JP3729194B2 - 固体酸化物形燃料電池 - Google Patents

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Description

本発明は、出力性能に優れる円筒型固体酸化物形燃料電池に関する。特には、酸素イオン導電性に優れ、ガス透過性の無い電解質膜を有し、900℃以下の発電温度においても高い出力性能を有する円筒型固体酸化物形燃料電池に関する。
従来の固体酸化物形燃料電池の電解質膜としてイットリアを固溶させたジルコニア(以下、YSZと示す)からなる層が提案されている。(例えば、特許文献1参照。)。YSZは焼結性に優れるためガス透過性の無い電解質膜を容易に作製することは可能であるが、この材料を電解質膜に用いた固体酸化物形燃料電池の出力性能は、900℃以下の低温において電解質膜の酸素イオン導電性が低下し、空気極と電解質膜の間で起こる(1)式の反応が効率良く進まなくなるため出力性能が低くなるという問題があった。
1/2O+2e-→O2− …(1)
なお、ここで示すガス透過性の無い電解質膜とは、電解質膜の片面とその反対側面の間に圧力差を設けた時、その間を透過するガス透過量で評価され、ガス透過量Q≦2.8×10-9ms-1Pa-1(より好ましくはQ≦2.8×10-10ms-1Pa-1)であるものを指す。
固体酸化物形燃料電池の電解質膜として、スカンジアを固溶させたジルコニア(以下、SSZと示す)からなる層が提案されている。(例えば、特許文献2参照)。 SSZはYSZより酸素イオン導電性が高く、この材料を電解質膜に採用すれば固体酸化物形燃料電池の出力性能が高くなることが期待される。しかし、特許文献2に示される材料で電解質膜を作製したが、当方で行った試験の結果では、ガス透過性の無い電解質膜を作製するのが困難であった。
固体酸化物形燃料電池の電解質膜として、セリアにサマリア、ガドリア等を固溶させたセリウム含有酸化物からなる層が提案されている (例えば、特許文献3、特許文献4参照) 。特許文献3および特許文献4で提案されている材料は固体酸化物形燃料電池の燃料ガス雰囲気下で電子導電性を有するため、提案されている材料のみで電解質膜を構成すると出力性能が低下するという問題があった。
固体酸化物形燃料電池の電解質膜として、ランタンガレートからなる層が提案されている(例えば、特許文献5、特許文献6参照)。特許文献5および特許文献6で提案されている材料は固体酸化物形燃料電池の空気極としてランタンマンガナイトのようにマンガンを含む酸化物を採用した場合、マンガン成分の拡散によって同材料に電子導電性が生じ、提案されている材料のみで電解質膜を構成すると出力性能が低下するという問題があった。
特開平10-158894号公報(第1-6頁、図1-図12) 特開平7-6774号公報(第1-5頁、図1-図5) 特開平11-273451号公報(第1-8頁、図1-図5) 特許公報2813355号(第1-5頁、図1-図5) 特開2002-15756号公報(第1-9頁、図1-図9) 特開平11-335164号公報(第1-12頁、図1-図12)
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、電解質膜における構成材料の適正化を図ることで出力性能に優れる円筒型固体酸化物形燃料電池を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために本発明は、電解質膜の片面に空気極、その反対面に燃料極を配置した単電池と、電気的接続の役割を有するインターコネクターと、を備えた円筒型固体酸化物形燃料電池であって、前記電解質膜は、前記空気極側に酸素イオン導電率S1の材料からなる第一の層と、前記燃料極側に酸素イオン導電率S3の材料からなる第三の層と、前記第一の層と前記第三の層の間に酸素イオン導電率S2で、イットリアを固溶させたジルコニア材料からなる第二の層が設けられ、前記酸素イオン導電率S1と前記酸素イオン導電率S2は、S1>S2の関係にあり、前記酸素イオン導電率S3と前記酸素イオン導電率S2は、S3>S2の関係にあることを特徴とする円筒型固体酸化物形燃料電池を提供する。
本発明によれば、電解質膜は空気極および燃料極に接する面に酸素イオン導電性が高い材料からなる層を設け、それらの層の間にイットリアを固溶させたジルコニア材料からなる層を挟み込む構造なので出力性能に優れる円筒型固体酸化物形燃料電池を提供することができる。
この理由は、空気極と電解質膜の間で起こる(1)式の反応により生成した酸素イオンを電解質膜に効率良く供給することができることと、第二の層を有するので電解質膜はガス透過性が無く、酸素イオンを効率良く燃料極側に供給することができることと、電解質膜と燃料極の間で起こる(2),(3)式の反応を効率良く進めることができるためである。
1/2O+2e-→O2− …(1)
+O2−→HO+2e- …(2)
CO+O2−→CO+2e- …(3)
なお、前記(2)式の反応を厳密に説明すると(4),(5)式の2段階反応であるとの報告もある。ここではNiを例にして説明する。
2−+Ni→NiO+2e- …(4)
NiO+H→Ni+HO …(5)
しかし、厳密に上記反応を分離することは困難であるので、ここでは電極反応を(4)+(5)、すなわち(2)式で説明することとした。
本発明の好ましい態様においては、酸素イオン導電率S1の材料からなる第一の層と酸素イオン導電率S3の材料からなる第三の層は、同一組成である。
本発明によれば、酸素イオン導電率の高い同一の材料を空気極側と燃料極側に設け、少なくともジルコニアからなる材料を中間に設けるようにしたので、出力性能に優れる円筒型固体酸化物形燃料電池を提供することができる。
この理由は、空気極と電解質膜の間で起こる(1)式の反応により生成した酸素イオンを電解質膜に効率良く供給することができることと、第二の層を有するので電解質膜はガス透過性が無く、酸素イオンを効率良く燃料極側に供給することができることと、電解質膜と燃料極の間で起こる(2),(3)式の反応を効率良く進めることができるためである。
本発明の好ましい態様においては、電解質膜における第二の層の厚みは電解質膜のトータルの厚みに対して10〜90%である。
本発明によれば、電解質膜における第二の層の厚みを上記範囲にすることでコストが安価で、出力性能に優れる円筒型固体酸化物形燃料電池を提供することができる。
この理由は、10%より小さいと電解質膜材料のコストが高く実用的でない場合と、ガス透過性の無い電解質膜を容易に作製できない場合のいずれかの問題があるためで、一方、90%より大きいと電解質膜トータルの酸素イオン導電率が低下し、(1)式で生成した酸素イオンを燃料極側へ効率良く供給することができなくなり、出力性能が低下するためである。
本発明の好ましい態様においては、第二の層の厚みが電解質膜のトータルの厚みに対して20〜70%である。
本発明によれば、第二の層の厚みをさらに限定した上記範囲とすることで酸素イオン導電性が高く、ガス透過性の無い電解質膜の作製を容易にすることができ、出力性能に優れる円筒型固体酸化物形燃料電池を提供することができる。
この理由は、20%未満であると電解質膜材料のコストがやや高い場合とガス透過性の無い電解質膜を低温で作製することが難しい場合のいずれかの可能性があるためで、一方、70%より多いと電解質膜トータルの酸素イオン導電性がやや低く、900℃以下の発電において出力性能が低下する可能性があるためである。
本発明の好ましい態様においては、電解質膜における第二の層はYSZ材料である。
電解質膜にYSZ材料を含むようにすることで、ガス透過性の無い電解質膜を容易に作製することができ、出力性能に優れる円筒型固体酸化物形燃料電池を提供することができる。
この理由は、YSZ材料は焼結性が高く、低温でガス透過性の無い電解質膜を形成させることができるので、電極間の反応やMn成分の拡散等による出力性能の低下を抑制することができるためである。
本発明の好ましい態様においては、第一の層および第三の層は、SSZ材料である。
電解質膜の空気極側および燃料極側にSSZ材料を設けることで、酸素イオン導電性に優れ、ガス透過性の無い電解質膜を作製できるので出力性能に優れる円筒型固体酸化物形燃料電池を提供することができる。
この理由は、空気極側および燃料極側に酸素イオン導電性の高いSSZ材料を設けたので空気極と電解質膜の間で起こる(1)式の反応と、電解質膜と燃料極の間で起こる(2),(3)式の反応を効率よく行うことができることと、第二の層がSSZ層の間に設けられているのでガス透過性の無い電解質膜を低温で作製することができるためである。
本発明の好ましい態様においては、SSZにおけるスカンジアの固溶量が3〜12mol%である。
