JP3833479B2 - 制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば半導体製造装置において制御対象であるウエハの温度を制御するときに使用されるPID制御(Proportional,Integral and Derivative control)などの制御機能を備えた制御装置に係り、そのウエハの温度を全体に渡って均一に制御することに好適に使用することができる制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図4は、従来の制御装置を用いた制御システムの構成図である。図において、61はPID制御機能を備えた制御装置、62は恒温槽、63は恒温槽の内部に配置されたウエハ、64は制御装置61からの操作量に基づいて恒温槽62の内部の温度を制御するヒータ、65はウエハ63の近傍の温度を検出する温度センサである。
【0003】
次に動作について説明する。
PID制御機能を備えた制御装置61は、温度センサ65が検出した温度測定値を入力し、この測定値と予め設定した目標温度設定値とが一致するようにPID制御機能による演算を施し、操作量を算出する。そして、この操作量をヒータ64に出力する。ヒータ64は、この操作量により例えば通電時間を変化させることで恒温槽62の内部の温度を制御する。このようにして、ウエハ63の温度を予め設定した目標温度に一致させるように制御が行われる。
【0004】
ところで、上記の制御対象であるウエハ63の面積が大きい場合には、その温度をウエハ63全体に渡って均一に制御することが難しくなる。この場合、制御対象であるウエハ63を複数の領域に分割し、これらの領域毎に上記のPID制御機能を備えた制御装置61を使用することが考えられる。分割した領域毎に温度センサ65及びヒータ64を設置して個別にPID制御を施すことにより、各領域の温度を予め設定した目標温度に一致させることができるからである。
【0005】
ところが、このような制御方法では、各領域間で温度の干渉が起こり適切な制御がなされないという問題がある。すなわち、ある領域の温度はその領域のヒータにより制御されPID制御が行われるところ、この領域の温度は他の領域のヒータの影響を受けてしまい、適切な制御がなされないというものである。
【0006】
この問題を解決するため、一般に、図5に示す制御システムが使用される。
図において、71はPID制御機能を備えた制御装置、72は恒温槽、73は恒温槽72の内部に配置されたウエハ、74−1はch1操作量に基づいて恒温槽72の内部の第1の領域73−1の温度を制御するヒータ、74−2はch2操作量に基づいて恒温槽72の内部の第2の領域73−2の温度を制御するヒータ、75はウエハ73の近傍の温度を検出する温度センサ、81はウエハ73の目標温度を設定する目標設定値設定手段、82は温度センサ75が検出した温度測定値と目標設定値設定手段81により設定された設定値から偏差を算出する加算器、83は加算器82が算出した偏差からPID演算を施し操作量を出力するPID演算手段、84は操作量に上限及び下限の制限を施す操作量制限手段、85−1及び85−2は操作量にレシオ演算を施す第1のレシオ演算手段及び第2のレシオ演算手段、86−1及び86−2は操作量にオフセット演算を施す第1のオフセット演算手段及び第2のオフセット演算手段、87は操作量制限手段84から出力された操作量を分岐する分岐部、88は操作量制限手段84などのパラメータを設定する例えばキーボードなどの手動操作によるパラメータ設定手段である。
【0007】
次に動作について説明する。
制御装置71は、温度センサ75が検出した温度測定値を入力し、目標値設定手段81により設定された目標温度である設定値により、加算器82で偏差を算出した後、PID演算手段83でPID演算を施し操作量を決定する。そして、操作量は、操作量制限手段84で上限及び下限の制限が施された後、分岐部87で分岐される。
【0008】
分岐された操作量は、第1のレシオ演算手段85−1と第1のオフセット演算手段86−1を経てch1操作量となる。同様に、分岐された操作量は第2のレシオ演算手段85−2と第2のオフセット演算手段86−2を経てch2操作量となる。
【0009】
