とウィルヘルミー法(プレート法)によって測定した0.1wt%水溶液の25℃での表面張力の範囲は、非イオン性界面活性剤(B)およびポリビニルアルコール(以下、PVAと略す)との混合物の状態で優れた高温防曇性と低温防曇性をシートに付与し、更に防曇性を維持するのに必要な値である。すなわち、HLBが12以上の界面活性剤を選定することで優れた高温防曇性が得られ、かつ界面活性剤の水溶性を高め被覆膜形成を容易にし作業性を高める効果もある。また、HLBを18以下にすることで優れた低温防曇性をシートに付与することが可能になる。更に低温防曇性、高温防曇性の持続性を高める観点から非イオン性界面活性剤(A)のHLBは13〜17.5が好ましく、より好ましくは13.5〜17である。
【0012】
また表面張力値、30〜39mN/mは、後述する界面活性剤(B)およびPVAと混合した時にこれら3成分の相乗効果により優れた防曇性能を得るために必要な範囲である。特に防曇剤組成物の相乗効果を高め、防曇持続性を更に向上させる観点からは、表面張力値が31〜38mN/mが好ましく、より好ましくは32〜37mN/mである。
相乗効果とは、現象的には防曇性改良効果であり、そのメカニズムは定かでないが、上記範囲の非イオン性界面活性剤(A)を選定し、(B)、PVAと組合せた場合、結果としてシート最表面部分が(A)の親水基で覆われるためシートと水との接触角が低下し防曇性が改良されると推定している。
【0013】
すなわち、これらHLBが12〜18でありウィルヘルミー法(プレート法)によって測定した0.1wt%水溶液の25℃での表面張力が30〜39mN/mである非イオン性界面活性剤(A)が主に防曇性を与える成分として作用し、後に詳細に説明する0.1wt%水溶液の25℃での表面張力が40〜60mN/mである非イオン性界面活性剤(B)とPVAが防曇助剤として作用していると考えている。また、界面活性剤(A)は、上記条件を満たす多価アルコールと脂肪酸とのエステル類である。これらは1種用いても、2種以上を混合して用いてもかまわない。なお、混合物の場合は、混合状態でHLBおよび表面張力が上記の値を満たすものであれば良い。
【0014】
これらの内、特に好ましくは、上記条件を満たすショ糖脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタンエステル類で、更に好ましくはショ糖脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸エステル類である。
また、これらショ糖脂肪酸エステル類とポリグリセリン脂肪酸エステル類は、任意の割合で混合して使用しても良く、この場合低温防曇性と高温防曇性がよりバランスされ好ましい場合もある。好ましい組合せはショ糖脂肪酸エステル類が10〜90wt%、より好ましくは、15〜70wt%、さらに好ましくは、20〜50wt%の混合物である。
【0015】
次に本発明のシートに用いる非イオン性界面活性剤(B)はウィルヘルミー法(プレート法)によって測定した0.1wt%水溶液の25℃での表面張力が、40〜60mN/mであり、かつオキシエチレン骨格を含む非イオン性界面活性剤である。非イオン性界面活性剤(B)として表面張力が上述の範囲のものを選定することにより、非イオン性界面活性剤(B)が防曇助剤として作用し、相乗効果によりシートに優れた防曇性を付与することが可能になる。相乗効果とは、現象的には防曇性改良効果であり、そのメカニズムは定かでないが、(B)成分に特定の表面張力をもった非イオン性界面活性剤を選定する事により、(B)成分がPVAと(A)成分とのバインダー的挙動を示し、シート最表面に(A)成分の親水基層を構成しているため、防曇性が改良されると推定している。特に少量で防曇助剤としての効果を発現させるためには0.1wt%水溶液の25℃での表面張力が42〜58mN/mが好ましく、より好ましくは44〜56mN/mである。
【0016】