スカンジアの固溶量を3〜12mol%とすることで(1)式および/または(2)式と(3)式の反応をより効率良く進めることができ、出力性能に優れる円筒型固体酸化物形燃料電池を提供することができる。
この理由は、固溶量が3 mol%未満であると材料の酸素イオン導電性が低くなり、出力性能が低下するためで、一方、12mol%より多いと結晶相が立方晶の他に菱面体晶が生成し酸素イオン導電性が低下するためである。
本発明の好ましい態様においては、SSZ材料には、さらにCeO, Sm,Er及び Biから選ばれる少なくとも一種の酸化物が0〜5mol%固溶されている。
本発明によれば、CeO, Sm,Er及び Biから選ばれる少なくとも一種の酸化物を0〜5mol%固溶することで出力性能に優れる円筒型固体酸化物形燃料電池を提供することができる。
0〜5mol%含まれると好ましいのは酸素イオン導電性が高くなるか、材料の焼結性が向上するか少なくとも一方の効果が生じるためである。すなわち、酸素イオン導電性が向上すれば、出力性能が向上し、焼結性が向上すれば低温でガス透過性の無い電解質膜を形成することが可能となるためである。2種以上固溶させたものは酸素イオン導電性と焼結性の両方の効果が出る可能性があるので好ましい。一方で5mol%より多く含むと結晶相として、立方晶の他に菱面体晶相が析出し、酸素イオン導電性が低下する可能性がある。
本発明の好ましい態様においては、YSZ材料におけるイットリアの固溶量が3〜12 mol%である。
イットリアの固溶量を上記範囲とすることで、ガス透過性の無い電解質膜を容易に作製することができ、出力性能に優れる円筒型固体酸化物形燃料電池を提供することができる。
イットリアの固溶範囲を3〜12mol%に限定した理由は、3mol%未満であると酸素イオン導電性が低いことと結晶相の安定性が低下するためで、一方12mol%より多いと結晶相が立方晶の他に菱面体晶相が析出し酸素イオン導電性が低下するためである。
本発明の好ましい態様においては、電解質膜と空気極の間には酸素ガスと、電子と、から酸素イオンを生成する反応を促進させ、連通した開気孔を有する空気側電極反応層が介在されている。
電解質膜と空気極の間に酸素イオンを生成する反応を促進させ、連通した開気孔を有する層を設けることで出力性能に優れる円筒型固体酸化物形燃料電池を提供することができる。
この理由は、酸素ガスが入り込みやすい微構造で酸素イオンを生成する機能を有するため、 (1)式の反応が促進され、電解質膜へ酸素イオンを効率良く供給させることができるためである。
本発明の好ましい態様においては、空気側電極反応層は(La1−x)MnO (但し、AはSr)で表されるランタンマンガナイトとスカンジアを固溶させたジルコニアが均一に混合された層(以下、LaAMnO/SSZと示す)である。
本発明によれば、空気極と電解質膜の間にLaAMnO/SSZからなる空気側電極反応層を設けることで、700℃程度の発電温度においても出力性能に優れる円筒型固体酸化物形燃料電池を提供することができる。
この理由は、LaAMnO/SSZは700℃程度の低温においても電子導電性と酸素イオン導電性が高いので空気極と電解質膜の間で起こる(1)式の反応を効率良く進めることができることと、本発明の電解質膜の空気極側の電解質膜材料の酸素イオン導電性が高いため酸素イオンを効率良く燃料極側へ送ることができ、700℃程度の低温においても高い出力性能を得ることができるためである。
ここで示す(La1−x)MnO(但し、AはSr)で表されるランタンマンガナイトとSSZが均一に混合された層は、共沈法などの液相法によって作製された原料を用いることによって、得ることができる。すなわち、ここで示す均一とは共沈法で得られる原料レベルの均一性があれば十分均一であることを指している。
本発明の好ましい態様においては、空気極は、(La1−x)MnO(但し、AはSr)で表されるランタンマンガナイト(以下、LaAMnOと示す。)である。
本発明によれば空気極に上記の材料を採用することで出力性能に優れる円筒型固体酸化物形燃料電池を提供することができる。
この理由は、円筒型固体酸化物形燃料電池の空気雰囲気下で電子導電性が高く、かつ材料として安定であるためである。
本発明の好ましい態様においては、電解質膜と燃料極の間には燃料ガスに含まれる少なくとも水素ガス(H) および/または一酸化炭素ガス(CO)と、酸素イオン(O2−)と、からHOおよび/またはCOと、電子を生成させる反応を促進させ、連通した開気孔を有する燃料側電極反応層が介在されている。
電解質膜と燃料極の間に水素ガス(H) および/または一酸化炭素ガス(CO)が入り込みやすい微構造で、 (2)、(3)式の反応を促進させる層を設けたことで出力性能に優れる円筒型固体酸化物形燃料電池を提供することができる。
この理由は、電解質膜を移動してきた酸素イオンを効率良く、HOおよび/またはCOと、電子に変えることができるためである。
本発明の好ましい態様においては、燃料側電極反応層がNiOとスカンジアを固溶させたジルコニアが均一に混合された層(以下、NiO/SSZと示す。)またはNiとスカンジアを固溶させたジルコニアが均一に混合された層(以下、Ni/SSZと示す)である。
本発明によれば、燃料極と電解質膜の間にNiO/SSZまたはNi/SSZからなる燃料側電極反応層を設けることで、700℃程度の発電温度においても出力性能に優れる円筒型固体酸化物形燃料電池を提供することができる。
この理由は、NiO/SSZまたはNi/SSZは700℃程度の低温においても電子導電性と酸素イオン導電性が高いので電解質膜と燃料極間で起こる(2)、(3)式の反応を効率良く進めることができることと、本発明の電解質膜の燃料極側の電解質膜材料の酸素イオン導電性が高いため酸素イオンを効率良く燃料極へ送ることができ、700℃程度の低温においても高い出力性能を得ることができるためである。
ここで示すNiOは燃料ガス雰囲気下ではNiに還元され、該層はNi/SSZとなる。
なお、ここで示すNiとスカンジアを固溶させたジルコニアが均一に混合された層とは、共沈法などの液相法によって作製された原料を用いることによって得ることができる。すなわち、ここで示す均一とは共沈法で得られる原料レベルの均一性があれば十分均一であることを指している。
本発明の好ましい態様においては、燃料極がNiOとイットリアを固溶させたジルコニアが均一に混合された層(以下、NiO/YSZと示す。)またはNiとイットリアを固溶させたジルコニアが均一に混合された層(以下、Ni/YSZと示す)である。
本発明によれば燃料極を上記の層にすることで出力性能に優れる円筒型固体酸化物形燃料電池を提供することができる。
この理由は、円筒型固体酸化物形燃料電池の燃料ガス雰囲気下で電子導電性が高く、かつ耐久性に優れ、安定であるためである。
ここで示すNiOは燃料ガス雰囲気下ではNiに還元され、該層はNi/YSZとなる。
本発明の好ましい態様においては、インターコネクターは、Caを固溶させたランタンクロマイトである。
Caを固溶させたランタンクロマイトを採用することでガス透過性の無い膜を作製しやすくかつ電子導電性が高いインターコネクターを作製することができる。
この理由は、Ca以外のものを固溶させたランタンクロマイトではガス透過性の無い膜を作製するために1500℃より高い温度の焼成が必要であり、この温度で円筒型固体酸化物形燃料電池を焼成すると他の構成材料間で反応が起こり、出力性能を低下させるためである。
ここで示すガス透過性が無い膜とは、インターコネクターの片面とその反対側面の間に圧力差を設けたとき、その間を透過するガス透過量で評価され、ガス透過量Q≦2.8×10-9ms-1Pa-1(より好ましくはQ≦2.8×10-10ms-1Pa-1)であるものを指す。
本発明の好ましい態様においては、電解質膜は空気側電極反応層の表面に形成後、1350〜1500℃で焼結させてなる。
電解質膜を空気側電極反応層の表面に形成後、1350〜1500℃で焼結させることで空気極と電解質膜の間で起こる(1)式の反応を効率良く進め、かつガス透過性の無い電解質膜を形成させることができる。
この理由は、1350℃未満の焼結では焼結温度が低く、ガス透過性の無い電解質膜を作製することが困難となるためで、一方1500℃より高い焼結温度では空気側電極反応層との反応性が高まり、出力性能を低下させるためである。
本発明の好ましい態様においては、燃料側電極反応層の表面に形成後、1350〜1500℃で焼結させてなる。
電解質膜を燃料側電極反応層の表面に形成後、1350〜1500℃で焼結させることで電解質膜と燃料極の間で起こる(2)、(3)式の反応を効率良く進め、かつガス透過性の無い電解質膜を形成させることができる。
