JP3774376B2 - 制御系の限界ゲインや伝達関数の同定方法およびその装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、制御系のゲインの同定方法および同定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
PID制御器を用いたフィ−ドバック制御系の制御パラメ−タを適性値に設定するためにジ−グラ・ニコルスの限界感度法が知られている。この方法は、実稼動状態にある系で比例ゲインを少しずつ増加していくと系の振動が始まるので、このときのゲインと位相を元に制御系の制御パラメ−タを調整する。閉ル−プ系を安定限界にする比例ゲインが限界ゲインであり、その時の振動周期が限界周期である。
ジ−グラ・ニコルスの限界感度法を用いてパラメ−タの設定を自動的に行なう技術としては、特開平9−34503号公報「PIDコントロ−ラの調整法」(明電舎)などがある。しかし、これらの方法は限界ゲインよりもかなり大きなゲインにならないと、振動が観測されないので、求められる限界ゲインの精度が悪い。また、特開平9−106303号公報「制御系のゲインの自動決定法」(ファナック)では、速度偏差によるゲイン調整系により自励振動を起こし、非線形領域での近似ゲインを求めているので、正確な限界ゲインが同定できない。
米国特許明細書第4,549,123号には、ル−プ内にリレ−要素を挿入して自励振動を起こし、記述関数法の考え方を導入して、精度のより高い限界ゲインを求める方法が示されている。しかし、この方法は、制御対象が1入力1出力系に限られる。また、外乱やノイズによる限界ゲイン同定精度の低下が見られる点で課題がある。
【0003】
発明者らは、制御ル−プ内に飽和要素を導入し、その入出力信号の偏差を用いて適応的にル−プゲインを調整することで、精度良く限界ゲインを求めることが理論的に可能であることを提案した(「限界ゲインの高精度適応同定法の提案」計測自動制御学会第18回適応制御シンポジウム1998年1月)。この方法は、記述関数による近似が不要である、振幅を測定せずに限界ゲインを陽に与えることができる、多変数系に適用できる、などの利点がある。しかし、これを実現する具体的な方法はいまだ提示されていないし、求められるゲイン値は細かな振動を示し、限界ゲインの一定値に収束しないという課題もある。また、限界ゲイン・限界周期が同じでも、特性が異なる制御系があり、このときは、限界ゲインを与える位相(−180°)以外の他の位相におけるゲインを知ることが、系の調整上で重要であるが、上記の文献にはその方法が示されていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、フィ−ドバック制御系における限界ゲインや限界周期を、プロセスの運転状態で精度良く同定する方法と装置を提供することを目的とする。また、位相交点以外の位相における伝達関数点を、同様に同定する方法・装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、制御対象の伝達関数を含むフィ−ドバック制御系自励振動を発生させて、制御系の限界ゲインを同定する限界ゲイン同定方法であって、前記フィードバック制御系は、可変ゲイン要素と飽和要素とを有しており、前記可変ゲイン要素の入力で自励振動の振幅および振幅の変化率を計測しながら、下記の式によって前記可変ゲイン要素のゲインを十分に大きなから漸減させ、自励振動の計測から、自励振動が一定振幅に収束したときのゲインを限界ゲインとするフィ−ドバック制御系の限界ゲインの同定方法である。
【数5】
Figure 0003774376
ここで、e(t):可変ゲイン要素の入力、k:可変ゲイン要素の値バ−e:e(t)の振幅:飽和要素の飽和値β>0、β≧0:定数
上述の限界ゲイン同定方法において、前記フィードバック制御系は、さらに位相を設定できる一次遅れ要素を有しており、また、自励振動の周波数ω及び周波数ωの変化率を、前記可変ゲイン要素の入力計測し、計測された振幅と周波数から、前記可変ゲイン要素のゲインを漸減するとともに、前記一次遅れ要素に対して位相を下記の式によって所定位相に十分小さな時定数T(T>0)から適応的に調整自励振動の計測により、自励振動が一定振幅に収束したときのゲインk,時定数T,周波数ωで、所定の位相における前記フィードバック制御系における前記伝達関数を同定することもできる。
