JP6000927B2 - 導電性接合材 - Google Patents
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Description
しかしながら、特許文献1および2の導電性接合材料は、いずれも導電性材料としてAgを含んでいることから比較的高価であった。また、SOFCシステムは、システムの起動から運転、停止との操作に伴い、常温から高温へ、高温から常温へと温度の上下を繰り返して使用される。そして、その作動温度は650℃以上(典型的には、700℃〜900℃程度)であり、かつ、接合部の環境は水素または酸素雰囲気という過酷なものとなり得る。そのため、特許文献1および2の導電性接合材料に含まれるAgにはマイグレーションに基づく問題が発生することが懸念されている。すなわち、Agは、高温環境下でのSOFCの単セルの電位勾配によりマイグレーションを生じ、SOFCの性能を損ねるおそれがあった。例えば、導電性接合部材に含まれるAgが被接合材としての絶縁部材(例えば、封止接合されたガス管の接続先であるSOFCの絶縁部材等)に拡散することで、かかる部位の絶縁性を喪失させるおそれがあった。また、SOFCシステムの運転においてAgが固体電解質/電極の界面近傍にまで拡散して、固体電解質と空気極との間に電流リーク層を形成してセル性能を低下させるおそれがあった。これらの問題に対処するために、Agに代えて、上記の環境に対する耐食性を有し、かつ、マイグレーション性が抑制されたAg−Pd合金やPt等からなる導電性材料を用いることも検討されているが、これらの材料はいずれも高価な材料であり、工業用途としてより安価な材料による代替品の提供が求められていた。
(Ln4−aM1 1+a)(Cu5−bM2 b)O13+δ
ここで、式中、Lnはランタノイドから選択される1種または2種以上の元素であり、M1はSr、CaおよびBaからなる群から選択される1種または2種以上の元素であり、M2はCo、Mn、Ni、Feからなる群から選択される1種または2種以上の元素であり、a,bは−0.3≦a≦0.3、0≦b<2を満たす実数であり、δは電荷中性条件を満たすように定まる値である。
また、(2)上記ガラスフリットは、軟化点が600℃以上800℃以下の範囲である。
そして上記のガラスフリットは、ここに開示される導電性接合材における接着材料(接着成分)として機能し得る。すなわち、上記の通りの軟化点を有することで、600℃以上の温度において軟化し、かかる導電性接合材に粘着ないしは密着性を付与する。
かかる構成によると、マイグレーションによる問題が解消されていて、高温での水素または酸素雰囲気に対する耐性を有し、十分な接着性を備える導電性接合材が、比較的安価なものとして提供される。
SOFCの構成において、例えば、空気極の構成材料としては、一般的に(LaSr)MnO3や(LaSr)CoO3等に代表される導電性酸化物が考慮される。これらの導電性酸化物の25℃から500℃程度の温度範囲の熱膨張係数は、例えば、15×10−6K−1以上(例えば、15.0×10−6K−1超過)である。また、SOFCの構成において、例えば、インターコネクタ等の金属製構成材料としては、一般的に、Fe−Crフェライト系合金が考慮される。この金属製構成材料の25℃から500℃程度の温度範囲の熱膨張係数は、例えば、11×10−6K−1以上12×10−6K−1以下程度である。これらの材料を被接合材料とし、両材料間を接合する導電性接合材料としては、接合後に形成される接合部の熱膨張係数が両方の被接合材料の熱膨張係数の間となる、11×10−6K−1以上15×10−6K−1以下であるのが適切であり得る。これにより、例えば、SOFCの作動温度における被接合材料の熱膨張および収縮差に伴い発生する応力を緩和し、良好な接合部を形成し得る導電性接合材料が実現される。
かかる構成によると、良好な導電性と高い接着性とが両立され、両特性がバランス良く備えられた導電性接合材が提供される。
