JP7048247B2 - Sofcの空気極用接合部材とこれに用いる導電性接合材料 - Google Patents
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Description
なお、本明細書において、粉体についての平均粒子径は、レーザー回折・光散乱法で測定した体積基準の粒度分布における、累積50%に相当する粒子径を意味する。
図1は、一実施形態に係るSOFCスタック1を模式的に示す分解斜視図である。ここに開示される技術により提供されるSOFCスタック1は、複数のSOFCの単セル10A、10Bと、複数の金属製のインターコネクタ50、50Aとを備えている。SOFCスタック1は、SOFCの単セル10A、10Bが、金属製インターコネクタ50、50Aを介して積み重ねられたスタック構造を有する。SOFCスタック1は、公知の製造方法に準じて製造することができる。
解質層30の一方の面に空気極(カソード)20を、他方の面に燃料極(アノード)40を備えている。
金属製インターコネクタ50Aは、セル対向面52が空気極20に対向するように、単セル10Aとスタックされる。金属製インターコネクタ50Aは、セル対向面54が燃料極40に対向するように、単セル10Bとスタックされる。金属製インターコネクタ50、50Aの空気極20に対向する側のセル対向面52には、複数の溝部が形成されており、酸素含有ガスが流れるための酸素含有ガス流路53を構成している。酸素含有ガス流路53は、図示しない酸素含有ガスの供給源に接続されている。また、金属製インターコネクタ50、50Aの燃料極40に対向する側のセル対向面54には、複数の溝部が形成されて、燃料ガスが流れるための燃料ガス流路55を構成している。燃料ガス流路55は、図示しない燃料ガスの供給源に接続されている。金属製インターコネクタ50、50Aと単セル10A、10Bとの間は、導電性接合部材によって気密に接合される。図1においては、金属製インターコネクタ50Aと単セル10Aの空気極20との間を空気極用接合部材60で接続する様子を示している。具体的には図示しないが、空気極用接合部材60は、例えば、金属製インターコネクタ50と単セル10Bの空気極20との間も同様に気密に接合することができる。
ここで、SOFCスタック1に用いられる金属製インターコネクタ50、50Aは、高温の運転温度域における電子導電性、耐熱性、および、固体電解質層30に近いCTEが求められる。かかる観点から、金属製インターコネクタ50、50Aは、従来から一般的に、フェライト系ステンレス鋼によって構成されている。フェライト系ステンレス鋼は、オーステナイト系ステンレス鋼に比べて、相対的に電気抵抗が低く、熱膨張性が小さい。フェライト系ステンレス鋼のCTEは、概ね7~12×10-6/Kである。かかるフェライト系ステンレス鋼は、SUS403に代表される、Crを約12%以上含有する鉄-クロム系合金(Fe-Cr合金)である。この合金材料は、良好な熱伝導度と機械的強度をもつため、セル内の温度勾配を緩和する働きも期待できる。しかしながら、金属製インターコネクタ50、50Aは、化学的安定性に問題があることが指摘されている。つまり、金属製インターコネクタ50、50Aを用いたSOFCスタック1は、運転温度においてクロム蒸気を発生し得るため、空気極20のクロム被毒の問題が切り離せない。例えば、金属製インターコネクタ50、50Aの表面に形成されるCr2O3皮膜と空気極20との反応により生成されるSrCrO4とが、SOFCの性能劣化の原因であると考えられている。
ここに開示される空気極用接合部材60は、金属製インターコネクタ50、50Aに由来するCrを補足することで、空気極20のCr被毒を好適に抑制することができる。すなわち、ここに開示する空気極用接合部材60は、基本的な構成として、一般式:ABO3で表されるペロブスカイト型結晶構造を有する第1酸化物相と第2酸化物相とを含んでいる。