上記ch1操作量はヒータ74−1に出力され、ヒータ74−1は、このch1操作量により例えば通電時間を変化させることで恒温槽72の内部における第1の領域73−1の温度を制御する。また、同様にして、上記ch2操作量はヒータ74−2に出力され、ヒータ74−2は、このch2操作量により恒温槽72の内部における第2の領域73−2の温度を制御する。
【0010】
この場合、操作量制限手段84、第1のレシオ演算手段85−1、第2のレシオ演算手段85−2、第1のオフセット演算手段86−1、及び第2のオフセット演算手段86−2のパラーメータは、図示しないキーの入力操作によりパラメータ設定手段88で、ウエハ73の温度を目標温度に一致するように、予め調整時に設定されている。
【0011】
このようにして、第1の領域73−1に配置されたヒータ74−1、及び第2の領域73−2に配置されたヒータ74−2の制御により、各々の領域の温度を予め設定した目標温度に一致させるように制御が行われる。すなわち、ウエハ73の全体の温度を予め設定した目標温度に一致させるように制御が行われる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
従来の制御装置は上記のように構成されているので、制御対象の面積が大きい場合であっても、制御対象全体に渡って均一な温度に制御することが可能であるといえる。
【0013】
しかしながら、制御対象を別の制御対象に変更した場合や制御対象の大きさが変わった場合、あるいは、ヒータに経年変化が生じた場合や制御対象の周辺温度が変化した場合には、制御対象全体に渡って均一な温度に制御することができないという問題があった。
【0014】
例えば、図5の制御システムにおいて、制御対象であるウエハ73を別の種類のウエハに変更した場合には、温度センサ75は第1の領域73−1に配置されているので、第1の領域73−1の温度の制御は適切に行われるが、ウエハ73の熱伝導率の違いなどにより、第2の領域73−2の温度の制御が適切に行われなくなる。仮に、温度センサ75を恒温槽72の中央部に配置したとしても、第2の領域73−2だけでなく第1の領域73−1の温度の制御が適切になされなくなる。
【0015】
図6は、図5に示した従来の制御システムにおける恒温槽72内部の温度特性図である。図6において、(1)はあるウエハの温度特性図であり、(2)は別の種類のウエハの温度特性図である。91及び94は目標設定値設定手段81により設定された目標温度設定値、92及び95は第1の領域73−1における温度センサー75が検出した温度測定値、93及び96は第2の領域73−2における図示しない温度センサが検出した温度測定値である。
【0016】
(1)の温度特性によると、予め調整時において、温度測定値92及び93が目標設定温度に一致するように、操作量制限手段84、第1のレシオ演算手段85−1、第2のレシオ演算手段85−2、第1のオフセット演算手段86−1及び第2のオフセット演算手段86−2のパラメータが設定されているため、温度測定値91及び93は目標設定温度に一致し適切な制御が行われる。
(2)の温度特性によると、別の種類のウエハに変更する前のウエハに対し予め調整したパラメータにより制御が行われるため、第2の領域73−2の温度測定値96に一定の偏差が生じ、全体に渡って均一な温度にならない。
【0017】
この場合、変更後のウエハについて全体に渡って均一な温度に制御できるように、第2のレシオ演算手段85−2と第2のオフセット演算手段86−2のパラメータを改めて設定し直す必要ある。これでは、制御対象を変更する毎にパラメータを設定し直す必要があり煩に耐えない。同様に、制御対象の周辺の環境条件が変化した場合においても、パラメータを適切な値に再度設定する必要が生じるという課題があった。
【0018】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、制御対象や環境条件などが変わっても、何らのパラメータを変更することなく、引き続き制御対象全体に渡ってその状態の測定値を予め設定した目標設定値に一致させる制御を行うことができる制御装置を提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る制御装置は、複数の領域から成る制御対象の状態を表す測定値と予め設定した設定値を一致させるように操作量を演算し、これらの領域毎に操作量を出力して制御を行う制御装置において、前記制御対象の第1の領域の測定値と予め設定した設定値に基づいて第1の操作量と第2の操作量を演算し、この第1の操作量を前記第1の領域に対して第1の領域操作量として出力する操作量演算手段と、前記制御対象の他の領域の 