JP5546559B2 - 固体酸化物形燃料電池および該燃料電池のカソード形成用材料 - Google Patents

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Description

本発明は、固体酸化物形燃料電池のカソード(空気極)形成に用いられる材料、および該材料を用いて構築された固体酸化物形燃料電池に関する。
固体酸化物形燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell;以下、単に「SOFC」ということもある。)は、種々のタイプの燃料電池の中でも、発電効率が高く多様な燃料の使用が可能なため、環境負荷の少ない次世代の発電装置として開発が進められている。
SOFCの典型的な構造(単セル)は、酸素イオン伝導体(典型的には酸素イオン伝導性のセラミック体)から成る緻密な固体電解質(例えば緻密膜層)の一方の面に多孔質構造のカソード(空気極)が形成され、他方の面に多孔質構造のアノード(燃料極)が形成(例えば積層)されることにより構成されている。そして、燃料極が形成された側の固体電解質の表面には燃料ガス(典型的にはH(水素))が、空気極が形成された側の固体電解質の表面にはO(酸素)含有ガス(典型的には空気)が、それぞれ供給される。
SOFCのカソード材料としては、一般式(LnAe)MO(ただし、Ln=La等、Ae=Sr等、M=Mn、Fe、Co等)で示されるような、ペロブスカイト型の酸化物がよく用いられている。
かかる酸化物に関する従来技術としては、特許文献1、2が挙げられる。例えば、特許文献1には、上記一般式中のM元素の一部を、チタン(Ti)とアルミニウム(Al)で置換した酸素分離膜が例示されている。また、特許文献2には、該M元素の一部を、ジルコニウム(Zr)で置換した酸素分離膜が例示されている。
特開2007−51035号公報 特開2007−51036号公報
ところで近年、SOFCの低コスト化や用途拡大の観点から、該SOFCの作動温度を下げるための研究が進められている。そこで、中低温(例えば、600℃〜800℃)作動型SOFCのカソード材料として、一般式(LaSr)(CoFe)O(以下、「LSCF」という。)で示される材料が注目されている。上記LSCFは、いわゆる酸素イオン−電子混合伝導体であり、比較的低い温度領域においても高い電極触媒能力を発揮することができる。
しかし、上記LSCFは他のカソード材料に比べて熱膨張が大きいことから、熱衝撃(例えば非使用時の温度(典型的には常温)と使用時の温度域(例えば600℃〜800℃)との間で昇温と降温を繰り返すこと)に対する耐久性が低いという問題がある。また還元膨張も大きいため、例えば燃料ガスがリークしてカソード側に混入した際に、クラック等の不具合が発生する虞もある。そこで、LSCFをカソード用材料として使用する際には、セリア(CeO)にガドリニア(Gd)をドープした、一般式:CeGdO(以下、「GDC」という。)で表される材料を混合し用いることも検討されている。しかし、該GDCは非常に高価であり、コスト低減の観点から好ましくない。さらに、上記LSCFは固体電解質として一般的に用いられるジルコニア系酸化物との反応性が高いため、該LSCFをカソードとして用いる際に、固体電解質との間に反応抑止層(中間層や保護層ともいう。)を形成する必要がある。
本発明は、かかる課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、電極として優れた性能を有し、且つ熱膨張や還元膨張がより低減された、SOFCのカソード用材料を提供することである。また、本発明は、他の側面として、上記材料を用いてカソードを構成したSOFCを提供する。
上記目的を実現するべく、本発明によって、一般式(La1−xSr)(CoFe1−y)O3−δ(ただし、xは0.1≦x≦0.5を満たす実数であり、yは0.1≦y≦0.5を満たす実数であり、δは電荷中性条件を満たすように定まる値である。)で示されるペロブスカイト型の酸化物(以下、「LSCF」という。)と、一般式(La1−xSr)(TiFe1−y)O3−δ(ただし、xは0.1≦x≦0.5を満たす実数であり、yは0.1≦y≦0.5を満たす実数であり、δは電荷中性条件を満たすように定まる値である。)で示されるペロブスカイト型の酸化物(以下、「LSTF」という。)と、の両方を含むコンポジット状態からなる、固体酸化物形燃料電池のカソード形成用材料が提供される。
上記コンポジット状態からなる材料は、比較的低い温度領域(例えば600℃〜800℃)においても電極として優れた性能を発揮し得る。また、熱膨張や還元膨張が比較的小さく抑えられているため温度変化等に対する膨張や収縮が少なく、かかる材料を用いることでSOFCの耐久性を向上させることができる。さらにLSCFとLSTFは反応性が低いため、LSCFとLSTFのコンポジット状態からなる電極を備えたSOFCは、長期間安定して使用することができる。このため、ここで開示される材料は、SOFCのカソード用材料として好適に用いることができる。
ここで開示される材料の好ましい一態様では、上記LSCFと、上記LSTFとの質量比率が、80:20〜30:70であることが挙げられる。
上記の質量比率を満たすコンポジット状態からなる材料は、電極として優れた性能を有し、且つ熱膨張や還元膨張がより一層抑制されている。このため、本発明の効果をより一層発揮することができ、SOFCのカソード用材料として好適に用いることができる。