非イオン性界面活性剤(B)は、上記条件を満たすオキシエチレン骨格を含む非イオン性界面活性剤であって、具体的にはポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体(以下、POEPOP共重合体と略す)、ポリオキシエチレンと脂肪族アルコールとのエーテル、ポリオキシエチレン付加多価アルコールと脂肪酸とのエステル等があげられる。これらの内、低温防曇性を高度に付与する観点と、シートに滑り性を付与する観点およびシートのベトツキを高いレベルで防止する観点より、好ましくは、POEPOP共重合体であって、更に好ましくは、分子量が2000〜20000のプロピレンオキサイドを付加重合させたポリオキシエチレン鎖に、さらにエチレンオキサイドを付加重合させて得られるPOEPOP共重合体である。
【0017】
また、POEPOP共重合体は、ポリオキシエチレン鎖が30wt%以上のものが好ましく、より好ましくは40wt%以上である。ポリオキシエチレン鎖を30wt%以上のPOEPOP共重合体を選定することで、防曇被膜を水溶液のコーティングで形成させる場合、被覆膜の均一性を保ち、優れた防曇性能が得られ、更にシートの外観も良好に保てる。また上限は、防曇持続性の観点より95wt%以下が好ましく、より好ましくは90wt%以下である。
【0018】
これら非イオン性界面活性剤(A)、(B)の混合比率は、(A)が40〜95質量部、(B)が60〜5質量部(合計100質量部)である。(A)、(B)の混合比率は、上述の相乗効果により防曇性改良を改良するために必要な範囲である。すなわち(B)成分を60質量部以下にする事で低温防曇性改良効果が得られ、また5質量部以上にする事で防曇持続性が改良される。特に低温防曇性を著しく改良する観点から、非イオン性界面活性剤(A)は45〜90質量部が好ましく、より好ましくは50〜90質量部である。なお、本発明において各界面活性剤の25℃での表面張力とは、ウィルヘルミ法(プレート法)で測定した、界面活性剤0.1wt%水溶液の25±1℃での値である。本発明のシートに被覆される防曇剤組成物は、上記(A)、(B)2種の非イオン性界面活性剤組成物80〜99wt%とPVA20〜1wt%との混合物である。
【0019】
上記混合比率は、本発明のシートに優れた防曇性を付与するのに必要な範囲である。すなわち、PVAの添加量を1wt%以上にすることで、界面活性剤(A)(B)混合物との相乗効果で防曇性を著しく改良する効果が発現可能となり、また20wt%以下にすることで、PVA添加の弊害、例えば、防曇性の低下やべとつきの発生を防ぐことが可能になる。特に被覆膜形成時の膜厚制御を行いやすくし、高温防曇性と低温防曇性とを高度にバランスさせ、持続性にも優れたシートを得る観点からは、PVAの添加量を18〜2wt%にするのが好ましく、より好ましくは15〜3wt%である。
【0020】
また、PVAは、ポリビニルアセテートの部分ケン化反応生成物が好ましく、特にケン化度が60〜80モル%のものが好ましく、より好ましくはケン化度が65〜75モル%のものである(ケン化度は、JIS K 6726に準拠して測定)。好ましいケン化度は、防曇剤として(A)成分を単独で使用した場合と比較して低温防曇性改良効果が有意に得られかつシートの外観を悪化させない観点から決定される領域であり、ケン化度を60モル%以上にすることで水溶性を向上させ、防曇剤被膜を水溶液のコーティングで形成させる場合、被覆膜中のPVAの分散均一性を向上させることが可能になる。また、PVAのケン化度を80モル%以下にすることで、防曇剤として(A)成分を単独で使用した場合と比較して低温防曇性効果を改良する事が可能に成る。通常、防曇性を付与するには親水性が高い物質すなわち高ケン化度のPVAほど効果が大きいと考えられるが、本発明のシートに使用する防曇剤組成物においては、ケン化度の高すぎるPVAでは防曇性改良効果が少なく、PVAのケン化度に最適範囲が有り、この効果により防曇性が向上している点に特徴がある。
【0021】
また、PVAの4%水溶液20℃の粘度は3〜9mPa・sであることが好ましく、より好ましくは3.5〜8mPa・s である(粘度は、JIS K 6726に準拠して測定)。好ましいPVAの粘度は、防曇剤として(A)成分を単独で使用した場合と比較して低温防曇性改良効果が有意に得られかつシートのベトツキやブロッキングを防ぐ観点から決定される領域であり、粘度が3mPa・s以上のPVAを選定する事でシートのベトツキやシートのブロッキングを防ぎ防曇性を改良する事が可能になる。また、9mPa・s以下のPVAを使用することにより、(A)成分を単独で使用した場合と比較して低温防曇性改良効果が有意に得られる。
