JP3827209B2 - 固体電解質型燃料電池用複合型空気極の作製方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、固体電解質型燃料電池用複合型空気極の作製方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術および問題点】
近年、酸素イオン伝導体を用いた固体電解質型燃料電池(以下SOFC(Solid Oxide Fuel Cell)という)に関心が高まりつつある。特にエネルギーの有効利用という観点から、SOFCはカルノー効率の制約を受けないため本質的に高いエネルギー変換効率を有し、さらに良好な環境保全が期待されるなどの優れた特長を持っている。
【0003】
しかしながら、SOFCは、主要部分がセラミックで構成されているため、製造コストが高い。これがSOFCの普及を妨げている。ここで、この電池の動作温度を現在の1000℃から800℃またはそれ以下にすることで、金属の使用が可能となる。これにより、主要な体積を占めるインターコネクタ部分を安価な金属に替えることができ、大幅なコスト低減につながる。
【0004】
この低温化には電解質のイオン電導度の向上、電解質の薄膜化などが検討されている。固体電解質としては、希土類添加ジルコニア、ランタンガレート系電解質が主に検討されている。これらの他に、空気極などの電極の性能の大幅な向上が必要である。これは、低温化により電気化学反応速度が急激に低下するためである。
【0005】
SOFCセルは、固体電解質を挟んで空気極と燃料極が設けられているが、これらの電極は、ガスと電子を固体電解質まで供給し、固体電解質との界面において電気化学反応を起こす場を提供している。この反応場は、ガスと電子そしてイオンが接するため三相界面と呼ばれている。固体電解質と接している電極が微細なほどこの反応場、すなわち三相界面が拡大し、電極特性が改善される。
【0006】
さらに、電極自体が酸素と電子を共に伝導させる混合伝導体の場合、三相界面がこの混合伝導体粒子全体に拡大されるため電極特性が更に改善される。従来材料として(La 1−x Sr x )MnO 3 などが、混合伝導体として、(La 1−x Sr x )CoO 3 、(La 1−x Sr x )(Fe 1−y Co y )O 3 などが知られている。
【0007】
しかし、セルを作製する過程で1300℃程度の高温に曝され、これらの材料と固体電解質とが反応し界面に劣化物を生成する。たとえばジルコニア系電解質とランタン系ペロブスカイト系酸化物では絶縁体のLa2Zr2O7、またはSrZrO3が生じる。
【0008】
またランタンガレート系電解質と他のペロブスカイト系酸化物は固溶体を生じやすく、これは特にイオン電導度の低下をもたらすためセル特性を損なう。ジルコニアとの界面が1300℃まで安定なのはLn1-xSrxMnO3、Ln1-xCaxMnO3(Ln=La,Pr,Nd,Sm,0.05≦x≦0.25)及び、La0.8Sr0.2FeO3が知られているのみである。
【0009】
この様に、セルの電極と固体電解質は、動作温度である700℃〜1000℃に比べて、かなり高い温度域についても劣化反応を抑制することが求められ、この結果、使用できる材料が限定されてしまっている。また、高温で空気極を焼成することで、空気極を構成している粒子同士が凝集し粒成長を起こす。これにより、三相界面が減少し、空気極特性が低下する。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は固体電解質用セルの作製法に求められている、空気極の電極特性を改善するために、電極と固体電解質との界面付近に、安定で微細な導電性を有する物質を導入することで、劣化物を生じず、且つ長期にわたり安定な三相界面を作製する方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明によるSOFC用複合型空気極の作製方法は、緻密な固体電解質とその両面に設けられた多孔質の燃料極と空気極で構成された固体電解質型燃料電池セルの複合型空気極の作製方法において、前記固体電解質上に前記空気極を焼結形成した後、空気極の多孔質体内部に高融点誘電体酸化物およびぺロブスカイト系酸化物の両者を形成可能な有機金属溶液または無機金属塩溶液を含浸させた後、熱分解酸化反応により、CeO 2 、Ce x Sm 1−x O 2 、Ce x Gd 1−x O 2 、Ce x Y 1−x O 2 、Ce x Sm 1−x O 2 、In 2 O 3 およびMgOの一種以上(ただし0<x<1)である微細な高融点誘電体酸化物と導電性のペロブスカイト系酸化物を前記固体電解質との界面付近に生成させることを特徴とする。