JP2013143242A - 固体酸化物形燃料電池および該燃料電池のカソード形成用材料 - Google Patents

固体酸化物形燃料電池および該燃料電池のカソード形成用材料 Download PDF

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Abstract

【課題】従来に比べ、より低い作動温度(例えば600℃〜800℃)においても電極として優れた性能を発揮し得るSOFCのカソード形成用材料を提供すること。
【解決手段】
本発明によって、一般式:LnAeCe3−δ(Lnはランタノイドから選択される1種以上の元素であり、AeはSr、CaおよびBaからなる群から選択される1種以上の元素であり、MはCo、Mn、Ni、Fe、Ti、Al、Zr、Ga、Mg、Cu、In、Sn、V、Cr、Zn、Ge、ScおよびYからなる群から選択される1種以上の元素であり、a,b,c,dは、0.3≦a≦0.7、0.3≦b≦0.7、0.01≦c≦0.3、1.7≦a+b+c+d≦2.0を満たす実数である。)で示されるペロブスカイト型酸化物と、セリウム酸化物を含む混合状態からなる、固体酸化物形燃料電池のカソード形成用材料が提供される。
【選択図】図1

Description

本発明は、固体酸化物形燃料電池のカソード(空気極)形成に用いられる材料、および該材料を用いて形成されたカソードを備える固体酸化物形燃料電池に関する。
固体酸化物形燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell;以下、単に「SOFC」ということもある。)は、種々のタイプの燃料電池の中でも、発電効率が高く、また多様な燃料の使用が可能なため、環境負荷の少ない次世代の発電装置として開発が進められている。
SOFCの典型的な構造は、酸素イオン伝導体(典型的には酸素イオン伝導性のセラミック体)から成る緻密な固体電解質(例えば緻密膜層)の一方の面に多孔質構造のカソード(空気極)が形成され、他方の面に多孔質構造のアノード(燃料極)が形成(例えば積層)されることにより構成されている。
ところで近年、SOFCの低コスト化や用途拡大の観点から、該SOFCの作動温度をより低温(典型的には800℃以下)にするための研究が進められている。しかし作動温度が低くなるほど、電池抵抗が増大(典型的には、カソードの過電圧の増大)し、発電性能が低下してしまうという問題があった。かかる問題に対処するカソード形成用材料としては、一般式;LaSrMO3−δ(ただし、M=Co、Fe、Ti、Ni、Mn等のうち1種以上の元素)で示されるような、ペロブスカイト型の酸化物が知られている。上記酸化物は、いわゆる酸素イオン−電子混合伝導体であり、比較的低い温度領域(例えば600℃〜800℃)においても優れた電極触媒能力を発揮することができる。これらに関する従来技術としては、特許文献1〜4が挙げられる。例えば、特許文献1および2には、ペロブスカイト型の酸化物とセリウム化合物からなるカソードを備えたSOFCが開示されている。また特許文献3には、固体電解質とカソードの間にバッファ層(緩衝材)を備えたSOFCが開示されている。
特開2009−140694号公報 特開平8−329961号公報 特開2009−259568号公報 特開2003−123773号公報
上述の通り、SOFCをより低い温度で作動させることができれば、該電池を構成する材料の選択の幅が広がり、より低コスト且つ耐久性に優れたSOFCを実現し得る。さらに、家庭用や車載用の用途等でも利用が可能となる。このため、電極性能の更なる向上が強く望まれている。
本発明は、かかる課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、従来に比べ低い作動温度(例えば600℃〜800℃)においても電極として優れた性能を有するSOFCのカソード形成用材料を提供することである。また、本発明は、他の側面として、上記材料を用いてカソードを構成したSOFCを提供する。
上記目的を実現するべく、本発明によって、以下の一般式(1):LnAeCe3−δ(ここで、Lnはランタノイドから選択される1種または2種以上の元素であり、AeはSr、CaおよびBaからなる群から選択される1種または2種以上の元素であり、MはCo、Mn、Ni、Fe、Ti、Al、Zr、Ga、Mg、Cu、In、Sn、V、Cr、Zn、Ge、ScおよびYからなる群から選択される1種または2種以上の元素であり、a,b,c,dは、0.3≦a≦0.7、0.3≦b≦0.7、0.01≦c≦0.3、1.7≦a+b+c+d≦2.0を満たす実数であり、δは電荷中性条件を満たすように定まる値である。)で示されるペロブスカイト型の酸化物と、セリウム酸化物との両方を含むコンポジット状態(反応せずに混在している状態)からなる、固体酸化物形燃料電池のカソード形成用材料が提供される。
上記ペロブスカイト型の酸化物と上記セリウム酸化物は、どちらも、いわゆる酸素イオン−電子混合伝導体であり、比較的低い温度領域(例えば600℃〜800℃)においても電極として優れた性能を発揮し得る。また、ペロブスカイト型の酸化物とセリウム酸化物の双方にCe元素が含まれていることで、該酸化物粒子間の接触抵抗が低減され、カソードの電子伝導性を向上することができる。さらに、ペロブスカイト型酸化物は、結晶構造中に4価のセリウム(Ce4+)を含んでいるため、酸素欠損の増大により酸素イオン伝導性をより一層向上させることができる。このため、ここで開示される材料は、SOFCのカソード形成用材料として好適に用いることができる。
