JP5912536B2 - 電極形成材料とこれにより形成されるグリーンシート、多孔質電極および固体酸化物形燃料電池ならびに固体酸化物形燃料電池の製造方法 - Google Patents

電極形成材料とこれにより形成されるグリーンシート、多孔質電極および固体酸化物形燃料電池ならびに固体酸化物形燃料電池の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5912536B2
JP5912536B2 JP2012001460A JP2012001460A JP5912536B2 JP 5912536 B2 JP5912536 B2 JP 5912536B2 JP 2012001460 A JP2012001460 A JP 2012001460A JP 2012001460 A JP2012001460 A JP 2012001460A JP 5912536 B2 JP5912536 B2 JP 5912536B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
electrode
pore former
green sheet
forming material
mass
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2012001460A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2013143189A (ja
Inventor
高橋 洋祐
洋祐 高橋
広幸 岩井
広幸 岩井
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Noritake Co Ltd
Original Assignee
Noritake Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Noritake Co Ltd filed Critical Noritake Co Ltd
Priority to JP2012001460A priority Critical patent/JP5912536B2/ja
Publication of JP2013143189A publication Critical patent/JP2013143189A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5912536B2 publication Critical patent/JP5912536B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E60/00Enabling technologies; Technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
    • Y02E60/30Hydrogen technology
    • Y02E60/50Fuel cells
    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02PCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES IN THE PRODUCTION OR PROCESSING OF GOODS
    • Y02P70/00Climate change mitigation technologies in the production process for final industrial or consumer products
    • Y02P70/50Manufacturing or production processes characterised by the final manufactured product

Landscapes

  • Compositions Of Oxide Ceramics (AREA)
  • Inert Electrodes (AREA)
  • Fuel Cell (AREA)