さらに、本発明によるSOFC用複合型空気極の作製方法は、緻密な固体電解質とその両面に設けられた多孔質の燃料極と空気極で構成された固体電解質型燃料電池セルの複合型空気極の作製方法において、前記固体電解質上に前記空気極を焼結形成した後、前記高融点誘電体酸化物を形成可能な溶液とペロブスカイト系酸化物を形成可能な溶液の一方をまず含浸させた後乾燥させ、次に他の溶液を含浸させることにより、交互に含浸させた後、熱分解酸化反応により、CeO 2 、Ce x Sm 1−x O 2 、Ce x Gd 1−x O 2 、Ce x Y 1−x O 2 、Ce x Sm 1−x O 2 、In 2 O 3 およびMgOの一種以上(ただし0<x<1)である微細な高融点誘電体酸化物と導電性のペロブスカイト系酸化物を前記固体電解質との界面付近に生成させることを特徴とする。本発明による第3の固体電解質型燃料電池用複合型空気極の作製方法は、緻密な固体電解質とその両面に設けられた多孔質の燃料極と空気極で構成された固体電解質型燃料電池セルの複合型空気極の作製方法において、前記固体電解質上に高融点誘電体酸化物およびぺロブスカイト系酸化物の両者を形成可能な有機金属溶液または無機金属塩溶液を塗布し、乾燥して膜を形成し、熱分解して前記固体電解質上にCeO 2 、Ce x Sm 1−x O 2 、Ce x Gd 1−x O 2 、Ce x Y 1−x O 2 、Ce x Sm 1−x O 2 、In 2 O 3 およびMgOの一種以上(ただし0<x<1)である微細な高融点誘電体酸化物と導電性のぺロブスカイト系酸化物を形成させた後、前記微細な高融点誘電体酸化物と導電性のぺロブスカイト系酸化物形成部分に空気極を形成することを特徴とする。また本発明による第4の固体電解質型燃料電池用複合型空気極の作製方法は、緻密な固体電解質とその両面に設けられた多孔質の燃料極と空気極で構成された固体電解質型燃料電池セルの複合型空気極の作製方法において、前記固体電解質上に高融点誘電体酸化物を形成可能な溶液およびぺロブスカイト系酸化物を形成可能な溶液を交互に塗布、乾燥して膜を形成し、熱分解して前記固体電解質上にCeO 2 、Ce x Sm 1−x O 2 、Ce x Gd 1−x O 2 、Ce x Y 1−x O 2 、Ce x Sm 1−x O 2 、In 2 O 3 およびMgOの一種以上(ただし0<x<1)である微細な高融点誘電体酸化物と導電性のぺロブスカイト系酸化物を形成させた後、前記微細な高融点誘電体酸化物と導電性のぺロブスカイト系酸化物形成部分に空気極を形成することを特徴とする。
【0012】
本発明の作製法では、有機金属または無機の金属塩溶液を使用した熱分解反応法により、固体電解質との界面付近に微細なペロブスカイト系導電性酸化物とセリア等の高融点誘電体酸化物との混合した部分を設けることを基本としている。ここで、微細な混合部分(ペロブスカイト系導電性酸化物とセリア等の高融点誘電体酸化物との混合した部分)を設ける方法として、本発明では以下の2通りの方法を念頭に置いている。
【0013】
一つは、予め固体電解質上に焼成した空気極に上記の溶液を含浸させる方法である。もう一つの方法は、空気極を設ける前に、固体電解質上に上記の混合部分を設け、その後に空気極材料をディップコート法などにより塗布し焼成して、空気極を設ける方法である。
【0014】
含浸する場合は、空気極そして最も高温の焼成過程である固体電解質の焼成が終了した後に、空気極内に有機金属溶液または無機金属塩溶液の形で、導電性酸化物および高融点誘電体酸化物用の混合溶液を含浸させるか、または、これらの溶液を交互に含浸、乾燥を行うこととする。
【0015】
予め塗布する場合は、有機金属溶液または無機金属塩溶液の形で、ペロブスカイト系導電性酸化物および高融点誘電体酸化物用の混合溶液を固体電解質上に塗布するか、または、これらの溶液を交互に塗布、乾燥を行うこととする。この後に、空気極用のスラリを塗布し、焼成するなどして空気極を設ける。
【0016】
本発明において、前記高融点誘電体酸化物としては、たとえばCeO2、CexSm1−xO2、CexGd1−xO2、CexY1−xO2、CexSm1−xO2、In2O3およびMgOの一種以上(ただし0<x<1)を使用することができる。
【0017】