【数6】
Figure 0003774376
ここでT:一次遅れ要素の時定数ω:周波数θ所定位相値、α>0:定数
また、本発明は、制御対象の伝達関数を含むフィ−ドバック制御系に自励振動を発生させて、制御系の限界ゲインを同定する限界ゲイン同定装置であって、前記フィードバック制御系は、可変ゲイン要素と飽和要素とを有し、さらに、前記ゲイン要素の入力で自励振動の振幅および振幅の変化率を計測する計測手段と、下記の式によって前記可変ゲイン要素のゲインを十分大きなから漸減させる調整手段とを有し、自励振動が一定振幅に収束したことを前記計測手段で計測したとき、そのゲインを前記フィードバック制御系の限界ゲインとするフィ−ドバック制御系の限界ゲインの同定装置である。
【数7】
Figure 0003774376
ここで、e(t):可変ゲイン要素の入力、k:可変ゲイン要素のゲインバ−e:e(t)の振幅:飽和要素の飽和値β>0、β≧0:定数
上述の限界ゲインの同定装置において、前記フィードバック制御系は、さらに位相を設定できる一次遅れ要素を有しており、前記可変ゲイン要素の入力で振幅を計測する計測手段は、自励振動の周波数ω及び周波数ωの変化率も計測し、前記調整手段は、前記一次遅れ要素を所定位相に設定することもでき、前記調整手段は、計測された振幅と周波数から、前記可変ゲイン要素のゲインとともに、前記一次遅れ要素に対して位相を、下記の式によって十分小さな時定数T(T>0)から所定位相に適応的に調整し、自励振動の計測により、自励振動が一定振幅に収束したときのゲインk,時定数T,周波数ωで、所定の位相における前記フィードバック制御系における前記伝達関数を同定することもできる。
【数8】
Figure 0003774376
ここでT:一次遅れ要素の時定数、ω:周波数、θ所定位相値、α>0:定数
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
本発明は、系に自励信号を発生させて、適応的にゲインを調整して、限界ゲインを求めている。以下に、この方法により限界ゲインが求まることをまず説明し、また、このときのゲインの調整の方法を説明する。
さて、図1に示すゲイン要素10および関数要素20で構成されたフィ−ドバック系を例に、限界ゲインの求め方を説明する。
図1において、関数要素20のG(s)は周波数特性を同定したいプラントの伝達関数であり、ゲイン要素10のゲインkはk∈Rである。図1に示したこのフィ−ドバック系は、0<k<Kcrで安定であり、k>Kcrで不安定になるとする。この場合、k=Kcrにおいては自励振動が持続する。このとき、Kcrを限界ゲインと呼び、自励振動の周期を限界周期ωcrと呼ぶ。Kcrとωcrは、次式のように、図1のフィ−ドバック系の特性方程式を満たす。
【数9】
1+KcrG(jωcr)=0 (1)
この特定方程式により、Kcrとωcrを同定することで、周波数特性が
【数10】
G(jωcr)=−1/Kcr (2)
により同定できる。
【0007】
(Kcrとωcrの同定の考え方)
図2の非線形フィ−ドバック系を考える。図2で示したフィードバック系は、図1のフィードバック系に飽和要素30を挿入した構成を有している。ここに飽和要素30のφは、図3に示すような、飽和値uで飽和する関数出力を有している。
ゲイン要素の値(ゲイン)kが無限大に近づくとき、飽和要素の出力関数φ(kσ)の極限はリレ−要素の特性をもつので、この系は、十分大きなkに対して、リレ−制御系と同様に振舞う。すなわち、kが十分大きいとき、不安定モ−ドの振幅が急速に増大し、しばらくして振幅一定な自励振動状態に落ち着く。このとき、ゲインkが大きいので、この定常状態におけるゲイン要素10の出力vの振幅v(バーvと示す場合もある)は、飽和値uに比べて十分大きい。そこで、ゲインkを漸減させることにより、振幅vを飽和値uに近づける。すなわち、自励振動を維持しながら飽和状態から非飽和状態に近づけ、最終的に、振幅v=uで振動を保つようにする。このとき、非飽和状態での振動が生じているので、そのときのゲインkと振動周波数ωが、限界ゲインKcrと限界周期ωcrを与える。これを達成するために、v>uであればkを減少させ、v<uであればkを増加させる調整則:
【数11】
Figure 0003774376
