JP4404557B2 - 成膜方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、成膜方法に関する。さらに詳述すると、本発明は、固体電解質燃料電池(SOFC)の製造において燃料極にインターコネクタ膜を成膜する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
特許文献1に開示された従来の平板型固体電解質燃料電池では、多孔質燃料極と、多孔質燃料極の表面あるいは裏面のいずれか一方の面に成膜した電解質膜と、この電解質膜に成膜した空気極膜と、多孔質燃料極の他方の面に成膜したセパレータ膜と、空気極膜に接合した多孔質空気極とにより、単セルを形成している。そして、この単セルを積層して側面にマニホールド板を取り付けることにより、セルスタックを形成している。燃料極として、ニッケル(製造時は酸化ニッケル)とイットリアを固溶して安定化したジルコニア(YSZ)とを混合して焼結したものが開示されている。
【0003】
セパレータ(インターコネクタとも呼ばれる)は、供給される燃料ガスと空気とを混合しないよう分離するために緻密であること、隣接するセル同士を電気的に接続するために高い電気伝導率を有すること、熱応力の発生を防止するために熱膨張係数が他のセル構成材と近似していること、等が要求される。そのような要求を満たすセパレータ材料として、ランタンクロマイト系酸化物が従来用いられている。また、緻密な膜を得るために、ランタンクロマイト系酸化物にカルシウムをドープすることも従来行なわれている。セパレータ膜の成膜方法として、特許文献1には、スラリーコート法、塗布熱分解法、ゾルゲル法が開示されている。
【0004】
一方、基板上に目的材料を成膜する方法として、物理蒸着法(PVD)、化学蒸着法(CVD)、電気化学蒸着法(EVD)、溶射法が従来知られている。
【0005】
【特許文献1】
PCT/JP99/02897(国際公開番号 WO 00/74159)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、本願発明者等が種々実験・検討したところ、燃料極にセパレータ膜を成膜する過程において、セパレータ材料に含まれるランタンやカルシウムと、燃料極材料に含まれるジルコニアとが化学反応(固相反応)を起こしてしまうことが知見された。当該反応により、本来緻密なセパレータ膜を得るためのカルシウムが燃料極材料に吸収されてしまう形となり、緻密なセパレータ膜を得ることができない。しかも、当該反応により、電気抵抗が高く熱膨張挙動が他のセル構成材と大きく異なる物質(パイロクロール型酸化物(例えば、ランタンジルコネートLa2Zr2O7など))が発現してしまう。
【0007】
一方、物理蒸着法(PVD)、化学蒸着法(CVD)、電気化学蒸着法(EVD)、溶射法による成膜は、何れもバッチ処理を主体としており、かつ歩留まりが低いために、比較的高いコストを必要とする。特に、電気化学蒸着法では原料に塩化物を用いるために設備が大掛かりになりやすい。また、溶射法で緻密膜を得ようとする場合には、高温での処理が可能であるが高価で大掛かりな設備を必要とするプラズマ溶射法や減圧溶射法を用いなければならない。
【0008】
そこで本発明は、燃料極などの母材とその母材上に形成するインターコネクタなどの目的とする膜との間で生じ、母材または目的とする膜が備えるべき機能を損なう不都合な化学反応を、防止できる安価な成膜方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するため、請求項1記載の成膜方法は、ジルコニアを組成に有する固体電解質燃料電池の燃料極に、ランタンクロマイト系ペロブスカイト型酸化物により固体電解質燃料電池のインターコネクタ膜を形成する方法において、チタン系ペロブスカイト型酸化物またはセリウム系蛍石型酸化物またはこれらの少なくとも一方を含む混合物を用いて燃料極上に中間層を形成し、当該中間層上にランタンクロマイト系ペロブスカイト型酸化物を用いてインターコネクタ膜を形成するようにしている。
【0014】
したがって、燃料極材料に含まれるジルコニアとインターコネクタ材料に含まれるランタンとの間で生じる化学反応が中間層により防止される。これにより、燃料極またはインターコネクタ膜が備えるべき機能を損なうことなく、燃料極に対してインターコネクタ膜を形成することができる。
【0015】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の成膜方法において、中間層とインターコネクタ膜の一方または双方をスラリーコート法により成膜するようにしている。この場合、スラリーの濃度やスラリーの塗布および焼成の回数を調整することで膜厚の制御を行なうことができる。
【0016】
また、請求項3記載の発明は、請求項1または2に記載の成膜方法において、ランタンクロマイト系ペロブスカイト型酸化物は、カルシウムを含むものとしている。したがって、燃料極材料に含まれるジルコニアとインターコネクタ材料に含まれるカルシウムとの間で生じる化学反応が中間層により防止されると共に、カルシウムを含むランタンクロマイト系ペロブスカイト型酸化物によって緻密な膜を成膜することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の構成を図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。この成膜方法は、第1の材料によりなる母材に対して、第2の材料により目的とする膜を形成する方法であり、第1および第2の材料間で生じる化学反応であって母材または目的とする膜が備えるべき機能の一方または双方を損なわせる化学反応を、防止する第3の材料を用いて、母材上に中間層を形成し、その中間層上に第2の材料を用いて目的とする膜を形成するようにしている。