また、導電性のペロブスカイト系酸化物としては、A1- δBO3またはA2(1- δ )BO4(A:希土類元素およびこの希土類元素を一部置換した元素、B:一種以上の遷移金属元素、O:酸素、0≦δ≦0.20)で示される酸化物の一種以上を挙げることができ、前記ペロブスカイト型の酸化物は、Aサイトの希土類元素の濃度が定比組成よりも若干低いことが好ましい。
【0018】
すなわちδが0.01≦δ≦0.20の範囲になることが望ましい。δが0.01未満であると、組成制御が困難となり、一方0.20を越えるとAサイトの結晶が不安定になり、Bサイトが増加して、イオン電導度が低下するおそれがあるからである。
【0019】
このようなペロブスカイト系酸化物としては、たとえば(La 1−z Sr z ) 1−δ MnO 3 、(La 1−z Sr z ) 1−δ MnO 3 、(La 1−z Sr z ) 1−δ FeO 3 、(La 1−z Ca z ) 1−δ MnO 3 、(La 1−z Ca z ) 1−δ FeO 3 、(La 1−z Sr z ) 1−δ Mn y Fe 1−y O 3 、(La 1−z Ca z ) 1−δ Mn y Fe 1−y O 3 、(Pr 1−z Sr z ) 1−δ MnO 3 、(Nd 1−z Sr z ) 1−δ MnO 3 、(La 1−z Sr z ) 1−δ CoO 3 、(La 1−z Sr z ) 1−δ FeO 3 、(La 1−z Sr z ) 1−δ Co x Fe 1−x O 3 、(La 1−z Sr z ) 1−δ Fe x Co y Ni 1−x−y O 3 、La 1−δ Co x Ni 1−x O 3 、La 1−δ Fe x Ni 1−x O 3 、(La 1−z Ca z ) 1−δ CoO 3 、La 2(1−δ) NiO 4 、La 2(1−δ) CoO 4 、(La 1−z Sr z ) 2(1−δ) CoO 4 などの一種以上(ただし、x、yは1未満で、かつx+y<1の正数、zは0〜0.5の値を示す)であることができる。
【0020】
上記高融点誘電体酸化物およびペロブスカイト系酸化物の混合比は、8:92〜40:60の範囲になるのがよい。この範囲を逸脱すると、以下の実施例1〜8より明らかなように良好な電池特性がえられない可能性があるからである。
【0021】
【作用】
以下に本発明の作用を説明する。
【0022】
まず含浸の場合は、空気極に、上述の式におけるジルコニア系電解質またはランタンガレー卜系電解質などと反応劣化しにくいAサイトのLaなどの希土類元素が1−20at%程度欠損した不定比組成の(La 1−z Sr z )MnO 3 などの粉体を焼成したものを用いる。これにより空気極および電解質の焼成は、充分高い温度とすることができ、機械強度の充分に高い空気極、そして緻密な固体電解質が得られる。
【0023】
これらの焼成を終えた後に、ペロブスカイト系酸化物用、およびセリア等の高融点誘電体酸化物用の有機金属溶液、または無機金属塩溶液を含浸させる。空気極は多孔質体とはいえ微細な気孔を有しているため、通常の粉体を溶液に展開したスラリでは電解質界面まで充分に浸透させることが難しい。
【0024】
しかし、ここで用いる溶液は固形物を含まないため空気極を浸透し固体電解質と空気極の界面付近まで到達する。この溶液が熱分解酸化反応によりLa0.8Sr0.2MnO3やLa0.5Sr0.5CoO3などのペロブスカイト系導電性酸化物とCeO2などの高融点誘電体酸化物の微細な混合物が生じる。ここで混合伝導体の組成は溶液に含まれる金属元素の量を予め制御することで容易に制御することができる。
【0025】
この混合体は、導電性を有し、かつ同時に熱分解反応で形成されるセリアなどの高融点誘電体酸化物と混合しているために、高温でも焼結が進み難く、微細な状態を保つことができる。この微細構造のため電極反応に寄与する三相界面が非常に大きくなり、空気極の電極特性が向上する。また、長期にわたる運転でも、焼結が進みにくく安定した特性が得られる。ここで使用するセリアなどの高融点誘電体酸化物はそれ自体が安定な上、上記のペロブスカイト系酸化物とは反応し難いため、不要な劣化物を作らない。
【0026】
次に、固体電解質上に予め塗布する方法であるが、含浸の場合と同様に、二種類の溶液を用意し、電解質上にこれらの混合溶液を塗布、または、これらの溶液を交互に塗布、乾燥させ、熱処理を行い、固体電解質上に微細な、ペロブスカイト系導電性酸化物とCeO2などの高融点誘電体酸化物の微細な混合物を設ける。この後に、ディップ法などにより空気極をこの層の上に設ける。