を用いる。ただし、β>0、β≧0であり、初期値は十分に大きな値とする。右辺第2項は飽和値の変化速度を微調整に利用するために用いるので、βはゼロでも良い。また、(3)式では、ゲイン要素10の入力e(t)の振幅e(バーe(t)とも記載)を推定し、v=keにより、ゲイン要素10の出力vを求めることとし、その有用性は後述する。
【0008】
<ゲイン調整則の特性>
(k(t)の過渡応答特性)
図4のグラフは、調整則を適用した場合のe(t)の過渡応答例を示す。点線がゲイン要素10の入力e(t)であり、実線がその振幅の周波数推定器(後述)による推定値e(t)である。このように、e(t)はゼロから急速に増加し一定値に落ち着くので、適当な正数e、eに対し、e≧e(t)≧eが満たされる。この性質から、式(3)を満たすゲインk(t)は、β=0のとき、つぎの区間内に存在することが保証される。
【数12】
(t)≧k(t)≧k(t) (4)
ここに、
【数13】
Figure 0003774376
このことの重要性を次に述べる。(3)式では、振幅e(t)を用いて、ゲイン要素の出力の振幅v=ke(t)を求めたが、直接に、ゲイン要素の出力v(t)から周波数推定器を用いてvを推定する方法:
【数14】
Figure 0003774376
が考えられる。しかし、式(7)を用いた調整では、k(t)が負になることで非振動的な不安定現象が生じ、同定が失敗する場合があった。これに対し、(3)式を用いた調整では、(4)式から分かるようにk(t)を正に保てるので、そのような欠点はない。このため、周波数推定器のパラメ−タの設定が、(3)式のほうが遥かに容易である。
【0009】
(平衡状態の安定性)
上記の過渡特性に従い、k(t)を十分大きな初期値k(0)から漸減させている。k=Kcrが同定できるには、(3)式により振幅v=uの自励振動が安定に保たれることが必要であり、以下ではその条件を求める。
図1のフィ−ドバック系の1+kG(s)=0の主要極sはk=Kcrのときs=−jωcrであるので、k=Kcrの付近における主要極の近似式は
【数15】
Figure 0003774376
で与えられる。これに対する振動モ−ドの振幅は
【数16】
Figure 0003774376
で与えられるので、つぎのモデルを得る。
【数17】
Figure 0003774376
ただし、k>Kcrではeが増加し、逆にk<Kcrではeが減少するので、a>0である。
このモデルと(3)式の調整則からなる系
【数18】
Figure 0003774376
の平衡点は、k=Kcr、e=eE0(=u/Kcr)で与えられる。そこで、新たに、変数をx=k−Kcr、x=e−eE0とおいて、平衡点まわりの線形近似式を求めると
【数19】
Figure 0003774376
である。この特性方程式は
【数20】
Figure 0003774376
であるので、β、βにより任意に極配置でき、安定化のためには、β>0、β=0で十分である。以上より、この条件を満たすようにβ、βを選ぶことで、安定な自励振動が保たれ、k=Kcrが高精度に同定できる。
【0010】
(自励振動の周期と振幅の同定法)
式(3)のアルゴリズムを実現するためには、自励振動の振幅の包絡線であるe(t)を測定する必要がある。ここでは、適応ノッチ・フィルタを伴った周波数推定器を用いて、振動周期と共に、新たに、振幅の包絡線e(t)をオンラインで同定する方法を与える。
周波数推定器への入力信号が正弦波信号
【数21】
Figure 0003774376
であるとする。このとき、周波数推定器が次式で与えられる。
【数22】
Figure 0003774376
ここで、
【数23】
Figure 0003774376
および、振動周波数ωは推定された周波数、ζ>0はダンピング係数、γは可変パラメ−タである。また、ε>0、N>0、μ>0、α≧1である。
入力信号n(t)に対する定常応答は、次式で表される周期解となる。
【数24】
Figure 0003774376
このとき、
【数25】
Figure 0003774376
の関係が成り立つので、過渡時における振幅v>0と変化率dv/dtの推定値が次式で与えられる。
【数26】
Figure 0003774376
以上のように作用するので、系に自励振動を発生させて、適応的にゲインを調整して、限界ゲインを求めることができる。
【0011】