ここで開示される材料の好ましい一態様では、上記一般式(1)のM元素は、Co、FeおよびNiのうち1種または2種以上を含むことが挙げられる。
上記元素を含むペロブスカイト型の酸化物は、電極として、より優れた性能を発揮し得るため、SOFCのカソード形成用材料として好適に用いることができる。
ここで開示される材料の好ましい一態様では、上記一般式(1)のcは、0.01≦c≦0.1を満たす実数であることが挙げられる。
ペロブスカイト型の酸化物中のCe元素の比率が上記範囲にある場合、結晶構造の安定性に優れ、且つ電極として優れた性能を発揮し得る。このため、SOFCのカソード形成用材料として好適に用いることができる。
ここで開示される材料の好ましい一態様では、上記セリウム酸化物は、以下の一般式(2):Ce1−y2−δ(ただし、yは0≦y<1を満たす実数であり、δは電荷中性条件を満たすように定まる値である。)で示され、ここで上記一般式(2)中のXは、Gd、LaおよびSmのうち1種または2種以上の元素であることが挙げられる。
上記元素を含むセリウム酸化物は、酸素イオンとの反応性が高く、且つ酸素イオン伝導性にも優れているため、電極として更に優れた性能を発揮し得る。よって、SOFCのカソード形成用材料としてより好適に用いることができる。
ここで開示される材料の好ましい一態様では、上記一般式(2)で示される酸化物の量は、上記カソード形成用材料100質量%に対し5質量%以上50質量%以下であることが挙げられる。
上記の質量比率を満たすコンポジット状態からなる材料は、電極として優れた性能を有しており、且つ該材料粒子間の抵抗が低く抑えられているため、電極として優れた性能を発揮し得る。よって、SOFCのカソード形成用材料としてより好適に用いることができる。
ここで開示される材料の好ましい一態様では、少なくとも1種の分散溶媒を含み、ペースト状(スラリー状、インク状を含む。)に調製されていることが挙げられる。
ここで開示される材料は、SOFCのカソードを形成するために用いられる。かかる用途においては、該カソードの構成材料を1種以上の分散溶媒に分散(もしくは溶解)させペースト状に調製したものを用いることで、均質なカソード層を安定して作製することができる。
また本発明により、アノードと固体電解質とカソードとを備えた固体酸化物形燃料電池であって、上記カソードは、ここで開示されるいずれかのカソード形成用材料(典型的には上述したペロブスカイト型の酸化物とセリウム酸化物からなる材料)で形成されている、固体酸化物形燃料電池(SOFC)が提供される。
上記カソードでは、酸素イオン伝導性や電子伝導性がより向上している。このため、かかるカソードを備えたSOFCは、高い発電性能を発揮し得る。
ここで開示されるSOFCの好ましい一態様では、作動温度が600℃以上800℃以下であることが挙げられる。
上記カソードは、電極として優れた性能を有しているため、かかるカソードを用いたSOFCは、従来に比べ低い温度領域においても、高い発電性能を発揮することができる。
さらに本発明により、アノードと固体電解質とカソードとを備えた固体酸化物形燃料電池の製造方法が提供される。ここで提供される製造方法では、上記アノードと、上記アノード上に形成された固体電解質とからなるアノード−固体電解質積層体を用意すること、上記積層体の固体電解質側の表面にここで開示されるいずれかのカソード形成用材料(典型的には上述したペロブスカイト型の酸化物とセリウム酸化物)を付与すること、上記材料が付与された上記積層体を焼成することによって、上記カソードを形成することを包含する。
ここで開示される製造方法では、従来に比べ低温領域において優れた発電性能を発揮し得るSOFCを製造することができる。
本発明の一実施形態に係るアノード支持型のSOFCを模式的に示す断面図である。 本発明の一実施形態に係るSOFCの製造工程を模式的に示す断面図である。 本発明の一試験例に係るカソード形成用材料のX線回折パターンである。 本発明の一試験例に係るSOFCの発電性能を比較したグラフである。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
ここで開示されるカソード形成用材料は、上述したペロブスカイト型の酸化物とセリウム酸化物の複合材料(以下、ペロブスカイト型の酸化物とセリウム酸化物の複合材料を、単に「複合材料」と言うこともある。)で形成されていることにより特徴付けられる。よって、他の構成成分の内容や組成等については、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の基準に照らして決定することができる。
本発明により、アノードと固体電解質とカソードとを備えた固体酸化物形燃料電池であって、上記カソードは、ここで開示されるいずれかのカソード形成用材料(ペロブスカイト型の酸化物とセリウム酸化物の複合材料)を備えた固体酸化物形燃料電池(SOFC)が提供される。上記カソードでは、酸素イオン伝導性や電子伝導性がより向上しているため、かかるカソードを備えたSOFCは、比較的低い作動温度領域においても、高い発電性能(例えば、作動温度700℃、電流0.5A/cmの条件下において、0.06W/cm以上の電力密度)を発揮し得る。なお、電力密度の測定条件については、後述する実施例において詳細に述べる。
