JP6694724B2 - 固体酸化物形燃料電池 - Google Patents

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Description

本発明は、アノード支持型の固体酸化物形燃料電池に関する。
固体酸化物形燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell,以下、単に「SOFC」という)は、種々のタイプの燃料電池の中でも、発電効率が高い、COを排出せず環境への負荷が低い、多様な燃料の使用が可能であるなどの利点を有している。そのため、クリーンな電力供給源として利用が進められている。
SOFC(単セル)は、本質的な構成として、酸素イオン伝導体からなる緻密な層状の固体電解質を基本とし、この固体電解質の一方の面に多孔質構造のカソード(空気極)が形成され、他方の面に多孔質構造のアノード(燃料極)が形成されている。ここで、固体電解質材料としては、酸素イオン伝導性、安定性および価格のバランスの良好なイットリア安定化ジルコニア(YSZ)が広く用いられている。また、アノード材料としては、SOFCの運転環境において電子伝導性を示す酸化ニッケル(NiO)等の遷移金属酸化物材料と酸素イオン伝導性を示すイットリア安定化ジルコニア(YSZ)の混合物(例えば、NiO/YSZサーメット)が一般に用いられている。そして、カソード材料としては、ランタンストロンチウムコバルタイト((LaSr)CoO;LSC)に代表される、酸素イオン−電子混合導電性材料が一般に用いられている。このようなSOFCに関する従来技術として、例えば特許文献1および2が挙げられる。
特開2011−150959号公報 特開平05−062688号公報
このようなSOFCは、従来では800℃以上(典型的には、800℃〜1000℃程度)の高温で作動させていたが、SOFCシステム全体の耐久性の向上および低コスト化の観点から、近年では作動温度をより低温化(例えば、600℃〜700℃程度)することが望まれている。また、固体電解質を薄層化することで抵抗を低減することが検討されている。しかしながら、固体電解質材料とカソード材料との間では熱膨張係数の差が大きく、固体電解質を薄層化すると、製造時に固体電解質に割れが生じやすく、燃料ガス等のリークが発生し易くなるという問題があった。また、製造後においても、運転温度と停止時の温度(常温)との温度差から固体電解質が割れやすく、サイクル耐久性が低くなるといった新たな問題が生じていた。
本発明は上記の従来の問題を解決すべく創出されたものであり、その目的は、例えば、構成材料の熱膨張係数差に基づく耐久性の低下が抑制されているSOFCを提供することである。
上記目的を実現するべく、本発明によって、アノードと、上記アノードに支持された固体電解質と、上記固体電解質に支持されたカソードとを含むSOFCが提供される。ここで上記カソードは、厚さ方向で上記固体電解質側の底部と、表面側の上部とを含む。そして上記底部が上記上部よりもはみ出すことで、上記厚さ方向に直交する断面において、上記カソードは上記底部と上記上部との間に段差部を備えていることを特徴としている。
なお、図2に示すように、従来のSOFC100においては、カソード130の形状は厚み方向で均一であり、底部が上部からはみ出していなかった。また、一般的にカソード材料として用いられている固体電解質材料(例えば、8%YSZ)の熱膨張係数は10.5×10-6/K、反応防止層材料(例えば、10GDC)の熱膨張係数は12.4×10-6/Kであるのに対し、カソード材料(例えば、LSC)の熱膨張係数は22×10-6/Kと大きい。そのため、SOFCの製造時や、運転開始または停止時の温度変化により、カソードと、固体電解質または反応防止層との間には、膨張収縮差に伴う熱応力が発生し得る。薄層化された固体電解質20は、この熱応力により破損しやすく、このことがSOFCの耐久性低下の一因であった。また、固体電解質または反応防止層からカソード130が剥離するという事態も生じ得た。
ここに開示されるSOFCは、カソードの周縁に段差部が設けられている。このような形状の採用により、カソードと固体電解質または反応防止層との間に発生する熱応力は緩和される。これによって、カソードと固体電解質との間に発生する熱応力が緩和されて、サイクル耐久性が向上される。
なお、特許文献1および2等には、カソードを2層構造とし、各層の材料を変化させたSOFCが開示されている。しかしながら、カソードを上部と底部とに分けたとき、その間に段差ができるようなカソード形状については開示されていない。ここに開示されるSOFCは、電極材料の組成を調整することではなく、電極(カソード)の形状設計を最適化することで、耐久性を高めるというこれまでにない知見に基づくものである。
ここに開示されるSOFCの好ましい一態様では、上記底部の厚みをa、上記上部の厚みをbとしたとき、次式:(1/200)×b<a;を満たすことを特徴としている。これにより、底部により熱応力を緩和する効果をより確実に得ることができる。
ここに開示されるSOFCの好ましい一態様では、上記底部の厚みをa、上記上部の厚みをbとしたとき、次式:a≦5×b;を満たすことを特徴としている。これにより、底部を過剰に厚くすることなく効果的に熱応力を緩和することができる。
ここに開示されるSOFCの好ましい一態様では、上記カソードは、全周縁の70%以上に上記段差部が設けられていることを特徴としている。これによりカソードにおける熱応力のばらつきを抑制し、SOFCの耐久性をより確実に向上させることができる。
ここに開示されるSOFCの好ましい一態様では、平面視で上記底部の縁部と上記上部の縁部とのギャップは1mm以下であることを特徴としている。これにより、カソードの体積を過度に減少させることなく、SOFCの耐久性を高めることができる。