Description

本発明は、多孔質電極を形成するための電極形成材料に関する。より詳しくは、多孔質電極用の電極形成材料とこれにより形成されるグリーンシート、多孔質電極および固体酸化物形燃料電池ならびに固体酸化物形燃料電池の製造方法に関する。
固体電解質燃料電池とも呼ばれる固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell:SOFC,以下、単に「SOFC」ともいう。)は、種々のタイプの燃料電池の中でも、発電効率が高い、環境への負荷が低い、そして、多様な燃料の使用が可能であるなどの利点を有している。SOFCは、その基本構造(単セル)として、酸素イオン伝導体(典型的には、酸素イオン伝導性を有するセラミック体、好ましくは酸素イオン伝導体であることに加え、電子伝導性を兼ね備えた酸素イオン−電子混合伝導体)から成る緻密な固体電解質(例えば、緻密膜層)の一方の面に多孔質構造の空気極(カソード)が形成され、他方の面に多孔質構造の燃料極(アノード)が形成(例えば積層)されることにより構成されている。燃料極が形成された側の固体電解質の表面には燃料ガス(典型的にはH(水素))が供給され、空気極が形成された側の固体電解質の表面にはO(酸素)含有ガス(典型的には空気)が供給される。
SOFC用の固体電解質としては、化学的安定性および機械的強度の高さから、ジルコニア系材料(例えばイットリア安定化ジルコニア:YSZ)やセリア系材料からなる固体電解質が広く用いられている。かかる固体電解質(層)は、薄くなるほどイオン透過速度が上昇して充放電特性等の電池性能が向上する。そのため、近年、SOFCの電池性能を向上させるべく、燃料極を厚く形成して多孔質支持体とし、該多孔質支持体の表面に薄膜状の固体電解質と空気極とを形成したアノード支持形SOFCの開発が進められている。SOFC用の燃料極としては、例えば酸化ニッケルとイットリア安定化ジルコニアとのサーメット(NiO/YSZサーメット)、空気極としてはLaCoO、LaMnO等のペロブスカイト構造の酸化物がよく用いられる。
この種のアノード支持形SOFCを製造する方法としては、まず、燃料極の材料と造孔材(例えばカーボン)とを溶媒に加えてスラリーを調製し、このスラリーをドクターブレード法によりシート状に成形してグリーンシート(未焼成の基材シート)を作製し、これを焼成して燃料極(多孔質支持体)とする。次いで、燃料極の表面にスクリーン印刷またはディップコーティング等により固体電解質(層)を形成し、さらに固体電解質上に空気極層を形成して焼成することによりアノード支持形SOFCが製造され得る。この種のSOFCの製造に関する従来技術としては特許文献1,2が挙げられる。
特開2002−175814号公報 特開平08−319181号公報
ところで、上記アノード支持形SOFCにおいては、強度面よりアノード(燃料極)をある程度厚くする必要があるが、1枚で厚膜(例えば0.5mm以上)のグリーンシートを一体に形成しようとすると、比重の大きいセラミック粒子がシート下部に沈降するため、厚さ方向での粒子の充填状態が異なる。このため、その後の焼成工程において1000℃以上(例えば1400℃程度)の温度域で焼成した際に厚さ方向の収縮率が微妙に異なり、反りあるいは変形が生じ、平坦な燃料極の形成が難しいという問題がある。
この点に関し、近年、1枚で厚膜のグリーンシートを一体に形成するのではなく、薄膜のグリーンシートを目的の厚みとなるように積層することが試みられている。例えば、図6に示すように、薄膜(例えば0.1mm)のグリーンシート1を複数枚(図では5枚)用意し、該シート1の表面に有機接着剤(例えばエポキシ樹脂)を塗布して接着層2を形成する。次いで、上記シート1の各々を接着層2により接合し、目的の厚み(例えば0.5mm)となるように積層する。その後、積層体3を1000℃以上の温度域で焼成することにより、湾曲のない平坦な燃料極を形成することができる。
しかしながら、上述のように、薄厚のグリーンシートを目的の厚みとなるように積層する構成は、焼成時におけるグリーンシートの反り変形を防止して平坦な燃料極を形成するのに有利である一方で、該シートを積層する際、接着剤に塗布ムラがあると、接着面が凹凸になるため、接着界面に隙間(気泡)が形成されやすく、かかる隙間(気泡)を起点として燃料極が破損するおそれがある。また、上記接着層に用いられる有機接着剤は、高温(例えば70℃以上)かつ高加圧(例えば5MPa以上)でないと接合できないため、適正な接合条件の選定が難しく、例えば高温かつ高圧に設定しすぎると、シート中の樹脂成分が溶解して積層体に変形が生じるおそれがある。また、焼成後の積層体(燃料極)にも変形や割れが生じるおそれがある。本発明は上記課題を解決するものである。
本発明によって提供される電極形成材料は、多孔質構造の電極を形成するために用いられる電極形成材料である。そして、この電極形成材料は、電子伝導性および/またはイオン伝導性を有する電極材料と、糯(もち)種の澱粉を含む植物の粉末からなる造孔材とを含むことを特徴とする。
かかる電極形成材料は、造孔材として糯種澱粉を含む植物の粉末を用いるようにしている。そしてこの電極形成材料を用いて電極を作製するに際し、焼成を施すことで上記造孔材を焼失させ、得られる電極に気孔を形成するようにしている。この澱粉の粉末は、一般に造孔材として用いられるカーボンに比べて分散性が良好なため、上記電極形成材料中においても上記電極材料と良好な分散状態をとることができる。そのため、ここに開示される電極形成材料を焼成して電極を作製することで、気孔が均一に分散した透過性(例えば、ガス透過性、電解液浸透性等)の良い電極を製造することができる。
また、糯種の澱粉は、例えば水分を含むことで膨潤し、混練により粘性を備え得る。また、該粘性は、一般的な澱粉(粳(うるち)種の澱粉)による粘性に比べて高粘度であり、例えば低温(例えば40℃またはそれ以下、典型的には常温)においても長時間にわたって粘性を維持することができる。したがって、ここに開示される電極形成材料によると、従来のような有機接着剤(接着層)を用いずに、電極形成材料中に含まれる糯種の澱粉(特にシート表面に露出している糯種澱粉の粒子)の接着作用のみでグリーンシートを接合することが可能となる。かかる構成によると、低温(例えば40℃またはそれ以下)かつ無加圧で各シートを接合できるので、高温かつ高圧条件で接合したときのようなグリーンシート積層体の割れ、変形等が有効に防止され、高品質の電極が得られる。さらに、接着剤レスに繋がることから、従来のような接着剤の塗布ムラに起因して接着界面に空隙が形成されることが防止され、該空隙を起点として電極が破損するような不具合を解消することができる。したがって、かかる電極形成材料を用いて電極を作製すると、接着不良等による電極の破損が防止された、優れた品質の電極を安定して容易に製造することができる。
ここに開示される電極形成材料の好ましい一態様において、上記造孔材に含まれる澱粉は、アミロペクチンの含有量が90質量%以上である。澱粉は、アミロースおよびアミロペクチンの2種類の分子から構成されるが、中でも、本質的にアミロースを含まず、アミロペクチンのみからなる澱粉を特に糯種の澱粉として、一般的な澱粉(粳種の澱粉)と区別している。すなわち、糯種の澱粉は、本質的にアミロースを含まない(典型的には、アミロペクチンが100%である。)。しかしながら、糯種の植物は、粳種の劣性突然変異体であることから、植物としてみた場合に粳種の混入(例えば、粳種の花粉の飛来などによる粳種への戻り等)の可能性も考えられる。したがって、ここに開示された発明においては、造孔材に含まれる澱粉は、約90質量%以上、詳細には95質量%以上、より詳細には98質量%以上のアミロペクチンを含有する澱粉とする。なお、かかる構成においては、例えば粳種の澱粉が混入する場合であっても、澱粉全体としてのアミロペクチンの含有量が90質量%以上であればよい。換言すると、澱粉全体としてのアミロペクチンの含有量が90質量%以上であれば、粳種の澱粉が含まれていても良い。
ここに開示される電極形成材料の好ましい一態様において、上記造孔材は、もち米の粉末からなる。例えば、糯種の澱粉は、代表的には、各種の穀物(イネ科およびマメ科の種子)および地下茎類(イモ類など)等の糯種のものから好適に得ることができる。これらの中でも、糯種の米(すなわち、もち米)や、糯種のとうもろこし(ワキシーコーン等)に由来する糯性の澱粉は、電極材料(例えば導電性セラミック)に対して強い接着作用(粘着力)を示すため、本発明の目的に適した造孔材として好適に使用し得る。特に、造孔材としての機能および接着材としての機能を両立させる観点からは、もち米の粉末の使用が好ましい。澱粉の含有率の高さや、日本国内での入手の容易さ等から、もち米の粉末を用いるのが好ましい。
このことからも解るように、糯(もち)種の澱粉を含む植物の粉末は、該植物全体を粉末にしたものである必要はなく、例えば、胚乳、塊根等の澱粉を高含有率で含む植物中の特定の部位を粉末にしたものまたは精製したものであってよい。例えば、糯種のとうもろこし(ワキシーコーン)であれば、ワキシーコーンスターチ等であってよい。
ここに開示される電極形成材料の好ましい一態様において、上記電極材料と上記造孔材との合計に占める上記造孔材の割合が、1〜15質量%である。かかる造孔材の含有量が少なすぎると、接着作用(粘着力)が低下するため、接着強度が不足してシート間に剥離が生じることがあり、バインダを含有させる必要が生じるか、あるいは、接着強度が不足してシート間に剥離が生じるおそれがある。また、造孔材の含有量が少なすぎると、焼成後に得られる電極の気孔率が低下するため、電極の透過性の確保ができない場合がある。一方で、造孔材の含有量が多すぎると、粘着性が高すぎて扱いが困難となり、また、焼成後に得られる電極の気孔率が増大しすぎるため、電極の機械的強度及び耐久性が低下することがある。このような観点から、例えば、上記造孔材の割合は、1〜15質量%(好ましくは2〜10質量%)であるのが、接着強度及び機械的強度を両立する観点からは好適である。
ここに開示される電極形成材料の好ましい一態様において、さらに、バインダを含み、上記バインダが、上記電極材料と上記造孔材との合計を100質量%としたときの、その5質量%以下の割合で含まれている。上記のとおり、かかる電極形成材料によると、上記造孔材が接着材としての機能をも果たし得る。したがって、ここに開示される電極形成材料は、電極材料同士または電極材料と電極材料を担持する基体とを接着するバインダの含有率を低減(好ましくは、バインダレス)することができる。
ここに開示される電極形成材料の好ましい一態様において、さらに、溶媒を含み、上記電極形成材料が上記溶媒中に分散されてスラリー状(もしくは、ペースト状)に調製されている。かかる電極材料は、上記電極材料と上記造孔材とを含む粉体の形態で提供されても良いし、これらの粉体が溶媒に分散されたスラリー状の形態で提供されていても良い。取扱いの簡便さからは、スラリー状に調製されていることが好ましい。
ここに開示される電極形成材料の好ましい一態様において、上記電極は、固体酸化物形燃料電池に用いられる電極であり、該電極を形成するために用いられる。多孔質構造を有する電極としては、様々な電池、セルおよび素子等に用いられる電極を考慮することができるが、ここに開示される電極形成材料は、例えば、その製造において、電極グリーンシートを積層する工程を含み得る、焼成工程を含むといった点から、固体酸化物形燃料電池用電極の形成に好ましく適用することができる。
また、本発明は、上記目的を実現する他の側面として、グリーンシートを提供する。かかるグリーンシートは、多孔質構造の電極を形成するために用いられるグリーンシートであって、上記のいずれかに記載された電極形成材料を用いて形成されていることを特徴としている。
かかる構成によると、上記の電極形成材料は、予め所望のシート状の形態に成形されているため、より簡便に多孔質構造の電極を作製することができる。また、かかる電極グリーンシートは造孔材として糯種の澱粉を含む植物の粉末を用いるようにしているため、柔軟性に優れ、割れ等の発生が起こり難い。また、カーボンからなる造孔材に比べて分散性が良いことから、焼成により透過性(例えば、ガス透過性、電解液浸透性等)の良い多孔質構造を形成し得る。したがって、このグリーンシートを用いることで、優れた気孔率を有する多孔質構造の電極を安定して容易に製造することができる。
更に本発明が提供するグリーンシート積層体は、上記のグリーンシートが、上記造孔材の有する接着特性により複数貼り合わせられて形成されていることを特徴とする。かかる構成によると、従来のような有機接着剤(接着層)を用いずに、グリーンシート中に含まれる糯種の澱粉を含む植物の粉末(特にシート表面に露出している粉末)の接着作用のみで各シートを接合してグリーンシート積層体を構築している。すなわち、接着剤レスになることから、従来のような接着剤の塗布ムラに起因して接着界面に空隙が形成されることが防止され、このグリーンシート積層体で電極を製造した場合に該空隙を起点として電極が破損するような不具合を解消することができる。したがって、本発明によると、接着不良等による電極の破損が防止され、優れた品質の電極を安定して容易に製造できるグリーンシート積層体が実現される。