【0027】
以上の方法により、電解質付近の空気極に、ペロブスカイト系導電性酸化物と高融点誘電体酸化物との微細な混合物を形成することができ、発電特性に優れ、且つ長期にわたり安定なSOFC用の空気極を実現できる。
【0028】
【実施例】
以下に本発明の実施例を説明する。なお、当然のことであるが本発明は以下の実施例に限定されるものではない。以下の高融点誘電体酸化物およびぺロブスカイト系酸化物を形成可能な溶液として、実施例1〜8においてアルコキシド溶液を使用している。
【0029】
図1はSOFCセルを示す斜視図であり、図2は前記SOFCセルの性能を試験するための構成を示す断面図である。図1および図2中、1は固体電解質、2は空気極、3は燃料極、4は集電メッシュ、5は白金端子、6はガスシール、7は参照電極を示す。
【0030】
これらの図より明らかなように、SOFCセルは緻密な固体電解質1の一方の面に空気極2が、他方の面に燃料極3が設けられた構造になっている。SOFCとする場合には、インターコネクタを介して複数のSOFCセルを電気的に接続する。
【0031】
図2より明らかなように、実施例1〜8におけるSOFCセルの性能は、前記空気極2および燃料極3に集電メッシュ4を積層し、この集電メッシュに白金端子5を接続し、SOFCセルの性能を試験するための参照電極7を前記固体電解質1の周縁に形成して行った。
【0032】
【実施例1】
まず焼成した0.2mm厚Sc2O3、Al2O3添加ジルコニア(SASZまたは、0.895ZrO2−0.10Sc2O3−0.005Al2O3)固体電解質基板の片面にNiO−SASZのスラリ(NiOが60wt%)を塗布し、この上に白金メッシュの集電メッシュを乗せて1400℃、1時間焼成し燃料極を設けた。
【0033】
次にその裏面にLSM−1(La0.78Sr0.2MnO3)のスラリを塗布し、1100℃、1時間の条件で焼成し空気極とした。燃料極、空気極ともに6mm径とした。空気極の焼成前に参照極とするために、電解質の端に白金ぺーストを塗布した。このSOFCセルをセル#0−1とする。
【0034】
同様の条件でLSM−1に替えてLCM−1(La0.78Ca0.2MnO3)を用いたセルをセル#0−2、同様の条件でLSM−1に替えてLSF−1(La0.78Sr0.2FeO3)を用いたセルをセル#0−3、LSM−1に替えてLSMF−1(La0.78Sr0.2Mn0.5Fe0.5O3)を用いたセルをセル#0−4、LSM−1に替えてLCMF−1(La0.78Ca0.2Mn0.5Fe0.5O3)を用いたセルをセル#0−5、LSM−1に替えてPSM−1(Pr0.78Sr0.2MnO3)を用いたセルをセル#0−6、LSM−1に替えてNSM−1(Nd0.78Sr0.2 MnO3)を用いたセルをセル#0−7とする。これらを比較例とする。
【0035】
これら比較例のセルを750℃で試験した。ここで、空気極と、参照極には純酸素、燃料極には加湿水素を供給した。過電圧は、参照極と空気極との電圧差から、カレントインターラプト法を用いて直流成分を取り除いた値としてある。結果を表1のセル#0−1〜#0−7に示す。
【0036】
次にLa,Sr,Mn,Ceを0.717:0.184:0.92:0.08のモル比で4wt%含むアルコキシドのトルエン溶液を先のセル#0−1と同じ型のセルの空気極に含浸させ、750℃、1時間の条件で焼成してセル#1−1とした。
【0037】
同様に、セル#0−1と同じ型のセルの空気極にLa,Sr,Mn,Ceを0.585:0.15:0.75:0.25、またLa,Sr,Mn,Ceを0.312:0.12:0.6:0.40となるアルコキシド溶液を含浸させて750℃で焼成したセルをセル#1−2およびセル#1−3とした。同様にセル#0−2〜#0−7と同じ型のセルの空気極にLa,Sr,Mn,Ceを0.585:0.15:0.75:0.25のモル比で混合した溶液を含浸させたセルを、それぞれセル#1−4〜#1−9とした。
【0038】
次に、先のセル#0−1と同じ型のセルの空気極に、0.585:0.15:0.75:0.25のモル比で、La,Ca,Mn,Ceの混合溶液を含浸させたセルをセル#1−10、同様にLa,Sr,Fe,Ceの混合溶液を含浸させたセルをセル#1−11、同様にLa,Ca,Fe,Ceの混合溶液を含浸させたセルをセル#1−12、同様に0.585:0.15:0.375:0.375:0.25のモル比でLa,Sr,Mn,Fe,Ceの混合溶液を含浸させたセルをセル#1−13、同様に0.585:0.15:0.375:0.375:0.25のモル比でLa,Ca,Mn,Fe,Ceの混合溶液を含浸させたセルをセル#1−14とした。
