JP7062522B2 - Sofcの接続構造とこれに用いる導電性接合材料 - Google Patents

Sofcの接続構造とこれに用いる導電性接合材料 Download PDF

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Description

本発明は、SOFCの空気極とインターコネクタとを接続する接続構造とこれに用いる導電性接合材料とに関する。
固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell:SOFC,以下、単に「SOFC」という。)は、種々のタイプの燃料電池の中でも、発電効率が高い、環境への負荷が低い、多様な燃料の使用が可能であるなどの利点を有することから、その需要が高まっている。SOFCの単セルは、本質的な構成として、酸素イオン伝導体からなる緻密な層状の固体電解質を基本とし、この固体電解質の一方の面に多孔質構造の空気極(カソード)が、他方の面に多孔質構造の燃料極(アノード)が形成されている。そして一般には、この単セルが複数個積み重ねられ(スタックされ)電気的に接続されて、SOFCスタックとして使用されている。単セルの接続には、インターコネクタと、このインターコネクタとSOFCとを電気的に接続する接合部材が使用される。近年、インターコネクタとしては、固体電解質であるイットリア安定化ジルコニア(YSZ)と熱膨張係数が近く、耐酸化性に優れたフェライト系ステンレス鋼の使用が検討されている。
特開2011-108621号公報
この金属製のインターコネクタについては、SOFCの運転温度(例えば700℃以上)において、フェライト系ステンレス鋼に高濃度に含まれるクロム(Cr)が拡散し、特に空気極材料と反応して空気極の性能を劣化(クロム被毒)させるという問題が存在する。このフェライト系ステンレス鋼からのクロムの拡散は、最近になって、インターコネクタの表面をスピネル型結晶構造を有する遷移金属酸化物によって表面処理すること(例えば、特許文献1参照)によって好適に抑制されることが知見された。そのため、SOFC用の金属製インターコネクタとしては、フェライト系ステンレス鋼からなる基材の表面を、スピネル型遷移金属酸化物でコーティング(以下、スピネルコーティングという。)した状態で出荷されている。
しかしながら、このスピネルコーティングは接合性が十分とは言えず、SOFCの運転に伴う温度変化に際して剥離やクラックが発生し、接合界面の抵抗が増大しやすい傾向がある。特に、SOFCでは、起動時の急速加熱やメンテナンスまたは異常時等の運転停止の際の時間短縮を目的として、ヒートサイクル耐性の更なる向上が求められている。そのため、スピネルコーティングを備えた金属製インターコネクタを使用する場合、セラミック材料からなるインターコネクタを用いる場合と比較して接合強度が劣るという課題があった。
本発明は上記の従来の問題を解決すべく創出されたものであり、その目的は、スピネルコーティングを備えた金属製インターコネクタを使用する場合であっても、例えば、SOFCの空気極とインターコネクタとを電気伝導性を確保しつつ、高い接合強度で接合することができる接合構造を提供することである。
上記目的を実現するべく、本発明によって、SOFCの空気極と金属製インターコネクタとを接合する接合構造が提供される。この接合構造は、SOFCの空気極と、金属製インターコネクタと、上記空気極および上記金属製インターコネクタを接合する接合部材とを含む。ここで金属製インターコネクタは、少なくともFeとCrとを含む金属基材と、この金属基材の上記接合部材に対向する側の表面に備えられ、一般式:M (ただし、式中のMは、遷移金属から選択される1以上の元素である。);で表される第1スピネル相を含むスピネル層と、を備える。また、上記接合部材は、一般式:ABO(ただし、式中のAは、La、SrおよびBaからなる群から選択される2以上の元素であり、Bは、少なくともCoを含む1以上の元素である。);で表されるペロブスカイト相と、一般式:M (ただし、式中のMは、Ni、Fe,CoおよびCuからなる群から選択される2以上の元素である。);で表される酸化物相と、を含む。