ここに開示されるグリーンシート積層体の好ましい一態様において、複数の上記グリーンシートは、無加圧で相互に貼り合わせられている。かかる構成によると、複数のグリーンシートを40℃以下(典型的には、40℃未満)の無加圧の状態で接合できるため、従来のような高温かつ高圧条件で接合する際にみられ得るグリーンシート積層体の割れ、変形等が有効に防止されるため、このグリーンシート積層体を用いて電極を作製する場合に割れ、変形が防止された高品質な電極を作製することが可能となる。
加えて、ここに開示されるグリーンシート積層体は、固体酸化物形燃料電池に用いられる電極を構築するために形成されている。かかる構成は、例えば、厚みを厚く形成する必要のある多孔質電極や、この多孔質電極および固体酸化物形電解質の上に積層される多孔質電極を作製する際にその利点を大きく発揮し得る。したがって、かかるグリーンシートは、例えば、アノード支持形SOFCの燃料極あるいは空気極等に好適に適用することができる。
更に、本発明は、上記目的を実現する他の側面として、多孔質電極を提供する。かかる多孔質電極は、多孔質構造を有する電極であって、上記のグリーンシートまたはグリーンシート積層体が焼成され、上記造孔材が焼失することで多孔質構造が形成されていることを特徴とする。
このグリーンシートまたはグリーンシート積層体には造孔材が分散性良く配合されているため、これが焼失して形成される気孔は均一に分散したものとなり、透過性(例えば、ガス透過性、電解液浸透性等)の良い多孔質電極が得られる。また、グリーンシート積層体を焼成してなる多孔質電極については、接着剤レスで形成されることから、従来のような接着剤の塗布ムラに起因して接着界面に空隙が形成されることが防止され、該空隙を起点として電極が破損するような不具合が解消され得る。したがって、本発明によると、透過性が良く、接着不良等による電極の破損が防止されている、品質に優れた多孔質電極が提供される。
ここに開示される多孔質電極の好ましい一態様では、固体酸化物形燃料電池に用いられる電極であることを特徴としている。かかる多孔質電極は、透過性が良く、積層により製造した場合であっても空隙が形成され難く電極の破損の可能性が低減されている。そのため、例えば、厚みを厚くする必要のある多孔質電極や、この多孔質電極および固体酸化物形電解質の上に積層される多孔質電極等として好適に使用できる。したがって、品質の良いアノード支持形固体酸化物形燃料電池の燃料極および/または空気極が実現される。
加えて、本発明が提供する固体酸化物形燃料電池は、多孔質構造の燃料極と、酸化物イオン伝導体からなる固体電解質と、多孔質構造の空気極とを備える固体酸化物形燃料電池であって、上記燃料極および/または上記空気極として、上記の多孔質電極を備えることを特徴としている。
上記燃料極および空気極は、気孔が均一に形成されているためにガス透過性が良く、また厚みの厚い電極とした場合であっても空隙を含み難く電極の破損の可能性が低減され、高品質である。したがって、例えば、耐久性が高い、発電性能に優れる、生産安定性に優れる、のうちの少なくとも一つ(好ましくは全部)を満足するものであり得る。
また、本発明が提供する電極の製造方法は、多孔質構造の電極を製造する方法である。かかる製造方法は、上記のいずれか1つの電極形成材料をシート状に成形してグリーンシートを複数用意する工程と、上記複数のグリーンシートを上記造孔材の接着作用により貼り合わせて積層体を構成する積層工程と、上記グリーンシート積層体を焼成して多孔質構造を有する電極を得る焼成工程と、を包含することを特徴としている。
この電極形成材料は、上記のとおり、糯種の澱粉を含む植物の粉末からなる造孔材を含有している。そのため、かかる製造方法においては、従来のような有機接着剤(接着層)を用いずに、グリーンシート中に含まれる造孔材(特にシート表面に露出している造孔材)の接着作用のみで各シートを接合し得る。また、低温(例えば40℃以下、典型的には40℃よりも低温)かつ無加圧に近い状態(典型的には、無加圧)で各シートを接合できるため、高温かつ高圧条件で接合したときのようなグリーンシート積層体の割れ、変形等が有効に防止され、高品質の電極が得られる。さらに、接着剤レスになることから、従来のような接着剤の塗布ムラに起因して接着界面に空隙が形成されることが防止され、該空隙を起点として電極が破損するような不具合を解消することができる。したがって、本発明によると、接着不良等による電極の破損が防止された、優れた品質の電極を安定して容易に製造することができる。
ここに開示される電極の製造方法の好ましい一態様において、上記焼成工程において、上記グリーンシート中の造孔材を焼失させることにより上記電極中に気孔を形成し、多孔質構造の電極としている。このようにグリーンシート中の造孔材を焼失して気孔を形成することにより、焼成後の電極を効率よく多孔質化することができる。また、この糯種の澱粉を含む植物の粉末からなる造孔材は、一般に用いられるカーボンに比べて分散性が良好なため、気孔が均一に分散した透過性(例えば、ガス透過性、電解液浸透性等)の良い電極を製造することができる。
ここに開示される電極の製造方法の好ましい一態様では、上記積層工程において、上記複数のグリーンシートを40℃未満の温度範囲で貼り合わせるようにしている。このように40℃よりも低温の状態で貼り合わせることにより、接合時におけるグリーンシート積層体の変形(例えばシート中の樹脂分が軟化・溶融することによるシート形状の変化)が有効に防止され、高い品質の電極を安定して容易に製造することができる。
ここに開示される電極の製造方法の好ましい一態様では、上記積層工程において、上記複数のグリーンシートを加圧せずに貼り合わせるようにしている。このように、大気圧とほぼ等しい無加圧状態においてシートを貼り合わせることにより、圧力分布のバラツキに起因する接合時や焼成時におけるグリーンシート積層体の割れ(クラック)、変形等が有効に防止され、高い品質の電極を安定して容易に製造することができる。
本発明の一実施形態に係る電極製造方法の製造フローを示す図である。 本発明の一実施形態に係る電極製造方法の製造工程を示す断面模式図である。 本発明の一実施形態に係る電極製造方法の製造工程を示す断面模式図である。 本発明の一実施形態に係る電極製造方法の製造工程を示す断面模式図である。 本発明の一実施形態に係るアノード支持形SOFCを示す断面模式図である。 従来のグリーンシート積層体を示す断面模式図である。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項(例えば、固体酸化物形燃料電池用電極やその製造方法)以外の事項であって本発明の実施に必要な事柄(各種の多孔質電極の電極材料やそれらの合成方法および配合、ならびに単セルおよびスタックの構築方法等)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
本発明が提供する電極形成材料は、多孔質構造の電極を形成するために用いられる電極形成材料であって、例えば、固体酸化物形燃料電池(SOFC)、バイオ燃料電池(BFC)、固体高分子形燃料電池(PEFC)、リチウム二次電池、キャパシタ、コンデンサ等を構成する多孔質電極を形成するための材料として用いることができる。
以下、図1〜図4を参照しつつ、ここに開示される電極形成材料、グリーンシート(積層体を含む。)、多孔質電極および電極製造方法について、具体的な一実施形態として固体酸化物形燃料電池(SOFC)用の電極を対象とする場合を例示しながら、説明を行う。
本実施形態に係る電極製造方法は、多孔質電極を製造する方法であって、図2に示すように、電子伝導性および/またはイオン伝導性を有する電極材料と、糯種の澱粉を含む植物の粉末からなる造孔材とを含む電極形成材料をシート状に成形してグリーンシート(未焼成の基材シート)10を複数用意する工程を包含する(図1のステップS10)。また、図3に示すように、複数のグリーンシート10を上記造孔材の接着作用により貼り合わせてグリーンシート積層体20を形成する積層工程を包含する(図1のステップS20)。さらに、図4に示すように、グリーンシート積層体20を焼成して多孔質構造を有する電極30を得る焼成工程を包含する(図1のステップS30)。
かかる製造方法によれば、従来のような有機接着剤を用いずに、グリーンシート10中に含まれる造孔材である糯種の澱粉を含む植物の粉末の接着作用(粘着力)のみで各シート10を接合することができる。かかる構成によると、低温(例えば40℃以下、好ましくは40℃未満、より好ましくは常温)かつ無加圧に近い状態で各シート10を接合できるので、高温かつ高圧条件で接合したときのようなグリーンシート積層体20の割れ、変形等が有効に防止され、高い品質の電極30が得られる。また、接着剤レスになることから、従来のような接着剤の塗布ムラに起因して接着界面に空隙が入り込むことが防止され、該空隙を起点として電極30が破損するような不具合を解消することができる。さらに、上記焼成の際に、造孔材を焼失(揮発)させることにより燃料極30中に気孔を形成するので、電極30を効率よく多孔質化できるとともに、この糯種の澱粉を含む造孔材はカーボン等の造孔材に比べて分散性が良好なため、気孔が均一に分散した透過性(例えば、ガス透過性、電解液浸透性等)が良く、電荷担体等の伝導パスの良好に形成された電極30が得られる。したがって、上記構成によると、例えば、ガス透過性が良好であり、かつ耐久性に優れたSOFC用電極30を安定して容易に製造することができる。
以下、各工程をさらに詳細に説明する。なお、以下では主として本発明をSOFC用の燃料極の製造に適用する場合を例として説明するが、これに限定することを意図したものではない。本発明はSOFC用の燃料極に限らず空気極にも適用できるのはもちろん、各種の多孔質電極に対しても好適に適用することができる。
<用意工程>
ステップS10のグリーンシート10を用意する工程は、図2に示すように、電極形成材料をシート状に成形してグリーンシート10を複数用意する工程である。
≪電極形成材料≫
ここで、電極形成材料は、電子伝導性および/またはイオン伝導性を有する電極材料と、糯種の澱粉を含む植物の粉末からなる造孔材とを含むことで特徴づけられる。
<電極材料>
電極材料としては、目的の電極を構成するのに従来より用いられている各種の電極材料の中から、所望の性能を発揮し得る材料を適宜選択して使用することができる。
例えば、一例として、SOFCの空気極用の電極材料としては、イオン伝導性あるいは電子−酸素イオン混合伝導性を示す希土類と3d遷移金属からなるペロブスカイト型酸化物等を構成する材料や、燃料極材料としては、Niと、ジルコニア系酸化物、セリア系酸化物、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、スカンジア安定化ジルコニア(ScSZ)等とのサーメット等を構成する材料を例示することができる。
また、バイオ燃料電池(BFC)や固体高分子形燃料電池(PEFC)用の電極材料としては、例えば、導電性カーボンと白金等の触媒金属等であり得る。
さらに、リチウム二次電池用の電極材料としては、リチウムイオンの吸蔵および放出が可能なリチウム遷移金属酸化物や、シリコン系の金属化合物、炭素材料等の電極活物質および導電性カーボン等の導電材等の材料であり得る。
キャパシタ(コンデンサ)の電極材料としては、導電性カーボン、タンタル,ニオブ等の金属材料、酸化ルテニウム、酸化マンガン、酸化ニッケル等の金属酸化物、チタン酸バリウム等の金属化合物など、各種のコンデンサに応じた電極活物質(誘電体)および導電材などであり得る。
<燃料極の材料>
より詳細には、例えば、上記SOFCセルの燃料極の材料としては、従来からSOFCセルの燃料極材料として用いられる物質の一種または二種以上を特に限定することなく使用することができる。例えば、Ni等の金属の酸化物(NiO等)と、ジルコニア系セラミック(好ましくはイットリア安定化ジルコニア(YSZ)、スカンジア安定化ジルコニア(ScSZ)等の安定化ジルコニア)、セリア及び酸化マンガン等のセラミックとのサーメットなどにより形成することができる。各種の金属、及び金属とセラミックとの混合物などを用いてもよい。金属としては、Ru、Pt、Au、Ag、Pd、Ir、Rh、Ni、Co、Cu及びFe等の金属又は2種以上の金属を含有する合金が例示される。また、金属とセラミックとのサーメットとしては、これらの金属又は合金と、ジルコニア系セラミック(好ましくはYSZ等の安定化ジルコニア)とのサーメットが挙げられる。中でも、酸化ニッケルと、ジルコニア系セラミックとのサーメットが好ましく、ジルコニア系セラミックがYSZまたはScSZであることがより好ましい。かかる燃料極の材料粉末の平均粒径としては特に制限されないが、平均粒径0.1μm〜10μm程度の粉末の使用が好ましい。
<造孔材>
本実施形態で用いる造孔材は、糯種の澱粉を含む植物の粉末からなる。
糯種の澱粉は、上記電極材料に対して強い接着作用(粘着力)を示す上に、焼成温度(例えば、800℃〜1500℃、好ましくは1000℃〜1500℃、より好ましくは1200℃〜1400℃)において焼失して造孔材としても機能することから、かかる発明では、造孔材とバインダとの機能を兼ね備えるものとしてこの糯種の澱粉を含む植物の粉末を用いるようにしている。さらに、後述するグリーンシートを形成するためのスラリー状組成物において該組成物をシート状に成形し易い粘度に調整し得る効果をも有している。