【0022】
本発明のシートは、少なくとも1表面に上述の非イオン性界面活性剤(A)、(B)およびPVAよりなる防曇剤組成物が被覆されており、防曇剤組成物が被覆された表面と水との接触角が1〜15゜の範囲になるよう防曇剤組成物を選定することが重要である。シート表面と水との接触核を15°以下になる上記防曇剤組成物を選定することでシートに良好な防曇性を付与することが可能になり、またシート表面と水との接触角を1°以上になる上記防曇剤組成物を選定することで防曇持続性を向上させることが可能になる。防曇性をより高める観点からは、防曇剤組成物が被覆されたシート表面と水との接触角が1〜13°の範囲が好ましく、より好ましくは1〜11°である。なお、シートと水との接触角は、25±1℃の温度下で蒸留水を用い、シートに水滴滴下後10±1秒後に測定した値である。
【0023】
しかし、単にシート表面と水との接触角を15°以下にするだけでは、本発明のシートの優れた防曇性は得られない場合がある(例えば、比較例6参照)。本発明のシートの優れた防曇性は、被覆する防曇剤組成物と接触角との組合せによってはじめて発現されるものである。
この理由は定かではないが、親水性と親油性をかねそなえたPVAがスチレン系樹脂シート表面と非イオン性界面活性剤(B)とのバインダーとなり、さらに界面活性剤(B)には防曇性に優れた非イオン性界面活性剤(A)の親水基を外側に向ける作用が有り、シート最表面層は、多くの非イオン性界面活性剤(A)の親水基で覆われているため防曇性が向上していると推定している。すなわち、シート被覆膜は完全な層構造にはなっていないものの、組成物各成分の濃度勾配が有り、防曇剤組成物被覆膜表層付近(すなわちシート最表面層)には界面活性剤(A)が比較的に多く存在し、かつ界面活性剤(B)、PVAの作用により、界面活性剤(A)の分子配置は、(A)が単独で被覆されたシートより多くの親水基が表面側に向いて存在しているため本発明のシートは水との接触角が小さくかつ優れた防曇性が得られると考えられる。さらにPVA、界面活性剤(B)の効果で界面活性剤(A)の防曇性能の温度依存性を低下させ低温から高温まで広い範囲で優れた防曇性が得られると推定している。
【0024】
上記防曇剤組成物は、シートの一表面に合計量で5〜50mg/m2被覆されるのが好ましく、より好ましくは8〜45mg/m2、さらに好ましくは10〜40mg/m2である。被覆量は、低温防曇、高温防曇性を付与し、シートのベトツキやブロッキングを押さえシートの外観を良好に保つ観点より決められる領域であって、被覆量5mg/m2は、優れた低温防曇性能を付与することが可能になりはじめる領域であり、また50mg/m2は、シートのベトツキやブロッキング、白化によるシート外観悪化を防ぐ観点から定められた値である。また、本発明のシートを非成型用の包装用シートとして使用する場合、2次成形による防曇剤被覆膜の引き延ばしがないため、少量の防曇剤で十分な効果が得られる。このため、非成型用の包装用シートとして使用する場合5〜30mg/m2の被覆量が好ましい。30mg/m2の被覆量は、非成型用として使用する場合、防曇性改良効果がほぼ飽和に達する値である。
【0025】
防曇剤組成物の被覆量の定量分析は、シート・フィルムを洗浄し、洗液を集め、ガスクロマトグラフィー法、高速液体クロマトグラフィー法等で成分ごとに分離し行う事が好ましいが、簡易的には、被覆量既知のシートを標準サンプルとして検量線を作成し、FTIR(ATR法)でシート表面を直接分析する方法等で行ってもよい。また防曇剤組成物の混合比率が既知の場合は、組成物中の一成分を分析し計算でその他成分の被覆量を求めることも可能である。
【0026】
また、上記防曇剤組成物には、その他の防曇性改良剤として、ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、ポリリン酸塩等の水溶性高分子や、防曇剤の硬度改質剤としてメチルセルロース、カルボメトキシセルロース等、滑り剤として水溶性のポリエーテル変性シリコーンオイル等、帯電防止剤としてその他の界面活性を上述の防曇剤組成物100質量部に対し、1〜35質量部添加する事が可能である(ただし、防曇性に悪影響を与える滑り剤や帯電防止剤等は除く)。