ここに開示されるSOFCの好ましい一態様では、上記固体電解質と、上記カソードの上記底部との間に、さらに、反応防止層を含むことを特徴としている。これにより、カソードと固体電解質との反応を防止して、界面に絶縁性化合物が形成されて抵抗が増大するのを抑制することができる。
ここに開示されるSOFCの好ましい一態様では、上記カソードは、一般式:(Ln1−X )M、式中、Lnはランタノイド元素から選択される少なくとも1種であり、MはSr,CaおよびBaから選択される少なくとも1種であり、Mは遷移金属元素から選択される少なくとも1種であり、0≦x≦0.8を満たす;で示されるペロブスカイト型酸化物から主として構成されている。これにより、発電性能の高いSOFCを実現することができる。
一実施形態に係るアノード支持型のSOFCを模式的に示した断面図である。 従来のアノード支持型のSOFCを模式的に示した断面図である。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(ここに開示される技術に直接関連しないSOFCの構成および製法等)は、本明細書により教示されている技術内容と、当該分野における当業者の技術常識とに基づいて把握される。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。なお、本明細書において範囲を示す「A〜B」との表記は、A以上B以下を意味する。
図1は、一実施形態に係る固体酸化物形燃料電池(SOFC)1の断面図である。この図は模式的に描かれており、図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は実際の寸法関係を厳密に反映するものではない。SOFC1には、本質的に、アノード(燃料極)10と、固体電解質20と、カソード(空気極)30と、が備えられている。ここでSOFC1は、固体電解質20およびカソード30よりもアノード10の厚みが大きく、固体電解質20およびカソード30がアノード10に支持されているアノード(アノード支持型)のSOFCである。このSOFCの形状は特に制限されない。例えば、平板型(Planarタイプ),一体積層(MOLB)型、縦縞円筒型(Tubularタイプ)、あるいは円筒型の周側面を垂直に押し潰したような形状の扁平円筒型(Flat tubular)等の種々の構造のSOFC1であってよい。また、ここに開示されるSOFCのサイズについても特に限定されない。
このSOFC1において、アノード10の少なくとも一部の表面上に、薄膜状の固体電解質20が備えられている。本例では、この固体電解質20の上に、固体電解質20とカソード30との間の反応を防止する反応防止層25が備えられている。反応防止層25は必須の構成要素ではないが、カソード30材料として固体電解質20と反応しやすい材料を採用する場合には備えていることが好ましい。そしてこの反応防止層25の上に、薄膜状のカソード30が備えられる。このようにSOFC1は、アノード10、固体電解質20、反応防止層25およびカソード30が一体的に接合された積層構造を有している。ここで、アノード10、カソード20および反応防止層25は、燃料ガスの流通が可能なように多孔質構造を有している。
ここに開示される技術において特徴的なことは、カソード30が、厚さ方向で固体電解質側を占める底部30Aと、表面側を占める上部30Bとを含むことである。例えば、カソード30は、厚さ方向で固体電解質側の底部30Aと、表面側の上部30Bとに区別することができる。図1では、カソード30は、底部30Aの層と、上部30Bの層とからなる2層構造を有している。そして底部30Aは、上部30Bよりも側方に(平面方向に)はみ出している。換言すると、断面において、底部30Aの側面と上部30Bの側面とは面一ではなく、底部30Aの側面の方が下層(ここでは反応防止層25)の表面に沿って延設されている。そして、カソード30には断面の端部において段差部が形成されている。このような構成により、底部30Aの底面は、上部30Bの底面よりも面積が大きい。つまり、底部30Aと上部30Bとが接する面積よりも、底部30Aが反応防止層25に接する面積の方が大きくなる。反応防止層25を備えないSOFC1においては、底部30Aと上部30Bとが接する面積よりも、底部30Aが固体電解質20に接する面積の方が大きくなる。
このことにより、例えば環境温度が上昇してカソード30が大きく膨張した場合であっても、上部30Bの膨張の影響(引っ張り応力)は反応防止層25(または固体電解質20)に直接伝わることなく、より面積の広い底部30Aによって緩和されて伝わる。また、底部30Aの膨張の影響(引っ張り応力)は、底部30Aが上部30Bよりもはみ出た部分(以下、「鍔部分」という場合がある。)において一部が解放され得る。したがって、鍔部分と反応防止層25(または固体電解質20)との間に発生する熱応力は、その内側において発生する熱応力よりも小さい。また、底部30Aの膨張の影響(引っ張り応力)は反応防止層25(または固体電解質20)に直接伝わり得るものの、底部30Aの体積はカソード30全体の体積よりも小さいことから、その量も低減される。これらのことにより、カソード30と反応防止層25(または固体電解質20)との界面に発生する熱応力が低減されるとともに、熱応力の分布がより滑らかに緩和される。したがって、固体電解質20の割れやクラックの発生が抑制されて、SOFCの耐久性が向上される。
以上のように、ここに開示されるカソードは、その形状により、反応防止層25(または固体電解質20)との界面に発生する熱応力が緩和されている。
ここで、カソード30の形状は、底部30Aが上部30Bよりもはみ出していればよい。カソード30は、全周縁において底部30Aがはみ出していてもよいし、全周縁の一部において底部30Aがはみ出していてもよい。ここで、底部30Aのはみ出した部分が多いほど熱応力がより多く緩和されるため、鍔部分は多い方が好ましい。かかる観点から、鍔部分は、カソード30の全周縁の50%以上に設けられていることが好ましく、70%以上がより好ましく、90%以上が特に好ましい。さらに鍔部は、カソードの周縁の実質的に100%に設けられることがさらに好ましい。鍔部分がカソード30の周縁の一部にのみ設けられる場合、熱応力の局所的な集中を避けるため、鍔部分は周縁の全体に分散されて設けられることが好ましい。