この理由は、1350℃未満の焼結では焼結温度が低く、ガス透過性の無い電解質膜を作製することが困難となるためで、一方1500℃より高い焼結温度では燃料極または燃料側電極反応層との反応性が高まり、出力性能を低下させるためである。
電解質膜の片面に空気極、その反対面に燃料極を配置した単電池と、電気的接続の役割を有するインターコネクターと、を備えた円筒型固体酸化物形燃料電池であって、前記電解質膜は、前記空気極側に酸素イオン導電率S1の材料からなる第一の層と、前記燃料極側に酸素イオン導電率S3の材料からなる第三の層と、前記第一の層と前記第三の層の間に酸素イオン導電率S2で、イットリアを固溶させたジルコニア材料からなる第二の層が設けられ、前記酸素イオン導電率S1と前記酸素イオン導電率S2は、S1>S2の関係にあり、前記酸素イオン導電率S3と前記酸素イオン導電率S2は、S3>S2の関係であることを提供したので出力性能に優れる円筒型固体酸化物形燃料電池を提供できる。
本発明における円筒型固体酸化物形燃料電池について図1を用いて説明する。
図1は、円筒タイプの固体酸化物形燃料電池の断面を示す図である。円筒状の空気極支持体1上に帯状のインターコネクター2、電解質膜3、さらに電解質膜3の上にインターコネクター2と接触しないように燃料極4が形成されている。空気極支持体の内側にAirを流し、外側に燃料ガスを流すとAir中の酸素が空気極と電解質膜の界面で酸素イオンに変わり、この酸素イオンが電解質膜を通って燃料極に達する。そして、燃料ガスと酸素イオンが反応して水および二酸化炭素になる。これらの反応は(2),(3)式で示される。燃料極4とインターコネクター2を接続することによって外部へ電気を取り出すことができる。
+O2-→HO+2e- … (2)
CO+O2-→CO+2e- … (3)
図2は、空気極1と電解質膜3の間に電極反応層1aを、そして電解質膜3と燃料極4の間に燃料側電極反応層4aを設け、さらに電解質膜を空気極側から燃料極側に向かって第一の層3a、第二の層3b、第一の層3cの3層としたタイプについて示した断面図である。
さらに、図3は電解質膜が空気極側から燃料極側に向かって、第一の層3a、第二の層3b、第三の層3aからなる3層とした第一の層と第三の層を同一組成にしたタイプについて示した断面図である。
発電の詳細を図2で説明する。空気側電極反応層1aは空気極からの酸素ガスと電子から酸素イオンが生成する(1)式の反応を促進させるために設けられた層であり、この電極反応層1aで生成した酸素イオンが電解質膜3aと3bと3cを通って燃料極側に移動する。そして、燃料側電極反応層4aで(2),(3)式に示す反応が行われ、燃料極4 とインターコネクター2を接続することで外部へ電気を取り出すことができる。それゆえ、空気側電極反応層、電解質膜および燃料側電極反応層の最適化を図れば700℃程度の低温まで出力性能に優れる円筒型固体酸化物形燃料電池を提供することが可能である。
1/2O+2e-→O2- … (1)
本発明における電解質膜は、円筒型固体酸化物形燃料電池の発電温度で空気雰囲気および燃料ガス雰囲気において、酸素イオン導電性が高いこと、ガス透過性の無い膜であること、電子導電性が無いものであることが好ましい。特に、(1)式の反応を効率良く進めることと、(2)、(3)式の反応を効率良く進めるという観点から、空気極側と燃料極側に酸素イオン導電性が高い材料を設けることが好ましい。
現在までに開発されているSSZやランタンガレートなどの酸素イオン導電性の高い材料は、材料コストが高い、あるいは焼結性が低い等の問題点を有するので円筒型固体酸化物形燃料電池の実用性を考えると材料コストが安価でかつ焼結性が高く、ある程度の酸素イオン導電性を有する材料を積層させることが好ましい。この観点から電解質膜としては空気極側に酸素イオン導電性が高い材料からなる第一の層を、燃料極側に酸素イオン導電性が高い材料からなる第三の層と、第一の層と第三の層の間に焼結性に優れ、イットリアを固溶させたジルコニア材料からなる第二の層を積層させた構成からなる電解質膜を本発明では用いる。
本発明の電解質膜における第一の層および第三の層としては、酸素イオン導電性が高い材料が好ましい。この観点から第一の層および第三の層としては、SSZ、が挙げられる。また、SSZにCeO2やBi23などを固溶させたものなどもこれらに該当する。
ここで示す酸素イオン導電性が高い材料とは、1000℃で0.1Scm-1以上であり、さらに好ましくは700℃においても0.02Scm-1以上であるものが好ましい。この理由は、1000℃で0.1Scm-1以上の酸素イオン導電率を有する材料を電解質膜に採用すれば、900〜1000℃において高い出力性能を有する円筒型固体酸化物形燃料電池を提供することができるためで、700℃において0.02Scm-1以上であると700℃程度の低温においても高い出力性能を有する円筒型固体酸化物形燃料電池を提供できる可能性があるためである。
ここで、酸素イオン導電率の測定方法について示す。電解質膜材料にPVA等のバインダーを混ぜ円盤形状の金型でプレス成形した後、焼結させガス透過性の無いサンプルを作製した。サンプル上に白金電極を取り付け後、1000℃まで昇温し、交流インピーダンス測定法により酸素イオン導電率を測定した。さらに、700℃においても同様にして酸素イオン導電率を測定した。
ここでは、1000℃と700℃のデータを記載するが、本発明における酸素イオン導電率S1とS2とS3は、1000℃における酸素イオン導電率の値で比較したときに、S1>S2、S2<S3であることを指す。上記方法で得られた酸素イオン導電率の結果の一例を表1に示す。
本発明の電解質膜における第二の層としては、ガス透過性の無い電解質膜を容易に作製することができるための焼結性と、ある程度の酸素イオン導電性を有する材料であることが好ましい。この観点からYSZが好ましい。
本発明の電解質膜における第二の層としては、ある程度の酸素イオン導電性(例えば、1000℃において0.01Scm-1以上)を有し、イットリアを固溶させたジルコニア材料であれば良く、特に制限はない。但し、酸素イオン導電性が高い材料のみで形成された電解質膜より優れた性能を得るためには焼結性に優れた材料であることがより好ましい。この理由は、焼結性が優れた材料であるとガス透過性の無い電解質膜を低温で焼結させることができ、例えば、空気極材料としてLaAMnO3を用いた場合に、電解質膜へのマンガンの拡散を抑制させることができ、出力性能の低下を抑えることができるためである。
本発明における電解質膜の原料粉末としては、ガス透過性の無い膜を作製できることが好ましい。BET値が0.5〜20m2g-1で、粒度分布は、3%径が0.1μm以上、97%径が2μm以下で、および平均粒子径が0.3〜1μm程度に制御した原料粉末であるとより好ましい。この範囲で制御した原料粉末を用いれば、焼結性が低い電解質材料の組み合わせであってもガス透過性の無い電解質膜を作製することが可能である。
ここで示すBET値とは、島津製作所製の流動式比表面積測定装置フローソーブII2300形を用いて測定して得られた値である。また、粒度分布は島津製作所製のレーザ回折式粒度分布測定装置SALD-2000を用いて測定して得られた値である。さらに、平均粒子径とは、島津製作所製のレーザ回折式粒度分布測定装置SALD-2000を用いて測定して得られるメディアン径(50%径)の値である。
本発明における電解質膜の作製法については特に限定はないが量産性に優れ、低コストであるという観点からスラリーコート法、スクリーン印刷法、シート接着法が好ましい。
本発明における電解質膜原料の作製法については特に限定はない。共沈法が一般的である。
本発明における空気極は円筒型固体酸化物形燃料電池の空気雰囲気下において電子導電性が高く、酸素ガス透過性が高く、(1)式の反応が効率よく行えるものであることが好ましい。この観点から好ましい材料としてLaAMnOを挙げることができる。
(1)式の反応を効率よく行うことができ、出力性能を向上させるという観点からは空気極と電解質膜の間に空気側電極反応層を介在させたものが好ましい。
空気側電極反応層は、(1)式の反応を効率良く行い、出力性能を向上させるために設けられた層であるので酸素イオン導電性が高いことが好ましい。また、空気側電極反応層にさらに電子導電性を有すると(1)式の反応をより促進させることができることからより好ましい。さらに、電解質膜材料との熱膨張係数が近く、電解質膜および空気極との反応性が低く、密着性が良好である材料であることが好ましい。これらのすべての特性に対し良好な材料であれば、700℃程度の低温においても高い出力特性を得ることが可能である。上記観点から好ましい材料としてLaAMnO/SSZが挙げられる。