ここで開示される複合材料を用いたカソードは、種々の構造のSOFC、例えば、従来公知の平板型(Planar)、MOLB型、縦縞円筒型(Tubular)、あるいは円筒の周側面を垂直に押し潰した扁平円筒型(Flat tubular)、一体積層型等のSOFCに対して好適に用いることができ、形状やサイズは特に限定されない。また、支持体(基材)についても特に限定はなく、例えばアノードやカソード、固体電解質等であり得る。
一例として、図1を参照しながら説明する。図1は、ここで開示されるSOFC50を備えた発電システムの一部を模式的に示した断面構成図である。ここに示す構成のSOFC50はアノード支持型のSOFCであり、支持体となる薄板状あるいはシート状のアノード(燃料極)10と、該アノード10の少なくとも一部の表面上に形成された(膜状の)固体電解質20と、該固体電解質20の表面上に形成された薄板状あるいはシート状のカソード(空気極)30とが積層された構造を有している。そして、アノード10の端部12と、燃料ガス(典型的には水素(H)だが、燃焼するものであれば例えば炭化水素(メタン(CH))等でもよい。)を供給するガス管60の接合面とが接続部材40によって接合され、気体(燃料ガスもしくは空気)が流出(流入)しないように封止されている。また、カソード30には酸素(O)を含む気体に曝される構造(典型的には、外気に露出した構造)を有している。
かかるSOFCに電流を印加すると、カソード30において、酸素含有ガス(典型的には空気)中の酸素が、酸素イオン(O2−)となる。該酸素イオンは、カソード30から固体電解質20を介してアノード10に供給される。そして該アノード10において、燃料ガスと反応して水(HO)を生成し、電子を放出することにより、発電が行われる。
ここで開示されるSOFC50を構成するアノード(燃料極)10は多孔質構造を有している。アノードの形状は、SOFCに供給される燃料ガスに接触できるように構成されていればよく、上述したSOFCの形状に応じて適宜選択し得る。図1に示す構成のSOFC50は、いわゆるアノード支持型であるため、比較的厚く形成された薄板状あるいはシート状のアノード10がSOFC50の支持体として形成されている。上記支持体としてのアノード10の厚みは、取扱い性、耐久性、熱膨張率等を考慮して設定することが好ましい。典型的には0.1mm〜10mm程度であり、好ましくは0.5mm〜5mm程度であるが、かかる厚みに限定されるものではない。
かかるアノードを構成する材料としては、従来からSOFCに用いられている材料の一種または二種以上を特に限定することなく使用することができる。例えば、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)その他の白金族元素、コバルト(Co)、ランタン(La)、ストロンチウム(Sr)、チタン(Ti)等からなる金属および/または金属元素のうちの1種類以上から構成される金属酸化物が挙げられる。具体例として、Ni、Co、Ru等の白金族元素からなる、金属や金属酸化物が挙げられる。例えば、Niは他の金属に比べて安価であり、且つ水素等の燃料ガスとの反応性が十分に大きいことから特に好適な金属種である。また、これらの金属や金属酸化物を混合した複合物を用いることもできる。さらに、例えば、上記アノード構成材料(金属や金属酸化物)と、後述する固体電解質構成材料との複合物を用いることもできる。具体的には、例えばニッケル(Ni)またはルテニウム(Ru)と、安定化ジルコニア(例えば、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、カルシア安定化ジルコニア(CSZ)、スカンジア安定化ジルコニア(ScSZ)等)とのサーメットが好適例として挙げられる。特に限定するものではないが、例えば上記アノード構成材料と後述する固体電解質構成材料との混合比率(質量比)が、凡そ90:10〜40:60(より好ましくは、凡そ80:20〜45:55)の範囲にあることが好適である。
ここで開示されるSOFC50を構成する固体電解質20は緻密構造を有している。固体電解質20は、上記アノード10の上に積層されており、アノード10の形状に応じてその形状を適宜変更することができる。また、固体電解質20の膜厚は、固体電解質層の緻密性が維持される程度に厚くする一方、SOFCとして好ましい酸素イオン伝導度を供し得る程度に薄くなるよう、両者をバランスさせて厚さ寸法を設定することが好ましい。典型的には0.1μm〜50μm程度であり、好ましくは1μm〜40μm程度であり、より好ましくは10μm〜30μm程度であるが、かかる膜厚に限定されるものではない。
かかる固体電解質を構成する材料としては、従来からSOFCに用いられている材料の一種または二種以上を特に限定することなく使用することができ、例えば、高い酸素イオン伝導性を有する化合物が好ましく用いられる。例えば、セリウム(Ce)、ジルコニウム(Zr)、マグネシウム(Mg)、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、イットリウム(Y)、カルシウム(Ca)、ガドリニウム(Gd)、サマリウム(Sm)、バリウム(Ba)、ランタン(La)、ストロンチウム(Sr)、ガリウム(Ga)、ビスマス(Bi)、ニオブ(Nb)、タングステン(W)等のうちから選択される元素を含む、酸化物であることが好ましい。具体的には、安定化剤(例えば、イットリア(Y)、カルシア(CaO)、スカンジア(Sc)、マグネシア(MgO)、イッテルビア(Yb)、エルビア(Er))で結晶構造を安定化させたジルコニア(ZrO)や、ドープ剤(例えば、ガドリニア(Gd)、ランタニア(La)、サマリア(Sm)、イットリア(Y))をドープしたセリウム酸化物(CeO)が、好適例として挙げられる。例えば、イットリウム(Y)の酸化物(例えば、イットリア(Y))をドープしたイットリア安定化ジルコニア(YSZ)や、スカンジウム(Sc)の酸化物(例えばスカンジア(Sc))をドープしたスカンジア安定化ジルコニア(ScSZ)等を好ましく用いることができる。