また、鍔部分のはみ出し量(図1のギャップc)については特に制限はなく、底部30Aが上部30Bよりごく少量でもはみ出すことで、熱応力の緩和の効果を得ることができる。しかしながら、ギャップcは0.05mm以上であると熱応力緩和の効果が明瞭になって好ましい。ギャップcは、0.1mm以上がより好ましく、0.2mm以上が更に好ましく、0.5mm以上が特に好ましい。ギャップcの上限は厳密には制限されないが、過剰にギャップcを設けると、応力緩和の効果が飽和に近づくことに加え、カソード30自体の体積減少につながり、SOFCの発電性能が低下し得るために好ましくない。かかる観点から、ギャップcの上限は、対象とするSOFCの構造、サイズ等を考慮して決定することができる。
ここで本発明者らの検討によると、実際の使用が想定されるSOFCのサイズを種々検討した結果、ギャップcは1mm以下とすることが好ましいとの結論を得た。すなわち、例えば、10mm〜120mm四方のサイズの角型のSOFCについて、カソードのギャップcが1mm程度となるまでは、ギャップcが増えれば増えるほどSOFCの耐久性が高められるとの結果を得ている。しかしながら、カソード30のギャップcが1mm程度を超えると、熱応力緩和の効果はさらに僅かずつ増大するものの、カソード体積の減少による発電性能の低下の影響が顕著となり、SOFC全体の性能として実際的ではない。したがって、SOFCの形状およびサイズによることなく、ギャップcの上限は、1mm以下とすることを目安としてもよい。
また、カソード30の厚み方向における段部の位置も特に制限されない。例えば、カソード30の底部30Aの厚みをa、上部30Bの厚みをbとすると、これらは次式:(1/200)×b<a;を満たすことが好ましい。底部30Aの厚みaが薄すぎると、熱応力緩和の効果が明瞭に得られ難いためである。かかる観点から、底部30Aの厚みaは、(1/100)×b以上(a≧(1/100)×b、以下同様。)であることが好ましく、(1/10)×b以上であることがより好ましく、(1/5)×b以上(例えば、約(1/2)×b)であることが特に好ましい。しかしながら、底部30Aの厚みaが大きすぎると段差部を設けた効果自体が小さくなるために好ましくない。かかる観点から、底部30Aの厚みaは、5×b以下程度が好ましく、3×b以下程度とするのがより好ましく、b以下とするのが特に好ましい。これにより、段差部の形状を適切に設定することができる。
カソード30全体の厚みは、典型的には1μm〜200μm程度とすることができ、好ましくは5μm〜100μm程度であり、より好ましくは10μm〜100μmであり得るが、かかる厚みに限定されるものではない。
なお、より具体的には、汎用のSOFCにおいて、底部30Aの厚みaは1μm以上であるのが好ましく、2μm以上がより好ましく、4μm以上が特に好ましい。また、底部30Aの厚みaは10μm以下であるのが好ましく、8μm以下がより好ましく、6μm以下が特に好ましい。
そして、上部30Bの厚みbは、10μm以上であるのが好ましく、12μm以上がより好ましく、14μm以上が特に好ましい。また、上部30Bの厚みbは、20μm以下であるのが好ましく、18μm以下がより好ましく、16μm以下が特に好ましい。
なお、上記の厚みaおよびbの値は、SOFC1の絶対的な大きさには概ね影響を受けしない。したがって、SOFC1の形態や寸法等に特に限定はない。代表的なSOFC1の一例として、例えば、120mm×120mmのスクエア形状のセルや、φ120mmの円形のセル等が挙げられる。
以上のように、ここに開示されるカソード30は、その形状により、反応防止層25(または固体電解質20)との界面に発生する熱応力が緩和されている。したがって、カソード30の底部30Aと上部30Bとの材料を変更する必要はなく、底部30Aと上部30Bとは同一の材料から構成されてよい。しかしながら、底部30Aの材料として、上部30Bよりも反応防止層25(または固体電解質20)により近い熱膨張係数を備える材料、すなわち熱膨張係数のより小さいカソード材料を採用することで、熱応力を緩和する効果がより一層高くなるために好ましい。
カソード30を構成する材料としては、従来からSOFCに用いられているカソード用材料の1種または2種以上を特に限定することなく使用することができる。例えば、一般式:ABO3‐δで示される結晶構造を有するペロブスカイト型結晶構造を有する酸化物粉末を用いることができる。ここで、AおよびBは金属元素であり、典型的には、Aはアルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、希土類元素等であり得る。また、Bは3価以上のイオンになり得る遷移金属、典型金属および希土類元素等であり得る。
なお、特に制限されるものではないが、このAサイトに、ストロンチウム(Sr)、サマリウム(Sm)、カルシウム(Ca)およびバリウム(Ba)からなる群から選択される1種または2種以上の元素M、および、ランタノイド元素(Ln)から選択される1種または2種以上の元素が含まれていることが好ましい。ランタノイド元素(Ln)は、原子番号57のランタン(La)から原子番号71のルテチウム(Lu)までの15種の元素とすることができる。このランタノイド元素としては、より具体的には、例えば、ランタン(La),サマリウム(Sm),セリウム(Ce),プラセオジム(Pr),ネオジム(Nd)等の比較的イオン半径の大きな元素であることが好ましい。中でも、かかるランタノイド元素がLaおよび/またはSmであると、より安定した結晶構造を構成し得るために好ましい。