測定値と予め設定した設定値又は前記第1の領域の測定値とに基づいて第3の操作量を演算する偏差制御手段と、前記操作量演算手段により演算した第2の操作量と前記偏差制御手段により演算した第3の操作量に基づいて算出した操作量を他の領域に対して他の領域操作量として出力する加算器を備え、さらに、前記操作量演算手段は、第1の領域の測定値と予め設定した設定値に基づいて演算した操作量に上限及び下限の制限を施す第1の操作量制限手段と、この第1の操作量制限手段から出力された操作量を分岐し、この分岐された一方の操作量に予め設定した設定値を乗算する第1のレシオ演算手段と、この第1のレシオ演算手段から出力された操作量にそれぞれに予め設定した設定値を加算して第1の操作量を算出する第1のオフセット演算手段とを備えたものである。
【0020】
また、この発明に係る制御装置の操作量演算手段は、操作量演算手段は、第1の操作量制限手段から出力された操作量から分岐された他方の操作量に予め設定した設定値を乗算する第2のレシオ演算手段と、この第2のレシオ演算手段から出力された操作量にそれぞれに予め設定した設定値を加算して第2の操作量を算出する第2のオフセット演算手段とを備えたものである。
また、この発明に係る制御装置の操作量演算手段は、前記偏差制御手段は、他の領域の測定値と予め設定した設定値に基づいて演算した操作量に上限及び下限の制限を施し、第3の操作量を算出する第2の操作量制限手段を備えたものである。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の一形態について説明する。
参考例1
図1はこの発明の制御装置を用い、制御対象であるウエハの全体に渡って均一な温度に制御する制御システムの構成図である。図において、1はPID制御機能を備えた制御装置、2は恒温槽、3は恒温槽2の内部に配置されたウエハ、4−1,4−2は制御装置1からの操作量に基づいて恒温槽2の内部の温度を制御するヒータ、5−1,5−2はウエハ3の第1,第2の領域3−1,3−2近傍の温度を検出する温度センサ、6はウエハ3の目標温度を設定する目標設定値設定手段、7−1,7−2は加算器、8は操作量演算手段、9は偏差制御手段、10は加算器である。
【0022】
次に動作について説明する。制御装置1は、制御対象であるウエハ3の第1の領域3−1における温度センサ5−1が検出する温度測定値であるch1測定値と目標設定値設定手段6からの設定値との偏差を第1の加算器7−1で算出するとともに、第2の領域3−2における温度センサ5−2が検出する温度測定値であるch2測定値と目標設定値設定手段6からの設定値との偏差を第1の加算器7−2で算出する。操作量演算手段8は第1の加算器7−1から出力された偏差に基づいて例えばPID制御を施し操作量を演算する。ここで、制御装置1は、演算した操作量をch1操作量(第1の領域操作量)として、第1の領域3−1に配置したヒータ4−1に対して出力する。
【0023】
一方、偏差制御手段9は第2の加算器7−2から出力された偏差に基づいて例えばPID制御を施し操作量を演算する。また、加算器10は、操作量演算手段8により演算した操作量と偏差制御手段9により演算した操作量とを加算し、ch2操作量(他の領域操作量)として、第2の領域3−2に配置したヒータ4−2に対して出力する。
【0024】
以上のように、参考例1によれば、制御対象であるウエハ3の種類や制御対象の環境などが変わった場合には、第1の領域3−1に対して出力されるch1操作量は、目標設定温度と第1の領域3−1における温度測定値であるch1測定値との偏差に基づいてPID制御などにより演算された値であるから、第1の領域3−1の制御は適切に行われる。これに対して、第2の領域3−2に対して出力されるch2操作量が操作量演算手段8により演算された操作量であるとすれば、上記のように、第2の領域3−2の温度測定値には一定の偏差が生じることになる。
【0025】
