JP2007200664A - 固体電解質型燃料電池の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】多孔質の燃料極と緻密な固体電解質膜を有する固体電解質型燃料電池の製造方法を提供すること。
【解決手段】燃料極用グリーンの一面に、固体電解質膜用グリーンを成膜した後、収縮率が20超30%以下となる条件下に両者を同時焼成し、燃料極と固体電解質膜とを形成する。燃料極用グリーンは、60〜99重量%の原料粉末と、1〜40重量%の気孔形成剤とを含むことが好ましく、気孔形成剤の平均粒径は1nm〜5μmであることが好ましい。このようにして形成された固体電解質型燃料電池は、焼成後の燃料極の気孔率が10〜50%で、相対密度が50〜90%である。
【選択図】なし
【解決手段】燃料極用グリーンの一面に、固体電解質膜用グリーンを成膜した後、収縮率が20超30%以下となる条件下に両者を同時焼成し、燃料極と固体電解質膜とを形成する。燃料極用グリーンは、60〜99重量%の原料粉末と、1〜40重量%の気孔形成剤とを含むことが好ましく、気孔形成剤の平均粒径は1nm〜5μmであることが好ましい。このようにして形成された固体電解質型燃料電池は、焼成後の燃料極の気孔率が10〜50%で、相対密度が50〜90%である。
【選択図】なし
Description
本発明は、固体電解質型燃料電池の製造方法に関する。
酸化物固体電解質型燃料電池(以下SOFCともいう)では、燃料極に水素ガスなどの還元性ガスやメタンなどの炭化水素系燃料ガスを供給し、空気極に酸素を含む酸化性ガスを供給して、800〜1000℃前後の高温において発電を行う。
従来SOFCに用いられた固体電解質は、高温での酸化還元に極めて安定なジルコニアである。例えば厚さ0.5mmのシート状ジルコニア電解質の一方の表面に燃料極を形成し、他方の表面に空気極を形成した単セル構造が提案されている。近年、このようなバルク体の電解質膜の薄膜化によって電解質の内部抵抗を下げ高出力を得る燃料電池が提案されている。また800〜1000℃運転の高温型SOFCでは電池の耐久性が悪く、またスタックの形成に安価な金属材料を使用できない等の問題があることから、運転温度を低温化したSOFCも提案されている。
運転温度を低温化するためには、600℃前後の温度で1000℃のジルコニアと同等の高いイオン伝導度を持つ電解質が必要である。このような電解質として希土類酸化物をドープしたセリアやランタンガレート酸化物が知られている。
高温型SOFC又は低温型SOFCの何れにおいても、高効率発電を行うためには電解質の薄膜化が必須である。しかしながら電解質を薄膜化する場合には、特に電解質を緻密化する必要がある。例えば電解質に微小亀裂やピンホールなどの欠陥が存在すると、電池の開回路電圧が低下し、十分な出力が得られず、高効率的な発電ができない問題があった。
固体電解質を薄膜化する技術は従来種々検討されている。例えばスクリーン印刷法を用いて燃料極上にジルコニア膜を共焼結する方法(特許文献1参照)や、電解質グリーンシートを燃料極上へ積層して焼結する方法(特許文献2参照)等が提案されている。
また、燃料極に使用する酸化ニッケルやセリア、ジルコニアの粒径を制御し、或いは電解質に使用する粉末の粒径を制御して、電解質膜の緻密化や燃料極の多孔質化を図ることが提案されている。このような場合、電池特性に最適な粒径と製造上の制約の両者を満足することが困難である。
従って本発明の目的は、前述した従来技術が有する種々の欠点を解消し得る固体電解質型燃料電池の製造方法を提供することにある。
本発明は、燃料極と空気極と両者の間に配置される固体電解質膜とを備えた固体電解質型燃料電池の製造方法において、
燃料極用グリーンの一面に、固体電解質膜用グリーンを成膜した後、収縮率が20%超30%以下となる条件下に両者を同時焼成し、燃料極と固体電解質膜とを形成することを特徴とする固体電解質型燃料電池の製造方法を提供することにより前記目的を達成したものである。
