JP2015122288A - 固体酸化物形燃料電池および該電池を製造する方法と材料 - Google Patents

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Abstract

【課題】固体電解質の薄膜化に伴う不具合が抑制され、優れた発電性能と高い信頼性とを両立し得るSOFCを提供すること。【解決手段】本発明により、アノード−固体電解質グリーンシート積層体110が提供される。ここで、固体電解質20は2層またはそれ以上の多層構造からなり、該固体電解質を構成する各層では主体となる酸化物イオン伝導体の種類が相互に等しい。好ましい一態様では、固体電解質20の表面にさらに反応抑止層30を備えたアノード−固体電解質グリーンシート−反応抑止層積層体120であり、反応抑止層30と該反応抑止層に接する固体電解質層24とは、同種のバインダを含む。また、本発明により、上記グリーンシート積層体を所定の温度で焼成してなるアノード−固体電解質を備えた固体酸化物形燃料電池が提供される。【選択図】図1

Description

本発明は、固体酸化物形燃料電池および該電池の製造方法、ならびに該電池を製造するための材料に関する。
固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell:SOFC;以下、単に「SOFC」ということもある。)は、種々のタイプの燃料電池のなかでも発電効率が高く、また多様な燃料の使用が可能なため、環境負荷の少ない次世代の発電装置として開発が進められている。
SOFC(単セル)は、ガス拡散性に優れた多孔質構造のカソード(空気極)とアノード(燃料極)とが酸化物イオン伝導体から成る緻密な膜状の固体電解質を介して対向した構成である。このようなSOFCは、例えばシート状のアノードの表面に固体電解質膜を積層し、これらを一旦焼成した後にカソードを積層し、再度焼成することによって製造し得る。また、上記固体電解質とカソードとが固相反応を生じ得る場合には、これを防止するため、一般に上記固体電解質とカソードとの間に反応抑止層(中間層)を介在させる(例えば特許文献1、2)。
特開2003−173802号公報 特開2011−9174号公報
ところで、近年、SOFCの高性能化の一環として、固体電解質の薄膜化が検討されている。一般に、電気抵抗は厚みに比例して増大するため、固体電解質を薄くする(例えば20μm以下とする)ことで、より出力密度の優れたSOFCを実現し得る。しかしながら、かかる薄膜化はその背反として信頼性(耐久性)の低下を招き得る。すなわち、薄膜化された固体電解質膜ではクラックやピンホール、界面剥離等の問題が生じ易く、またSOFCが起動と停止を繰り返すことで反りや変形等の不都合を生じることがある。かかる場合、燃料ガスのリークや電気抵抗の増大等を招来し、SOFCの性能(発電性能や耐久性能)が低下したり、或いは発電自体が行われなくなったりする虞がある。
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、固体電解質の薄膜化に伴う不具合が抑制され、優れた発電性能と高い信頼性(耐久性)とを両立し得るSOFCを提供することである。また、関連する他の目的は、かかるSOFCの製造方法を提供することである。
上記目的を実現するべく、本発明によって、固体酸化物形燃料電池の形成に用いられるグリーンシート積層体が提供される。このグリーンシート積層体は、アノードと固体電解質とが積層された構成であり、上記固体電解質は2層またはそれ以上の層を含む多層構造からなる。そして、上記固体電解質を構成する各層では、主体となる酸化物イオン伝導体の種類が相互に等しいことを特徴とする。
固体電解質を2層またはそれ以上の多層構造とすることで、例えば1層目の固体電解質にピンホール等の不良が生じた場合であっても、2層目以降で補完することができ、アノードとカソードとが直接接触すること(貫通すること)を抑制し得る。このため、従来の単層の場合に比べて固体電解質膜の形成に起因する不具合が生じ難く、より緻密で均質な固体電解質を実現することができる。また、固体電解質を構成する各層に同種の酸化物イオン伝導体を配置することによって、低抵抗で酸化物イオン伝導性に優れた固体電解質を形成することができる。
したがって、ここで開示される技術によれば、固体電解質の薄膜化に伴う不具合(例えば、リークの発生等)を抑制し得、高い発電性能を長期に渡って発揮し得る、高性能なSOFCを実現することができる。
なお、本明細書において「アノード−固体電解質グリーンシート積層体」とは、アノードの表面に2層またはそれ以上の多層構造からなる固体電解質を備えた積層体であって、少なくとも本願の特徴的部分である固体電解質が未焼成(生シート)の状態であることをいう。すなわち、アノードについては焼成前であってもよく、焼成後であってもよい。また、完全な未焼成シートの他、仮焼成シートをも包含する用語である。
ここで開示される好適な一態様では、上記固体電解質全体の厚みが20μm以下(好ましくは10μm以下)である。一般に電気抵抗は厚みに比例して増大するため、固体電解質全体の厚みを20μm以下と比較的薄くすることで、抵抗をより低く抑えることができ、一層優れた発電性能(高出力密度)を実現することができる。このため、発電性能と信頼性とを高いレベルで両立可能なSOFCを実現することができる。
ここで開示される好適な一態様では、固体電解質膜の表面に反応抑止層を備える。そして、上記反応抑止層と該反応抑止層に接する上記固体電解質層とは、少なくとも同種のバインダ(例えばポリビニルブチラールやエチルセルロース)を含む。
かかる構成によれば、固体電解質とカソードの界面を安定化することができる。このため、固相反応が生じ難く、優れた酸化物イオン伝導性を実現することができる。また、反応抑止層と該反応抑止層に接する固体電解質層に同種のバインダを含むことによって、固体電解質−反応抑止層間の親和性(相溶性)が高まり得る。これにより、かかる界面において自己組織化を生じ高い接合強度を実現することができ、界面剥離等の不具合の発生を抑制することができる。したがって、長期に渡り使用可能なSOFCとなり、本願発明の効果をより高いレベルで発揮することができる。
また、上記反応抑止層と、該反応抑止層に接する固体電解質層とに含まれるバインダの含有率は実質的に等しいことが好ましい。隣接する層のバインダ含有率が同等である場合、自己組織化が生じた際のバインダの偏在化を抑制することができる。したがって、より低抵抗で酸化物イオン導電性に優れた固体電解質を実現することができる。なお、各固体電解質層に含まれるバインダの種類や量は、例えば熱分解GC−MS(GC;Gas Chromatography−MS;Mass Spectrometry)の手法によって把握することができる。具体的には、先ずグリーンシート積層体の固体電解質を構成する各層から測定用試料を採取し、この測定試料を熱分解GCーMSに導入して分析することによって、含まれるバインダの種類や量を把握することができる。
また、上記アノードに接する固体電解質層に含まれる酸化物イオン伝導体の含有率は、該アノードに接しない固体電解質層よりも低いことが好ましい。このような構成とすることで、アノードと該アノードに接する固体電解質層との性状(例えば固形分濃度や熱膨張)の整合をとることができ、アノードと固体電解質との密着性を高めることができる。このため、界面剥離等の発生を好適に抑制することができる。したがって、かかる構成によれば一層優れた発電性能と信頼性と発揮し得るSOFCを実現することができる。