上記構成において、金属製インターコネクタは表面にスピネル層を備えており、Crの拡散が抑制されている。また、SOFCの空気極は、ペロブスカイト型遷移金属酸化物を主体として構成されている。そして、ここに開示される接合部材は、上記一般式で特定されるペロブスカイト相と酸化物相とを含む。接合部材が上記酸化物相を含むことで、金属製インターコネクタの表面のスピネル層に対する物理的接合性と電気的な接合性とが改善される。このような効果が発現される理由は明らかではないが、SOFCの運転温度において、このペロブスカイト型遷移金属酸化物はバンド伝導を示し、上記組成の酸化物相はスピネル型遷移金属酸化物となり得て、ホッピング伝導を示し得る。このことにより、接合部材は、良好な電気伝導性を実現する。また、接合部材は、上記ペロブスカイト相と酸化物相とを含むことから、金属製インターコネクタのスピネル層に対して高い接合性を示すと共に、SOFCの空気極に対しても高い接合性を維持することができる。これらは、例えば焼結により一体化されていることから、接合界面においても電気的に良好な接合が実現され、界面抵抗も低く抑えることができる。これにより、接合強度と界面抵抗特性とを両立させた接合構造が提供される。
ここに開示される接合構造の好ましい一態様において、上記ペロブスカイト相は、上記元素AとしてLaおよびSrを含み、上記元素BとしてCoを含む。例えば、ペロブスカイト相は、ストロンチウム・コバルタイト、ランタン・ストロンチウム・コバルタイトであることが好ましい。このようなペロブスカイト相は、例えば、SOFCの空気極材料として汎用されている材料と類似か等しい結晶構造を有し、その熱特性が類似したものであり得る。このような構成によって、例えば600℃以上800℃以下程度の低温においてもSOFCの発電性能を良好に維持することができる接合構造が提供される。
ここに開示される接合構造の好ましい一態様において、上記酸化物相は、NiFe、NiCo、およびCoFeから選択されるいずれか1種を主相とする。
ここで、「主相」とは、スピネル相が上記いずれか1種の酸化物からなる相を50mol%以上含んでいることを意味する。このことにより、接合材は、金属製インターコネクタの表面のスピネル層との接合性が改善される。加えて、例えば室温から、600℃以上800℃以下程度の温度範囲に亘る厳しいヒートサイクルが繰り返し付加された場合であっても、良好な接合性を維持することができる。
ここに開示される接合構造の好ましい一態様において、上記接合部材において、上記ペロブスカイト相と上記酸化物相との質量比は、ペロブスカイト相:酸化物相として、90:10~20:80である。このことにより、空気極と金属製インターコネクタとの良好な接合性とを実現できる接合構造が提供される。
ここに開示される接合構造の好ましい一態様において、上記金属基材は、フェライト系ステンレス鋼である。フェライト系ステンレス鋼は、固体電解質であるイットリア安定化ジルコニア(YSZ)に近い熱膨張係数(Coefficient of Thermal Expansion:CTE)を備えている。また、フェライト系ステンレス鋼は、比較的高い濃度でクロムを含むことから、酸素含有雰囲気下で鋼の表面に緻密で密着性の高い耐酸化性の不動態膜を形成する。このことにより、金属基材はSOFCの運転環境において、腐食することなく良好な導電性および耐酸化性を、長時間に亘って維持することができる。このことにより、SOFCの運転および停止に基づく温度変化に伴い、空気極や金属製インターコネクタとの接合部に内部応力が発生することが抑制される。これによって、長期に亘って安定した接合構造が実現されるために好ましい。
他の側面において、ここに開示される技術は、固体酸化物形燃料電池の空気極と金属製インターコネクタとを接合する接合部材を形成するための導電性接合材料を提供する。ここで、上記金属製インターコネクタは、少なくともFeとCrとを含む金属基材と、上記金属基材の上記接合部材に対向する側の表面に備えられ、一般式:M (ただし、式中のMは、遷移金属から選択される1以上の元素である。);で表される第1スピネル相を含むスピネル層と、を備えている。そして、導電性接合材料は、一般式:ABO(ただし、式中のAは、La、SrおよびBaからなる群から選択される2以上の元素であり、Bは、少なくともCoを含む1以上の元素である。);で表されるペロブスカイト型結晶構造を有するペロブスカイト酸化物粉体と、Ni、Fe,CoおよびCuからなる群から選択される2以上の元素を含む合金粉体と、を含む。上記の構成によると、接合部材中にペロブスカイト酸化物相と、合金粉末由来の酸化物相と、が形成される。