また、ここで開示される材料の好ましい一態様では、少なくとも1種の分散溶媒を含み、スラリー状(ペースト状、インク状を含む。)に調製されていることが挙げられる。
ここで開示される材料は、SOFCのカソードを形成するために用いられる。かかる用途においては、均質なカソード層を安定して作製するため、該カソードの構成材料を1種以上の分散溶媒に分散(もしくは溶解)させ、スラリー状に調製したものを好ましく用いることができる。
また本発明により、アノードと固体電解質とカソードとを備えた固体酸化物形燃料電池であって、上記カソードは、一般式(La1−xSr)(CoFe1−y)O3−δ(ただし、xは0.1≦x≦0.5を満たす実数であり、yは0.1≦y≦0.5を満たす実数であり、δは電荷中性条件を満たすように定まる値である。)で示されるペロブスカイト型の酸化物(LSCF)と、一般式(La1−xSr)(TiFe1−y)O3−δ(ただし、xは0.1≦x≦0.5を満たす実数であり、yは0.1≦y≦0.5を満たす実数であり、δは電荷中性条件を満たすように定まる値である。)で示されるペロブスカイト型の酸化物(LSTF)と、が混在した状態で形成されている、固体酸化物形燃料電池(SOFC)が提供される。
上記カソードを備えたSOFCは、高い発電性能を発揮し得る。また、熱膨張や還元膨張が比較的小さく抑えられているため、耐久性に優れ、長期間安定して使用することができる。
ここで開示されるSOFCの好ましい一態様は、上記カソードにおける、上記LSCFと、上記LSTFとの質量比率が、80:20〜30:70である。
上記カソードは、電極として優れた性能を有し、且つ熱膨張や還元膨張がより一層抑制されている。よって、かかるカソードを用いたSOFCでは、より高い発電性能(例えば、動作温度700℃における最大電力密度が0.1W/cm以上)と耐久性とを、より高いレベルで両立させることができる。
ここで開示されるSOFCの好ましい一態様は、上記カソードと上記固体電解質と上記アノードとが層状に積層され形成されており、該積層構造における上記カソードの厚みが10μm以上100μm以下である。
上記カソードでは、熱膨張や還元膨張が抑制されているため、該電極の厚みが比較的厚い場合でも、温度変化等に伴う不具合(例えばクラックの発生)が生じ難い。このため、かかるカソードを用いたSOFCでは、優れた発電性能を長期間にわたり安定して発揮することができる。
ここで開示されるSOFCの好ましい一態様は、上記積層構造の上記カソードは、上記固体電解質上に反応抑止層を設けることなく、直接的に形成されている。
上述の通り、カソード材料としてLSCFを用いる場合、固体電解質(典型的には、ジルコニア系酸化物)との反応性の問題から、一般的には固体電解質とカソードとの間に反応抑止層を形成する必要がある。しかし、ここで開示されるカソードは固体電解質上に直接形成することができるため簡便であり、且つ電池抵抗をも低減し得る。このため、かかるカソードを用いたSOFCは生産性に優れ、且つ優れた発電性能を発揮することができる。
さらに本発明により、アノードと固体電解質とカソードとを備えた固体酸化物形燃料電池の製造方法が提供される。ここで提供される製造方法では、上記アノードと、上記アノード上に形成された固体電解質とからなるアノード−固体電解質積層体を用意すること、上記積層体の固体電解質側の表面に、ここで開示されるいずれかのカソード材料(典型的には、上述したLSCFとLSTFの両方を含むコンポジット状態からなる材料)を付与すること、上記材料が付与された上記積層体を焼成することによって、上記カソードを形成することを包含する。
ここで開示される製造方法では、カソードと他の構成材料(例えば、固体電解質や発電システムを構成する部材)との熱膨張係数(熱膨張率)の差異が小さく抑えられているため、熱膨張に起因する不具合(例えばクラックの発生)が生じ難い。また、カソード用材料と固体電解質との反応性が低いため、該固体電解質上に反応抑止層を設ける必要がない。このため、高い発電性能でありながら、優れた耐久性を有するSOFCをより簡便に製造することができる。
ここで開示される製造方法の好ましい一態様では、上記材料の付与は、上記焼成によって形成される上記カソードの厚みが10μm以上100μm以下となるよう行うことが挙げられる。
ここで開示される製造方法では、カソードの熱膨張や還元膨張が抑制されているため、該カソードの層が比較的厚い場合でも、優れた耐久性を有する。このため、かかるカソードを用いたSOFCでは、長期間にわたり安定した発電性能を発揮することができる。
本発明の一実施形態に係る、SOFCを備えた発電システムを模式的に示す断面図である。 本発明の一実施形態に係る、SOFCの製造工程を模式的に示す図である。 比較例に係る、SOFCに備えられたカソード電極(LSCFとLSTFの質量比率が100:0)表面の走査型電子顕微鏡写真である。 本発明の一実施例に係る、SOFCに備えられたカソード電極(LSCFとLSTFの質量比率が70:30)表面の走査型電子顕微鏡写真である。 本発明の一実施例に係る、SOFCに備えられたカソード電極(LSCFとLSTFの質量比率が50:50)表面の走査型電子顕微鏡写真である。 比較例に係る、SOFCに備えられたカソード電極(LSCFとLSTFの質量比率が0:100)表面の走査型電子顕微鏡写真である。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外(例えば、発電システムの構成や製造方法等)の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