さらに本発明により、アノード−固体電解質グリーンシート積層体の製造方法が提供される。ここで提供される製造方法は、(1)アノード形成用シートを準備すること;(2)上記アノード形成用シートの表面に、少なくとも酸化物イオン伝導体とバインダと溶媒とを含む第1層形成用組成物を付与して、第1層を形成すること;(3)上記第1層の表面に、少なくとも酸化物イオン伝導体とバインダと溶媒とを含む上層形成用組成物を付与して上層を順次形成し、アノード−固体電解質積層体を得ること;を包含する。そして、第1層形成用の酸化物イオン伝導体と上層形成用の酸化物イオン伝導体とは、相互に同じ種類のものを用いる。
固体電解質を2層またはそれ以上の多層構造とすることで、固体電解質形成に係る不具合を好適に抑制することができる。このため、かかる製造方法によれば、高い発電性能と信頼性とを有するSOFC用グリーンシート積層体を好適に製造することができる。
ここで開示される製造方法の好適な一態様では、上記固体電解質膜の形成は、該固体電解質全体の厚みが20μm以下となるよう行う。これによって抵抗をより低く抑えることができ、一層優れた発電性能(高出力密度)を実現することができる。
ここで開示される製造方法の好適な一態様では、さらに、上記得られたアノード−固体電解質積層体の固体電解質側の最表面に少なくともセリウム酸化物とバインダと溶媒とを含む反応抑止層形成用組成物を付与して反応抑止層を形成すること、を包含する。そして、上記固体電解質膜の最表面を構成する最上層の形成用バインダと、上記反応抑止層の形成用バインダとは、少なくとも相互に同じ種類のものを使用する。かかるバインダとしては、例えばポリビニルブチラールやセルロースおよびその誘導体(典型的にはエチルセルロース)等を好適に用いることができる。
最上層と反応抑止層に同種のバインダを含むことによって、固体電解質−反応抑止層間の親和性(相溶性)が高まり得る。このため、かかる界面において自己組織化が起こり得、これによって界面剥離等の不具合を抑制することができる。したがって、本願発明の効果をより高いレベルで発揮することができる。
ここで開示される製造方法の好ましい一態様では、最上層および反応抑止層には、実質的に等量のバインダを用いる。かかる構成によれば、固体電解質−反応抑止層間で自己組織化が生じた際に、バインダが偏在化し難い。したがって、より低抵抗且つ表面の緻密な固体電解質を実現することができる。
固体電解質を構成する各層は、異なる形成手法を用いて形成することが好ましい。これによって、形成方法に起因する不具合を好適に抑制し得、より緻密な固体電解質を実現することができる。第1層の形成には、シート成形の手法を好ましく採用し得る。また、上層および反応抑止層の形成には、印刷成形の手法を好ましく採用し得る。上層および反応抑止層形成用の溶媒としては、例えばαーテルピネオール、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート、ブチルジグリコールアセテート、イソボルニルアセテート等を好適に採用し得る。また、第1層に含まれる酸化物イオン伝導体の含有率は、上層よりも低くなるよう調整することが好ましい。
また、本発明により、上記グリーンシート積層体を所定の温度で焼成してなるアノード−固体電解質を備えた固体酸化物形燃料電池が提供される。ここで開示されるSOFCは、高い発電性能を発揮し得る。さらに、固体電解質−反応抑止層層の接合強度が高いため、界面剥離を生じ難く、長期に渡って安定して使用することができる。すなわち、ここで開示されるSOFCは、発電性能と信頼性(耐久性)とを高いレベルで両立し得る。
一実施形態に係るSOFC用アノード−固体電解質グリーンシート積層体の製造工程を模式的に示す図であり、(a)は支持基材(支持体)としてのアノード形成用シートを、(b)はアノード−固体電解質積層体を、(c)はアノード−固体電解質−反応抑止層積層体を、それぞれ示している。 一実施形態に係るSOFCを備えた発電システムを模式的に示す断面図である。
以下、適宜図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、発電システムの構成や製造方法等)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。なお、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明し、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は実際の寸法関係を反映するものではない。
特に限定することを意図したものではないが、以下では図1(c)に示す形態のアノード−固体電解質グリーンシート積層体を例に、本発明を詳細に説明する。かかる積層体は、例えば図1(a)〜(c)に模式的に示すように製造することができる。ここで開示される製造方法は、以下の工程を包含する。
(S1)アノード形成用シート10を準備すること。
(S2)上記アノード形成用シートの表面に、少なくとも酸化物イオン伝導体とバインダと溶媒とを含む第1層形成用組成物を付与して、第1層22を形成すること。
(S3)上記第1層の表面に、少なくとも酸化物イオン伝導体とバインダと溶媒とを含む上層形成用組成物を付与して、1または2以上の上層(図1に示す態様では、第2層24)を形成し、アノード−固体電解質積層体110を得ること。
ここで、第1層形成用の酸化物イオン伝導体と、上層形成用の酸化物イオン伝導体とは、相互に同じ種類のものを用いる。かかる製造方法によれば、固体電解質形成に係る不具合を好適に抑制し得、高い発電性能と信頼性とを実現し得るSOFC用グリーンシート積層体を好適に製造することができる。
さらに、好適な一態様では、上記(S3)の後に、以下の工程を包含する。
(S4)上記得られたアノード−固体電解質グリーンシート積層体110の固体電解質側の最表面に、少なくともセリウム酸化物とバインダと溶媒とを含む反応抑止層形成用組成物を付与して、反応抑止層30を形成し、アノード−固体電解質−反応抑止層積層体120を得ること。
以下、各工程について順に説明する。
≪S1;アノード形成用シートの準備≫
ここで開示される製造方法では、先ず、図1(a)に示すようなアノード形成用シート10を準備する。これらは既製品を購入してもよく、また従来公知の手法を用いて作製することもできる。このようなアノード形成用シート10は、例えば電気触媒的作用を有する導電性材料と、バインダと、必要に応じて用いられる造孔材や分散剤とを適当な溶媒に分散させ、ペースト状またはスラリー状の組成物(アノード用スラリー)を調製し、かかるアノード用スラリーを任意の手法で成形することにより作製し得る。
電気触媒的作用(高い触媒活性)を有する導電性材料としては、従来からSOFCのアノードに用いられる物質の一種または二種以上を特に限定することなく用いることができる。典型例として、金属もしくは金属の酸化物などの金属材料が挙げられる。具体的には、チタン(Ti)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ストロンチウム(Sr)、ジルコニウム(Zr)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、ランタン(La)、金(Au)等の金属;酸化コバルト(CoO、Co、Co)、酸化ニッケル(NiO、Ni、Ni)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化ルテニウム(RuO)等の金属酸化物;等を用いることができる。なかでもニッケルは他の金属に比べて比較的安価であり、且つ高い反応活性を示す(高い触媒能を有する)ことから特に好適な金属種である。このため、ニッケルを含む金属材料(例えば酸化ニッケル)を好ましく用いることができる。