そこで、この偏差を解消するために、偏差制御手段9が設けられている。すなわち、偏差制御手段9は、目標温度設定値と第2の領域3−2における温度測定値であるch2測定値との偏差に基づいて、PID制御などにより演算して操作量を生成する。そして、加算手段10は、操作量演算手段8により演算された操作量に偏差制御手段9により演算された操作量を加えてch2操作量を出力する。つまり、第2の領域3−2で生じる温度測定値の一定の偏差を、偏差制御手段9が演算した操作量により解消することができる。
【0026】
このように、参考例1によれば、従来、ウエハ3の種類や制御対象の環境などが変わった場合に生じる第2の領域の温度測定値の一定の偏差を、偏差制御手段9及び加算手段10を設けることにより、解消することができる。
【0027】
実施の形態1
次に、実施の形態1について説明する。
図2は、この発明の制御装置を用いた制御システムの構成図である。図において、1はPID制御機能を備えた制御装置、2は恒温槽、3は恒温槽の内部に配置されたウエハ、4−1はch1操作量に基づいて恒温槽2の内部の上部温度(第1の領域3−1に対応)を制御するヒータ、4−2はch2操作量に基づいて恒温槽2の内部の下部温度(第2の領域3−2に対応)を制御するヒータ、5−1はウエハ3の近傍に配置され恒温槽2の内部の上部温度を検出する温度センサ、5−2はウエハ3の近傍に配置され恒温槽2の内部の下部温度を検出する温度センサである。
【0028】
また、6はウエハ3の目標温度を設定する目標設定値設定手段、7−1は温度センサ5−1が検出した温度のch1測定値と目標設定値設定手段6により設定された設定値から偏差を算出する第1の加算器、11は加算器7−1が算出した偏差からPID演算を施し操作量を出力するPID演算手段(第1のPID演算手段)、12は操作量に上限及び下限の制限を施す操作量制限手段(第1の操作量制限手段)、15−1及び15−2は操作量bにレシオ演算を施す第1のレシオ演算手段及び第2のレシオ演算手段、16−1,16−2は操作量c,eにオフセット演算を施す第1のオフセット演算手段及び第2のオフセット演算手段、13は操作量制限手段12からの操作量bを分岐する分岐部、14は操作量制限手段12などのパラメータを設定する例えばキーボードなどの手動操作によるパラメータ設定手段、10はオフセット演算手段16−2が演算した操作量fと後述する操作量制限手段18が制限した操作量hからch2操作量を算出する加算器である。
【0029】
7−2は温度センサ5−2が検出した温度のch2測定値と目標設定値設定手段6により設定された設定値から偏差を算出する第2の加算器、17は第2の加算器7−2が算出した偏差からPID演算を施し操作量gを出力するPID演算手段(第2のPID演算手段)、18は操作量gに上限又は下限の制限を施す操作量制限手段(第2の操作量制限手段)である。
【0030】
次に動作について説明する。
制御装置1は、第1の領域3−1に配置された温度センサ5−1が検出した温度であるch1測定値、及び、第2の領域3−2に配置された温度センサ5−2が検出した温度であるch2測定値を入力する。そして、ch1操作量及びch2操作量を生成し、ch1操作量の信号を第1の領域3−1に配置されたヒータ4−1に出力し、ch2操作量の信号を第2の領域3−2に配置されたヒータ4−2に出力する。
【0031】
ヒータ4−1は、このch1操作量の信号により例えば通電時間を変化させることで恒温槽2の内部における第1の領域3−1の温度を制御する。同様に、ヒータ4−2は、このch2操作量の信号により恒温槽2の内部における第2の領域3−2の温度を制御する。
【0032】
次に、制御装置1の内部の処理について説明する。
目標設定値設定手段6は、ウエハ3に対して所望の目標温度である設定値を、図示しないキーの入力操作により設定する。設定した目標温度設定値は、第1の加算器7−1及び第2の加算器7−2へ出力する。パラメータ設定手段14は、操作量制限手段12、第1のレシオ演算手段15−1、第1のオフセット演算手段16−1、第2のレシオ演算手段15−2、第2のオフセット演算手段16−2及び操作量制限手段18のパラメータを図示しないキーの入力操作により設定する。
【0033】
操作量制限手段12及び操作量制限手段18のパラメータは、各々、上限値と下限値である。第1のレシオ演算手段15−1及び第2のレシオ演算手段15−2のパラメータは、各々、レシオ値である。第1のオフセット演算手段16−1及び第2のオフセット演算手段16−2のパラメータは、各々、オフセット値である。なお、パラメータの意味は、各手段の説明の中で説明する。