ここで開示される材料は、LSCFとLSTFの両方を含むコンポジット状態(以下、LSCFとLSTFの両方を含む材料を、単に「複合材料」ということもある。)からなることにより特徴付けられる。よって、他の構成成分の内容や組成等については、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の基準に照らして決定することができる。
なお、かかる態様がコンポジット状態となっているか否かについては、例えば、一般的な走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)‐エネルギー分散型X線分光法(EDX:Energy Dispersive X−ray Spectroscopy)によって確認し得る。より具体的には、SEM観察により得られた画像を、EDXを用いて解析(マッピング)することで元素の分布状態を調べ、判断することができる。
本発明により、アノードと固体電解質とカソードとを備えた固体酸化物形燃料電池であって、上記カソードは、LSCFと、LSTFとが混在した状態で形成されている、固体酸化物形燃料電池(SOFC)が提供される。上記カソードを備えたSOFCでは、高い発電性能を発揮し得る。また、熱膨張や還元膨張が比較的小さく抑えられているため、耐久性に優れ、長期間安定して使用することができる。
ここで開示される複合材料を用いたカソードは、種々の構造のSOFC、例えば、従来公知のシート状(Planar)、チューブ状(Tubular)、あるいは円筒の周側面を垂直に押し潰したフラットチューブ状(Flat tubular)等のSOFCに対して好適に用いることができ、形状又はサイズに特に限定されない。
一例として、図1を参照しながら説明する。図1は、ここで開示されるSOFC50を備えた発電システムの断面構成を模式的に示した図である。ここに示す構成のSOFC50はアノード支持型のSOFCであり、支持体(基材)となるシート状のアノード(燃料極)10と、該アノード10の少なくとも一部の表面上に形成された(膜状の)固体電解質20と、該固体電解質20の表面上に形成されたシート状のカソード(空気極)30とが積層された構造を有している。そして、アノード10の端部12と、燃料ガス(典型的にはH(水素))を供給するガス管60の接合面とが接続部材40によって接合され、気体(燃料ガスもしくは空気)が流出および/または流入しないように封止されている。また、カソード30は外気に露出した構造を有している。かかる発電システムに電流を印加すると、カソード30において、酸素含有ガス(空気)中の酸素が、酸化物イオンとなる(酸素がイオン化される)。該酸化物イオンは、カソード30から固体電解質20を介してアノード10に到達し、アノード10に供給される。そして、燃料ガス中の水素(H)と反応して電子を放出することにより、発電が行われる。
ここで開示されるSOFC50を構成するアノード(燃料極)10は多孔質構造を有している。なお、アノードの形状はSOFCに供給される燃料ガスに接触できるように構成されていればよく、上述したSOFCの形状に応じて適宜選択し得る。図1に示す構成のSOFC50では、比較的厚く形成されたシート状のアノード10がSOFC50の支持体として形成されている。上記支持体としてのアノード10の厚みは、典型的には0.1mm〜10mm程度であり、好ましくは0.5mm〜5mm程度であるが、かかる厚みに限定されるものではない。
かかるアノードを構成する材料としては、例えば、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)その他の白金族元素、コバルト(Co)、ランタン(La)、ストロンチウム(Sr)、チタン(Ti)等からなる金属および/または金属元素のうちの1種類以上から構成される金属酸化物が挙げられる。具体例として、Ni、Co、Ru等の白金族元素からなる金属や金属酸化物が挙げられる。これらのうち、Niは他の金属に比べて安価であり、且つ水素等の燃料ガスとの反応性が十分に大きいことから、特に好適な金属種である。また、これらの金属や金属酸化物を混合した複合物を用いることもできる。例えば、上記アノード構成材料(金属や金属酸化物)と、後述する固体電解質構成材料との複合物を用いることができる。より具体的には、例えばニッケル(Ni)またはルテニウム(Ru)と、安定化ジルコニア(例えば、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、カルシア安定化ジルコニア(CSZ)、スカンジア安定化ジルコニア(ScSZ)等)とのサーメットが好適例として挙げられる。特に限定するものではないが、例えば上記アノード構成材料と後述する固体電解質構成材料との混合比率(質量比)は、凡そ90:10〜40:60(より好ましくは、凡そ80:20〜45:55)の範囲とすることができる。
ここで開示されるSOFC50を構成する固体電解質20は緻密構造を有している。固体電解質20は、上記アノード10の上に積層されており、アノード10の形状に応じてその形状を適宜変更することができる。また、固体電解質20の膜厚は、典型的には5μm〜100μm程度であり、好ましくは10μm〜30μm程度であるが、かかる膜厚に限定されるものではない。
