JP2004202838A - 二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シート及び成形品 - Google Patents
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Abstract
【課題】熱板圧空成形する際の熱板への界面活性剤の付着による熱板汚れが低減され、透明性等の外観に優れた成形品を長時間連続生産できる二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シート、及び、この二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シートを成形してなる防曇性に優れる成形品を提供すること。
【解決手段】芳香族ビニル系樹脂(A)と球状ブロッキング防止剤(B)を含有してなる二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シートであって、かつ、少なくとも片面に環状多糖類(C)と非イオン系界面活性剤(D)を含有する塗膜を有する二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シート、及び、この二軸延伸スチレン系樹脂シートを成形してなる成形品。
【選択図】 なし。
【解決手段】芳香族ビニル系樹脂(A)と球状ブロッキング防止剤(B)を含有してなる二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シートであって、かつ、少なくとも片面に環状多糖類(C)と非イオン系界面活性剤(D)を含有する塗膜を有する二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シート、及び、この二軸延伸スチレン系樹脂シートを成形してなる成形品。
【選択図】 なし。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、防曇性を有し、かつ、熱板圧空成形時に防曇剤等の界面活性剤がシートから熱板へ移行することにより発生する熱板汚れが少ない二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シート、及び、この二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シートを成形してなる成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性樹脂を用いて押出成膜された二軸延伸樹脂シートは、真空成形機、熱板圧空成形機、真空圧空成形機等を用いて加熱成形され、これにより得られた二次成形品は食品包装容器やその他物品の包装用に多く用いられている。これらの二軸延伸樹脂シートの中で、ポリスチレン(PS樹脂)、ポリスチレン−メタクリル酸共重合樹脂(SMAA樹脂)等に代表される芳香族ビニル系樹脂からなる透明な二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シートは、その透明性から弁当容器や惣菜容器として広く用いられている。この場合、二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シートは、少なくとも成形品の内容物側となる片面に、不均一に付着した水滴により内容物が見えにくくなるのを防ぐ目的で、一般的に防曇剤として脂肪酸エステル化合物等の非イオン系界面活性剤が塗布されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
しかし、前記二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シートを、熱板圧空成形機を用いて加熱成形する場合には、防曇剤を塗布したシート面を加熱板と接触させて加熱する際に防曇剤や帯電防止剤として塗布された界面活性剤が熱板に付着、堆積することにより熱板汚れが発生する。この熱板汚れが発生すると、付着物による熱板表面の物理的な凹凸と熱伝達率の部分的低下に伴うシートの加熱ムラが生じる為、成形品の透明性等の外観が低下するし、加熱成形を継続すると経時的に熱板汚れが増大して外観の低下が大きくなるという問題があった。
【0004】
この熱板汚れは、高温で成形する程、防曇剤、帯電防止剤等の界面活性剤は熱板に付着しやすくなる為、耐熱性が要求される成形品の成形に用いるSMAA樹脂等からなる二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シートを熱板圧空成形する場合に、最も熱板汚れが発生しやすくなる。
【0005】
その為、頻繁に熱板付着物を除去する清掃作業を行う必要があり、生産効率を低下せざるを得なかった。
【0006】
また、界面活性剤等の熱板への付着、堆積による熱板汚れの発生を抑制した二軸延伸樹脂シートとしては、スチレン系樹脂に球状無機系粒状体を分散させた二軸延伸スチレン系樹脂シートが、熱板圧空成形機の熱板への塗布剤の転写を抑制するものとして知られているが、熱板への界面活性剤の転写の抑制が十分ではなく、実用的には不十分であった(例えば、特許文献2参照。)。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−145983号公報(第2−3頁)
【特許文献2】
特開2000−309645号公報(第2−4頁)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、熱板圧空成形する際の熱板への界面活性剤の付着による熱板汚れを低減し、成形品の透明性等の外観の低下を防ぐことができ、優れた成形品を長時間連続生産できる防曇性の二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シート、及び、この二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シートを成形してなる防曇性に優れ、外観の良好な成形品を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決する為の手段】
本発明者らは、前記課題を解決する為、検討を行った結果、以下の知見(a)および(b)を見出し、本発明を完成するに至った。
(a)界面活性剤等の熱板への付着、堆積による熱板汚れの発生を抑制するには、二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シート中に球状ブロッキング防止剤(B)を含有させると共に、前記二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シート表面の防曇性塗膜として環状多糖類(C)と非イオン系界面活性剤(D)を含有する塗膜を設けることが特に効果的であること。
(b)球状ブロッキング防止剤(B)を含有する共に、表面に環状多糖類(C)と非イオン系界面活性剤(D)を含有する塗膜が設けられた二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シートを成形してなる成形品は、非イオン系界面活性剤(D)の剥落による防曇性の低下がなく、防曇性に優れること。
【0010】
即ち、本発明は、芳香族ビニル系樹脂(A)と球状ブロッキング防止剤(B)を含有してなる二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シートであって、かつ、少なくとも片面に環状多糖類(C)と非イオン系界面活性剤(D)を含有する塗膜を有することを特徴とする二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シートを提供するものである。
【0011】
また、本発明は、前記二軸延伸スチレン系樹脂シートを成形してなることを特徴とする成形品を提供するものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明で用いる芳香族ビニル系樹脂(A)としては、例えば、芳香族ビニル系単量体の単独重合体、芳香族ビニル系単量体とこれと共重合可能な他の単量体との共重合体等が挙げられる。
【0013】
前記芳香族ビニル系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、O−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、t−ブチルスチレン等が挙げられ、特に限定されないが、なかでも、スチレン、α−メチルスチレンがシートの透明性、加工性の面から好ましく、特にスチレンが好ましい。
【0014】
前記芳香族ビニル系単量体と共重合可能な他の単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、ブタジエン、イソプレン等が挙げられ、特に限定されないが、なかでも(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸が好ましく、メタクリル酸が特に好ましい。
【0015】