なお、澱粉は、本来アミロースおよびアミロペクチンの2種類の分子から構成されるが、中でも、本質的にアミロースを含まず、強い粘性を示すアミロペクチンのみからなる澱粉を、特に糯種の澱粉として、一般的な澱粉(粳種の澱粉)と区別している。すなわち、糯種の澱粉は、典型的には、アミロペクチンが100%であり、本質的にアミロースを含まない。しかしながら、糯種の植物は、通常粳種の劣性突然変異体であることから、植物(作物)としてみた場合に粳種の混入の可能性も考えられる。したがって、ここに開示される電極形成材料においては、糯種の澱粉として、含まれる澱粉は、約90質量%以上、好適には95質量%以上、より好適には98質量%以上のアミロペクチンを含有する澱粉を含む植物の粉末を、造孔材として用いるのが好ましい。なお、かかる構成においては、例えば粳種の澱粉が混入している場合であっても、澱粉全体としてのアミロペクチンの含有量が90質量%以上であればよい。換言すると、澱粉全体としてのアミロペクチンの含有量が90質量%以上であれば、粳種の澱粉が含まれていても良い。また、糯種の植物は、天然のものであっても良いし、遺伝子組み換え植物または混成育種であっても良い。
なお、糯種の澱粉を含む植物の粉末とは、糯種の澱粉を含む植物のうち、澱粉を多く含む部分(一部)を粉末状に加工したものであって良い。例えば、胚乳、塊根等の、澱粉を高含有率で含む植物中の特定の部位を粉末にしたものであってよい。このような糯種の澱粉を含む植物の粉末は、代表的には、各種の穀物(イネ科およびマメ科の種子)および地下茎類(イモ類など)等の糯種のものから好適に得ることができる。より具体的には、例えば、米、大麦、小麦、オート(燕麦)、とうもろこし、えんどう豆、じゃがいも、さつまいも、タピオカ、葛、サゴ、アマランス、バナナ、アロールート、カンナ等の糯種を例示することができる。これらの中でも、糯種の米(すなわち、もち米)や、糯種のとうもろこし(ワキシーコーン)に由来する糯性の澱粉は、電極材料(例えば導電性セラミック)に対して強い接着作用(粘着力)を示すことや、澱粉の含有率の高さ、日本国内での入手の容易さ等から、本発明の目的に適した造孔材として好適に使用し得る。特に、造孔材としての機能および接着材としての機能を両立させる観点からは、もち米の粉末の使用が好ましい。
なお、造孔材における糯種の澱粉の含有率は、特に規定されないが、造孔材全体を100質量%としたとき、50質量%以上であることが好ましく、より限定的には70質量%以上、更には、80質量%以上、例えば90質量%以上のものであることが望ましい。これらの糯種の澱粉を含む植物の粉末は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記の造孔材の形状については特に制限されない。製造容易性等の観点から、通常は、略球形の粉末を好ましく使用し得る。また、造孔材のサイズ(平均粒径)は、例えば、対象とする電極に形成する所望の多孔質構造に応じて、適宜決定することができる。例えば、電極材料粉末の平均粒径と同程度か、それよりも大きくすることが好ましい。具体的には、例えば、SOFCセルの燃料極(例えば導電性セラミック)用の電極形成材料の場合は、平均粒径がおよそ2μm以上の造孔材の使用が好ましく、より好ましくはおよそ5μm以上であり、特に好ましくは10μm以上である。造孔材の平均粒径が小さすぎると、焼成後に得られた電極中の細孔の細孔径が小さくなりすぎるので、透過性(例えば、該燃料極であればガス透過性)が悪化することがある。一方、造孔材の平均粒径が大きすぎると、電極中の細孔径が大きくなりすぎて機械的強度及び耐久性が低下するため、通常は、平均粒径がおよそ50μm以下(好ましくは40μm以下、特に好ましくは30μm以下)の造孔材を用いることが好ましい。造孔材の平均粒径は、その粒径の範囲に応じて、当該分野で公知の方法、例えばレーザ回折散乱法に基づく測定によって求めることができる。
造孔材の含有量は、上記の電極材料と造孔材との合計を100質量%としたとき、概ね1質量%〜15質量%とするのが好ましい。造孔材の含有量が少なすぎると、接着強度が不足してシート間に剥離が生じることがあり、また、焼成後に得られる電極の気孔率が低下するため、電極の透過性の確保ができない場合がある。一方、造孔材の含有量が多すぎると、電極の気孔率が増大しすぎるため、電極の機械的強度及び耐久性が低下することがある。接着強度、気孔率(透過性)および機械的強度の全てを満足させる観点からは、造孔材の含有量は概ね1質量%〜15質量%が適当であり、より好ましくは2質量%〜12質量%であり、特に好ましくは5質量%〜10質量%である。このような造孔材の含有量の範囲内であると、各シート間の十分な接着強度を維持しつつ、多孔質支持体として好適な気孔率を有する燃料極を安定して容易に得ることができる。
<他の電極構成成分>
ここに開示される電極形成材料は、上述した電極材料および造孔材の他に、一般的な電極の構成成分として使用され得る一種または二種以上の材料を必要に応じて含有することができる。そのような材料の例として、上記電極材料の結着剤(バインダ)として機能し得る各種の材料が挙げられる。該バインダとしては、ポリビニルブチラール(PVB)やポリビニルアルコール(PVA)等のポリマー材料が好ましく用いられる。しかしながら、かかる電極形成材料においては、造孔材がバインダとしての機能をも果たし得ることから、バインダの含有率は、上記電極材料と造孔材との合計を100質量%としたときの、その5質量%以下の割合で含まれるのが好ましい。
その他、燃料極の成分として使用され得る材料としては、分散剤や可塑剤が挙げられる。分散剤としてはアクリル酸系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリカルボン酸系樹脂等の材料が好ましく用いられる。可塑剤としてはグリセリンやフタル酸エステル等の材料が好ましく用いられる。
また、ここに開示される電極形成材料は、粉末(混合粉末)の状態ないしは該粉末が適切な液体媒体(溶媒)に分散されたスラリー状(ペースト状またはインク状を含む。以下同じ。)組成物の状態であってよい。スラリー状組成物に用いられる溶媒としては、例えば、プロパノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、トルエン、キシレン等の有機溶媒またはこれらの2種以上の組み合わせが挙げられる。中でもプロパノールとトルエンとの組み合わせが好ましい。スラリー状組成物における溶媒の含有率は特に限定されず、所望の固形分濃度を実現するべく調製することができる。例えば、溶媒の含有率を、スラリー状組成物の全体を100質量%として10質量%〜30質量%程度の範囲とすることが例示される。上記電極材料および造孔材等を溶媒に混合させる操作は、ボールミル、ホモディスパー、超音波分散機などの適切な混練機を用いて行うことができる。
以上の電極形成材料をシート状に成形してグリーンシート10を形成する手法については特に限定されない。例えば、粉末の形態の電極形成材料であれば適切な溶媒に分散させて適切なスラリー状に調製し、または、スラリー状組成物の形態の電極材料であればそのまま用いるか適切なスラリー状に調製するなどして、シート状に成形する方法を好ましく採用することができる。
スラリー状組成物からシート状に成形する操作は、従来の一般的な成形手段を特に限定することなく使用することができる。例えば、適当な塗布手段(例えば、ドクターブレード法、スクリーン印刷法、スキージ法、スピンコート法、抄造法)を使用して、図示しない支持材(キャリアシート)の面に上記スラリー状組成物を均一な厚さにコーティングすることにより成形し得る。その後、適当な乾燥手段でシート状塗布物を乾燥することによって、スラリー状組成物中の溶媒を除去する。スラリー状組成物から溶媒を除去することによって、電極材料と造孔材とを含有するグリーンシート(未焼成の基材シート)10が形成され得る。
上記グリーンシート10の厚みとしては特に限定されず、所望の電極を構成するに適切な厚みとすることができる。例えば、焼成時の湾曲を防止する観点からは薄ければ薄いほど好ましい。例えば、グリーンシートの厚みを0.5mm以下にすることが適当であり、好ましくはおよそ0.3mm以下であり、特に好ましくは0.1mm以下である。その一方で、厚みが薄すぎるグリーンシートは、成形が難しくなってくることに加えて、グリーンシートの取扱性および耐久性が低下する傾向にあるため、通常は、厚みが0.05mm以上(好ましくは0.08mm以上)となるように成形することが好ましい。
<積層工程>
このようにしてグリーンシートを用意(製造)した後、ステップS20の積層工程を実行する。積層工程では、図3に示すように、複数(ここでは5枚)のグリーンシート10を、該グリーンシート10中の造孔材の接着作用(粘着力)により貼り合わせてグリーンシート積層体20を構成する。このように、複数のグリーンシート10を造孔材(特にシート表面に露出している造孔材)の接着作用により貼り合わせることにより、低温かつ無加圧に近い状態(すなわち加圧されていない大気圧とほぼ等しい無加圧状態)で各シートを容易に接合できる。
上記接合時の加熱温度としては、概ね60℃以下の範囲内、例えば40℃未満の温度範囲とすることができる。このような比較的低い温度範囲であっても、造孔材に含まれる糯種澱粉の接着作用により各シートを十分に接合することができる。その一方で、加熱温度が高すぎると、シートの変形(例えばシート中の樹脂分が軟化・溶融することによるシート形状の変化)が生じ、グリーンシート積層体の平滑性が悪化するおそれがある。グリーンシート積層体の平滑性を良好にする観点からは、加熱温度は60℃以下であり、好ましくは55℃以下である。例えば、40℃以下(特には30℃以上40℃未満)の加熱温度が、接着強度と接合後平滑性とを両立する観点からは好適である。上記加熱温度を保持する加熱時間は、加熱温度にもよるが、概ね30秒〜300秒程度とするとよい。
また、上記接合時の圧力(荷重)としては、概ね1MPa以下(例えば大気圧〜1MPa)にすることができ、好ましくは0.5MPa以下であり、より好ましくは0.2MPa以下、更に好適には無加圧の状態である。1MPaを超える圧力条件下において接合した場合には、グリーンシート積層体に変形が生じるおそれがある。また、焼成後のグリーンシート積層体(即ち燃料極)にも変形や割れが生じるおそれがある。上記圧力の下限値はとくに制限されないが、概ね大気圧(無加圧)であるとよい。大気圧を下回る場合には、各シートを十分に接合できない場合があるため、加圧されていない大気圧とほぼ等しい無加圧状態で接合することが好ましい。
上記各シートを加熱して接合する操作は、従来の一般的な加熱手段を特に限定することなく使用することができる。例えば、複数のグリーンシートを重ね合わせた後、積層方向の上下から熱板式の加熱ユニットで挟み込み、1MPa以下の圧力条件下(好ましくは加圧されていない大気圧とほぼ等しい無加圧状態)で40℃未満で接合するとよい。
上記グリーンシート積層体20の厚みとしては特に限定されないが、概ね0.2mm〜1.0mmであることが適当であり、好ましくは0.4mm〜0.8mmである。例えば、グリーンシート積層体20の厚みが0.2mm以上であれば、アノード支持形SOFCにおいて固体電解質等を支持するための十分な機械的強度を有する多孔質支持体とすることができる。また、グリーンシート積層体20を構成するグリーンシートの枚数は特に限定されないが、概ね2枚〜10枚であることが適当であり、好ましくは3枚〜5枚である。
<焼成工程>
このようにして、グリーンシート積層体20を形成した後に、焼成工程を実行する。焼成工程では、図4に示すように、グリーンシート積層体20を焼成して造孔材を焼失させることにより多孔質構造を有する電極30を得る。
焼成温度については、造孔材を焼失させ得る温度であれば特に制限はない。例えば、900℃以上の温度範囲で、対象とする電極の構成材料に応じた温度を適宜決定することができる。この実施形態では、SOFC用の燃料極を焼成するにあたり、上記グリーンシート積層体20を、例えば1000℃〜1500℃(好ましくは1200℃〜1500℃、より好ましくは1300℃〜1400℃)の焼成温度にて大気中で焼成するようにしている。このとき、グリーンシート10中に含まれる造孔材を焼き飛ばし、電極30中に気孔を形成することにより、多孔質構造の焼成体を得ることができる。焼成温度としては1000℃〜1500℃であれば、電極30が十分に焼結し、また、焼成時に造孔材を効率よく焼き飛ばすことができる。焼成温度(最高焼成温度)を保持する時間は、焼成温度にもよるが、概ね0.5時間〜4時間程度、好ましくは1時間〜2時間程度とするとよい。また、焼成雰囲気は上述した大気雰囲気に限らず、必要に応じて大気より酸素がリッチな酸素雰囲気下、窒素ガス雰囲気下、不活性ガス雰囲気下等とすることができる。
以上のようにして、電極材料と造孔材とを含有する電極形成材料を用いて、グリーンシート10および電極30を好ましく作製することができる。例えば、複数のグリーンシート10を用いて多孔質構造のSOFC用燃料電極30を形成することができる。
このようにして得られた電極30は、電極材料と造孔材とを含有する複数のグリーンシート10を造孔材に含まれる糯種澱粉の接着作用により貼り合わせ、得られたグリーンシート積層体20を焼成することにより形成されたものである。したがって、従来のような有機接着剤をグリーンシート10の表面に塗布する必要がなく、製造プロセスを簡略化し、製造コストの削減や製造効率の向上を実現することができる。また、接着剤レスになることから、従来のような接着剤の塗布ムラ(接着面の凹凸)に起因して接着界面に空隙が残ることが防止され、該空隙を起点として燃料極30が破損するような不都合を解消できる。