【0018】
本実施形態では、平板型固体電解質燃料電池における燃料極へのインターコネクタ膜の成膜に適用した例について説明する。従って本実施形態では、燃料極が母材に該当し、インターコネクタ膜が目的とする膜に該当する。この平板型固体電解質燃料電池は、例えば図2に示すように、支持体(基板)となる燃料極2と、燃料極2の一方の面に成膜した電解質膜3と、電解質膜3に成膜した空気極膜4と、燃料極2の他方の面に成膜したインターコネクタ膜5とにより、単セル1を形成している。この単セル1では、燃料極2により単セル1の強度を確保するように、燃料極2を板材とし、電解質及び空気極及びインターコネクタをそれぞれ膜としている。例えば、基板となる燃料極2の板厚を数mm(例えば1〜10mm程度)とするのに対して、電解質膜3、空気極膜4、インターコネクタ膜5の膜厚を数μm〜数十μm程度(例えば電解質膜3を30μm程度、空気極膜4を100μm程度、インターコネクタ膜5を50μm程度)としている。
【0019】
本実施形態における第1の材料としての燃料極材料は、例えば酸化ニッケル(但し燃料電池作動時には金属ニッケルに変化する)と、8モル%のイットリアを固溶して結晶構造を安定化させたジルコニアとの混合物(NiO−8YSZ(Zr0.92Y0.08O2)サーメット)としている。このニッケルとイットリア安定化ジルコニア(YSZ)の混合材料は、平板型固体電解質燃料電池の燃料極材料として一般的に用いられている。燃料極2は、多孔性の例えば矩形の板材から成るものとしている。この多孔性の板材は、燃料ガスを十分に流通できると共に、単セル1として必要な強度と電子や酸素イオンの十分な導電性とを有するように形成する。燃料極2を多孔質体により形成することで、電極部材の単位容積当たりの燃料ガスとの接触面積を広くして発電性能の向上を図ることができる。また、リブ等を設けてガス流路を形成する従来の単セル1の複雑な構造に比べて単セル1の構造を簡素化できるので、組立精度を高くする必要が無くなる。よって、セルスタックの製造を容易にできると共に熱応力や外力に対して高強度化を図ることができる。さらに、セルスタックが高強度化されるので、多孔質燃料極2等の寸法を拡大してセルスタックの発電性能の向上を図ることができる。
【0020】
さらに、燃料極2に使用する材料として、本願出願人が既に出願した発明に係る燃料極材料の使用が特に好ましい。この燃料極材料は、比較的大きな粒径を有するYSZ粗粒子群と比較的小さな粒径を有するYSZ微粒子群と酸化ニッケルまたはニッケル粒子群との混合物(特願平7−127375号参照)である。この混合物によれば、燃料極2の内部でYSZ粗粒子により骨格が形成されるので単セル1の強度を向上することができると共に、高温・還元雰囲気下において気孔率の変化や体積の収縮を極めて低減できるので燃料極2の長寿命化及び高性能の長期安定化を図ることができる。
【0021】
この燃料極2を製造する際は、酸化ニッケルとYSZを混合してから例えばメチルセルロースやポリビニルアルコール等の成形剤を加えてプレス成形する。または、この酸化ニッケルとYSZと成形剤の混合材を粘土状にして押し出し成形する。そして、得られた成形材を1400℃程度で焼結して多孔質燃料極2を形成する。ここで、プレスや押し出しの圧力の強さや焼結温度の製造条件は、形成された多孔質燃料極2が燃料ガスを容易に通過できる程度の気孔率を有し、尚かつ単セル1として必要な機械的強度を有するように設定する。ここで、機械的強度を多孔質燃料極2の材質から成る無垢の固体よりも弱く設定した場合は、セルスタックの発電動作時の熱応力を吸収して緩和することができるので、セルスタックの強度を向上できる。
【0022】
本実施形態における第2の材料としてのインターコネクタ材料は、ランタンクロマイト系ペロブスカイト型酸化物(LCOとも呼ぶ。)としている。このランタンクロマイト系ペロブスカイト型酸化物は、例えば下記の化学式で表記できる。
【0023】
【化1】
(La,A1)(Cr,B1)O3
【0024】
ここで、化学式1中のA1,B1はランタンクロマイト(LaCrO3)にドープされる物質であり、例えばA1はストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)、バリウム(Ba)等であり、B1はコバルト(Co)、マグネシウム(Mg)等である。緻密なインターコネクタ膜5を得るためには、特にカルシウムをドープすることが好ましい。但し、場合によっては化学式1中のA1,B1の一方または双方が含まれなくても良い。例えば本実施形態ではインターコネクタ材料として一般に用いられているLa0.75Ca0.27Cr0.9Co0.1O3を使用する。この材料は、実際には(La,Ca)(Cr,Co)O3 とCaOの混合相であり、少量の過剰なCaOを添加することによって緻密な膜を得るようにしたものである。
【0025】
本実施形態における中間層は、燃料極2が備えるべき機能(例えば導電性やガス拡散性など)やインターコネクタ膜5が備えるべき機能(例えば導電性、気密性、耐熱性、耐食性など)を損なわせる化学反応(固相反応)を防止する役割を果たす。中間層を設けることで、インターコネクタ材料に含まれるランタンやカルシウムが、燃料極材料に含まれるジルコニア(酸化ジルコニウムZrO2)と反応してしまうことを防止する。特に、本実施形態においてインターコネクタ材料として用いるLa0.75Ca0.27Cr0.9Co0.1O3はカルシウムを過剰に含むため、このカルシウムが燃料極材料に含まれるジルコニアと反応してしまい易いが、中間層によってこの反応を防止する。そのような中間層の材料(第3の材料)としては、チタン系ペロブスカイト型酸化物またはセリウム系蛍石型酸化物が有効である。
