JP6042320B2 - 電極材料とその利用 - Google Patents
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Description
ここで、空気極が形成された側の固体電解質の表面には、空気等に代表されるO2(酸素)含有ガスが供給され、燃料極が形成された側の固体電解質の表面には、H2(水素)に代表される可燃性燃料ガスが供給される。そして一般的な動作においては、空気中のO2ガスがカソードで電気化学的に還元されてO2−アニオンとなり、固体電解質を通過して、燃料極に到達する。そして、このO2−アニオンが燃料極においてH2ガス燃料を酸化するのに伴い、外部負荷に電子を放出し、電気エネルギーが発生される。
しかしながら、低温駆動型のSOFCの空気極を構成するのに主として用いられている酸素イオン−電子混合導電性材料からなる電極材料は、例えば、25℃〜1000℃の温度範囲における熱膨張係数(Coefficient of Thermal Expansion:CTE,以下、単に「CTE」と記す場合がある。)が17×10−6/K程度と比較的大きく、固体電解質材料や反応防止層材料との熱膨張率の差が大きい。例えば、固体電解質材料であるYSZのCTEは10×10−6/K程度であり、反応防止層材料であるGDCのCTEは12×10−6/K程度である。そのため、SOFCの運転に伴うサーマルサイクルにより、空気極を構成する材料と、固体電解質材料または反応防止層材料との間で、界面剥離やクラックが発生する等の問題が生じていた。このことは、SOFCの長期的な耐久性に大きな問題となり得るために、解決するべき問題である。
導電性ペロブスカイト型酸化物は、高温においても結晶構造が比較的安定で、かつ良好な電子導電性を示す。かかる導電性ペロブスカイト型酸化物は、一般的な固体電解質材料であるジルコニア系酸化物等や、反応防止層材料であるガドリニアドープセリア(GDC)等と比較して、CTEが近いものもあり得るが、CTEが大きい場合が多い。一方のマイエナイト化合物は、高温においても結晶構造が比較的安定であり、CTEは導電性ペロブスカイト型酸化物に比べて低い。したがって、これらの材料を組み合わせて用いることで、接合の対象となる固体電解質材料あるいは反応防止層材料と近いCTEを有する電極材料を実現することができる。
で示されることを特徴としている。ここで、式中の、Lnはランタノイドから選択される1種または2種以上の元素であり、Ae2はCa,SrおよびBaからなる群から選択される1種または2種以上の元素であり、MはMn,Cr,Cu,Fe,NiおよびTiからなる群から選択される1種または2種以上の元素である。なお、上記Ae2は、少なくともSrを含むのが好ましく、また、上記Mは、少なくともFeを含むことが好ましい。そして、xおよびyはそれぞれ、0≦x<1、0≦y<1を満たし、δは電荷中性条件を満たすように定まる値である。
かかる構成によると、上記導電性ペロブスカイト型酸化物は、優れた電子導電特性を示すものとなり得る。したがって、例えば、SOFCの構築により適した電極材料が提供される。
導電性ペロブスカイト型酸化物のうち、Bサイトを遷移金属元素が占めるものについては、高酸素分圧条件において比較的大きな酸素不定比性を示すため、電子と酸素イオンの両者による導電を示す酸素イオン−電子混合導電性材料であり得る。それと同時に、かかる酸素イオン−電子混合導電性材料は、固体電解質材料や反応防止層材料等と比較して、CTEが大幅に大きい場合が多い。したがって、これらの材料を組み合わせて用いることで、例えば、低温型SOFCの構築に適した電極材料が提供される。
かかる構成によると、例えば、かかる電極材料を用いて形成される電極の熱膨張係数、還元膨張率および耐サーマルサイクル特性等がバランス良く兼ね備えられた電極材料を簡便に調整することが可能とされる。
かかる構成によると、例えば、SOFCの空気極材料として好適な電極材料が提供される。特に、ジルコニア、YSZ、セリアおよびGDC等の、CTEが概ね10〜12×10−6/K程度の固体電解質材料や反応防止層材料との整合性を備える電極材料が提供される。
かかる構成によると、当該電極材料を印刷や塗布するなどして目的の電極を形成することができ、取り扱いや成形性に優れた電極材料が提供される。
ここに開示される電極材料において特徴的なマイエナイト化合物は、下記の一般式(1)で表される代表組成を有している。
一般式:12Ae1O・7Al2O3 …(1)