【0039】
次に、先のセル#0−1と同じ型のセルの空気極に、0.585:0.15:0.75:0.25のモル比で、Pr,Sr,Mn,Ceの混合溶液を含浸させたセルをセル#1−15、同様にNd,Sr,Mn,Ceの混合溶液を含浸させたセルをセル#1−16とした。
【0040】
以上のセルの空気極過電圧の測定結果を表1に示す。いずれのセルも比較例に比べて過電圧が低く抑えられ、発電の損失が低減され比較例であるセル#0ー1〜#0−7に比べ良好なセル特性が得られた。以上の様に本発明の製造方法により従来の方法に比べて優れた特性のセルを作製することに成功した。
【0041】
【表1】
【0042】
【実施例2】
実施例1のセル#1−2において、含浸する高融点誘電体酸化物組成としてCeO2に替えてCe0.8Sm0.2O2、Ce0.8Gd0.2O2、Ce0.8Y0.2O2、Ce0.7Sm0.3O2の組成となる様に溶液を調製して含浸させて実施例1と同様の実験を行った。この結果を表2のセル#2−1〜#2−4に示す。いずれも比較例であるセル#0−1〜#0−7に比べ良好なセル特性が得られた。
【0043】
次に実施例1のセル#1−1〜セル#1−3において、含浸する高融点誘電体酸化物組成としてCeO2に替えてIn2O3およびMgOとなるように溶液を調整して含浸させて実施例1と同様の実験を行った。この結果を表2のセル#2−5〜#2−10に示す。いずれも比較例であるセル#0−1〜#0−7に比べ良好なセル特性が得られた。以上の様に本発明の製造方法により従来の方法に比べて優れた特性のセルを作製することに成功した。
【0044】
【表2】
【0045】
【実施例3】
実施例1のセル#1−2において、ペロブスカイト系導電性酸化物組成としてLa0.78Sr0.2CoO3、La0.48Sr0.5CoO3、La0.78Sr0.2Co0.7Fe0.3O3、La0.78Sr0.2Co0.5Fe0.5O3、La0.78Sr0.2Co0.3Fe0.7O3、La0.48Sr0.5FeO3、La0.48Sr0.5Co0.5Fe0.5O3、La0.78Sr0.2Co0.3Fe0.5Ni0.2O3、La0.78Sr0.2Co0.6Fe0.2Ni0.2O3、La0.98Co0.4Ni0.6O3、La0.98Fe0.4Ni0.6O3、La0.78Ca0.2CoO3、La0.48Ca0.5CoO3、La2.0NiO4、La2.0CoO4、La1.5Sr0.5CoO4の組成となる様に溶液を調製して含浸させて実施例1と同様の実験を行った。この結果を表3のセル#3−1〜#3−16に示す。いずれも比較例であるセル#0−1〜#0−7に比べ良好なセル特性が得られた。
【0046】
以上の様に本発明の製造方法により従来の方法に比べて優れた特性のセルを作製することに成功した。
【0047】
【表3】
【0048】
【実施例4】
実施例1のセル#1−2において、ペロブスカイト系導電性酸化物組成としてLa0.7Sr0.2MnO3、La0.6Sr0.2MnO3、La0.7Sr0.2Mn0.5Fe0.5O3、La0.6Sr0.2Mn0.5Fe0.5O3、La0.7Sr0.2FeO3、La0.6Sr0.2FeO3、La1.8CoO4、La1.6CoO4の組成となる様に溶液を調製して含浸させて実施例1と同様の実験を行った。この結果を表4のセル#4−1〜#4−8に示す。いずれも比較例であるセル#0−1〜#0−7に比べ良好なセル特性が得られた。
【0049】
以上の様に本発明の製造方法により従来の方法に比べて優れた特性のセルを作製することに成功した。
【0050】
【表4】
【0051】
【実施例5】
実施例1のセル#1−2において、空気極に含浸させる溶液をペロブスカイト系導電性酸化物と高融点誘電体酸化物の混合溶液とする代わりに、それぞれを別の溶液として用意し、交互に含浸させた。
【0052】
ここで、まずLa0.78Sr0.2MnO3用の溶液を含浸させ200℃で乾燥させた後に、高融点誘電体酸化物としてCeO2用の溶液を含浸させた。これを全部で、3回繰り返した。
【0053】
このセルを最後に750℃で焼成してセル#5−1とした。ここで、高融点誘電体酸化物とペロブスカイト系導電性酸化物の組成比は表5に示す通りとした。含浸させる工数はどちらも同じとして、溶液の濃度を調整することで、所望の組成比(混合比)を得た。