【0026】
チタン系ペロブスカイト型酸化物は、例えば下記の化学式で表記される。
【0027】
【化2】
(A2,B2)(Ti,C2)O3
【0028】
ここで、化学式2中のA2は、例えばカルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、マグネシウム(Mg)、バリウム(Ba)等のアルカリ土類金属である。化学式2中のB2は、同式中のA2の一部と置換可能な金属であり、例えばLn(ランタノイド元素(La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu)を示す。)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)などの3価の金属である。化学式2中のC2は、同式中のチタンの一部と置換可能な金属であり、例えばニオブ(Nb)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、ガリウム(Ga)、スカンジウム(Sc)等である。化学式2中のA2を金属B2で部分置換すること及びチタンを金属C2で部分置換することで、中間層における電気伝導率が高まり燃料電池の性能を向上できる。但し、チタンの5割以上を金属C2で置換すると物性が変化してしまう虞があるので、金属C2による部分置換はチタンの5割未満とすることが好ましい。尚、化学式2中のB2,C2の一方または双方が含まれなくても良く、例えばカルシウムタイタネート(CaTiO3)を中間層の材料として用いても良い。
【0029】
一方、セリウム系蛍石型酸化物は、例えば下記の化学式で表記される。
【0030】
【化3】
(Ce,A3)O2
【0031】
ここで、化学式3中のA3は、同式中のセリウムの一部と置換可能な金属であり、例えばイットリウム(Y)、ガドリニウム(Gd)、スカンジウム(Sc)、カルシウム(Ca)等である。化学式3中のセリウムを金属A3で部分置換することで、中間層における電気伝導率が高まり燃料電池の性能を向上できる。但し、セリウムの5割以上を金属A3で置換すると物性が変化してしまう虞があるので、金属A3による部分置換はセリウムの5割未満であることが好ましい。尚、化学式3中のA3は含まれなくても良い。例えば本実施形態では、中間層材料(第3の材料)としてCe0.8Y0.2O2を用いる。
【0032】
尚、中間層材料(第3の材料)は、チタン系ペロブスカイト型酸化物とセリウム系蛍石型酸化物の少なくとも一方を含む混合物であっても良い。例えば、燃料極材料(第1の材料)およびインターコネクタ材料(第2の材料)に悪影響を及ぼさない物質であって、導電性、耐熱性、耐食性、耐酸化性などの好ましい物性を備えた物質を、チタン系ペロブスカイト型酸化物またはセリウム系蛍石型酸化物またはチタン系ペロブスカイト型酸化物とセリウム系蛍石型酸化物との混合物に混合して、これを中間層材料(第3の材料)としても良い。例えば、LCOおよびNiOおよびYSZに悪影響を及ぼさない金属(例えばNiOやFe酸化物(FeOX))をCe0.8Y0.2O2に混合することにより、全体の導電性を損なうことなく緻密なインターコネクタ膜5を得ることができる。
【0033】
中間層およびインターコネクタ膜5はスラリーコート法により成膜することが好ましい。この場合、図1に示すように、燃料極材料(第1の材料)により母材となる燃料極2を作製し(ステップ1(S1))、中間層材料(第3の材料)をスラリー化し(ステップ2(S2))、このスラリーを基板となる燃料極2に塗布し(ステップ3(S3))、熱処理(焼成)を行ない(ステップ4(S4))、燃料極2の上に中間層を成膜する。更に、インターコネクタ材料(第2の材料)をスラリー化し(ステップ5(S5))、このスラリーを中間層に塗布し(ステップ6(S6))、熱処理(焼成)を行ない(ステップ7(S7))、中間層の上にインターコネクタ膜5を成膜する。この場合、物理蒸着法、化学蒸着法、電気化学蒸着法、溶射法等と比較して、大掛かりな設備を必要とせず安価であり、しかもスラリーの濃度やスラリーの塗布および焼成の回数を調整することで簡単に膜厚の制御を行なえる利点がある。スラリー濃度やスラリー塗布・焼成回数により膜厚制御を行なうことは、歩留まりの向上、一層の薄膜化の実現による燃料電池の性能向上、要求される厚さの緻密膜を成膜するのに必要な原料の量が明らかになるため余分な材料を削減しコストを削減できる、等々の好ましい効果を生む。但し、必ずしも上述のスラリーコート法を用いることには限定されず、例えば塗布熱分解法、ゾルゲル法、ディッピング、未焼成の燃料極2にテープキャスト法で作製した未焼成膜を取り付けてこれらを同時に焼結する同時焼結法、などを採用しても良い。
【0034】
中間層およびインターコネクタ膜5の膜厚は、薄いほど電気抵抗が小さくなり好ましいが、インターコネクタ膜5が薄過ぎると燃料ガスと空気を分離するなどのインターコネクタ膜5として必要とされる機能を果たさなくなる虞があり、中間層が薄過ぎるとインターコネクタ材料中のランタンやカルシウムが燃料極材料中のジルコニアと反応してしまう虞がある。このため、本実施形態では、インターコネクタ膜5の膜厚を50μm程度とし、中間層の膜厚を1〜10μm程度としている。
【0035】