この合金粉末由来の酸化物相はスピネル相を主として含み、例えば単純金属に由来して形成される酸化物相やスピネル型酸化物由来の酸化物相と比較して、導電性に優れ、また、金属製インターコネクタに対する接合性が良好となり得るために好ましい。詳細な理由は明らかではないが、このような接合性の向上は、金属製インターコネクタの表面に形成されるスピネル層と、合金粉末に含まれる上記金属種とが固溶しやすいことによるものと考えられる。そして第1スピネル相を含むスピネル層によってCr被毒は抑制される。このことにより、例えば600℃以上800℃以下程度の低温においても、Cr被毒を抑制し得る金属製インターコネクタとの接合性が良好な接合部材を好適に形成することができる。
ここに開示される導電性接合材料の好ましい一態様において、上記合金粉体の平均粒子径は、上記ペロブスカイト酸化物粉体の平均粒子径よりも小さい。例えば、上記ペロブスカイト酸化物粉体の平均粒子径は0.1μm以上15μm以下であって、上記合金粉体の平均粒子径は0.1μm以上10μm以下であることが好ましい。これにより、合金粉体の割合を少なくした場合であっても、合金粉体による寄与を発揮できるために好適である。
ここに開示される導電性接合材料の好ましい一態様では、焼結助剤として、金属成分含有粉体をさらに含む。また、上記焼結助剤として、Cu含有粉体を含み、上記ペロブスカイト酸化物粉体および上記合金粉体の少なくとも1つは、上記BサイトにCuを含むことが好ましい。このことにより、ペロブスカイト酸化物粉体および合金粉体がより低い温度から焼結を開始し、より低温で接合性の良好な接合部材を作製することができる点において好ましい。また、焼結助剤がCu含有粉体であることで、ペロブスカイト酸化物粉体および合金粉体の焼結性がより一層改善されて、密着性、接合性に優れた接合部材を作製することができるために好ましい。
ここに開示される導電性接合材料の好ましい一態様において、上記ペロブスカイト酸化物粉体および合金粉体を分散させる分散媒を含み、ペースト状(スラリー、ディスパーションなどの形態を含む。以下同じ。)に調製されている。このことにより、ペロブスカイト酸化物粉体および合金粉体の均一分散性を高めることができ、また、印刷や塗布などの供給手法を好適に採用できる導電性接合材料が提供されるために好ましい。
ここに開示される導電性接合材料の好ましい一態様において、ペースト状に調製された導電性接合材料であって、150℃で乾燥後に850℃で焼成したときの焼成収縮率が3%以下である。このことにより、焼成時の収縮を抑制して、金属製インターコネクタとの密着よく接合部材を作製することができる。
以上の通り、ここに開示される技術によると、SOFCの空気極と金属製インターコネクタとを密着性および接合性よく接合することができる導電性接合材料が提供される。したがって、ここに開示される技術は、燃料極と固体電解質と空気極とを備えるSOFCと、金属製インターコネクタと、上記空気極と上記金属製インターコネクタとを接合する接合部材と、を備えるSOFCスタックをも提供する。ここで上記接合部材は、上記のいずれかに記載の導電性接合材料の焼成物により構成されている。この導電性接合材料は、例えば900℃以下の低温で焼成することによって、上記接合部材を好適に形成することができる。したがって、SOFCのスタックに際し、SOFCを例えば1000℃以上の高温に晒す必要が無いため、SOFCの単セルにおける各種成分のマイグレーションや劣化が抑制されたものとして提供される。
一実施形態に係るSOFCスタックを模式的に示す分解斜視図である。 (a)は一実施形態に係る接合構造についてのEDX分析領域を示すSEM像であり、(b)~(g)はそれぞれLa,Sr,Fe,Co,Cr,Oの元素マップである。 (1)Fe-Ni合金ペーストと、(2)Fe-Co合金ペーストの焼成後のXRD分析結果である。 (a)~(d)は、Coマップの画像解析の様子を説明する図である。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項(例えば、導電性接合材料および接合部材)以外の事柄であって、本発明の実施に必要な事柄(例えば、本発明を特徴付けないSOFCの単セルの構成や、SOFCの製造および運転プロセス等)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、本明細書において数値範囲を示す「X~Y」との表記は、特にことわりのない限り、「X以上Y以下」を意味する。