かかる構成によると、ガラスフリットのガラスマトリックス中には少なくともリューサイトからなる微細結晶が析出しており、このリューサイト結晶は結晶化温度以上の熱を加えない限りは維持される。このため、例えば、かかる導電性接合部材用いての接合時や、接合後の接合部がSOFCの作動温度のような高温環境にさらされた場合においても、ガラスマトリックスが軟化はしても流出するのを防止し、良好な接合性を示す接合部を形成し、維持することができる。
SiO2 60〜75質量%;
Al2O3 5〜15質量%;
Na2O 3〜15質量%;
K2O 5〜15質量%;
MgO 0〜 3質量%;
CaO 0〜 3質量%;
B2O3 0〜 3質量%;
かかる組成とすることにより、接合部の上記温度域における物理的安定性を向上させることができ、また、リューサイト結晶を好適に析出させることが可能ともされる。
かかる構成によると、被接合材の接合に際し、被接合部にかかる導電性接合材を好適に供給することが可能となる。例えば、印刷技術等を利用して導電性接合材を被接合部に供給することが可能となる。
かかる構成によると、上記の範囲の熱膨張係数を備える酸化物部材と金属部材との接合を特に良好に行うことができる。なお、本明細書において、酸化物部材の熱膨張係数については、25℃から1000℃までの範囲の平均線膨張係数を意味する。かかる値は、例えば、JIS R1618:2002の測定方法に準じて測定することができる。また、金属部材の熱膨張係数については、25℃から500℃までの範囲の平均線膨張係数を意味する。かかる値は、例えば、JIS Z 2285:2003の測定方法に準じて測定することができる。
かかる温度域での接合を可能とするということは、例えば、SOFC等の作動温度域等の高温領域での接合を可能とすることを意味し得る。つまり、SOFCにおける空気極や燃料極等の酸化物部材と、集電体(集電板)やインターコネクタ(セパレータなどと呼ばれる金属部材をも包含する意味である)等の金属部材等のとの接合を良好に行うことができる。特に、空気極とインターコネクタとの過酷な環境での接合を好適に実施することができる。これにより、上記高温領域での接合を特に良好に実現可能な導電性接合材が提供される。
かかる構成によると、長期に亘ってSOFCの作動温度における上記空気極とインターコネクタやガス管等の金属部材との接合部の接合が良好に保たれ得るとともに、マイグレーション等によるセルの発電性能の低下の心配が解消された、SOFCシステムが実現される。かかるSOFCにおける上記接合部は、比較的安価な導電性接合材料を用いて構成することができる。
ここに開示される導電性接合材は、ペロブスカイト型酸化物粉末とガラスフリットとを含んでいる。ペロブスカイト型酸化物粉末は、この導電性接合材において、主たる導電性を担う導電性材料として機能している。また、ガラスフリットは、この導電性接合材において、主たる接着剤として機能している。これらの主要な構成材料を含む導電性接合材の構成について以下に説明する。
ここに開示される導電性接合材に含まれるペロブスカイト型酸化物は、下記の一般式で示される組成を有する。
(Ln4−aM1 1+a)(Cu5−bM2 b)O13+δ
すなわち、かかるペロブスカイト型酸化物は、本質的には3ABO3・A2B2O5構造を有しており、AサイトのLn元素の一部がM1で、BサイトのCu元素の一部がM2で置換された構成と理解することができる。すなわち、かかるペロブスカイト型酸化物は、より限定的には、ペロブスカイト型複合銅酸化物であるといえる。
ここで、式中、Lnは原子番号57〜71のランタノイド元素である。かかるLnとしては、ランタン(Ln)からルテチウム(Lu)までの15種の元素を考慮することができる。かかるランタノイドとしては、例えば、具体的には、ランタン(La),セリウム(Ce),プラセオジム(Pr),ネオジム(Nd),サマリウム(Sm)等の比較的イオン半径の大きな元素を好ましく用いることができ、中でも安定した結晶構造を構成し得るLaを好ましく用いることができる。ランタノイドとしてLa以外の元素を含む場合には、かかるLaの割合が高いことが好ましい。