かかる固体電解質を構成する材料としては、高い酸化物イオン伝導性を有する化合物が好ましく用いられる。例えば、ジルコニウム(Zr)、セリウム(Ce)、マグネシウム(Mg)、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、イットリウム(Y)、カルシウム(Ca)、ガドリニウム(Gd)、サマリウム(Sm)、バリウム(Ba)、ランタン(La)、ストロンチウム(Sr)、ガリウム(Ga)、ビスマス(Bi)、ニオブ(Nb)、タングステン(W)等のうちから選択される元素を含む酸化物であることが好ましい。より具体的には、安定化剤(例えば、イットリア(Y)、カルシア(CaO)、スカンジア(Sc)、マグネシア(MgO)、イッテルビア(Yb)、エルビア(Er))で結晶構造を安定化させたジルコニア(ZrO)や、ドープ剤(例えば、イットリア(Y)、ガドリニア(Gd)、サマリア(Sm)等)をドープしたセリア(CeO)が、好適例として挙げられる。とりわけ、イットリウム(Y)の酸化物(例えば、イットリア(Y))を固溶させたイットリア安定化ジルコニア(YSZ)や、スカンジウム(Sc)の酸化物(例えばスカンジア(Sc))を固溶させたスカンジア安定化ジルコニア(ScSZ)等を特に好ましく用いることができる。
ここで開示されるSOFCを構成するカソード(空気極)30は、上記アノード10と同様に多孔質構造を有している。カソード30は、上記固体電解質20の上に積層されており、固体電解質20の形状に応じてその形状を適宜変更することができる。カソード30の膜厚は、典型的には1μm〜200μm程度であり、好ましくは5μm〜100μm程度、より好ましくは10μm〜100μmであるが、かかる厚みに限定されるものではない。ここで開示される材料からなるカソードは熱膨張や還元膨張が抑制されているため、電極厚みが比較的大きい場合でも、温度変化等に伴う不具合(例えばクラックの発生)が生じ難い。
かかるカソードを構成する材料としては、一般式(La1−xSr)(CoFe1−y)O3−δ(ただし、xは0.1≦x≦0.5を満たす実数であり、yは0.1≦y≦0.5を満たす実数であり、δは電荷中性条件を満たすように定まる値である。)で示されるペロブスカイト型の酸化物(LSCF)と、一般式(La1−xSr)(TiFe1−y)O3−δ(ただし、xは0.1≦x≦0.5を満たす実数であり、yは0.1≦y≦0.5を満たす実数であり、δは電荷中性条件を満たすように定まる値である。)で示されるペロブスカイト型の酸化物(LSTF)と、の両方を含むコンポジット状態(複合材料)が挙げられる。
上記一般式における「x」の値は、このペロブスカイト型酸化物において、「La元素」が「Sr元素」によって置換された割合を示す値である。この「x」の取り得る範囲は、ペロブスカイト型構造を崩すことなく、該構造を維持し得る限りにおいて0.1≦x≦0.5(好ましくは0.1≦x≦0.4)の範囲内であれば、いずれの実数をとってもよい。
また、上記一般式における「y」の値は、このペロブスカイト型酸化物における「Fe元素」と「Co元素(LSCFの場合)もしくはTi元素(LSTFの場合)」との組成比を定める値である。この「y」の取り得る値は、0.1≦y≦0.5の範囲内であればいずれの実数をとってもよい。
なお、上記一般式において酸素原子数は3以下(典型的には3未満)であり得る。ただし、酸素原子数はペロブスカイト型構造の一部を置換する原子(例えば式中の「Sr元素」や「(LSCFの)Co元素もしくは(LSTFの)Ti元素」の一部)の種類、置換割合及びその他の条件によって、上記一般式における電荷中性条件を満たすように定められる。ここで、上記一般式における酸素原子数を決定する変数である「δ」は、典型的には1を超えない正の数(0≦δ<1)である。なお、上記一般式中の酸素原子数は、上述のように、ペロブスカイト型酸化物を構成する他の元素によって変化するものであるため、正確に表示することは困難であり、便宜上δを省略して記載する場合もある。即ち、上記一般式中の(3−δ)は、本発明の技術的範囲を限定することを意図するものではない。
上記LSCFは、いわゆる酸素イオン−電子混合伝導体であり、他のペロブスカイト型酸化物に比べて、電極として高い性能を有している。このため比較的低い温度領域(例えば、600℃〜800℃)においても優れた性能を発揮することができる。しかし該LSCFは熱膨張率や還元膨張率が大きいため、後述する実施例(例1)に示すように、そのままSOFCの電極として用いた場合、該電極の環境の変化(典型的には、雰囲気の変化や温度変化)によって不具合(例えばクラックの発生)を生じる虞がある。かかる場合においては、該電極の抵抗増大やガスのリーク等が生じるため、発電性能が低下したり、発電自体が行われなくなったりする虞がある。一方、上記LSTFは、電池としての性能(発電性能)はLSCFに劣るものの、熱膨張や還元膨張が低いという特徴を有する。
このため、ここで開示されるLSCFとLSTFとのコンポジット状態からなる複合材料は、比較的低い温度領域(例えば600℃〜800℃)においても電極として優れた性能を発揮し得る。また、熱膨張や還元膨張が比較的小さく抑えられているため温度変化等に対する膨張や収縮が少なく、かかる材料を用いることでSOFCの耐久性を向上させることができる。さらにLSCFとLSTFは反応性が低いため、LSCFとLSTFのコンポジット状態からなる電極を備えたSOFCは、長期間安定して使用することができる。このため、ここで開示される材料は、SOFCのカソード用材料として好適に用いることができる。