前記芳香族ビニル系樹脂(A)の具体例としては、ポリスチレン、スチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体、スチレン−無水マレイン酸系共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸メチル系共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸ブチル系共重合体、スチレン−ブタジエン系共重合体、スチレン−ブタジエン−(メタ)アクリル酸系共重合体、スチレン−ブタジエン−(メタ)アクリル酸メチル系共重合体、スチレン−ブタジエン−(メタ)アクリル酸ブチル系共重合体、スチレン−ブタジエン−(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル系共重合体、スチレン−アクリロニトリル系共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル系共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレン系共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン系共重合体、スチレン−イソプレン−ブタジエン−スチレン系共重合体、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン系共重合体等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で用いても良いし、2種以上混合して用いることもできる。
【0016】
これら芳香族ビニル系樹脂(A)のなかでは、耐熱性が高く、高温で成形する必要があるため熱板汚れの発生しやすいが、熱板汚れの発生を抑制するという本発明の効果が発揮されて熱板汚れの発生を十分に効果的に防止できることから、ビカット軟化温度(JIS K−7206に規定される試験荷重50N、昇温速度50℃/時の条件でのビカット軟化温度)が100℃以上の芳香族ビニル系樹脂が好ましく、105℃以上の芳香族ビニル系樹脂が特に好ましい。
【0017】
前記ビカット軟化温度が105℃以上の芳香族ビニル系樹脂としては、スチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体、スチレン−無水マレイン酸系共重合体が挙げられ、なかでもスチレン−メタクリル酸系共重合体が好ましい。
【0018】
前記スチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体もしくはスチレン−無水マレイン酸系共重合体中における(メタ)アクリル酸もしくは無水マレイン酸の含有率は、特に制限されるものではないが、耐熱性、高温耐油性、押出延伸加工性、圧空成形加工性に優れることから1〜30重量%の範囲が好ましく、2〜20重量%の範囲が特に好ましい。
【0019】
本発明で用いる球状ブロッキング防止剤(B)としては、有機系、無機系は特に限定されるものではなく、例えば架橋高分子ビーズ、球状酸化珪素、ガラスビーズ、アルミノ珪酸塩、金属酸化物等が挙げられ、なかでもシート表面改質効果、透明性等の外観に優れることから、架橋高分子ビーズ、球状酸化珪素が好ましい。架橋高分子ビーズとしては、例えばスチレン系架橋ビーズ、架橋メタクリル樹脂ビーズ、架橋メタクリル酸エステル−スチレン共重合樹脂(MS樹脂)ビーズ等が挙げられる。
【0020】
更に、ビカット軟化温度105℃以上の耐熱性の高い芳香族ビニル系樹脂、例えばスチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体、スチレン−無水マレイン酸系共重合体等に添加する球状ブロッキング防止剤としては、熱安定性に優れることから、無機系の球状酸化珪素を用いることが特に好ましい。
【0021】
球状ブロッキング防止剤(B)の粒子径は、平均粒子径1〜20μmであることが好ましい。即ち、1μm以上でシート及び成形品の剥離性に優れ、20μm以下でシート及び成形品の透明性が良好となる。これらの性能バランスに優れることから、2〜10μmの範囲がより好ましい。なお、ここでの平均粒子径は、レーザー回折法により測定した50%体積平均粒子径である。
【0022】
次に、球状ブロッキング防止剤(B)の粒度分布としては、粒度分布幅が2.5以下であることが、シート表面の突起の均一性が良好となる点から好ましい。ここで、粒度分布とは前記レーザー回折法により測定される90%体積平均粒子径と10%体積平均粒子径との比率、即ち、(90%体積平均粒子径)/(10%体積平均粒子径)で示される値である。
【0023】
球状ブロッキング防止剤(B)でいう「球状」とは、真球状はもちろん楕円球状、いびつな球状(ポテト状)等を含む幅広い概念を言うが、真球に近いほどシート表面に均一な突起を生じさせる為、長径と短径との比から算出されるアスペクト比が1〜1.2であることが好ましい。
【0024】
また、芳香族ビニル系樹脂(A)中への球状ブロッキング防止剤(B)の添加量は30〜2000ppmなる割合で添加することが好ましい。即ち、添加量30ppm以上でシート及びその成形品の剥離性が良好となり、添加量2000ppm以下でシート及び成形品の透明性が良好となる。更に好ましくは50〜500ppmであり、特に好ましくは70〜300ppmである。なお、本発明の二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シートが多層シートである場合は、表層部における球状ブロッキング防止剤(B)の添加量が30〜2000ppmであれば良い。
【0025】
本発明の二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シートは、更に必要により、本発明の効果を阻害しない範囲で酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、加工助剤等のような球状ブロッキング防止剤(B)以外の添加剤を添加しても良い。
【0026】
芳香族ビニル系樹脂(A)、球状ブロッキング防止剤(B)及び球状ブロッキング防止剤(B)以外の添加剤等は、予め、二軸押出機やバンバリーミキサー等を用いてコンパウンド化して使用しても良く、タンブラーを用いたドライブレンド法で混合後、押出しても良く、更に、シート押出成膜時に同時供給しても良い。
【0027】
また、本発明の二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シートは多層シートでも良く、シートの層構成及び層比率は特に限定されない。例えば、2種3層の多層シートでビカット軟化温度が高い芳香族ビニル系樹脂と球状ブロッキング防止剤(B)を含有する表層と、ビカット軟化温度が比較的低い芳香族ビニル系樹脂の単独又は混合物を含有する中心層とからなる多層シートでもよい。
【0028】
前記ビカット軟化温度が高い芳香族ビニル系樹脂としては、例えばスチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体、スチレン−無水マレイン酸系共重合体が挙げられ、なかでもビカット軟化温度が105℃以上の樹脂が好ましい。また、前記ビカット軟化温度が比較的低い芳香族ビニル系樹脂としては、芳香族ビニル系樹脂(A)として例示した樹脂であって、スチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体及びスチレン−無水マレイン酸系共重合体を除く樹脂が挙げられ、なかでもビカット軟化温度が105℃未満の芳香族ビニル系樹脂が好ましい。
【0029】
前記2種3層の多層シートの好ましい例としては、スチレン−メタクリル酸系共重合体と球状ブロッキング防止剤(B)からなる表層と、ポリスチレン単独又はポリスチレンとスチレン−ブタジエン共重合体の混合物からなる中心層とからなる多層シートが挙げられる。ここで用いるスチレン−メタクリル酸系共重合体としては、中心層との層間接着が良好なことからメタクリル酸由来成分の含有率が0.5〜4.0重量%の共重合体がより好ましい。
【0030】
本発明の二軸延伸芳香族ブニル系樹脂シートの製造方法は、特に制限されるものではないが、ダイスより押出された未延伸積層シートを、ロール間速度差及びテンターを利用した逐次二軸延伸、又はテンターを利用した同時二軸延伸を行う方法等が挙げられる。延伸倍率は延伸温度や目的により異なるが、面衝撃強度が高く、熱板圧空成形時の配向戻りのムラが少なく成形性に優れるシートが得られることから、流れ方向(MD)と、流れと垂直方向(TD)の延伸倍率との積である延伸面倍率で1.4〜25倍であることが好ましく、なかでも3〜16倍がより好ましい。
【0031】
また、逐次二軸延伸の場合、MDの延伸倍率は1.2〜5倍、なかでも1.5〜4倍が好ましく、TDの延伸倍率は1.2〜5倍、なかでも1.5〜3倍が好ましい。同時二軸延伸の場合、各方向の延伸倍率は1.5〜5倍、好ましくは2〜4倍である。
【0032】
本発明で用いる環状多糖類(C)としては、一つ以上のグルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、マルトースやラクトース等の単糖類(化学式C6H12O6)、二糖類(化学式:C5H10O5)を基準単位として環状に結合した構造を有する化合物及び/又はその誘導体が挙げられる。なかでも、単糖類を基準単位として3〜24単位環状に結合した構造を有する化合物及び/又はその誘導体が水溶性に優れ、均一な塗布膜を形成することができることから、好ましい。
【0033】