M2は、上記の通り銅(Cu)と置換され得る元素であって、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)であり得る。これらの元素はいずれか1種が単独で含まれていても良いし、2種以上が組み合わされて含まれていても良い。これらの元素(いわゆる遷移金属元素)を含む場合、銅(Cu)と共にかかる遷移金属イオンのd電子が被局在化しているために高い電気伝導性を示し得る。
M2の置換可能な量を示すbは、0以上2未満の範囲とすることができ、好ましくは0.1以上1.5以下、例えば、0.5以上1.0以下であるのがより好ましい。
このペロブスカイト型酸化物粉末の形状については特に限定されない。典型的には略球状であるが、いわゆる真球状のものに限られない。球状以外には、例えばフレーク形状や不規則形状のものであっても良い。また、ペロブスカイト型酸化物粉末の粒径についても特に制限されず、当該粉末を構成する粒子の平均粒径が20μm以下であるものが適当であり、好ましくは0.01μm以上10μmであり、より好ましくは0.3μm以上5μm以下であり、例えば2μm±1μmである。なお、ここでいう平均粒径とは、レーザ散乱・回折法に基づく粒度分布測定装置により測定された粒度分布における積算値50%での粒径(50%体積平均粒子径;以下、D50と略記する場合もある。)を意味する。
ガラスフリットとしては、本発明の導電性接合材の目的を損ねない範囲において、軟化点が600℃以上800℃以下の範囲にあるものを特に制限なく用いることができる。換言すると、例えば、この導電性接合材をSOFC(SOFCシステム)の作動温度範囲(典型的には650℃以上、例えば700〜900℃)で使用する場合、かかる作動温度域にて軟化はするが溶融し難い組成のガラスフリットを含むことができる。かかるガラスの軟化点は、例えば、ガラスフリットを構成するガラス組成を調整することで制御することができる。具体的には、ガラスの融点(軟化点)に影響を及ぼし得る成分の添加または増減により、所望の融点(軟化点)を有するガラス組成を決定することができる。例えば、一例として、以下に示すような組成(酸化物換算組成)のガラスを用いてガラスフリットを構成するのが好適である。
Al2O3 5〜15質量%;
Na2O 3〜15質量%;
K2O 5〜15質量%;
MgO 0〜 3質量%;
CaO 0〜 3質量%;(好ましくは0.1〜3質量%);
B2O3 0〜 3質量%;
特に限定されるものではないが、上記の組成において、アルカリ金属成分であるNa2OおよびK2Oは、その合計量を10〜25質量%としたり、アルカリ土類金属成分であるMgOおよびCaOのうちの少なくともいずれかまたは両方を1〜5質量%とするのも好ましい態様である。かかる組成のガラスによると、被接合材に発生する熱応力を緩和する緩衝作用があり、接合性(シール性であり得る)に優れた接合部を形成することができるために好ましい。
ここに開示される導電性接合材において、以上のペロブスカイト型酸化物粉末とガラスフリットとの配合割合は、本発明の目的を実現する限りにおいて特に限定されないが、例えば、当該導電性接合材をガラスフリットの軟化点以上の温度で焼成して得られる焼成物(すなわち、接合部であり得る)についての25℃から500℃までの熱膨張係数が11×10−6K−1以上15×10−6K−1以下となるように調整するのが好ましい。なお、ペロブスカイト型酸化物粉末の単独での熱膨張係数は、当該ペロブスカイト型酸化物の組成により異なってくる。また、ガラスフリットの単独での熱膨張係数も、当該ガラスフリットの組成により異なってくる。そのため、両者の熱膨張係数を勘案して、焼成後に得られる接合部の熱膨張係数が上記範囲となるよう配合を制御する。接合部の熱膨張係数が上記範囲よりも小さすぎる場合には、例えば、SOFCの空気極等を構成するのに用いられ、高いイオン導電性を示すセラミック部材の熱膨張係数との差が大きすぎ、かかる空気極の温度変化に伴う変形を吸収できないために好ましくない。例えば、被接合材を破損させるおそれがあるために好ましくない。一方で、接合部の熱膨張係数が上記範囲よりも多きすぎる場合には、例えば、SOFCのインターコネクタ等を構成する耐食性に優れた金属部材の熱膨張係数との差が大きすぎ、かかる金属部材との良好な接合を実現できないために好ましくない。