ここで開示されるSOFCを構成するカソード(空気極)30は、上記アノード10と同様に多孔質構造を有している。カソード30は、上記固体電解質20の上に積層されており、固体電解質20の形状に応じてその形状を適宜変更することができる。カソード30の厚みは、典型的には1μm〜200μm程度であり、好ましくは5μm〜100μm程度、より好ましくは10μm〜100μmであるが、かかる厚みに限定されるものではない。
かかるカソード30を構成する材料としては、以下の一般式(1):LnAeCe3−δで示されるペロブスカイト型の酸化物と、セリウム酸化物と、の両方を含むコンポジット状態からなる複合材料が挙げられる。
ここで、上記一般式(1)中の「Ln」は、ランタノイドから選択される1種または2種以上の元素であり、原子番号57〜71の元素(例えば、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)等)のうちのいずれか1種または2種以上を選択することができる。これらの中でも、Laを特に好ましく用いることができ、「Ln」として2種以上の元素を含んでいる場合には上記Laの含有率が高いと好ましい。
また、上記一般式(1)中の「Ae」は、アルカリ土類金属を示すものである。典型的には、ストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)およびバリウム(Ba)からなる群から選択される1種または2種以上の元素である。なかでも、Srが含まれているものが好ましい。さらに、Srの含有率の高い組成のものが好適であり、例えば、Srのみから構成されている、あるいはSrが高い含有率で含まれている(例えば、「Ae」中においてSrが50モル%以上含まれている)と特に好ましい。
また、上記一般式(1)中の「M」は、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、ガリウム(Ga)、マグネシウム(Mg)、銅(Cu)、インジウム(In)、スズ(Sn)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)、ゲルマニウム(Ge)、スカンジウム(Sc)およびイットリウム(Y)からなる群から選択される1種または2種以上の元素である。なかでも、Co、Mn、Ni、Feのいずれか、あるいはこれらのいずれか2種の組み合わせが好ましい。上記元素を含む場合、他のペロブスカイト型酸化物に比べ、高い反応性や酸素イオン伝導性を有しているため、比較的低い温度領域においても電極として優れた性能を発揮することができる。
また、上記一般式(1)中のa,b,c,dは、0.3≦a≦0.7、0.3≦b≦0.7、0.01≦c≦0.3、1.7≦a+b+c+d≦2.0を満たす実数である。即ち、ペロブスカイト型構造を崩すことなく、該構造を維持し得る限りにおいて上記の範囲内であれば、いずれの実数をとってもよい。またcは、典型的には0.01≦c≦0.1を満たす実数である。c(即ち、ペロブスカイト型の酸化物中のCe元素の比率)が上記範囲にある場合、結晶構造の安定性に優れ、且つ電極として優れた性能を発揮し得るため、SOFCのカソード形成用材料として好適である。
上記ペロブスカイト型酸化物の具体例としては、例えば、「Ln」としてLaを選択し、「Ae」としてSrを選択し、「M」としてCoを選択した「LaSrCeCo3−δ(以下、「LSCC」という。)」や、「Ln」としてLaを選択し、「Ae」としてSrを選択し、「M」としてFeを選択した「LaSrCeFe3−δ(以下、「LSCF」という。)」や、「Ln」としてLaを選択し、「Ae」としてSrを選択し、「M」としてNiを選択した「LaSrCeNi3−δ(以下、「LSCN」という。)」等が挙げられる。
また上記セリウム酸化物とは、構成元素の一つにセリウム(Ce)を含む酸化物を示すものであり、例えば、以下の一般式(2):Ce1−y2−δで示すことができる。
ここで、一般式(2)中の「X」は、セリウム酸化物中に含まれ得るセリウム(Ce)以外の構成元素であり、例えば、上述したランタノイド(Ln)のうちから選択される1種または2種以上の元素であり得る。より具体的には、ガドリニウム(Gd)、ランタン(La)、サマリウム(Sm)、イットリウム(Y)等を用いることができ、例えば、Gd、La、Sm等を好ましく用いることができる。セリウム酸化物中に上記元素を含む場合、電極として優れた性能を発揮することができる。
また、上記一般式(2)中のyは、上記セリウム酸化物において「Ce」が「X」によって置換された割合を示す値であり、0≦y<1の範囲内であればいずれの実数をとってもよい。
上記セリウム酸化物の具体的な例としては、例えば、y=0であるCeOが挙げられる。また、CeOにGdをドープした酸化ガドリニウム安定化セリア(GDCともいう。)や、Laをドープした酸化ランタン安定化セリア(LDCともいう。)、Smをドープした酸化サマリウム安定化セリア(SDCともいう。)等が挙げられる。