環状多糖類(C)の具体例としては、グルコース6単位がα−1,4結合により環状に結合した構造を形成しているα−サイクロデキストリン、グルコース7単位がα−1,4結合により環状に結合した構造を形成しているβ−サイクロデキストリン、グルコース8単位がα−1,4結合により環状に結合した構造を形成しているγ−サイクロデキストリン、グルコース7単位がα−1,6結合により環状に結合した構造を形成しているサイクロイソマルトヘプタオース、グルコース8単位がα−1,6結合により環状に結合した構造を形成しているサイクロイソマルトオクタオース、グルコース9単位がα−1,6結合により環状に結合した構造を形成しているサイクロイソマルトヘプタオース、グルコース17〜24単位がβ−1,2結合により環状に結合した構造を形成しているシクロソフォラオース、グルコース3〜4単位がβ−1,6結合により環状に結合した構造を形成しているサイクロゲンチオオリゴ糖、ラムノース6単位が環状に結合した構造を形成しているサイクロアワオドリン、マンノース6単位が環状に結合した構造を形成しているサイクロマンノヘキサオース、ラクトース3〜5単位が環状構造を形成している環状ラクトオリゴ糖、および、これらの誘導体等が挙げられる。
【0034】
前記誘導体としては、前記環状多糖類にジメチル基、トリメチル基、ジエチル基等を付与したアルキル化環状多糖類、トリアセチル基、トリプオニル基、トリブチリル基等を付与したアシル化環状多糖類、ヒドロキシプロピル基等を付与したヒドロキシアルキル化環状多糖類、マルトースを分岐鎖として付与したマルトシル環状多糖類等が挙げられる。
【0035】
本発明で用いる環状多糖類(C)としては、安定した塗布膜が形成され、塗布膜と基材との密着性が良く、非イオン系界面活性剤の熱板への転写防止効果に優れることから、なかでもグルコースがα−1,4結合により環状に結合した構造を形成しているサイクロデキストリン及び/又はその誘導体がより好ましい。すなわち、本発明で用いる環状多糖類(C)としては、α−サイクロデキストリン、β−サイクロデキストリン、γ−サイクロデキストリン、これらサイクロデキストリンの誘導体であるジメチルサイクロデキストリン、トリメチルサイクロデキストリン、ジエチルサイクロデキストリン等のアルキル化サイクロデキストリン、トリアセチルサイクロデキストリン、トリプロピオニルサイクロデキストリン、トリブチリルサイクロデキストリン等のアシル化サイクロデキストリン、ヒドロキシプロピルサイクロデキストリン等のヒドロキシアルキル化サイクロデキストリン、マルト−スを分岐鎖として導入したマルトシルサイクロデキストリン等がより好ましい。
【0036】
本発明で用いる非イオン系界面活性剤(D)は、二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シートに主に防曇性を付与することを目的として塗布する。従って、非イオン系界面活性剤(D)としては、HLB値(親水性−親油性バランス)が10〜18のものが好ましく、単独でも、2種以上混合したものでもよい。非イオン系界面活性剤(D)の例としては、ソルビタン酸脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン誘導体の単独や混合物が挙げられる。
【0037】
ここで、HLB値は界面活性剤の親水性−親油性のバランスを示す数値であり、下記の式1
HLB=20×(Mw/M)… 式1
Mw:親水基の重量
M :界面活性剤の分子量
で表される。この値が高いほど親水性が強く、逆にこの値が低いほど親油性が強くなる。防曇性と基材シートとの密着性に優れ、塗布面に水滴が付着した際に基材シートからの流れ落ちが少なく、防曇性能の持続性に優れるシートが得られることから、非イオン系界面活性剤(D)としてはHLB値が10〜18のものが好ましく、HLB値が12〜18のものがより好ましい。非イオン系界面活性剤(D)としては、なかでも防曇効果と防曇効果持続性に優れるシートが得られることから、ショ糖脂肪酸エステルを主体成分として50重量%以上含有するものが好ましく、なかでも80重量%以上含有するものが特に好ましい。
【0038】
ショ糖脂肪酸エステルは、ショ糖と脂肪酸の低級アルコールエステルとをエステル交換して得られるものが挙げられ、具体的には、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ラウリン酸エステル、ショ糖オレイン酸エステル、および、これらの混合物等が挙げられる。また、ショ糖脂肪酸エステルには、モノエステル、ジエステルおよびトリエステルが存在するが、防曇性が良好となることから、ショ糖脂肪酸モノエステルの含有率が50重量%以上で、HLB値が12〜18であるものがより好ましい。
【0039】
本発明の二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シートの少なくとも片面の塗膜中に含有される環状多糖類(C)の乾燥固形分塗布量としては、熱板汚れ防止効果に優れ、塗布汚れがないシートが得られることから、0.3〜400mg/m2が好ましく、0.5〜60mg/m2がより好ましい。
【0040】
一方、本発明の二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シートの少なくとも片面の塗膜中に環状多糖類(C)と共に含有される非イオン系界面活性剤(D)の乾燥固形分塗布量としては、防曇性に優れ、塗布汚れがないシートが得られることから、3〜900mg/m2が好ましく、5〜200mg/m2がより好ましい。
【0041】
ここで、乾燥固形分塗布量とは、フーリエ変換式赤外分光光度計による分析法(多重内部反射法)[FTIR分析法(ATR法)]によって定量することが可能であり、本発明の二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シートの少なくとも片面に塗膜中に含有される環状多糖類(C)及び非イオン系界面活性剤(D)のそれぞれの塗布量は、予め作製した検量線を用いて測定することができる。
【0042】
前記塗膜中の環状多糖類(C)と非イオン系界面活性剤(D)の合計に対する環状多糖類(C)の割合は、熱板汚れ防止効果と防曇性に優れ、塗布汚れがないシートが得られることから、環状多糖類(C)と非イオン系界面活性剤(D)とを合計した総乾燥固形分塗布量100重量%に対し1.0〜40重量%であることが好ましく、5〜33重量%であることがより好ましい。
【0043】
本発明の二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シートの少なくとも片面に有する前記塗膜は、必要に応じて、静電気の抑制と成形品を型抜きする際に発生する切粉の付着を防止する目的で陽イオン系、陰イオン系の界面活性剤を含有していても良く、また、防曇性を阻害しない範囲であれば成形品に剥離性を付与する目的でシリコーン等の剥離剤を含有していても良い。
【0044】
前記塗膜は、本発明の二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シートの少なくとも片面にあれば良く、もう一方の面には型からの離型性と、成形品同士の剥離を改善する為、剥離剤を塗布することが好ましい。剥離剤としてはシリコーン系剥離剤、フッ素系剥離剤、レシチン等を用いた植物油脂系離型剤等を使用することができる。なかでも、剥離性とシートへの塗布性に優れ、透明性に優れるシートが得られることから、シリコーン系剥離剤を塗布することが好ましい。塗布型シリコーン系剥離剤としては、シリコーンオイルとシリコーンエマルジョンがあるが、剥離性に優れることからシリコーンエマルジョンが特に好ましい。
【0045】
シリコーンエマルジョンの成分としては、シリコーンオイルとしてポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン等が挙げられる。また、前記シリコーンエマルジョンに用いる乳化剤としては、環境ホルモンに指定されているノニルフェノールを含有しない乳化剤が好ましい。
【0046】
本発明の二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シートにおいては、環状多糖類(C)と非イオン系界面活性剤(D)を含有する塗膜の形成方法は限定されないが、環状多糖類(C)と非イオン系界面活性剤(D)を溶媒に溶解した塗布液を二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シートに塗布した後、乾燥する方法が好ましい。この塗布液の塗布方法は、特に限定されないが、スプレーコーター法、ロールコーター法、グラビアロールコーター法、ナイフコーター法、ローターダンプニングコーター法、エアーナイフコーター法、アプリケーター法等が挙げられる。
【0047】
前記塗布液の作製方法としては、特に限定されるものではなく、環状多糖類(C)と非イオン系界面活性剤(D)を溶媒に溶解させれば良いが、均一に分散させる為には攪拌羽等の攪拌装置で攪拌下に溶解させることが好ましい。この塗布液に用いる溶媒としては、特に限定されるものではないが、溶解性の観点から、水が好ましい。
【0048】
前記塗布液の濃度は、塗布方法により適宜調整することが好ましく、前記したような塗布方法では、環状多糖類(C)と非イオン系界面活性剤(D)との総固形分濃度が0.1〜40重量%となる割合で溶媒中に溶解していることが、塗布が容易で塗布ムラによるシートの外観不良が発生しにくいことから好ましく、0.2〜10重量%となる割合で溶解していることがより好ましい。
【0049】
【実施例】
以下に実施例と比較例を挙げて、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0050】
実施例1
スチレン90重量%、メタクリル酸10重量%なる割合で共重合したスチレン−メタクリル酸共重合体(10%SMAA)〔重量平均分子量(Mw)=30万、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)=2.5、ビカット軟化温度120℃〕に、平均粒子径4.5μm、アスペクト比1〜1.1の球状酸化珪素(B−1)(富士シリシア化学株式会社製)を含有率が160ppmとなる割合で溶融下に混練混合した樹脂組成物をTダイから押出し、得られたシート状組成物を直ちにロール速度差を用いて縦方向に2.0倍延伸し、次いでテンターを用いて150℃雰囲気中で横方向に2.5倍延伸して、厚さ300μmの二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シート(I−1)を得た。
