JP7010624B2 - 熱ラミネート用スチレン系樹脂フィルム、積層シート、容器、及び包装体 - Google Patents

熱ラミネート用スチレン系樹脂フィルム、積層シート、容器、及び包装体 Download PDF

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本発明は、熱ラミネート用スチレン系樹脂フィルム、該熱ラミネート用スチレン系樹脂フィルムを含む積層シート、容器、及び包装体に関する。特に、熱成形容器に用いられる熱ラミネート用スチレン系樹脂フィルム、該熱ラミネート用スチレン系樹脂フィルムを含む積層シート、容器、及び包装体に関する。
従来、ポリスチレンに代表されるスチレン系樹脂は安価であり、透明性、成形性、寸法安定性、剛性、発泡特性等にも優れることから、樹脂シートや樹脂フィルムへと加工され、広く用いられている。また、スチレン系樹脂シートとしては発泡体シートと非発泡体シートがあり、食品包装分野で食品用容器等へ熱成形する用途に多用されている。
スチレン系樹脂フィルムは、フィルムの持つ高光沢、透明性と腰の強さの特徴から、食品包装分野や、封筒窓材用途で使用されている。食品包装分野では、スチレン系樹脂シート基材としてのハイインパクトポリスチレン(HIPS)シートや発泡体状のポリスチレンペーパー(PSP)等との熱ラミネート用途として広く使用されており、裏刷り印刷された熱ラミネート用フィルムは意匠性に優れることに加え、スチレン系樹脂シート基材と同素材でリサイクルし易いことも使用される理由にある。これらスチレン系樹脂フィルムを熱ラミネートされた積層シートは、スチレン系樹脂シート基材と同様に真空成形や圧縮成形等により成形され、食品用容器、飲料用容器等の熱成形容器に広く利用されている。
近年、スーパーやコンビニエンスストア等の店頭において弁当を始めとする各種の食品を販売するに際しては、この熱ラミネート用フィルムをPSPに熱ラミネートにて積層した積層シートの熱成形容器であるトレーが一般に広く使われている。そして、多くの場合、トレーに食品を載せた状態で、透明な蓋を嵌合させるようになっている。このように蓋の嵌合包装を施すことを考えると、紙製のトレーでは包装時に加わる力に対向しきれずに変形してしまうため、もっぱら樹脂製のトレーが使われているのである。なかでも、安価で強度があり、見かけのよい発泡体製の成形トレーが利用されている。
この熱ラミネート用フィルム積層シートからなる熱成形容器は、嵌合包装用の蓋との滑り性が悪い場合は、蓋の嵌合時や開封時に蓋の嵌合部分が割れてしまう問題がある。一方で、スチレン系樹脂フィルムの滑り性を改善させる方法として、フィルム表面に無機粒子や界面活性剤(特許文献1~4参照)を含有させる、言い換えると、添加(練り込む)又は付着(塗布、コーティング)してフィルムを改質させることが知られている。
特開2008-150623号公報 特開2001-219939号公報 国際公開第01/040360号 特開2010-94948号公報
しかしながら、特許文献1に記載されているスチレン系樹脂フィルムは、無機粒子をスチレン系樹脂に練り込むことにより、フィルム表面には特定の大きさと数の突起を形成させて滑り性を改善させた熱ラミネート用フィルムであるが、近年の高級志向の裏印刷された熱成形容器に活用される熱ラミネート用フィルムに求められる外観、印刷視認性として、フィルム透明性(ヘイズ値)に改善の余地がある。特許文献2及び特許文献3に記載されているスチレン系樹脂フィルムは、フィルム表面に無機粒子と界面活性剤を水溶性高分子とともに付着させた封筒窓用フィルムであるが、熱ラミネート用フィルムとして使用する場合に、印刷視認性としてフィルム透明性(ヘイズ値)に加え、裏刷り印刷時にコーティング剤の無機粒子移行による機械汚染とその再転写によるフィルム汚れが問題になる場合がある。殊に、特許文献4に記載されているスチレン系樹脂フィルムは、片側のフィルム表面に放電処理後に界面活性剤を主成分とする帯電防止剤と水溶性高分子を付着させ、反対側のフィルム表面には放電処理後にアンカーコート剤付着後に界面活性剤を主成分とする帯電防止剤を練り込んだポリエチレン系樹脂を押出しラミネートさせた、散薬を内包する袋として使用される積層フィルムであって、熱成形容器に使用される熱ラミネート用フィルムとは異なる。また、熱成形容器に使用される熱ラミネート用フィルムとして使用したとしても、印刷視認性としてフィルム透明性(ヘイズ値)に改善の余地がある。
そこで、本発明は、無機粒子を使用せずとも、優れたフィルム透明性及びフィルム表面の滑り性を有する熱ラミネート用スチレン系樹脂フィルム、該熱ラミネート用フィルムを含む積層シート、容器、及び包装体を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、水溶性高分子と界面活性剤とを含む表面処理剤が付着した熱ラミネート用スチレン系樹脂フィルムにおいて、表面処理剤中の水溶性高分子と界面活性剤の質量比と、界面活性剤中の飽和脂肪酸とモノエステルのモル比を特定の範囲とすることで、無機粒子を含有せずとも、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、以下の熱ラミネート用フィルム、該熱ラミネート用フィルムを含む積層シート、容器、及び包装体を提供するものである。