第1酸化物相について、上記一般式中、Aは、ペロブスカイト型結晶構造におけるAサイトを占める元素であって、ランタン(La)と第1クロム補足元素とを含む限り、その割合やその他の元素の含有については制限されない。第1クロム補足元素とは、ストロンチウム(Sr)やバリウム(Ba)である。第1酸化物相は、第1クロム補足元素の少なくとも1つを含む。これらSrとBaは、SOFCの運転環境においてやや安定性が低く、Crが存在する場合にはCrと容易に反応して絶縁性の化合物(例えば、SrCrO4)を形成する元素である。また、これらSrとBaは、第1酸化物相のCTEを低減する作用も有する。Laと第1クロム補足元素以外のAサイトを占める元素としては、原子番号57のランタン(Ln)から原子番号71のルテチウム(Lu)までのランタノイド元素(Ln)のいずれかであることが好ましい。ランタノイド元素としては、中でも、例えばセリウム(Ce),プラセオジム(Pr),ネオジム(Nd),プロメチウム(Pm),サマリウム(Sm),ユウロピウム(Eu),ガドリニウム(Gd)等の比較的イオン半径の大きな元素であることが好ましい。
第2酸化物相について、上記一般式中、Aは、ペロブスカイト型結晶構造におけるAサイトを占める元素であって、ランタン(La)と第2クロム補足元素とを含む限り、その割合やその他の元素の含有については制限されない。第2クロム補足元素とは、ストロンチウム(Sr)やバリウム(Ba)である。また、上記一般式中、Bは、少なくとも遷移金属元素を含む。遷移金属元素としては、特に制限されるものではないが、第1遷移元素(3d遷移元素)であることが好ましく、中でも、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)および銅(Cu)からなる群から選択される1種または2種以上が含まれることが好ましい。すなわち、第2酸化物相は、本質的には、第1酸化物相と同様の組成であってよい。したがって、第2酸化物相が含み得る元素については、第1酸化物相と同様であるため、重ねての説明は省略する。
<第1酸化物相>
La1-x1RE1 x1Coy1M1 1-y1O3 ・・・(1)
つまり、好適組成において、第1酸化物相はランタン系ペロブスカイト型酸化物であり、代表的には、ランタンコバルタイト系化合物である。ここで、式1中、RE1は第1クロム補足元素を示し、Sr、Baの少なくとも1種である。M1は遷移金属元素を示し、好ましくは、Ti、Mn、Fe、Co、Ni、Cuの少なくとも1種である。
y1は、ペロブスカイト型結晶構造のBサイトを占めるCo以外の遷移金属元素の総割合を示す。遷移金属元素の種類にもよるため一概には言えないが、上記好適組成において、例えば、好ましくは0.1≦y1であり、より好ましくは0.2≦y1であり、さらに好ましくは0.3≦y1であり、特に好ましくは0.35≦y1である。また、上記好適組成において、好ましくはy1≦1であり、より好ましくはy1≦0.95であり、さらに好ましくはy1≦0.9であり、特に好ましくはy1≦0.85である。例えば、おおよその目安として0.4≦y1≦1とすることができる。
La1-x2RE2 x2Coy2M2 1-y2O3 ・・・(2)
また、好適組成において、第2酸化物相はランタン系ペロブスカイト型酸化物であり、代表的には、ランタンコバルタイト系化合物である。ここで、式2中、RE2は第2クロム補足元素を示し、Sr、Baの少なくとも1種である。M2は遷移金属元素を示し、好ましくは、Ti、Mn、Fe、Co、Ni、Cuの少なくとも1種である。
y2は、ペロブスカイト型結晶構造のBサイトを占めるCo以外の遷移金属元素の総割合を示す。遷移金属元素の種類にもよるため一概には言えないが、上記好適組成において、例えば、好ましくは0.1≦y2であり、より好ましくは0.2≦y2であり、さらに好ましくは0.3≦y2であり、特に好ましくは0.35≦y2である。また、上記好適組成において、好ましくはy2≦1であり、より好ましくはy2≦0.95であり、さらに好ましくはy2≦0.9であり、特に好ましくはy2≦0.85である。ただし、y2は、0≦y2≦1とすることができる。
空気極用接合部材60は、上記の通りの気孔率とCTEとを備えることから、例えば、粉体の焼結体により構成されていることが好ましい。そこで、ここに開示する技術は、空気極用接合部材60を好ましく製造することのできる導電性接合材料を提供する。この導電性接合材料は、第1酸化物粉体と第2酸化物粉体とを含む。