燃料極用グリーンの一面に、固体電解質膜用グリーンを成膜した後、収縮率が20%超30%以下となる条件下に両者を同時焼成し、燃料極と固体電解質膜とを形成することを特徴とする固体電解質型燃料電池の製造方法を提供することにより前記目的を達成したものである。
本発明の製造方法によれば、燃料極の収縮が制御されることで固体電解質膜が緻密化される。更に焼成の際に燃料極に反りが生じにくく、それによって固体電解質膜にピンホールや微小亀裂などの欠陥が生じにくい。その上、同時焼成することで製造コストが低減できるメリットもある。本発明は、平板型燃料電池及び円筒型や楕円筒型などの筒型燃料電池の何れにも適用できる。
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。本発明は、燃料極を多孔質化すると共に固体電解質膜を緻密化する同時焼成技術を基本とするものである。つまり本発明においては、燃料極と固体電解質膜とは同時焼成によって形成されている。
先ず本発明の製造方法によって得られる燃料電池について説明すると、燃料電池における燃料極は、焼成後の気孔率が好ましくは10〜50%であり、更に好ましくは25〜35%である。この気孔率と関係するが、燃料極は、相対密度が好ましくは50〜90%、更に好ましくは65〜80%である。燃料極の気孔率が10%未満である場合や、相対密度が90%超である場合には、燃料ガスの流通が十分に行われず発電効率を上げられないことがある。気孔率が50%超である場合や相対密度が50%未満である場合には、燃料極の強度が不足することがある。燃料極の気孔率や相対密度をこのような範囲に制御するためには、後述する製造方法に従い燃料極と固体電解質膜とを同時焼成によって形成すればよい。
燃料極の相対密度(%)は、燃料極の見掛け密度(=燃料極の重量/燃料極の見掛けの体積)を、燃料極を構成する材料の理論密度で除して、100を乗じた値である。燃料極の気孔率(%)は、100から燃料極の相対密度を差し引いた値である。
燃料極としては、従来この種の燃料電池に用いられてきた材料を特に制限なく用いることができる。例えば酸化ニッケルと、希土類酸化物をドープしたセリア又は希土類酸化物をドープしたジルコニアとを含む焼結体を用いることができる。希土類酸化物をドープしたセリアとしては、例えばCe0.9Gd0.1O1.95などが挙げられる。希土類酸化物をドープしたジルコニアとしては、例えばイットリアをドープして安定化されたジルコニアなどが挙げられる。特に好ましくは、燃料極は、酸化ニッケルと、希土類酸化物をドープしたセリアとを含む焼結体からなる。この焼結体においては、セリアによるイオン伝導と電子伝導との混合伝導、及び酸化ニッケルが還元されたニッケルの電子伝導によって電極反応が促進されると考えられる。酸化ニッケルとセリア又はジルコニアの重量比に特に制限はなく適宜選択できる。一般的な範囲としては、前者:後者=30:70〜70:30程度である。燃料極の厚さは本発明において臨界的ではないが、1〜10mm、特に2〜5mmであることが好ましい。
燃料極と共に同時焼成によって形成される固体電解質膜としては、従来この種の燃料電池に用いられてきた材料を特に制限なく用いることができる。例えば希土類酸化物をドープしたジルコニア、希土類酸化物をドープしたセリア又はランタンガレート酸化物を用いることができる。固体電解質膜は、その厚さが1〜50μm、特に10〜20μmとなるように焼成されることが好ましい。この範囲の厚さとすることで、電解質膜の強度を維持しつつ、高効率発電を図ることができる。
固体電解質膜がセリア系固体電解質膜からなる場合には、燃料極と固体電解質膜との間に、MCe(1−x)R(x)O(3−α)の薄層(以下、還元防止膜という)が形成されていることが好ましい。組成式中、Mはアルカリ土類元素を表し、Rは希土類元素又はZn、Mn又はInを表す。また0.05≦x≦0.20である。αは組成式中のM、Ce及びRとOとの化学量論比を整合させる数である。この還元防止膜はペロブスカイト型結晶構造を有し、おおよそ900℃以上の高温で酸素イオン伝導体となる。