(1)スチレン系樹脂組成物を含むフィルムに水溶性高分子と界面活性剤とを含む表面処理剤が付着しているスチレン系樹脂フィルムであり、
前記表面処理剤中の前記水溶性高分子と前記界面活性剤との質量比が15:85~85:15であり、
前記界面活性剤が、飽和脂肪酸が80%以上である構成脂肪酸と、モノエステルが50%以上であるエステル組成とを含む脂肪酸エステルであり、
前記水溶性高分子がポリビニルアルコールであり、
JIS-K-7136法に準じたヘイズが4.0%以下であり、
JIS-K-7125法に準じたフィルム表面の動摩擦係数が0.4以下である
ことを特徴とする、熱ラミネート用スチレン系樹脂フィルム。
(2)前記界面活性剤がショ糖脂肪酸エステルであり、炭素数8~22の飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸とを含み、そのモル比が99:1~80:20である、(1)に記載の熱ラミネート用スチレン系樹脂フィルム。
(3)前記ショ糖脂肪酸エステルが、ショ糖ヤシ油脂肪酸エステルである、(2)に記載の熱ラミネート用スチレン系樹脂フィルム。
(4)前記スチレン系樹脂フィルムの少なくとも片面に前記表面処理剤が50~250mg/mで付着している、(1)~()のいずれかに記載の熱ラミネート用スチレン系樹脂フィルム。
)前記スチレン系樹脂組成物が、ハイインパクトポリスチレン及びスチレン-ブタジエン-スチレン系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を、前記スチレン系樹脂組成物100質量%に対して0.5~15質量%含有する、(1)~()のいずれかに記載の熱ラミネート用スチレン系樹脂フィルム。
)前記スチレン系樹脂組成物が、多分岐状ポリスチレン及び線状ポリスチレンを含む、(1)~()のいずれかに記載の熱ラミネート用スチレン系樹脂フィルム
(7)(1)~()のいずれかに記載の熱ラミネート用スチレン系樹脂フィルムとスチレン系樹脂発泡体とが積層されていることを特徴とする、積層シート。
)()に記載の積層シートよりなることを特徴とする、容器。
)()に記載の容器と前記容器に嵌合することが可能な蓋とを含むことを特徴とする、包装体。
本発明によれば、無機粒子を使用せずとも、優れたフィルム透明性及びフィルム表面の滑り性を有する熱ラミネート用スチレン系樹脂フィルム、該熱ラミネート用フィルムを含む積層シート、容器、及び包装体を提供することが出来る。
以下、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」ともいう。)について、詳細に説明するが、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
<熱ラミネート用スチレン系樹脂フィルム>
本実施形態の熱ラミネート用スチレン系樹脂フィルムは、スチレン系樹脂組成物を含むスチレン系樹脂フィルムの表面に水溶性高分子と界面活性剤とを含む表面処理剤が付着し、前記表面処理剤中の前記水溶性高分子と前記界面活性剤との質量比(水溶性高分子:界面活性剤)が15:85~85:15であり、前記界面活性剤が、飽和脂肪酸が80%以上である構成脂肪酸と、モノエステルが50%以上であるエステル組成とを含む脂肪酸エステルであることを特徴とする、熱ラミネート用スチレン系樹脂フィルム(本明細書において、単に「熱ラミネート用フィルム」と称する場合がある。)である。
本実施形態の熱ラミネート用スチレン系樹脂フィルムは、接着剤を用いずに、熱圧着により、熱ラミネート用スチレン系樹脂フィルムと樹脂シートとを積層して積層シートを成形することができ、また、得られた積層シートは、食品用容器、飲料用容器、カップ麺容器等の熱成形容器の材料として好適に使用することができる。
<<スチレン系樹脂フィルム>>
本実施形態の熱ラミネート用スチレン系樹脂フィルムを構成するスチレン系樹脂フィルムは、スチレン系樹脂組成物を含む。
[スチレン系樹脂組成物]
本実施形態のスチレン系樹脂フィルムに含まれるスチレン系樹脂組成物は、スチレン系単量体の単独重合体又は共重合体よりなる線状ポリスチレン;スチレン系単量体、多分岐状マクロモノマー、及び脂肪族不飽和カルボン酸エステルを共重合してなる多分岐状ポリスチレン;スチレン系再生樹脂;又はこれらの混合組成物であるスチレン系樹脂を含むことが好ましく、フィルム状に製膜することができる透明性のある熱可塑性樹脂組成物であることが好ましい。
スチレン系単量体としては、スチレン(スチレンの単独重合体として、例えば、汎用ポリスチレン(GPPS))又はその誘導体を用いることができる。スチレン誘導体としては、例えば、メチルスチレン、α-メチルスチレン等のアルキル置換スチレン、ブロモスチレン、α-ブロモスチレン等のハロゲン置換スチレン等が挙げられる。
また、スチレン系単量体の共重合体としては、スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン-酸無水物共重合体、及び、これら3種の共重合体のいずれか1種を構成する2種のモノマー成分に更なるモノマー成分であるエステル成分を含む三元共重合樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種、スチレン-ブタジエン共重合体(SB樹脂)、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)、及びスチレン-ブタジエン-スチレン系樹脂(SBS樹脂)からなる群より選ばれる少なくとも1種の耐衝撃性ポリスチレン、スチレン-α-メチルスチレン共重合体等の公知の共重合体樹脂が挙げられる。また、ポリスチレンとポリフェニレンエーテル樹脂とのポリマーアロイ(m-PPE)も挙げられる。