なお、Aサイトにランタノイド元素Lnと元素Mとが両方含まれる場合、両者の合計に占める元素Mの比は、特に制限されるものではないが、0.8以下程度の範囲とするのが適当であり、好ましくは0.1以上0.5以下とすることができる。
また、上記のペロブスカイト型酸化物においては、特に制限されるものではないが、このBサイトに、元素周期表における第3族から第11族までの遷移金属元素Mが含まれていることが好ましい。なかでも、遷移金属元素Mとしては、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、チタン(Ti)および鉄(Fe)のうちの、いずれか1種または2種以上が含まれているのが好ましい。なお、これらのペロブスカイト型酸化物は、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて、上記に例示した以外の元素が含まれていてもよい。
このようにペロブスカイト型酸化物がBサイトに上記の遷移金属元素Mを含むことで、かかる遷移金属イオンのd電子が被局在化するために高い電気伝導性を示し得る。また、Bサイトに遷移金属Mが含まれるため、周辺環境により遷移金属のイオンの価数が変化し得、例えば、高温の還元雰囲気下では酸素の量が減じて空孔(酸素欠陥)が形成され得る。また、AサイトおよびBサイトの金属のイオンの価数の和が意図的に+6からわずかに減少されることによっても酸素欠陥が導入され得る。このように酸素欠陥が導入されたペロブスカイト型酸化物は、酸素欠陥を介して酸素イオンが速やかに動く酸素イオン導電体ともなり得る。このようなペロブスカイト型酸化物を主体としてカソード30を構成することが特に好ましい。
なおここで、ペロブスカイト型酸化物を「主体とする」とは、カソード30中の70質量%以上を当該材料が占めることを意味する。当該ペロブスカイト型酸化物は、カソードのうち80質量%以上を占めることが好ましく、90質量%以上を占めることがより好ましく、実質的に100質量%であることが好ましい。
また、上記式中のδは、かかるペロブスカイト型の酸化物における電荷中性条件を満たすように定まる値である。即ち、δは、ABO3‐δで表されるペロブスカイト型構造における酸素欠陥量を示すものと理解できる。このδは、ペロブスカイト型構造の一部を置換する原子の種類、置換割合の他、環境条件等により変動するため正確に表示することは困難である。このため、酸素原子数を決定する変数であるδは、典型的には1を超えない正の数(0≦δ<1)を採用し、(3−δ)と表示している。ただし、本明細書では、便宜上δを省略して記載する場合もあり、そのような場合においても異なる化合物を表すものではない。即ち、上記一般式中の(3−δ)は、本発明の技術的範囲を限定することを意図するものではない。
カソード材料としての導電性ペロブスカイト型酸化物としては、具体的には、以下の材料を好ましく用いることができる。具体的には、(LaSr)MnO、(LaCa)MnOに代表されるランタンマンガネート(LaMnO)系ペロブスカイト型酸化物や、LaCoO、(LaSr)CoO、(LaSr)(CoFe)O等に代表されるランタンコバルタイト(LaCoO)系のペロブスカイト型酸化物、さらには、(LaSr)(TiFe)O等に代表されるランタンチタネート(LaTiO)系のペロブスカイト型酸化物からなるものが例示される。これらの酸化物は、底部30Aおよび/または上部30Bを形成する材料として、いずれか1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、ここに列挙した一般式は、当業者において慣用的に使用されているように、かかる酸化物を構成する主元素の組み合わせを簡略的に示すものであって、実際の電極材料の組成を厳密に示すものではない。例えば、上記の「(LaSr)MnO」については、一般式「ABO3‐δ」で示されるAサイトの元素として、Laおよび/またはSrが、Bサイトの元素としてMnが含まれる組成を示している。また、上記に示した主元素以外の元素がドープされていてもよい。
ここで、上記に例示したペロブスカイト型酸化物は、LaCoO,(LaSr)CoO,(LaSr)(CoFe)O,(LaSr)(TiFe)O,(LaSr)MnOの順で熱膨張係数が大きい(この順に小さくなっていく)。したがって、カソード30の上部30Bを構成する材料が、LaCoOや(LaSr)CoO,(LaSr)(CoFe)O等の比較的熱膨張係数の大きい材料を含み、底部30Aを構成する材料が、(LaSr)(CoFe)O,(LaSr)(TiFe)O,(LaSr)MnO等のより熱膨張係数の小さい材料を含むことは、ここに開示されるSOFC1の好ましい態様であり得る。
なお、本明細書において、「熱膨張係数」とは、特に言及しない限り、熱機械分析装置(Thermomechanical Analysis:TMA)を用いて、室温(25℃)から500℃までの温度領域において測定した平均線膨張係数を意味し、かかる温度領域における試料の長さの変化量を測定温度差で割った値をいう。この熱膨張係数は、JIS R 1618:2002またはJIS R 3102:1995に準じて測定することができる。
以上のカソード30は、段差部を備えているが、かかる段差部を備えるカソード30の製造方法は特に制限されない。
例えば、カソード30は、底部30Aと上部30Bとを別々に2段階で製造するようにしてもよい。このとき、例えば、反応防止層25(または固体電解質20)上に、底部30Aをより広い面積で形成した後、底部30Aがはみ出すように上部30Bをより狭い面積で形成すればよい。例えば、カソード30が底部30Aと上部30Bとで材料の異なる2層構造であるときには、かかる手順でカソード30を形成するのが好適である。なお、後述の実施例で詳細に説明するが、カソード30は、一般にスラリー状のカソード形成用材料を供給したのち、乾燥・焼成することで製造される。ここで、底部30Aと上部30Bとを2段階で製造する場合、底部30A用の材料の供給と、上部30B用の材料の供給の間に、底部30A用材料を焼成する工程を挟んでもよいし、挟まなくてもよい。かかる焼成工程を挟まないことで、底部30Aと上部30Bとがより一体的な(界面が目立たない)カソード30を形成することができる。