【0027】
本発明のシートは、少なくとも1表面に上述の非イオン性界面活性剤(A)、(B)およびPVAよりなる防曇剤組成物が被覆され、かつ該防曇剤組成物が被覆された表面と水との接触角が1〜15゜の範囲のものである。したがって、該防曇剤組成物が表裏に被覆されたシートでも、片面だけに該防曇剤組成物が被覆されたシートであっても良い。
片面に該防曇剤組成物が被覆されたシートの場合、その反対面は、特に制限はないが、好ましくはシートに離型性を付与する観点からPOEPOP共重合体またはPOEPOP共重合体を50wt%以上含む混合物が望ましい。特に好ましいPOEPOP共重合体は、プロピレンオキサイドを付加重合させたポリオキシエチレン鎖に、さらにエチレンオキサイドを付加重合させて得られるブロック共重合体で、分子量が2000〜20000のブロック共重合体が好ましく、より好ましくは3000〜18000、さらに好ましくは4000〜18000である。
【0028】
好ましい分子量は、シート2次成形品の離型性、剥離性とシートの外観、透明性より決められる範囲で、分子量を2000以上にすることで、優れた離型性や剥離性が得られ、また分子量を20000以下にすることで、乾燥固化した被覆膜の凝集白化を抑え、シートの外観を保つことが可能である。
また、POEPOP共重合体のブロック形状は、シートに被覆膜を形成した際の離型剤としての性能と、ブロック共重合体の製造し易さの観点より、ポリオキシエチレンブロック−ポリオキシプロピレンブロック−ポリオキシエチレンブロックの3ブロックよりなるブロック共重合体が特に好ましい。
【0029】
また、POEPOP共重合体は、ポリオキシエチレン鎖が30wt%以上のものが好ましく、より好ましくは40wt%以上である。ポリオキシエチレン鎖がを30wt%以上のPOEPOP共重合体を選定することで、離型剤被膜を水溶液のコーティングで形成させる場合、被覆膜の均一性を保ち、優れた剥離性能が得られ、更にシートの外観も良好に保てる。また上限は、離型性の観点より95wt%以下が好ましく、より好ましくは90wt%以下である。
【0030】
また、POEPOP共重合体を50wt%以上含む混合物を選定する場合は、その他の混合物として、例えば帯電防止性を付与する観点からポリオキシエチレン系の非イオン性界面活性剤や、脂肪酸アミド系の非イオン性界面活性剤が好ましい。具体例は、脂肪酸とポリオキシエチレンソルビタンとのエステル類、脂肪酸とポリオキシグリセリンとのエステル類、脂肪酸とポリオキシエチレンとのエステル類、脂肪族アルコールとポリオキシエチレンとのエーテル類、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミドなどである。
【0031】
また、よりシートの離型性、剥離性を向上させる観点からは、シリコーンオイル類があげられる。好ましいシリコーンオイルは、シリコーンオイルを構成するポリシロキサンの骨格にポリエーテル基が導入された変性シリコーンであるポリエーテル変性シリコーンオイルであるが、経済的観点からジメチルポリシロキサン(ジメチルポリシロキサンエマルジョン)の使用も可能である。
なお、ジメチルポリシロキサンは、シートをロール状に巻き取った場合、転写しやすい性質をもち、かつ防曇面に多量に転写した場合、防曇剤被覆表面と水との接触角を大きくし、防曇性を悪化させる作用があるため、ジメチルポリシロキサンが転写後の防曇剤被覆表面と水との接触角が本発明の範囲内になるようにジメチルポリシロキサンの添加量を調整する事がシートの防曇性を維持する観点より重要である。
【0032】
これら好ましく防曇面の反対面に被覆できるPOEPOP共重合体または、POEPOP共重合体を含む組成物は、3〜30mg/m2被覆するのが好ましく、より好ましくは、5〜25mg/m2、更に好ましくは7〜20mg/m2である。