ここで開示されるSOFCの好ましい一態様では、上記カソードにおけるLSCFとLSTFとの質量比率が、80:20〜30:70である。上記質量比率を満たすカソードは、熱膨張や還元膨張が抑制されており、且つ電極としてより優れた性能を発揮し得る。よって、かかるカソードを用いたSOFCでは、より高い発電性能(例えば、動作温度700℃における電力密度が0.1W/cm以上)を発揮することができる。
ここで開示される複合材料は、例えば原料から作製してもよいし、購入してもよい。また作製方法に関して特に制限はなく、従来の手法と同様の方法を用いることができる。例えば、先ず出発原料たる化合物(LSCFおよびLSTF)および必要に応じてそれ以外の添加物を所定の配合比で乾式または湿式のボールミル等の混合機に投入して混合し、混合粉末を調製する。この際に用いる材料は、平均粒径が0.1μm〜10μm(好ましくは0.3μm〜3μm、より好ましくは1±0.5μm)のものが好適である。
次に、上記得られた混合粉末を適当な高温条件下でアニール処理する。アニール処理の温度は700℃〜900℃(好ましくは800±50℃)に設定するとよく、時間は、30分〜4時間(好ましくは30分〜2時間)に設定するとよい。
そして、上記アニール処理後の混合物を粉砕処理し、適宜篩いがけや分級を行うことによって、例えば、平均粒径が0.1μm〜10μm(典型的には0.1μm〜3μm、好ましくは0.5μm〜2μm、より好ましくは0.5μm〜1.5μm)の複合材料(粉末状)が得られる。かかる粉砕処理には、従来用いられる装置のうち一種または二種以上を特に限定なく用いることができる。例えば、ジェットミル、プラネタリーミキサー等の非媒体型分散機や、ボールミル等の媒体型分散機を用いることができる。また、粉砕処理の条件(例えば、粉砕速度や粉砕時間)は、所望の粒径が得られるよう、適宜を調節するとよい。
なお、本明細書において「平均粒径」とは、例えば従来公知のレーザー回折・光散乱法に基づく粒度分布測定により測定した体積基準の粒度分布において、累積50%に相当する粒径D50(メジアン径ともいう。)を指す。
ここで開示されるSOFCの好ましい一態様としては、上記積層構造の上記カソード30は、上記固体電解質20上に反応抑止層を設けることなく、直接的に形成されている。上述の通り、カソード材料としてLSCFを用いる場合、固体電解質(典型的には、ジルコニア系酸化物)との反応性の問題から、一般的には固体電解質とカソードとの間に反応抑止層を形成する必要がある。しかし、ここで開示されるカソードは固体電解質上に直接形成することができるため簡便であり、且つ電池抵抗をも低減し得る。このため、かかるカソードを用いたSOFCは生産性に優れ、且つ優れた発電性能を発揮することができる。
ここで開示される複合材料の形態は、例えば、上述した粉末状であっても、該粉体と任意の分散溶媒とを含むスラリー状(ペースト状、インク状を含む。)であっても、該スラリーを乾燥(もしくは焼成)した固体状であってもよい。
該分散溶媒としては、上記複合材料の構成素材を好適に分散できるもののうち、一種または二種以上を特に限定することなく用いることができる。かかる溶媒は有機系溶媒、無機系溶媒のいずれを用いてもよい。有機系分散溶媒としては、例えば、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、または他の有機溶剤が挙げられる。とりわけ、テルピネオール、ブチルジグリコールアセテート、イソブチルアルコール等が好適に用いられる。また、無機系溶媒としては、水または水を主体とする混合溶媒であることが好ましい。該混合溶媒を構成する水以外の溶媒としては、水と均一に混合し得る有機溶剤(低級アルコール、低級ケトン等)の一種または二種以上を適宜選択して用いることができる。ペーストにおける溶媒の含有率は、特に限定されないが、スラリー全体の5〜35質量%程度が好ましい。
ここで開示される上記スラリー状の複合材料には、必要に応じて、バインダや任意で付加し得る他の成分(例えば、増粘剤や分散剤等の添加剤)を添加することもできる。なお、ペーストに用いられるバインダや添加剤等は特に限定されるものではなく、ペースト製造において従来公知のものから適宜選択して用いることができる。かかるバインダとしては、例えば、セルロースまたはその誘導体が挙げられる。より具体的には、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシエチルメチルセルロース、セルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ブチラールおよびこれらの塩が挙げられる。バインダの含有率は特に限定されないが、スラリー全体の2〜20質量%の範囲で含まれることが好ましい。
ここで開示される複合材料としては、他の構成材料(例えば、固体電解質や発電システムを構成する部材)の熱膨張係数(典型的には、12×10−6/K−1〜13×10−6/K−1)と近接した熱膨張係数を有するものが好ましく、典型的には16×10−6/K−1〜13×10−6/K−1とすることができ、例えば15×10−6/K−1〜14×10−6/K−1であり、好ましくは15×10−6/K−1〜14.5×10−6/K−1とすることができる。上記熱膨張係数を満たすカソードは、使用温度域(例えば600℃〜800℃)と非使用時の温度(典型的には常温)との間で昇温と降温とを繰り返しても、温度変化に伴う不具合(例えばクラックの発生)が生じ難い。このため、かかるカソードを用いたSOFCでは、長期間にわたり安定した発電性能を発揮することができる。