なお、ここで式中、Ae1はCaおよびSrの少なくとも1種の元素である。Ae1は、上記の通りカルシウム(Ca)またはストロンチウム(Sr)であり得る。これらの元素はいずれか一方が単独で含まれていても良いし、両方が組み合わされて含まれていても良い。なかでも、Caが含まれている形態が好ましい。Ae1として2種以上の元素が含まれる場合には、さらに、Caがより高い含有率で含まれているのが好適である。
ここに開示される電極材料は、代表的にはABO3で示されるペロブスカイト型の結晶構造を有する導電性酸化物を含んでいる。なお、この「導電性」とは、例えば、500℃以上の高温において比較的安定かつ良好な電子導電性を示すことを意味している。ここで、上記のAおよびBは金属元素であり、典型的には、Aは1価のアルカリ金属、2価のアルカリ土類金属、3価の軽希土類元素等であり得る。また、Bは3価以上のイオンになり得る遷移金属、典型金属および希土類元素等であり得る。そして、ここに開示される電極材料としてのより好ましい一形態において、かかる導電性ペロブスカイト型酸化物は、下記の一般式で示される組成を有するものであり得る。すなわち、かかる導電性ペロブスカイト型酸化物は、より限定的には、下記の一般式(2)で示されるペロブスカイト型複合酸化物であるのが好ましい。
(Ln1−xAe2 x)(Co1−yMy)O3−δ …(2)
ここで、式中、Lnは原子番号57〜71のランタノイド元素である。かかるLnとしては、ランタン(Ln)からルテチウム(Lu)までの15種の元素を考慮することができる。Lnは、これら15種類のランタノイド元素からいずれか1種が単独で含まれていても良いし、2種以上が組み合わされて含まれていても良い。かかるランタノイドとしては、例えば、具体的には、ランタン(La),セリウム(Ce),プラセオジム(Pr),ネオジム(Nd),サマリウム(Sm)等の比較的イオン半径の大きな元素であることが好ましい。中でも、かかるランタノイドがLaであると、より安定した結晶構造を構成し得るために好ましい。ランタノイドとしてLaと共にLa以外の元素を含む場合には、かかるLaの割合が高いことが好ましい。
ここに開示される電極材料は、その調製方法について特に制限はなく、例えば、典型的には、粉末状のマイエナイト化合物と、粉末状の導電性ペロブスカイト型酸化物とを、混合することで調製することができる。なお、粉末状のマイエナイト化合物および粉末状の導電性ペロブスカイト型酸化物の調整方法については、公知の各種の手法に準じることができる。
具体的には、例えば、粉末状の導電性ペロブスカイト型酸化物の製造方法としては、乾式法や、湿式法等が代表的なものとして知られている。また、マイエナイト化合物の製造方法についても、例えば、乾式法や、湿式法等が代表的なものとして知られている。マイエナイト化合物は、一般的な非導電性のものとして調製されてもよいし、導電性が付与されるように調製されてもよい(特許文献1および2参照)。
なお、導電性ペロブスカイト型酸化物の製造方法を例にして説明すると、乾式法とは、例えば、粉末状の導電性ペロブスカイト型酸化物の構成成分の原料化合物を化学量論組成で乾式混合し、仮焼して固相反応させる方法である。かかる原料化合物は、例えば、上記の一般式で示されるLn、Ae2、CoおよびMの各元素の化合物(例えば、酸化物、炭酸塩、硝酸塩等)であってもよいし、複数の元素の化合物であってもよい。
かかる成形に際しては、例えば、粉末状の電極材料をそのまま成型してもよいし、あるいは、粉末状の電極材料を有機媒体中に分散したペースト(インク、スラリーなどを包含する)の形態に調製して用いるようにしても良い。かかる有機媒体としては、ここに開示される電極材料を良好に分散させ得るものであればよく、従来のこの種のペーストに用いられているものを特に制限なく使用することができる。典型的には、かかる有機媒体としては、ビヒクルと、粘度調整のための有機溶媒との混合物を考慮することができる。かかる有機溶媒としては、例えば、エチレングリコールおよびジエチレングリコール誘導体(グリコールエーテル系溶剤)、トルエン、キシレン、ブチルカルビトール(BC)、ターピネオール等の高沸点有機溶剤の1種を単独で、または、2種以上を組み合わせて使用することができる。また、ビヒクルは、有機バインダとして種々の樹脂成分を含むことができる。かかる樹脂成分はペーストを調製するのに良好な粘性および塗膜形成能(例えば、印刷性や、基板に対する付着性等を含む。)を付与し得るものであればよく、従来のこの種のペーストに用いられているものを特に制限なく使用することができる。例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、セルロース系高分子、ポリビニルアルコール、ロジン樹脂等を主体とするものが挙げられる。このうち、特にエチルセルロース等のセルロース系高分子が含まれているのが好ましい。