第1酸化物粉体は、空気極用接合部材60における第1酸化物相を形成する。第2酸化物粉体は、空気極用接合部材60における第2酸化物相を形成する。換言すると、第1酸化物粉体が焼結されて第1酸化物相を形成する。第2酸化物粉体が焼結されて第2酸化物相を形成する。焼成によって原料と焼成体との組成は厳密には異なり得るが、ここに開示される第1酸化物粉体の組成は、上記の第1酸化物相の組成と同一とすることができる。また、第2酸化物粉体の組成は、上記の第2酸化物相の組成と同一とすることができる。さらに、第1、第2の酸化物粉体の組成に関し、第1酸化物粉体における第1クロム補足元素と第2酸化物粉体における第2クロム補足元素との原子比は、上記(x1/x2)で表される関係を満たすことが好ましい。したがって、第1酸化物粉体および第2酸化物粉体の組成については、重ねての説明を省略する。
第2酸化物粉体の平均粒子径は、例えば、0.01μm以上であってよく、0.1μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましく、0.3μm以上が特に好ましく、例えば0.5μm以上であってよい。第2酸化物粉体の平均粒子径は、例えば、10μm以下(未満)が好ましく、9μm以下がより好ましく、8μm以下が特に好ましく、例えば7μm以下であってよい。
また、上述したとおり、導電性接合材料は、任意成分として焼結助剤を含むことができる。焼結助剤は、粉体の焼結を補助する成分であり、第1酸化物粉体および第2酸化物粉体よりも融点の低い金属成分により構成される。かかる焼結助剤としては、典型的には、遷移金属の単体またはその合金からなる粉体を好ましく用いることができる。具体的には、例えば、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)およびこれらの元素を含む合金(例えばAg-Pd合金)が挙げられる。焼結助剤としては、なかでもCu、Ag-Pd合金が好ましく、とりわけCuの使用が好ましい。
なお、ここに開示される導電性接合材料は、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて、上記の粉体材料の他に、分散媒等の他の構成成分を含むことができる。かかる他の構成成分については、SOFCの単セル10A、10Bの形成手法などの種々の基準に照らして調整することができる。
有機溶剤としては、例えば、エチレングリコールおよびジエチレングリコール誘導体(グリコールエーテル系溶剤)、トルエン、キシレン、ブチルカルビトール(BC)、ターピネオール等の高沸点有機溶剤の1種を単独で、または、2種以上を組み合わせて使用することができる。
空気極(カソード)20は、上記燃料極40と同様に多孔質構造を有している。一般に、空気極20は空気極用接合部材60よりも気孔率が大きい。空気極20の気孔率は特に限定されないものの、気孔率は、電気化学反応のための燃料ガス,固体電解質層,空気極等による3相界面の割合と適切な強度と両立するために、10%以上50%以下(好適には10%以上40%以下、例えば15%以上30%以下)であることが好ましい。
天然有機粉体としては、例えば、澱粉を含む各種の植物のうち、澱粉を多く含む種子(胚乳)、塊根等の部位を粉体にしたものや、かかる部位か抽出した澱粉粉体であってよい。例えば、代表的には、もち米粉、米粉、大麦粉、小麦粉、オート(燕麦)粉、とうもろこし粉、えんどう豆粉、じゃがいも粉、さつまいも粉、キャッサバ粉、葛粉、サゴ粉、アマランス粉、バナナ粉、アロールート粉、カンナ粉などの食物粉、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、タピオカ粉等の澱粉粉体を例示することができる。
[ペースト状導電性接合材料の用意]
導電性接合材料として、以下の一般式で表される2種類の組成のペロブスカイト型酸化物粒子(第1粒子および第2粒子)からなる粉体を用意した。これらのペロブスカイト型酸化物粒子におけるクロム補足元素は、ストロンチウム(Sr)である。
第1粒子:La0.6Sr0.4CoO3