前記の組成式中、MはBa、Sr、Ca、Mgの少なくとも一種であり、好ましくはBaである。RはSc、Y、Sm、Gd、Yb等の少なくとも一種であることが好ましい。xは、0.1≦x≦0.2であることが好ましい。特に好ましい還元防止膜は、例えばBaCe0.8Sm0.2O1.9やBaCe0.9Gd0.1O1.95等から構成される。
セリア系固体電解質膜においては、燃料電池運転中の還元反応によってCe3+の割合が増大し、電解質膜に電子伝導性があらわれる。その結果、内部短絡が生じて起電力が低下してしまう場合がある。これに対して還元防止膜を固体電解質膜と燃料極との間に介在させると、固体電解質膜中のセリウムの還元が抑制され、長時間の耐久性が確保でき安定した発電特性が得られる。
例えば、酸化サマリウムをドープしたセリアからなる固体電解質膜と燃料極との間に、BaCe(1−x)Sm(x)O(3−α)からなる還元防止膜を介在させて単セルを構成した場合、開回路電圧(OCV)は950℃では1000mV程度を示した。これに対して、前記のセリウム系酸化物層を介在させずに単セルを構成した場合、開回路電圧は680mVと著しく低下した。
またMCe(1−x)R(x)O(3−α)からなる還元防止膜を薄膜化せずにバルクの状態で用いて単セルを構成した場合、例えばRがYで、Xが0.2のときには、開回路電圧は1000mVと高いが、セルのオーミック抵抗が高くなり効率の良い発電ができなかった。
前記の還元防止膜はその厚さが1〜50μm、特に1〜10μmであることが、十分な酸素イオンの伝導性を確保しつつ、セリウムの還元を抑制する点から好ましい。還元防止膜の厚さは、固体電解質膜の厚さと関係しており、還元防止膜の厚さが固体電解質膜の厚さよりも小さいことが好ましい。こうすることにより、還元防止膜による内部抵抗の増加が最小限度に抑制され、かつセリア系固体電解質膜の高温での還元劣化が防止できるという効果が奏される。この効果を一層顕著なものとする観点から、還元防止膜の厚さは、固体電解質膜の厚さの5〜50%、特に10〜30%であることが好ましい。
このように、前記の還元防止膜を固体電解質膜と燃料極との間に介在させることで、高効率で耐久性の優れた燃料電池が構成できる。なお、この還元防止膜を、燃料極/固体電解質膜/還元防止膜/固体電解質膜のように配置し、セリア系電解質膜でサンドイッチ構造にしてもよい。即ち、燃料極とセリア系固体電解質膜間の低い接続抵抗を利用し、且つ還元防止が可能である構造とすることができる。
燃料電池における空気極としては、従来この種の燃料電池に用いられてきた材料を特に制限なく用いることができる。例えばLaSrMnO3、LaSrCoO3、SmSrMnO3などを挙げることができる。特に、Sm0.5Sr0.5CoO3や、La1-xSrxCo1-yFeyO3(式中、0<x<1、0<y<1である)を用いると高効率発電を図ることができる。空気極の厚さは本発明において臨界的ではないが、5〜300μm、特に10〜100μmであることが好ましい。
次に、本発明の製造方法について説明する。本発明の製造方法は、燃料極用グリーンと固体電解質膜用グリーンとを同時焼成する点に特徴の一つを有する。燃料極用グリーンは、原料粉末と気孔形成剤とを含む混合物から形成される。原料粉末としては、例えば先に述べた酸化ニッケルと、希土類酸化物をドープしたセリア又は希土類酸化物をドープしたジルコニアとの混合物が挙げられる。気孔形成剤としては、焼成により燃焼して消失する物質が用いられる。そのような物質としては、カーボンブラック粉末やグラファイト粉末のような炭素系材料の粉末や、グリーンの強度維持に用いられるバインダとしてのエチルセルロース、ポリビニルアルコール及びフェノール樹脂や、有機溶媒としてのテルピネオール、カルビトール、エタノールなどが挙げられる。気孔形成剤は、その平均粒径が1nm〜5μmであることが、所望の空隙率を有する燃料極を首尾良く形成し得る点から好ましい。特に、気孔形成剤が炭素系材料の粉末である場合には1〜10nmであることが好ましい。本明細書において平均粒径というときには、レーザー回折散乱法(マイクロトラック法)を用いた粒度分布測定装置によって測定された値を言う。気孔形成剤が炭素系材料の粉末である場合には、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察された値を言う。