本発明のシートの製造方法には特に制限がなく、例えば、一般公知のスチレン系樹脂シート、好ましくはテンター法、バブル法等公知の方法で一軸または二軸に延伸されたスチレン系樹脂シート、より好ましくはスチレン系樹脂二軸延伸シートの一表面に、適当な濃度に調整した防曇剤の水溶性をスクィーズロールコーター、エアーナイフコーター、ナイフコーター、スプレーコーター、グラビアロールコーター、ハンドコーター等公知の方法で塗布し乾燥後、必要によって反対面に任意の液(好ましくは上述のPOEPOP共重合体または該組成物よりなる離型剤)を同様の方法で塗布、乾燥する方法で行える。防曇剤、離型剤の塗布の順は逆であってもかまわない。乾燥については特に制限はないが、熱風乾燥機を用いるのが好ましい。
【0033】
また、特に被覆膜の均一性を向上させる観点からは、シート表面をコロナ処理した後に、上記方法で防曇剤組成物を塗布するのが好ましい。例えば、スチレン系樹脂シートに塗布する場合は、シートの表面を水との接触角が80〜30゜になるようにコロナ処理を施した後、上記の方法等で防曇剤組成物を塗布すると、被覆膜が均一になり好ましい場合が多い。水との接触角の上限は、被覆膜の均一性を向上させるための値であり、接触角の下限は、シートをロール状に巻いた場合にブロッキングを防ぐための値である。特に防曇剤組成物の塗布面は、防曇性を高度に付与する観点より水との接触角を30〜50゜にするのがより好ましく、さらに好ましくは35〜50゜である。また、反対面に離型剤を塗布する場合は、シートのブロッキングを防止し、均一なコーティング被膜を形成させる観点より水との接触角を50〜80゜にするのがより好ましく、さらに好ましくは50〜75゜である。
【0034】
また、シートをロール状に巻き取った後の防曇剤被覆膜や必要によって被覆する離型剤等は製造条件によっては転写する場合がある。このため被覆膜の転写を考慮し、本発明のシートを製造する場合の好ましい一例は、コーティング後のシートを、熱風乾燥機で十分水分を除去(コーティングした水分が全て蒸発するのに必要なエネルギーを与える以上の条件で乾燥)した後90〜400N/m 、より好ましくは140〜350N/mの巻取り張力でシートを巻取りシートロールとすることが好ましい。シートの好ましい巻取り張力、90〜400N/mは、ロールの巻きずれがなく、過剰な転写を押さえ、転写斑の少ないシートロールを得られるために好ましい範囲である。
【0035】
また、本発明のシートを構成するスチレン系樹脂とは、スチレン、アルキルスチレン類、ハロゲン化スチレン類等から選ばれるスチレン系単量体のホモポリマー及びこれらのコポリマー、及び共役ジエン(ブタジエン、イソプレン等)、スチレン−共役ジエン共重合体等のゴム成分と上記スチレン系単量体とのブロック、ランダム、グラフトコポリマー、更に上記スチレン系単量体50wt%以上とその他の単量体とのブロック、ランダム、グラフトコポリマーである。又、これらスチレン系樹脂に鉱物油、テルペン類、石油樹脂等の可塑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤等の公知の添加剤を加えてもよい。
【0036】
これらの内好ましい樹脂は、スチレンのホモポリマー(GPPS)、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−ブチル(メタ)アリレート共重合体等のスチレン−アルキル(メタ)アクリレート共重合体類、スチレン−ブチル(メタ)アリレート及び/またはメチル(メタ)アリレート−ブタジエン3または4元共重合体及びこれらとGPPSとのブレンド物、スチレン−共役ジエンブロック共重合体(SBBC)、SBBCとGPPSやスチレン−アルキル(メタ)アクリレート共重合体類とのブレンド物等である。
【0037】
本発明のスチレン系樹脂シートは、上記のスチレン系樹脂からなる単層シート、又は上記のスチレン系樹脂を1層以上含む公知の多層シートでも良い。これらシートは、無延伸であっても、延伸シートであってもかまわないが、好ましくは延伸シートであり、さらに好ましくは二軸延伸シートである。
多層シートとしては、例えば、GPPS(表層)/GPPS+SBBC(内層)、スチレン−メタクリル酸共重合体等の耐熱スチレン系共重合体類(表層)/GPPS(内層)、GPPS(表層)/スチレン−アルキル(メタ)アクリレート共重合体類(内層)、高分子量GPPS(表層)/中〜低分子量GPPS(内層)、GPPS+SBBC(表層)/GPPS(内層)、GPPS(表層)/可塑化GPPS(内層)等の層の組合せによる2層、3層、または4層以上の公知のシートが使用できる。