上記のスチレン系単量体の共重合体におけるスチレン系単量体に由来する構成成分の含有量は、共重合体100質量%に対して、50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは85質量%以上である。
上記スチレン系樹脂組成物に含有されてもよい多分岐状ポリスチレンは、分岐構造を有している。分岐の構造として、一般的には、ランダム分岐型構造、星形構造、又はポンポン型構造がある。
スチレン系樹脂に分岐を導入する方法としては、有機過酸化物を用いる方法、多官能モノマーを用いる方法、イオン架橋による方法、又は多分岐状マクロモノマーを用いる方法がある。
これらの方法のうち、多分岐状マクロモノマーを用いることにより星形構造とポンポン型とが共存する分子構造を有するスチレン系樹脂を得る方法は、ゲル化抑制、フィルムの押出し性、製膜性、及び二次成形性(伸び及び厚みが均一)の観点から好ましい。
多分岐状マクロモノマーとしては、複数の分岐を有し、かつ、スチレン系単量体と共重合可能な脂肪族不飽和結合を有するモノマーを用いることができる。多分岐状マクロモノマーは、例えば、特開2011-202064号公報に示される方法により得ることができる。
多分岐状マクロモノマーとして、例えば、デンドリマー、ハイパーブランチポリマー、多分岐ポリエーテルポリオールに(メタ)アクリル基を導入したマクロモノマー、1分子中に活性メチレン基と、臭素、塩素、メチルスルホニルオキシ基又はトシルオキシ基等とを有するAB2型モノマーを求核置換反応させて得られる多分岐状の自己縮合型重縮合体を前駆体として、該重縮合体中に残存する未反応の活性メチレン基又はメチン基を、クロロメチルスチレン、ブロモメチルスチレン等と求核置換反応させることによって重合性二重結合を導入して得られる多分岐状マクロモノマー等を好適に用いることができる。
多分岐状マクロモノマーの質量平均分子量は、特に限定されず、1000~15000程度が好ましい。
脂肪族不飽和カルボン酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル誘導体が挙げられ、具体的には(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸と炭素数1~12のアルキルアルコールとのエステル類、(メタ)アクリル酸とアルキレンオキサイドとのエステル類、(メタ)アクリル酸と脂環式アルコールとのエステル類等が挙げられる。これらの内から少なくとも1種が選択されることが好ましい。なお、(メタ)アクリルとは、アクリル又はこれに対応するメタクリルを意味する。この中でも、(メタ)アクリル酸ブチル又は(メタ)アクリル酸エチルが好ましく、フィルムの厚み斑、深絞り成形性の観点から、アクリル酸ブチル又はアクリル酸エチルがより好ましい。
多分岐状ポリスチレン中の脂肪族不飽和カルボン酸エステル単位の含有量は、全スチレン系樹脂100質量%に対して、0.5~3.5質量%であることが好ましく、0.6~3.3質量%であることがより好ましく、0.9~2.5質量%であることが更に好ましい。0.5質量%より少ないと、深絞り性が不十分であり、3.5質量%より多いと、フィルムに製膜する工程でフィルムの厚み斑が大きくなったり、深絞り成形工程での型決まり性が悪くなったりする。
スチレン系再生樹脂とは、バージン材料が少なくとも一回の熱履歴を受けて、フィルム・シート等に製品化され市場に供給された後、該フィルム・シート製品が2次加工(例えば弁当・惣菜用透明蓋)された時に発生するクズ等が分別・回収されて、少なくともさらに1回の熱履歴を経て、ペレット化されたスチレン系樹脂を言い、2次加工製品として使用済みのスチレン系樹脂は含まない。スチレン系再生樹脂は、少なくとも2回の熱履歴を受けたものであり、汎用ポリスチレン樹脂を主体とした再生樹脂であることが望ましい。これは、熱ラミネート用フィルムには、透明性が要求されるためであり、同材質の樹脂が好ましい。
本実施形態におけるスチレン系樹脂組成物は、熱ラミネート用途の観点より、線状ポリスチレン及び多分岐状ポリスチレンを含有することが好ましい。スチレン系樹脂組成物中の線状ポリスチレンと多分岐状ポリスチレンとの質量比(線状ポリスチレン:多分岐状ポリスチレン)は、99.5:0.5~70:30の範囲が好ましく、95:5~75:25の範囲が更に好ましい。分岐状ポリスチレンの質量比が0.5未満であると、深絞り成形する工程でフィルムが切れ易くなる。また、分岐状ポリスチレンの質量比が30を超えるとフィルムに製膜する工程でフィルムの厚み斑が大きくなったり、深絞り成形工程での型決まり性や成形品の偏肉が悪くなったりする。
また、本実施形態におけるスチレン系樹脂組成物は、延伸製膜する際の安定性、フィルムの深絞り性等の特性を改善する観点より、スチレン-ブタジエン共重合体、ハイインパクトポリスチレン、及びスチレン-ブタジエン-スチレン系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の耐衝撃性ポリスチレンを含むことが好ましく、ハイインパクトポリスチレン及びスチレン-ブタジエン-スチレン系樹脂を含むことが特に好ましい。