【0051】
次に、得られた二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シート(I−1)の片面に、α−サイクロデキストリン(C−1)とショ糖ラウリン酸エステル(D−1)を水に溶解させた塗布液を、α−サイクロデキストリン(C−1)の乾燥固形分重量が5mg/m2で、かつ、ショ糖ラウリン酸エステル(D−1)の乾燥固形分重量が20mg/m2となるように塗布し、反対の面にはシリコーンエマルジョンをシリコーンの乾燥固形分重量25mg/m2となるように塗布し、乾燥して、本発明の二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シートを得た。
【0052】
得られた本発明の二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シートを用い、下記の熱板圧空成形条件で成形品(蓋材)を連続成形し、初期成形品の透明性、熱板汚れ及び防曇性を下記のように評価した。結果を第1表に示す。
【0053】
・[熱板圧空成形条件]
熱板温度160℃
成形サイクル8秒
加熱時間3.0秒 、加熱圧力0.1MPa
成形時間3.0秒 、成形圧力0.3MPa
金型[蓋材成形品用金型];
縦×横×深さ=200×150×25mm(角部;3R)
絞り比(絞り深さ/開口部最短長さ)=0.17
【0054】
・[初期成形品の透明性評価]
連続圧空成形(1ショット20個取り)を開始後、50ショット目の成形品をサンプリングし、成形品天面部のヘイズの平均値を下記の判定基準により評価した。
【0055】
・[熱板汚れ評価]
連続圧空成形(1ショット20個取り)を開始後、1ショット20個取りの成形品の内、成形品2個の天面部のヘイズ値が2.0%以上となるまでの成形ショット数により、下記の判定基準で評価した。
【0056】
・[成形品の防曇性評価]
成形品と勘合するポリプロピレン製容器を底材とし、この底材に25℃の水道水を50ml入れ、その上部を連続圧空成形(1ショット20個取り)を開始後、51ショット目の成形品で蓋をして四方をテープで密閉したサンプルを5℃の冷蔵ショーケース(サンデン株式会社製)内に30分間放置した後、成形品の天面に付着した水滴の程度を肉眼で観察し、下記の評価基準によって評価した。
【0057】
実施例2
実施例1と同様にして二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シート(I−1)を得、次いで、得られた二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シート(I−1)の片面に、γ−サイクロデキストリン(C−2)とショ糖ラウリン酸エステル(D−1)を水に溶解させた塗布液を、γ−サイクロデキストリン(C−2)の乾燥固形分重量が7mg/m2で、かつ、ショ糖ラウリン酸エステル(D−1)の乾燥固形分重量が35mg/m2となるように塗布した以外は実施例1と同様にして本発明の二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シートを得た。
【0058】
得られた本発明の二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シートを用いた以外は実施例1と同様に初期成形品の透明性、熱板汚れ及び防曇性を評価した。結果を第1表に示す。
【0059】
実施例3
球状酸化珪素(B−1)を含有率が200ppmとなる割合で混合した以外は実施例1と同様にして二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シート(I−3)を得、次いで、得られた二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シート(I−3)の片面に、α−サイクロデキストリン(C−1)とショ糖ラウリン酸エステル(D−1)を水に溶解させた塗布液を、α−サイクロデキストリン(C−1)の乾燥固形分重量が7mg/m2で、かつ、ショ糖ラウリン酸エステル(D−1)の乾燥固形分重量が35mg/m2となるように塗布した以外は実施例1と同様にして本発明の二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シートを得た。
【0060】
得られた本発明の二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シートを用いた以外は実施例1と同様に初期成形品の透明性、熱板汚れ及び防曇性を評価した。結果を第1表に示す。
【0061】
比較例1
実施例1と同様にして二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シート(I−1)を得、次いで、得られた二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シート(I−1)の片面に、ショ糖ラウリン酸エステル(D−1)を水に溶解させた塗布液〔α−サイクロデキストリン(C−1)等の環状多糖類(C)を含有しない。以下、同様。〕を、ショ糖ラウリン酸エステル(D−1)の乾燥固形分重量が20mg/m2となるように塗布した以外は実施例1と同様にして比較用の二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シートを得た。
【0062】
得られた比較用の二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シートを用いた以外は実施例1と同様に初期成形品の透明性、熱板汚れ及び防曇性を評価した。結果を第2表に示す。
【0063】
比較例2
球状酸化珪素(B−1)の代わりに、粉砕法で得られた平均粒子径3μmの不定形酸化珪素(B−2)を用いた以外は実施例1と同様にして二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シート(I−2′)を得、次いで、得られた二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シート(I−2′)の片面に、ショ糖ラウリン酸エステル(D−1)を水に溶解させた塗布液を、ショ糖ラウリン酸エステル(D−1)の乾燥固形分重量が20mg/m2となるように塗布した以外は実施例1と同様にして比較用の二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シートを得た。
【0064】
得られた比較用の二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シートを用いた以外は実施例1と同様に初期成形品の透明性、熱板汚れ及び防曇性を評価した。結果を第2表に示す。
【0065】
比較例3
球状酸化珪素(B−1)の代わりに、粉砕法で得られた平均粒子径5.5μmの不定形酸化珪素(B−3)を用いた以外は実施例1と同様にして二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シート(I−3′)を得、次いで、得られた二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シート(I−3′)の片面に、ショ糖ラウリン酸エステル(D−1)を水に溶解させた塗布液を、ショ糖ラウリン酸エステル(D−1)の乾燥固形分重量が35mg/m2となるように塗布した以外は実施例1と同様にして比較用の二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シートを得た。
【0066】
得られた比較用の二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シートを用いた以外は実施例1と同様に初期成形品の透明性、熱板汚れ及び防曇性を評価した。結果を第2表に示す。
【0067】
【0068】
【0069】
【発明の効果】
本発明の二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シートは、熱板圧空成形する際の熱板への界面活性剤の付着による熱板汚れが低減され、透明性等の外観に優れた成形品を長時間連続生産できるという利点がある。
本発明の成形品は、透明性等の外観が良好で、防曇性にも優れており、弁当容器、惣菜容器等の食品包装容器として、特に有用である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、防曇性を有し、かつ、熱板圧空成形時に防曇剤等の界面活性剤がシートから熱板へ移行することにより発生する熱板汚れが少ない二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シート、及び、この二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シートを成形してなる成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性樹脂を用いて押出成膜された二軸延伸樹脂シートは、真空成形機、熱板圧空成形機、真空圧空成形機等を用いて加熱成形され、これにより得られた二次成形品は食品包装容器やその他物品の包装用に多く用いられている。これらの二軸延伸樹脂シートの中で、ポリスチレン(PS樹脂)、ポリスチレン−メタクリル酸共重合樹脂(SMAA樹脂)等に代表される芳香族ビニル系樹脂からなる透明な二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シートは、その透明性から弁当容器や惣菜容器として広く用いられている。この場合、二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シートは、少なくとも成形品の内容物側となる片面に、不均一に付着した水滴により内容物が見えにくくなるのを防ぐ目的で、一般的に防曇剤として脂肪酸エステル化合物等の非イオン系界面活性剤が塗布されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