【0054】
次に、セル#5−1において、La0.78Sr0.2MnO3用の溶液とCeO2用の溶液の濃度を調整して、La0.78Sr0.2MnO3とCeO2の組成比が、0.92:0.08、及び0.6:0.4となるように交互に含浸した。これらのセルをセル#5−2およびセル#5−3とした。
【0055】
次に、セル#5−1〜セル#5−3において、CeO2に替えてIn2O3を同じ組成比で含む様に調整した溶液を交互に含浸し、セル#5−4〜#5−6を作製した。同様にCeO2に替えてMgOを同じ組成比で含む様に調整した溶液を交互に含浸し、セル#5−7〜セル#5−9を作製した。
【0056】
次に、セル#5−1において、La0.78Sr0.2MnO3に替えて、La0.78Sr0.2FeO3、La0.48Sr0.5MnO3、La0.48Sr0.5FeO3、La0.78Sr0.2Mn0.5Fe0.5O3、La0.78Sr0.2Co0.5Fe0.5O3、La0.78Sr0.2Co0.3Fe0.5Ni0.2O3となる様に溶液を含浸しセル#5−10〜#5−15を作製した。
【0057】
最後に、セル#5−1において、骨格である空気極のLSM−1をLSF−1とし、セル#5−16を作製した。そして、セル#5−16の含浸するペロブスカイト系導電性酸化物として、La0.78Sr0.2MnO3に替えてLa0.78Sr0.2FeO3となる溶液を交互含浸に用いセル#5−17を作製した。
【0058】
以上のセルの作製条件と過電圧の測定結果を表5に示す。いずれも比較例であるセル#0−1〜#0−7に比べ良好な特性が得られた。以上の様に本発明の製造方法により従来の方法に比べて優れた特性のセルを作製することに成功した。
【0059】
【表5】
【0060】
【実施例6】
実施例1のセル#1−1〜セル#1−3、そして実施例2のセル#2−5〜セル#2−10において、含浸させる混合溶液をSASZ電解質上に予めスピンコートで塗布し、この上に空気極であるLSM−2(La0.58Sr0.4MnO3)のスラリを塗布し800℃で焼成し、セル#6−1〜#6−9を作製した。
【0061】
ここで、まずセリアなど高融点誘電体酸化物とペロブスカイト系導電性酸化物との混合溶液を電解質上にスピンコートし、200℃で乾燥させた。そして、この上にLSM−2のスラリを塗布した。
【0062】
次にセル#6−2と同じ溶液をSASZ電解質上に塗布し、空気極LSM−2に替えて、LCM−2(La0.58Ca0.4MnO3)、LSF−2(La0.58Sr0.4FeO3)、LSCF−2(La0.58Sr0.4Co0.2Fe0.8O3)、LCN−2(LaCo0.4Ni0.6O3)、LSNF−2(La0.48Sr0.5Ni0.2Fe0.8O3)のスラリを塗布し、同様の実験を行った。この結果を表6のセル#6−10〜#6−14に示す。
【0063】
いずれも比較例であるセル#0−1〜#0−7に比べ良好なセル特性が得られた。以上の様に本発明の製造方法により従来の方法に比べて優れた特性のセルを作製することに成功した。
【0064】
【表6】
【0065】
【実施例7】
実施例1と同様にまず電解質上に燃料極を焼き付け、その裏面にまずセリアの溶液を電解質上にスピンコートし、200℃で乾燥させ、次にペロブスカイト系導電性酸化物用の溶液を塗布した。この工程を4回繰り返し、約0.3ミクロンの多層膜を得た。ここで、セリアと導電性酸化物との組成比が表7に示す値となるように、溶液の濃度を調整して塗布を行った。
【0066】
そして、この上にLCN−2のスラリを塗布し、800℃で焼成し、空気極とした。ここで、誘電体であるセリアとジルコニアとの組成比が0.92:0.08、0.75:0.25、0.4:0.6となるように積層した層を電解質上に設けたセルをセル#7−1〜#7−3とし、表7に作製条件と空気極特性を示す。
【0067】
いずれもセル#0−1〜#0−7に比べ良好なセル特性が得られた。以上の様に本発明の製造方法により従来の方法に比べて優れた特性のセルを作製することに成功した。
【0068】
【表7】
【0069】
【実施例8】
実施例1で使用したセル#1−2において含浸させる溶液をランタン、マンガン、ストロンチウム、そしてセリウムの硝酸水溶液の混合体とし、そのモル組成比がLa:Sr:Mn:Ce=0.585:0.15:0.75:0.25とした。
【0070】
含浸後、750℃で熱処理を行い、実施例1と同様の熱処理を行い、セル#8−1を作製した。次に導電性酸化物をLa0.78Sr0.2FeO3となるように硝酸水溶液を変更し、LSM−1に含浸し、セル#8−2を作製した。