【0038】
また、本発明のシートは、主に公知の熱成形方法で2次成形することにより得られる成形容器として使用される。熱成形方法(熱成形機)には特に制限がなく、一般公知のシート熱成形方法、例えば、熱板加熱式圧空成形法、真空成形法、圧空成形法、真空圧空成形法、プラグアシスト成形法等で行える。これらの内、二軸延伸シートの成形法としては、熱板加熱式圧空成形法が最も一般的であり、本発明のシートが延伸シートの場合は、この方法で成形されるのが好ましい。
【0039】
以下実施例により本発明の好ましい態様を詳細に説明する。
実施例・比較例におけるシート・フィルムの性能評価は、以下の規準に従って行った(特に断りがない限り「○」以上が本発明の合格レベルである)。
(低温防曇性)
発泡ポリスチレン(PSP)嵌合容器本体(210mm×120mm、深さ18mm)に5mm角の碁盤模様を印刷したフィルムを敷いた後、28±1℃の水を深さ10mm入れ、テストシートより製造した開口部210mm×120mm、深さ38mmの嵌合蓋(内側が防曇面)で蓋をし、5±3℃のショーケースに放置し、30分後(初期防曇)、36時間後(持続防曇)の水滴の付着を以下の基準で評価した。
◎:成形容器蓋に曇りがなく、且つ成形容器蓋の93%以上の面積にわたって碁盤模様がゆがみなく見える。
○:成形容器蓋に曇りがなく、且つ成形容器蓋の85%以上93%未満の面積で碁盤模様がゆがみなく見える。
△:成形容器蓋に曇りはないが、部分的に小さな水滴が付着し、成形容器蓋の15%より広く30%未満の面積で碁盤模様にゆがみが生じている。
×:成形容器蓋に曇りはないが、部分的に小さな水滴が付着し、成形容器蓋の30%より広い面積で碁盤模様にゆがみが生じている。または、小さな水滴の集合体により一部に曇りが生じている。
【0040】
(高温初期防曇性)
ポリプロピレン製の開口部100mm×100mm、深さ50mmの容器に5mm角の碁盤模様を印刷したフィルムを敷いた後、90℃の水を400ml入れ、テストシートより製造した開口部100mm×100mm、深さ35mmの成型品で蓋をし、5分後の水滴の付着を以下の基準で評価した。
◎:成形容器蓋に曇りがなく、且つ成形容器蓋の95%以上の面積にわたって碁盤模様がゆがみなく見える。
○:成形容器蓋に曇りがなく、且つ成形容器蓋の85%以上95%未満の面積で碁盤模様がゆがみなく見える。
△:成形容器蓋に曇りはないが、部分的に小さな水滴が付着し、成形容器蓋の15%より広く30%未満の面積で碁盤模様にゆがみが生じている。
×:成形容器蓋に曇りはないが、部分的に小さな水滴が付着し、成形容器蓋の30%より広い面積で碁盤模様にゆがみが生じている。または、小さな水滴の集合体により一部に曇りが生じている。
【0041】
(ベトツキ性)
シート処理面を指で押さえ、引き離したときのベトツキ感を以下の基準で評価した。
◎:ベトツキを感じない
○:しっとりしている
△:ややベトツキ感がある
×:べたつく
【0042】
(接触角)
協和界面化学株式会社製の固体表面エナジー解析装置CA−XEを用い、25±1℃の室温で、25±1℃の蒸留水(和光純薬工業株式会社製)がシート表面に滴下後、10±1秒の接触角を測定した(n=10の平均、小数点以下は四捨五入)。
また、使用した非イオン性界面活性剤、PVA等は以下の通りである。
(A−1):ショ糖ラウリン酸モノエステルを主成分(約70wt%)とする、HLB16のショ糖脂肪酸エステル、0.1wt%水溶液の25℃での表面張力が35mN/m
(A−2):ヘキサグリセリンラウリン酸モノエステルを主成分(約65wt%)とする、HLB13.5のポリグリセリン脂肪酸エステル、0.1wt%水溶液の25℃での表面張力が37mN/m
(A−3):デカグリセリンラウリン酸モノエステルを主成分(約65wt%)とする、HLB14.8のポリグリセリン脂肪酸エステル、0.1wt%水溶液の25℃での表面張力が34mN/m
【0043】
(B−1):ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体 、平均分子量15000、ポリオキシエチレン80wt%、0.1wt%水溶液の25℃での表面張力が55mN/m