なお、ここに開示される電極材料は、粉末状のものを所定の形態に圧縮成形する等して成形体(例えば、所望の形状のペレット)とすることもできる。
上記のようにして準備した電極材料の成形体は、従来のこの種の構成部材と同様に焼成することができる。この場合の焼成温度は、例えば1000℃〜1400℃程度とすることができる。ただし、かかる焼成を、他の構成部材の焼成と同時に行う場合等には、焼成温度を適宜変更することができる。
また、ここに開示される電極材料は、高温において良好な電気伝導性およびイオン導電性を示すことに加え、一般的なSOFCの固体電解質材料であるジルコニア系酸化物と熱膨張率が近く調整され得る。そして、かかる固体電解質材料などとも反応性が低いことから、SOFCの空気極を構成するために好ましく用いることができる。また、ここに開示される電極材料は、SOFCの空気極の作動条件である高酸素分圧条件において、比較的大きな酸素不定比性を示し得る。したがって、かかる電極材料を空気極に用いれば、電極(空気極)/電解質/気相(酸素含有ガス)が接する三相界面だけでなく、電極(空気極)自体の表面においても電極反応が進行しうるため、例えば、600℃程度の温度領域においても比較的高い電極活性を示し得るために好ましい。すなわち、例えば、SOFCの中でも600℃〜700℃程度の比較的低温で作動される低温型SOFCの構成部材として好ましく考慮することができる。かかる構成部材としては、具体的には、SOFCの空気極のほかに、集電体およびこれらの接合用材料等を挙げることができる。
以下、ここに開示される電極材料を用いて構成されるSOFCの具体的な実施態様を示しながら、本発明が提供するSOFCについて説明する。
かかる実施態様における固体酸化物形燃料電池(SOFC)システムは、図1に示される、アノード支持型のSOFCの単セル10を備えている。この単セル10は、多孔質構造の燃料極(アノード)40の表面(上面)に、順に、酸化物イオン伝導体からなる緻密な層状の固体電解質30、多孔質構造の反応防止層25および多孔質構造の空気極(カソード)20が形成されることで構成されている。SOFCの作動時には、燃料極40を通じて燃料極40側の固体電解質30表面に燃料ガス(典型的には水素(H2))が、空気極20を通じて空気極20側の固体電解質30表面に酸素(O2)含有ガス(典型的には空気)が、それぞれ供給される。一般的な動作においては、酸素(O2)含有ガス中のO2ガスが空気極20で還元されてO2−アニオンとなり、固体電解質30を通って燃料極20に移動し、H2ガス燃料を酸化する。そしてかかる酸化反応に伴い、電気エネルギーを発生させている。
また、反応防止層材料として、平均粒径0.5μmの10%ガドリニウムドープセリア(10GDC)粉末と、バインダ(EC)と、溶媒(α−テルピネオール;TE)とを、65:4:31の質量比率で混練することにより、ペースト状の反応防止層用組成物を調製した。これを上記固体電解質層グリーンシートの上にスクリーン印刷法によってシート状に供給することで、厚みが約5μmの固体電解質層グリーンシートを形成した。
このようにして用意した積層グリーンシートを、1350℃で共焼成することで、SOFCのハーフセルを得た。
なお、LSCF粉末は、La2O3,SrCO3,Fe2O3,Co3O4を化学量論比で湿式混合した後、大気雰囲気中、1100℃〜1400℃で焼成し、ボールミルを用いて湿式粉砕することで用意した。
また、マイエナイト粉末は、CaCO3およびAl2O3を化学量論比で湿式混合した後、大気雰囲気中、1000℃〜1400℃で焼成し、ボールミルを用いて湿式粉砕することで用意した。
固体電解質30としては、上記の8%イットリア安定化ジルコニア(8YSZ)の他に、例えば、ガドリニアドープセリア(GDC)、ランタンガレート(LaGaO3)からなるものが例示される。燃料極40としては、一例として、ニッケル(Ni)とYSZのサーメットからなるものが例示される。