【0034】
第1の加算器7−1は、目標設定値設定手段6により設定された目標温度である設定値とch1測定値との偏差を算出し、PID演算手段11に対して出力する。例えば、設定値が100℃、ch1測定値が90℃の場合は、偏差は90−100=−10℃であり、第2の加算器7−1はこの値を出力する。
【0035】
PID演算手段11は、図示しないPID値設定手段のキーの入力操作により、PID値が設定されている。第1の加算器7−1により算出された偏差を入力し、PID制御の演算を施して操作量aを算出し、この操作量aを操作量制限手段12に対して出力する。操作量aは、通常0%〜100%の値をとる。
【0036】
操作量制限手段12は、PID演算手段11により算出された操作量aにパラメータ設定手段14により設定された上限値及び下限値の制限を施し、操作量bを分岐部13に対して出力する。例えば、上限値80%、下限値20%が設定されている場合、操作量aが90%のときは上限値により80%に制限され、操作量aが10%のときは下限値により20%に制限される。操作量制限手段12は、前者のときは操作量b=80%を出力し、後者のときは操作量b=20%を出力する。操作量aが50%のときは上限値及び下限値の制限を受けないから、操作量b=50%をそのまま出力する。
【0037】
分岐部13は、操作量制限手段12により制限された操作量bをそのままch1操作量を生成する経路とch2操作量を生成する経路へ分岐させる。第1のレシオ演算手段15−1は、分岐部13により分岐された操作量bにパラメータ設定手段14により設定されたレシオ値を乗算し、操作量cを第1のオフセット演算手段16−1に対して出力する。例えば、レシオ値0.8が設定されている場合、操作量bが50%のときは、50×0.8=40%を算出する。第1のレシオ演算手段15−1は、操作量c=40%を出力する。
【0038】
第1のオフセット演算手段16−1は、第1のレシオ演算手段15−1により出力された操作量cにパラメータ設定手段14により設定されたオフセット値を加算し、換作量dをch1操作量としてヒータ4−1に対して出力する。例えば、オフセット値10が設定されている場合、操作量cが50%のときは、50+10=60%を算出する。第1のオフセット演算手段16−1は、操作量d=60%を出力する。
【0039】
第2のレシオ演算手段15−2は、分岐部13により分岐した操作量bにパラメータ設定手段14により設定したレシオ値を乗算し、操作量eをオフセット演算手段16−2に対して出力する。第2のオフセット演算手段16−2は、第2のレシオ演算手段15−2により出力された操作量eにパラメータ設定手段14により設定されたオフセット値を加算し、操作量fを加算器10に対して出力する。
【0040】
一方、第2の加算器7−2は、目標設定値設定手段6により設定された目標温度である設定値とch2測定値との偏差を算出し、PID演算手段17に対して出力する。PID演算手段17は、図示しないPID値設定手段のキーの入力操作により、PID値が設定されている。第2の加算器7−2により算出された偏差を入力し、PID制御の演算を施して操作量gを算出し、この操作量gを操作量制限手段18に対して出力する。操作量gは、通常0%〜100%の値をとる。
【0041】
操作量制限手段18は、PID演算手段17により算出した操作量gにパラメータ設定手段により設定した上限値及び下限値の制限を施し、操作量hを加算器10に対して出力する。
【0042】
加算器10は、第2のオフセット演算手段16−2により算出さらた操作量fに操作量制限手段18により制限された操作量hを加算し、ch2操作量をヒータ4−2に対して出力する。例えば、操作量fが50%、操作量hが5%の場合は、50+5=55%を算出する。加算器10は、ch2操作量=55%を出力する。
【0043】
次に、図3を用いて、図2における実施の形態1による制御装置を用いた制御システムの温度特性図について説明する。図3は、制御対象のウエハを別の種類のウエハに変更した後の温度特性図を示している。図3において、31は目標設定値設定手段6により設定した目標温度設定値、32は第1の領域3−1における温度センサ5−1が検出した温度測定値、33は第2の領域3−2における温度センサ5−2が検出した温度測定値である。