しかし、前記二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シートを、熱板圧空成形機を用いて加熱成形する場合には、防曇剤を塗布したシート面を加熱板と接触させて加熱する際に防曇剤や帯電防止剤として塗布された界面活性剤が熱板に付着、堆積することにより熱板汚れが発生する。この熱板汚れが発生すると、付着物による熱板表面の物理的な凹凸と熱伝達率の部分的低下に伴うシートの加熱ムラが生じる為、成形品の透明性等の外観が低下するし、加熱成形を継続すると経時的に熱板汚れが増大して外観の低下が大きくなるという問題があった。
【0004】
この熱板汚れは、高温で成形する程、防曇剤、帯電防止剤等の界面活性剤は熱板に付着しやすくなる為、耐熱性が要求される成形品の成形に用いるSMAA樹脂等からなる二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シートを熱板圧空成形する場合に、最も熱板汚れが発生しやすくなる。
【0005】
その為、頻繁に熱板付着物を除去する清掃作業を行う必要があり、生産効率を低下せざるを得なかった。
【0006】
また、界面活性剤等の熱板への付着、堆積による熱板汚れの発生を抑制した二軸延伸樹脂シートとしては、スチレン系樹脂に球状無機系粒状体を分散させた二軸延伸スチレン系樹脂シートが、熱板圧空成形機の熱板への塗布剤の転写を抑制するものとして知られているが、熱板への界面活性剤の転写の抑制が十分ではなく、実用的には不十分であった(例えば、特許文献2参照。)。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−145983号公報(第2−3頁)
【特許文献2】
特開2000−309645号公報(第2−4頁)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、熱板圧空成形する際の熱板への界面活性剤の付着による熱板汚れを低減し、成形品の透明性等の外観の低下を防ぐことができ、優れた成形品を長時間連続生産できる防曇性の二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シート、及び、この二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シートを成形してなる防曇性に優れ、外観の良好な成形品を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決する為の手段】
本発明者らは、前記課題を解決する為、検討を行った結果、以下の知見(a)および(b)を見出し、本発明を完成するに至った。
(a)界面活性剤等の熱板への付着、堆積による熱板汚れの発生を抑制するには、二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シート中に球状ブロッキング防止剤(B)を含有させると共に、前記二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シート表面の防曇性塗膜として環状多糖類(C)と非イオン系界面活性剤(D)を含有する塗膜を設けることが特に効果的であること。
(b)球状ブロッキング防止剤(B)を含有する共に、表面に環状多糖類(C)と非イオン系界面活性剤(D)を含有する塗膜が設けられた二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シートを成形してなる成形品は、非イオン系界面活性剤(D)の剥落による防曇性の低下がなく、防曇性に優れること。
【0010】
即ち、本発明は、芳香族ビニル系樹脂(A)と球状ブロッキング防止剤(B)を含有してなる二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シートであって、かつ、少なくとも片面に環状多糖類(C)と非イオン系界面活性剤(D)を含有する塗膜を有することを特徴とする二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シートを提供するものである。
【0011】
また、本発明は、前記二軸延伸スチレン系樹脂シートを成形してなることを特徴とする成形品を提供するものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明で用いる芳香族ビニル系樹脂(A)としては、例えば、芳香族ビニル系単量体の単独重合体、芳香族ビニル系単量体とこれと共重合可能な他の単量体との共重合体等が挙げられる。
【0013】
前記芳香族ビニル系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、O−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、t−ブチルスチレン等が挙げられ、特に限定されないが、なかでも、スチレン、α−メチルスチレンがシートの透明性、加工性の面から好ましく、特にスチレンが好ましい。
【0014】
前記芳香族ビニル系単量体と共重合可能な他の単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、ブタジエン、イソプレン等が挙げられ、特に限定されないが、なかでも(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸が好ましく、メタクリル酸が特に好ましい。
【0015】
前記芳香族ビニル系樹脂(A)の具体例としては、ポリスチレン、スチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体、スチレン−無水マレイン酸系共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸メチル系共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸ブチル系共重合体、スチレン−ブタジエン系共重合体、スチレン−ブタジエン−(メタ)アクリル酸系共重合体、スチレン−ブタジエン−(メタ)アクリル酸メチル系共重合体、スチレン−ブタジエン−(メタ)アクリル酸ブチル系共重合体、スチレン−ブタジエン−(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル系共重合体、スチレン−アクリロニトリル系共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル系共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレン系共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン系共重合体、スチレン−イソプレン−ブタジエン−スチレン系共重合体、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン系共重合体等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で用いても良いし、2種以上混合して用いることもできる。
【0016】
これら芳香族ビニル系樹脂(A)のなかでは、耐熱性が高く、高温で成形する必要があるため熱板汚れの発生しやすいが、熱板汚れの発生を抑制するという本発明の効果が発揮されて熱板汚れの発生を十分に効果的に防止できることから、ビカット軟化温度(JIS K−7206に規定される試験荷重50N、昇温速度50℃/時の条件でのビカット軟化温度)が100℃以上の芳香族ビニル系樹脂が好ましく、105℃以上の芳香族ビニル系樹脂が特に好ましい。
【0017】
前記ビカット軟化温度が105℃以上の芳香族ビニル系樹脂としては、スチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体、スチレン−無水マレイン酸系共重合体が挙げられ、なかでもスチレン−メタクリル酸系共重合体が好ましい。
【0018】
前記スチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体もしくはスチレン−無水マレイン酸系共重合体中における(メタ)アクリル酸もしくは無水マレイン酸の含有率は、特に制限されるものではないが、耐熱性、高温耐油性、押出延伸加工性、圧空成形加工性に優れることから1〜30重量%の範囲が好ましく、2〜20重量%の範囲が特に好ましい。
【0019】
本発明で用いる球状ブロッキング防止剤(B)としては、有機系、無機系は特に限定されるものではなく、例えば架橋高分子ビーズ、球状酸化珪素、ガラスビーズ、アルミノ珪酸塩、金属酸化物等が挙げられ、なかでもシート表面改質効果、透明性等の外観に優れることから、架橋高分子ビーズ、球状酸化珪素が好ましい。架橋高分子ビーズとしては、例えばスチレン系架橋ビーズ、架橋メタクリル樹脂ビーズ、架橋メタクリル酸エステル−スチレン共重合樹脂(MS樹脂)ビーズ等が挙げられる。