(B−2): ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体、平均分子量約2400、ポリオキシエチレン50wt%、0.1wt%水溶液の25℃での表面張力が46mN/m
(B−3):ポリオキシエチレンラウリルエ−テル、ポリオキシエチレン50モル付加、0.1wt%水溶液の25℃での表面張力が47mN/m。
【0044】
(C−1):ケン化度71モル%、20℃4%水溶液の粘度5mPa・sのPVA(ケン化度、粘度は、JIS K 6726に準拠して測定:以下同じ)
(C−2):ケン化度73モル%、20℃4%水溶液の粘度6mPa・sのPVA
(C−3):ケン化度88モル%、20℃4%水溶液の粘度3.3mPa・sのPVA
【0045】
(D−1):ポリオキシエチレンラウリルエ−テル、ポリオキシエチレン15モル付加、0.1wt%水溶液の25℃での表面張力が36mN/m、HLBが15.4
(D−2):脂肪酸アルカノールアミド:ヤシ油脂肪酸とジエタノールアミドとの縮合生成物(1:2型)、0.1wt%水溶液の25℃での表面張力が27mN/m
(D−3):ポリエーテル変性シリコーンオイル、70wt%がポリエーテル基(エチレンオキサイド100%)で変性、粘度(25℃)1000mm2-1、0.1wt%水溶液の25℃での表面張力が28mN/m
(D−4):高級アルコール硫酸エステルナトリウム塩(陰イオン性界面活性剤)、高級アルコールがC12成分を主とする。
【0046】
【実施例1〜7】
市販の二軸延伸ポリスチレンシート(旭化成(株)製、商品名:OPSシート#3000 厚さ0.3mm)の片面を純水との接触角が40±3°になるようにコロナ処理を施した後、(A)成分として表1に示す界面活性剤60質量部と(B)成分として表1に示す界面活性剤40質量部よりなる非イオン性界面活性剤組成物95wt%とPVAが5wt%になるよう混合し、表1に示す防曇剤被覆量になるように調整した水溶液組成物をスプレーコーターで被覆(Wet塗布量2g/m2)、塗工面均一化し、乾燥処理後、シートをロール状に巻き取った。
【0047】
巻き取られたシートロールを1週間エージング(常温で保管)後物性評価を行った。エージング後のシート及びシートからの成形品の物性評価結果を表1に示す。なお、コーティング前後のシートと水との接触角は、協和界面科学(株)社製固体表面エナジー解析装置CA−XEを用い確認した。またシート上の被覆膜は、シートコーティング直後にFTIR(ATR法)により防曇剤組成物中のエステル((A)成分由来の約1735cm-1の吸収)またはエーテル((B)成分由来の約1119cm-1の吸収)結合の特性吸収とポリスチレンの特性吸収(約1943cm-1)との比と、被覆量既知のサンプルから作成した検量線との比較により確認した。
【0048】
【表1】
Figure 0003933486
【0049】
【比較例1〜9】
比較例1は、PVAを表2に示すものに代えた他は、実施例1と同様に行いシートを得た。また、比較例2は界面活性剤(A−1)60wt%と界面活性剤(D−1)40wt%よりなる組成物を用い、比較例3〜5は実施例1の(B)成分を表2に示すものに代え、比較例6〜9は各成分単体を用い、その他は実施例1と同様に行いシートを得た。
得られたシートの物性を表2に示す。
【0050】
【表2】
Figure 0003933486
【0051】
比較例1は、防曇剤組成物の構成は本発明の範囲内であるが、シートと水との接触角が本発明の範囲外の例で、接触角が本発明に重要な1つの要素である事がわかる。一方、比較例6は、本発明のシートに用いる防曇剤組成物とは異なる公知の防曇剤をシートに被覆し水との接触角を6°になるようにしたものであるが、これの評価結果より、単にシート表面と水との接触角を小さくするだけでは優れた防曇性が得られ難い事、すなわち防曇剤組成物の選定も重要であることがわかる。
【0052】
また、比較例2〜5のシートは、本発明とは異なる防曇組成物用いた例である。これらシートの評価結果と表1の評価結果より、本発明のシートは、厳選された特性を持つ防曇剤組成物を用いかつフィルム表面と水との接触角を小さくする事で優れた防曇性が得られることがわかる。比較例7〜9は、本発明の防曇剤組成物を構成する各成分のみをシートに被覆した例で、各成分単独では満足行く防曇性能が得られない事がわかる。また、比較例7〜9と実施例1との比較より、シートと水との接触角は、混合物を被覆した実施例1のシートは混合物を構成する各成分を被覆した比較例のシートより小さく、厳選された表面張力の防曇剤組成物の相乗効果が大きい事、およびこの相乗効果により実施例のシートは優れた防曇性が得られている事がわかる。