【0044】
別の種類のウエハに変更する前のウエハの温度制御において、予め調整時に、温度測定値32及び33が目標設定温度に一致するように、操作量制限手段12、操作量制限手段18、第1のレシオ演算手段15−1、第2のレシオ演算手段15−2、第1のオフセット演算手段16−1、及び第2のオフセット演算手段16−2のパラメータが設定されているため、図6(1)の温度特性図のように、温度測定値32及び33は目標設定温度に一致しており適切な制御が行われる。別の種類のウエハに変更した場合も、図3に示すように、温度測定値32及び33は目標設定温度に一致しており適切な制御が行われる。
【0045】
以上のように、実施の形態1によれば、制御対象であるウエハ3の種類や制御対象の環境などが変わった場合には、第1の領域3−1に対して出力されるch1操作量は、目標設定温度と第1の領域3−1における温度測定値であるch1測定値との偏差に基づいてPID制御などにより演算された値であるから、第1の領域3−1の制御は適切に行われる。
【0046】
これに対して、第2の領域3−2に対して出力されるch2操作量はch1測定値に基づいてPID演算手段11などにより演算された操作量fであるとすれば、第2の領域3−2の温度測定値には一定の偏差が生じることになる。
【0047】
そこで、この偏差を解消するために、第2の加算器7−2,PID演算手段17、操作量制限手段18、及び加算器10が設けられている。すなわち、PID演算手段17,第2の加算器7−2を有する偏差制御手段9は、第2の加算器7−2により目標温度設定値と第2の領域3−2における温度測定値であるch2測定値から算出した偏差に基づいてPID演算を施して操作量hを生成する。
【0048】
そして、加算器10は、ch1測定値に基づいて演算した操作量fにch2測定値に基づいて演算した操作量hを加えてch2操作量としてヒータ4−2に対して出力する。つまり、第2の領域3−2で生じる温度測定値の一定の偏差を、ch2測定値に基づいて演算した操作量hにより解消することができる。
【0049】
このように、実施の形態1によれば、従来ウエハの種類や制御対象の環境などが変わった場合に生じる第2の領域3−2の温度測定値の一定の偏差を、第2の加算器7−2,PID演算手段17、操作量制限手段18、及び加算器10を設けることにより、解消することができる。
【0050】
また、上記の実施の形態1においては、目標設定値設定手段6により設定した設定値を第2の加算器7−2に入力することにより、ウエハ3全体に渡って均一な温度に制御しているが、設定値の代わりに、ch1測定値を入力してもよい。ch1測定値を第2の加算器7−2に入力する構成をとることにより、ウエハ3の第2の領域3−2の温度特性は第1の領域3−1の温度特性に追従させることができる。つまり、ウエハの温度を一定の勾配で上昇させる場合や下降させる場合に有効である。
【0051】
なお、上記の各実施の形態においては、PID制御を例にして説明したが、他にもIMC(Internal Model Control)制御などにも適用できる。
【0052】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、複数の領域から成る制御対象の状態を表す測定値と予め設定した設定値を一致させるように操作量を演算し、これらの領域毎に操作量を出力して制御を行う制御装置において、前記制御対象の第1の領域の測定値と予め設定した設定値に基づいて第1の操作量と第2の操作量を演算し、この第1の操作量を前記第1の領域に対して第1の領域操作量として出力する操作量演算手段と、前記制御対象の他の領域の測定値と予め設定した設定値又は前記第1の領域の測定値とに基づいて第3の操作量を演算する偏差制御手段と、前記操作量演算手段により演算した第2の操作量と前記偏差制御手段により演算した第3の操作量に基づいて算出した操作量を他の領域に対して他の領域操作量として出力する加算器を備え、さらに、前記操作量演算手段は、第1の領域の測定値と予め設定した設定値に基づいて演算した操作量に上限及び下限の制限を施す第1の操作量制限手段と、この第1の操作量制限手段から出力された操作量を分岐し、この分岐された一方の操作量に予め設定した設定値を乗算する第1のレシオ演算手段と、この第1のレシオ演算手段から出力された操作量にそれぞれに予め設定した設定値を加算して第1の操作量を算出する第1のオフセット演算手段とを備えるように構成したので、制御対象を別の種類の制御対象に変更した場合や制御対象の大きさが変わった場合、あるいは、ヒータに経年変化が生じた場合や制御対象の周辺温度が変化した場合その環境が変化した場合などにより生じる他の領域における温度測定値の偏差を、前記偏差制御手段及び加算器により解消することができる効果がある。