スチレン系樹脂組成物が上記耐衝撃性ポリスチレンの少なくとも1種を含む場合の耐衝撃性ポリスチレンの合計含有量は、スチレン系樹脂組成物100質量%に対して、0.5~15質量%が好ましく、1~10質量%がより好ましく、3~7質量%が更に好ましい。0.5質量%以上含む場合、延伸の安定性や滑り性が改善され、15質量%以下の場合はフィルムの透明性、光沢、フィルムの腰(スティフネス)が保たれる。
スチレン系樹脂組成物は、好ましくは95~100質量%、より好ましくは97~100質量%のスチレン系樹脂を含んでよい。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、所望により当該技術分野において通常用いられる添加剤、例えば、無機粒子の分散を補助する金属石鹸、着色剤、可塑剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤等を、本発明の特性を損なわない範囲で、例えば、スチレン系樹脂組成物中5質量%未満で含むことが可能である。
本実施形態におけるスチレン系樹脂組成物のJIS-K-7210に準じて測定したメルトマスフローレイト(MFR)は、フィルムとして使用される観点から、好ましくは1.0~10.0(g/10分)、より好ましくは1.5~9.0(g/10分)である。MFRが1.0(g/10分)未満では、高温で押出す必要があるため、スチレン系樹脂の分子量低下が著しいばかりでなく、オリゴマー成分の発生量も多くなり、好ましくない。MFRが10.0(g/10分)を超えると、分子量が低く、フィルム強度が不十分になる。
また、上記スチレン系樹脂フィルムの厚みは、10~80μmが好ましく、15~50μmがより好ましい。スチレン系樹脂フィルムの厚みが、10~80μmであると、ループステフネス(東洋精機製作所製ループステフネステスタ測定値)の値が、熱ラミネート用フィルムとして取扱う上で好適な腰の強さ(曲げ弾性)に相当する1~50gfを示す。
<<スチレン系樹脂フィルムの製造方法>>
本実施形態のスチレン系樹脂フィルムの製造方法は、スチレン系樹脂組成物を溶融・混練してT-ダイからシート状に押出した後、同時二軸延伸、あるいは逐次二軸延伸する方法、溶融・混練して円筒状ダイから筒状に押出した後、バブル延伸(インフレーション)する方法等の公知の方法を採用することができる。
延伸温度は、ビカット軟化点+10℃~ビカット軟化点+60℃の範囲とすることが重要である。延伸温度が、ビカット軟化点+10℃未満では、安定的に製膜できず、フィルムが破断したり、バブルが破裂したりする。ビカット軟化点+60℃を超えると、充分な延伸配向が得られず、実用的なフィルム強度が得られない。
また、充分な延伸配向を得るために、延伸倍率は、縦方向(MD)、横方向(TD)ともに4~15倍であることが必須である。延伸倍率が4倍未満では、延伸配向が充分でなく、実用的な強度が得られない。また、15倍超では、安定的な延伸(フィルムの破断、バブルの破裂、厚みの不均一性が生じない)が困難である。延伸倍率が4~10倍の範囲では、延伸温度は、ビカット軟化点+10℃~ビカット軟化点+50℃が好ましく、延伸倍率が10倍を超えて15倍までの範囲では、延伸温度は、ビカット軟化点+20℃~ビカット軟化点+60℃が好ましい。
<<表面処理剤>>
本実施形態の熱ラミネート用スチレン系樹脂フィルムを構成する表面処理剤は、水溶性高分子と界面活性剤とを含み、前記表面処理剤中の前記水溶性高分子と前記界面活性剤の質量比(水溶性高分子:界面活性剤)が15:85~85:15であり、好ましくは20:80~80:20であり、より好ましくは30:70~70:30である。水溶性高分子の質量比を15以上にすることにより、界面活性剤との固着力がより高まり、界面活性剤がフィルム上により強固に固定され、剥離し難くなる。また、85以下にすることにより、界面活性剤の滑り性能がより発現し易くなる。
[界面活性剤]
本実施形態の界面活性剤は、飽和脂肪酸が80%以上である構成脂肪酸と、モノエステルが50%以上であるエステル組成とを含む脂肪酸エステルである。
飽和脂肪酸の割合が80%未満であると、熱ラミネート用フィルムの透明性が低下し、容器の印刷柄の視認性に劣る場合がある。脂肪酸エステルの飽和脂肪酸の割合は、99~80%であることが好ましく、99~90%であることがより好ましい。
また、脂肪酸エステルのエステル組成中のモノエステルの割合が50%未満であると、表面処理剤をスチレン系樹脂フィルムに塗工付着できない問題がある。脂肪酸エステルのエステル組成中のモノエステルの割合は、80~50%であることが好ましく、80~60%であることがより好ましい。
本実施形態で使用される界面活性剤は、ノニオン系の界面活性剤であることが好ましく、例えば、ショ糖脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエステル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等から選ばれる脂肪酸エステルの1種又は混合物であることが好ましい。中でも、食品添加物として認可されているショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルが好ましい。