なお、上記一般式(1)および(2)において、「δ」は電荷中性条件を満たすように定まる値であり、即ち、酸素原子数は3以下(典型的には3未満)であり得る。即ち、酸素原子数はペロブスカイト型構造の一部を置換する原子の種類、置換割合およびその他の条件により変動するため正確に表示することは困難である。このため、酸素原子数を決定する変数である「δ」は、典型的には1を超えない正の数(0≦δ<1)を採用し、酸素原子の数を(3−δ)と表示する。ただし、便宜上δを省略して記載する場合もあるが、かかる場合においても異なる化合物を表しているわけではない。即ち、上記一般式中の(3−δ)は、本発明の技術的範囲を限定することを意図するものではない。
上記ペロブスカイト型の酸化物と上記セリウム酸化物は、どちらも酸素イオン伝導性と電子伝導性を兼ね備えた混合伝導体(酸素イオン−電子混合伝導体)であるため、いわゆる三相界面(カソード電極(電子伝導体)と電解質(イオン伝導体)と気相の接する界面)だけでなく、電極表面をも優れた反応場となり得る。このため、比較的低い温度領域(例えば600℃〜800℃)においても電極として高い性能を発揮し得る。また、ペロブスカイト型の酸化物とセリウム酸化物の双方にCe元素が含まれていることで粒子間の接触抵抗が低減され、該材料により構成されたカソードの電子伝導性を向上することができる。さらに、ペロブスカイト型酸化物は、結晶構造中に4価のセリウム(Ce4+)を含んでいるため、酸素欠損の増大により酸素イオン拡散性(酸素イオン伝導性)をより一層向上させることができる。このため、ここで開示される材料は、SOFCのカソード形成用材料として好適に用いることができる。
特に限定するものではないが、上記ペロブスカイト型の酸化物の量は、上記カソード形成用材料100質量%に対して、例えば、50質量%以上95質量%以下とすることができる。また上記セリウム酸化物の量は、上記カソード形成用材料100質量%に対して、例えば、5質量%以上50質量%以下とすることができる。上記の質量比率を満たすコンポジット状態からなる複合材料は、酸素イオン伝導性がより高く、且つ該材料粒子間の抵抗が低く抑えられている。このため、SOFCのカソード形成用材料として電極として更に優れた性能を発揮し得る。
ここで開示される複合材料は、例えば原料から作製してもよいし、購入してもよい。また作製方法に関しても特に制限はなく、従来の手法と同様の方法を用いることができる。例えば、先ず上記ペロブスカイト型の酸化物を作製する。即ち、出発原料たる化合物(「Ln」元素源、「Ae」元素源、「Ce」元素源、「M」元素源)および必要に応じてそれ以外の添加物を、所定の配合比になるよう秤量し、適当な混合機(例えばボールミル)に投入して混合する。この際に用いる材料は、平均粒径が0.1μm〜10μm(好ましくは0.3μm〜3μm、より好ましくは1.5μm〜2.5μm)のものが好適である。また、上記原料の混合は、任意の溶媒中で行う(即ち、湿式で行う)ことが好ましい。これにより該出発材料を均質に混合し得るため、所望の組成を有するペロブスカイト型酸化物を安定して作製することができる。
次に、かかる混合粉末を適当な高温条件下で焼成する。該焼成は、800℃〜1500℃(例えば、1000℃〜1200℃)の温度で凡そ1時間〜10時間とすることが好ましい。そして、上記焼成した混合粉末を適宜、粉砕および/または分級処理する。かかる粉砕処理では、従来用いられる装置のうち一種または二種以上を特に限定なく用いることができる。例えば、ジェットミル、プラネタリーミキサー等の非媒体型分散機や、ボールミル等の媒体型分散機を用いることができる。また、粉砕処理の条件(例えば、粉砕速度や粉砕時間)は、所望の粒径が得られるよう、適宜を調節するとよい。これにより、例えば、平均粒径が凡そ0.1μm〜10μm(典型的には0.1μm〜3μm、好ましくは0.5μm〜2μm、より好ましくは0.5μm〜1.5μm)である、ペロブスカイト型酸化物を得ることができる。
そして、上記得られたペロブスカイト型酸化物と、セリウム酸化物と所定の配合比になるよう秤量し、適当な混合機(例えばボールミル)に投入して混合する。かかる混合粉末を適当な高温条件下で焼成する。該焼成は、1000℃〜1600℃(例えば、1200℃〜1400℃)の温度で凡そ12時間〜48時間とすることが好ましい。そして、上記焼成した混合粉末を適宜、粉砕および/または分級処理することで、目的物たるペロブスカイト型酸化物とセリウム酸化物からなる複合材料を得ることができる。
なお、本明細書において「平均粒径」とは、例えば従来公知のレーザー回折・光散乱法に基づく粒度分布測定により測定した体積基準の粒度分布において、累積50%に相当する粒径D50値(メジアン径ともいう。)を指す。
ここで開示される複合材料の形態は、例えば、上述した粉末状であっても、該粉体と任意の分散溶媒とを含むペースト状(スラリー状、インク状を含む。)であっても、該スラリーを乾燥(もしくは焼成)した固体状であってもよい。