例えば、このような割合でペロブスカイト型酸化物粉末とガラスフリットとを含む接合材によると、かかる導電性接合材により形成される接合部の熱膨張係数を良好に調整することができるとともに、例えば、高温でも流れ落ちることなく、金属部材と酸化物部材とを好適に接合できる接合性を備え、さらには、十分な電気伝導性を備える接合部を形成することができる。
上記のような導電性接合材の調製方法に関して特に制限はなく、公知の導電性接合材の製造方法に準じて調製することができる。
例えば、ペロブスカイト型酸化物粉末は、公知の各種の手法で製造したものを特に制限なく用いることができる。ペロブスカイト型酸化物粉末の製造方法としては、例えば、乾式法や、共沈法等が代表的なものとして知られている。乾式法とは、ペロブスカイト型酸化物の構成成分の化合物を化学量論組成で乾式混合し、仮焼する方法である。かかる構成成分の化合物は、例えば、上記の一般式で示されるLn、X1、CuおよびX2の各元素の化合物(例えば、酸化物、炭酸塩、硝酸塩等)であってもよいし、複数の元素の化合物であってもよい。共沈法は、構成成分を化学量論比で全て含む混合溶液を作り、これを沈澱形成液に添加して共沈させ、この共沈物を乾燥、仮焼する方法である。共沈法において用いる原料化合物としては、上記の一般式で示されるLn、X1、CuおよびX2の各元素の酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、酢酸塩、蟻酸塩、蓚酸塩等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
なお、ここに開示される導電性接合材は、ペロブスカイト型酸化物粉末とガラスフリットとを粉末状のまま、あるいは、かかる粉末を所定の形態に圧縮成形する等してペレット状として用いることもできる。
上記のようにして準備した粉末状、ペレット状またはペースト状の導電性接合材は、従来のこの種の導電性接合材と同様に用いることができる。すなわち、まず、接合対象である被接合部材を用意する。ここで被接合部材としては、例えば、少なくとも一の酸化物部材と少なくとも一の金属部材とを用意することができる。そして、一方の被接合部材の接合部位に用意した導電性接合材を供給(配置または塗布)し、かかる接合部位に他方の被接合部材の接合部位を所定の接合形態で当接させる。次いで、この複合体を乾燥後、導電性接合材の含まれるガラスフリットの軟化点以上の温度域(典型的には、650℃以上、例えば700℃〜900℃)で焼成する。これによって、被接合部材間に導電性および接合性に優れた接合部を形成することができる。
なお、上記の導電性接合材の接合対象たる被接合部材としては、導電性接合材と熱膨張係数が比較的近い(例えば、25℃から500℃までの熱膨張係数が、10×10−6K−1以上17×10−6K−1以下)ものであれば特に制限はされない。しかしながら、高温での接合性が良好であるとの上記導電性接合材の特性を活かし、より好適な被接合部材の組み合わせの一例として、上記のとおり、被接合部材として、各種の酸化物部材および金属部材を好ましく考慮することができる。かかる酸化物部材および金属部材については、とりわけ以下の組み合わせを好適な例として挙げることができる。