導電性材料としては、さらに上記金属材料と他の材料とを混合した複合材料を用いることもできる。具体的には、上記金属材料と、後述する固体電解質20の構成材料とを任意の割合で混合した複合材料を用いることができる。好適例として、ニッケル系材料(例えばNiO)と、安定化ジルコニア(例えば、イットリア安定化ジルコニア(Yttria stabilized zirconia:YSZ)、カルシア安定化ジルコニア(Calcia stabilized zirconia:CSZ)、スカンジア安定化ジルコニア(Scandia stabilized zirconia:ScSZ))とのサーメットが挙げられる。金属材料に固体電解質20の構成材料を混合して用いることで、アノード10と固体電解質20との熱膨張の整合がとれ、より耐久性に優れたSOFCを実現することができる。つまり、SOFCの起動や停止に伴って、使用時の温度域(例えば700℃〜1000℃)と停止時の温度域(典型的には常温)との間で昇温や降温を繰り返しても不具合(例えばクラックや界面剥離等の発生)が生じ難く、長期に渡り安定した発電性能を発揮可能なSOFCを実現することができる。上記金属材料と固体電解質構成材料との混合比率(質量比)は特に限定されないが、例えば90:10〜40:60(より好ましくは、凡そ80:20〜45:55)とすることができる。
上記金属材料の性状は特に限定されないが、例えば平均粒径が0.01μm〜5μm(典型的には0.1μm〜2μm)程度の粉末状(粒子状)のものを好ましく用いることができる。また、サーメット材料を作製・使用する場合には、実質的に同等な平均粒径の材料同士を混合して用いることが好ましい。例えば、平均粒径が凡そ0.1μm〜5μmのニッケル系材料と、平均粒径が凡そ0.1μm〜5μmの安定化ジルコニアとを上記比率で混合して用いることができる。これによって、より均質なアノードを実現することができる。なお、本明細書において「平均粒径」とは、一般的なレーザー回折・光散乱法に基づく粒度分布測定により測定した体積基準の粒度分布において、微粒子側からの累積50%に相当する粒径(D50粒径、メジアン径ともいう。)をいう。かかる粒径の調製は、従来公知の粉砕処理や篩いがけ、分級等によって行うことができる。
バインダとしては、脱バインダ処理(典型的には、500℃以上で加熱焼成すること)によって蒸発除去し得るものであればよく、特に限定なく用いることができる。例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシエチルメチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース等のセルロース系高分子;メタクリル酸エステル等のエステル系ポリマー;ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー;ポリアミドイミド、ポリイミド等のイミド系ポリマー;ポリエチレンオキサイド等のエチレン系ポリマー;ポリアクリロニトリル、ポリメタリロニトリル等のニトリル系ポリマー;ポリウレタン等のウレタン系ポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデンポリフッ化ビニル、酢酸ビニル等のビニル系重合体;スチレンブタジエンゴム等のゴム類;等を用いることができ、なかでもエステル系ポリマー(例えばメタクリル酸エステル)を含むことが好適である。
アノード形成用シート10には、さらに、本発明の効果を著しく損なわない限りにおいて、例えば造孔材(気孔形成材)や可塑剤、酸化防止剤、増粘剤、分散剤等の各種添加剤等を必要に応じて含ませることができる。造孔材としては、例えばカーボンや炭化ケイ素、窒化ケイ素、澱粉等を好ましく用いることができる。可塑剤としては、例えばグリセリンやフタル酸エステル等を好ましく用いることができる。分散剤としては、例えばカルボン酸系の高分子界面活性剤を用いることができる。
溶媒としては、上記原料を好適に分散(または溶解)し得るものを一種または二種以上を特に限定することなく用いることができる。例えば、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、環状エーテル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤または他の有機溶剤が挙げられる。とりわけ、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、オクタノール、エチレングリコール、α−テルピネオール、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート、ブチルジグリコールアセテート、イソボルニルアセテート、ブチルカルビトール、ブチルセロソルブ、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン等が好適に用いられる。アノード用スラリー全体に占める溶媒の割合は、特に限定されないが、例えば10質量%〜35質量%(好ましくは、20質量%〜30質量%)とすることができる。
アノード用スラリーの調製には、ボールミル、ミキサー、ディスパー、ニーダ等の従来公知の種々の攪拌・混合装置を適宜用いることができる。例えば、粉末状の上記原料を溶媒中に添加し、50rpm〜300rpmの攪拌速度で0.5時間〜1時間混練することによって、原料が好適に分散した均質なスラリーを調製することができる。また、上記材料を混練する順序は特に限定されず、一度に全ての材料を溶媒中に投入してもよく、何度かに分けて(例えば一種の材料を溶媒中に添加して分散させた後に、他の材料を添加し分散させて)行ってもよい。
アノード用スラリーの付与方法としては、一般的な流体材料の塗布技術、例えば印刷法(例えば凸版印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷、スクリーン印刷等)、シート成形法(ドクターブレード法等)、ディッピング法、ロールコーティング法、スプレー法等を採用することができ、なかでもドクターブレード法を好ましく採用することができる。
ここで開示されるアノード(燃料極)形成用シート10は、SOFCの支持体として、例えば固体電解質20やカソード40に比べて厚めに形成される。支持体としてのアノード形成用シート10の厚みは、強度の確保や耐久性の観点から通常凡そ100μm〜2000μmとすることができ、凡そ200μm〜1000μmとすることが好ましい。
なお、図1に示す形態ではアノード形成用シート10は単層構造であるが、所望の厚み(例えば300μm〜1000μm)を実現するために、複数のシートを積層した多層構造とすることもできる。これらシートの積層は、例えばシート間に接着剤としての有機物を付与したり、或いは加熱圧着したりすることによって作製することができる。
アノード形成用シート10全体に占める上記金属材料または金属酸化物の割合は、凡そ30質量%以上(典型的には40質量%〜80質量%)であり、通常は凡そ45質量%〜70質量%とすることが好ましい。固体電解質の構成材料を使用する場合、アノード形成用シート10全体に占める固体電解質構成材料の割合は、例えば凡そ10質量%〜50質量%とすることができ、通常は凡そ20質量%〜40質量%とすることが好ましい。また、アノード形成用シート10全体に占めるバインダの割合は、例えば凡そ1質量%〜20質量%とすることができ、通常は凡そ2質量%〜10質量%とすることが好ましい。各種添加剤を使用する場合、アノード形成用シート10全体に占める添加剤の割合は、例えば0.1質量%〜20質量%とすることができ、通常は凡そ0.5質量%〜10質量%とすることが好ましい。