本発明において、空気側電極反応層のLaAMnO/SSZにおけるLaAMnO(AはSr)で表されるランタンマンガナイトの組成としては、700℃以上における電子導電性、材料の安定性等から、(La1−x)MnOと表記した場合、x,yの値は0.15≦x≦0.3、0.97≦y≦1の範囲がより好ましい。
この理由は、x<0.15、x>0.3の範囲では電子導電性が低下するためで、y<0.97では反応性が高くなり電極反応層の活性を低下させるためで、y>1ではジルコニアと反応してLa2Zr27で示される絶縁層を生成するために電池の出力性能を低下させるためである。
本発明における空気側電極反応層のSSZには、さらにCeO2、Sm23、Gd23、Bi23、Y23のいずれか一種以上の酸化物が5mol%以下固溶されていても良い。これらの材料が固溶されると、酸素イオン導電性の向上および/または焼結性の向上が期待できるので含んでいる方が好ましい。
本発明におけるLaAMnO/SSZからなる空気側電極反応層の電極活性を高めるために、用いる原料粉末の平均粒子径やBET値を傾斜させた構造でも良い。例えば、空気極側から電解質膜方向へ平均粒子径を5μm、3μm、1μmにしたり、BET値を1m2g-1、3 m2g-1、5m2g-1とするようなものでも良い。(1)式の反応を効率良く行うという観点からは平均粒子径やBET値を傾斜させたものから構成されたものの方が好ましい。
本発明におけるLaAMnO/SSZからなる空気側電極反応層の電極活性を高めるために組成を傾斜させた構造でも良い。例えば、空気極側から電解質膜方向へLaAMnO/SSZを80/20、50/50、20/80としたようなものでも良い。空気極と電解質膜の熱膨張差を緩和できることと(1)式の反応を効率良く行えるという観点からは組成を傾斜させた方が好ましい。
本発明におけるLaAMnO/SSZからなる空気側電極反応層のLaAMnOは、電子導電性向上や電解質膜へのMn成分の拡散の抑制などの観点からCe、Sm、Pr、Nd、Co、Al、Fe、Ni、Crなどを固溶させたものであっても良い。特に、Niを固溶させることが好ましい。
本発明におけるLaAMnO/SSZからなる空気側電極反応層のSSZにおけるスカンジアの固溶量は3〜12mol%が好ましい。この理由はこの範囲の組成のものが酸素イオン導電性が高いためである。酸素イオン導電性が高いという観点から8〜12 mol%がより好ましい。
本発明におけるLaAMnO/SSZはさらにセリウム含有酸化物を固溶させたものまたは混合されたものであっても良い。この理由は、さらにセリウム含有酸化物を固溶させたものまたは混合されたものを用いると電解質膜へのMn成分の拡散を抑制することができ、出力性能および耐久性能に優れる円筒型固体酸化物形燃料電池を提供することができるためである。
また、電解質膜へのMn成分の拡散を抑制するという観点では、LaAMnOとセリウム含有酸化物が均一に混合された層(以下、LaAMnO/セリウム含有酸化物)が好ましい。
本発明におけるLaAMnO/SSZの原料作製法については空気側電極反応層として好ましい特性を満足できるものであれば良く、特に限定はない。共沈法、粉末混合法、噴霧熱分解法、ゾルゲル法などで作製する方法が挙げられる。
本発明において、空気極のLaAMnO(AはSr)で表されるランタンマンガナイトの組成としては、700℃以上における電子導電性、材料の安定性等から、(La1−x)MnOと表記した場合、x,yの値は0.15≦x≦0.3、0.97≦y≦1の範囲が好ましい。
この理由は、x<0.15、x>0.3の範囲では電子導電性が低下するためで、y<0.97では反応性が高くなり電極反応層の活性を低下させるためで、y>1ではジルコニアと反応してLaZrで示される絶縁層を生成するためにセルの出力性能を低下させるためである。
本発明における空気極原料の作製法については特に限定はない。粉末混合法、共沈法、噴霧熱分解法、ゾルゲル法などで作製する方法が挙げられる。
本発明における燃料極は円筒型固体酸化物形燃料電池の燃料ガス雰囲気において電子導電性が高い、燃料ガス透過性が高く、(2),(3)式の反応を効率良く行えるものであることが好ましい。この観点からは好ましい材料としては、NiOと、イットリアを固溶させたジルコニアが均一に混合された層(以下、NiO/YSZと示す。)やNiOとセリウム含有酸化物が均一に混合された層(以下、NiO/セリウム含有酸化物と示す。)等を挙げることができる。NiOは円筒型固体酸化物形燃料電池の燃料ガス雰囲気下で還元されてNiとなり、該層はNi/YSZ、Ni/セリウム含有酸化物となる。
(2),(3)式の反応を効率良く行うことができ、出力性能を向上させるという観点からは電解質膜と燃料極の間に燃料側電極反応層を設けることが好ましい。
本発明において、電解質膜の第三の層としてスカンジアを固溶させたジルコニア材料などのジルコニア系材料を用いる場合の燃料側電極反応層としては電子導電性と酸素イオン導電性の両方の特性に優れるNiOと、スカンジアを固溶させたジルコニアが均一に混合された層(以下、NiO/SSZと示す。)が好ましい。NiOは円筒型固体酸化物形燃料電池の燃料雰囲気下で還元されてNiとなり、該層はNi/SSZとなる。また、NiO/SSZの比率は重量比で10/90〜50/50が好ましい。この理由は、10/90未満では電子導電性が低すぎるためで、一方50/50より大きいと酸素イオン導電性が低すぎるためである。
本発明のNiO/SSZにおけるSSZのスカンジアの固溶量としては、3〜12mol%が好ましい。この理由は、この範囲であれば酸素イオン導電性が高く(2),(3)式の反応を促進させることができるためである。また、酸素イオン導電性が700℃程度の低温下においても高いので700℃程度の低温まで高い出力性能を有する円筒型固体酸化物形燃料電池を提供することができる。
本発明のNiO/SSZにおけるSSZにはさらに CeO、Sm、Gd、 Er、Y、Biから選ばれる少なくとも一種が5mol%以下固溶されていても良い。また、2種以上固溶させたものであっても良い。これらの材料が固溶されると燃料ガス雰囲気下で酸素イオン導電性の向上だけでなく電子導電性の向上も期待できるので含んでいる方が好ましい。
本発明における燃料極はIR損を低くするために電子導電性が高いものであることが好ましい。この観点からNiO/YSZ、NiO/セリウム含有酸化物の比率は重量比で50/50〜90/10が好ましい。この理由は、50/50未満では電子導電性が低いためで、一方90/10より大きいとNi粒子の凝集によって出力性能が低下するためである。
本発明における燃料極の組成については、NiO/YSZ、NiO/セリウム含有酸化物以外の組成としてNiO/SSZ、NiOとカルシウムを固溶させたジルコニアが均一に混合された層(以下、NiO/CSZと示す)を挙げることができる。SSZよりYSZの方が安価であることからYSZの方が好ましいが、CSZはYSZよりさらに安価であることからコストの観点からはNiO/CSZが最も好ましい。なお、NiO/CSZにおいても燃料電池の燃料ガス雰囲気下においてはNi/CSZとなる。
本発明における燃料極原料の合成法についてはNiO/SSZおよびNiO/YSZなどの燃料極材料が均一に混合されていれば良く特に限定はない。共沈法、スプレードライ法などが挙げられる。
本発明におけるインターコネクターは円筒型固体酸化物形燃料電池の発電温度の空気雰囲気および燃料ガス雰囲気において電子導電性が高い、ガス透過性が無い、酸化還元雰囲気に対して安定であるものが好ましい。この観点からランタンクロマイトが最も好ましい。
ランタンクロマイトは難焼結性であるため円筒型固体酸化物形燃料電池の焼成温度(1500℃以下)でガス透過性の無いインターコネクターを作製することが難しい。焼結性を向上させるためにCa、Sr、Mgを固溶させて用いていることが好ましい。焼結性が最も高く、円筒型固体酸化物形燃料電池の他材料と同程度の温度でガス透過性の無い膜を作製できるという点からCaを固溶させたものが最も好ましい。
インターコネクターに用いられるCaを固溶させたランタンクロマイトの固溶量については特に限定はない。Ca固溶量が多いほど電子導電性が高くなるが、材料の安定性が低下することからCaの固溶量としては10〜40mol%程度が好ましい。
本発明における円筒型固体酸化物形燃料電池はマイクロチューブのタイプ(外径10mm以下より好ましくは5mm以下)にも適応可能である。
(実施例1)