該分散溶媒としては、上記複合材料の構成素材を好適に分散できるもののうち、一種または二種以上を特に限定することなく用いることができる。かかる溶媒は有機系溶媒、無機系溶媒のいずれを用いてもよい。有機系分散溶媒としては、例えば、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、または他の有機溶剤が挙げられる。例えば、テルピネオール、ブチルジグリコールアセテート、イソブチルアルコール等が好適に用いられる。また、無機系分散溶媒としては、水または水を主体とする混合溶媒であることが好ましい。該混合溶媒を構成する水以外の溶媒としては、例えば、水と均一に混合し得る有機溶剤(低級アルコール、低級ケトン等)の一種または二種以上を適宜選択して用いることができる。かかるペーストにおける溶媒の含有率は、特に限定されないが、スラリー全体の凡そ1質量%〜50質量%(典型的には5質量%〜35質量%)が好ましい。
ここで開示される上記ペースト状の複合材料には、必要に応じて、バインダや任意で付加し得る他の成分(例えば、増粘剤や分散剤等の添加剤)を添加することもできる。なお、ペーストに用いられるバインダ、添加剤等は、特に限定されるものではなく、ペースト製造において従来公知のものから適宜選択して用いることができる。該バインダとしては、例えば、セルロースまたはその誘導体が挙げられる。具体的には、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシエチルメチルセルロース、セルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ブチラールおよびこれらの塩が挙げられる。バインダの含有率は特に限定されないが、スラリー全体の2質量%〜20質量%の範囲で含まれることが好ましい。
また、上述したSOFCを好適に製造する方法を提供する。ここで開示される製造方法は、多孔質構造のアノードと、酸素イオン伝導体からなる固体電解質と、多孔質構造のカソードとからなる積層構造を有した固体酸化物形燃料電池を製造する方法である。
具体的な製造方法を、図2を用いて詳細に説明する。かかる製造方法は、アノード10と、該アノード10上に形成された固体電解質20とからなるアノード−固体電解質積層体110を用意すること、上記積層体110の固体電解質側の表面に、ここで開示されるいずれかのカソード形成用材料(典型的には上述したペロブスカイト型の酸化物とセリウム酸化物)を付与すること、上記材料が付与された上記積層体を焼成することによって、上記カソード30を形成すること、を包含する。ここで開示される製造方法では、より簡便に、発電性能に優れたSOFC50を製造することができる。
<アノード−固体電解質積層体110の用意>
ここで「アノード−固体電解質積層体」とは、アノードと固体電解質とが積層された状態を示すものであり、該アノード−固体電解質積層体を用意する方法について特に制限はない。従って、従来知られているSOFCの製造方法における「アノードの作製方法」と「固体電解質の作製方法」を用いることができる。
例えば、まず、図2(a)に示すように、支持基材(支持体)として多孔質構造のアノード10を形成する。具体的には、例えば、上述した8族〜10族の金属元素の材料(例えばニッケル材料)と安定化ジルコニア(例えばYSZ)とを混合し、サーメット材料を得る。次に、該サーメット材料を、バインダ(例えばメタクリル酸エステル系ポリマー)と分散剤等(例えばソルビタントリオレエート)とともに適当な溶媒(例えばキシレン)に分散させ、ペースト状のアノード用材料を調製する。そして、かかるアノード用材料を適当な成形方法(例えばシート成形)で成形し、該成形体を焼成することによって薄板状あるいはシート状のアノード10を形成することができる。上記成形体の焼成処理は、1200℃〜1400℃の温度で1時間〜5時間程度行うとよい。なお、アノード用材料の焼成処理は、後述の固体電解質用材料の焼成処理と同時に行ってもよい。
次に、図2(b)に示すように、上記アノード10上に固体電解質20を形成する。ここでは、上述した固体電解質20の原料(例えばYSZ)をバインダ(例えばメタクリル酸エステル系ポリマー)と分散剤(例えばソルビタントリオレエート)とともに適当な溶媒(例えばキシレン)に分散させて、ペースト状の固体電解質用材料を調製する。次に、調製された固体電解質用材料をアノード10(もしくはアノード用材料の成形体)上に適当な手法(例えば印刷成形)で付与し、固体電解質用材料の成形体を形成する。そして固体電解質用材料を付与した成形体を乾燥させた後に、大気雰囲気下で焼成する。このときの焼成温度は、例えば1000℃〜1500℃(好ましくは1200℃〜1400℃)の範囲内であるとよく、焼成時間は、例えば1時間〜5時間の範囲内であるとよい。この焼成処理によってアノード10の上に固体電解質20が形成され、アノード10と、該アノード10上に形成された固体電解質20からなる、アノード−固体電解質積層体110を得ることができる。
<カソード形成用材料の付与>
そして、図2(c)に示すように、アノード−固体電解質積層体110の固体電解質20側の表面に上述の複合材料を付与する。この際、均質な電極を安定して作製するために、構成材料を1種以上の分散溶媒に分散(もしくは溶解)させ、調製したものを好ましく用いることができる。例えば、先ず、ここで開示される複合材料(粉末状)と、分散溶媒(例えばテルピネオール)と、増粘剤(例えばエチルセルロース)等の添加剤と、を任意の混練手法(例えば、ロールミル、ミキサー等)によって混練し、ペースト状に調製する手法を用いることができる。例えば、かかる混練処理において、上記粉末状の複合材料等を50rpm〜300rpmの攪拌速度で、0.5時間〜1時間混練することによって、粉末状の複合材料が好適に分散したペースト状の複合材料が得られる。