かかる実施態様における固体酸化物形燃料電池(SOFC)システム1は、図1に示される、アノード支持型の円筒型SOFCの単セル10を備えている。この単セル10は、円筒型で多孔質構造の燃料極(アノード)26の外表面に、順に、酸化物イオン伝導体からなる緻密な層状の固体電解質22、反応抑止層25、多孔質構造の空気極(カソード)24が形成されることで構成されている。SOFCの使用時には、アノード26を通じてアノード26側の固体電解質22表面に燃料ガス(典型的には水素(H2))が、カソード24を通じてカソード24側の固体電解質22表面に酸素(O2)含有ガス(典型的には空気)が、それぞれ供給される。固体電解質22としては、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)やガドリニアドープセリア(GDC)、ランタンガレード(LaGaO3)からなるものが例示される。空気極24としては、(LaSr)MnO3、(LaCa)MnO3に代表されるランタンマンガネート(LaMnO3)系や、LaCoO3、(LaSr)CoO3、(LaSr)(CoFe)O3等に代表されるランタンコバルトネート系、さらには、(LaSr)(TiFe)O3等に代表されるランタンチタネート系のペロブスカイト型酸化物からなるものが例示される。燃料極26としては、ニッケル(Ni)とYSZのサーメットからなるものが例示される。
かかる実施態様における固体酸化物形燃料電池(SOFC)システム1は、SOFCのスタックセル100を備えている。図2に、スタックセル100の一形態の分解斜視図を模式的に示す。かかるスタックセル100は、SOFC(単セル)10A,10Bが、金属製のインターコネクタ30を介して複数層積み重なったスタックとして構成されている。単セル10A,10Bは、層状の固体電解質22の両面が、それぞれ層状の燃料極(アノード)24と空気極(カソード)26とで挟まれたサンドイッチ構造を備えている。図面中央に配されるインターコネクタ30Aは、その両面を二つの単セル10A,10Bで挟まれており、一方のセル対向面32がセル10Aの空気極24と対向(隣接)し、他方のセル対向面34がセル10Bの燃料極26と対向(隣接)している。かかるインターコネクタ30Aのセル対向面32,34と、それぞれ対応する単セル10A,10B側の空気極24あるいは燃料極26の対向面との間には、ここに開示される接合材を付与してなる封止部(図示せず)が形成されている。また、セル対向面32には複数の溝が形成されており、供給された酸素含有ガス(典型的には空気)が流れる空気流路33を構成している。同様に、反対側のセル対向面34にも複数の溝が形成されており、供給された燃料ガス(典型的にはH2ガス)が流れるための燃料ガス流路35を構成している。かかる形態のインターコネクタ30では、典型的には空気流路33と燃料ガス流路35とが互いに直交するように形成されている。
なお、以上のSOFCシステムの製造方法は、従来公知の製造方法に準じればよく特別な処理を必要としないため、詳細な説明は省略する。
ここでは、下記表1に示したように、ガラスフリットの軟化点と、導電性材料の組成とを相互に異ならせて、ペースト状の導電性接合材を調製した。本実施形態におけるペースト状の導電性接合材の配合は、導電性粉末(平均粒径1.0μm)を60〜90質量%、ガラスフリットを1〜30質量%、バインダとしてのエチルセルロースと有機溶剤としてのテルピネオールとからなるビヒクルを5〜10質量%、粘度調整のためのテルピネオールを2〜8質量%の割合とした。これらの材料は秤量した後、撹拌機等で混合し、例えば、三本ロールミルで分散処理することでペースト状に調製することができる。
そして、かかる導電性接合材の接合特性について評価した。すなわち、導電性接合材を基板上に塗布して焼成することで得られる接合材焼成物と基板(LSCF基板およびSUS430基板)との接合性および当該焼成物の耐マイグレーション性の評価を行った。その結果を表1に示した。
LSC :La0.6Sr0.4CoO3
LBC :(La4.0Ba1.0)Cu5O13
LBCC:(La4.0Ba1.0)(Cu4.0Co1.0)O13
LBCF:(La4.0Ba1.0)(Cu4.0Fe1.0)O13
LBCM:(La4.0Ba1.0)(Cu4.0Mn1.0)O13
LBCN:(La4.0Ba1.0)(Cu4.0Ni1.0)O13
SiO2 60〜75質量%;
Al2O3 5〜15質量%;
Na2O 3〜15質量%;
K2O 5〜15質量%;
MgO 0〜 3質量%;
CaO 0〜 3質量%;
B2O3 0〜 3質量%;