図1に示す円筒型の固体酸化物形燃料電池を基本構成に用いた。すなわち、円筒状の空気極支持体1上に帯状のインターコネクター2、電解質膜3、さらに電解質膜の上にインターコネクターと接触しないように燃料極4から構成されたものである。本実施例では図2に示すように空気極と電解質膜の間に電極反応層が設けられ、そして電解質膜と燃料極の間に燃料側電極反応層が設けられ、さらに電解質膜を3層としたタイプのものを用いた。
(1)空気極支持体の作製
空気極は、La0.75Sr0.25MnO組成で表されるSrを固溶させたランタンマンガナイトで、共沈法で作製後熱処理して空気極原料粉末を得た。平均粒子径は、30μmであった。押し出し成形法によって円筒状成形体を作製した。さらに、1500℃で焼結を行い、空気極支持体とした。
(2)空気側電極反応層の作製
空気側電極反応層としては、LaAMnO/SSZとし、該組成およびその重量比率としては、La0.75Sr0.25MnO/90 mol%ZrO-10mol%Sc=50/50を用いた。La、Sr、Mn、ZrおよびScの各々の硝酸塩水溶液を用いて、前記組成になるように調合した後、シュウ酸を加え沈殿させた。該沈殿物と上澄み液を乾燥し、さらに熱処理し、粒径を制御した後原料粉末を得た。平均粒子径は2μmであった。該電極反応層粉末40重量部と溶媒(エタノール)100重量部、バインダー(エチルセルロース)2重量部、分散剤(ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル)1重量部、消泡剤(ソルビタンセスキオレート)1重量部とを混合した後、十分攪拌してスラリーを調整した。このスラリー粘度は100mPasであった。前記スラリーを、空気極支持体(外径15mm、肉厚1.5mm、有効長400mm)上にスラリーコート法で成膜した後に1400℃で焼結させた。厚さは20μmであった。
(3)電解質膜(第一の層)のスラリー作製:
第一の層の材料はSSZとし、該組成は90mol%ZrO-10mol%Scとした。ZrOを100℃で加熱した3N以上の濃硝酸に溶解させ、蒸留水で希釈した後、硝酸塩水溶液を得た。Scについても同様の方法から硝酸塩水溶液を得た。各々の硝酸塩水溶液を前記組成になるように調合し、シュウ酸水溶液を加え、共沈させた。共沈して得られた沈殿物と上澄み液を200℃程度で乾燥し、500℃で熱分解、さらに800℃で10時間熱処理をして原料粉末を得た。平均粒子径は0.5μmであった。該粉末40重量部を溶媒(エタノール)100重量部、バインダー(エチルセルロース)2重量部、分散剤(ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル)1重量部、消泡剤(ソルビタンセスキオレート)1重量部とを混合した後、十分攪拌してスラリーを調整した。このスラリー粘度は140mPasであった。
(4)電解質膜(第二の層)のスラリー作製:
第二の層の材料はYSZとし、該組成は90 mol%ZrO-10mol%Yとした。ZrOを100℃で加熱した3N以上の濃硝酸に溶解させ、蒸留水で希釈した後、硝酸塩水溶液を得た。Yについても同様の方法から硝酸塩水溶液を得た。各々の硝酸塩水溶液を前記組成になるように調合し、シュウ酸水溶液を加え、共沈させた。共沈して得られた沈殿物と上澄み液を200℃程度で乾燥し、500℃で熱分解、さらに800℃で10時間熱処理をして原料粉末を得た。平均粒子径は0.5μmであった。該粉末40重量部と溶媒(エタノール)100重量部、バインダー(エチルセルロース)2重量部、分散剤(ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル)1重量部、消泡剤(ソルビタンセスキオレート)1重量部とを混合した後、十分攪拌してスラリーを調整した。このスラリー粘度は140mPasであった。
(5)電解質膜(第三の層)のスラリー作製:
第三の層の材料はSSZとし、該組成は90 mol%ZrO-10mol%Scとした。ZrOを100℃で加熱した3N以上の濃硝酸に溶解させ、蒸留水で希釈した後、硝酸塩水溶液を得た。Scについても同様の方法から硝酸塩水溶液を得た。各々の硝酸塩水溶液を前記組成になるように調合し、シュウ酸水溶液を加え、共沈させた。共沈して得られた沈殿物と上澄み液を200℃程度で乾燥し、500℃で熱分解、さらに800℃で10時間熱処理をして原料粉末を得た。平均粒子径は0.5μmであった。該粉末40重量部と溶媒(エタノール)100重量部、バインダー(エチルセルロース)2重量部、分散剤(ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル)1重量部、消泡剤(ソルビタンセスキオレート)1重量部とを混合した後、十分攪拌してスラリーを調整した。このスラリー粘度は140mPasであった。
(6)電解質膜の作製
前記空気側電極反応層上に、まず第一の層をスラリーコート法で成膜した。続いて、第二の層をスラリーコート法で成膜し、さらに第三の層をスラリーコート法で成膜した。その後、1400℃で焼結させた。得られた電解質膜の厚さは、30μm(空気極側第一の層:10μm、第二の層:10μm、第三の層:10μm)であった。なお、後工程でインターコネクターを成膜する部分についてはマスキングを施し、膜が塗布されないようにしておいた。
(7)燃料側電極反応層のスラリー作製
燃料側電極反応層の材料としてはNiO/SSZとし、該組成は、NiO/90mol%ZrO-10mol%Scとし、Ni、ZrおよびSc各々の硝酸塩水溶液を用いて、前記組成になるように調合した後、シュウ酸を加え沈殿させた。該沈殿物と上澄み液を乾燥した後、さらに熱処理を施し、粒径を制御して原料を得た。燃料側電極反応層の重量比率は、NiO/90mol%ZrO-10mol%Sc=20/80と、50/50の2種類を作製し、平均粒子径はいずれも0.5μmであった。該粉末100重量部と有機溶媒(エタノール)500重量部、バインダー(エチルセルロース)10重量部、分散剤(ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル)5重量部、消泡剤(ソルビタンセスオキオレート)1重量部、可塑剤(DBP)5重量部を混合した後、十分攪拌してスラリーを調整した。このスラリーの粘度は70mPasであった。
(8)燃料側電極反応層の作製
燃料側電極反応層の面積が150cm2になるように電池へマスキングをし、スラリーコート法により電解質膜上へNiO/90mol%ZrO-10mol%Sc(平均粒子径)=20/80(0.5μm)、50/50(0.5μm)の順に成膜した。膜厚(焼結後)は10μmとした。
(9)燃料極のスラリー作製:
燃料極の材料はNiO/YSZとし、該組成は、NiO/90mol%ZrO-10mol%Yとした。Ni、ZrおよびY各々の硝酸塩水溶液を用いて、前記組成になるように調合した後、シュウ酸を加え沈殿させた。該沈殿物と上澄み液を乾燥した後、さらに熱処理を施し、粒径を制御した後原料を得た。組成およびその重量比率はNiO/90mol%ZrO-10mol%Y=70/30とし、平均粒径が2μmであった。該粉末100重量部と有機溶媒(エタノール)500重量部、バインダー(エチルセルロース)20重量部、分散剤(ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル)5重量部、消泡剤(ソルビタンセスオキオレート)1重量部、可塑剤(DBP)5重量部を混合した後、十分攪拌してスラリーを調整した。このスラリーの粘度は250mPasであった。
(10)燃料極の作製
燃料側電極反応層上に燃料極をスラリーコート法により成膜した。膜厚(焼結後)は90μmとした。さらに、燃料側電極反応層と燃料極を1400℃で共焼結させた。
(11)インターコネクターの作製:
インターコネクターをLa0.80Ca0.20CrOで表されるCaを固溶させたランタンクロマイトとした。噴霧熱分解法で作製後、熱処理を施して原料粉末を得た。得られた粉末の平均粒子径は1μmであった。該粉末40重量部と溶媒(エタノール)100重量部、バインダー(エチルセルロース)2重量部、分散剤(ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル)1重量部、消泡剤(ソルビタンセスキオレート)1重量部とを混合した後、十分攪拌してスラリーを調整した。このスラリー粘度は100mPasであった。スラリーコート法によりインターコネクターを成膜し、1400℃で焼結させた。焼結後の厚みは40μmであった。
(参考例2)
電解質膜において、第一の層の材料をScYSZとし、該組成は90mol%ZrO-5mol%Sc-5mol%Yとしたこと以外は実施例1と同様にした。
(参考例3)