また例えば、カソード30は、底部30Aと上部30Bとを一体のものとして製造するようにしてもよい。このとき、カソード30を、底部30Aに相当する面積で、底部30Aと上部30Bとを足し合わせた厚みの単層構造体として製造したのち、カソード30の上面の周縁の少なくとも一部を除去することで、底部30Aが上部30Bからはみ出した形態として段差部を形成してもよい。
引き続き、以下に、カソード30以外のSOFC1の各部の構成について説明する。
アノード10を構成する材料としては、例えば、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)その他の白金族元素、コバルト(Co)、ランタン(La)、ストロンチウム(Sr)、チタン(Ti)等からなる金属および/または金属元素のうちの1種、または2種以上から構成される金属酸化物が挙げられる。具体例として、Ni、Co、Ru等の白金族元素からなる金属や金属酸化物が挙げられる。以上のような金属成分は、SOFCのアノードの運転環境である中低温(例えば、600℃以上700℃以下)の還元雰囲気(Hガス雰囲気)において、高い電気伝導性を示すとともに、水素解離能力(水素酸化活性であり得る)を備え得る。したがって、この電極材料は、特にSOFCのアノード用材料として好適に用いることができる。これらのうち、Niは他の金属に比べて安価であり、且つ水素等の燃料ガスとの反応性が十分に大きいことから、特に好適な金属種である。また、これらの金属や金属酸化物を混合した複合物を用いることもできる。例えば、上記アノード構成材料(金属や金属酸化物)と、後述する固体電解質構成材料との複合物を用いることができる。より具体的には、例えばニッケル(Ni)またはルテニウム(Ru)と、安定化ジルコニア(例えば、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、カルシア安定化ジルコニア(CSZ)、スカンジア安定化ジルコニア(ScSZ)等)とのサーメットが好適例として挙げられる。特に限定するものではないが、例えば上記アノード構成材料と後述する固体電解質構成材料との混合比率(質量比)は、凡そ90:10〜40:60(より好ましくは、およそ80:20〜45:55)の範囲とすることができる。
ここで、SOFC1を構成するアノード10の形状は、SOFC1に供給される燃料ガスに接触できるように構成されていればよく、上述したSOFCの形状に応じて適宜選択することができる。図1に示す構成のSOFC1は、いわゆるアノード支持型であるため、比較的厚く形成されたアノード10がSOFC1の支持体として利用されている。支持体としてのアノード10の厚みは、典型的には0.1mm〜10mm程度であり、好ましくは0.5mm〜5mm程度であるが、かかる厚みに限定されるものではない。
なお、支持体であるアノード10は、固体電解質20との界面から離れた領域はアノード10としての寄与が少ない。したがって、具体的には図示しないが、図1におけるアノード10部分を、固体電解質20に隣接する領域と、固体電解質20から離れた領域とに分け、固体電解質20から離れた領域を多孔度のより高いアノード支持体部分として形成するようにしてもよい。この場合、固体電解質20に隣接する領域の厚みは、例えば、1μm〜200μm程度とすることができ、好ましくは5μm〜100μm程度、より好ましくは10μm〜100μmとすることができる。また、上記アノード支持体としてのアノード10の厚みは、取扱い性、耐久性、熱膨張率等を考慮して設定することが好ましい。典型的には0.1mm〜10mm程度であり、好ましくは0.5mm〜5mm程度であるが、この厚みに限定されるものではない。
ここで開示されるSOFC1を構成する固体電解質20は緻密構造を有している。固体電解質20は、上記アノード10の上に積層されており、アノード10の形状に応じてその形状を適宜変更することができる。また、固体電解質20の膜厚は、固体電解質層の緻密性が維持される程度に厚くする一方、SOFCとして好ましい酸素イオン伝導度および低抵抗性を供し得る程度に薄くなるよう、両者をバランスさせて厚さ寸法を設定することが好ましい。典型的には0.1μm〜50μm程度であり、好ましくは0.5μm〜40μm程度であり、より好ましくは1μm〜20μm程度であるが、かかる膜厚は限定されるものではない。
固体電解質20を構成する材料としては、従来からSOFCに用いられている材料の一種または二種以上を特に限定することなく使用することができる。例えば、上記の酸素イオン伝導性材料として例示したような、高い酸素イオン伝導性を有する化合物が好ましく用いられる。具体的には、例えば、セリウム(Ce)、ジルコニウム(Zr)、マグネシウム(Mg)、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、イットリウム(Y)、カルシウム(Ca)、ガドリニウム(Gd)、サマリウム(Sm)、バリウム(Ba)、ランタン(La)、ストロンチウム(Sr)、ガリウム(Ga)、ビスマス(Bi)、ニオブ(Nb)、タングステン(W),エルビウム(Er)等のうちから選択される元素を安定化剤として含む、酸化物であることが好ましい。具体的には、例えば、イットリア(Y)、カルシア(CaO)、スカンジア(Sc)、マグネシア(MgO)、イッテルビア(Yb)、エルビア(Er)等の少なくとも1種で結晶構造を安定化させたジルコニア(ZrO)や、ガドリニア(Gd)、ランタニア(La)、サマリア(Sm)、イットリア(Y)をドープしたセリウム酸化物(CeO)が、好適例として挙げられる。例えば、イットリウム(Y)の酸化物(例えば、イットリア(Y))をドープしたイットリア安定化ジルコニア(YSZ)や、スカンジウム(Sc)の酸化物(例えばスカンジア(Sc))をドープしたスカンジア安定化ジルコニア(ScSZ)等を好ましく用いることができる。