[ガラスフリット組成2]
SiO2 60〜75質量%;
Al2O3 5〜15質量%;
Na2OおよびK2O 10〜25質量%;
MgOおよび/またはCaO 1〜 5質量%;
B2O3 0〜 3質量%;
SOFCの代表的な空気極材料であるLSCFを基板として用い、当該LSCF基板に対する導電性接合材の接合性を評価した。具体的には、LSCF基板上に導電性接合材を50μmの厚みで塗布し、焼成炉で700〜900℃の温度範囲で焼き付けた後、室温にて接合材の焼成物と基板との接合性を評価した。なお、表に示した評価記号は、以下の内容を意味する。
◎:実用に十分な接着性があると評価できる1MPaのせん断応力を焼成物に加えたときに、焼成物に変化なし。
○:目視および軽い触診で接着が確認できるものの、上記1MPaのせん断応力を焼成物に加えたときに焼成物が基板から剥離する。
×:焼成物に目視でクラックが確認でき、目視ないしは軽い触診で焼成物が基板から剥離する。
SOFCの代表的なインターコネクタ用材料と類似の組成を有するSUS430(熱膨張係数:11×10−6/K〜12×10−6/K程度)を基板として用い、当該SUS430基板にLSCFを接合したときの接合性を評価した。具体的には、SUS430基板上に導電性接合材を50μmの厚みで塗布し、この接合材を介して空気極材料であるLSCFからなるペレット(直径20mm、厚み2mmの円盤状)をSUS430基板上に載置し、SUS430基板−導電性接合材−LSCFペレットの複合体を用意した。その後、この複合体を、700〜900℃の温度範囲で焼成することで、導電性接合材によりSUS430基板とLSCFペレットとが接合された接合体を得た。焼成後、室温にてかかる接合体の接合性を接合強度試験機(デイジ・ジャパン(株)製、万能型ボンドテスター4000)を用い、ダイシェア方式にて評価した。すなわち、接合体のSUS430基板を試験機に固定し、シェアツールによりLSCFペレットの接合面に対して水平方向に1MPaのせん断力を加え、接合部が破断するかどうかを調べた。かかる試験は、米国MIL−STD−883
集積回路試験方法 Mtd.2004.7 に準じて実施することができる。なお、表に示した評価記号は、LSCFとの接合性試験における評価記号と同じ内容を意味する。
導電性接合材を焼成して形成される接合部(焼成物)における耐マイグレーション性を評価した。すなわち、導電性接合材を絶縁基板(Al2O3またはCeO2)上に50μmの厚みで塗布し、700〜900℃の焼成炉で焼き付けることで、接合材焼成物を得た。この接合材焼成物に対し、700℃の空気中で50Vの電圧を印加したときの接合材焼成物の電気抵抗を測定し、5分間以内に導通が取れるかどうか(すなわち、5分間以内に接合部が短絡するかどうか)で耐マイグレーション性を評価した。なお、表に示した評価記号は、以下の内容を意味する。
×:接合部の導通が取れるまでの時間が5分間以内であり、接合部でイオンが移動しやすい。
○:5分間を超えて接合部に導通が確認できず、接合部でイオンの移動は抑制されている。
導電性接合材を焼成して形成される接合部(焼成物)の導電性を評価した。すなわち、調製した導電性接合材をアルミナ基板上に50μmの厚みで塗布し、700〜900℃の焼成炉で焼き付けることで、接合材焼成物を形成した。この接合材焼成物について、700℃における電気伝導率を4端子法にて測定した。
導電性接合材を焼成して形成される接合部(焼成物)の熱膨張係数を測定した。熱膨張係数は、熱機械分析装置(株式会社リガク製、TMA8310)を用い、大気中、室温(25℃)〜500℃の温度範囲にて示差膨張方式にて測定した平均線膨張率から求めた値である。かかる熱膨張係数の測定は、JIS R 1618:2002のファインセラミックスの熱機械分析による熱膨張の測定方法に準じて実施した。