スラリーを得るための中間層材料およびインターコネクタ材料の粉体は、例えば粒径0.1〜10μmの範囲であることが好ましく、また緻密膜を得るために理論的には充填率が高いものが理想的であるから、ある程度小さな粒子と大きな粒子が良いバランスで混ざっているものが好ましい。
【0036】
中間層材料およびインターコネクタ材料をスラリー化するために用いる溶媒は、特に限定されず、例えば水または水溶液(例えば硝酸水溶液、酢酸水溶液、有機酸塩水溶液など)あるいは有機溶媒(例えばトルエン、イソプロパノールなど)のいずれを選択して良い。特に有機溶媒の利用は、インターコネクタ材料の成分が溶媒に溶ける虞がないため、好ましい。また、有機溶媒を用いる場合に、結合剤、解膠剤、消泡剤、分散剤などの添加剤を加えても良い。また、水または水溶液を溶媒として用いる場合に、結合剤、消泡剤、分散剤、増粘剤、界面活性剤などの添加剤を加えても良い。
【0037】
例えば本実施形態では、中間層用スラリーとインターコネクタ膜5用スラリーとを同じ条件で調製し、スラリーの塗布および焼成の回数を調整することで所望の膜厚を得るようにしている。
【0038】
良好な膜を得るためのスラリーの組成の具体例を挙げると、例えば有機系スラリーの場合は、成膜材料(中間層材料またはインターコネクタ材料)100gに対して、結合剤としてポリビニルブチラールを10g、可塑剤としてジブチルフタレートを10ml、解膠剤として魚油を2ml、消泡剤としてトリトンXを2ml、溶媒としてトルエン300〜600mlおよびイソプロパノール600〜1200ml(この場合、トルエンとイソプロパノールの容積比は1:2となることが好ましい)を混合して、スラリーを調製する。また、水系スラリーの場合は、成膜材料(中間層材料またはインターコネクタ材料)3.5gに対して、分散剤として第一工業製薬製のD−134を0.78g、消泡剤として第一工業製薬製のN−14を0.22g、増粘剤及び界面活性剤として水溶性の高分子(セルロース)である信越化学工業製のメトローズを溶媒の0〜数10質量%、溶媒として水50gを混合して、スラリーを調製する。また、水溶液系スラリーの場合は、成膜材料(中間層材料またはインターコネクタ材料)に、増粘剤及び界面活性剤としてメトローズを溶媒の0〜数10質量%、溶媒として水溶液(硝酸水溶液、酢酸水溶液、有機酸塩水溶液など)を混合して、スラリーを調製する。上記のスラリーを、中間層については例えば1〜7回位、インターコネクタ膜5については例えば7〜20回位、塗布および焼成を繰り返す。
【0039】
焼成温度は高温であるほど一般に緻密な膜が得られるが、1450℃を超える高温で処理すると燃料極2の物性が変化して、燃料極2として機能しなくなってしまう虞がある。このため、焼成温度は1400〜1450℃程度であることが好ましい。また、1回の焼成時間は1〜10時間程度(通常は1〜3時間程度)、昇温速度は100〜233℃/時間程度(通常は200℃/時間程度)であることが好ましい。
【0040】
燃料極2と空気極膜4との間に介在される電解質膜3としては、例えば燃料ガスや空気を流通させない程度に緻密なYSZ膜の使用が好ましい。また、成膜法によっては多孔質燃料極2の微小な多数の孔に電解質膜3のYSZが入り込む。このため、従来のようにYSZの平板上に燃料極膜を成膜させる場合よりも、燃料極2の電解質膜3との接触面積を広くして電極反応場を増大すると共に酸素イオンパスを多量に形成することができる。したがって、平板型固体電解質燃料電池の性能を向上できる。また、本実施形態では電解質膜3をYSZ膜から成るものとしているが、これには限られず電解質膜3として使用可能な既知の若しくは新規の材料を使用するようにしても良い。この場合も燃料極2と電解質膜3との接触面積を広くして電極反応場を増大することができる。
【0041】
空気極膜4は、例えば図2に示すように、電解質膜3を挟んで多孔質燃料極2と反対側に形成される。この空気極膜4は、ランタンストロンチウムマンガナイト(La,Sr,Mn,Oの化合物)の膜から成るものとしている。このランタンストロンチウムマンガナイトは平板型固体電解質燃料電池の空気極材料として一般的に用いられている。さらに、空気極膜4に使用する材料としては、本願出願人が既に出願した発明に係る空気極材料が好ましい(特願平2−273174号参照)。特に、ストロンチウムドープランタンマンガナイトの主成分の各々の元素が(La1−xSrx)1−yMnO3−zであり、かつ0.2≦x<0.4及び0.025<y<0.05を満足するストロンチウムドープランタンマンガナイト粉体の利用が好ましい。尚、添字のzは、通常約±0.1程度であるが、このzの値は温度、時間、不定比量y置換量xによって変化することから、その値を正確に規定することは余り意味がないのでここでは特に説明しない。この材料によれば、燃料電池の作動温度付近においても単相であり化学的に安定なので、YSZとの化学的反応性が小さくYSZ膜を成膜するときや発電作動中に発電性能に悪影響を及ぼす反応生成物を生ずることがない。本実施形態では空気極膜4をランタンストロンチウムマンガナイトから成るものとしているが、これには限られず空気極材料として既知の若しくは新規の材料を使用できるのは勿論である。この場合も空気極を膜により形成することで発電性能の向上を図ることができると共に、単セル1の構造の簡素化により熱応力や外力に対して高強度化を図ることができる。
【0042】
尚、電解質膜3及び空気極膜4の成膜方法は、スラリーコート法、塗布熱分解法、ゾルゲル法等の既知の成膜法を用いることができ、特定の方法に限定されない。
【0043】