第2粒子:La0.9Sr0.1CoO3
具体的には、出発原料として平均粒子径が5μmのLa2O3,SrCO3およびCo3O4の粉体を用い、これらを各粒子の組成の化学量論比に精密に秤量して湿式混合した後、大気雰囲気中、1100℃で焼成することで、当該組成の焼成物を得た。次いで、得られた焼成物をボールミルによって各々粉砕し、分級することで、平均粒子径(D50)が1μmの第1粒子および第2粒子を得た。第1粒子は、空気極材料として汎用されているランタンストロンチウムコバルタイトの代表的な組成の一つである。
ペースト状導電性接合材料(以下、接合用ペーストという。)を焼成することで、空気極用接合部材(以下、接合部材という。)が得られる。そこで、接合用ペーストの焼成時の収縮率について評価した。用意した10通りの接合用ペーストを試料成型ホルダに供給し、乾燥させた後、5mm×5mm×20mmの角柱状に成形することで、収縮率測定用の試験片を用意した。次いで、熱機械分析装置(株式会社リガク製、TMA8310)を用い、用意した試験片を、大気中、25℃(室温)から850℃まで10℃/分の焼成速度で焼成することで、各接合用材料の焼成収縮率を測定した。その結果を、表1に示した。なお、焼成収縮率は、次式:焼成収縮率(%)=-(焼成後長尺寸法-焼成前長尺寸法)÷(焼成前長尺寸法)×100;で定義される値である。
また、接合用ペーストを焼成して得られる接合部材の熱膨張係数(CTE)を調べた。具体的には、上記焼成収縮率を測定した後の試験片(接合部材)のCTEを測定した。まず、上記収縮率測定後の試験片を試料とし、上記と同じ熱機械分析装置を用い、大気中、25℃(室温)から800℃の温度範囲における平均線膨張率を示差膨張方式にて測定した。かかる熱膨張係数の測定は、JIS 1618:2002のファインセラミックスの熱機械分析による熱膨張の測定方法に準じて実施した。得られた熱膨張係数を表1の「CTE」の欄に併せて示した。
接合用ペーストを焼成して得られる接合部材と金属製インターコネクタとの物理的(機械的)接合性について評価した。具体的には、用意した10通りの接合用ペーストをスピネルコートしたフェライト系ステンレス板の表面に約30μmの厚みに塗布し、850℃で焼成することで、薄層状の接合部材を作製した。そしてこの接合部材とステンレス板との接合強度を、JIS K5600-5-6:1999に規定されるクロスカット試験に準じて評価した。クロスカット試験では、まず、焼成後の薄層状の接合部材の端部から5mm以上離れた位置に、1mmの間隔で6本の平行なカットを入れることで、25マスの格子パターンを形成した。そして格子パターンを覆うように幅24mmの透明感圧付着テープ(付着強さ4.01N/mm)を貼り付け、テープのなす角が約60°となる方向に引き剥がしたのち、クロスカットの全面積(25マス)に占める剥がれた部分の面積割合(剥離面積率)P(%)を算出した。
×:65<P
△:35<P≦65
○: 5<P≦35
◎: 0≦P≦5
接合用ペーストを焼成して得られる接合部材と金属製インターコネクタとの電気的接合性について評価した。具体的には、用意した10通りの接合用ペーストをスピネルコートしたフェライト系ステンレス板(25mm×25mm)の表面に約30μmの厚みに塗布し、850℃で焼成することで、薄層状の接合部材を作製した。そして得られた接合部材とステンレス板との間に生じる接触抵抗を測定することで、電気的接合性を評価した。接触抵抗は、抵抗率計(型式:ソーラトロン社製ポテンショスタット、SI1287)を用い、電圧を±10mVで掃引したときのIV曲線の傾きから算出した。そして得られた接触抵抗率を、表1の「接触抵抗」の欄に評価記号によって示した。なお、各評価記号は、以下の接触抵抗率に対応している。
×:0.1Ωcm2超
△:0.05Ωcm2超0.1Ωcm2以下
○:0.02Ωcm2超0.05Ωcm2以下
◎:0.02Ωcm2以下