かかる実施態様における固体酸化物形燃料電池(SOFC)システムは、SOFCのスタックセル100を備えている。図2に、スタックセル100の一形態の分解斜視図を模式的に示す。かかるスタックセル100は、SOFC(単セル)10A,10Bが、インターコネクタ50を介して複数層積み重なったスタックとして構成されている。単セル10A,10Bは、層状の固体電解質30の両面が、それぞれ層状の燃料極(アノード)40と空気極(カソード)20とで挟まれたサンドイッチ構造を備えている。図面中央に配されるインターコネクタ50Aは、その両面を二つの単セル10A,10Bで挟まれており、一方のセル対向面52がセル10Aの空気極20と対向(隣接)し、他方のセル対向面54がセル10Bの燃料極40と対向(隣接)している。かかる空気極20は、ここに開示される電極材料から構成されている。また、インターコネクタ50は、例えば、SUS430等の耐熱合金,Crofer(ティッセンクルップ),ZMG(日立金属)等の金属材料や、LaCrO3系のセラミックス材料等から構成されている。インターコネクタ50の、セル対向面52には複数の溝が形成されており、供給された酸素含有ガス(典型的には空気)が流れる空気流路53を構成している。同様に、反対側のセル対向面54にも複数の溝が形成されており、供給された燃料ガス(典型的にはH2ガス)が流れるための燃料ガス流路55を構成している。かかる形態のインターコネクタ50では、典型的には空気流路53と燃料ガス流路55とが互いに直交するように形成されている。また、空気極20とインターコネクタ50との接合に際しては、空気極20の表面にここに開示されたペースト状の電極材料を塗布した後、インターコネクタ50を重ね合わせるようにし、両者に間隙が生じてH2ガス燃料の漏れが生じないようにされている。一般的な動作においては、酸素(O2)含有ガス中のO2ガスが空気極54で還元されてO2−アニオンとなり、固体電解質を通って燃料極40に移動し、H2ガス燃料を酸化する。そしてかかる酸化反応に伴い、電気エネルギーを発生させている。
なお、以上のSOFCシステムの製造方法は、従来公知の製造方法に準じればよく特別な処理を必要としないため、詳細な説明は省略する。
SOFCの空気極材料として、サンプル1〜8の電極材料を用意した。すなわち、表1に示される割合で、ランタンストロンチウム鉄コバルタイト(La0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3;LSCF)粉末と、マイエナイト(12CaO・7Al2O3)粉末とを混合し、サンプル1〜8の電極材料を用意した。
なお、LSCF粉末は、La2O3,SrCO3,Fe2O3,Co3O4を化学量論比で湿式混合した後、大気雰囲気中、1100〜1400℃で焼成し、ボールミルを用いて湿式粉砕することで用意した。
また、マイエナイト粉末は、CaCO3およびAl2O3を化学量論比で湿式混合した後、大気雰囲気中、1100〜1400℃で焼成し、ボールミルを用いて湿式粉砕することで用意した。
上記で用意した空気極形成用組成物1〜8を、焼成後の寸法が4mm×5mm×20mmとなるように成形し、1100℃で焼成することで、CTE測定用の試験片を作製した。熱膨張係数は、熱機械分析装置(株式会社リガク製、TMA8310)を用い、大気中、室温(25℃)〜1000℃の温度範囲にて示差膨張方式にて測定した平均線膨張率から求めた値である。かかる熱膨張係数の測定は、JIS 1618:2002のファインセラミックスの熱機械分析による熱膨張の測定方法に準じて実施した。
電極材料1〜8と、SOFCの代表的な反応防止層材料である10%ガドリニウムドープセリア(10GDC)との耐サーマルサイクル性を評価した。具体的には、上記で用意した空気極形成用組成物1〜8を用い、直径20mm、厚み2mmの円盤状のペレットを用意した。かかるペレットを、同じく空気極形成用組成物1〜8を介して10CDCからなる基板上に載置し、700℃〜1100℃の温度範囲で焼成することで、電極材料ペレットと10CDC基板とが接合された接合体を得た。
次いで、室温(25℃)にある接合体を、700℃にまで昇温したのち200℃にまで降温するサーマルサイクルを1サイクルとし、100サイクルを負荷した。なお、昇温および降温は200℃/hの一定速度とし、各温度での保持時間は30分間とした。そしてかかるサイクル後の接合体について、下記の接合性評価を行った。
○:実用に十分な接着性があると評価できる1MPaのせん断応力を接合体に加えたときには接合体に変化はないが、2MPaのせん断応力を加えたときには剥離が生じる。
△:1MPa未満のせん断応力を接合体に加えたときに、接合部に剥離またはクラックが生じる。
×:接合部に目視でクラックが確認でき、目視ないしは軽い触診で接合体の剥離が生じる。
上記で用意した空気極形成用組成物1〜8を、焼成後の寸法が4mm×5mm×20mmとなるように成形し、1100℃で焼成することで試験片を作製し、還元膨張率を測定した。なお、還元膨張率は、熱機械分析装置(株式会社リガク製、TMA8310)を用い、大気雰囲気中と、還元雰囲気(水素5体積%と窒素95体積%の混合雰囲気)中とで、室温(25℃)〜1000℃の温度範囲にて示差膨張方式にて測定したそれぞれの平均線膨張率から、次式により求めた値である。なお、式中のEairは、大気雰囲気中で測定した平均線膨張率(すなわち、上記のTEC)であり、Eredは、上記の還元雰囲気中で測定した平均線膨張率である。