【0071】
次にセル#8−1において、LSM−1に混合水溶液を含浸させる代わりに、ペロブスカイト系導電性酸化物に対応する硝酸水溶液と高融点誘電体酸化物用のセリアゾルゲル溶液を交互に含浸させ、750℃で熱処理しセル#8−3を作製した。
【0072】
次にセル#8−2用の含浸水溶液をジルコニア電解質上に予めスピンコートし、この上にLCN−2のスラリを塗布し、800℃で熱処理することで空気極とし、セル#8−4を作製した。
【0073】
次に、ランタン、マンガン、ストロンチウムの硝酸水溶液の混合体とセリウムゾルゲル溶液を交互にスピンコートして導電性酸化物とセリアとの積層構造を電解質上に作製した。最終的な組成がLa:Sr:Mn:Ce=0.585:0.15:0.75:0.25となるように各溶液の濃度を調整した。この上に、LCN−2用のスラリを塗布し800℃で熱処理し、セル#8−5を作製した。
【0074】
以上のセルの作製条件と測定結果を表8に示す。
【0075】
比較例であるセル#0−1〜#0−7に比べ優れたセル特性を示した。以上の様に本発明の製造方法により従来の方法に比べて優れた特性のセルを作製することに成功した。
【0076】
【表8】
【0077】
【発明の効果】
以上説明したように、高融点誘電体酸化物とペロブスカイト系導電性酸化物の微細混合体を空気極と電解質の界面付近に設けた構成とするために、金属元素を含む有機金属塩または無機金属塩の溶液を空気極に含浸させ、または、電解質上に予め塗布しその上に空気極を設け、その後に熱分解反応によりこの酸化物を電解質との界面付近に形成した。これにより高性能なSOFC用空気極を得ることに成功した。本発明はSOFCの高効率化に大きな貢献をなすものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1におけるSOFCセルおよびの構造を示す図。
【図2】 前記SOFCセルの試験方法を説明するための断面図。
【符号の説明】
1 固体電解質
2 空気極
3 燃料極
4 集電メッシュ
5 白金端子
6 ガスシール
7 参照電極
Claims (11)
- 緻密な固体電解質とその両面に設けられた多孔質の燃料極と空気極で構成された固体電解質型燃料電池セルの複合型空気極の作製方法において、前記固体電解質上に前記空気極を焼結形成した後、空気極の多孔質体内部に高融点誘電体酸化物およびぺロブスカイト系酸化物の両者を形成可能な有機金属溶液または無機金属塩溶液を含浸させた後、熱分解酸化反応により、CeO 2 、Ce x Sm 1−x O 2 、Ce x Gd 1−x O 2 、Ce x Y 1−x O 2 、Ce x Sm 1−x O 2 、In 2 O 3 およびMgOの一種以上(ただし0<x<1)である微細な高融点誘電体酸化物と導電性のペロブスカイト系酸化物を前記固体電解質との界面付近に生成させることを特徴とする固体電解質型燃料電池用複合型空気極の作製方法。
- 緻密な固体電解質とその両面に設けられた多孔質の燃料極と空気極で構成された固体電解質型燃料電池セルの複合型空気極の作製方法において、前記固体電解質上に前記空気極を焼結形成した後、前記高融点誘電体酸化物を形成可能な溶液とペロブスカイト系酸化物を形成可能な溶液の一方をまず含浸させた後乾燥させ、次に他の溶液を含浸させることにより、交互に含浸させた後、熱分解酸化反応により、CeO 2 、Ce x Sm 1−x O 2 、Ce x Gd 1−x O 2 、Ce x Y 1−x O 2 、Ce x Sm 1−x O 2 、In 2 O 3 およびMgOの一種以上(ただし0<x<1)である微細な高融点誘電体酸化物と導電性のペロブスカイト系酸化物を前記固体電解質との界面付近に生成させることを特徴とする固体電解質型燃料電池用複合型空気極の作製方法。
- 緻密な固体電解質とその両面に設けられた多孔質の燃料極と空気極で構成された固体電解質型燃料電池セルの複合型空気極の作製方法において、前記固体電解質上に高融点誘電体酸化物およびぺロブスカイト系酸化物の両者を形成可能な有機金属溶液または無機金属塩溶液を塗布し、乾燥して膜を形成し、熱分解して前記固体電解質上にCeO 2 、Ce x Sm 1−x O 2 、Ce x Gd 1−x O 2 、Ce x Y 1−x O 2 、Ce x Sm 1−x O 2 、In 2 O 3 およびMgOの一種以上(ただし0<x<1)である微細な高融点誘電体酸化物と導電性のぺロブスカイト系酸化物を形成させた後、前記微細な高融点誘電体酸化物と導電性のぺロブスカイト系酸化物形成部分に空気極を形成することを特徴とする固体電解質型燃料電池用複合型空気極の作製方法。