[SOFCスタック]
図1は、一実施形態に係るSOFCスタック1を模式的に示す分解斜視図である。ここに開示される技術により提供されるSOFCスタック1は、複数のSOFCの単セル10A、10Bと、複数の金属製のインターコネクタ50、50Aとを備えている。SOFCスタック1は、SOFCの単セル10A、10Bが、金属製インターコネクタ50、50Aを介して積み重ねられたスタック構造を有する。SOFCスタック1は、公知の製造方法に準じて製造することができる。
単セル10A、10Bの構成は従来と同様であってよく、特に限定されない。本実施形態では、単セル10A、10Bは、それぞれ、固体電解質層30を基本とし、この固体電
解質層30の一方の面に空気極(カソード)20を、他方の面に燃料極(アノード)40を一体的に備えている。
固体電解質層30は、空気極20と燃料極40との間に位置する。固体電解質層30は、酸素イオン(O2-)を選択的に透過する役割を有する。また、固体電解質層30は、空気極20を流れるガスと、燃料極40を流れるガスとを分離する役割を併せ持つ。この固体電解質層30は、酸素イオン伝導材料によって構成される緻密な薄層により構成される。酸素イオン伝導材料は、例えば、イットリア等の安定化剤で安定化されたジルコニア(例えば、YSZ:Yttria stabilized zirconia)や、ガドリニア等のドープ剤がドープされたセリア(例えば、GDC:Gadolinia doped ceria)等である。
空気極20は、固体電解質層30の一方の表面に、酸素イオンを相対的に高濃度に供給する役割を有する。空気極20には、酸素イオンの原料たる酸素を含む、酸素含有ガス(典型的には空気等)が供給される。空気極20は、酸素から酸素イオンを生成する。空気極20は、酸素イオンを効率よく生成するために、酸素イオン電子複合伝導材料から構成される多孔質体である。酸素イオン電子複合伝導材料は、固体電解質との反応性が低いとの観点から、例えば、ランタンコバルタイト(LaCoO)系やランタンマンガナイト(LaMnO)を主体とするペロブスカイト型酸化物である。
燃料極40は、固体電解質層30の他方の表面の酸素イオンの濃度を相対的に低くする役割を有する。燃料極40には、酸素イオンと反応して酸素イオンを消費することができる燃料ガスが供給される。燃料ガスは、典型的には、水素(H)または炭化水素(例えばメタン;CH)、アンモニア(NH)等である。燃料極40は、酸素イオンと燃料ガスとの反応を促進する役割を有する。また、燃料極40は、酸素イオンの消費により放出される電子を受け取り、外部負荷へと伝導する役割を有する。燃料極40は、例えば、触媒作用を有する触媒材料から構成される多孔質体である。触媒材料は、例えば、ニッケル系の金属材料(例えばNiやNiO)や、ニッケル系の金属材料と固体電解質材料(例えば、イットリア安定化ジルコニア)とのサーメットである。
金属製インターコネクタ50、50Aは、複数の単セル10A、10Bを相互に電気的に接続し、単セル10A、10Bで生成された電子を外部に取り出すための要素である。図1の中央に位置する金属製インターコネクタ50Aは、2つの単セル10A、10Bの間に介在して、単セル10A、10Bを直列に接続している。ただし、単セル10A、10Bは、並列に接続してもよい。金属製インターコネクタ50、50Aの表面には、図示しないスピネル層が備えられている。これによって、金属製インターコネクタ50、50AからのCrの拡散を抑制することができる。
金属製インターコネクタ50Aは、セル対向面52が空気極20に対向するように、単セル10Aとスタックされる。金属製インターコネクタ50Aは、セル対向面54が燃料極40に対向するように、単セル10Bとスタックされる。金属製インターコネクタ50、50Aの空気極20に対向する側のセル対向面52には、例えば複数の溝部が形成されており、酸素含有ガスが流れるための酸素含有ガス流路53を構成している。酸素含有ガス流路53は、図示しない酸素含有ガスの供給源に接続されている。また、金属製インターコネクタ50、50Aの燃料極40に対向する側のセル対向面54には、例えば複数の溝部が形成されており、燃料ガスが流れるための燃料ガス流路55を構成している。燃料ガス流路55は、図示しない燃料ガスの供給源に接続されている。金属製インターコネクタ50、50Aと単セル10Aとの間は、接合部材60によって気密に接合される。金属製インターコネクタ50、接合部材60および単セル10A、10Bが一体的に接合されることで、ここに開示される接合構造が構成される。