還元膨張率=[{(1+Ered/100)−(1+Eair/100)}/(1+Eair/100)]×100
上記で用意した空気極形成用組成物1〜8をSOFCの空気極形成用材料として用い、以下の手順で、評価用のSOFC1〜8を作製した。
すなわち、まず、酸化ニッケル(NiO,平均粒子径0.5μm)粉末と、8%イットリア安定化ジルコニア(8%YSZ,平均粒子径0.5μm)粉末とを、60:40の質量比で混合することで、燃料極材料を用意した。そして、この燃料極材料と、造孔材(カーボン粒子)、バインダ(ポリビニルブチラール;PVB)、可塑剤および溶媒(エタノール:トルエンが質量比で3:1の混合溶媒)とを、順に58:5:8.5:4.5:5:24の質量比で混練することにより、ペースト状の燃料極支持体形成用組成物を調製した。次いで、この燃料極支持体形成用組成物をキャリアシート上にドクターブレード法により塗布し、乾燥させて、厚み0.5〜1mmの燃料極支持体グリーンシートを形成した。
このようにして用意した積層グリーンシートを、1350℃で共焼成することで、SOFCのハーフセルを得た。
このように得られた評価用のSOFC1〜8について、発電性能を以下に示す手順で測定した。
上記SOFCを下記の条件で運転させた際の出力密度を測定し、電圧0.8Vにおける出力(W/cm2)を発電性能として、表1に示した。
運転温度:700℃
燃料極供給ガス:H2ガス(50ml/min)
空気極供給ガス:Air(100ml/min)
表1に示されるように、酸素イオン−電子混合導電性材料であるLSCFにマイエナイトを加えて空気極材料とすることで、反応防止層材料である10GDCと接合するに適した熱膨張係数を実現できることが示された。なお、本実施形態では、反応防止層材料としてCTEが12×10−6/Kの10GDCを用い、酸素イオン−電子混合導電性材料としてCTEが17×10−6/KのLSCFを用いたことから、これらの材料の組み合わせにおいて、LSCFとマイエナイトの合計に占めるマイエナイトの割合を、0を超えて0.7未満程度に調整するのが好ましいことが分かった。なお、具体的には示さないが、例えば、反応防止層材料としてCTEが約10×10−6/KのZrO2を用いた場合にはマイエナイトの割合をより少量にしてもよく、また例えば、酸素イオン−電子混合導電性材料としてCTEが約19×10−6/Kのランタンストロンチウムコバルタイト((LaSr)Co3;LSC)を用いた場合にはマイエナイトの割合をより多量にしてもよいことが確認されている。
なお、具体的なデータは示していないが、LSCFとマイエナイトとが混合された電極材料をSOFCの運転温度である700℃程度の高温においても、LSCFとマイエナイトとが反応することに因ってLSCFの酸素イオン−電子混合導電性が損なわれることはないことが確認できた。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
20 空気極(カソード)
25 反応防止層
30 固体電解質
40 燃料極(アノード)
50,50A インターコネクタ
52 ,54 セル対向面
53 空気流路
55 燃料ガス流路
100 スタックセル
Claims (4)
- 導電性ペロブスカイト型酸化物と、
一般式:12Ae1O・7Al2O3 …(1)
(式中、Ae1はCaおよびSrの少なくとも1種の元素である)
で表されるマイエナイト化合物と、を含む、電極材料。 - 前記導電性ペロブスカイト型酸化物は、
一般式:(Ln1−xAe2 x)(Co1−yMy)O3−δ …(2)
(式中、Lnはランタノイドから選択される1種または2種以上の元素であり、Ae2はCa,SrおよびBaからなる群から選択される1種または2種以上の元素であり、MはMn,Cr,Cu,Fe,NiおよびTiからなる群から選択される1種または2種以上の元素であって、xおよびyはそれぞれ、0≦x<1、0≦y<1を満たし、δは電荷中性条件を満たすように定まる値である)
で示される、請求項1に記載の電極材料。 - 前記導電性ペロブスカイト型酸化物は、酸素イオン−電子混合導電性材料である、請求項1または2に記載の電極材料。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の電極材料の焼成体からなる空気極を備える、固体酸化物形燃料電池。
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