さらに、低温かつ無加圧の状態で各シート10を接合できるので、高温かつ高圧条件で接合したときのような、接合時や焼成時におけるグリーンシート積層体20の割れ(クラック)、変形等が有効に防止され、平滑性のよい電極30が得られる。好ましい一態様では、上記接合後のグリーンシート積層体20の表面粗さ(Ra)が、およそ0.5μm以下(例えば0.1μm〜0.5μm)であり、好ましくは0.4μm以下であり、特に好ましくは0.35μm以下である。このような平滑性のよいグリーンシート積層体(ひいては電極)を用いることにより、より高性能な電池(例えば、SOFCセル)が構築され得る。なお、ここでいう「表面粗さ」とは、JIS B0601−2001に基づいて求められる算術平均粗さRa(以下、「表面粗さRa」ということもある。)をいう。この表面粗さRa[μm]は、例えば測定対象物の表面を顕微鏡で観察することにより、あるいは従来公知の触針式等の表面粗さ測定装置によって容易に測定することができる。
また、本実施形態によれば、上記焼成の際に造孔材が焼失する(揮発する)ので、製造された電極30中に造孔材が残らず、焼成後の電極30を容易に多孔質化することができる。加えて、かかる発明における造孔材は、従来一般に用いられるカーボンに比べて分散性が良好なため、気孔が均一に分散した(透過性が良好な)電極30を製造することができる。例えば、SOFC用燃料電極30の好ましい一態様では、上記燃料極30の水銀圧入法に基づく気孔率が、概ね10%〜50%の範囲であり、好ましくは20%〜35%の範囲である。このような所定の範囲内の気孔率を有する燃料極30であると、高い機械的強度と、優れたガス透過性(即ち、固体電解質層におけるガス接触面積の十分な確保)とを高いレベルで両立させることができる。かかる燃料極の平均細孔径(水銀圧入法に基づく)としては、例えば5.0μm以下(典型的には0.5〜2.0μm)が好ましい。
さらに、上記糯種の澱粉を含む植物の粉末からなる造孔材は、一般に造孔材として用いられるカーボンに比べて電極材料(例えば導電性セラミック)との接着性が良いことから、焼成後も粒子界面に残留炭素成分を高濃度で残留させることができる。好ましい一態様では、上記焼成後の電極30表面におけるC含有率が、該表面全体の1ppm〜10質量%(好ましくは10ppm〜5質量%、特に好ましくは100ppm〜1質量%)である。このように電極30中に炭素成分を高濃度で含有させることにより、電極30の導電性が格段に向上する。さらに、電極材料(例えば導電性セラミック)粒子界面に存在する炭素成分がバインダ(結着剤)として機能するため、電極30の機械的強度および耐久性を向上させることができる。したがって、より高性能な電極および電池(例えば固体酸化物形燃料電池および電極)を構築するのに寄与し得る最適な電極(燃料極)30が実現され得る。
なお、本実施形態で造孔材として用いられる糯種の澱粉を含む植物の粉末は、カーボンに比べて低コストで調達でき、しかも植物性であることから、人体への影響を低下させることができる。さらに、食用困難な植物原料、廃棄品のリサイクル原料由来で製造できるため、環境負荷軽減に貢献できる点でも有利である。
本実施形態に係る電極(例えば、ここでは燃料極)は、上記のように高性能であることから、種々の形態のSOFCセルの構成要素として好ましく利用され得る。例えば、ここに開示されるいずれかの方法により製造された燃料極を多孔質支持体とし、該多孔質支持体の表面に薄膜状の固体電解質と空気極とを形成したアノード支持形SOFCの構成要素として好ましく使用され得る。かかるアノード支持形SOFCの形状やサイズ、あるいはアノード支持形SOFCを構成する固体電解質(層)および空気極の構造等について特に制限はない。なお、ここに開示される電極製造方法は燃料極30に限らず、例えばカソード支持形SOFCの空気極にも適用することができる。
また、上記の電極形成材料、グリーンシート、多孔質電極および電極の製造方法は、SOFCを対象とするものに限らず、バイオ燃料電池(BFC)、固体高分子形燃料電池(PEFC)、リチウム二次電池、キャパシタ、コンデンサ等の多孔質電極備える各種の素子用として考慮することができる。
<アノード支持形SOFC>
以下、上述した方法を適用して製造された燃料極30を用いて構築されるアノード支持形SOFCの一実施形態につき、図5に示す模式図を参照しつつ説明する。
かかるアノード支持形SOFC100は、燃料極30と、該燃料極30の少なくとも一部の表面上に形成された(膜状の)固体電解質40と、該固体電解質40の表面上に形成された空気極50とを備えている。そして、かかる燃料極30を多孔質支持体(基材)として該燃料極30上に膜状の固体電解質(以下、単に「固体電解質膜」ということもある。)40、その上に空気極50の層(典型的には膜体)が形成されてなる積層体を基本構成要素として備えることにより上記アノード支持形SOFC100が構築されている。アノード支持形SOFC100は、燃料極30として、上述した電極製造方法を用いて製造された燃料極30が用いられている。かかる燃料極30については、先に説明したものと同様であるため、その詳細な説明を省略する。
<固体電解質層>
上記アノード支持形SOFCが備える固体電解質層40は、酸化物イオン伝導体により構成されている。固体電解質は、上記燃料極30上に積層されており、該燃料極30の形状に応じてその形状を適宜変更することができる。例えば、図5に示すように、シート状の燃料極30の上に積層されている固体電解質層40は、燃料極30と同様にシート状に形成され得る。
上記固体電解質層の材料には、従来からSOFCセルに用いられる物質の一種または二種以上を特に限定することなく使用することができる。例えば、酸化(空気)雰囲気および還元(燃料ガス)雰囲気のいずれにおいても酸素イオン伝導性が高く、ガス透過性の無い緻密な層を形成できる材料から構成され得る。この好適な材料として、ジルコニア系固体電解質が用いられる。典型的にはイットリア(Y)で安定化したジルコニア(YSZ)が用いられる。その他、好適なジルコニア系固体電解質として、カルシア(CaO)で安定化したジルコニア(CSZ)、スカンジア(Sc)で安定化したジルコニア(ScSZ)等が挙げられる。
上記固体電解質層を形成(燃料極上に積層)する方法としては、一般的なアノード支持形SOFCの固体電解質層の作製方法と同様でよい。例えば、平均粒径0.1〜10μm程度の固体電解質材料粉末とエチルセルロース等のバインダと分散剤とを適当な溶媒(例えば水)に混合させてスラリー状組成物を調製し、この組成物を燃料極30上にスクリーン印刷などにより塗布し乾燥させることにより未焼成の電解質層グリーンシートを作製する。この電解質層グリーンシートを大気雰囲気下にて焼成することより、薄膜状の固体電解質層40が得られる。このときの焼成温度は、例えば1000℃〜1400℃の範囲内であるとよく、焼成時間は、例えば1時間〜5時間の範囲内であるとよい。
焼成後に得られた固体電解質層40の厚さについては、固体電解質層40の緻密性が維持される程度に厚くする一方、またSOFCとして好ましい酸素イオン伝導度を供し得る程度に薄くなるように、両者をバランスさせて厚さ寸法を設定されることが好ましい。例えば、かかる厚さとして、0.01μm〜15μmが適当であり、好ましくは0.01μm〜10μmであり、より好ましくは0.1μm〜5μmである。
<空気極>
上記アノード支持形SOFCが備える空気極50は、一般的なSOFCと同様に、酸化雰囲気でも高耐久性の材料から構成されることが好ましい。例えば、ランタンコバルテート(LaCoO)系、ランタンマンガネート(LaMnO)系、ランタンフェライト(LaFeO)系、またはランタンニッケラート(LaNiO)系のペロブスカイト型酸化物、あるいはサマリウムコバルテート(SmCoO)系ペロブスカイト型酸化物等の多孔質体から構成されることが好ましい。
上記空気極を形成(固体電解質層上に積層)する方法としては、一般的なアノード支持形SOFCの空気極の作製方法と同様でよい。例えば、空気極として好適な材料、例えば平均粒径1μm〜10μm程度のLaCoO粉末とバインダと分散剤とを適当な溶媒に混合してスラリー状組成物を調製する。この組成物を固体電解質層40上にスクリーン印刷などにより塗布し乾燥させることにより未焼成の空気極グリーンシートを作製する。この空気極グリーンシートを大気雰囲気下にて焼成することより、多孔質な空気極50が得られる。このときの焼成温度は、例えば1000℃〜1400℃の範囲内であるとよく、焼成時間は、例えば1時間〜5時間の範囲内であるとよい。
上記焼成後に得られた空気極50の厚さについては、通常は概ね100μm以下(例えば1μm〜100μm、好ましくは10μm〜100μm、例えば10μm〜50μm)であればよい。また、かかる空気極層の気孔率(水銀圧入法による)としては、およそ20%〜60%が適当であり、好ましくは50%以下(典型的には30%〜50%)である。また、かかる空気極の平均細孔径(水銀圧入法に基づく)としては、例えば10μm以下(典型的には0.1μm〜5μm)が好ましい。
以上のようにして、多孔質構造の燃料極30と、酸化物イオン伝導体からなる固体電解質40と、多孔質構造の空気極50とを備えるアノード支持形の固体酸化物形燃料電池(単セル)100が製造される。
なお、上記説明においては、上記燃料極上に積層した未焼成の電解質層グリーンシートを焼成して固体電解質層を形成した後、未焼成の空気極グリーンシートを上記焼成後の固体電解質層の上に積層し、再び焼成することによって上記SOFCを製造したが、これに限定されない。例えば、燃料極用のグリーンシート積層体20を用意し、その上に電解質層用グリーンシートと空気極用グリーンシートとを順次積層し、それらをまとめて焼成することにより、燃料極30と固体電解質層40と空気極50とを一度の焼成で同時に形成してもよい。
以下、本発明に関する実施例を説明するが、本発明を以下の実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
<サンプル1>
(1)グリーンシート積層体
電極材料として、8mol%イットリア安定化ジルコニア(YSZ)粉末(平均粒径:約1μm)と酸化ニッケル(NiO)粉末とを6:4の質量比で混合した混合粉末を、造孔材として、もち米(平均粒径:5μm)を用意した。これらを、電極材料と造孔材との合計に占めるもち米の割合が0.5質量%となるように混合し、これにバインダとしてのPVBを、電極材料と造孔材との合計を100質量%として7質量%となるように加えて、分散剤としてのポリカルボン酸系樹脂、可塑剤としてのフタル酸ジブチル、および溶媒(ここでは2−プロパノールとトルエンとを質量比4:1で混合したものを使用した。)とともに混練した。次いで、この混練物(ペースト状組成物)をキャリアシート上にドクターブレード法によりシート状に成形(塗布・乾燥)し、厚み0.1mmのグリーンシートを2枚作製した。この2枚のグリーンシートを、キャリアシートごと所定サイズに切断してグリーンシートが対向するように相互に重ね合わせ、積層方向の上下からキャリアシートを介して熱板式の加熱ユニットで挟み込み、無加圧で加熱することにより、2枚のグリーンシートが貼り合わされてなるグリーンシート積層体を作製した。なお、本例では、加熱ユニットによる加熱を、30℃、40℃の異なる温度で行った。
<サンプル2>
本例では、造孔材の含有量を1.0質量%としたこと以外はサンプル1と同様にしてグリーンシート積層体を作製した。
<サンプル3>
本例では、造孔材の含有量を2.5質量%としたこと以外はサンプル1と同様にしてグリーンシート積層体を作製した。
<サンプル4>
本例では、造孔材の含有量を5質量%としたこと以外はサンプル1と同様にしてグリーンシート積層体を作製した。
<サンプル5>
本例では、造孔材の含有量を15質量%としたこと以外はサンプル1と同様にしてグリーンシート積層体を作製した。
<サンプル6>
本例では、造孔材の含有量を20質量%としたこと以外はサンプル1と同様にしてグリーンシート積層体を作製した。
<サンプル7>
本例では、造孔材として米粉(平均粒径:5μm,アミロペクチン量:50質量%)を用い、この造孔材の含有量を2.5質量%としたこと以外はサンプル1と同様にしてグリーンシート積層体を作製した。
<サンプル8>
本例では、造孔材の含有量を5質量%としたこと以外はサンプル7と同様にしてグリーンシート積層体を作製した。
<サンプル9>
本例では、造孔材の含有量を10質量%としたこと以外はサンプル7と同様にしてグリーンシート積層体を作製した。
<サンプル10>
本例では、造孔材としてカーボン粉末(平均粒径:5μm)を用い、この造孔材の含有量を10質量%としたこと以外はサンプル1と同様にしてグリーンシート積層体を作製した。
上記得られたサンプル1〜10のグリーンシート積層体のシート界面を走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)で観察し、グリーンシート間で剥離が確認されたか否かで「接合状態」を評価した。また、各グリーンシート積層体の表面粗さ(Ra)を前記方法により測定した。これらの結果を表1に示した。なお、表1において、グリーンシート間に剥離が観察されず接合状態が良好なものを「○」、グリーンシート間に若干の剥離が観察されたものの実使用レベルでは問題がないものを「△」、グリーンシート間に剥離が観察され、接合状態が不良なものを「×」と表記した。