電解質膜において、第一の層の材料をSSZ/YSZとし、該組成は90mol%ZrO-10mol%Sc/90mol%ZrO-10mol%Y=50/50とした。前記共沈法で作製した平均粒子径が0.5μmの90mol%ZrO-10mol%Sc粉末と、前記共沈法で作製した平均粒子径が0.5μmの90mol%ZrO-10mol%Y粉末を各20重量部ずつ加えスラリーを作製したこと以外は実施例1と同様にした。
(実施例4)
第一の層の材料をSSZとし、該組成は89mol%ZrO-10mol%Sc-1mol%CeOとしたこと以外は、実施例1と同様にした。
(実施例5)
第一の層の材料をSSZとし、該組成は89mol%ZrO-10mol%Sc-0.5mol%Bi-0.5mol%CeOとしたこと以外は、実施例1と同様にした。
(参考例6)
第一の層の材料を(CeO)0.8(Gd)0.1とし、CeOとGdを上記共沈法で作製し、平均粒子径を0.5μmにしたこと以外は、実施例1と同様にした。
(参考例7)
第一の層の材料を(CeO)0.8(Gd)0.1とし、第二の層の材料をScYSZとし、該組成は90mol%ZrO-5mol%Sc-5mol%Yとしたこと以外は、実施例1と同様にした。
(参考例8)
第三の層の材料をScYSZとし、該組成は90mol%ZrO-5mol%Sc-5mol%Yとしたこと以外は実施例1と同様にした。
(参考例9)
第一の層と第三の層の材料をScYSZとし、該組成は90mol%ZrO-5mol%Sc-5mol%Yとしたこと以外は実施例1と同様にした。
(参考例10)
第一の層の材料を(CeO)0.8(Gd)0.1とし、第三の層の材料をScYSZとし、該組成は90mol%ZrO-5mol%Sc-5mol%Yとしたこと以外は、実施例1と同様にした。
(参考例11)
第一の層と第三の層の材料をScYSZとし、該組成は90mol%ZrO-8mol%Sc-2mol%Yとし、第二の層の材料をScYSZとし、該組成を90mol%ZrO-5mol%Sc-5mol%Yとしたこと以外は実施例1と同様にした。
(比較例1)
電解質膜を90mol%ZrO-10mol%Yのみの構成とし、膜厚を30μmにしたこと以外は実施例1と同様にした。
(発電試験)
実施例1、4、5、参考例2、3、6〜11および比較例1で得られた電池(燃料極有効面積:150cm2)を用いて発電試験を行った。このときの運転条件は以下のとおりであった。
燃料:(H+11%HO):N = 1:2
酸化剤:Air
発電温度:800℃
電流密度:0.3Acm-2
(ガス漏れ試験)
実施例1、4、5、参考例2、3、6〜11および比較例1で得られた電池に対し空気極支持体内部に窒素ガスを流し、空気極内部から0.1MPaの圧力を加え、電解質膜を透過するガス透過量を測定した。これにより電解質膜がガス透過性の無い膜であるかを評価した。
表3に、発電試験における電位と電解質膜のガス透過量の結果を示す。実施例1、4、5、参考例2、3、6〜11および比較例1においては電解質膜としてより好ましいガス透過量Q≦2.8×10-10ms-1Pa-1の範囲内であり、電解質膜のガス透過性として問題ないことが確認された。また、発電電位については、実施例1、4、5、参考例2、3、6〜11では0.6V以上であるが、比較例1においては0.57Vと明らかに低い結果となった。以上の結果から、電解質膜における第一の層と第二の層と第三の層を、SSZとYSZとSSZなどの構成にすることによって出力性能に優れる円筒型固体酸化物形燃料電池を提供できることを確認することができた。
実施例4 、実施例5および表1で示すようにSSZにさらにCeO, Sm, Er及びBiから選ばれる少なくとも一種の酸化物が0〜5mol%固溶されたものを用いると発電性能の向上または電解質膜のガス透過量の低減をもたらし、より好ましいことが確認された。
参考例12)
電解質膜における第三の層の材料をセリウム含有酸化物とし、該組成を(CeO)0.8(Sm)0.1とした。(CeO)0.8(Sm)0.1は、上記共沈法で作製し平均粒子径を0.5μmとした。実施例1と同様の第一の層と第二の層の上に成膜後、1420℃で焼結させた。続いて、燃料側電極反応層および燃料極の材料は、NiO/セリウム含有酸化物として、該組成をNiO/(CeO)0.8(Sm)0.1とした。Ni、CeおよびSm各々の硝酸塩水溶液を用いて、前記組成になるように調合した後、シュウ酸を加え沈殿させた。該沈殿物と上澄み液を乾燥した後、さらに熱処理を施し、粒径を制御して原料を得た。燃料側電極反応層の組成およびその重量比率はNiO/(CeO)0.8(Sm)0.1=20/80と50/50の2種類を作製し、平均粒子径はいずれも0.5μmとした。燃料極の組成およびその重量比率はNiO/(CeO)0.8(Sm)0.1=70/30とした。これら以外は実施例1と同様にした。
参考例13)
電解質膜における第一の層をセリウム含有酸化物として、該組成を(CeO) 0.8(Gd) 0.1としたこと以外は参考例12と同様にした。
参考例14)
電解質膜における第一の層をセリウム含有酸化物として、該組成を(CeO)0.8(Gd) 0.1とし、第二の層をScYSZとし、該組成を90mol%ZrO−5mol%Sc−5mol%Yとしたこと以外は参考例12と同様にした。
参考例15)
電解質膜における第一の層をScYSZとし、該組成を90mol%ZrO-5mol%Sc-5mol%Yとしたこと以外は参考例12と同様にした。
(比較例2)
電解質膜を (CeO) 0.8(Gd)0.1のみの構成とし、膜厚を30μmとし、焼結温度を1430℃にしたこと以外は参考例12と同様にした。
(発電試験)
参考例12〜15および比較例1,2で得られた電池(燃料極有効面積:150cm2)を用いて発電試験を行った。このときの運転条件は以下のとおりであった。
燃料:(H+11%HO):N = 1:2
酸化剤:Air
発電温度:800℃
電流密度:0.3Acm-2
(ガス漏れ試験)
参考例12〜15および比較例1,2で得られた電池に対し空気極支持体内部に窒素ガスを流し、空気極内部から0.1MPaの圧力を加え、電解質膜を透過するガス透過量を測定した。これにより電解質膜がガス透過性の無い膜であるかを評価した。
表4に、発電試験における電位と電解質膜のガス透過量の結果を示す。参考例12,15、比較例1においては電解質膜としてより好ましいガス透過量Q≦2.8×10-10ms-1Pa-1の範囲内であり、参考例13,14,比較例2においては電解質膜として好ましいガス透過量Q≦2.8×10-9ms-1Pa-1の範囲内であり、いずれも電解質膜としてのガス透過性は問題ないことが確認された。一方、発電電位については参考例12〜15においては電位が0.6V以上であるのに対し、比較例1では0.57V,比較例2では0.1Vと極めて低い値となった。比較例2の電位が極めて低いのは(CeO)0.8(Sm) 0.1のみではセリウム含有酸化物が酸化還元雰囲気に曝されることによって電子導電性を有し、起電力が大きく低下したためである。参考例12〜15で示されるように、電解質膜の第一の層と第二の層と第三の層を、SSZとYSZと(CeO)0.8(Sm) 0.1、(CeO) 0.8(Gd)0.1とYSZと(CeO) 0.8(Sm)0.1、 ScYSZとYSZと(CeO) 0.8(Sm)0.1等の構成にすることで出力性能に優れる円筒型固体酸化物形燃料電池を提供することができることを確認することができた。
参考例16)
第一の層の材料をランタンガレートし、該組成をLa0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.2とした。La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.2は、La、SrCO、Ga、MgOを前記組成になるように配合し、ボールミルで混合後、1200℃で熱処理し、粉砕して平均粒子径を0.5μmとした。空気側電極反応層については、La0.75Sr0.25MnOと90 mol%ZrO-10mol%Scと(CeO) 0.8(Sm)0.1の各々の粉末を混合後、熱処理を行い、粉砕し、粒径を制御した後原料粉末を得た。平均粒子径は2μmであった。該原料の仕込み組成は重量比でLa0.75Sr0.25MnO/90 mol%ZrO-10mol%Sc/(CeO) 0.8(Sm)0.1=40/40/20であったこと以外は実施例1と同様にした。
参考例17)
第一の層の材料をランタンガレートし、該組成をLa0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.2とした。第三の組成をScYSZとし、該組成を該組成を90 mol%ZrO-5mol%Sc-5mol%Yとしたこと以外は参考例16と同様にした。
参考例18)