≪S2;第1層の形成≫
ここで開示される製造方法では、次に、図1(b)に示すように、上記アノード形成用シート10の表面に第1層22を形成する。かかる第1層22は、例えば、酸化物イオン伝導体と、バインダと、必要に応じて含まれる添加剤(例えば可塑剤)とを、溶媒に分散させて調整してなるペースト状またはスラリー状の組成物(第1層形成用スラリー)を、アノード10(アノード形成用シートが積層された形態であり得る。)の上に任意の手法で付与することで形成し得る。
酸化物イオン伝導体としては、従来からSOFCの固体電解質に用いられる物質の一種または二種以上を特に限定することなく用いることができ、高い酸化物イオン伝導性を有するものを好ましく用いることができる。好適例として、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、カルシウム(Ca)、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、ガリウム(Ga)、ストロンチウム(Sr)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、バリウム(Ba)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)、タングステン(W)、ビスマス(Bi)等から選択される元素を含む酸化物が挙げられる。具体的には、イットリア(Y)、カルシア(CaO)、スカンジア(Sc)、マグネシア(MgO)、イッテルビア(Yb)、エルビア(Er)等の安定化剤で結晶構造を安定化させたジルコニア(ZrO);イットリア(Y)、ガドリニア(Gd)、サマリア(Sm)等のドープ剤をドープした酸化セリウム(CeO);等が挙げられる。なかでも、イットリウム(Y)の酸化物(例えば、イットリア(Y))を固溶させたイットリア安定化ジルコニア(YSZ)や、スカンジウム(Sc)の酸化物(例えばスカンジア(Sc))を固溶させたスカンジア安定化ジルコニア(ScSZ)は、中低温領域(凡そ500℃〜800℃)においても比較的高い酸化物イオン伝導性を示し得るため、起動性やコストの観点から好ましく用いることができる。上記固溶させる酸化物の量は、特に限定されないが、例えば凡そ1mol%〜20mol%(通常、凡そ5mol%〜10mol%)とすることができる。また、酸化物イオン伝導体の平均粒径は、上記アノード形成用に用いたものと同等とすることが好ましい。換言すれば、平均粒径が0.01μm〜5μm(例えば0.1μm〜2μm)程度のものを、好ましく採用し得る。材料の粒径を揃えることで、より高い機械的強度を実現し得る。
バインダや溶媒、添加剤としては、例えばアノード形成用として上述したもののなかから1種または2種以上を特に限定することなく用いることができる。好適例として、バインダとしてポリビニルブチラールを、溶媒としてイソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤を、それぞれ用いることができる。
第1層形成用スラリーの調製方法は、上記アノードシートを形成する場合と同様であり得る。また、第1層形成用スラリーの固形分濃度(NV)は60質量%〜80質量%(例えば65質量%〜75質量%)程度とすることができる。換言すれば、第1層形成用スラリー全体に占める溶媒の割合は、例えば凡そ20質量%〜40質量%とすることができ、通常は凡そ25質量%〜35質量%とすることが好ましい。第1層形成用スラリー全体に占める上記酸化物イオン伝導体の割合は、凡そ40質量%以上であり、通常は凡そ50質量%〜60質量%とすることが好ましい。第1層形成用スラリー全体に占めるバインダの割合は、例えば凡そ1質量%〜10質量%とすることができ、通常は凡そ5質量%〜10質量%とすることが好ましい。
かかるスラリーの粘度は、概ね20Pa・s以下(例えば0.1Pa・s〜20Pa・s)とすることができ、通常0.5Pa・s〜10Pa・sとすることが好ましい。このような粘度に調製することで、塗工スジや厚みムラ等の発生を抑制することができ、例えばドクターブレード法によって、好適に所望の厚みの第1層を形成することができる。なお、本明細書において「粘度」とは、液温:25℃において、E型粘度計を用いてロータ回転数1rpmで測定したときの値をいう。
第1層形成用スラリーの付与方法は上記アノードシートを形成する場合と同様であり得、例えばシート成形法(例えばドクターブレード法)を採用し得る。第1層22の厚みは、通常10μm以下であり、例えば7μm以下(典型的には5μm以下)とすることが好ましい。
第1層22全体に占める上記酸化物イオン伝導体の割合は、凡そ60質量%以上(典型的には60質量%〜90質量%)であり、通常は凡そ70質量%〜85質量%とすることが好ましい。また、第1層22全体に占めるバインダの割合は、例えば凡そ1質量%〜20質量%とすることができ、通常は凡そ5質量%〜10質量%とすることが好ましい。各種添加剤を使用する場合、第1層22全体に占める添加剤の割合は、例えば0.1質量%〜20質量%とすることができ、通常は凡そ0.5質量%〜15質量%とすることが好ましい。
≪S3;上層の形成工程≫
ここで開示される製造方法では、次に、上記第1層の形成と同様に、該第1層の表面に1または2以上の上層(図1に示す態様では上層24)を形成する。これによって、アノード−固体電解質積層体110を得ることができる。かかる上層は、例えば、酸化物イオン伝導体と、バインダと、必要に応じて含まれる添加剤とを、溶媒に分散させて調整してなるペースト状またはスラリー状の組成物(上層形成用スラリー)を形成したい上層の数だけ調製し、かかるスラリーを第1層22の上に任意の手法で順次付与して積層することにより作製することができる。
ここで開示される製造方法では、上層に用いられる酸化物イオン伝導体が第1層と同種のものを主体とし、実質的に第1層の形成に用いられる酸化物イオン伝導体からなることが好ましい。これによって、固体電解質全体の抵抗を低減し得、且つ優れた酸化物イオン伝導性を実現することができる。なお、ここで「同種」とは、主体とする酸化物イオン伝導体を構成する元素同士が実質的に相互に等しい(不可避的に含まれる不純物等は許容し得る。)ことをいう。また、その構成比率は同じであってもよく、異なっていてもよい。例えば、酸化物イオン伝導体として、第1層形成用に8mol%Y−ZrOを用い、上層形成用に10mol%Y−ZrOを用いることもできる。また、酸化物イオン伝導体の平均粒径は、上記アノード形成用に用いたものと同等とすることが好ましい。構成材料の粒径を概ね揃えることで、より機械的強度が高く、且つ、均質な固体電解質層を作製することができる。
バインダ、溶媒、添加剤等は、例えば既に上述したもののなかから1種または2種以上を特に限定することなく用いることができる。好適な一態様では、バインダとしてセルロースおよびその誘導体(典型的にはエチルセルロース)を、溶媒としてα−テルピネオールを用いることができる。好適な他の一態様では、バインダとしてポリビニルブチラールを、溶媒としてブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート、ブチルジグリコールアセテート、イソボルニルアセテート等のエステル系溶剤を用いることができる。