反応防止層25を設ける場合、反応防止層25を構成する材料としては、従来からSOFCに用いられている材料の一種または二種以上を特に限定することなく使用することができる。具体的には、例えば、ガドリニウムドープセリア(GDC)が挙げられる。反応防止層25の厚みは、典型的には0.1μm〜50μm程度であり、好ましくは0.5μm〜40μm程度であり、より好ましくは1μm〜20μm程度であるが、かかる膜厚は限定されるものではない。
以上の各構成部は、上記に例示した組成の化合物の粉末を、そのまま圧縮成形する等して電極構造に成形してもよいし、あるいは、粉末を分散媒中に分散したペースト(インク、スラリー、サスペンションなどを包含する)の形態に調製して用いるようにしてもよい。このとき用いる分散媒としては、粉末を良好に分散し得るものであればよく、従来のこの種のペーストに用いられている各種の分散媒を特に制限なく使用することができる。典型的には、かかる分散媒としては、ビヒクルと、粘度調整のための有機溶媒との混合物を考慮することができる。
有機溶媒としては、例えば、エチレングリコールおよびジエチレングリコール誘導体(グリコールエーテル系溶剤)、トルエン、キシレン、ブチルカルビトール(BC)、ターピネオール等の高沸点有機溶剤の1種を単独で、または、2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、ビヒクルは、有機バインダとして種々の樹脂成分を含むことができる。かかる樹脂成分はペーストを調製するのに良好な粘性および塗膜形成能(例えば、印刷性や、基板に対する付着性等を含む)を付与し得るものであればよく、従来のこの種のペーストに用いられているものを特に制限なく使用することができる。例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、セルロース系高分子、ポリビニルアルコール、ロジン樹脂等を主体とするものが挙げられる。このうち、特にエチルセルロース等のセルロース系高分子が含まれているのが好ましい。なお、かかる分散媒には、分散剤や可塑剤等のこの種の分散媒に一般的に使用され得る任意の添加剤が含まれていてもよい。
さらに、アノード10およびカソード30等の多孔質構造を有する部材を製造する場合は、焼成により燃えぬける造孔材を使用しても良い。このような造孔材の好適な一例は、カーボン粉末、樹脂粒子、天然有機粉末(例えば小麦粉、米粉、もち粉など)である。
分散媒の割合は、各部の製造方法に応じて適宜調整することができる。例えば、かかるペースト状の形態の電極材料は、印刷等の手法により上記のSOFCの構成部材を形成するのに好ましく用いることができる。より具体的には、例えば、スクリーン印刷やドクターブレード法等の手法によりSOFCの各構成部材を作製するためのグリーンシート(未焼成段階の成形体)を成形することができる。この場合、分散媒が、ペースト全体(すなわち、例えば、上記粉末材料と分散媒との合計)に占める割合は、5質量%以上60質量%以下程度とすることが好ましく、7質量%以上50質量%以下がより好ましく、10質量%以上40質量%以下が特に好ましい。また、ビヒクルに含まれる有機バインダは、例えば、ペースト全体の1質量%以上15質量%以下程度、好ましくは1質量%以上10質量%以下程度、より好ましくは1質量%以上7質量%以下程度の割合とすることが例示される。かかる構成とすることで、例えば、粉末状の材料を均一な厚さの層状体(例えば、塗膜)として形成(塗布)し易く、取扱いが容易であり、さらにかかる塗布物から分散媒を除去するのに長時間を要することがないために好適である。
なお、ペースト状に調製するに際し、上記粉末状の電極材料および分散媒の混合には、例えば、公知の三本ロールミル等を用いることができる。ペースト状の電極材料は、所望の用途に応じて適切な粘度に調整することによって、塗布または印刷等の形態で電極材料を所望の位置に所望の形態にて簡便に供給することが可能となる。例えば、極精密に寸法が管理されたSOFCのアノードを簡便かつ好適に成形することができる。
上記のようにして準備した電極材料の成形体(いわゆるグリーンシート)は、従来のこの種の構成部材と同様に焼成することができる。この場合の焼成温度は、アノード10、固体電解質20および反応防止層25については、例えば1000℃〜1400℃程度とすることができる。カソード30については、例えば、900℃〜1200℃程度とすることができる。なお、この焼成をSOFCの他の構成部材の焼成と同時に行う場合等には、焼成条件を適宜変更することができる。これにより、ここに開示されるSOFCを製造することができる。
以上のSOFC1の単セルは、上記のとおり、酸素イオン伝導体からなる緻密な層状の固体電解質20を基本とし、この固体電解質20の一方の面に多孔質構造のカソード30が形成され、他方の面に多孔質構造のアノード10が形成されている。ここで、カソード30が形成された側の固体電解質20の表面には、空気等に代表されるO(酸素)含有ガスが供給され、アノード10が形成された側の固体電解質20の表面には、H(水素)に代表される可燃性燃料ガスが供給される。そして一般的な動作においては、空気中のOガスがカソード30で還元されて酸素イオンとなり、この酸素イオンは固体電解質20を通過してアノード10に到達する。そしてアノード10において酸素イオンはHガス燃料を酸化し、これに伴い外部負荷に電子を放出して電気エネルギーが生成される。これにより、SOFC1による発電が実現される。
以下、本発明に関する幾つかの試験例を説明するが、本発明をかかる試験例に示すものに限定することを意図したものではない。