ここで、隣接する単セル1の空気極膜4と対向するインターコネクタ膜5の面に、空気極膜4に空気を供給するための空気流路6を形成するようにしても良い。この構成の場合、従来(特許文献1参照)のような多孔質の空気極基板は不要となり、高価な空気極材料の使用量を減じることができるため原材料費の削減につながる。更に、多孔質の空気極基板において生じてしまっていた電気的な損失を無くす効果もある。インターコネクタ膜5上に空気流路6を形成する構造としては、例えば、図6に示すようにインターコネクタ膜5そのものにより空気流路6としての溝を形成する場合と、図7に示すように空気流路6を形成するための溝を形成した燃料極2にインターコネクタ膜5を成膜する場合とが考えられる。図6および図7のいずれに示す構造を採用しても良いが、図7に示す構造の方がインターコネクタ膜5を薄く構成でき電気抵抗を小さくできるため、より好ましい。さらに、図8に示すように、隣接する単セル1のインターコネクタ膜5と対向する空気極膜4の面にも、空気流路6’を形成するようにしても良い。図8に示す例では、燃料極2に空気流路6’を形成するための溝を形成し、この燃料極2に電解質膜3と空気極膜4を成膜するようにしている。この構成の場合、燃料極2と電解質膜3との接触面および空気極膜4と電解質膜3との接触面の面積が、これらの接触面を平面とした場合の面積よりも、スタック方向における溝の深さに対応して増すため、セルスタックあたりの出力向上、出力密度あたりのコスト低減につながる効果も得られる。尚、図6においてインターコネクタ膜5そのものにより空気流路6としての溝を形成したように、空気極膜4そのものにより空気流路6’としての溝を形成するようにしても良い。
【0044】
ここで、燃料極2の側面部2aではガスシールがなされている必要がある。このために、例えば図2に示すようにインターコネクタ膜5で燃料極2の側面部2aを覆い、ガスシールを行なうようにしても良い。または図3、図6、図7に示すようにインターコネクタ膜5と電解質膜3との双方によって燃料極2の側面部2aのガスシールを行なうようにしても良い。或いは、図4、図8に示すように電解質膜3のみによって燃料極2の側面部2aのガスシールを行なうようにしても良い。その他、図5に示すようにインターコネクタ膜5や電解質膜3とは別個のシール材10(例えば、ガラスセラミックスやガラス板あるいはYSZ膜など)によって、或いはマニホールド板11によって、燃料極2の側面部2aのガスシールを行なうようにしても良い。
【0045】
ここで、本実施形態の燃料極2は多孔性であるため燃料ガスの流通は可能であるが、燃料極2への燃料ガスの供給をさらに良好に行なうために、燃料ガスを流通させる燃料ガス流路2bを燃料極2に設けることがより好ましい。尚、図2などでは、燃料ガス流路2bを円筒形としているが、これに限らず、角柱形または角柱形の角を丸めた形などに形成しても良い。
【0046】
単セル1を積層した積層体の側面にマニホールド板11を取り付けることにより、セルスタックが形成される。単セル1の積層数は形成される平板型固体電解質燃料電池に必要とされる電圧に応じて設定する。マニホールド板11は快削性のガラスセラミックス製とすることが好ましい。この場合、1100℃程度の熱処理でマニホールド板11を積層体の側部に溶着することができ、セルスタックのガスシールを行うと共に単セル1同士の結合を行なえる。さらに、マニホールド板11と積層体の熱膨張率を同等にすることができ、熱応力によるセルスタックの破壊を防止できる。さらに、燃料ガス流通口12や空気流通口13の穿孔作業を容易に行うことができる。
【0047】
ここで、燃料ガス流路2bと空気流路6,6’とは、平行であっても良く(この場合、燃料ガスと空気とは並行流または対向流のどちらとしても良い。)、直交するものであっても良い。この場合、例えばマニホールド板11には、燃料ガス流路2bと対向する部分に燃料ガス流通口12を形成し、空気流路6,6’と対向する部分に空気流通口13を形成する。燃料ガス流路2bと空気流路6,6’とを平行とする場合の例を図9に示し、燃料ガス流路2bと空気流路6,6’とを直交とする場合の例を図10に示す。
【0048】
さらに、燃料ガス流路2bと空気流路6,6’とを平行とした場合には、例えば図11および図12に示すようにセルスタックを構成しても良い。図示の例では、縦方向に燃料ガスが流れるようにセルスタックを設置している。そして、セルスタックの上部に配置されるマニホールド板11aには、燃料ガス流路2bと対向する部分に燃料ガス流通口12を形成し、空気流路6,6’と対向する部分に空気流通口13を形成している。また、セルスタックの下部に配置されるマニホールド板11bには、空気流路6,6’と対向する部分に空気流通口13のみを形成している。セルスタックの側面に配置されるマニホールド板11cはシール材として機能する。そして、上部に配置されるマニホールド板11aに設けられた燃料ガス流通口12には、ガス供給管(例えばセラミックス管)14が挿入されている。このガス供給管14は、燃料ガス流路2bの底部近傍(下部のマニホールド板11bの近傍)まで伸びている。燃料ガスは、図12中の矢印Aで示すようにガス供給管14の中を流通して、セルスタックの下方から供給され、そこから折り返すように燃料ガス流路2bを通ってセルスタックの上方に向かい、同図中の矢印Bで示すように上部のマニホールド板11aに設けられた燃料ガス流通口12から排出される。また、セルスタックの下部のマニホールド板11bには、ガス供給部15が取り付けられている。空気は、図11の矢印Cで示すように、ガス供給部15から導入され、下部のマニホールド板11bに設けられた空気流通口13を介して空気流路6,6’を通り、上部のマニホールド板11aに設けられた空気流通口13から排出される。