上層形成用スラリーの調製方法は、第1層と同様であり得る。上層形成用スラリーの固形分濃度(NV)は60質量%〜80質量%(例えば65質量%〜75質量%)程度とすることができる。換言すれば、上層形成用スラリー全体に占める溶媒の割合は、例えば凡そ20質量%〜40質量%とすることができ、通常は凡そ25質量%〜35質量%とすることが好ましい。また、上層形成用スラリー全体に占める上記酸化物イオン伝導体の割合は、凡そ50質量%以上であり、通常は凡そ60質量%〜70質量%とすることが好ましい。第1層形成用スラリー全体に占めるバインダの割合は、例えば凡そ1質量%〜10質量%とすることができ、通常は凡そ1質量%〜5質量%とすることが好ましい。
かかるスラリーの粘度は、通常第1層形成用スラリーよりも高く、概ね100Pa・s以下(例えば5Pa・s〜100Pa・s)とすることができ、10Pa・s〜50Pa・sとすることが好ましい。このような粘度に調製することで、例えばスクリーン印刷の手法によって所望の厚みの上層を好適に形成することができる。
上層形成用スラリーの付与方法は特に限定されないが、例えば印刷法(例えばスクリーン印刷法)を採用し得る。上記第1層の形成方法と異なる手法を用いることによって、形成方法に起因する不具合を抑制し得、より緻密な固体電解質を実現し得る。上層24の厚みは、通常10μm以下であり、例えば7μm以下(典型的には5μm以下)とすることが好ましい。
なお、図1で開示される固体電解質20は、アノード10に接する第1層22と、該第1層の表面に形成された1つの上層24との2層構造であるが、それ以上の多層構造(例えば、第1層および2つの上層を備えた3層構造)とすることもできる。かかる場合、主体となる酸化物イオン伝導体の種類は、固体電解質を構成する全ての層で相互に等しい。また、固体電解質20全体の厚みは、20μm以下(典型的には1μm〜20μm)であることが好ましく、2μm〜10μm(例えば3μm〜7μm)であることがより好ましい。固体電解質全体の厚みを20μm以下(好ましくは10μm以下)とすることで抵抗を低く抑えることができ、優れた発電性能(高出力密度)を実現し得る。また、1μm以上(好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上)とすることで、クラックやピンホール、界面剥離等の固体電解質膜の形成に起因する不具合がより一層生じ難く、本願発明の効果を高いレベルで発揮することができる。
上層24全体に占める上記酸化物イオン伝導体の割合は、通常第1層22よりも多く、凡そ70質量%以上(典型的には70質量%〜98質量%)であり、通常は凡そ85質量%〜95質量%とすることが好ましい。また、上層24全体に占めるバインダの割合は、例えば凡そ1質量%〜20質量%とすることができ、通常は凡そ5質量%〜10質量%とすることが好ましい。各種添加剤を使用する場合、上層24全体に占める添加剤の割合は、例えば0.1質量%〜20質量%とすることができ、通常は凡そ0.5質量%〜15質量%とすることが好ましい。
なお、グリーンシート積層体を構成する固体電解質が多層構造であるか否かは、例えば走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)観察によって把握することができる。具体的には、クロスセクションポリッシャ加工等によってグリーンシート積層体の固体電解質膜の断面出しを行い、この断面をSEM観察する。かかる観察結果に基づいて該固体電解質を構成する層の数およびその界面を明らかにすることができる。
≪S4;反応抑止層の形成≫
ここで開示される製造方法の好ましい一態様では、図1(c)に示すように、固体電解質の上層の最表面(この形態では上層24の表面)に、反応抑止層30を形成する。これによって、アノード−固体電解質−反応抑止層積層体120を作製することができる。例えば、固体電解質20の構成材料として酸化ジルコニウム系のものを、後述するカソード40の構成材料としてペロブスカイト構造を有する酸化物を用いる場合、これらの接触する部分(界面)において固相反応を生じ、固体電解質−カソード間の酸化物イオン伝導性が低下する虞がある。このため、かかる材料を用いる場合には、固体電解質とカソードとの間に反応抑止層を形成することが好ましい。
反応抑止層30は、例えば、セリウム酸化物と、バインダと、必要に応じて含まれる添加剤(例えば分散剤)とを、溶媒に分散させて調整してなるペースト状またはスラリー状の組成物(反応抑止層形成用スラリー)を、上層の最表面に任意の手法で付与することで形成し得る。
セリウム酸化物としては、例えば固体電解質層の構成材料として例示したセリウム酸化物を用いることができる。好適例として、イットリア(Y)、ガドリニア(Gd)、サマリア(Sm)等をドープした酸化セリウム(CeO)が挙げられる。上記置換的な構成元素の量(異元素のドープ量)は、特に限定されないが、例えば、該置換元素の酸化物換算で1mol%〜20mol%(例えば5mol%〜15mol%)とすることができる。かかる範囲とすることで、低抵抗且つ緻密な反応抑止層を形成し得る。
バインダや溶媒としては特に限定されないが、少なくとも上層形成用と同種のものを使用することが好ましい。具体的には、バインダにセルロースおよびその誘導体(典型的にはエチルセルロース)を、溶媒にα−テルピネオールを、それぞれ好ましく採用し得る。好適な他の一態様としては、バインダにポリビニルブチラールを、溶媒にブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート、ブチルジグリコールアセテート、イソボルニルアセテート等のエステル系溶剤を用いることができる。かかる構成によれば、固体電解質−反応抑止層間の親和性(相溶性)を高めることができ、かかる界面において自己組織化が生じ得る。したがって、界面剥離等の不具合を抑制することができ、高い発電性能を長期に渡って発揮し得る、高性能なSOFCを実現し得る。また、添加剤としては、カルボン酸系(例えばモノカルボン酸、ジカルボン酸等)の界面活性剤を好ましく採用し得る。
反応抑止層形成用スラリーの調製方法は、固体電解質層を形成する場合と同様であり得る。反応抑止層形成用スラリーの固形分濃度(NV)は、典型的には60質量%〜80質量%(例えば65質量%〜75質量%)程度とすることができ、概ね上層形成用スラリーと同等とすることが好ましい。換言すれば、反応抑止層形成用スラリー全体に占める溶媒の割合は、例えば凡そ20質量%〜40質量%とすることができ、通常は凡そ25質量%〜35質量%とすることが好ましい。また、反応抑止層形成用スラリー全体に占める上記セリウム酸化物の割合は、凡そ50質量%以上であり、通常は凡そ60質量%〜70質量%とすることが好ましい。反応抑止層形成用スラリー全体に占めるバインダの割合は、例えば凡そ1質量%〜10質量%とすることができ、通常は凡そ1質量%〜5質量%とすることが好ましい。
かかるスラリーの粘度は、概ね30Pa・s以下(例えば1Pa・s〜30Pa・s)とすることができ、5Pa・s〜20Pa・sとすることが好ましい。反応抑止層形成用スラリーの付与方法は特に限定されないが、上層を形成する場合と同様であり得、例えば印刷法(例えばスクリーン印刷法)を採用し得る。上層24の厚みは特に限定されないが、あまりに厚い場合は空気極−燃料極間のイオン伝導性が低くなり、発電性能が低下する虞がある。また、あまりに薄い場合は固体電解質とカソードとが接触し反応を生じる等、反応抑止層としての役割を果たさない虞がある。かかる観点から、反応抑止層30の厚みは、0.5μm〜10μmであることが適当であり、通常1μm〜5μm程度とすることが好ましい。