この混合物を用いて燃料極用グリーンを形成する。グリーンの形成方法としては、例えばプレス法、押出し成形法、ドクターブレード法、テープキャスティング法などの各種セラミック成形法が適用できる。燃料極用グリーンは、その相対密度が好ましくは30〜70%、更に好ましくは40〜60%となるように形成される。燃料極用グリーンの相対密度をこの範囲とすることで、焼成によって得られる燃料極の相対密度及び気孔率を、先に述べた範囲内に制御することが容易となる。また、同時焼成によって形成される固体電解質膜を緻密な構造にすることが容易となる。燃料極用グリーンの相対密度は、前記混合物の構成成分から気孔形成剤を除外した燃料極材料(即ち原料粉末)の理論密度を元に計算で求まる値である。具体的には、燃料極用グリーンの相対密度(%)は、燃料極用グリーンの見掛けの密度を燃料極材料の理論密度で除して100を乗じた値である。なお燃料極用グリーンの見掛けの密度は、燃料極用グリーンの乾燥重量を、燃料極用グリーンの乾燥体積で除した値である。
本製造方法においては、燃料極用グリーンにおける原料粉末と気孔形成剤との配合割合も重要である。具体的には、原料粉末は60〜99重量%、特に70〜80重量%配合されることが好ましく、気孔形成剤は1〜40重量%、特に5〜30重量%配合されることが好ましい。両者の配合割合をこの範囲にすることで、ガスの流通性の高い多孔質の燃料極及び緻密な固体電解質膜を同時に形成することができる。
また、燃料極用グリーンにおける原料粉末と気孔形成剤との配合割合を前記範囲内にすることによって、原料粉末の粒径範囲の選択範囲が拡大し、電池特性に良好な粒径を幅広く選択できる。例えば原料粉末の一種である酸化ニッケルの平均粒径は5〜30μm、特に7〜15μmの範囲から選択することができる。セリアやジルコニアの平均粒径は0.01〜5μm、特に0.1〜1.5μmの範囲から選択することができる。
原料粉末の粒径と気孔形成剤の配合量とをバランスさせることで、焼成により得られる燃料極の気孔率を制御することが可能となる。具体的には、原料粉末として微粒子を用いた場合には気孔形成剤を多く添加し、粗粒子を用いた場合には気孔形成剤を少なくすればよい。
燃料極用グリーンの一面には、固体電解質膜用グリーンが成膜される。固体電解質膜用グリーンは、原料粉末、エチルセルロース、フェノール樹脂などのバインダ、テルピネオール、カルビトール、エタノールなどの有機溶媒を含むペーストから形成される。このペーストをスピンコーティングやディップコーティング、スクリーン印刷、ドクターブレード法などによって燃料極用グリーンの一面に施して固体電解質膜用グリーンを成膜する。原料粉末の平均粒径は0.1〜10μmの範囲から選択することが好ましい。
固体電解質膜用グリーンを成膜する場合には、グリーンの原料粉末として、平均粒径が好ましくは1〜10μm、更に好ましくは4〜7μmの粗粒子と、平均粒径が好ましくは0.1〜5μm、更に好ましくは0.5〜2μmの微粒子とを用い、燃料極用グリーン上に、前記粗粒子を含むペーストから固体電解質膜の下層グリーンを成膜し、その上に前記微粒子を含むペーストから固体電解質膜の上層グリーンを成膜することが好ましい。燃料極用グリーン側に形成された粗粒子の下層グリーンは、その上に形成された微粒子の上層グリーンに比較して相対密度が小さいものとなる。換言すれば気孔率が大きいものとなる。要するに、固体電解質膜用グリーンが気孔率の異なる2層構造となっている。このような構造の固体電解質膜用グリーンを燃料極用グリーンと同時焼成すると、燃料極用グリーン側に位置し且つ気孔率が大きい下層グリーンが、収縮の緩和層として作用するので、焼成により形成される固体電解質に微小亀裂やピンホールが発生しづらくなるという利点がある。