【0053】
【実施例8〜11】
市販の二軸延伸ポリスチレンシート(旭化成(株)製、商品名:OPSシート#3000 厚さ0.3mm)の片面(防曇面)を純水との接触角が40±3°になるようにコロナ処理を施したのち、表3に示す割合で混合した界面活性剤(A)、(B)およびPVAを表3に示す防曇剤被覆量になるように調整した水溶液組成物をスプレーコーターで被覆(Wet塗布量2g/m2)、塗工面均一化し、乾燥処理後、反対面(離型面)を純水との接触角が60±3°になるようにコロナ処理を施したのち、表3に示す割合で調合した離型面被覆成分をスプレーコーターで被覆(Wet塗布量3g/m2)、塗工面均一化し、乾燥処理を行い、シートをロール状に巻き取った。巻き取られたシートロールを実施例1と同様に評価した。評価結果を表3に示す。
【0054】
【表3】
Figure 0003933486
【0055】
実施例8〜11より本発明の少なくとも1表面に特定の非イオン性界面活性剤(A)、(B)およびPVAよりなる防曇剤組成物が被覆されたシートは、反対面に離型剤を被覆した場合も良好な防曇性を示す事がわかる。
【0056】
【発明の効果】
本発明のスチレン系樹脂防曇シートは、実用防曇性、すなわちスチレン系樹脂シート成形容器、特に深く絞った成形品においても低温での初期防曇性とその持続性、及び高温での初期防曇性、持続防曇性に優れた特徴を持つ。このため、低温防曇性を必要とする食品包装用をはじめ、各種成形容器、包装容器成形用シートとして好適に使用できる。

Claims (6)

  1. 少なくとも1表面に防曇剤組成物が被覆されたスチレン系樹脂シートにおいて、防曇剤組成物が下記特性をもつ(A)、(B)2種の非イオン性界面活性剤混合物80〜99wt%とポリビニルアルコール20〜1wt%からなり、かつ該防曇剤組成物が被覆された少なくとも1表面と水との接触角が1〜15゜の範囲であることを特徴とするスチレン系樹脂防曇シート。
    (A):HLBが12〜18でありウィルヘルミー法(プレート法)によって測定した0.1wt%水溶液の25℃での表面張力が30〜39mN/mであり、かつ多価アルコールと脂肪酸とのエステル類である非イオン性界面活性剤:30〜95質量部。
    (B):ウィルヘルミー法(プレート法)によって測定した0.1wt%水溶液の25℃での表面張力が40〜60mN/mであり、かつオキシエチレン骨格を含む界面活性剤である非イオン性界面活性剤:70〜5質量部。ただし、(A)、(B)合計100質量部とする。
  2. 非イオン性界面活性剤(A)がショ糖脂肪酸エステルまたはポリグリセリン脂肪酸エステルである請求項1記載のスチレン系樹脂防曇シート。
  3. 非イオン性界面活性剤(B)がポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体またはポリオキシエチレンラウリルエーテルのポリオキシエチレン付加物である請求項1または2記載のスチレン系樹脂防曇シート。
  4. 防曇剤組成物中のポリビニルアルコールが下記(1)、(2)の条件を満たすことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のスチレン系樹脂防曇シート。
    (1)ケン化度(s)が60〜80モル%
    (2)4%水溶液20℃での粘度(v)が3〜9mPa・s
  5. 防曇組成物の被覆量が5〜50mg/mであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のスチレン系樹脂防曇シート。
  6. スチレン系樹脂シートが二軸延伸スチレン系樹脂シートであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のスチレン系樹脂防曇シート。
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