この構成の場合、セルスタックの下部に配置されるマニホールド板11bには空気流通口13のみを形成すれば足り、燃料ガス流通口12を形成する必要がないので、構造の簡素化を図ることができる。尚、ガス供給管14に空気を流し、ガス供給部15に燃料ガスを流すようにしても良い。この場合、セルスタックの下部に配置されるマニホールド板11bには、燃料ガス流路2bと対向する部分に燃料ガス流通口12のみを形成すると共に、上部に配置されるマニホールド板11aに設けられた空気流通口13にガス供給管14を挿入するようにする。この場合、セルスタックの下部に配置されるマニホールド板11bには燃料ガス流通口12のみを形成すれば足り、空気流通口13を形成する必要がないので、図11及び図12の構成と同様に構造の簡素化を図ることができる。尚、図11に示す構成の場合、燃料排ガスと空気排ガスとが混合することにより燃焼を起こすが、この燃焼熱を例えば供給する燃料や空気の予熱に使用したり、温水や水蒸気を発生させたり、吸収式冷凍機に使用する熱源として利用しても良い。この場合、電気と温水等を供給するコジェネレーションシステムを構成することができる。一方、図11に示す構成のセルスタックの上部に空気排ガスと燃料排ガス用のマニホールドを設けることで、各排ガスを別々に取り出すことも勿論可能である。
【0049】
【実施例】
<実施例1>
NiO−YSZ(Zr0.92Y0.08O2)の混合物を1400℃で焼結して基板となる多孔質の燃料極2を作製し、この燃料極2の上に、Ce0.8Y0.2O2(40g)とNiO(60g)の混合物を中間層材料として用いてスラリーコート法により中間層を成膜し、この中間層上にLa0.75Ca0.27Cr0.9Co0.1O3を用いてスラリーコート法によりインターコネクタ膜5を成膜した。ここで、スラリー化に際して、中間層(Ce0.8Y0.2O2とNiOの混合物)の粉体は、遊星ボールミルを用いて、Ce0.8Y0.2O2については平均粒径0.4μmの粒子と平均粒径2μmの粒子とが4:1の比となるように、NiOについては平均粒径1μmとなるように得た。また、La0.75Ca0.27Cr0.9Co0.1O3の粉体は、遊星ボールミルを用いて、平均粒径0.7μmの粒子となるように得た。スラリーの組成は、中間層及びインターコネクタ膜5ともに表1に従った。焼成条件は、中間層及びインターコネクタ膜5ともに、焼成温度を1450℃とし、1回の焼成時間を3時間とし、昇温速度を200℃/時間とした。中間層用スラリーの塗布及び焼成は2回繰り返し、インターコネクタ膜5用スラリーの塗布及び焼成は20回繰り返した。
【0050】
【表1】
【0051】
一方、比較例として、中間層を設けずに燃料極2上にインターコネクタ膜5を成膜した。比較例の成膜における諸条件は、中間層に関するものを除いて上記実施例と同様とした。
【0052】
中間層を設けた場合のインターコネクタ膜5の様子を図13および図14に示し、中間層を設けない場合のインターコネクタ膜5の様子を図15および図16に示す。尚、図13および図15は全体図、図14は図13の拡大図、図16は図15の拡大図である。これらの図から、中間層を設けた場合の方が中間層を設けない場合と比較してインターコネクタ膜5が緻密となっていることが確認できる。また、インターコネクタ膜5近傍の元素の分布について、中間層を設けた場合を図17に示し、中間層を設けない場合を図18に示す。図17(A)および図18(A)はニッケル(Ni)元素の分布を示し、図17(B)および図18(B)はジルコニウム(Zr)元素の分布を示し、図17(C)および図18(C)はランタン(La)元素の分布を示し、図17(D)および図18(D)はカルシウム(Ca)元素の分布を示し、図17(E)はセリウム(Ce)元素の分布を示し(尚、中間層を設けない場合である図18にはセリウム元素の分布は示していない)、図17(F)および図18(E)はインターコネクタ膜5近傍の全体図を示す。図17(A)〜(E)および図18(A)〜(D)の図中で明るく白い部分が、対象元素が多く存在する箇所を示している。尚、図17および図18では、全ての元素ではなく、絶対量の多い元素や反応等に関わる主な元素のみを示している。図17(D)と図18(D)を比較すると、中間層を設けない場合では、カルシウムが燃料極2側に移動していることが確認できる。これは、インターコネクタ膜5中のカルシウムが燃料極2中のジルコニアと反応したためと解される。換言すれば、中間層を設けたことにより、インターコネクタ膜5中のカルシウムと燃料極2中のジルコニアとの反応が防止されたことが確認できる。
【0053】
<実施例2>
NiO−YSZ(Zr0.92Y0.08O2)の混合物を1400℃で焼結して基板となる多孔質の燃料極2を作製し、この燃料極2の上に、CaTi0.95Nb0.05O3を中間層材料として用いてスラリーコート法により中間層を成膜し、この中間層上にLa0.75Ca0.27Cr0.9Co0.1O3を用いてスラリーコート法によりインターコネクタ膜5を成膜した。ここで、スラリー化に際して、CaTi0.95Nb0.05O3の粉体は、遊星ボールミルを用いて、平均粒径0.3μmの粒子と平均粒径2μmの粒子とが4:1の比となるように得た。また、La0.75Ca0.27Cr0.9Co0.1O3の粉体は、遊星ボールミルを用いて、平均粒径0.7μmの粒子となるように得た。スラリーの組成は、中間層及びインターコネクタ膜5ともに表1に従った。焼成条件は、中間層及びインターコネクタ膜5ともに、焼成温度を1450℃とし、1回の焼成時間を3時間とし、昇温速度を200℃/時間とした。中間層用スラリーの塗布及び焼成は2回繰り返し、インターコネクタ膜5用スラリーの塗布及び焼成は15回繰り返した。