そして任意の手法(例えば印刷成形)を用いて、ペースト状の複合材料を固体電解質20上に付与する。なお、かかる複合材料の付与を行う前に、必要に応じて固体電解質20の表面に、例えば固体電解質や電極の構成成分等で構成されるバッファ層(反応抑止層、中間層等ともいう。)を設けることもできる。
<カソード30の焼成>
次に、該複合材料が付与された積層体を焼成する。焼成の方法等は特に限定されないが、例えば、複合材料が付与された積層体110を、700℃〜900℃(好ましくは750℃〜850℃)で焼成することができる。上記焼成によりカソード30が形成され、アノード10と固体電解質20とカソード30とが積層されたSOFC50を得ることができる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明をかかる具体例に示すものに限定することを意図したものではない。
本実施例では、カソード構成材料の比率が異なる固体酸化物形燃料電池(SOFC)を作製し、その性能を評価した。なお、以下の説明において、「%」は特に断りがない限り質量基準(質量%)である。
<実施例1〜5>
先ず、平均粒径0.6μmのイットリア安定化ジルコニア(YSZ)粉末と、平均粒径2μmの酸化ニッケル(NiO)粉末とを凡そ4:6の割合で秤量し混合して、混合粉末を得た。該混合粉末と、バインダ(メタクリル酸エステル系ポリマー)と、分散剤(ソルビタントリオレエート)とを凡そ100:3:0.5の割合で混合し、溶媒(キシレン)中で混練することにより、ペースト状のアノード用材料を調製した。そして、該アノード用材料をシート成形によって成形し、φ20mm、厚み1mm程度のアノード成形体を作製した。
次に、平均粒径0.6μmのイットリア安定化ジルコニア(YSZ)粉末と、バインダ(エチルセルロース)と、分散剤(ソルビタントリオレエート)とを凡そ100:5:0.5の割合で混合し、溶媒(テルピネオール)中で混練することにより、ペースト状の固体電解質用材料を調製した。該固体電解質用材料を上記アノード用成形体上に印刷成形し、φ20mmの固体電解質成形体を形成した。なお、このときの固体電解質成形体の厚みは凡そ20μmだった。そして、積層した2層からなる上記成形体を乾燥させた後に、1300℃の温度で凡そ3時間焼成することで、アノード−固体電解質積層体を作製した。
カソード形成用材料としては、まず平均粒径2μmの酸化ランタン粉末と、平均粒径2μmの酸化ストロンチウム粉末と、平均粒径2μmのセリウム酸化物粉末と、平均粒径1μmの酸化コバルト粉末を、質量比が25:20:5:50となるよう秤量し、溶媒(ここではイオン交換水を用いた)と共にボールミルに投入して混合し、ペースト状の混合粉末を調製した。次に、かかる混合粉末を大気雰囲気下において1100℃で6時間仮焼成した後に粉砕処理することで、平均粒径1μmのペロブスカイト型酸化物(LSCC;La0.5Sr0.4Ce0.1CoO3−δ)を得た。そして、上記ペロブスカイト型酸化物と、GDC(ここではCe0.1Gd0.92−δを用いた)とを、表1に示す割合になるよう秤量し、ボールミルを用いて混合した。かかる混合粉末を大気雰囲気下において1300℃で24時間焼成し、粉砕および分級処理することで、平均粒径0.8μmの粉末状SOFCカソード形成用材料(実施例1〜5)を得た。
[X線回折測定]
ここで、得られたSOFCカソード形成用材料について、下記の条件でX線回折(XRD:X−Ray Diffraction)測定を行った。典型的な結果として、GDCを10%含む、SOFCカソード形成用材料(実施例3)のXRDチャートを図3に示す。
測定装置:vltrax 18−TTR3−300(株式会社リガク製)
ターゲット:Cu(Kα線)
スリット:発散スリット=1°、受光スリット=0.1mm、散乱スリット=1°
測定温度:室温(25℃)
図3に示すように、2θ=30°付近にセリウム酸化物由来のピークが観察された。このため、LSCCとGDCとは反応せずに混在している状態(コンポジット状態)となっていることが確認された。
そして、上記粉末状のSOFCカソード形成用材料と、バインダ(エチルセルロース)と凡そ100:5の割合で混合し、ロールミルを用いて溶媒(テルピネオール)中で凡そ0.5時間混練し、ペースト状の複合材料を得た。該ペースト状の複合材料を、上記固体電解質層上にスクリーン成形して、φ16mmのカソード用成形体を固体電解質層の上に形成した。なお、このときのカソード成形体の厚みは、凡そ30μmだった。そして、積層した3層からなる上記成形体を、800℃で1時間焼成することによってカソードを形成した。
これによって、アノード、固体電解質、カソードの順に積層したアノード支持型のSOFC(実施例1〜5)を得た。
<比較例1>
上記カソード形成用材料にLSCCのみを用いた(即ち、GDCを混入しなかった)こと以外は、上記<実施例1>と同様の方法でアノード支持型のSOFC(比較例1)を作製した。
<比較例2>
上記カソード形成用材料として、LSC(ここではLa0.6Sr0.4CoO3−δ)を用いた(即ち、結晶構造中にセリウム元素を有していないペロブスカイト型酸化物を用いた)こと以外は、上記<実施例1>と同様の方法でアノード支持型のSOFC(比較例2)を作製した。
[発電試験]
上記作製したSOFC(実施例1〜5、比較例1および2)を試験用セルに設置し、下記の測定条件で発電特性評価を行った。得られた電力密度(W/cm)を図4および表1の該当箇所に比較して示す。
電流密度:0.5A/cm
供給ガス:
(アノード側):水素ガス(供給圧力:常圧、供給量:100ml/min.)