先に述べた通り、固体電解質膜がセリア系固体電解質膜からなる場合には、燃料極と固体電解質膜との間に、還元防止膜が介在することが好ましい。この構成の燃料電池を製造する場合には、燃料極用グリーンの一面に、還元防止膜を形成するための原料粉末を含むペーストを用いて還元防止膜用グリーンを形成し、500〜1400℃で仮焼後、更にその上に、固体電解質膜用グリーンを形成した後、これらを同時焼成することが好ましい。
還元防止膜を形成するための原料粉末としては、アルカリ土類金属酸化物が好適に用いられる。アルカリ土類金属酸化物を用いることで、焼成によってアルカリ土類金属酸化物と固体電解質膜用グリーン中のセリアとが拡散反応する。これによってMCe(1−x)R(x)O(3−α)で表される還元防止膜が固体電解質膜と燃料極との間に形成される。また、MCe(1−x)R(x)O(3−α)で表される組成の膜を直接、還元防止膜として形成することもできる。
また固体電解質膜としてランタンガレート酸化物を用いる場合には、このランタンガレート酸化物が、燃料極用グリーンに含まれるNiOと反応を起こす場合がある。そこで、この反応を防止する目的で、燃料極用グリーンの一面に、希土類酸化物をドープしたセリアからなる原料粉末を含むペーストを用いて固体電解質膜の下層グリーンを成膜し、その上にランタンガレート酸化物からなる原料粉末を含むペーストを用いて固体電解質膜の上層グリーンを成膜することが好ましい。
本発明の製造方法は、燃料極用グリーン及び固体電解質膜用グリーンの同時焼成を、収縮率が20%超30%以下、好ましくは22〜28%となる条件下に行う点にも特徴を有する。収縮率をこの範囲にすることで、焼成により形成される燃料極の気孔率を、容易に先に述べた範囲にすることができる。また燃料極用グリーン収縮が駆動力になり緻密な固体電解質膜が形成される。収縮率が30%を超えると固体電解質膜/燃料極接合体に上又は下に反りが発生し、また固体電解質膜に微小亀裂やピンホールが生じてしまう。
本発明において収縮率とは、グリーンが平板型の場合、例えば円盤状の場合には、以下の式(1)から算出される。
収縮率(%)=100×(グリーンの直径−焼成後の直径)/(グリーンの直径) (1)
収縮率(%)=100×(グリーンの直径−焼成後の直径)/(グリーンの直径) (1)
グリーンが円筒や楕円筒などの筒状の場合には、筒の周方向及び軸方向の収縮率の双方が前記範囲内を満たす必要がある。周方向の収縮率は以下の式(2)から算出され、軸方向の収縮率は式(3)から算出される。
周方向の収縮率(%)=100×(グリーン筒の周長−焼成後の周長)/(グリーン筒の周長) (2)
軸方向の収縮率(%)=100×(グリーン筒の高さ−焼成後の高さ)/(グリーン筒の高さ) (3)
周方向の収縮率(%)=100×(グリーン筒の周長−焼成後の周長)/(グリーン筒の周長) (2)
軸方向の収縮率(%)=100×(グリーン筒の高さ−焼成後の高さ)/(グリーン筒の高さ) (3)
同時焼成における時間や温度は従来の条件を用いることができる。例えば焼成温度は、仮焼温度よりも高いことを条件として、1200〜1600℃、特に1400〜1500℃とすることができる。焼成時間は1〜24時間程度とすることができる。これらの焼成条件は固体電解質膜及び燃料極の何れの特性も満足するものである。その結果、燃料極の気孔率は先に述べた範囲内となり、一方固体電解質膜には微小亀裂やピンホールが発生せず、緻密で良質な薄膜となる。
燃料極用グリーン及び固体電解質膜用グリーンの同時焼成に先立ち、燃料極用グリーンを予め仮焼し、得られた仮焼体の一面に固体電解質膜用グリーン(及びセリウム系酸化物層用グリーン)を成膜した後、前記の収縮条件下に両者を同時焼成することもできる。この操作を行うことで、同時焼結後の焼結体に反りが発生することを一層効果的に防止することができる。この場合には、仮焼体及び固体電解質膜用グリーンの同時焼成時の収縮率を20%超30%以下、好ましくは22〜28%となるように行う。燃料極用グリーンの仮焼は500〜1400℃、特に800〜1300℃、とりわけ800〜1200℃で行うことが好ましい。仮焼の時間は1〜10時間、特に2〜5時間であることが好ましい。