【0020】
更に、ビカット軟化温度105℃以上の耐熱性の高い芳香族ビニル系樹脂、例えばスチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体、スチレン−無水マレイン酸系共重合体等に添加する球状ブロッキング防止剤としては、熱安定性に優れることから、無機系の球状酸化珪素を用いることが特に好ましい。
【0021】
球状ブロッキング防止剤(B)の粒子径は、平均粒子径1〜20μmであることが好ましい。即ち、1μm以上でシート及び成形品の剥離性に優れ、20μm以下でシート及び成形品の透明性が良好となる。これらの性能バランスに優れることから、2〜10μmの範囲がより好ましい。なお、ここでの平均粒子径は、レーザー回折法により測定した50%体積平均粒子径である。
【0022】
次に、球状ブロッキング防止剤(B)の粒度分布としては、粒度分布幅が2.5以下であることが、シート表面の突起の均一性が良好となる点から好ましい。ここで、粒度分布とは前記レーザー回折法により測定される90%体積平均粒子径と10%体積平均粒子径との比率、即ち、(90%体積平均粒子径)/(10%体積平均粒子径)で示される値である。
【0023】
球状ブロッキング防止剤(B)でいう「球状」とは、真球状はもちろん楕円球状、いびつな球状(ポテト状)等を含む幅広い概念を言うが、真球に近いほどシート表面に均一な突起を生じさせる為、長径と短径との比から算出されるアスペクト比が1〜1.2であることが好ましい。
【0024】
また、芳香族ビニル系樹脂(A)中への球状ブロッキング防止剤(B)の添加量は30〜2000ppmなる割合で添加することが好ましい。即ち、添加量30ppm以上でシート及びその成形品の剥離性が良好となり、添加量2000ppm以下でシート及び成形品の透明性が良好となる。更に好ましくは50〜500ppmであり、特に好ましくは70〜300ppmである。なお、本発明の二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シートが多層シートである場合は、表層部における球状ブロッキング防止剤(B)の添加量が30〜2000ppmであれば良い。
【0025】
本発明の二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シートは、更に必要により、本発明の効果を阻害しない範囲で酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、加工助剤等のような球状ブロッキング防止剤(B)以外の添加剤を添加しても良い。
【0026】
芳香族ビニル系樹脂(A)、球状ブロッキング防止剤(B)及び球状ブロッキング防止剤(B)以外の添加剤等は、予め、二軸押出機やバンバリーミキサー等を用いてコンパウンド化して使用しても良く、タンブラーを用いたドライブレンド法で混合後、押出しても良く、更に、シート押出成膜時に同時供給しても良い。
【0027】
また、本発明の二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シートは多層シートでも良く、シートの層構成及び層比率は特に限定されない。例えば、2種3層の多層シートでビカット軟化温度が高い芳香族ビニル系樹脂と球状ブロッキング防止剤(B)を含有する表層と、ビカット軟化温度が比較的低い芳香族ビニル系樹脂の単独又は混合物を含有する中心層とからなる多層シートでもよい。
【0028】
前記ビカット軟化温度が高い芳香族ビニル系樹脂としては、例えばスチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体、スチレン−無水マレイン酸系共重合体が挙げられ、なかでもビカット軟化温度が105℃以上の樹脂が好ましい。また、前記ビカット軟化温度が比較的低い芳香族ビニル系樹脂としては、芳香族ビニル系樹脂(A)として例示した樹脂であって、スチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体及びスチレン−無水マレイン酸系共重合体を除く樹脂が挙げられ、なかでもビカット軟化温度が105℃未満の芳香族ビニル系樹脂が好ましい。
【0029】
前記2種3層の多層シートの好ましい例としては、スチレン−メタクリル酸系共重合体と球状ブロッキング防止剤(B)からなる表層と、ポリスチレン単独又はポリスチレンとスチレン−ブタジエン共重合体の混合物からなる中心層とからなる多層シートが挙げられる。ここで用いるスチレン−メタクリル酸系共重合体としては、中心層との層間接着が良好なことからメタクリル酸由来成分の含有率が0.5〜4.0重量%の共重合体がより好ましい。
【0030】
本発明の二軸延伸芳香族ブニル系樹脂シートの製造方法は、特に制限されるものではないが、ダイスより押出された未延伸積層シートを、ロール間速度差及びテンターを利用した逐次二軸延伸、又はテンターを利用した同時二軸延伸を行う方法等が挙げられる。延伸倍率は延伸温度や目的により異なるが、面衝撃強度が高く、熱板圧空成形時の配向戻りのムラが少なく成形性に優れるシートが得られることから、流れ方向(MD)と、流れと垂直方向(TD)の延伸倍率との積である延伸面倍率で1.4〜25倍であることが好ましく、なかでも3〜16倍がより好ましい。
【0031】
また、逐次二軸延伸の場合、MDの延伸倍率は1.2〜5倍、なかでも1.5〜4倍が好ましく、TDの延伸倍率は1.2〜5倍、なかでも1.5〜3倍が好ましい。同時二軸延伸の場合、各方向の延伸倍率は1.5〜5倍、好ましくは2〜4倍である。
【0032】
本発明で用いる環状多糖類(C)としては、一つ以上のグルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、マルトースやラクトース等の単糖類(化学式C6H12O6)、二糖類(化学式:C5H10O5)を基準単位として環状に結合した構造を有する化合物及び/又はその誘導体が挙げられる。なかでも、単糖類を基準単位として3〜24単位環状に結合した構造を有する化合物及び/又はその誘導体が水溶性に優れ、均一な塗布膜を形成することができることから、好ましい。
【0033】
環状多糖類(C)の具体例としては、グルコース6単位がα−1,4結合により環状に結合した構造を形成しているα−サイクロデキストリン、グルコース7単位がα−1,4結合により環状に結合した構造を形成しているβ−サイクロデキストリン、グルコース8単位がα−1,4結合により環状に結合した構造を形成しているγ−サイクロデキストリン、グルコース7単位がα−1,6結合により環状に結合した構造を形成しているサイクロイソマルトヘプタオース、グルコース8単位がα−1,6結合により環状に結合した構造を形成しているサイクロイソマルトオクタオース、グルコース9単位がα−1,6結合により環状に結合した構造を形成しているサイクロイソマルトヘプタオース、グルコース17〜24単位がβ−1,2結合により環状に結合した構造を形成しているシクロソフォラオース、グルコース3〜4単位がβ−1,6結合により環状に結合した構造を形成しているサイクロゲンチオオリゴ糖、ラムノース6単位が環状に結合した構造を形成しているサイクロアワオドリン、マンノース6単位が環状に結合した構造を形成しているサイクロマンノヘキサオース、ラクトース3〜5単位が環状構造を形成している環状ラクトオリゴ糖、および、これらの誘導体等が挙げられる。
【0034】
前記誘導体としては、前記環状多糖類にジメチル基、トリメチル基、ジエチル基等を付与したアルキル化環状多糖類、トリアセチル基、トリプオニル基、トリブチリル基等を付与したアシル化環状多糖類、ヒドロキシプロピル基等を付与したヒドロキシアルキル化環状多糖類、マルトースを分岐鎖として付与したマルトシル環状多糖類等が挙げられる。
【0035】
本発明で用いる環状多糖類(C)としては、安定した塗布膜が形成され、塗布膜と基材との密着性が良く、非イオン系界面活性剤の熱板への転写防止効果に優れることから、なかでもグルコースがα−1,4結合により環状に結合した構造を形成しているサイクロデキストリン及び/又はその誘導体がより好ましい。すなわち、本発明で用いる環状多糖類(C)としては、α−サイクロデキストリン、β−サイクロデキストリン、γ−サイクロデキストリン、これらサイクロデキストリンの誘導体であるジメチルサイクロデキストリン、トリメチルサイクロデキストリン、ジエチルサイクロデキストリン等のアルキル化サイクロデキストリン、トリアセチルサイクロデキストリン、トリプロピオニルサイクロデキストリン、トリブチリルサイクロデキストリン等のアシル化サイクロデキストリン、ヒドロキシプロピルサイクロデキストリン等のヒドロキシアルキル化サイクロデキストリン、マルト−スを分岐鎖として導入したマルトシルサイクロデキストリン等がより好ましい。
【0036】
本発明で用いる非イオン系界面活性剤(D)は、二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シートに主に防曇性を付与することを目的として塗布する。従って、非イオン系界面活性剤(D)としては、HLB値(親水性−親油性バランス)が10〜18のものが好ましく、単独でも、2種以上混合したものでもよい。非イオン系界面活性剤(D)の例としては、ソルビタン酸脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン誘導体の単独や混合物が挙げられる。
【0037】
ここで、HLB値は界面活性剤の親水性−親油性のバランスを示す数値であり、下記の式1
HLB=20×(Mw/M)… 式1