更には、炭素数8~22の飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸とを含み、そのモル比(炭素数8~22の飽和脂肪酸:不飽和脂肪酸)が99:1~80:20である構成脂肪酸を有するショ糖脂肪酸エステルが好ましく、99:1~90:10であるものがより好ましい。炭素数8~22の飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸のモル比が99:1~80:20であると、スチレン系樹脂フィルムへの塗工付着性、及び、透明性を良好にすることができる。この点から、ショ糖ヤシ油脂肪酸エステルが最も好ましい。
[水溶性高分子]
本実施形態で使用される水溶性高分子は、界面活性剤と併用することにより、界面活性剤が容易に他の物質に移行することを防ぎ、熱ラミネート後も、より効果的に滑り性を発現させることができる。また、水溶性高分子は、水分と結合水をつくることにより、低湿度化の雰囲気でもその結合水の働きにより帯電防止性能を発揮する利点もある。さらに、水溶性高分子を使用することにより、表面の粘着性が制御され、フィルム同士のブロッキングをおさえることができる。また、同じく埃汚れがフィルム面へ付着すること防止することができる。
水溶性高分子の分子量は5,000~300,000が好ましく、より好ましくは10,000~200,000である。分子量が5,000以上の場合、フィルム表面への固着力が強く、移行防止性能がより効果的に発揮される。分子量が300,000以下の場合、容易にコーティング等で塗布し易くなる。また、界面活性剤との混和性がより向上し、適度に界面活性剤をその付着膜上で分散させることができ、より高い帯電防止性能を発現し易くなる。
本実施形態で使用される水溶性高分子は、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、アルギニン、ポリグリセリン及びその脂肪酸エステル、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ガラクトマンナン、ペクチン、アラビアガム、カラギーナン、キサンタンガム、プルラン等であることが好ましい。
上述の効果が特に高い本実施形態で使用される水溶性高分子として、ポリビニルアルコールが最も好ましく、そのケン化度は、好ましくは40~99%であり、より好ましくは60~95%である。ケン化度を40%以上にすることにより親水性が増し、空気中の水分と結合水を形成し易くなるので、より高い帯電防止性能を発現し易くなる。また、水溶性も向上するので、ポリビニルアルコールの水溶液中での分散均一性が向上し、均一で緻密な膜を形成し易くなる。一方、ケン化度を99%以下にすることにより、界面活性剤の移行防止性能がより高まり、ブロッキングも起こり難く、強度に優れた皮膜を形成し易くなる。
本実施形態のスチレン系樹脂フィルムに対する表面処理剤の付着量、即ち、界面活性剤と水溶性高分子の合計付着量は、好ましくは、10~500mg/m2であり、より好ましくは50~250mg/m2、更に好ましくは75~150mg/m2である。付着量を10mg/m2以上にすることにより、より優れた滑り性能を発現し易くなり、500mg/m2以下にすることにより、白化による外観悪化やブロッキングや表面べとつきが発生し難くなる。更には、付着量を50~250mg/m2とすることにより、優れた熱ラミネート成形容器の蓋嵌合及び開封の包装適性と印刷視認性を両立することができる。
<熱ラミネート用スチレン系樹脂フィルムの滑り性(動摩擦係数)>
本実施形態の熱ラミネート用スチレン系樹脂フィルムの滑り性を示す動摩擦係数(μd)は、容器に蓋嵌合包装する場合に、蓋と容器の嵌合部の滑り性により、片手で容易に蓋を閉めて包装し、使用時に片手で蓋を取って開封できる観点から、好ましくは0.4以下、より好ましくは0.3以下である。動摩擦係数(μd)が0.4超では、蓋が容器の嵌合接触部分との滑り性に劣り、包装時や開封時に蓋が割れてしまう場合がある。
なお本開示で、熱ラミネート用スチレン系樹脂フィルムの動摩擦係数は、JIS-K-7125に準拠して測定される値である。
<熱ラミネート用スチレン系樹脂フィルムの透明性(ヘイズ)>
本実施形態の熱ラミネート用スチレン系樹脂フィルムは、熱ラミネート用スチレン系樹脂フィルムを用いた容器の柄印刷の視認性の観点から、印刷前の熱ラミネート用スチレン系樹脂フィルムの透明性の指標となるヘイズ(曇度)が、5%以上にならないように原料組成物の混合割合を設定することが望まれる。ヘイズは、好ましくは4%以下、より好ましくは3%以下、更に好ましくは2%以下である。
なお本開示で、熱ラミネート用スチレン系樹脂フィルムのヘイズは、JIS-K-7136に準拠して測定される値である。
<熱ラミネート用スチレン系樹脂フィルムの製造方法>
本実施形態の熱ラミネート用スチレン系樹脂フィルムは、上述のスチレン系樹脂フィルムの表面に表面処理剤を付着させることにより製造することができる。
表面処理剤を付着させる方法は、一般的な方法を使用することができる。例えば、エアーナイフコーター、ダイコーター、ロールコーター、スプレーコーター、グラビアコーター、コンマコーター等で付着(コーティング)することができる。塗布量の精度から、エアーナイフコーター、ダイコーターが特に好ましい。