反応抑止層30全体に占める上記セリウム酸化物の割合は、凡そ70質量%以上(典型的には70質量%〜98質量%)であり、通常は凡そ85質量%〜95質量%とすることが好ましい。また、反応抑止層30全体に占めるバインダの割合は、例えば凡そ1質量%〜20質量%とすることができ、通常は凡そ5質量%〜10質量%とすることが好ましい。なかでも好ましい態様として、反応抑止層30に含まれるバインダと、該反応抑止層に接する上層24に含まれるバインダとの含有率が実質的に同等であることが挙げられる。隣接する層のバインダ含有率を同等とすることで、自己組織化が生じた際のバインダの偏在化を抑制することができる。また、各種添加剤(例えば分散剤)を使用する場合、上層24全体に占める添加剤の割合は、例えば0.1質量%〜20質量%とすることができ、通常は凡そ0.5質量%〜15質量%とすることが好ましい。
≪固体酸化物形燃料電池(SOFC)≫
また、本発明により、上記グリーンシート積層体を所定の温度で焼成してなるアノード−固体電解質を備えた固体酸化物形燃料電池(SOFC)が提供される。かかるSOFCは、固体電解質を介してアノードとカソードとが対向した構成であり、例えば、上記作製したグリーンシート積層体110(または、反応抑止層30を備えたグリーンシート積層体120)を焼成して得られたアノード−固体電解質積層体(またはアノード−固体電解質−反応抑止層積層体)の固体電解質側の最表面に、カソード40を形成することによって作製することができる。ここで開示されるSOFCは、多層構造の固体電解質を備えるため、固体電解質を従来に比べ薄く形成した場合であってもピンホール等の不具合が生じ難く、高い発電性能を実現することができる。すなわち、高性能且つ高耐久であり得る。
<アノード−固体電解質積層体110>
グリーンシート積層体110の焼成温度は凡そ1200℃〜1500℃とすることができ、焼成時間は凡そ1時間〜5時間とすることができる。焼成によってアノード10の上に緻密な膜状の固体電解質20が形成され、アノード10と固体電解質20を備えたアノード−固体電解質積層体110を得ることができる。なお、アノード形成用シートの焼成は、固体電解質層形成用組成物を付与する前に、すなわちアノード形成用シート単独の状態で行ってもよい。
焼成後のアノード10は、ガス拡散性に優れた多孔質構造を有しており、例えば気孔率が凡そ10体積%〜50体積%であり、20体積%〜40体積%であることが好ましい。また、平均細孔径は通常凡そ10μm以下であり、0.1μm〜5μmであることが好ましい。かかる範囲を満たす場合、ガスとの接触面積を十分に確保し得、高い機械的強度と優れたガス拡散性とを好適に両立し得る。ここで、本明細書において「平均細孔径」とは、一般的な水銀圧入法の測定によって得られる値をいう。また、本明細書において「気孔率」とは、上記水銀圧入法の測定によって得られる気孔容積Vb(cm)を、見かけの体積Va(cm)で除して、100を掛けることにより、算出した値(Vb/Va×100(%))をいう。なお、多孔率の異なる2以上の層を積層した多層構造とする場合は、固体電解質20から離れた層の多孔度をより高くすることで、ガスの拡散をより均一にすることができる。
焼成後の固体電解質20は緻密な薄膜状である。ここで開示される固体電解質20は2以上の層を備えた多層構造であり、例えば図1では第1層22と該第1層の表面に形成された上層24とを備えている。固体電解質20を構成する各層では、主体となる酸化物イオン伝導体の種類が相互に等しい。
第1層22と上層24とは、形成方法や組成(例えば酸化物イオン導電体の含有割合やバインダの種類)が相互に異なり得る。好ましい一態様では、アノードに接している固体電解質層中の酸化物イオン伝導体の含有率が、アノードに接していない固体電解質層よりも低い。また、好ましい他の一態様では、各層の形成手法および/または構成材料(例えば、各層に含有されるバインダや溶媒等)が異なっている。すなわち、焼成後の第1層と上層とでは、例えば細孔分布や平均細孔径、気孔率等が異なり得る。具体的には、酸化物イオン伝導体の含有率が低い層では、焼成後に気孔率がより高くなり得る。したがって、かかる差異を利用して、固体電解質が2層またはそれ以上の多層構造となっているか否かを判断し得る。このことは、例えば一般的な走査型電子顕微鏡(SEM)の手法を用いて観察、確認することができる。
<アノード−固体電解質−反応抑止層積層体120>
好ましい一態様では、上記固体電解質とカソードとの間に反応抑止層が介在され、アノード−固体電解質−反応抑止層積層体120の形態である。反応抑止層は緻密な構造であり、気孔率は例えば凡そ30体積%以下(典型的には20体積%以下)であることが好ましい。かかる範囲を満たす場合、より出力密度の高いSOFCを実現し得る。
<カソード40>
次に、アノード−固体電解質積層体110の固体電解質側の表面(もしくは、反応抑止層30の表面)にカソード40を形成し、固体電解質を介してアノードとカソードとを対向させる。かかるカソード40は、例えば、ペロブスカイト型酸化物と、バインダと、必要に応じて含まれる添加剤とを溶媒に分散させて調整してなるペースト状またはスラリー状の組成物(カソード形成用スラリー)を上層24(もしくは反応抑止層30)の上に任意の手法で付与し、かかるグリーンシート積層体を所定の温度で焼成することによって、形成し得る。このときの焼成温度は、例えば700℃〜1200℃(好ましくは800℃〜1100℃)とすることができ、焼成時間は凡そ1時間〜5時間とすることができる。これによって、少なくともアノード10と固体電解質20とカソード40とを備えたSOFC50を得ることができる。
カソード40は、アノード10と同様にガス拡散性に優れた多孔質構造を有し、例えば気孔率が凡そ10体積%〜30体積%であり、15体積%〜25体積%であることが好ましい。また、平均細孔径は、通常凡そ10μm以下であり、0.1μm〜5μmであることが好ましい。かかる範囲を満たす場合、ガスとの接触面積を十分に確保し得、高い機械的強度と優れたガス拡散性とを好適に両立し得る。また、カソード40の厚みは、発電性能の観点から、通常凡そ100μm以下(典型的には、凡そ5μm〜50μm)であるが、かかる厚みに限定されるものではない。
カソード40を構成する材料としては、従来からSOFCのカソードに用いられる物質の一種または二種以上を特に限定することなく用いることができ、酸化雰囲気でも耐久性の高いものを好ましく採用し得る。典型的として、ランタンコバルテート(LaCoO)系、ランタンマンガネート(LaMnO)系、ランタンフェライト(LaFeO)系、またはランタンニッケラート(LaNiO)系のペロブスカイト型酸化物、あるいはサマリウムコバルテート(SmCoO)系ペロブスカイト型酸化物等が挙げられる。
ここで、例えば上記ランタンコバルテート系酸化物とは、LaおよびCoを構成金属元素とする酸化物の他、LaおよびCo以外に他の一種以上の金属元素(遷移金属元素および/または典型金属元素)を含む酸化物をも包含する意味である。また、ランタンマンガネート系酸化物、ランタンフェライト系酸化物、ランタンニッケラート系酸化物およびサマリウムコバルテート系酸化物についても同様である。典型例として、SrをドープしたLaMnO系酸化物(例えば、La0.8Sr0.2MnO)、SrをドープしたLaCoO系酸化物(例えば、La0.6Sr0.4CoO)、SrおよびFeをドープしたLaCoO系酸化物(例えば、La0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8)等が挙げられる。これらの酸化物は、いわゆる電子−酸化物イオン混合伝導体であり、他のペロブスカイト型酸化物に比べて高い反応活性を示す(高い触媒能を有する)ことから好適である。