Mw:親水基の重量
M :界面活性剤の分子量
で表される。この値が高いほど親水性が強く、逆にこの値が低いほど親油性が強くなる。防曇性と基材シートとの密着性に優れ、塗布面に水滴が付着した際に基材シートからの流れ落ちが少なく、防曇性能の持続性に優れるシートが得られることから、非イオン系界面活性剤(D)としてはHLB値が10〜18のものが好ましく、HLB値が12〜18のものがより好ましい。非イオン系界面活性剤(D)としては、なかでも防曇効果と防曇効果持続性に優れるシートが得られることから、ショ糖脂肪酸エステルを主体成分として50重量%以上含有するものが好ましく、なかでも80重量%以上含有するものが特に好ましい。
【0038】
ショ糖脂肪酸エステルは、ショ糖と脂肪酸の低級アルコールエステルとをエステル交換して得られるものが挙げられ、具体的には、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ラウリン酸エステル、ショ糖オレイン酸エステル、および、これらの混合物等が挙げられる。また、ショ糖脂肪酸エステルには、モノエステル、ジエステルおよびトリエステルが存在するが、防曇性が良好となることから、ショ糖脂肪酸モノエステルの含有率が50重量%以上で、HLB値が12〜18であるものがより好ましい。
【0039】
本発明の二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シートの少なくとも片面の塗膜中に含有される環状多糖類(C)の乾燥固形分塗布量としては、熱板汚れ防止効果に優れ、塗布汚れがないシートが得られることから、0.3〜400mg/m2が好ましく、0.5〜60mg/m2がより好ましい。
【0040】
一方、本発明の二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シートの少なくとも片面の塗膜中に環状多糖類(C)と共に含有される非イオン系界面活性剤(D)の乾燥固形分塗布量としては、防曇性に優れ、塗布汚れがないシートが得られることから、3〜900mg/m2が好ましく、5〜200mg/m2がより好ましい。
【0041】
ここで、乾燥固形分塗布量とは、フーリエ変換式赤外分光光度計による分析法(多重内部反射法)[FTIR分析法(ATR法)]によって定量することが可能であり、本発明の二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シートの少なくとも片面に塗膜中に含有される環状多糖類(C)及び非イオン系界面活性剤(D)のそれぞれの塗布量は、予め作製した検量線を用いて測定することができる。
【0042】
前記塗膜中の環状多糖類(C)と非イオン系界面活性剤(D)の合計に対する環状多糖類(C)の割合は、熱板汚れ防止効果と防曇性に優れ、塗布汚れがないシートが得られることから、環状多糖類(C)と非イオン系界面活性剤(D)とを合計した総乾燥固形分塗布量100重量%に対し1.0〜40重量%であることが好ましく、5〜33重量%であることがより好ましい。
【0043】
本発明の二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シートの少なくとも片面に有する前記塗膜は、必要に応じて、静電気の抑制と成形品を型抜きする際に発生する切粉の付着を防止する目的で陽イオン系、陰イオン系の界面活性剤を含有していても良く、また、防曇性を阻害しない範囲であれば成形品に剥離性を付与する目的でシリコーン等の剥離剤を含有していても良い。
【0044】
前記塗膜は、本発明の二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シートの少なくとも片面にあれば良く、もう一方の面には型からの離型性と、成形品同士の剥離を改善する為、剥離剤を塗布することが好ましい。剥離剤としてはシリコーン系剥離剤、フッ素系剥離剤、レシチン等を用いた植物油脂系離型剤等を使用することができる。なかでも、剥離性とシートへの塗布性に優れ、透明性に優れるシートが得られることから、シリコーン系剥離剤を塗布することが好ましい。塗布型シリコーン系剥離剤としては、シリコーンオイルとシリコーンエマルジョンがあるが、剥離性に優れることからシリコーンエマルジョンが特に好ましい。
【0045】
シリコーンエマルジョンの成分としては、シリコーンオイルとしてポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン等が挙げられる。また、前記シリコーンエマルジョンに用いる乳化剤としては、環境ホルモンに指定されているノニルフェノールを含有しない乳化剤が好ましい。
【0046】
本発明の二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シートにおいては、環状多糖類(C)と非イオン系界面活性剤(D)を含有する塗膜の形成方法は限定されないが、環状多糖類(C)と非イオン系界面活性剤(D)を溶媒に溶解した塗布液を二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シートに塗布した後、乾燥する方法が好ましい。この塗布液の塗布方法は、特に限定されないが、スプレーコーター法、ロールコーター法、グラビアロールコーター法、ナイフコーター法、ローターダンプニングコーター法、エアーナイフコーター法、アプリケーター法等が挙げられる。
【0047】
前記塗布液の作製方法としては、特に限定されるものではなく、環状多糖類(C)と非イオン系界面活性剤(D)を溶媒に溶解させれば良いが、均一に分散させる為には攪拌羽等の攪拌装置で攪拌下に溶解させることが好ましい。この塗布液に用いる溶媒としては、特に限定されるものではないが、溶解性の観点から、水が好ましい。
【0048】
前記塗布液の濃度は、塗布方法により適宜調整することが好ましく、前記したような塗布方法では、環状多糖類(C)と非イオン系界面活性剤(D)との総固形分濃度が0.1〜40重量%となる割合で溶媒中に溶解していることが、塗布が容易で塗布ムラによるシートの外観不良が発生しにくいことから好ましく、0.2〜10重量%となる割合で溶解していることがより好ましい。
【0049】
【実施例】
以下に実施例と比較例を挙げて、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0050】
実施例1
スチレン90重量%、メタクリル酸10重量%なる割合で共重合したスチレン−メタクリル酸共重合体(10%SMAA)〔重量平均分子量(Mw)=30万、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)=2.5、ビカット軟化温度120℃〕に、平均粒子径4.5μm、アスペクト比1〜1.1の球状酸化珪素(B−1)(富士シリシア化学株式会社製)を含有率が160ppmとなる割合で溶融下に混練混合した樹脂組成物をTダイから押出し、得られたシート状組成物を直ちにロール速度差を用いて縦方向に2.0倍延伸し、次いでテンターを用いて150℃雰囲気中で横方向に2.5倍延伸して、厚さ300μmの二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シート(I−1)を得た。
【0051】
次に、得られた二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シート(I−1)の片面に、α−サイクロデキストリン(C−1)とショ糖ラウリン酸エステル(D−1)を水に溶解させた塗布液を、α−サイクロデキストリン(C−1)の乾燥固形分重量が5mg/m2で、かつ、ショ糖ラウリン酸エステル(D−1)の乾燥固形分重量が20mg/m2となるように塗布し、反対の面にはシリコーンエマルジョンをシリコーンの乾燥固形分重量25mg/m2となるように塗布し、乾燥して、本発明の二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シートを得た。
【0052】
得られた本発明の二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シートを用い、下記の熱板圧空成形条件で成形品(蓋材)を連続成形し、初期成形品の透明性、熱板汚れ及び防曇性を下記のように評価した。結果を第1表に示す。
【0053】
・[熱板圧空成形条件]
熱板温度160℃
成形サイクル8秒
加熱時間3.0秒 、加熱圧力0.1MPa
成形時間3.0秒 、成形圧力0.3MPa
金型[蓋材成形品用金型];
縦×横×深さ=200×150×25mm(角部;3R)
絞り比(絞り深さ/開口部最短長さ)=0.17
【0054】
・[初期成形品の透明性評価]
連続圧空成形(1ショット20個取り)を開始後、50ショット目の成形品をサンプリングし、成形品天面部のヘイズの平均値を下記の判定基準により評価した。
【0055】
・[熱板汚れ評価]
連続圧空成形(1ショット20個取り)を開始後、1ショット20個取りの成形品の内、成形品2個の天面部のヘイズ値が2.0%以上となるまでの成形ショット数により、下記の判定基準で評価した。
【0056】
・[成形品の防曇性評価]
成形品と勘合するポリプロピレン製容器を底材とし、この底材に25℃の水道水を50ml入れ、その上部を連続圧空成形(1ショット20個取り)を開始後、51ショット目の成形品で蓋をして四方をテープで密閉したサンプルを5℃の冷蔵ショーケース(サンデン株式会社製)内に30分間放置した後、成形品の天面に付着した水滴の程度を肉眼で観察し、下記の評価基準によって評価した。
【0057】
実施例2