表1に示されるように、例10の第1粒子(La0.6Sr0.4CoO3)のみからなる導電性接合材料と、例1の第2粒子(La0.9Sr0.1CoO3)のみからなる導電性接合材料とでは、ペロブスカイトのAサイトに含まれるSrの割合が異なり、CTEおよび焼成収縮率にも有意な差が生じることがわかった。そして、第1粒子と第2粒子とを組み合わせて用いることで、導電性接合材料の焼成収縮率とCTEを調整できることも確認できた。第1粒子と第2粒子の混合割合を変化させたときに、Srの含有量の少ない第2粒子が多いほどCTEが小さくなり、第2粒子が少ないほどCTEが大きくなる。また、焼成収縮率については、Srの含有量の少ない第2粒子の割合の多いほど焼成収縮率は大きくなり、第2粒子の割合が少ないほど焼成収縮率は小さくなるとの関係があることがわかった。
[接合用ペーストの用意]
導電性接合材料として、第1実施形態と同じ組成の第1粒子(La0.6Sr0.4CoO3)および第2粒子(La0.9Sr0.1CoO3)を用意し、これらを質量比で、第1粒子:第2粒子=70:30となるように混合することで、例11~23の混合粉を用意した。ここで、第1粒子および第2粒子のからなる粉体は、それぞれ下記の表2に示す平均粒子径となるように粒度を調整した。なお、第1粒子および第2粒子の配合割合は、第1実施形態において、焼成収縮率、CTE、接合強度および接触抵抗の結果のバランスが良好であった例6に合わせたものである。これらの混合粉を用い、その他の条件は第1実施形態と同様にして、例11~23の接合用ペーストを調製した。
また、接合用ペーストを焼成して得られる接合部材と金属製インターコネクタとの電気的接合性の耐久性について評価した。具体的には、上記の接触抵抗率を測定した接合部材付きステンレス板を、SOFCの運転温度である700℃の空気雰囲気に1000時間静置した後、再度、上記と同様にして接触抵抗率を測定した。そして、接触抵抗の変化率を、次式:接触抵抗の変化率(%)=(耐久後接触抵抗率-初期接触抵抗率)÷(初期接触抵抗率)×100;に基づき算出した。なお、初期接触抵抗は、上記「接触抵抗率」として測定された1000時間耐久前の接触抵抗であり、耐久後接触抵抗率は、1000時間耐久後の接触抵抗である。
×:2%以上
△:1%以上2%未満
〇:0.5%以上1%未満
◎:0.5%未満
例11~16からわかるように、第1粒子と第2粒子の平均粒子径は同一であってよく、第1粒子と第2粒子の平均粒子径に大きく影響されることなく接合強度、接触抵抗、耐久性のいずれも良好な結果が得られることがわかった。ただし、平均粒子径が3μm(例15)程度に近づくにつれて接触抵抗が低くなる傾向が見られたことから、第1粒子および第2粒子の平均粒子径は、ある程度の大きさのある0.1μm以上とするとよく、1μm以上(例えば1μm以上7μm以下)がより好適であり、3μm程度(例えば3μm±2μm)が好ましいといえる。また、例22,23から、第1粒子と第2粒子の平均粒子径が大きすぎると、各粒子の界面における接点数が少なくなりすぎ、接合性が低下すると考えられる。このことから、第1粒子および第2粒子の平均粒子径の上限は、おおよそ10μm程度が良いと考えられる。
導電性接合材料として、下記表3に示す組成を有する第1粒子からなる粉体と第2粒子からなる粉体とを混合することで、例24~32の混合粉を用意した。ここで、第1粒子からなる粉体の平均粒子径は7μmに、第2粒子からなる粉体の平均粒子径は0.7μmに調整した。また、第1粒子からなる粉体と、第2粒子からなる粉体との配合は、質量比で、第1粒子:第2粒子が80:20となるようにした。この配合割合は、第1実施形態において、焼成収縮率、CTE、接合強度および接触抵抗の結果のバランスが良好であった例7に合わせたものである。これらの混合粉を用い、その他の条件は第1実施形態と同様にして、例24~32の接合用ペーストを調製した。
一方で、例27、32は、第1粒子と第2粒子の組成を同一にし、Srの含有量も同じにした例である。
例7と例24とを比較してわかるように、第1粒子と第2粒子の平均粒子径は同一にしなくても、第1実施形態と同様の効果が得られることが確認できた。しかしながら、例24は、例7に比べて、CTEがわずかに小さくなった。これは、例24の方が例7よりも、第1粒子の表面積が小さくなり第2粒子の表面積が大きくなったため、全体として第2粒子の組成の影響が強く反映されたことによるものと考えられる。このことからも、Srの含有量を少なくした第2粒子は、第1粒子よりも平均粒子径の小さいものを用いることで、その効果をより明瞭に発現できることがわかった。また、接触抵抗は、耐久試験後も良好に維持できることが確認できた。さらに、例24と第2実施形態の例19との比較から、この第1粒子と第2粒子の組み合わせの場合、第2粒子の割合を20質量%に少なくしても接合強度は向上するものの耐久性が低下することがわかった。