Figure 0005912536
表1に示すように、サンプル2〜5に係るグリーンシート積層体は、加熱温度が30℃および40℃のいずれにおいてもグリーンシート間に剥離がほとんど観察されず、シート間の接合状態が良好であった。これに対し、造孔材の添加量が少ないサンプル1は、接合状態は良好ではあるものの、粘着力が足りずにシート間に剥離が観察された。また、造孔材の添加量が多いサンプル6では、接合状態は良好ではあるものの、グリーンシートがキャリアシートに固着したためキャリアシートとの剥離が困難であった。
また、造孔材を米粉にしたサンプル7〜9では、米粉のアミロペクチンの含有量が少ないため、加熱温度を40℃とした場合にはシート間の接合状態を良好にすることができたものの、その場合の添加量は5質量%以上と多めにする必要があり、また、加熱温度を30℃とした場合には、接合状態が不良となってしまった。
造孔材をカーボン粉末にしたサンプル10では、加熱温度が30℃および40℃のいずれの場合でも、良好な接合を実現することはできなかった。
以上の結果から、糯種の澱粉を含む植物の粉末を造孔材として用いることで、造孔材の配合量が1〜15質量%と少ない量であっても、グリーンシートを低温(40℃以下)かつ無加圧で貼り合わせることにより、接着状態が良好なグリーンシート積層体が得られることが確認された。また、30℃とより低温での接合も可能であることが確認された。
(2)燃料極
さらに、上記各例の40℃で接合が可能であったサンプル1〜10のグリーンシート積層体を用いて燃料極を作製した。具体的には、各例のグリーンシート積層体を大気中において1400℃まで昇温し、1時間保持して焼結体(燃料極)を得た。かかる燃料極の気孔率を測定し、表1に示した。サンプル1〜10に係る燃料極の気孔率は、いずれも多孔質支持体として好適であった。
また、上記各例の燃料極表面におけるC含有率を前記方法により測定した。その結果、カーボンからなる造孔材を添加したサンプル10に係る燃料極は、C含有率が1ppm未満であるのに対し、もち米粉末からなる造孔材を添加したサンプル1〜6および米粉からなる造孔材を添加したサンプル7〜9では、C含有率が1ppm以上10質量%以下となった。もち米粉末および米粉は電極材料との接着性が良いため、これらを用いた燃料極(サンプル1〜6)は、もち米粉末あるいは米粉が燃え抜けた後の炭素成分が残留しやすくなり、カーボンを用いた燃料極(サンプル10)に比べて高いC含有率を示したものと考えられる。
さらに、各例の燃料極の強度評価試験をJIS R1601に準拠して行った。その結果、造孔材としてカーボンを添加したサンプル10に係る燃料極は、耐性強度が30MPaであり、耐久性に欠けるものであった。これに対し、もち米粉末からなる造孔材を添加したサンプル1〜6および米粉からなる造孔材を添加したサンプル7〜9では、耐性強度が100MPa以上となり、極めて高い耐久性性能を示した。例えば、サンプル1〜6およびサンプル7〜9に係る燃料極は、造孔材が燃え抜けた後の残留炭素成分を多く含むため、粒子界面に存在する炭素成分がバインダとして機能することで燃料極の機械的強度が向上したものと考えられる。耐久性向上の観点からは、燃料極表面におけるC含有率を1ppm以上10質量%以下にすることが好ましい。
以上の結果から、本試験例によると、糯種の澱粉を含む植物の粉末からなる造孔材を含むグリーンシートを低温かつ無加圧に近い状態で貼り合わせることによって、接着状態が良好なグリーンシート積層体を形成することができた。そのため、本構成によると、シート間の剥離等の不具合が抑制された耐久性の高い電極、例えば固体酸化物形燃料電池用電極を実現することができる。
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である。
1 グリーンシート
2 接着層
3 積層体
10 グリーンシート
20 グリーンシート積層体
30 燃料極(電極)
40 固体電解質層
50 空気極
100 アノード支持形SOFC(固体酸化物形燃料電池)