表1に示されるように、導電性接合材に添加する導電性材料をAgとした場合には、LSCF基板との接合性およびSUS430基板との接合性は共に良好である。しかしながら、耐マイグレーション性については乏しく、電圧が存在する700℃の高温環境では5分間という短時間で基板を短絡させてしまい、Agが絶縁基板中に拡散して基板の絶縁性を喪失させることが確認された。したがって、例えば、SOFCのセル構成において、このAgが空気極を通過して固体電解質/空気極の界面にまで移動すると、固体電解質の絶縁性を喪失させる可能性が生じることが懸念される。
下記表3に示したように、導電性材料に対するガラスフリットの割合を変化させて、その他の条件は上記実施形態1と同様にして、ペースト状の導電性接合材を調製した。すなわち、導電性材料として銀粉末(Ag)と6通りの組成のペロブスカイト型複合酸化物を用い、ガラスフリットの配合量を、導電性材料とガラスフリットとの合計を100質量%としたとき、0〜50質量%の範囲で変化させて、導電性接合材を作製した。なお、表3中のペロブスカイト型酸化物からなる導電性材料については、その一般組成を上記実施形態1で示したのと同じ略号で示している。また、ガラスフリットとしては、上記実施形態1に示した組成範囲であってガラス軟化点が700℃のものを用いた。そしてかかる導電性接合材を基板上に塗布して焼成することで得られる接合材焼成物の電気伝導率、当該焼成物のCTE、当該焼成物と基板(LSCF基板およびSUS430基板)との接合性および当該焼成物の耐マイグレーション性の評価を行った。その結果を表3に示した。なお、表3の「評価」の欄は各物性を総合的に評価した結果を示し、各記号について、「×」は、この種の導電性接合材として適していないことを、「○」は適していることを、「◎」は特に適していることを示している。
まず、導電性材料としてAgを用いた導電性接合材(No.11,18,25,32,39,46,53,60)については、かかる導電性接合材から形成される接合部の電気伝導率は高い値を示し、また、熱膨張係数は高いものの基板との接合性については概ね良好な結果が得られている。しかしながら、ガラスフリットの配合量に関わらず、700〜900℃での接合により接合部から基材へのAgのマイグレーションが確認され、高温で使用される接合材としては耐マイグレーション特性には問題があることが確認された。したがって、導電性材料としてAgを用いた導電性接合材は、絶縁性材料を被接合材として高温で接合する用途には適さないことがわかる。
また、導電性材料としてLSCを用いた導電性接合材(No.12,19,26,33,40,47,54,61)については、ガラスフリットの配合量が増えるにつれて接合性が徐々に高まってゆくことがわかるものの、例えば、SUS430との接合性の評価に関しては、ガラスフリットを50質量%以上配合しないと良好な接合が実現できないことが確認された。これは、以下の理由によるものと考えられる。すなわち、高温においてLSCは結晶構造が不安定であり、さらには、熱膨張係数が高い。したがって、かかる導電性接合材から形成される接合部についても高温では安定性が低く、熱膨張係数が比較的大きくなる。そのため、ガラスフリットの配合量が50質量%に満たないと、温度変化により被接合材であるLSCFとSUS430との間に発生する応力等に対し、当該接合部が十分に適応できないものと考えられる。
これに対して、ガラスフリットを僅か1質量%含むNo.20〜24の導電性接合材については、両基板との良好な接合を実現できることが確認できた。かかる導電性接合材の基板との接合性については、結着剤として作用するガラスフリットの配合量が増えるにしたがって高まることが確認でき、例えば、ガラスフリットの配合量が10質量%以上の場合に、十分強固な接合が実現できることがわかった。ただし、絶縁材料であるガラスフリットの配合量が増大するにつれて、接合部の電気伝導率も低下してゆく傾向が見られる。例えば、BサイトのCuを置換していないLBCや、特に、BサイトのCuをMnに置換したLBCM等にその傾向が強くみられる。ガラスフリットの配合量は、ペロブスカイト型複合銅酸化物の組成にもよるものの、およそ1質量%以上50質量%以下とするのが好ましく、より好ましくはおよそ5質量%以上40質量%以下であり、さらにはおよそ10質量%以上30質量%以下、例えばおよそ10質量%以上20質量%以下とするのが好ましいことが解る。