第一の層の材料をランタンガレートし、該組成をLa0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.2とした。空気側電極反応層については、La0.75Sr0.25MnOと90 mol%ZrO-10mol%Scと(CeO)0.8(Sm) 0.1の各々の粉末を混合後、熱処理を行い、粉砕し、粒径を制御した後原料粉末を得た。平均粒子径は2μmであった。該原料の仕込み組成は重量比でLa0.75Sr0.25MnO/90 mol%ZrO-10mol%Sc/(CeO) 0.8(Sm)0.1=40/40/20であった。第三の層の材料をセリウム含有酸化物とし、該組成を(CeO) 0.8(Sm)0.1とした。(CeO) 0.8(Sm)0.1の原料は、上記共沈法で作製し平均粒子径を0.5μmとした。燃料側電極反応層および燃料極の材料は、NiO/セリウム含有酸化物として、該組成をNiO/(CeO)0.8(Sm) 0.1とした。Ni、CeおよびSm各々の硝酸塩水溶液を用いて、前記組成になるように調合した後、シュウ酸を加え沈殿させた。該沈殿物と上澄み液を乾燥した後、さらに熱処理を施し、粒径を制御して原料を得た。燃料側電極反応層の組成およびその重量比率はNiO/(CeO)0.8(Sm) 0.1=20/80と50/50の2種類とし、原料粉末の平均粒子径はいずれも0.5μmとした。燃料極の組成およびその重量比率はNiO/(CeO)0.8(Sm) 0.1=70/30とした。これら以外は実施例1と同様にした。
参考例19)
第三の層の材料をランタンガレートとし、該組成をLa0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.115Co0.085としたこと以外は参考例18と同様とした。
参考例20)
第一の層の材料をセリウム含有酸化物とし、該組成を(CeO)0.8(Gd) 0.1とした。さらに、第三の層の材料をランタンガレートとし、該組成をLa0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.2としたこと以外は参考例18と同様とした。
参考例21)
第一の層および第三の層の材料をランタンガレートとし、該組成をLa0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.2としたこと以外は参考例18と同様とした。
参考例22)
第一の層の材料をScYSZとし、該組成を90 mol%ZrO-5mol%Sc-5mol%Yとした。さらに、第三の層の材料をランタンガレートとし、該組成をLa0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.2としたこと以外は参考例18と同様とした。
参考例23)
第一の層および第三の層の材料をランタンガレートとし、該組成をLa0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.2とした。第二の層の材料をSSZとし、該組成は90 mol%ZrO-10mol%Scであること以外は、参考例18と同様とした。
参考例24)
第一の層の材料をセリウム含有酸化物とし、該組成を(CeO)0.8(Gd) 0.1とした。第三の層の材料をランタンガレートとし、該組成をLa0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.2とした。第二の層の材料をSSZとし、該組成を90 mol%ZrO-10mol%Scとした以外は、参考例18と同様とした。
(比較例3)
電解質膜をLa0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.2のみの構成とし、膜厚を30μmにしたこと以外は参考例18と同様にした。
(発電試験)
参考例16〜24および比較例1〜3で得られた電池(燃料極有効面積:150cm2)を用いて発電試験を行った。このときの運転条件は以下のとおりであった。
燃料:(H+11%HO):N = 1:2
酸化剤:Air
発電温度:800℃
電流密度:0.3Acm-2
(ガス漏れ試験)
参考例16〜24および比較例1〜3で得られた電池に対し空気極支持体内部に窒素ガスを流し、空気極内部から0.1MPaの圧力を加え、電解質膜を透過するガス透過量を測定した。これにより電解質膜がガス透過性の無い膜であるかを評価した。
表5に、発電試験における電位と電解質膜のガス透過量の結果を示す。参考例16〜24,比較例1,3においては電解質膜としてより好ましいガス透過量Q≦2.8×10-10ms-1Pa-1の範囲内であり、比較例2においては電解質膜として好ましいガス透過量Q≦2.8×10-9ms-1Pa-1の範囲内であり、いずれも電解質膜としてのガス透過性は問題ないことが確認された。一方、発電電位については参考例16〜24においては電位が0.6Vを超えているのに対し、比較例1では0.57V、比較例2では0.1V、比較例3では0.3Vと極めて低い値となった。これは、(CeO)0.8(Sm) 0.1のみではセリウム含有酸化物が酸化還元雰囲気に曝されることによって電子導電性を有し、起電力が大きく低下したためであり、また、La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.2のみでは空気側電極反応層および空気極からのMnがLa0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.2に入りこみ電子導電性を有し起電力が低下したためである。これに対し、参考例16〜24で示されるように少なくともジルコニアを含む第二の電解質層を中間に設け、(CeO)0.8(Sm) 0.1やLa0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.2を空気極側および/または燃料極側に設けることによって、出力性能に優れる円筒型固体酸化物形燃料電池を提供することができることを確認することができた。
以上の実施例1、4、5、参考例2、3、6〜24および比較例1〜3の結果から、電解質膜がイットリアを固溶させたジルコニア材料からなる第二の層と、第二の層よりも酸素イオン導電性が高い材料からなる第一の層を空気極側に設け、第二の層よりも酸素イオン導電性が高い材料からなる第三の層を燃料極側に設けることによって、出力性能に優れる円筒型固体酸化物形燃料電池を提供することができることを確認することができた。
(第二の層の電解質膜における厚みの比率について)
(実施例25)
第一の層の厚みを1μm、第二の層の厚みを28μm、第三の層の厚みを1μmとした以外は実施例1と同様にした。
(実施例26)
第一の層の厚みを1.5μm、第二の層の厚みを27μm、第三の層の厚みを1.5μmとした以外は実施例1と同様にした。
(実施例27)
第一の層の厚みを3μm、第二の層の厚みを24μm、第三の層の厚みを3μmとした以外は実施例1と同様にした。
(実施例28)
第一の層の厚みを4.5μm、第二の層の厚みを21μm、第三の層の厚みを4.5μmとした以外は実施例1と同様にした。
(実施例29)
第一の層の厚みを7.5μm、第二の層の厚みを15μm、第三の層の厚みを7.5μmとした以外は実施例1と同様にした。
(実施例30)
第一の層の厚みを10.5μm、第二の層の厚みを9μm、第三の層の厚みを10.5μmとした
以外は実施例1と同様にした。
(実施例31)
第一の層の厚みを12μm、第二の層の厚みを6μm、第三の層の厚みを12μmとしたこと以外は実施例1と同様にした。
(実施例32)
第一の層の厚みを13.5μm、第二の層の厚みを3μm、第三の層の厚みを13.5μmとした以外は実施例1と同様にした。
(実施例33)
第一の層の厚みを14μm、第二の層の厚みを2μm、第三の層の厚みを14μmとした以外は実施例1と同様にした。
(比較例4)
電解質膜を90mol%ZrO-10mol%Scのみの構成とし、膜厚を30μmにし、1420℃で焼結させたこと以外は実施例1と同様にした。
(発電試験)
実施例1、25〜33および比較例1、4で得られた電池(燃料極有効面積:150cm2)を用いて発電試験を行った。このときの運転条件は以下のとおりであった。
燃料:(H+11%HO):N = 1:2
酸化剤:Air
発電温度:800℃
電流密度:0.3Acm-2
(ガス漏れ試験)
実施例1、25〜33および比較例1、4で得られた電池に対し空気極支持体内部に窒素ガスを流し、空気極内部から0.1MPaの圧力を加え、電解質膜を透過するガス透過量を測定した。これにより電解質膜がガス透過性の無い膜であるかを評価した。