【0054】
作製した単セル1について図19に示す実験装置を用いて発電性能を測定した。尚、図19中の符号8は、単セル1を保持すると共に燃料ガスと空気とを混合しないよう分離するためのシール材であり、符号7は、集電体として用いたPt網である。磁性管9は内管9aと外管9bとの二重構造となっており、内管9aの内部では燃料ガス(水素)が流通し(図19中の一点鎖線の矢印は燃料ガスの流れを示す)、内管9aと外管9bとの間では空気が流通するようになっている(図19中の実線の矢印は空気の流れを示す)。燃料ガスと空気とは、インターコネクタ膜5および電解質膜3およびシール材8および磁性管9により混合しないように分離される。尚、単セル1の側面にはガラスセラミックスとガラス板を取り付けてガスシールを行なった。発電性能の測定結果を図20に示す。同図に示すように、インターコネクタ膜5を設けた場合の発電性能は、インターコネクタ膜5を設けなかった場合の発電性能とほぼ同等であった。即ち、セルスタックを構成する上で必須となるインターコネクタを、単セルの発電性能を殆んど低下させることなく設けることができた。
【0055】
以上のように本発明によれば、従来不可能若しくは極めて困難であったLCO製インターコネクタ膜5の燃料極2上への成膜を、簡単に且つ低コストに行なうことができる。基板となる燃料極2にインターコネクタ膜5を成膜することで、燃料極とインターコネクタとが一体化され、燃料極とインターコネクタとの間の接触抵抗(接触部分の電気抵抗)を大幅に低減できるので、発電性能を向上することができる。さらに、燃料極材料は空気極材料等と比較して一般に機械的強度も高く電気伝導率も高く更に熱伝導率も高くしかも低コストであることから、燃料極2を基板とする方が空気極等を基板とする場合よりも燃料電池の強度および発電性能を向上でき製造費を低減できる。さらに、インターコネクタ膜5をLCO製とすることで、燃料電池の作動温度を1000℃付近にすることが可能となるので、作動温度の低温化を余儀なくされる金属セパレータを使用する場合と比較して、プラント効率を向上できる。以上を総じれば、本発明によって固体電解質型燃料電池の製造コスト削減と高性能化ならびにコンパクト化を図ることが可能となる。
【0056】
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。上述の実施形態では、ランタンクロマイト系ペロブスカイト型酸化物をインターコネクタ材料(第2の材料)として用いたが、この例に限定されない。緻密な中間層を設けることにより、従来は空気極材料として用いられてきた材料をインターコネクタ材料として使用することができる。例えば下記の化学式4で表記されるランタンマンガナイト、化学式5で表記されるランタンフェライト、化学式6で表記されるランタンコバルタイト等、ランタンを組成に含むペロブスカイト型酸化物などをインターコネクタ材料(第2の材料)として用いても良い。
【0057】
【化4】
(La,A4)(Mn,B4)O3
【0058】
【化5】
(La,A4)(Fe,B4)O3
【0059】
【化6】
(La,A4)(Co,B4)O3
【0060】
ここで、化学式4〜6中のA4は、各式中のランタン(La)の一部と置換可能な金属であり、例えばカルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)等のアルカリ土類金属である。また、化学式4〜6中のB4は、各式中のマンガン(Mn)または鉄(Fe)またはコバルト(Co)の一部と置換可能な金属であり、例えばマンガン(Mn)、コバルト(Co)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)等の遷移金属である。
【0061】
さらに、本発明の成膜方法は、燃料極2へのインターコネクタ膜5の成膜に用いることには限定されない。例えば、電解質への空気極の成膜に適用しても良い。一例を挙げれば、YSZより成る電解質の上に、化学式3で表記されるセリウム系蛍石型酸化物を用いて中間層を成膜し、その中間層の上に、化学式6で表記されるランタンコバルタイトを用いて空気極膜を成膜する。YSZとランタンコバルタイトは激しく反応するが、セリウム系蛍石型酸化物はランタンコバルタイトやYSZとは固相反応を生じず、しかもセリウム系蛍石型酸化物は空気極側で電解質としての役割を果たす性質があるため、電解質または空気極が備えるべき機能を損なうことなく、電解質に対して空気極膜を形成することができる。
【0062】
その他、本発明の成膜方法は、平板型や固体電解型以外の燃料電池に適用しても良く、さらには燃料電池以外に適用しても良い。第1の材料によりなる母材に対して第2の材料により目的とする膜を形成する場合であって、母材または目的とする膜が備えるべき機能の一方または双方を損なわせる化学反応が第1および第2の材料間で容易に進行してしまう場合に、その化学反応を防止する第3の材料を用いて第1および第2の材料間に中間層を設けることで、母材と膜に用いる材料の組み合わせの範囲を拡大でき、材料選択の幅を広げることができる。例えばガスタービン翼の耐熱性向上のために母材となるタービン翼上に高耐熱被覆膜を成膜する場合、あるいは、耐食性や耐酸化性の向上が求められる部品上に耐食性材料を成膜する場合、などへの利用が考えられる。