図1においては、空気極20の金属製インターコネクタ50に面する側の表面の全面に接合部材60を設けている。これにより、作業工程を簡略化して接合部材60を備えることができる。しかしながら、接合部材60は、セル対向面52と空気極20との間にのみ設けることもできる。また、接合部材60は、金属製インターコネクタ50、50Aの表面の一部または全部に設けることもできる。さらに、接合部材60は、セル対向面54と燃料極40との間に設けることもできる。
SOFCの発電時には、SOFCスタック1は、600℃以上、例えば600~900℃程度の高温域にまで昇温される。また、このような作動温度において、酸素含有ガス流路53には、酸素含有ガス、例えば空気(Air)が供給される。燃料ガス流路55には、燃料ガス、例えば水素(H)が供給される。固体電解質層30の一方の表面と他方の表面とに酸素分圧の異なるガスが供給されることにより、酸素濃度差が生じる。このことが起電力となって、空気極20では酸素が分解されて、酸素イオンが形成される。酸素イオンは空気極20から燃料極40に向けて、固体電解質層30の内部を移動する。燃料極40では、酸素イオンと燃料ガスとが反応して水(HO)が生成されるとともに、電子が放出される。これにより、SOFCによる電気エネルギーの生成が実現される。
なお、この実施形態では、単セル10A、10Bがそれぞれ3層構造である。しかしながら、単セル10A、10Bの構造はこれに限定されない。単セル10A、10Bは、上記以外の層を有していてもよい。例えば、固体電解質層30と空気極20との間に両者の界面を安定化させるための反応抑止層(図示せず)を備えていてもよい。反応抑止層は、例えばYSZやGDCからなる多孔質体により構成することができる。
また、単セル10A、10Bは、固体電解質層30や空気極20に比べて燃料極40を厚めに形成することができる。このような単セル10A、10Bは、燃料極40が支持体としての機能を併せ持つ、燃料極支持型(Anode-Supported Cell:ASC)のセルである。一方で、単セル10A、10Bは、例えば、固体電解質層30を厚くした、電解質支持型(Electrolyte-Supported Cell:ESC)のセルであってもよいし、空気極20を厚くした空気極支持型(Cathode-Supported Cell:CSC)のセルであってもよい。また、燃料極40の外側(固体電解質層30とは反対側)に多孔質の金属シートを備えたメタルサポートセル(Metal-Supported Cell:MSC)であってもよい。さらに、単セル10A、10Bの形態も特に限定されない。具体的には示さないが、単セル10A、10Bは、例えば、平板型(Planar)、MOLB型、縦縞円筒型(Tubular)、あるいは円筒の周側面を垂直に押し潰した扁平円筒型(Flat tubular)、一体積層型等の種々の構造であってよい。
[金属製インターコネクタ]
ここで、具体的には図示しないが、SOFCスタック1に用いられる金属製インターコネクタ50、50Aは、金属基材と、スピネル層と、を備えている。
金属基材は、金属製インターコネクタの主体となる要素であって、SOFCの運転温度域における電子導電性、耐熱性、および、単セル10A、10B(特に、固体電解質層30)に近いCTEが求められる。かかる観点から、金属製インターコネクタ50、50Aは、少なくとも鉄(Fe)とクロム(Cr)とを含む鉄-クロム系合金(Fe-Cr合金)により好ましく構成することができる。Fe-Cr合金としては、フェライト系ステンレス鋼、オーステナイト系ステンレス鋼、オーステナイト・フェライト系ステンレス鋼が挙げられ、これらのいずれであってもよい。中でも、酸素雰囲気下で良好な耐熱性、耐酸化性を示す不動態膜を好適に形成するとの観点から、金属基材はCrを約11~32%含有するFe-Cr合金であることが好ましい。より好ましくは、フェライト系ステンレス鋼によって構成することができる。フェライト系ステンレス鋼の具体的な組成については厳密には制限されないが、例えば、SOFCの運転温度域でフェライト相を維持することができるとの観点から、SUS403等に代表される、Crを約16%以上含有するFe-Cr合金が好ましい。