表6に第二の層の厚みを変えた電池の発電電位および電解質膜のガス透過量の結果を示す。発電電位についてはいずれも比較例1より電位が高く、空気極側に第一の層を、燃料極側に第三の層を設けることで出力性能が向上することが確認された。発電電位を見ていくと実施例25では比較例1とほとんど変わらないが実施例26の第二の層の厚みを90%以下にすると急激に電位が高くなり、厚みの割合を30%まで減らすところまでは電位が高くなる傾向が見られた。さらに、厚みの割合を30%以下にすると逆に電位が低下する傾向が見られた。一方、ガス透過量を見ていくといずれも電解質膜として好ましいガス透過量Q≦2.8×10-9ms-1Pa-1の範囲内ではあるものの第二の層が薄くなるほどガス透過量が大きくなる傾向が見られ、第二の層の厚みを10%より薄くすると、ガス透過量が急激に大きくなる傾向が見られた。以上の結果から、第二の層が90%より厚いと電位向上の効果が小さく、10%より薄くすると、ガス透過量が大きく電位が低下することから、第二の層の厚みとしては10〜90%の範囲が好ましいことが確認された。さらに、発電電位の結果とガス透過量の結果から20〜70%がより好ましいことが確認された。
(焼結温度の効果について)
(実施例34)
電解質膜の焼結温度を1340℃にした以外は実施例1と同様とした。
(実施例35)
電解質膜の焼結温度を1350℃にした以外は実施例1と同様とした。
(実施例36)
電解質膜の焼結温度を1450℃にした以外は実施例1と同様とした。
(実施例37)
電解質膜の焼結温度を1500℃にした以外は実施例1と同様とした。
(実施例38)
電解質膜の焼結温度を1510℃にした以外は実施例1と同様とした。
(発電試験)
実施例1、34〜38および比較例1で得られた電池(燃料極有効面積:150cm2)を用いて発電試験を行った。このときの運転条件は以下のとおりであった。
燃料:(H+11%HO):N = 1:2
酸化剤:Air
発電温度:800℃
電流密度:0.3Acm-2
(ガス漏れ試験)
実施例1、34〜38および比較例1で得られた電池に対し空気極支持体内部に窒素ガスを流し、空気極内部から0.1MPaの圧力を加え、電解質膜を透過するガス透過量を測定した。これにより電解質膜がガス透過性の無い膜であるかを評価した。
表7に電解質膜の焼結温度に対する発電電位およびガス透過量の結果を示す。発電電位については1340℃および1510℃は比較例1より電位が高いがほとんど差がないことがわかる。また、ガス透過量についてはいずれも電解質膜として好ましいガス透過量Q≦2.8×10-9ms-1Pa-1の範囲内となっている。以上の結果から電解質膜の焼結温度としては、1350〜1500℃の範囲が好ましいことが確認された。
なお、本実施例では空気極支持体上に成膜する例を示したが、燃料極支持体上に成膜する場合においても電解質膜を上記構成にすることで電解質膜と燃料極の間で起こる(2),(3)式の反応を効率良く進め、かつ空気極と電解質膜の間で起こる(1)式の反応を効率良く進めることができるという効果を同様の発電性能が得られると考えられる。
(発電試験)
実施例1,4、参考例 2,7〜9,11および比較例1で得られた電池(燃料極有効面積:150cm2)を用いて発電試験を行った。このときの運転条件は以下のとおりであった。
燃料:(H+11%HO):N = 1:2
酸化剤:Air
発電温度:700〜1000℃
電流密度:0.3Acm-2
図4に700〜1000℃における発電電位を示す。900〜1000℃においては比較例1と比較してほとんど差が認められないが、900℃以下になると比較例との電位差が大きくなり、700℃においては0.2V程度の差がつくことが確認された。以上の結果から、実施例1,4、参考例 2,7〜9,11で代表される電解質膜構成にすることによって700℃〜1000℃の範囲で出力性能に優れる円筒型固体酸化物形燃料電池を提供できることを確認することができた。
円筒タイプの固体酸化物形燃料電池の断面を示す図である。 図1に示す円筒型固体酸化物形燃料電池の空気極、電解質膜および燃料極構成について詳細に示した断面図である。 図1に示す円筒型固体酸化物形燃料電池の空気極、電解質膜および燃料極構成について詳細に示した断面図である。 発電温度(横軸)と試験電池の発電電位(縦軸)の関係を示すグラフである。
符号の説明
1:空気極支持体
2:インターコネクター
3:電解質膜
4:燃料極
1a:電極反応層
3a:第一の層
3a':第三の層(第一の層と同一材料)
3b:第二の層
3c: 第三の層
4a:燃料極側電極反応層

Claims (12)

  1. 電解質膜の片面に空気極、その反対面に燃料極を配置した単電池と、電気的接続の役割を有するインターコネクターと、を備えた円筒型固体酸化物形燃料電池であって、前記電解質膜は、1000℃において前記空気極側に酸素イオン導電率S1の材料からなる第一の層と、前記燃料極側に酸素イオン導電率S3の材料からなる第三の層と、前記第一の層と前記第三の層の間に酸素イオン導電率S2で、イットリアを固溶させたジルコニア材料である第二の層が設けられ、前記酸素イオン導電率S1と前記酸素イオン導電率S2は、S1>S2の関係にあり、前記酸素イオン導電率S3と前記酸素イオン導電率S2は、S3>S2の関係にあり、前記第一の層および前記第三の層は、スカンジアを固溶させたジルコニア材料であって、前記スカンジアを固溶させたジルコニア材料にCeO 、Sm 、Er およびBi から選ばれる少なくとも一種の酸化物が0〜5mol%固溶されている(但し、Al、Yb、Luは含まない)ことを特徴とする円筒型固体酸化物形燃料電池。
  2. 前記イットリアを固溶させたジルコニア材料におけるイットリアの固溶量は、3〜12mol%であることを特徴とする請求項1に記載の円筒型固体酸化物形燃料電池。
  3. 前記第二の層の厚みは、電解質膜トータルの厚みに対して10〜90%であることを特徴とする請求項1または2に記載の円筒型固体酸化物形燃料電池。
  4. 前記第二の層の厚みは、電解質膜トータルの厚みに対して20〜70%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の円筒型固体酸化物形燃料電池。
  5. 前記スカンジアを固溶させたジルコニア材料におけるスカンジアの固溶量は、3〜12mol%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の円筒型固体酸化物形燃料電池。
  6. 前記電解質膜と空気極の間には、酸素ガスと、電子と、から酸素イオンを生成する反応を促進させ、連通した開気孔を有する空気側電極反応層が介在されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の円筒型固体酸化物形燃料電池。
  7. 前記空気側電極反応層は、(La1−x)MnO(但し、AはSr)で表されるランタンマンガナイトとスカンジアを固溶させたジルコニアが均一に混合された層であることを特徴とする請求項6に記載の円筒型固体酸化物形燃料電池。
  8. 前記空気極は、(La1−x)MnO(但し、AはSr)で表されるランタンマンガナイトからなることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の円筒型固体酸化物形燃料電池。
  9. 前記電解質膜と燃料極の間には、燃料ガスに含まれる少なくとも水素ガス(H) および/または一酸化炭素ガス(CO)と、酸素イオン(O2-)と、からHOおよび/またはCOと、電子を生成させる反応を促進させ、連通した開気孔を有する燃料側電極反応層が介在されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の円筒型固体酸化物形燃料電池。
  10. 前記インターコネクターは、Caを固溶させたランタンクロマイトであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の円筒型固体電解質型燃料電池。
  11. 前記電解質膜は、空気側電極反応層の表面に形成後、1350〜1500℃で焼結させてなることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の円筒型固体酸化物形燃料電池。
  12. 前記電解質膜は、燃料側電極反応層の表面に形成後、1350〜1500℃で焼結させてなることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の円筒型体酸化物形燃料電池。
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