以上の方法によれば、気孔率及び相対密度が制御された多孔質の燃料極と、緻密な固体電解質薄膜とを同時に製造することができる。また、一回の焼成操作で所望の厚さを有し且つ緻密で欠陥のない固体電解質膜を得ることができる。従って製造工程を簡便化することができ、製造コストを低減できる。従来は、焼成された燃料極上に薄層の固体電解質膜用グリーンを形成しそれを焼成するという操作を数十回から数百回行って固体電解質膜を形成していたので、製造に膨大な時間と手間がかかっていた。
このようして得られた燃料極/固体電解質膜の接合体における固体電解質膜の外面に空気極を形成することで燃料電池の単セルが形成される。空気極を形成するには、固体電解質膜の外面に空気極用グリーンを形成し、これを焼成すればよい。或いは別法として、燃料極用グリーン、固体電解質膜用グリーン及び空気極用グリーンをこの順で積層し、これらを同時焼成してもよい。この場合には収縮率が先に述べた範囲となる条件下に焼成を行う。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は斯かる実施例に制限されるものではない。
〔実施例1ないし8並びに比較例1及び2〕
(1)固体電解質用ペーストの作製
固体電解質の原料粉末として、a)Y2O3を8モル%ドープしたジルコニア(YSZ)、b)Sm2O3を20モル%ドープしたCe0.8Sm0.2O1.9(SDC)、及びc)La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.2O3で表されるランタンガレート酸化物(LSGMO)の三種類を用いた。YSZは市販品(東ソー製)を用いた。SDC及びLSGMOは通常の固相反応法で調製した。これらの酸化物の粉末をボールミルで12〜24時間粉砕した。粉砕条件を変えて、三種類の平均粒径(0.5μm、2μm、5μm)を有する粉末を得た。粉砕後の各原料粉末にバインダとしてのエチルセルロースを加え、更に溶媒としてのカルビトールを加えて粘度を調整した。この混合物を遊星ボールミル及び混練機を用いて0.5〜3時間混練し、原料粉末の平均粒径が異なる三種類のペーストを得た。
(1)固体電解質用ペーストの作製
固体電解質の原料粉末として、a)Y2O3を8モル%ドープしたジルコニア(YSZ)、b)Sm2O3を20モル%ドープしたCe0.8Sm0.2O1.9(SDC)、及びc)La0.8Sr0.2Ga0.8Mg0.2O3で表されるランタンガレート酸化物(LSGMO)の三種類を用いた。YSZは市販品(東ソー製)を用いた。SDC及びLSGMOは通常の固相反応法で調製した。これらの酸化物の粉末をボールミルで12〜24時間粉砕した。粉砕条件を変えて、三種類の平均粒径(0.5μm、2μm、5μm)を有する粉末を得た。粉砕後の各原料粉末にバインダとしてのエチルセルロースを加え、更に溶媒としてのカルビトールを加えて粘度を調整した。この混合物を遊星ボールミル及び混練機を用いて0.5〜3時間混練し、原料粉末の平均粒径が異なる三種類のペーストを得た。
(2)燃料極用グリーンの作製
表1に示す平均粒径の酸化ニッケル(NiO)粉末と、前記の(1)で用いた酸化物の粉末(種類及び平均粒径は表1に示す)とを、重量比50:50で混合した。この混合物にカーボンブラック(平均粒径〜1μm)を加え、ボールミルを用いて1〜12時間混合した。この混合物にバインダとしてポリビニルアルコールを添加しペーストを得た。このペーストを、直径20mmの金型を用いて10〜20MPaの加圧力でプレス成形し、円盤型の燃料極用グリーンを得た。グリーンにおける気孔形成剤の配合割合は表1に示す通りであった。グリーンを約100℃で1時間乾燥させた後、乾燥後のグリーンの重量、直径及び厚さを測定し、グリーンの相対密度を求めた。また電池特性の評価用に直径16mm、高さ5mmの円筒型の燃料極用グリーンを同様に成形した。