(カソード側):空気(供給圧力:常圧、供給量:500ml/min.)
(パージ用) :窒素ガス
測定温度:700℃
図4に示すように、カソード形成用材料としてLSC(即ち、結晶構造中にセリウム元素を有していないペロブスカイト型酸化物)のみを用いた比較例2で最も低い電力密度を示した。これに対し、カソード形成用材料としてLSCCを用いた比較例1では、比較例2の凡そ1.6倍の電力密度を示した。電力密度が増加した理由としては、ペロブスカイト型の酸化物の結晶構造中にセリウム元素が存在することで酸素欠損が増大し、これによってカソード内の酸素イオン伝導性が向上したことが考えられる。
さらに、カソード形成用材料として、GDCを10%含有させたコンポジット状態からなる複合材料を用いた実施例2では、比較例1の更に1.3倍超(即ち、比較例2の2倍以上)の電力密度を示した。この理由としては、ペロブスカイト型の酸化物(LSCC)とセリウム酸化物(GDC)との双方にセリウム元素を含んでいることで、該酸化物粒子間の接触抵抗が低減され、カソード内の電子伝導性がより一層向上したことが考えられる。
上記の結果より、SOFCのカソード形成用材料として、結晶構造中にセリウム元素を有しているペロブスカイト型酸化物とセリウム酸化物との複合材料を用いることの意義が示された。
また、表1に示すように、GDCを含有させた複合材料を備えたSOFCでは、該GDCの添加量が増加するにつれて電力密度の増大が見られ、GDCの含有割合が30質量%の場合(実施例3)に、最も優れた発電性能を示した。この理由としては、上述の通り、該酸化物粒子間の接触抵抗が減少し、カソード内の電子伝導性が向上したためと考えられる。更にGDCの含有割合を増やしていくと、かかる割合の増加とともに電力密度は徐々に減少した。この理由としては、酸素イオンとの反応性が高いLSCCの含有割合が減少したためと考えられる。
上記の結果より、カソード形成用材料100質量%に対し、GDCを5質量%以上50質量%以下の割合で混在させたカソードを用いることで、より優れた電池性能を有するSOFCを製造し得ることが示された。
本発明の材料によると、中低温(例えば600℃〜800℃)の稼働温度においても優れた電極性能を有するSOFCのカソードを形成することができる。このため、本発明は、高性能な(即ち、高い発電性能を有する)SOFC(もしくは発電システム)の構築に貢献することができる。
10 アノード(燃料極)
20 固体電解質
30 カソード(空気極)
40 接合部
50 SOFC
60 ガス管
110 アノード−固体電解質成形体

Claims (9)

  1. 以下の一般式(1):
    LnAeCe3−δ (1)
    (ここで、Lnはランタノイドから選択される1種または2種以上の元素であり、AeはSr、CaおよびBaからなる群から選択される1種または2種以上の元素であり、MはCo、Mn、Ni、Fe、Ti、Al、Zr、Ga、Mg、Cu、In、Sn、V、Cr、Zn、Ge、ScおよびYからなる群から選択される1種または2種以上の元素であり、a,b,c,dは、0.3≦a≦0.7、0.3≦b≦0.7、0.01≦c≦0.3、1.7≦a+b+c+d≦2.0を満たす実数であり、δは電荷中性条件を満たすように定まる値である。)
    で示されるペロブスカイト型の酸化物と、
    セリウム酸化物と、の両方を含むコンポジット状態からなる、固体酸化物形燃料電池のカソード形成用材料。
  2. 前記一般式(1)のM元素は、Co、FeおよびNiのうち1種または2種以上を含む、請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池のカソード形成用材料。
  3. 前記一般式(1)のcは、0.01≦c≦0.1を満たす実数である、請求項1または2に記載の固体酸化物形燃料電池のカソード形成用材料。
  4. 前記セリウム酸化物が、以下の一般式(2):
    Ce1−y2−δ (2)
    (ただし、yは0≦y<1を満たす実数であり、δは電荷中性条件を満たすように定まる値である。)
    で示され、
    ここで、前記一般式(2)中のXは、Gd、LaおよびSmのうち1種または2種以上の元素である、請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池のカソード形成用材料。
  5. 前記セリウム酸化物の量は、前記カソード形成用材料100質量%に対し5質量%以上50質量%以下である、請求項1から4のいずれか一項に記載の固体酸化物形燃料電池のカソード形成用材料。
  6. 少なくとも1種の分散溶媒を含み、ペースト状に調製されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の固体酸化物形燃料電池のカソード形成用材料。
  7. アノードと固体電解質とカソードとを備えた固体酸化物形燃料電池であって、
    前記カソードは、請求項1から6のいずれか一項に記載の材料で形成されている、固体酸化物形燃料電池。
  8. 作動温度が600℃以上800℃以下で用いられる、請求項7に記載の固体酸化物形燃料電池。
  9. アノードと固体電解質とカソードとを備えた固体酸化物形燃料電池の製造方法であって、
    前記アノードと、前記アノード上に形成された固体電解質とからなるアノード−固体電解質積層体を用意すること、
    前記積層体の固体電解質側の表面に請求項1から6のいずれか一項に記載の材料を付与すること、
    前記材料が付与された前記積層体を焼成することによって、前記カソードを形成すること、
    を包含する、固体酸化物形燃料電池の製造方法。

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