なお、上記熱膨張係数は、例えば、示差膨張方式を用いた熱機械分析装置(TMA;Thermo Mechanical Analysis)により、室温(25℃)〜500℃以上(例えば、500℃もしくは1000℃)の温度範囲にて測定した値の算術平均値を採用することができる。具体的な条件は、後述する実施例に述べる。
また、ここで開示される複合材料としては、還元膨張率(%)が抑えられていることが好ましい。かかる値は、典型的には1.0未満であり、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.7以下とすることができる。なお、還元膨張率とは、還元雰囲気下で加熱したときの寸法変化により、還元耐久性(還元膨張係数、即ち還元雰囲気における熱膨張率)の目安を定量的に示す指標である。上記還元膨張率を満たすカソードでは、例えば燃料ガスがリークしてカソード側に混入した際も還元膨張が抑制されている(即ち還元雰囲気下における耐久性が高い)ため、不具合(例えばクラックの発生)が生じ難い。よって、かかるカソードを用いたSOFCでは、長期間にわたり安定した発電性能を発揮することができる。また、本明細書において「還元膨張率(%)」は、還元雰囲気下における熱膨張率をEred(%)、空気雰囲気下における熱膨張率をEair(%)としたとき、下記の式(3)によって与えられる値を示す。
[{(1+Ered/100)−(1+Eair/100)}/(1+Eair/100)]×100 (3)
また、上述したSOFCを好適に製造する方法を提供する。ここで開示される製造方法は、多孔質構造のアノードと、酸化物イオン伝導体からなる固体電解質と、多孔質構造のカソードとからなる積層構造を有した固体酸化物形燃料電池を製造する方法である。
かかる製造方法は、上記アノードと、上記アノード上に形成された固体電解質とからなるアノード−固体電解質積層体を用意すること、上記積層体の固体電解質側の表面に、ここで開示されるいずれかのカソード材料(典型的には、上述した複合材料)を付与すること、上記材料が付与された上記積層体を焼成することによって、上記カソードを形成すること、を包含する。ここで開示される製造方法では、カソードと他の構成材料(例えば、固体電解質や発電システムを構成する部材)との熱膨張係数(熱膨張率)の差異が小さく抑えられているため、熱膨張に起因する不具合(例えばクラックの発生)が生じ難い。また、カソード用材料と電解質との反応性が低いため、反応抑止層を設ける必要がない。このため、ここで開示される製造方法によれば、高耐久性でありながら、高い発電性能を発揮し得るSOFCをより簡便に製造することができる。具体的な製造方法を、図2を用いて詳細に説明する。
<アノード−固体電解質積層体の用意>
ここで「アノード−固体電解質積層体」とは、アノードと固体電解質とが積層した状態を示すものであり、該アノード−固体電解質積層体を用意する方法について特に制限はない。従って、従来知られているSOFCの製造方法における「アノードの作製方法」と「固体電解質の作製方法」を用いることができる。
例えば、図2(a)に示すように、まず、支持基材(支持体)として多孔質構造のアノード10を形成する。ここでは、8族〜10族の金属元素の材料(例えばニッケル材料)と安定化ジルコニア(例えばYSZ)とを混合し、サーメット材料を調製する。次に、上記サーメット材料を、バインダ(例えばメタクリル酸エステル系ポリマー)と分散剤(例えばソルビタントリオレエート)とともに溶媒(例えばキシレン)に分散させて、スラリー状のアノード用材料を調製する。そして、かかるアノード用材料を適当な成形方法(例えばシート成形)で成形し、該成形体を焼成することによってシート状のアノード10を形成する。上記成形体の焼成処理は、1200℃〜1400℃の温度で1時間〜5時間加熱することによって行うとよい。なお、アノード用材料の焼成処理は、後述の固体電解質用材料の焼成処理と同時に行ってもよい。
そして、図2(b)に示すように、上記アノード10上に固体電解質20を形成する。ここでは、上述した固体電解質20の原料(例えばYSZ)をバインダ(例えばメタクリル酸エステル系ポリマー)と分散剤(例えばソルビタントリオレエート)とともに溶媒(例えばキシレン)に分散させて、スラリー状の固体電解質用材料を調製する。次に、調製された固体電解質用材料をアノード10(もしくはアノード用材料の成形体)上に任意の手法(例えば印刷成形)で付与し、固体電解質用材料の成形体を形成する。そして固体電解質用材料を付与した成形体を乾燥させた後に、大気雰囲気下で焼成する。このときの焼成温度は、例えば1200℃〜1400℃の範囲内であるとよく、焼成時間は、例えば1時間〜5時間の範囲内であるとよい。この焼成処理によってアノード10の上に膜状の固体電解質20が形成され、アノード10と、該アノード10上に形成された固体電解質20からなる、アノード−固体電解質積層体110を得ることができる。
<複合材料の付与>
次に、図2(c)に示すように、アノード−固体電解質積層体110の固体電解質20側の表面に上述の複合材料を付与する。この際、均質な電極を安定して作製するために、構成材料を1種以上の分散溶媒に分散(もしくは溶解)させ、調製したものを好ましく用いることができる。例えば、先ず、ここで開示される複合材料(粉末状)と、分散溶媒(例えばテルピネオール)と、増粘剤(例えばエチルセルロース)等の添加剤と、を任意の混練手法(例えば、ロールミル、ミキサー等)によって混練し、スラリー状に調整する手法を用いることができる。例えば、かかる混練処理において、上記粉末状の複合材料とその他の添加剤とを50rpm〜300rpmの攪拌速度で、0.5時間〜1時間混練することによって、粉末状の複合材料が好適に分散したスラリー状の複合材料が得られる。