<任意の位相角における伝達関数の同定>
次に、フィ−ドバック系に、ゲイン要素と一次遅れ要素(位相設定器と同じ意味である)を挿入し、限界ゲインを求める方法によって、任意の位相角における伝達関数を同定する方法について説明する。
図5のフィ−ドバック系を考える。図5は、図1のフィードバック系に一次遅れ要素40を挿入した構成である。ここで、図1と同様に、G(s)は周波数応答を求めたいプラントの伝達関数であり、ゲインkはk∈Rである。図中の一次遅れ要素40は、一次遅れ要素の時定数Tを用いて
【数27】
Figure 0003774376
で表され、これによる位相遅れθは、一次遅れ要素の時定数Tにより、
【数28】
Figure 0003774376
で与えられ、0<θ<π/2である。この系において、
【数29】
Figure 0003774376
を満たすゲインk、一次遅れ要素の時定数T、ω=ωが与えられたとする。このとき、
【数30】
Figure 0003774376
であるから、
【数31】
Figure 0003774376
である。したがって、G(jω)は位相が−π+θとなる周波数の伝達関数である。
そこで、θを与えて、
【数32】
Figure 0003774376
を満たす一次遅れ要素の時定数Tを求める方法を検討する。
この一次遅れ要素の時定数Tに対し、系が安定限界にあれば式(26)を満足するので、ω=ωの自励振動を生じるように、上述した適応同定法によりゲインkを調整する。これは、図6に示すように、θだけ回転させた座標系で見た限界ゲインを求めることと考えられる。
【0012】
(調整則)
式(29)を満たすTを求める方法のための、一次遅れ要素の時定数Tの調整則を以下に説明する。まず、
【数33】
Figure 0003774376
とおく。このとき、
【数34】
Figure 0003774376
が成り立てば、ωTとtanθの偏差が減少する。この条件と
【数35】
Figure 0003774376
より、
【数36】
Figure 0003774376
を得る。したがって、一次遅れ要素の時定数Tの調整則として
【数37】
Figure 0003774376
を用いる。
ところで、式(31)より、
【数38】
V(t)=V(0)e−2αt (35)
であるから
【数39】
Figure 0003774376
ゆえに、初期偏差がe−αtで減衰する。
ゲインkの調整には、これまでの調整則を用いる。したがって、
【数40】
Figure 0003774376
の両式を調整則とする。ここで、eとωは自励振動の振幅と周期であり、e、de/dt、ω、dω/dtは周波数推定器により推定する。
初期値としてT=T(0)を正で十分小さく、また、k=K(0)を十分大きく与える。この条件の下で実験し、kとTが収束すれば、ωにおける伝達関数が
【数41】
Figure 0003774376
で与えられる。以上のように作用するので、フィ−ドバック系に、図5に示すように、ゲイン要素10と一次遅れ要素40を挿入し、限界ゲインを求める方法によって、任意の位相角における伝達関数を同定することができる。
【0013】
【実施例】
(数値シミュレ−ション)
本発明の限界ゲインを同定する上述のアルゴリズムを実施するために、図7に示すシミュレーション・システムを構成した。図7において、このシステムは、周波数推定器50、上述の式(3)に示した調整を行う適応アルゴリズムを内蔵したゲイン調整器60、可変ゲイン要素10、飽和要素70、対象制御系の一巡伝達関数器20で構成されている。本発明を実施するために挿入される周波数推定器50、調整器60、可変ゲイン要素10、飽和要素70は、プロセスで一般的に使用されているデジタル制御システムの機能の一部として限界ゲインを同定するときに挿入されるものである。あるいは、別のデジタル制御装置として構成し、既存の制御系に限界ゲインを同定するときに挿入してもよい。
周波数推定器50は、(16)〜(19)式で与えられるアルゴリズムが組み込まれており、(22)式と(23)式に従いe、de/dtの推定値を出力する(ただし、vがeに対応する)。また、周波数推定器の機能により振動の周期ωを観測する。調整器60は、(3)式で与えられる調整則を内臓して、可変ゲイン要素10のゲインkを調整する。飽和要素70は、同定中に出力が異常とならないよう、安全のために挿入している。