上記第3実施形態の例24で作製した接合部材の表面を、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)で観察するとともに、その観察領域の一部について、エネルギー分散型X線分光分析(Energy Dispersive X-ray spectrometry:EDX)を行った。EDX分析装置としては、日本電子(株)製,JSM-6610LAを用い、走査型電子顕微鏡(SEM)による2000倍の観察領域(画像データ)について、SrのL線、LaのL線、CoのK線を検出することで、各元素の元素マップを得た。その結果を、図2および図3に示した。
図2および図3において、(a)は接合部材の表面のSEM像であり、(b)~(e)はそれぞれSr,La,Coについての元素マップである。図2(a)~(e)と、図3(a)~(e)とについて、ベースとなるSEM像領域および元素マップはそれぞれ同一であるが、図2と図3とは、四角で示したEDXによる各元素の原子比分析を行った分析領域が異なることを示している。
SEM観察の結果から、接合部材においては第1粒子と第2粒子とが一体的に焼結しているものの、焼結温度が850℃と低めであることから、第1粒子と第2粒子とはおおよその形状を残したまま焼結体を構成していることがわかった。そしてEDXの結果から、接合部材の第1粒子部分と第2粒子部分とは、出発材料である第1粒子と第2粒子の組成とほぼ同じ組成を有していることが確認できた。つまり、接合部材には、相対的にSr比の多い第1ペロブスカイト相と、相対的にSr比の少ない第2ペロブスカイト相とが存在していることがわかった。また、SEM観察およびEDXの結果から、これら第1ペロブスカイト相と、第2ペロブスカイト相との割合も、出発材料である第1粒子と第2粒子の割合に一致することが合理的に理解される。
導電性接合材料として、下記表5に示す組成を有する第1粒子からなる粉体と第2粒子からなる粉体とを混合することで、例33~41の混合粉を用意した。ここで、第1粒子からなる粉体の平均粒子径は7μmに、第2粒子からなる粉体の平均粒子径は0.7μmに調整した。また、第1粒子からなる粉体と、第2粒子からなる粉体との配合は、質量比で、第1粒子:第2粒子が80:20となるようにした。これらの混合粉と、表5に示す組成の焼結助剤とを用い、その他の条件は第1実施形態と同様にして、例33~41の接合用ペーストを調製した。焼結助剤の割合は、混合粉体を100質量部としたときに、5質量部とした。
例24と例33、例28と例37、38の比較から、焼結助剤としてCuやAgPd合金を用いることで、接合強度および接触抵抗の少なくとも一方が改善されて、良好な接合部材を形成できることがわかった。また例34に示すように、ランタンコバルタイトの組成が変化しても、同様の傾向が得られることがわかった。例25と例35、36の比較から、焼結助剤としてNiやMnを用いた場合は、Cuと比較すると接合強度および接触抵抗の顕著な向上は見られなかったが、接合強度が若干改善されており、また良好な接触抵抗特性を示すことがわかった。
第1実施形態の例6と同じ配合の接合用ペーストに対し、焼結助剤としてのCu粉を、下記表6に示す平均粒子径および配合で加えることで、例42~52の接合用ペーストを調製した。すなわち、第1粒子としては平均粒子径が1μmのLa0.6Sr0.4CoO3を用い、第2粒子としては平均粒子径が1μmのLa0.9Sr0.1CoO3を用いた。また、第1粒子からなる粉体と、第2粒子からなる粉体との配合は、質量比で、第1粒子:第2粒子が70:30となるようにした。表6に示す組成の焼結助剤の添加量は、第1粒子と第2粒子との混合粉体の総量を100質量部としたときの割合(質量部)を示している。