[評価用セルの作製]
下記の表1に示すようにカソードの材料および構成を様々に変化させ、以下の手順で、評価用のSOFC(例1〜13)を作製した。
まず、アノード支持型のSOFCのハーフセルを作製した。アノード用材料としては、酸化ニッケル(NiO,平均粒子径0.5μm)粉末と、8%イットリア安定化ジルコニア(8%YSZ,平均粒子径0.5μm)粉末とを60:40の質量比で混合した混合粉末を用意した。このアノード用混合粉末と、造孔材(炭素成分)、バインダ(ポリビニルブチラール;PVB)、可塑剤および分散媒(キシレン)とを、順におよそ53:10:8.5:4.5:24の質量比で混練することにより、ペースト状の支持体形成用組成物を調製した。次いで、この支持体形成用組成物をキャリアシート上にドクターブレード法に塗布し、乾燥させることで、厚みが0.5〜1.0mmのアノード支持体グリーンシートを形成した。
次に、上記のアノード用混合材料と、バインダ(エチルセルロース;EC)および分散媒(TE)とを、およそ80:2:18の質量比で混合することで、ペースト状のアノード形成用組成物を調製した。このアノード形成用組成物を上記アノード支持体グリーンシートの上にスクリーン印刷法により供給し、乾燥させて、厚みが約10μmのアノードグリーンシートを形成した。
固体電解質材料として、8%YSZ(平均粒子径0.5μm)粉末と、バインダ(EC)と、分散媒(TE)とを、およそ65:4:31の質量比で混練することにより、ペースト状の固体電解質層形成用組成物を調製した。これを上記アノードグリーンシートの上にスクリーン印刷法によってシート状に供給することで、厚みが約10μmの固体電解質層グリーンシートを形成した。
また、反応防止層材料として、10%ガドリニウムドープセリア粉末(10%GDC,平均粒子径0.5μm)と、バインダ(EC)と、分散媒(TE)とを、およそ65:4:31の質量比で混練することにより、ペースト状の反応防止層用組成物を調製した。これを上記固体電解質層グリーンシートの上にスクリーン印刷法によってシート状に供給することで、厚みが約5μmの反応防止層グリーンシートを形成した。
このようにして用意した積層グリーンシートを円形に切り抜き、1350℃で共焼成することで、アノード支持体,アノード層,固体電解質層および反応防止層が順に一体的に積層されたSOFCのハーフセルを得た。なお、積層グリーンシートの切り抜き寸法は、焼成後のハーフセルが直径20mmの円形となる大きさとした。
次いで、カソード材料として、LSC,LSCF,LSTFおよびLSMとして表される以下の4種類の粉末材料(平均粒子径0.5μm)を用意した。また、LSCFとLSTFとを30:70の質量比で混合した混合粉末を5種類目のカソード材料として用意した。各材料の組成と、熱膨張係数(括弧内)を示した。また、参考のために、固体電解質材料および反応防止層材料の熱膨張係数も併せて示した。
LSC :La0.6Sr0.4CoO (22×10-6/K)
LSCF:La0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8 (17×10-6/K)
LSTF:La0.6Sr0.4Ti0.3Fe0.7 (12×10-6/K)
LSM :La0.5Sr0.5MnO (12×10-6/K)
LSCF+LSTF混合 (14×10-6/K)
電解質層(8YSZ) :10.5×10-6/K
反応防止層(10GDC):12.4×10-6/K
そしてこれらのカソード材料と、バインダ(エチルセルロース;EC)および分散媒(TE)とを、80:3:17の質量比で混合することで、ペースト状の5通りのカソード形成用組成物を調製した。次いで、上記で用意したSOFCのハーフセルの反応防止層上に、このカソード形成用組成物を表1に示す条件で供給することでカソードA層(底部)およびカソードB層(上部)を順次形成し、2層構造のカソードグリーンシートを形成した。カソード形成用組成物はスクリーン印刷法により供給した。ここで、表1に示したように、カソードA層は、焼成後の形状が、直径8mmの円形となるように形成し、厚みを0.1〜10μmの範囲で変化させた。また、カソードB層は、カソードA層の上に同心円状に形成し、焼成後の直径は6〜7.9mm、厚みは5〜50μmの範囲で変化させた。
表1のカソードA層およびカソードB層の「材料」の欄には、各層に使用したカソード材料を上記の略号で記した。
カソードA層およびカソードB層の「厚み」の欄には、焼成後の各層の厚みを記した。
「ギャップ」の欄には、円形のカソードA層およびカソードB層の半径の差を示した。この値は、焼成後のカソードを平面視で観察したときの、カソードA層の縁部からカソードB層の縁部までの最短寸法に相当する。
次いで、カソードグリーンシートを形成したハーフセルを1100℃で焼成して層状のカソードを形成することで、例1〜13の評価用のSOFCを得た。
そして、このように得られた評価用のSOFCについて、発電性能と劣化率とを以下に示す手順で測定した。
[発電性能]
各例のSOFCを下記の条件で運転し、電流密度0.5A/cmにおける出力密度(W/cm)を測定し、発電性能とした。その結果を、表1の「発電性能」の欄に示した。
アノード供給ガス:水素ガス(50ml/min)
カソード供給ガス:空気(100ml/min)
運転温度:700℃
[劣化率]
各例のSOFCのヒートサイクル後の耐久性を、劣化率として調べた。まず、各例のSOFCに対し、昇降温速度200℃/hrで室温から700℃まで加熱したのち室温にまで冷却することを1サイクルとし、このヒートサイクルを10サイクル施した。そしてヒートサイクル後のSOFCについて、下記の条件で1000時間連続運転したとき、運転前後の開放電圧を測定し、下式に基づき電圧劣化率を算出した。その結果を、表1の「劣化率」の欄に示した。なお、式中、「初期開放電圧」は、運転前の開放電圧であり、「運転後開放電圧」は、1000時間運転後の開放電圧である。