そして任意の手法(例えば印刷成形)を用いて、該スラリー状の複合材料を固体電解質20上に付与する。ここで開示される製造方法の好ましい一態様では、上記複合材料の付与は、上記焼成によって形成されるカソードの厚みが10μm以上100μm以下となるよう行うことが挙げられる。ここで開示される製造方法では、該カソードの熱膨張や還元膨張が抑制されているため、該電極の厚みが比較的厚い場合でも優れた耐久性を発揮することができる。
<複合材料の焼成>
次に、該複合材料が付与された積層体を焼成する。焼成の方法等は特に限定されないが、例えば、複合材料が付与された積層体110を、700℃〜900℃(好ましくは750℃〜850℃)で焼成することができる。上記焼成によりカソード30が形成され、アノード10と固体電解質20とカソード30とが積層されたSOFC50を得ることができる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。本実施例では、カソード構成材料の異なる(具体的には、LSCFとLSTFとの比率が異なる)10種類の固体酸化物形燃料電池(SOFC)を作製し、その特性および電池性能(発電性能)を評価した。なお、以下で説明する実施例は、本発明を限定することを意図したものではない。
<SOFCの作製>
先ず、平均粒径1μmのイットリア安定化ジルコニア(YSZ)粉末と、平均粒径3μmの酸化ニッケル(NiO)粉末とを混ぜ合わせ、混合粉末を得た。該混合粉末と、バインダ(メタクリル酸エステル系ポリマー)と、分散剤(ソルビタントリオレエート)とを、溶媒(キシレン)中で混練することにより、スラリー状のアノード用材料を調製した。該アノード用材料をシート成形によって成形し、φ20mm、厚み1mm程度のアノード用成形体を作製した。
次に、平均粒径1μmのイットリア安定化ジルコニア(YSZ)粉末と、バインダ(メタクリル酸エステル系ポリマー)と、分散剤(ソルビタントリオレエート)とを、溶媒(キシレン)中で混練することにより、スラリー状の固体電解質用材料を調製した。該固体電解質用材料を上記アノード用成形体上に印刷成形し、φ20mmの固体電解質成形体を形成した。なお、このときの固体電解質成形体の厚みは凡そ20μmだった。そして、積層した2層からなる成形体を乾燥させた後に、1300℃の温度で3時間焼成することにより、アノード−固体電解質積層体を作製した。
カソード材料としては、平均粒径0.8μmのLSCF酸化物(ここでは、La0.6Sr0.4Co0.2Fe0.83−δを用いた。)の粉末と、平均粒径0.8μmのLSTF酸化物(ここでは、La0.6Sr0.4Ti0.3Fe0.73−δを用いた。)の粉末とを、表1に示す質量比率で混合し、混合粉末を調製した。そして、かかる混合粉末を大気雰囲気下において800℃の温度で1時間アニール処理した後、粉砕処理して粉末状の複合材料(例1〜10)を得た。
<熱的特性評価>
上記カソード形成用の粉末状の複合材料について、下記条件で熱機械分析(TMA;Thermo Mechanical Analysis)を行い、熱膨張係数および還元膨張率を測定した。表1の該当欄に、測定温度範囲における算術平均値を示す。
測定装置;株式会社リガク製、型式「CN8098F1」
測定方法;示差膨張方式
測定温度範囲;室温(25℃)〜1000℃、昇温速度;5℃/分
測定雰囲気;大気中、水素4%+窒素96%の雰囲気中
次に、上記粉末状の複合材料と、バインダ(エチルセルロース)とを、溶媒(テルピネオール)中に添加し、ロールミルで0.5時間混練し、スラリー状の複合材料を得た。該スラリー状の複合材料を、上記固体電解質層上にスクリーン成形して、φ16mmのカソード用成形体を固体電解質層の上に形成した。なお、このときのカソード用成形体の厚みは、凡そ10μm〜50μmだった。そして、積層した3層からなる成形体を、800℃の温度で、1時間焼成することによってカソードを形成した。
これによって、アノード、固体電解質、カソードの順に積層したアノード支持型のSOFC(例1〜10)を得た。
<発電試験>
上記作製したSOFC(例1〜10)について、温度600℃〜800℃で動作させ、発電特性評価を行った。「発電性能」の代表値として、温度700℃における最大電力密度(W/cm)の値を表1の該当欄に示す。なお、表中の「‐」は、試験時に燃料ガスのリークが発生し、計測不能であったことを示す。
表1に示すように、LSTFの含有割合が増加するにしたがって、熱膨張係数および還元膨張係数は徐々に小さくなった。熱膨張の観点からは、ここに開示されるSOFCのセルに使用される典型的な材料の熱膨張係数に近い値を有する材料が好ましく、熱膨張係数が13〜16(×10−6/K−1)の範囲にある例3〜例9が好適と考えられた。また、還元膨張率の観点からは、0.7以下と比較的小さい値である、例3〜例10が好適と考えられた。
さらに、ここで開示されるSOFCは、用途にも拠るが、実用的には電流密度0.45A/cmの時の最大電力密度が0.1W/cm以上であることが好ましい。よって、SOFCの電極性能の観点からは、例2〜例8が好適と考えられた。
<電子顕微鏡観察>