限界ゲインの同定時は、自励振動の信号e(t)を周波数推定器50に入力し、自励振動の振幅e(t)を推定する。この推定された振幅をもとに、調整器60の調整則により可変ゲイン要素60のゲインkを適応的に変化させる。これにより、限界ゲインKcrを同定する。このとき、限界周期ωcrも同時に同定される。
以下に、上記図7で示されたシステムに対して、具体的に一巡伝達関数G(s)の限界ゲイン等を特定した場合を以下に説明する。
【0014】
(数値例 1)
一巡伝達関数が(40)式で表されるプラントを考える。
【数42】
Figure 0003774376
パラメ−タは次のようにする。
調整則: β=0.2、β=0、k(0)=10、u=1
適応ノッチフィルタ(ANF):ε=0.6、ζ=0.6、μ=0.2、N=1、α=2
そして、外乱として、大きさ0.001のステップ入力を時刻0に加えたときの結果を図8〜図10に示す。ナイキストの安定条件より計算される真値、kcr=0.1507とωcr=1.032に速やかに収束している。
これにより、本発明の方法によって、理論的に求められる限界ゲインが高精度に求められていることが示されている。
【0015】
(第2の実施例)
本発明の第2の実施例を図11に示す。
本発明の所定位相における伝達関数点を同定するアルゴリズムを実施するために、図11のシステムを構成する。図11に示すように、システムは、周波数推定器52、調整器62、可変ゲイン80、一次遅れ要素90、飽和要素70、対象制御系の伝達関数20で構成されている。本発明を実施するために挿入される周波数推定器52、調整器62、可変ゲイン80、一次遅れ要素90、飽和要素70は、プロセスで一般的に使用されているデジタル制御システムの機能の一部として限界ゲインを同定するときに挿入されるものである。
周波数推定器52は、振動の周期の推定値を出力する。また、(16)〜(19)式で与えられるアルゴリズムが組み込まれており、(22)式と(23)式に従い推定値e、de/dtを出力し(ただし、vがeに対応する)、(18)式に従いdω/dtを出力する。調整器62は、(37)および(38)式で与えられる調整則を内臓して、可変ゲイン80、一次遅れ要素90のゲインおよび一次遅れ要素部分(位相角)を調整する。また、飽和要素70は、実施例1と同様に、同定中に出力が異常とならないよう、安全の目的で挿入したものである。
【0016】
(数値例 2)
次のプラントに対し、φ=40°となるときの伝達関数点を求める。
パラメ−タは次のようにする。
適応則:β=0.3、β=0、u=1、α=5.0
初期値:k(0)=10、ω(0)=10、T(0)=0.001
外乱として、大きさ0.001のステップ入力を時刻0に加えたときの結果を 図12〜図15に示す。
同様に、φ=20°、60°、80°においてもシミュレ−ションを行い、定常状態におけるゲインk、遅れ時間T、周波数ωの値から計算される伝達関数点を図16に示す。実線がナイキスト線図であり、*で示した点が本実施の形態により推定された伝達関数点である。図16から、それぞれの位相において、高精度に同定されているのが確認できる。
上述で説明したように、限界ゲインの適応同定法を用いて指定した位相のゲインと周波数を求める方法をシミュレ−ションした。これにより、位相交点以外の周波数においても、ゲインと周波数を高精度に同定することができることが分かる。
(応用ができる技術・製品)
加熱・蒸留・合成・などの化学プロセスなどフィ−ドバック制御系を用いているプロセス一般に適用可能。
【0017】
【発明の効果】
(1)運転中の実機において制御系の精度のよい限界ゲイン・限界周期の同定ができる。また、これは、1変数1出力系のみならず、多変数系多出力系においても適用できる。これにより、制御系のパラメ−タの最適な値が設定でき、性能のよいプロセスの制御が可能となる。
(2)位相が90度〜180度遅れる時の系の伝達関数点を同定することができる。これによって、対象制御系のゲインを適切に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ゲイン要素を持つフィ−ドバック系の定義を説明する図である。
【図2】非線型フィ−ドバック系を説明する図である。
【図3】飽和要素の特性を示す図である。
【図4】振幅の包絡線の変化を示す図である。
【図5】位相遅れ要素を持つフィ−ドバック制御系を説明する図である。