表1に示す平均粒径の酸化ニッケル(NiO)粉末と、前記の(1)で用いた酸化物の粉末(種類及び平均粒径は表1に示す)とを、重量比50:50で混合した。この混合物にカーボンブラック(平均粒径〜1μm)を加え、ボールミルを用いて1〜12時間混合した。この混合物にバインダとしてポリビニルアルコールを添加しペーストを得た。このペーストを、直径20mmの金型を用いて10〜20MPaの加圧力でプレス成形し、円盤型の燃料極用グリーンを得た。グリーンにおける気孔形成剤の配合割合は表1に示す通りであった。グリーンを約100℃で1時間乾燥させた後、乾燥後のグリーンの重量、直径及び厚さを測定し、グリーンの相対密度を求めた。また電池特性の評価用に直径16mm、高さ5mmの円筒型の燃料極用グリーンを同様に成形した。
(3)燃料極用グリーン上への固体電解質膜用グリーンの成膜
前記の(2)で作製した円盤型の燃料極用グリーン上に、前記の(1)で作製した固体電解質ペーストを、スピンコート法で成膜した。また円筒型の燃料極用グリーンの場合には、前記の(1)で作製した固体電解質ペーストの粘度を調整して、ディップコート法で成膜した。但し、実施例3、5、6及び7では、燃料極用グリーンを900℃で5時間仮焼した後に、固体電解質膜用グリーンを成膜した。実施例1、3、5、7及び8においては、燃料極用グリーン上に、原料粉末の平均粒径が5μmの固体電解質ペーストを用いて下層グリーンを成膜した後に、原料粉末の平均粒径が0.5μmの固体電解質ペーストを用いて上層グリーンを成膜した。実施例6においては、燃料極用グリーン上に、原料粉末の平均粒径が1μmのBaOを含むペーストを用いて還元防止膜形成用のグリーンを形成した後に、原料粉末の平均粒径が0.5μmの固体電解質ペーストを用いて上層グリーンを成膜した。実施例2及び4並びに比較例1及び2においては、原料粉末の平均粒径が2μmの固体電解質ペーストのみを用いた。
前記の(2)で作製した円盤型の燃料極用グリーン上に、前記の(1)で作製した固体電解質ペーストを、スピンコート法で成膜した。また円筒型の燃料極用グリーンの場合には、前記の(1)で作製した固体電解質ペーストの粘度を調整して、ディップコート法で成膜した。但し、実施例3、5、6及び7では、燃料極用グリーンを900℃で5時間仮焼した後に、固体電解質膜用グリーンを成膜した。実施例1、3、5、7及び8においては、燃料極用グリーン上に、原料粉末の平均粒径が5μmの固体電解質ペーストを用いて下層グリーンを成膜した後に、原料粉末の平均粒径が0.5μmの固体電解質ペーストを用いて上層グリーンを成膜した。実施例6においては、燃料極用グリーン上に、原料粉末の平均粒径が1μmのBaOを含むペーストを用いて還元防止膜形成用のグリーンを形成した後に、原料粉末の平均粒径が0.5μmの固体電解質ペーストを用いて上層グリーンを成膜した。実施例2及び4並びに比較例1及び2においては、原料粉末の平均粒径が2μmの固体電解質ペーストのみを用いた。
(4)同時焼成
このようにして作製した燃料極用グリーン/固体電解質膜用グリーンを、約100℃で1時間乾燥後、電気炉を用いて1450℃で5時間焼成し、多孔質燃料極/固体電解質膜の焼結体を得た。得られた焼結体の重量、直径、厚さを測定した。この場合、固体電解質膜の相対密度を100%として電解質膜の厚さの実測値から電解質膜の重量を計算で求め、これらの値で補正して燃料極のみの相対密度と気孔率を求めた。燃料極の厚さは4mm、固体電解質膜の厚さは表1に示す通りであった。また焼成時の収縮率は表1に示す通りであった。
このようにして作製した燃料極用グリーン/固体電解質膜用グリーンを、約100℃で1時間乾燥後、電気炉を用いて1450℃で5時間焼成し、多孔質燃料極/固体電解質膜の焼結体を得た。得られた焼結体の重量、直径、厚さを測定した。この場合、固体電解質膜の相対密度を100%として電解質膜の厚さの実測値から電解質膜の重量を計算で求め、これらの値で補正して燃料極のみの相対密度と気孔率を求めた。燃料極の厚さは4mm、固体電解質膜の厚さは表1に示す通りであった。また焼成時の収縮率は表1に示す通りであった。
(5)空気極の作製