下記の表7に示す第1粒子と第2粒子とを用意し、第1実施形態と同様にして2通りの接合用ペーストを調製した。第1の接合用ペースト(例53~56)は、第1粒子としてLa0.9Sr0.1CoO3を用い、第2粒子としてLa0.6Sr0.4CoO3を用いている。第2の接合用ペースト(例57~60)は、その逆で、第1粒子としてLa0.6Sr0.4CoO3を用い、第2粒子としてLa0.9Sr0.1CoO3を用いている。第1および第2の接合用ペーストともに、第1粒子と第2粒子の平均粒子径および配合は同じとした。したがって、第1の接合用ペースト(例53~56)はここに開示される技術条件を満たさないが、第2の接合用ペースト(例57~60)はここに開示される技術条件を満たす。なお、例57は、第3実施形態における例24と同じ条件である。
これに対し、本技術条件を満たす第2の接合用ペーストを用いると、850℃以上1150℃以下の温度で焼成したときに、概ね良好な接合強度と接触抵抗とを実現する接合部材を形成できることが確認できた。特に、1000℃以下、好ましくは900℃以下の温度で焼成した場合に、接合部材の焼成が好適に行われ、基材との接合性および密着性に優れた接合部材の形成が可能であることが確認できた。
10A,10B 単セル
20 空気極(カソード)
30 固体電解質
40 燃料極(アノード)
50,50A 金属製インターコネクタ
52 ,54 セル対向面
53 空気流路
55 燃料ガス流路
Claims (12)
- 固体酸化物形燃料電池の空気極と金属製インターコネクタとを接合する空気極用接合部材であって、一般式:ABO3で表されるペロブスカイト型結晶構造を有する第1酸化物相と第2酸化物相とを含み、
前記第1酸化物相は、下記の組成:
La 1-x1 RE 1 x1 Co y1 M 1 1-y1 O 3 ・・・(1)
で示されるランタン系ペロブスカイト型酸化物であり、
ここで、式1における
RE 1 はSr、Baのうちの少なくとも1種である第1クロム補足元素を示し、
M 1 はTi、Mn、Fe、Ni、Cuのうちの少なくとも1種である遷移金属元素を示し、
x1は、ペロブスカイト型結晶構造のAサイトを占めるLaおよび前記第1クロム補足元素のうちの前記第1クロム補足元素の割合を示し、0.4≦x1≦0.8であり
y1は、ペロブスカイト型結晶構造のBサイトを占めるCoおよび前記遷移金属元素のうちの前記遷移金属元素の割合を示しており、
前記第2酸化物相は、下記の組成:
La 1-x2 RE 2 x2 Co y2 M 2 1-y2 O 3 ・・・(2)
で示されるランタン系ペロブスカイト型酸化物であり、
RE 2 はSr、Baのうちの少なくとも1種である第2クロム補足元素を示し、
M 2 はTi、Mn、Fe、Ni、Cuのうちの少なくとも1種である遷移金属元素を示し、
x2は、ペロブスカイト型結晶構造のAサイトを占めるLaおよび前記第2クロム補足元素のうちの前記第2クロム補足元素の割合を示し、0.05≦x2≦0.2であり、
y2は、ペロブスカイト型結晶構造のBサイトを占めるCoおよび前記遷移金属元素のうちの前記遷移金属元素の割合を示しており、
前記第1クロム補足元素と前記第2クロム補足元素との原子比(x1/x2)は、
2≦(x1/x2)≦15であり、
前記第1酸化物相と前記第2酸化物相との合計に占める前記第2酸化物相の割合は、5質量%以上70質量%以下であり、
25℃から800℃の温度範囲における平均線膨張率を示差膨張方式にて測定したときの熱膨張係数が17×10 -6 /K~19.3×10 -6 /Kであり、
Mn、Ni、Cu、Ag、Pdおよびこれらの元素を含む合金のうちから選択される金属または合金で構成された焼結助剤に由来する金属成分含有相を、前記第1酸化物相および前記第2酸化物相の合計を100質量部としたときに20質量部以下の割合で含む、空気極用接合部材。 - 前記第1酸化物相を含む第1焼結粒子部と、前記第2酸化物相を含む第2焼結粒子部とを含み、
顕微鏡観察において、前記第1焼結粒子部の平均径は、前記第2焼結粒子部の平均径よりも大きい、請求項1に記載の空気極用接合部材。 - 前記金属成分含有相としてCu含有層を含む、請求項1または2に記載の空気極用接合部材。