【0053】
従って、このような変化が生じた場合であっても、何らのパラメータを変更することなく、引き続き制御対象全体に渡ってその状態の測定値を予め設定した目標設定値に一致させる制御を行うことができる効果がある。
【0054】
また、この発明によれば、操作量に対して上限及び下限の制限、レシオ演算及びオフセット演算を施し、制御対象全体に渡る制御をより好適に行うことができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の参考例1による制御装置を用いた制御システムの構成図である。
【図2】 この発明の実施の形態1による制御装置を用いた制御システムの構成図である。
【図3】 この発明の実施の形態1による制御装置を用いた制御システムの温度特性図である。
【図4】 従来の制御装置を用いた制御システムの構成図である。
【図5】 従来の制御装置を用いた他の制御システムの構成図である。
【図6】 従来の制御装置を用いた制御システムの温度特性図である。
【符号の説明】
1 制御装置
2 恒温槽
3 ウエハ
3−1,3−2 第1及び第2の領域
4−1,4−2 第1及び第2のヒータ
5−1,5−2 第1及び第2の温度センサ
6 目標設定値設定手段
7−1,7−2 第1及び第2の加算器
8 操作量演算手段
9 偏差制御手段
10 加算器
PID演算手段(第1のPID演算手段)
12 操作量制限手段(第1の操作量制限手段)
13 分岐部
14 パラメータ設定手段
15−1,15−2 第1のレシオ演算手段及び第2のレシオ演算手段
16−1,16−2 第1のオフセット演算手段及び第2のオフセット演算手段
17 PID演算手段(第2のPID演算手段)
18 操作量制限手段(第2の操作量制限手段)
31 設定値
32 第1の領域の温度測定値
33 第2の領域の温度測定値

Claims (3)

  1. 複数の領域から成る制御対象の状態を表す測定値と予め設定した設定値を一致させるように操作量を演算し、これらの領域毎に操作量を出力して制御を行う制御装置において、前記制御対象の第1の領域の測定値と予め設定した設定値に基づいて第1の操作量と第2の操作量を演算し、この第1の操作量を前記第1の領域に対して第1の領域操作量として出力する操作量演算手段と、前記制御対象の他の領域の測定値と予め設定した設定値又は前記第1の領域の測定値に基づいて第3の操作量を演算する偏差制御手段と、前記操作量演算手段により演算した第2の操作量と前記偏差制御手段により演算した第3の操作量に基づいて算出した操作量を他の領域に対して他の領域操作量として出力する加算器を備え、さらに、
    前記操作量演算手段は、第1の領域の測定値と予め設定した設定値に基づいて演算した操作量に上限及び下限の制限を施す第1の操作量制限手段と、この第1の操作量制限手段から出力された操作量を分岐し、この分岐された一方の操作量に予め設定した設定値を乗算する第1のレシオ演算手段と、この第1のレシオ演算手段から出力された操作量にそれぞれに予め設定した設定値を加算して第1の操作量を算出する第1のオフセット演算手段とを備えていることを特徴とする制御装置。
  2. 前記操作量演算手段は、前記第1の操作量制限手段から出力された操作量から分岐された他方の操作量に予め設定した設定値を乗算する第2のレシオ演算手段と、この第2のレシオ演算手段から出力された操作量にそれぞれに予め設定した設定値を加算して第2の操作量を算出する第2のオフセット演算手段とを備えていることを特徴とする請求項1記載の制御装置。
  3. 前記偏差制御手段は、他の領域の測定値と予め設定した設定値に基づいて演算した操作量に上限及び下限の制限を施し、第3の操作量を算出する第2の操作量制限手段を備えていることを特徴とする請求項1または2記載の制御装置。
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