表面処理剤をコーティングするにあたり、表面処理剤は、界面活性剤と水溶性高分子とをあらかじめ特定の溶剤に均一に溶かし、一定濃度の溶液にすることが好ましい。表面処理剤溶液の濃度は、塗布する量に応じて、その溶液粘度や濃度によって選定されるべきである。溶媒は、特に限定されないが、水が好ましい。また、水に対し、エチルアルコールやイソプロピルアルコール等の水との混和性が良いものであれば、適宜混ぜて使用することができる。水系の溶剤を使用することで、特殊溶剤を使用すること無くコ-ティングすることができるので、環境や人体にも良い。また、乾燥後も、水溶性高分子が、適度に結合水として塗布膜に保持することができるため、帯電防止性能も良好となる。
また、スチレン系樹脂フィルムは、表面処理剤をコーティングする前に、スチレン系樹脂フィルムの表面をよりぬれ易くすることが好ましい。そのため、スチレン系樹脂フィルムの表面張力は、35mN/m以上が好ましく、40mN/m以上がより好ましい。また、ブロッキングの観点から80mN/m以下が好ましく、75mN/m以下がより好ましい。ぬれ性が良いと、界面活性剤と親水性高分子の塗布層が均一に斑なく形成され易くなるので、優れた滑り性による蓋嵌合包装及び蓋嵌合開封効果を発揮し易くなる。
上記の表面張力値は、コロナ処理機等の放電加工による物理的な方法及び/又はアンカーコーティング等の化学的な方法によって達成することができる。
次に、表面処理剤をコーティングしたスチレン系樹脂フィルムを乾燥させる。乾燥温度は、フィルムの収縮や加工速度を鑑み、適宜選定することができる。スチレン系樹脂組成物のビカット軟化温度が110℃以上である場合、上記の観点から、乾燥温度は、80~110℃が好ましい。
本実施形態の熱ラミネート用スチレン系樹脂フィルムは、表面処理剤をコーティングした面と反対側の面を裏刷り印刷してもよい。裏刷り印刷の方法としては、一般的な方法を使用することができ、グラビアロール印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷等が挙げられる。
<積層シート>
本実施形態における積層シートは、上述の熱ラミネート用スチレン系樹脂フィルムとスチレン系樹脂発泡体とが積層されているシートである。スチレン系樹脂発泡体は、スチレン系樹脂をベースとした発泡体であり、形状及び大きさは任意である。
積層シートの厚みは、1~4mmが好ましく、2~3mmがより好ましい。積層シートの厚みが1~4mmであると、加熱することで容易に加工することができる。
本実施形態における積層シートは、上述の熱ラミネート用スチレン系樹脂フィルムの非コーティング面をスチレン系樹脂発泡体に熱圧着することにより得られる。熱圧着法としては、一般的な方法を使用することができ、例えば、温度150~250℃の熱圧着ローラーを装備した熱ラミネート機でラミネートする方法等が挙げられる。
<容器>
本実施形態における容器は、上述の積層シートを金型を用いて熱成形することにより得られる。
本実施形態の容器は、優れたフィルム透明性及びフィルム表面の滑り性を有する本実施形態の熱ラミネート用スチレン系樹脂フィルムを含む積層シートから成形することにより、優れた印刷視認性、蓋嵌合及び開封の包装適性を兼ね備える。そのため、本実施形態の容器は、食品用容器、飲料用容器、カップ麺容器等の用途に好適に使用することができる。
本実施形態の容器の製造方法としては、真空成形、圧縮成形、真空圧空成形等の一般的な熱成形方法を用いることができる。中でも、真空成形が好ましく、温度条件としては、特に限定されないが、250~300℃が好ましい。
<包装体>
本実施形態における包装体は、上述の本実施形態の容器と当該容器に嵌合することが可能な蓋とを含む。
本実施形態の包装体は、優れたフィルム透明性及びフィルム表面の滑り性を有する本実施形態の熱ラミネート用スチレン系樹脂フィルムを含む容器で構成されることにより、優れた印刷視認性を有し、蓋の嵌合及び開封を容易に行うことができる。そのため、本実施形態の包装体は、食品用容器、飲料用容器、カップ麺容器等の用途に好適に使用することができる。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<材料>
実施例及び比較例で使用した材料は以下のとおりである。
[スチレン系樹脂]
ポリスチレン(PS):DIC株式会社製、グレード名 HP-100、MFR=3.3g/10分(線状PS84質量%と多分岐PS16質量%との混合物、アクリル酸ブチル単量体の含有量2%)
耐衝撃性ポリスチレン(HIPS):PSジャパン株式会社製、グレード名 H8672、MFR=4.0g/10分
[水溶性高分子]
ポリビニルアルコール(PVA):日本合成化学製、製品名 ゴーセノール(PVA含有量93.5%の水/アルコール溶液)
[界面活性剤]
界面活性剤として、以下の脂肪酸エステルの1種若しくは混合物、又は脂肪酸ジエタノールアミドを用いた。
(1)ショ糖ラウリン酸エステル
(1-i)三菱化学フーズ株式会社製、製品名:リョートーシュガーエステルLWA-1570(モノエステル含量70%)
(1-ii)三菱化学フーズ株式会社製、製品名:リョートーシュガーエステルL-195(モノエステル含量1%)
(2)ショ糖オレイン酸エステル
(2-i)三菱化学フーズ株式会社製、製品名:リョートーシュガーエステルO-1570(モノエステル含量70%)