- 緻密な固体電解質とその両面に設けられた多孔質の燃料極と空気極で構成された固体電解質型燃料電池セルの複合型空気極の作製方法において、前記固体電解質上に高融点誘電体酸化物を形成可能な溶液およびぺロブスカイト系酸化物を形成可能な溶液を交互に塗布、乾燥して膜を形成し、熱分解して前記固体電解質上にCeO 2 、Ce x Sm 1−x O 2 、Ce x Gd 1−x O 2 、Ce x Y 1−x O 2 、Ce x Sm 1−x O 2 、In 2 O 3 およびMgOの一種以上(ただし0<x<1)である微細な高融点誘電体酸化物と導電性のぺロブスカイト系酸化物を形成させた後、前記微細な高融点誘電体酸化物と導電性のぺロブスカイト系酸化物形成部分に空気極を形成することを特徴とする固体電解質型燃料電池用複合型空気極の作製方法。
- 前記高融点誘電体酸化物と導電性のペロブスカイト系酸化物を形成可能な溶液の混合比が酸化物のモル比で、高融点誘電体酸化物:ペロブスカイ卜系酸化物=8:92〜40:60となる様に混合調製した混合溶液を空気極に含浸させることを特徴とする請求項1記載の固体電解質型燃料電池用複合型空気極の作製方法。
- 前記高融点誘電体酸化物と導電性のペロブスカイト系酸化物を形成可能な溶液の混合比が酸化物のモル比で、高融点誘電体酸化物:ペロブスカイ卜系酸化物=8:92〜40:60となる様に混合調製した混合溶液を固体電解質上に塗布し、乾燥させることを特徴とする請求項3記載の固体電解質型燃料電池用複合型空気極の作製方法。
- 前記高融点誘電体酸化物とペロブスカイト系酸化物を形成可能な溶液を交互に含浸させるに際して、酸化物のモル比で、高融点誘電体酸化物:ペロブスカイ卜系酸化物=8:92〜40:60となる様に交互に含浸させることを特徴とする請求項2記載の固体電解質型燃料電池用複合型空気極の作製方法。
- 前記高融点誘電体酸化物とペロブスカイト系酸化物を形成可能な溶液を交互に塗布、乾燥するに際して、酸化物のモル比で、高融点誘電体酸化物:ペロブスカイ卜系酸化物=8:92〜40:60となる様に交互に塗布することを特徴とする請求項4記載の固体電解質型燃料電池用複合型空気極の作製方法。
- 前記ペロブスカイト系酸化物は、A1−δBO3またはA2(1−δ)BO4(A:希土類元素およびこの希土類元素を一部置換した元素、B:一種以上の遷移金属元素、O:酸素)で示される酸化物であり、0≦δ≦0.20の組成であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項記載の固体電解質型燃料電池用複合型空気極の作製方法。
- 前記δは0.01≦δ≦0.20の組成であることを特徴とする請求項9記載の固体電解質型燃料電池用複合型空気極の作製方法。
- 前記ペロブスカイト系酸化物は(La 1−z Sr z ) 1−δ MnO 3 、(La 1−z Sr z ) 1−δ MnO 3 、(La 1−z Sr z ) 1−δ FeO 3 、(La 1−z Ca z ) 1−δ MnO 3 、(La 1−z Ca z ) 1−δ FeO 3 、(La 1−z Sr z ) 1−δ Mn y Fe 1−y O 3 、(La 1−z Ca z ) 1−δ Mn y Fe 1−y O 3 、(Pr 1−z Sr z ) 1−δ MnO 3 、(Nd 1−z Sr z ) 1−δ MnO 3 、(La 1−z Sr z ) 1−δ CoO 3 、(La 1−z Sr z ) 1−δ FeO 3 、(La 1−z Sr z ) 1−δ Co x Fe 1−x O 3 、(La 1−z Sr z ) 1−δ Fe x Co y Ni 1−x−y O 3 、La 1−δ Co x Ni 1−x O 3 、La 1−δ Fe x Ni 1−x O 3 、(La 1−z Ca z ) 1−δ CoO 3 、La 2(1−δ) NiO 4 、La 2(1−δ) CoO 4 、(La 1−z Sr z ) 2(1−δ) CoO 4 の一種以上(ただし、x、yは1未満で、かつx+y<1の正数、zは0〜0.5の値を示す)であることを特徴とする請求項9記載の固体電解質型燃料電池用複合型空気極の作製方法。
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