アノード供給ガス:水素ガス(50ml/min)
カソード供給ガス:空気(100ml/min)
運転電流密度:0.5A/cm
運転温度:700℃
劣化率={(運転後開放電圧)−(初期開放電圧)}÷(初期開放電圧)
Figure 0006694724
[評価]
例1でカソード材料として使用したLSCは、高い発電性能を実現し得るものの、固体電解質材料などと比べて高い熱膨張係数を有するために、ヒートサイクルによってセルの劣化を進行させやすい材料である。一方、例2〜5で使用したLSCFは、比較的高い発電性能を発現し得、かつ、LSCよりも熱膨張係数が低く、発電性能と劣化率とのバランスがとれた材料である。
表1の例2〜5に示されるように、カソードA層とB層とにギャップ(半径差)を設けることで、劣化率が大きく低減されることが確認された。なお、ギャップを0〜1mmの範囲で変化させたとき、発電性能に変化はみられないが、劣化率についてはギャップが大きくなるほど低減される傾向があることがわかった。また劣化率は、ギャップを1mmとしたときに約30%も低減されることがわかった。このことから、カソードをA層およびB層の2層構造とし、ハーフセル側のA層の寸法を上層であるB層よりも大きく形成しておくことで、カソードとハーフセルとの熱膨張係数の差に基づく応力が緩和されて、発電効率に影響を与えることなくヒートサイクル時の耐久性を高められることがわかった。
例6〜8に示すように、ギャップを1mmとしたままカソードA層の厚みを10μmよりも薄くしてゆくと、厚みが1μm(カソードB層の1/20)のときは発電性能が若干低下するものの、劣化率がより一層低減されることがわかった。しかしながら、カソードA層の厚みを0.1μm(カソードB層の1/200)まで薄くすると、発電性能が急激に低下してしまうことがわかった。このことから、A層の厚みは薄すぎると劣化率の低減効果が顕れにくくなることがわかった。
なお、例9に示すように、カソードB層の厚みをA層よりも薄い5μmとすると、発電に寄与するカソードの体積が減ることから発電性能が低下してしまうことがわかった。
一方、例10に示すように、カソードB層の厚みをA層の5倍の50μmとすると、発電性能に変化はないものの、例5に比べて劣化率が増大してしまった。これは、カソードB層が物理的に厚くなったため、カソードA層およびB層の界面により大きい熱応力が発生したことによると考えられる。しかしながら、この場合であっても、例10は例2に比べて劣化率が低い。
以上のことから、発電効率との両立を考慮すると、カソードA層の厚みは、例えば、およそ0.1μm以上(カソードB層の1/20以上)であることが好ましいといえる。またカソードB層の厚みは、所望の発電性能が得られる範囲で薄い方が好ましく、例えば、およそ50μm以下(未満)とするのが好ましいといえる。なお、カソードA層の厚みは、例えば10μm以下(カソードB層の1/2以下)程度であることがより適切であるといえる。
なお、例11〜13および例7に示したように、以上の効果は、カソード材料としてLSCFを用いた場合に限定されず、LSC,LSM,LSTF等の材料を用いた場合にも確認できることがわかった。さらに、カソードA層として、カソードB層よりも熱膨張係数の小さい材料を選択することで、発電性能の低下を極少量に抑えたまま、劣化率をより一層低減できて好ましいことが確認された。
以上のことから、ここに開示される電極材料を用いて、例えば、発電性能および耐久性に優れたSOFCが実現できることが確認された。以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
1 SOFC(単セル)
10 アノード
20 固体電解質
25 反応防止層
30 カソード

Claims (5)

  1. アノードと、前記アノードに支持された固体電解質と、前記固体電解質に支持されたカソードとを含み、
    前記カソードは、厚さ方向で前記固体電解質側の底部と、表面側の上部とから構成され、且つ、該底部と上部とは同心円状に形成されており
    前記底部がその全周縁にわたって前記上部よりもはみ出すことで、前記カソードは前記底部と前記上部との間に段差部を該上部の全周縁に沿って備えており
    前記カソードは、一般式:(Ln 1−X )M
    式中、Lnはランタノイド元素から選択される少なくとも1種であり、M はSr,CaおよびBaから選択される少なくとも1種であり、M は遷移金属元素から選択される少なくとも1種であり、0≦x≦0.8を満たす;
    で示されるペロブスカイト型酸化物から主として構成されており、且つ、
    前記固体電解質は、Ce、Zr、Mg、Sc、Ti、Al、Y、Ca、Gd、Sm、Ba、La、Sr、Ga、Bi、Nb、WおよびErのうちから選択される元素を安定化剤として含むジルコニア、ガドリニア、またはセリウム酸化物で構成されている、固体酸化物形燃料電池。
  2. 前記底部の厚みをa、前記上部の厚みをbとしたとき、次式:(1/200)×b<a;を満たす、請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池。
  3. 前記底部の厚みをa、前記上部の厚みをbとしたとき、次式:a≦5×b;を満たす、請求項1または2に記載の固体酸化物形燃料電池。
  4. 平面視で前記底部の縁部と前記上部の縁部とのギャップは1mm以下である、請求項1〜のいずれか1項に記載の固体酸化物形燃料電池。
  5. 前記固体電解質と、前記カソードの前記底部との間に、さらに、反応防止層を含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の固体酸化物形燃料電池。
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