(2-ii)三菱化学フーズ株式会社製、製品名:リョートーシュガーエステルO-170(モノエステル含量1%)
(3)ショ糖ミリスチン酸エステル
三菱化学フーズ株式会社製、製品名:リョートーシュガーエステルM-1695(モノエステル含量80%)
(4)ショ糖パルミチン酸エステル
三菱化学フーズ株式会社製、製品名:リョートーシュガーエステルP-1570(モノエステル含量70%)
(5)ショ糖ステアリン酸エステル
三菱化学フーズ株式会社製、製品名:リョートーシュガーエステルS-1570(モノエステル含量70%)
(6)ショ糖ヤシ油脂肪酸エステル
第一工業製薬製、製品名:DKエステルS-L18(モノエステル含量70%)(ショ糖脂肪酸エステル含有量38%の水/アルコール溶液)
(7)ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド
日油製、製品名:スタホームF
《測定及び評価方法》
実施例及び比較例において使用した測定及び評価方法は、以下のとおりである。
(1)熱ラミネート用フィルムの厚み
JIS-B-7503に準拠したダイヤルゲージにより、熱ラミネート用フィルムの厚みを測定した(単位:μm)。
(2)熱ラミネート用フィルムの透明性(ヘイズ)
JIS-K-7136に準拠し、ヘイズメーター(日本電色工業社製、NDH5000)を用いて熱ラミネート用フィルムのヘイズを測定し、整数値に四捨五入して求めた(単位:%)。
(3)熱ラミネート用フィルムの滑り性(動摩擦係数(μd))
JIS-K-7125に準拠し、摩擦測定機(東洋精機製作所製、摩擦測定機TR、ライダーは113gの梨地金属製)を用いて熱ラミネート用フィルムの動摩擦係数(μd)を測定し、小数点以下一桁の値に四捨五入して求めた(単位:無し)。
(4)容器の印刷視認性
熱ラミネート用フィルムを積層した積層シートから熱成形した容器の柄印刷表面の外観、印刷柄の視認性を以下の評価基準で判定した。
◎(優良):印刷柄が非常に鮮明で、優れた印刷視認性を示す。[2%以下のヘイズに相当]
○(良好):印刷柄が鮮明で、良好な印刷視認性を示す。[2%超3%以下のヘイズに相当]
△(実用可):印刷柄がクリアで、実用的な印刷視認性を示す。[3%超4%以下のヘイズに相当]
×(不良):印刷柄が白濁して表面光沢も無く、印刷視認性に劣る。[4%超のヘイズに相当]
(5)容器の蓋の嵌合及び開封の包装適性(滑り性)
熱ラミネート用フィルムを積層した積層シートから熱成形した容器に、容器に併せてOPSシート(サンディック(株)製、厚み250μm)から熱成形された嵌合蓋で嵌合包装を行い、容器周辺部に位置する嵌合部と蓋の接触部との滑り性による蓋の嵌合と開封のし易さにより、蓋嵌合及び開封の包装適性を以下の評価基準で判定した。
◎(優良):優れた滑り性により、片手で容易に蓋の嵌合と開封ができ、優れた包装適性を示す。[0.3以下のμdに相当]
○(良好):良好な滑り性により、両手で蓋の嵌合と開封ができ、良好な包装適性を示す。[0.3超0.4以下のμdに相当]
×(不良):滑り性に劣り、蓋の嵌合がし難く、蓋が割れる場合があり、包装適性に劣る。[0.4超のμdに相当]
(6)総合評価
以下の評価基準で総合評価を行った。
◎(優良):印刷視認性、蓋嵌合及び開封の包装適性が、どちらも◎である。
○(良好):印刷視認性、蓋嵌合及び開封の包装適性が、どちらも○、又は、一方が◎で他方が○である。
△(実用可):印刷視認性が△、蓋嵌合及び開封の包装適性が○若しくは◎である。
×(不良):印刷視認性、蓋嵌合及び開封の包装適性の少なくとも一方が×である。
[実施例1]
ポリスチレン系樹脂の原料であるPSのペレット(95質量%)とHIPSのペレット(5質量%)をドライブレンドした混合物を、50φmm径のスクリューを有する押出機(プラスチック工学研究所社製、製品名:GT-50ベント式単軸押出機)に供給、溶融混練し、樹脂温度約180℃の樹脂を円筒ダイにて押出し、縦延伸倍率約7.5倍、横延伸倍率約6.5にてバブル延伸して25μmの厚みのスチレン系樹脂フィルムを得、ロール状に巻き取った。その後、スチレン系樹脂フィルムの表面処理剤を塗布する面を約50mN/mの表面張力となるようにコロナ処理を行った。ついで、PVA80質量%、界面活性剤(ショ糖ラウリン酸エステル(1-i)99%及びショ糖オレイン酸エステル(2-i)1%の混合物)20質量%の質量組成となるように混合調整した表面処理剤の1%水溶液をスプレーコーターでフィルム表面に塗布した後、約90℃の熱風乾燥機中を通過させ、水/アルコール分を除去し、熱ラミネート用スチレン系樹脂フィルムを得た。尚、表面処理剤の付着量(乾燥後)は、75mg/m2とした。
更に、熱ラミネート用スチレン系樹脂フィルムの表面処理剤の非塗工面に、グラビアロール印刷機(スピード80m/分)を使用して、3つのグラビアロール版(版深38μm、22μm、6μm、いずれも175線/インチの3種類)で3色印刷して、熱ラミネート用フィルムを得た。尚、印刷インキは、サカタインクス(株)製のグラビアインキ(XGS-820藍800、XGS-810白120、XGS-820墨1000)を使用した。
上記で印刷した熱ラミネート用スチレン系樹脂フィルムの印刷面とPSP(積水化成品工業(株)製、厚み約2mm、発泡倍率約10倍)とを熱圧着ローラー(ロール表面温度約200℃)を装備した熱ラミネート機を用いて片面熱ラミネートを行ない、積層シートを得た。次に、真空成形機(遠赤外線ヒーター輻射加熱方式)で、成形性評価用金型を用い、290℃で真空成形(プラグアシスト無し)を行い、容器を作製した。