10,10A,10B 単セル
20 接合部
22 固体電解質
24 空気極(カソード)
25 反応抑止層
26 燃料極(アノード)
30,30A,30B インターコネクタ
32 ,34 セル対向面
33 空気流路
35 燃料ガス流路
70 ガス管
100 スタックセル
Claims (11)
- ペロブスカイト型酸化物粉末と、ガラスフリットと、を含み、
(1)前記ペロブスカイト型酸化物は、下記一般式:
(Ln4−aM1 1+a)(Cu5−bM2 b)O13+δ
(式中、Lnはランタノイドから選択される1種または2種以上の元素であり、M1はSr、CaおよびBaからなる群から選択される1種または2種以上の元素であり、M2はCo、Mn、Ni、Feからなる群から選択される1種または2種以上の元素であり、a,bは−0.3≦a≦0.3、0≦b<2を満たす実数であり、δは電荷中性条件を満たすように定まる値である)
で示され、
(2)前記ガラスフリットは、軟化点が600℃以上800℃以下の範囲である、導電性接合材。 - 前記ガラスフリットの軟化点以上の温度で焼成した焼成物の状態での25℃から500℃までの熱膨張係数が、11×10−6K−1以上15×10−6K−1以下である、請求項1に記載の導電性接合材。
- 前記ガラスフリットは、前記ペロブスカイト型酸化物粉末と前記ガラスフリットとの合計を100質量%としたとき、0.5質量%以上50質量%以下の割合で含まれている、請求項1または2に記載の導電性接合材。
- 前記ガラスフリットは、ガラスマトリックス中に少なくともリューサイト結晶が析出している、請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電性接合材。
- 前記リューサイト結晶は、ガラスフリットの全体を100質量%としたとき、1質量%以上30質量%以下の割合で含まれている、請求項4に記載の導電性接合材。
- 前記ガラスフリットは、酸化物換算の質量比で以下の組成:
SiO2 60〜75質量%;
Al2O3 5〜15質量%;
Na2O 3〜15質量%;
K2O 5〜15質量%;
MgO 0〜 3質量%;
CaO 0〜 3質量%;
B2O3 0〜 3質量%;
から実質的に構成されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の導電性接合材。 - 前記ペロブスカイト型酸化物粉末と、前記ガラスフリットとが、有機媒体中に分散されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の導電性接合材。
- 少なくとも一の酸化物部材と一の金属部材とを接合するために用いられ、
前記一の酸化物部材は、25℃から1000℃までの熱膨張係数が15×10−6K−1以上20×10−6K−1以下の酸化物材料により構成され、
前記一の金属部材は、25℃から500℃までの熱膨張係数が10×10−6K−1以上12×10−6K−1以下の金属材料により構成されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の導電性接合材。 - 前記一の金属部材と前記一の酸化物部材とを700℃〜900℃で接合するように構成されている、請求項8に記載の導電性接合材。
- 前記一の酸化物部材は固体酸化物形燃料電池の空気極であり、前記一の金属部材は前記固体酸化物形燃料電池のインターコネクタである、請求項8または9に記載の導電性接合材。
- 固体電解質の一方の表面に燃料極を、他方の表面に空気極を備えた固体酸化物形燃料電池セルと、
前記空気極に接合された金属部材と、
を備える固体酸化物形燃料電池システムであって、
前記空気極と前記金属部材との接合部分には、請求項1〜10のいずれか1項に記載の導電性接合材が焼成されてなる接合部が備えられている、固体酸化物形燃料電池システム。
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