【図6】位相回転の意味を説明する図である。
【図7】限界ゲインの同定装置を示す図である。
【図8】出力と包絡線の変化を示す図である。
【図9】ゲインの変化を示す図である。
【図10】周期の変化を示す図である。
【図11】所定位相における限界ゲインの同定装置を示す図である。
【図12】ゲインの変化を示す図である。
【図13】周期の変化を示す図である。
【図14】出力と包絡線の変化を示す図である。
【図15】遅れ時間の変化を示す図である。
【図16】ナイキスト線図と同定点を示す図である。

Claims (4)

  1. 制御対象の伝達関数を含むフィ−ドバック制御系に自励振動を発生させて、制御系の限界ゲインを同定する限界ゲイン同定方法であって、
    前記フィードバック制御系は、可変ゲイン要素と飽和要素とを有しており、
    前記可変ゲイン要素の入力で自励振動の振幅および振幅の変化率を計測しながら、下記の式によって前記可変ゲイン要素のゲインを十分に大きなから漸減させ、
    自励振動の計測から、自励振動が一定振幅に収束したときのゲインを限界ゲインとする
    ことを特徴とするフィ−ドバック制御系の限界ゲイン同定方法。
    Figure 0003774376
    ここで、
    e(t):可変ゲイン要素の入力
    k:可変ゲイン要素の値
    バ−e:e(t)の振幅
    :飽和要素の飽和値
    β>0,β≧0:定数
  2. 請求項1記載の限界ゲイン同定方法において、前記フィードバック制御系は、さらに位相を設定できる一次遅れ要素を有するとともに自励振動の周波数ωおよび周波数ωの変化率を、前記可変ゲイン要素の入力計測し、
    前記可変ゲイン要素のゲイン十分に大きな値から漸減するとともに、前記一次遅れ要素に対して下記の式によって十分小さな時定数T(T>0)から適応的に調整
    自励振動の計測により、自励振動が一定振幅に収束したときのゲインk,時定数T,周波数ωで、所定位相における前記フィードバック制御系における前記伝達関数を同定する
    ことを特徴とする伝達関数同定方法
    Figure 0003774376
    ここで
    T:一次遅れ要素の時定数
    ω:周波数
    θc:所定位相値
    α>0:定数
  3. 制御対象の伝達関数を含むフィ−ドバック制御系に自励振動を発生させて、制御系の限界ゲインを同定する限界ゲイン同定装置であって、
    前記フィードバック制御系は、可変ゲイン要素と飽和要素とを有し、
    さらに、前記ゲイン要素の入力で自励振動の振幅および振幅の変化率を計測する計測手段と、
    下記の式によって前記可変ゲイン要素のゲインを十分大きなから漸減させる調整手段とを有し、
    前記自励振動が一定振幅に収束したことを前記計測手段で計測したとき、そのゲインを前記フィードバック制御系の限界ゲインとすることを特徴とするフィ−ドバック制御系の限界ゲイン同定装置。
    Figure 0003774376
    ここで、
    e(t):可変ゲイン要素の入力
    k:可変ゲイン要素のゲイン
    バ−e:e(t)の振幅
    :飽和要素の飽和値
    β>0,β≧0:定数
  4. 請求項3記載の限界ゲイン同定装置において、前記フィードバック制御系は、さらに位相を設定できる一次遅れ要素を有しており、
    前記可変ゲイン要素の入力計測する前記計測手段は、自励振動の周波数ω及び周波数ωの変化率も計測し、
    前記調整手段は、前記一次遅れ要素を所定位相に設定することもでき、
    前記調整手段は、前記可変ゲイン要素のゲインとともに、前記一次遅れ要素に対して位相を、下記の式によって十分小さな時定数T(T>0)から所定位相に適応的に調整することにより、
    前記計測手段により、自励振動が一定振幅に収束したことを計測したときのゲインk,時定数T,周波数ωで、所定位相における前記フィードバック制御系における前記伝達関数を同定することを特徴とする伝達関数同定装置。
    Figure 0003774376
    ここで
    T:一次遅れ要素の時定数
    ω:周波数
    θ所定位相値
    α>0:定数
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