【0063】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、請求項1記載の成膜方法によれば、従来不可能若しくは極めて困難であったランタンクロマイト系ペロブスカイト型酸化物製インターコネクタの燃料極上への成膜を、簡単に且つ低コストに行なうことができる。燃料極にインターコネクタ膜を成膜することで、燃料極とインターコネクタとが一体化され、燃料極とインターコネクタとの間の接触抵抗(接触部分の電気抵抗)を大幅に低減できるので、発電性能を向上することができる。さらに、燃料極材料は空気極材料等と比較して一般に機械的強度も高く電気伝導率も高く熱伝導率も高くしかも低コストであることから、燃料極を基板とする方が空気極等を基板とする場合よりも燃料電池の強度および発電性能を向上でき製造費を低減できる。さらに、インターコネクタ膜をランタンクロマイト系ペロブスカイト型酸化物製とすることで、燃料電池の作動温度を1000℃付近にすることが可能となるので、作動温度の低温化を余儀なくされる金属セパレータを使用する場合と比較して、プラント効率を向上できる。したがって、燃料電池の製造コスト削減と高性能化ならびにコンパクト化を図ることが可能となる。
【0064】
さらに、請求項2記載の成膜方法によれば、スラリーコート法により成膜するようにしているので、物理蒸着法、化学蒸着法、電気化学蒸着法、溶射法等と比較して、大掛かりな設備を必要とせず安価であり、しかもスラリーの濃度やスラリーの塗布および焼成の回数を調整することで簡単に膜厚の制御を行なえる利点がある。スラリー濃度やスラリー塗布・焼成回数により膜厚制御を行なうことは、歩留まりの向上、一層の薄膜化の実現による燃料電池の性能向上、要求される厚さの緻密膜を成膜するのに必要な原料の量が明らかになるため余分な材料を削減しコストを削減できる、等々の好ましい効果を生む。
【0067】
さらに、請求項3記載の成膜方法によれば、燃料極材料に含まれるジルコニアとインターコネクタ材料に含まれるカルシウムとの間で生じる化学反応が中間層により防止されると共に、カルシウムを含むランタンクロマイト系ペロブスカイト型酸化物によって緻密な膜を成膜することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の成膜方法の実施の一形態を示すフローチャートである。
【図2】平板型固体電解質燃料電池の単セルの構成の一例を示す概略斜視図である。
【図3】平板型固体電解質燃料電池の単セルの構成の他の例を示す概略斜視図である。
【図4】平板型固体電解質燃料電池の単セルの構成の更に他の例を示す概略斜視図である。
【図5】平板型固体電解質燃料電池の単セルの構成の更に他の例を示す概略斜視図である。
【図6】平板型固体電解質燃料電池のセルスタックにおける空気流路の構成の一例を示す概略側面図である。
【図7】平板型固体電解質燃料電池のセルスタックにおける空気流路の他の構成例を示す概略側面図である。
【図8】平板型固体電解質燃料電池のセルスタックにおける空気流路の更に他の構成例を示す概略側面図である。
【図9】平板型固体電解質燃料電池のセルスタックにおける燃料ガス流通口と空気流通口の構成の一例を示す概略斜視図である。
【図10】平板型固体電解質燃料電池のセルスタックにおける燃料ガス流通口と空気流通口の他の構成例を示す概略斜視図である。
【図11】平板型固体電解質燃料電池のセルスタックにおける燃料ガス流通口と空気流通口の更に他の構成例を示す概略斜視図である。
【図12】図11の一部を拡大した概略斜視図である。
【図13】中間層を設けた場合のインターコネクタ膜の様子を示す写真である。
【図14】中間層を設けた場合のインターコネクタ膜の様子を拡大して示す写真である。
【図15】中間層を設けない場合のインターコネクタ膜の様子を示す写真である。
【図16】中間層を設けない場合のインターコネクタ膜の様子を拡大して示す写真である。
【図17】中間層を設けた場合のインターコネクタ膜近傍の元素の分布を示し、(A)はニッケル元素、(B)はジルコニウム元素、(C)はランタン元素、(D)はカルシウム元素、(E)はセリウム元素の分布を示し、(F)はインターコネクタ膜近傍の全体図を示す。
【図18】中間層を設けない場合のインターコネクタ膜近傍の元素の分布を示し、(A)はニッケル元素、(B)はジルコニウム元素、(C)はランタン元素、(D)はカルシウム元素の分布を示し、(E)はインターコネクタ膜近傍の全体図を示す。
【図19】単セルの発電性能の測定試験の実験装置の概略構成を示す中央縦断面図である。
【図20】本発明の成膜方法によりインターコネクタ膜を成膜した単セルの発電性能を示すグラフである。
【符号の説明】
1 単セル
2 燃料極
3 電解質膜
4 空気極膜
5 インターコネクタ膜
Claims (3)
- ジルコニアを組成に有する固体電解質燃料電池の燃料極に、ランタンクロマイト系ペロブスカイト型酸化物により固体電解質燃料電池のインターコネクタ膜を形成する方法において、チタン系ペロブスカイト型酸化物またはセリウム系蛍石型酸化物またはこれらの少なくとも一方を含む混合物を用いて前記燃料極上に中間層を形成し、当該中間層上に前記ランタンクロマイト系ペロブスカイト型酸化物を用いて前記インターコネクタ膜を形成することを特徴とする成膜方法。
- 前記中間層と前記インターコネクタ膜の一方または双方をスラリーコート法により成膜することを特徴とする請求項1記載の成膜方法。
- 前記ランタンクロマイト系ペロブスカイト型酸化物は、カルシウムを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の成膜方法。
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