固相反応で合成したSm0.5Sr0.5CoO3の粉末を、前記の(1)と同様にしてペースト化し空気極用ペーストを得た。前記の(3)で作製した焼結体における固体電解質膜の表面に、空気極ペーストを塗布し900℃で1時間焼成した。焼成により得られた空気極の厚さは30μmであった。このようにして単セルを作製した。
固相反応で合成したSm0.5Sr0.5CoO3の粉末を、前記の(1)と同様にしてペースト化し空気極用ペーストを得た。前記の(3)で作製した焼結体における固体電解質膜の表面に、空気極ペーストを塗布し900℃で1時間焼成した。焼成により得られた空気極の厚さは30μmであった。このようにして単セルを作製した。
(6)発電特性の評価
前記の(5)で得られた単一セルを用い、燃料極側の直径8mmの領域(面積0.5cm2)に、室温加湿水素を流し、また空気極側の同面積の領域に空気を流した。表1に示す運転温度下にセルの開回路電圧及び出力特性を測定した。結果を表1に示す
前記の(5)で得られた単一セルを用い、燃料極側の直径8mmの領域(面積0.5cm2)に、室温加湿水素を流し、また空気極側の同面積の領域に空気を流した。表1に示す運転温度下にセルの開回路電圧及び出力特性を測定した。結果を表1に示す
表1に示す結果から明らかなように、各実施例の燃料電池における燃料極及び固体電解質膜には、反りや微小亀裂などの欠陥が発生していない。また、開回路電圧が高く、最大出力も大きいものであった。これに対して各比較例の燃料電池では、燃料極及び固体電解質膜に反りや微小亀裂などの欠陥が発生してしまい、発電特性を評価することができなかった。なお、実施例6における還元防止膜の組成は、BaCe0.8Sm0.2O(3-α)であった。
Claims (7)
- 燃料極と空気極と両者の間に配置される固体電解質膜とを備えた固体電解質型燃料電池の製造方法において、
燃料極用グリーンの一面に、固体電解質膜用グリーンを成膜した後、収縮率が20%超30%以下となる条件下に両者を同時焼成し、燃料極と固体電解質膜とを形成することを特徴とする固体電解質型燃料電池の製造方法。 - 固体電解質膜用グリーンが、希土類酸化物をドープしたジルコニア、希土類酸化物をドープしたセリア又はランタンガレート酸化物を含む請求項1記載の固体電解質型燃料電池の製造方法。
- 燃料極用グリーンが、酸化ニッケルと、希土類酸化物をドープしたセリア又は希土類酸化物をドープしたジルコニアとを含み、
酸化ニッケルの平均粒径が5〜30μmであり、
希土類酸化物をドープしたセリア又は希土類酸化物をドープしたジルコニアの平均粒径が0.1〜5μmである請求項1又は2記載の固体電解質型燃料電池の製造方法。 - 燃料極用グリーンが、60〜99重量%の原料粉末と、1〜40重量%の気孔形成剤とを含み、
気孔形成剤の平均粒径が1nm〜5μmである請求項1ないし3の何れかに記載の固体電解質型燃料電池の製造方法。 - 固体電解質膜の厚さが1〜50μmとなるように焼成を行う請求項1ないし4の何れかに記載の固体電解質型燃料電池の製造方法。
- 燃料極用グリーンを500〜1400℃で予め仮焼し、得られた仮焼体の一面に固体電解質膜用グリーンを成膜した後、前記の収縮条件下に仮焼体及び固体電解質膜用グリーンを同時焼成する請求項1ないし5の何れかに記載の固体電解質型燃料電池の製造方法。
- 固体電解質膜用グリーンの原料粉末として、平均粒径が1〜10μmの粗粒子と、平均粒径が0.1〜5μmの微粒子とを用い、
燃料極用グリーン上に、前記粗粒子を含む固体電解質膜の下層グリーンを成膜し、その上に前記微粒子を含む固体電解質膜の上層グリーンを成膜し、然る後に、これらを同時焼成する請求項1ないし6の何れかに記載の固体電解質型燃料電池の製造方法。
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- 2006-01-25 JP JP2006016656A patent/JP2007200664A/ja active Pending
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