カソード40は、また、本発明の効果を著しく損なわない限りにおいて、バインダや各種添加剤等を必要に応じて含み得る。これらは、例えばアノード形成用として上述したもののうちの1種または2種以上を適宜用いることができる。
図2は、ここで開示されるSOFC50を備えた発電システムの断面構成を示した模式図である。ここに示すSOFC50はアノード支持型のSOFCであり、支持体(基材)としてのアノード(燃料極)10と、固体電解質20と、反応抑止層30と、カソード(空気極)40と、が順に積層された構造を有している。なお、ここで開示される固体電解質20は、第1層22と上層24とを備えている。また、アノード10の端部12と、燃料ガスを供給するガス管70の接合面とが接続部材60によって接合され、気体が流出および/または流入しないように封止されている。一方、カソード40は外気に露出した構造を有している。
SOFCの使用時には、カソード側の固体電解質表面に酸素(O)含有ガス(典型的には空気)が、アノード側の固体電解質表面に燃料ガス(典型的には水素(H))が、それぞれ供給される。このSOFCに電流を印加すると、カソードにおいて酸素が還元され、酸化物イオンとなる。そして、該酸化物イオンが(固体電解質を介して)アノードに到達し、燃料ガスを酸化して電子を放出することによって電気エネルギーの生成(すなわち発電)が行われる。
なお、図1および図2で開示されるSOFCは平型(Planar)であるが、他にも種々の構造、例えば従来公知の多角形型、円筒型(Tubular)あるいは円筒の周側面を垂直に押し潰した扁平円筒型(Flat Tubular)等とすることができ、形状やサイズは特に限定されない。例えば平型は、電力密度が高く、円筒型に比べて安価であるという特徴を有する。また、円筒型はガスの流量を一定に保ち易く、より安定的な発電が可能であるという特徴を有する。このため、用途等に応じて適宜好ましい形状およびサイズを選択することが好ましい。また、平型のSOFCとしては、ここで開示されるアノード支持型(Anode-Supported Cell:ASC)の他にも、例えば電解質を厚くした電解質支持型(Electrolyte-Supported Cell:ESC)や、カソードを厚くしたカソード支持型(Cathode-Supported Cell:CSC)等を用いることができる。その他、アノードの下に多孔質な金属シートを入れた、メタルサポートセル(Metal-Supported Cell:MSC)とすることもできる。
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる具体例に示すものに限定することを意図したものではない。
〔例1〕
先ず、平均粒径0.5μmの酸化ニッケル(NiO)粉末と、平均粒径0.5μmのイットリア安定化ジルコニア(8mol%Y−ZrO、以下「8YSZ」と略称することがある。)粉末とを、NiO:8YSZ=60:40の質量比率で混ぜ合わせ、混合粉末を得た。かかる混合粉末と、バインダ(メタクリル酸エステル系ポリマー)と、造孔材(カーボン)と、可塑剤(フタル酸エステル)と、溶媒(キシレン)とを、58:8.5:5:4.5:24で混練することにより、スラリー状のアノード形成用組成物を調製した。該アノード形成用スラリーをドクターブレード法によってシート成形し、φ20mm、厚み500μm程度のアノード形成用シートを作製した。
次に、平均粒径0.5μmの8YSZ粉末と、バインダ(ポリビニルブチラール:PVB)と、可塑剤(フタル酸エステル)と、溶媒(イソプロピルアルコール)とを、55:6.4:8.6:31の質量比率で混練することにより、粘度0.9Pa・sのスラリー状の第1層形成用組成物を調製した。これを上記アノード形成用シート上にドクターブレード法によってシート成形し、φ20mm、厚み5μmの第1層を形成した。さらに、平均粒径0.5μmの8YSZ粉末と、バインダ(エチルセルロース)と、溶媒(α−テルピネオール)とを、65:4:31の質量比率で混練することにより、粘度20Pa・sのスラリー状の上層用組成物を調製した。これを上記第1層の上にスクリーン印刷法によって付与してφ20mm、厚み5μmの上層(以下、第2層という。)を形成し、アノード−固体電解質グリーンシート積層体を得た。
次に、平均粒径0.5μmの酸化セリウム粉末と、バインダ(PVB)と、溶媒(アセテート)とを、65:4:31の質量比率で混練することにより、粘度12Pa・sのスラリー状の反応抑止層形成用組成物を調製した。これを上記第2層の表面にスクリーン印刷法によって付与してφ20mm、厚み5μmの反応抑止層を形成し、アノード−固体電解質−反応抑止層グリーンシート積層体を得た。
〔例2〕
上記反応抑止層の形成時に、バインダとしてエチルセルロース(EC)を、溶媒としてα−テルピネオールを用いたこと以外は例1と同様に、アノード−固体電解質−反応抑止層グリーンシート積層体を得た。
〔例3〕
上記第2層の形成時に、バインダとしてポリビニルブチラール(PVB)を、溶媒としてブチルカルビトールアセテートを用いたこと以外は例1と同様に、アノード−固体電解質−反応抑止層グリーンシート積層体を得た。
〔例4〕
上記第1層を10μmとなるように形成し、且つ第2層を形成しなかったこと以外は例2と同様に、アノード−固体電解質−反応抑止層グリーンシート積層体を得た。
〔例5〕
上記第1層を形成せずに、第2層を10μmとなるよう形成したこと以外は例2と同様に、アノード−固体電解質−反応抑止層グリーンシート積層体を得た。
以下、グリーンシート積層体に用いたバインダの種類を表1に纏める。なお、表中の「−」は、該当する層を形成しなかったことを意味する。
Figure 2015122288
上記作製方法によって得られたアノード−固体電解質−反応抑止層グリーンシート積層体を観察し、クラックや破れ等の不具合がないか確認を行った。なお、観察手法としては目視および走査型電子顕微鏡(SEM)観察とを併用した。結果を、表1の「積層時の状態」の欄に示す。なお、当該欄の「○」はクラックや破れ等がなかったことを、「×」は、クラックや破れ等が発生したことを示す。
表1に示すように、第2層を形成しなかった(すなわち、シート成形法によって第1層のみを形成した)例4では、かかる不具合の発生が確認された。この原因として、隣接する第2層と反応抑止層とでバインダおよび/または組成物の付与方法が異なったことが考えられる。したがって、反応抑止層と、該反応抑止層に接する固体電解質層(最上層)とは、同種のバインダを含むことが好ましい。また、好ましい他の一態様では、同じ付与方法(例えば印刷法)によってスラリーを付与する。
次に、上記グリーンシート積層体を、大気雰囲気中において1400℃の温度で3時間焼成した。そして、得られたアノード−固体電解質−反応抑止層を上記と同様の手法で観察し、ピンホールや界面剥離等の不具合がないか確認を行った。結果を、表1の「焼成後の状態」の欄に示す。なお、当該欄の「○」はピンホールの発生が認められなかったことを、「×」は、ピンホール(貫通孔)の発生が認められたことを示す。