Claims (13)

  1. 多孔質構造の電極を形成するために用いられる電極形成材料であって、
    電子伝導性および/またはイオン伝導性を有する電極材料と、
    造孔材と、を含み、
    前記造孔材は、澱粉成分におけるアミロペクチンの含有量が90質量%以上の穀物および/または地下茎の粉末である、電極形成材料。
  2. 前記造孔材は、もち米の粉末からなる、請求項1に記載の電極形成材料。
  3. 前記電極材料と前記造孔材との合計に占める前記造孔材の割合が、1〜15質量%である、請求項1または2に記載の電極形成材料。
  4. さらに、バインダを含み、
    前記バインダが、前記電極材料と前記造孔材との合計を100質量%としたときの、その7質量%以下の割合で含まれている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電極形成材料。
  5. 前記バインダが、前記電極材料と前記造孔材との合計を100質量%としたときの、その5質量%以下の割合で含まれている、請求項4に記載の電極形成材料。
  6. さらに、溶媒を含み、前記電極形成材料が前記溶媒中に分散されてスラリー状に調製されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の電極形成材料。
  7. 前記電極が、固体酸化物形燃料電池に用いられる電極であり、該電極を形成するために用いられる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の電極形成材料。
  8. 多孔質構造の電極を形成するために用いられるグリーンシートであって、
    請求項1〜7のいずれか1項に記載された電極形成材料を用いて形成されている、グリーンシート。
  9. 請求項8に記載の複数のグリーンシートが相互に重ね合わされることで無加圧で貼り合わせられて形成された、グリーンシート積層体。
  10. 固体酸化物形燃料電池に用いられる電極を構築するために形成されている、請求項9に記載のグリーンシート積層体。
  11. 多孔質構造の電極を製造する方法であって、
    請求項1〜7のいずれか1項に記載の電極形成材料をシート状に成形してグリーンシートを複数用意する工程と、
    前記複数のグリーンシートを相互に重ね合わせることで無加圧で貼り合わせて積層体を構成する積層工程と、
    前記グリーンシート積層体を焼成して多孔質構造を有する電極を得る焼成工程と、
    を包含する、電極の製造方法。
  12. 前記焼成工程において、前記グリーンシート中の造孔材を焼失させることにより前記電極中に気孔を形成し、多孔質構造の電極とする、請求項11に記載の電極の製造方法。
  13. 前記積層工程において、前記複数のグリーンシートを40℃未満の温度範囲で貼り合わせる、請求項11または12に記載の電極の製造方法。
JP2012001460A 2012-01-06 2012-01-06 電極形成材料とこれにより形成されるグリーンシート、多孔質電極および固体酸化物形燃料電池ならびに固体酸化物形燃料電池の製造方法 Active JP5912536B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012001460A JP5912536B2 (ja) 2012-01-06 2012-01-06 電極形成材料とこれにより形成されるグリーンシート、多孔質電極および固体酸化物形燃料電池ならびに固体酸化物形燃料電池の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012001460A JP5912536B2 (ja) 2012-01-06 2012-01-06 電極形成材料とこれにより形成されるグリーンシート、多孔質電極および固体酸化物形燃料電池ならびに固体酸化物形燃料電池の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2013143189A JP2013143189A (ja) 2013-07-22
JP5912536B2 true JP5912536B2 (ja) 2016-04-27