また、上記発電試験後のSOFCを解体し、アノードの表面(成形体の表面)を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、電極表面の状態を確認した。観察結果を図3〜図6に示す。なお、図3は例1のカソード電極(即ち、LSCFのみの場合)、図4は例4のカソード電極(即ち、LSCFとLSTFの含有割合が70:30の場合)、図5は例6(即ち、LSCFとLSTFの含有割合が50:50の場合)、図6は例10(即ち、LSTFのみの場合)に、それぞれ対応している。
上記発電試験において電力密度の低かった(または測定不能であった)例1(図3)および例10(図6)のカソード電極表面には、大きなクラックの発生が認められた。原因として、SOFCを構築するために用いた材料の熱膨張係数と、アノード成形体の膨張係数とが大きく異なったことが考えられる。そのため、上記クラックの隙間から燃料のリークが発生したり、抵抗が増大したりして、上記発電性能の悪化につながったものと考えられる。一方、例4(図4)および例6(図5)では、電極表面上に大きなクラック等不具合は確認されなかった。
上記の結果より、LSCFとLSTFとの質量比率が80:20〜30:70となるよう混合されたカソード材料を用いることで、優れた電極性能(高い電力密度)を有し、且つ熱膨張や還元膨張が抑制された(耐久性に優れた)SOFCを製造し得ることが示された。
本発明の材料によると、優れた電極性能を有し、且つ耐久性の向上したSOFCのカソードを形成することができる。このため、本発明は、高性能なSOFC(もしくは発電システム)の構築に貢献することができる。また、かかる材料を用いると、低温稼働のSOFCでも、高い発電性能を発揮することができる。さらに、ここで開示されるカソードは固体電解質上に直接形成することができるため作業が簡便であり、好ましくは電池特性を向上(例えば抵抗の低減等)することができる。
10 アノード(燃料極)
20 固体電解質
30 カソード(空気極)
40 接合部
50 SOFC
60 ガス管
110 アノード−固体電解質成形体

Claims (9)

  1. 以下の一般式(1):
    (La1−xSr)(CoFe1−y)O3−δ (1)
    (ただし、xは0.1≦x≦0.5を満たす実数であり、yは0.1≦y≦0.5を満たす実数であり、δは電荷中性条件を満たすように定まる値である。)
    で示されるペロブスカイト型の酸化物と、
    以下の一般式(2):
    (La1−xSr)(TiFe1−y)O3−δ (2)
    (ただし、xは0.1≦x≦0.5を満たす実数であり、yは0.1≦y≦0.5を満たす実数であり、δは電荷中性条件を満たすように定まる値である。)
    で示されるペロブスカイト型の酸化物と、の両方を含むコンポジット状態からなる、固体酸化物形燃料電池のカソード形成用材料。
  2. 前記一般式(1)で示される酸化物と、前記一般式(2)で示される酸化物との質量比率が、80:20〜30:70である、請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池のカソード形成用材料。
  3. 少なくとも1種の分散溶媒を含み、スラリー状に調製されている、請求項1または2に記載の固体酸化物形燃料電池のカソード形成用材料。
  4. アノードと固体電解質とカソードとを備えた固体酸化物形燃料電池であって、
    前記カソードは、以下の一般式(1)
    (La1−xSr)(CoFe1−y)O3−δ (1)
    (ただし、xは0.1≦x≦0.5を満たす実数であり、yは0.1≦y≦0.5を満たす実数であり、δは電荷中性条件を満たすように定まる値である。)
    で示されるペロブスカイト型の酸化物と、
    以下の一般式(2):
    (La1−xSr)(TiFe1−y)O3−δ (2)
    (ただし、xは0.1≦x≦0.5を満たす実数であり、yは0.1≦y≦0.5を満たす実数であり、δは電荷中性条件を満たすように定まる値である。)
    で示されるペロブスカイト型の酸化物と、が混在した状態で形成されている、固体酸化物形燃料電池。
  5. 前記カソードにおける、前記一般式(1)で示される酸化物と、前記一般式(2)で示される酸化物との質量比率が、80:20〜30:70である、請求項4に記載の固体酸化物形燃料電池。
  6. 前記カソードと前記固体電解質と前記アノードとが層状に積層され形成されており、
    該積層構造における前記カソードの厚みが10μm以上100μm以下である、請求項4または5に記載の固体酸化物形燃料電池。
  7. 前記積層構造の前記カソードは、前記固体電解質上に反応抑止層を設けることなく、直接的に形成されている、請求項6に記載の固体酸化物形燃料電池。
  8. アノードと固体電解質とカソードとを備えた固体酸化物形燃料電池の製造方法であって、
    前記アノードと、前記アノード上に形成された固体電解質とからなるアノード−固体電解質積層体を用意すること、
    前記積層体の固体電解質側の表面に請求項1から3のいずれか一項に記載の材料を付与すること、
    前記材料が付与された前記積層体を焼成することによって、前記カソードを形成すること、
    を包含する、固体酸化物形燃料電池の製造方法。
  9. 前記材料の付与は、前記焼成によって形成される前記カソードの厚みが10μm以上100μm以下となるよう行う、請求項8に記載の製造方法。


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