表1に示すように、第1層を形成しなかった(すなわち、スクリーン印刷法によって第2層のみを形成した)例5では、かかる不具合の発生が確認された。この原因として、固体電解質を薄層化した場合(例えば5μm以下とした場合)、単層構造では緻密性が不足することが考えられた。他方、本発明に係る例1〜例3の積層体では、製造(積層および焼成)工程において不具合の発生は認められなかった。この結果から、固体電解質を2層またはそれ以上の多層構造にすることで、固体電解質の薄膜化に伴う不具合を抑制し得ることが示された。
次に、得られたアノード−固体電解質−反応抑止層の固体電解質側の表面に、カソードを形成した。具体的には、先ず平均粒径1.0μmのLaCoO系酸化物(La0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8)粉末と、バインダ(エチルセルロース:EC)と、溶媒(αーテルピネオール)とを、80:4:16の質量比率で混練することにより、スラリー状のカソード形成用組成物を調製した。該カソード形成用スラリーを上記反応抑止層の表面にスクリーン印刷法によって付与し、φ16mm、厚み10μmのカソード形成用成形体を形成した。そして、上記積層体を1100℃の温度で1時間焼成することによってカソードを形成した。これにより、アノード、固体電解質、反応抑止層、カソードの順に積層したアノード支持型のSOFCを得た。得られたSOFCを上記と同様の手法で観察し、界面剥離等の不具合がないか確認を行った。
上記作製したSOFCのうち、製造工程で界面剥離やピンホール等の不具合が認められなかった例1〜例3について、温度800℃で動作させて、発電試験を行った。そして、試験後のSOFCセルを解体し、上記と同様の手法で界面剥離等の不具合がないか確認を行った。
界面剥離の発生状況について、表1の「界面の接合状態」に纏めた。なお、当該欄の「×」は、アノード−固体電解質層−反応抑止層グリーンシート積層体の焼成工程においていずれかの層間(例えば、固体電解質−反応抑止層間)に剥離がみられたことを示す。また「△」は、上記アノード−固体電解質層−反応抑止層グリーンシート積層体の焼成工程では剥離がみられなかったが、カソード形成時の焼成において剥離が確認されたことを示す。また「○」は、SOFCの製造工程では剥離がみられなかったが、発電試験後に部分的な剥離が認められたことを示す。また「◎」は、SOFCの製造工程および発電試験後において剥離が認められなかった、すなわち層間の接合強度がより高いことを示す。
表1に示すとおり、例1〜例3のように固体電解質層を2層構造にすることで、製造工程における不具合の発生を抑制することができ、信頼性の高いSOFCを実現し得ることが示された。さらに、例2および例3のように反応抑止層および第2層(好ましくは、さらに第1層)に同種のバインダを使用することによって、界面の接合強度をより向上させることができ、一層信頼性(耐久性)に優れたSOFCを実現し得る旨が示された。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
10 アノード(アノード形成用シート)
12 アノードの端部
20 固体電解質
22 第1層
24 上層(第2層)
30 反応抑止層
40 カソード
50 SOFC
60 接合部材
70 ガス管
110 アノード−固体電解質積層体
120 アノード−固体電解質−反応抑止層積層体

Claims (16)

  1. 固体酸化物形燃料電池の形成に用いられるアノード−固体電解質グリーンシート積層体であって、
    前記固体電解質は、2層またはそれ以上の多層構造からなり、
    前記固体電解質を構成する各層では、主体となる酸化物イオン伝導体の種類が相互に等しい、固体酸化物形燃料電池形成用のアノード−固体電解質グリーンシート積層体。
  2. 前記固体電解質全体の厚みが20μm以下である、請求項1に記載のグリーンシート積層体。
  3. 前記固体電解質の表面には反応抑止層を備え、
    前記反応抑止層と、該反応抑止層に接する前記固体電解質層とは、少なくとも同種のバインダを含む、請求項1または2に記載のグリーンシート積層体。
  4. 前記反応抑止層および該反応抑止層に接する前記固体電解質層は、バインダとして少なくともポリビニルブチラールまたはエチルセルロースを含む、請求項3に記載のグリーンシート積層体。
  5. 前記反応抑止層と、該反応抑止層に接する前記固体電解質層とに含まれるバインダの含有率が実質的に等しい、請求項3または4に記載のグリーンシート積層体。
  6. 前記アノードに接する固体電解質層に含まれる酸化物イオン伝導体の含有率は、該アノードに接しない固体電解質層よりも低い、請求項1から5のいずれか一項に記載のグリーンシート積層体。
  7. 固体酸化物形燃料電池の形成に用いられるアノード−固体電解質グリーンシート積層体の製造方法であって;
    アノード形成用シートを準備すること:
    前記アノード形成用シートの表面に、少なくとも酸化物イオン伝導体とバインダと溶媒とを含む第1層形成用組成物を付与して、第1層を形成すること:および
    前記第1層の表面に、少なくとも酸化物イオン伝導体とバインダと溶媒とを含む上層形成用組成物を付与して、1または2以上の上層を順次形成し、アノード−固体電解質積層体を得ること:
    を包含し、
    ここで、前記第1層形成用の酸化物イオン伝導体と、前記上層形成用の酸化物イオン伝導体とは、相互に同じ種類のものを用いる、グリーンシート積層体の製造方法。
  8. 前記固体電解質の形成は、該固体電解質全体の厚みが20μm以下となるよう行う、請求項7に記載の製造方法。
  9. 前記得られたアノード−固体電解質グリーンシート積層体の固体電解質側の最表面に、
    少なくともセリウム酸化物とバインダと溶媒とを含む反応抑止層形成用組成物を付与して、反応抑止層を形成すること、をさらに包含し、
    ここで、前記固体電解質の最表面を構成する最上層の形成用バインダと、前記反応抑止層の形成用バインダとは、少なくとも相互に同じ種類のものを使用する、請求項7または8に記載の製造方法。
  10. 前記最上層および前記反応抑止層形成用のバインダとして、少なくともポリビニルブチラールまたはエチルセルロースを用いる、請求項9に記載の製造方法。
  11. 前記最上層および前記反応抑止層には、実質的に等量のバインダを用いる、請求項9または10に記載の製造方法。
  12. 前記上層および前記反応抑止層形成用の溶媒として、αーテルピネオール、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート、ブチルジグリコールアセテートまたはイソボルニルアセテートからなる群から選択される少なくとも一種を用いる、請求項9〜11のいずれか一項に記載の製造方法。
  13. 前記第1層の形成にはシート成形の手法を用い、
    前記最上層および前記反応抑止層の形成には印刷成形の手法を用いる、請求項9から12のいずれか一項に記載の製造方法。
  14. 前記第1層に含まれる酸化物イオン伝導体の含有率が、前記上層よりも低くなるよう調整する、請求項7から13のいずれか一項に記載の製造方法。
  15. 請求項7から14のいずれか一項に記載の製造方法により得られた固体酸化物形燃料電池形成用のアノード−固体電解質グリーンシート積層体。
  16. 請求項1から6のいずれか一項に記載のグリーンシート積層体または請求項15に記載のグリーンシート積層体、を所定の温度で焼成してなるアノード−固体電解質を備えた固体酸化物形燃料電池。
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