Family

ID=49039670

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012001460A Active JP5912536B2 (ja) 2012-01-06 2012-01-06 電極形成材料とこれにより形成されるグリーンシート、多孔質電極および固体酸化物形燃料電池ならびに固体酸化物形燃料電池の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5912536B2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR101511582B1 (ko) 2013-12-10 2015-04-14 재단법인 포항산업과학연구원 고체산화물 연료전지용 금속지지체의 제조방법 및 이를 포함하는 고체산화물 연료전지
KR102466472B1 (ko) * 2020-09-17 2022-11-15 한국과학기술연구원 미세 구조체를 포함하는 음극재 및 이를 포함하는 전극

Family Cites Families (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP3886020B2 (ja) * 1995-03-20 2007-02-28 日本碍子株式会社 セラミックス積層焼結体の製造方法およびグリーン成形体の積層体
JP2002175814A (ja) * 2000-12-05 2002-06-21 Ngk Spark Plug Co Ltd 固体電解質型燃料電池用燃料極の製造方法並びに固体電解質型燃料電池及びその製造方法
CA2486931A1 (en) * 2002-05-22 2003-11-27 Nippon Shokubai Co., Ltd. Solid oxide type fuel cell-use electrode support substrate and production method therefor
JP2005327511A (ja) * 2004-05-12 2005-11-24 Nippon Shokubai Co Ltd 固体酸化物形燃料電池用アノード支持基板およびその製法
JP5452277B2 (ja) * 2010-02-18 2014-03-26 株式会社日本触媒 アノード支持型ハーフセルの製造方法
JP5498230B2 (ja) * 2010-03-31 2014-05-21 株式会社日本触媒 アノード支持型ハーフセルの製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2013143189A (ja) 2013-07-22

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5469795B2 (ja) サーメット電解質を用いたアノード支持固体酸化物燃料電池
JP2007529852A5 (ja)
WO2013015115A1 (ja) 固体酸化物形燃料電池
JP5615771B2 (ja) 固体酸化物形燃料電池システム及び導電性接合材
JP6695677B2 (ja) 固体酸化物形燃料電池用の電極材料とこれを用いた固体酸化物形燃料電池
JP6491936B2 (ja) 固体酸化物形燃料電池の製造方法、固体酸化物形燃料電池のハーフセルグリーンシートおよび固体酸化物形燃料電池
JP2015088284A (ja) 固体酸化物形燃料電池
JP5912536B2 (ja) 電極形成材料とこれにより形成されるグリーンシート、多孔質電極および固体酸化物形燃料電池ならびに固体酸化物形燃料電池の製造方法
JPWO2011074445A1 (ja) 燃料電池セル及び固体酸化物型燃料電池
JP5509142B2 (ja) 複合材料およびその利用
JP6382037B2 (ja) 燃料電池用アノードおよび燃料電池単セル
JP5546560B2 (ja) 固体酸化物形燃料電池用電極およびその製造方法
JP5520589B2 (ja) 燃料電池セルの製造方法
JP6151212B2 (ja) 低温作動型の固体酸化物形燃料電池およびその製造方法
JP6188569B2 (ja) 電極材料とその利用
WO2004109827A1 (ja) 電気化学セル用基板および電気化学セル
JP5030747B2 (ja) 固体酸化物形燃料電池の製造方法および該方法に用いる焼成治具
WO2015037618A1 (ja) 燃料電池単セルおよびその製造方法
JP2010186623A (ja) 導電性接合材及びこれを備える固体電解質型燃料電池
JP5766160B2 (ja) 多孔質電極形成用グリーンシート、焼成用補助シートおよびその利用
JP7134646B2 (ja) 固体酸化物形燃料電池とこれに用いる電極材料
JP6050742B2 (ja) 固体酸化物形燃料電池および該電池を製造する方法と材料
JP6075924B2 (ja) 燃料電池単セルおよびその製造方法
JP7048247B2 (ja) Sofcの空気極用接合部材とこれに用いる導電性接合材料
JP5916661B2 (ja) 固体酸化物形燃料電池形成用のグリーンシートの製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20140724

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20150227

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20150305

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20150417

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20151029

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20151215

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20160107

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20160216

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20160303

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20160401

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5912536

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250