実施例1の原料組成、フィルム及び容器の各物性を表1に示す。
[実施例2~8]
実施例2~8は、表1に示すように原料組成を変更したこと以外は実施例1と同様にして行い、熱ラミネート用スチレン系樹脂フィルム、積層シート、及び容器を得た。
実施例2~8の測定及び評価結果を表1にまとめる。
[比較例1~5]
比較例1~5は、表1に示すように原料組成を変更したこと以外は実施例1と同様にして行い、熱ラミネート用スチレン系樹脂フィルム、積層シート、及び容器を得た。
比較例1~5の測定及び評価結果を表1にまとめる。
界面活性剤の脂肪酸エステルの構成脂肪酸が、飽和脂肪酸のショ糖ラウリン酸エステルと不飽和脂肪酸のショ糖オレイン酸エステルの組合せであり、界面活性剤に対する水溶性高分子の混合割合が20~80%、且つ、界面活性剤の脂肪酸エステルのエステル組成中のモノエステルの割合が70%である実施例1~3は、良好又は実用上問題ない印刷視認性と良好な蓋嵌合及び開封の包装適性を示した。界面活性剤の少ない比較例1と水溶性高分子の少ない比較例2は、滑り性と蓋嵌合及び開封の包装適性に劣り、界面活性剤の脂肪酸エステルの構成飽和脂肪酸が少ない比較例3は、透明性と印刷視認性に劣る結果であった。また、界面活性剤の脂肪酸エステルのモノエステル成分が1%である比較例4は、表面処理剤の水溶液分散性に劣り、表面処理剤の塗工が困難という結果となった。
界面活性剤の脂肪酸エステルの構成飽和脂肪酸が炭素数18の高級脂肪酸である実施例6は、優れた滑り性と蓋嵌合及び開封の包装適性を示し、界面活性剤の脂肪酸エステルの構成飽和脂肪酸が炭素数8~20の広範囲な飽和脂肪酸である実施例7は、優れた滑り性と優れた印刷視認性を示していた。また、実施例7のスチレン系樹脂フィルムよりHIPSの含有を取りやめたものに相当するものである実施例8は、実施例7より滑り性が若干劣るものの両手で蓋の嵌合と開封ができる良好な包装適性と優れた印刷視認性を示した。また、界面活性剤が脂肪酸エステルではない比較例5は、透明性や滑り性に劣り、印刷視認性や蓋嵌合及び開封の包装適性を満足しなかった。
Figure 0007010624000001
本発明の熱ラミネート用スチレン系樹脂フィルムを裏印刷し、スチレン系樹脂発泡体に熱ラミレートしてなる積層シートを成形して得られる容器は、ラミネート用フィルムの優れた透明性により、表面印刷柄の視認性が良好なものとなり、また、ラミネート用フィルムの優れた表面滑り性により、蓋嵌合包装用途に適したものとなる。従って、本発明の容器及びそれを用いた包装体は、特に、食品用容器、飲料用容器、カップ麺容器等の食品用容器及び包装体として好適に使用することができる。

Claims (9)

  1. スチレン系樹脂組成物を含むフィルムに水溶性高分子と界面活性剤とを含む表面処理剤が付着しているスチレン系樹脂フィルムであり、
    前記表面処理剤中の前記水溶性高分子と前記界面活性剤との質量比が15:85~85:15であり、
    前記界面活性剤が、飽和脂肪酸が80%以上である構成脂肪酸と、モノエステルが50%以上であるエステル組成とを含む脂肪酸エステルであり、
    前記水溶性高分子がポリビニルアルコールであり、
    JIS-K-7136法に準じたヘイズが4.0%以下であり、
    JIS-K-7125法に準じたフィルム表面の動摩擦係数が0.4以下である
    ことを特徴とする、熱ラミネート用スチレン系樹脂フィルム。
  2. 前記界面活性剤がショ糖脂肪酸エステルであり、炭素数8~22の飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸とを含み、そのモル比が99:1~80:20である、請求項1に記載の熱ラミネート用スチレン系樹脂フィルム。
  3. 前記ショ糖脂肪酸エステルが、ショ糖ヤシ油脂肪酸エステルである、請求項2に記載の熱ラミネート用スチレン系樹脂フィルム。
  4. 前記スチレン系樹脂フィルムの少なくとも片面に前記表面処理剤が50~250mg/mで付着している、請求項1~のいずれか一項に記載の熱ラミネート用スチレン系樹脂フィルム。
  5. 前記スチレン系樹脂組成物が、ハイインパクトポリスチレン及びスチレン-ブタジエン-スチレン系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を、前記スチレン系樹脂組成物100質量%に対して0.5~15質量%含有する、請求項1~のいずれか一項に記載の熱ラミネート用スチレン系樹脂フィルム。
  6. 前記スチレン系樹脂組成物が、多分岐状ポリスチレン及び線状ポリスチレンを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の熱ラミネート用スチレン系樹脂フィルム。
  7. 請求項1~のいずれか一項に記載の熱ラミネート用スチレン系樹脂フィルムとスチレン系樹脂発泡体とが積層されていることを特徴とする、積層シート。
  8. 請求項に記載の積層シートよりなることを特徴とする、容器。
  9. 請求項に記載の容器と前記容器に嵌合することが可能な蓋とを含むことを特徴とする、包装体。
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