実施例1と同様にして二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シート(I−1)を得、次いで、得られた二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シート(I−1)の片面に、γ−サイクロデキストリン(C−2)とショ糖ラウリン酸エステル(D−1)を水に溶解させた塗布液を、γ−サイクロデキストリン(C−2)の乾燥固形分重量が7mg/m2で、かつ、ショ糖ラウリン酸エステル(D−1)の乾燥固形分重量が35mg/m2となるように塗布した以外は実施例1と同様にして本発明の二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シートを得た。
【0058】
得られた本発明の二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シートを用いた以外は実施例1と同様に初期成形品の透明性、熱板汚れ及び防曇性を評価した。結果を第1表に示す。
【0059】
実施例3
球状酸化珪素(B−1)を含有率が200ppmとなる割合で混合した以外は実施例1と同様にして二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シート(I−3)を得、次いで、得られた二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シート(I−3)の片面に、α−サイクロデキストリン(C−1)とショ糖ラウリン酸エステル(D−1)を水に溶解させた塗布液を、α−サイクロデキストリン(C−1)の乾燥固形分重量が7mg/m2で、かつ、ショ糖ラウリン酸エステル(D−1)の乾燥固形分重量が35mg/m2となるように塗布した以外は実施例1と同様にして本発明の二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シートを得た。
【0060】
得られた本発明の二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シートを用いた以外は実施例1と同様に初期成形品の透明性、熱板汚れ及び防曇性を評価した。結果を第1表に示す。
【0061】
比較例1
実施例1と同様にして二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シート(I−1)を得、次いで、得られた二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シート(I−1)の片面に、ショ糖ラウリン酸エステル(D−1)を水に溶解させた塗布液〔α−サイクロデキストリン(C−1)等の環状多糖類(C)を含有しない。以下、同様。〕を、ショ糖ラウリン酸エステル(D−1)の乾燥固形分重量が20mg/m2となるように塗布した以外は実施例1と同様にして比較用の二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シートを得た。
【0062】
得られた比較用の二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シートを用いた以外は実施例1と同様に初期成形品の透明性、熱板汚れ及び防曇性を評価した。結果を第2表に示す。
【0063】
比較例2
球状酸化珪素(B−1)の代わりに、粉砕法で得られた平均粒子径3μmの不定形酸化珪素(B−2)を用いた以外は実施例1と同様にして二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シート(I−2′)を得、次いで、得られた二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シート(I−2′)の片面に、ショ糖ラウリン酸エステル(D−1)を水に溶解させた塗布液を、ショ糖ラウリン酸エステル(D−1)の乾燥固形分重量が20mg/m2となるように塗布した以外は実施例1と同様にして比較用の二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シートを得た。
【0064】
得られた比較用の二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シートを用いた以外は実施例1と同様に初期成形品の透明性、熱板汚れ及び防曇性を評価した。結果を第2表に示す。
【0065】
比較例3
球状酸化珪素(B−1)の代わりに、粉砕法で得られた平均粒子径5.5μmの不定形酸化珪素(B−3)を用いた以外は実施例1と同様にして二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シート(I−3′)を得、次いで、得られた二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シート(I−3′)の片面に、ショ糖ラウリン酸エステル(D−1)を水に溶解させた塗布液を、ショ糖ラウリン酸エステル(D−1)の乾燥固形分重量が35mg/m2となるように塗布した以外は実施例1と同様にして比較用の二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シートを得た。
【0066】
得られた比較用の二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シートを用いた以外は実施例1と同様に初期成形品の透明性、熱板汚れ及び防曇性を評価した。結果を第2表に示す。
【0067】
【0068】
【0069】
【発明の効果】
本発明の二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シートは、熱板圧空成形する際の熱板への界面活性剤の付着による熱板汚れが低減され、透明性等の外観に優れた成形品を長時間連続生産できるという利点がある。
本発明の成形品は、透明性等の外観が良好で、防曇性にも優れており、弁当容器、惣菜容器等の食品包装容器として、特に有用である。
Claims (12)
- 芳香族ビニル系樹脂(A)と球状ブロッキング防止剤(B)を含有してなる二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シートであって、かつ、少なくとも片面に環状多糖類(C)と非イオン系界面活性剤(D)を含有する塗膜を有することを特徴とする二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シート。
- 芳香族ビニル系樹脂(A)がJIS K−7206に規定されるビカット軟化温度が105℃以上の芳香族ビニル系樹脂である請求項1記載の二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シート。
- 芳香族ビニル系樹脂(A)が芳香族ビニル系単量体と前記芳香族ビニル系単量体以外の酸基含有ビニル系単量体とを反応させて得られる共重合体である請求項1に記載の二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シート。
- 芳香族ビニル系樹脂(A)がスチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体である請求項1に記載の二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シート。
- 球状ブロッキング防止剤(B)が平均粒径1〜20μmの球状酸化珪素であり、かつ、前記球状ブロッキング防止剤(B)含有率が50〜500ppmである請求項1〜4のいずれか1項に記載の二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シート。
- 環状多糖類(C)の固形分塗布量が0.5〜60mg/m2で、かつ、非イオン系界面活性剤(D)の固形分塗布量が5〜200mg/m2である請求項1〜4のいずれか1項に記載の二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シート。
- 環状多糖類(C)が単糖類を基準単位として3〜24単位環状に結合した化合物および/またはその誘導体である請求項1〜4のいずれか1項に記載の二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シート。
- 環状多糖類(C)がサイクロデキストリンおよび/またはその誘導体である請求項1〜4のいずれか1項に記載の二軸延伸スチレン系樹脂シート。
- 非イオン系界面活性剤(D)が脂肪酸エステル化合物である請求項1〜4のいずれか1項に記載の二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シート。
- 非イオン系界面活性剤(D)がショ糖脂肪酸エステルである請求項1〜4のいずれか1項に記載の二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シート。
- 環状多糖類(C)がサイクロデキストリンおよび/またはその誘導体で、その固形分塗布量が0.5〜60mg/m2であり、かつ、非イオン系界面活性剤(D)がショ糖脂肪酸エステルで、その固形分塗布量が5〜200mg/m2である請求項5に記載の二軸延伸芳香族ビニル系樹脂シート。
- 請求項1〜11のいずれか1項に記載の二軸延伸スチレン系樹脂シートを成形してなることを特徴とする成形品。
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-
2002
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