- 前記第1酸化物相および前記第2酸化物相の少なくとも1つは、前記BサイトにCuを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の空気極用接合部材。
- 固体酸化物形燃料電池の空気極と金属製インターコネクタとを接合する空気極用接合部材のための導電性接合材料であって、
一般式:ABO3で表されるペロブスカイト型結晶構造を有する第1酸化物粉体と第2酸化物粉体とを含み、
前記第1酸化物粉体は、下記の組成:
La 1-x1 RE 1 x1 Co y1 M 1 1-y1 O 3 ・・・(1)
で示されるランタン系ペロブスカイト型酸化物であり、
ここで、式1における
RE 1 はSr、Baのうちの少なくとも1種である第1クロム補足元素を示し、
M 1 はTi、Mn、Fe、Ni、Cuのうちの少なくとも1種である遷移金属元素を示し、
x1は、ペロブスカイト型結晶構造のAサイトを占めるLaおよび前記第1クロム補足元素のうちの前記第1クロム補足元素の割合を示し、0.4≦x1≦0.8であり
y1は、ペロブスカイト型結晶構造のBサイトを占めるCoおよび前記遷移金属元素のうちの前記遷移金属元素の割合を示しており、
前記第2酸化物粉体は、下記の組成:
La 1-x2 RE 2 x2 Co y2 M 2 1-y2 O 3 ・・・(2)
で示されるランタン系ペロブスカイト型酸化物であり、
RE 2 はSr、Baのうちの少なくとも1種である第2クロム補足元素を示し、
M 2 はTi、Mn、Fe、Ni、Cuのうちの少なくとも1種である遷移金属元素を示し、
x2は、ペロブスカイト型結晶構造のAサイトを占めるLaおよび前記第2クロム補足元素のうちの前記第2クロム補足元素の割合を示し、0.05≦x2≦0.2であり、
y2は、ペロブスカイト型結晶構造のBサイトを占めるCoおよび前記遷移金属元素のうちの前記遷移金属元素の割合を示しており、
前記第1クロム補足元素と前記第2クロム補足元素との原子比(x1/x2)は、
1.5≦(x1/x2)≦20であり、
前記第1酸化物粉体と前記第2酸化物粉体との合計に占める前記第2酸化物粉体の割合は、5質量%以上70質量%以下であり、
前記第1酸化物粉体の平均粒子径および前記第2酸化物粉体の平均粒子径は、それぞれ、0.01μm以上10μm以下であり、
Mn、Ni、Cu、Ag、Pdおよびこれらの元素を含む合金のうちから選択される金属または合金で構成され、平均粒子径が前記第1酸化物粉体の平均粒子径および前記第2酸化物粉体の平均粒子径の1/10倍以上5倍以下である焼結助剤を、前記第1酸化物粉体および前記第2酸化物粉体の合計を100質量部としたときに1質量部以上20質量部以下の割合で含む、導電性接合材料。 - 前記第2酸化物粉体の平均粒子径は、前記第1酸化物粉体の平均粒子径よりも小さい、請求項5に記載の導電性接合材料。
- 前記焼結助剤として、Cu含有粉体を含む、請求項5または6に記載の導電性接合材料。
- 前記焼結助剤として、Cu含有粉体を含み、
前記第1酸化物粉体および前記第2酸化物粉体の少なくとも1つは、前記BサイトにCuを含む、請求項7に記載の導電性接合材料。 - 前記第1酸化物粉体および前記第2酸化物粉体を分散させる分散媒を含み、ペースト状に調製されている、請求項5~8のいずれか1項に記載の導電性接合材料。
- 前記ペースト状に調製された前記導電性接合材料であって、
150℃で乾燥後に850℃で焼成したときの焼成収縮率が3%以下である、請求項9に記載の導電性接合材料。 - 燃料極と固体電解質と空気極とを備える固体酸化物形燃料電池と、
金属製インターコネクタと、
前記空気極と前記金属製インターコネクタとを接合する空気極用接合部材と、
を備え、
前記空気極用接合部材は、請求項5~10のいずれか1項に記載の導電性接合材料の焼成物により構成されている、SOFCスタック。 - 前記空気極は、少なくとも一部が、請求項5~10のいずれか1項に記載の導電性接合材料の焼成物により構成されている、請求項11に記載のSOFCスタック。
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