かかるFe-Cr合金は、高温での耐食性を高めるために、炭素(C)や窒素(N)を300ppm以下(好ましくは150ppm以下)程度にまで低減したものであることがより好ましい。また、結晶粒の微細化や耐食性向上のために、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)、ニオブ(Nb)等の元素を含むことも好ましい。このようなフェライト系ステンレス鋼は、マルテンサイト系ステンレス鋼およびオーステナイト系ステンレス鋼に比べて、相対的に電気抵抗が低く、熱膨張性が小さい。フェライト系ステンレス鋼のCTEは、例えば概ね7~12×10-6/Kである。かかるフェライト系ステンレス鋼はこの合金材料は、良好な熱伝導度と機械的強度をもつため、セル内の温度勾配を緩和する働きも期待できる。
スピネル層は、上記金属基材の表面のうち、少なくとも接合部材60に対向する面に設けられている。スピネル層は、一般式:M ;で表されるスピネル型結晶構造を有する第1スピネル相を含む。ここで、上記一般式において、Mは、遷移金属から選択される1以上の元素を含む。このような結晶構造を備えるスピネル層は半導体的導電性を備え、SOFCの運転温度域において良好な電気伝導性を備えることができる。ここで、遷移金属としては、元素周期律表で第3族から第11族の間に存在する元素(遷移元素)を考慮することができる。遷移金属は特に制限されないが、例えば、クロム(Cr),マンガン(Mn),鉄(Fe),コバルト(Co),ニッケル(Ni),銅(Cu),チタン(Ti),バナジウム(V),イットリウム(Y),タングステン(W)等が好適例として挙げられる。ここに開示されるスピネル層の好ましい一態様では、Mは、上記遷移金属に加えて、さらに亜鉛(Zn)を含むことができる。これらはいずれか1種を単独で含んでもよいし、2種以上を組み合わせて含んでもよい。
スピネル型結晶構造を有する酸化物は、より詳細には、A の組成式で示される酸化物であり、結晶中に、AサイトとBサイトの二つの陽イオンサイトを持つ。そして上記の遷移金属等が、スピネル型結晶構造におけるAサイトとBサイトとを占める。ここでAサイトを占める元素としては、Fe、Mn、Co、Cu、NiおよびZnのいずれか1種以上が好ましい。またBサイトを占める元素としては、Cr、Co、MnおよびFeのいずれか1種以上が好ましい。Mn、C、FeはAサイトとBサイトのいずれに配置されてもよい。AサイトとBサイトを占める遷移金属の組み合わせとしては、例えば、マンガンスピネル(Mn等)、コバルト-マンガン系スピネル(MnCo、CoMn等)、コバルト-鉄系スピネル(CoFe等、ニッケル-鉄系スピネル(NiFe等、ニッケル-コバルト系スピネル(NiCo等、鉄-マンガン系スピネル(FeMn等)、銅-マンガン系スピネル(CuMn等)、鉄-亜鉛-マンガン系スピネル((Fe,Zn)Mn等)が好適な例として挙げられる。スピネル層は、より好ましくは、ニッケルコバルタイトスピネル、ニッケル鉄系スピネル、コバルト鉄系スピネルであることが好ましい。
なお、金属基材の表面に備えられるスピネル層は、金属基材の表面に上記第1スピネル相を含むスピネルコーティングを施してなる金属製インターコネクタを用意することで実現してもよい。あるいは、金属基材の表面に、熱処理(典型的には、酸化雰囲気中での加熱)によって上記第1スピネル相を形成し得るスピネル前駆コーティングを施してなる金属製インターコネクタを利用して実現してもよい。このようなスピネル前駆コーティングを備える金属製インターコネクタと用いると、この金属製インターコネクタとSOFCとを後述の接合材料で接合するとき、あるいは、SOFCの運転時に、スピネル前駆コーティングが熱処理されてスピネル層となる。これにより、金属製インターコネクタは、金属基材の表面にスピネル層を備えたものとなり得る。
スピネル層の厚みは特に制限されないが、例えば、約10μm以下であることが適当であり、例えば、約7μm以下程度であってよく、約5μm以下が好ましい。スピネル層の厚みは、例えば約0.5μm以上が適切であり、約1μm以上程度が好ましい。
なお、金属基材の表面には、酸素含有雰囲気においてCr等の不動態膜の形成が避けられない。そしてこの表面のCr皮膜が空気極のCr被毒の原因であるとも言われている。ここに開示される金属製インターコネクタ50、50Aは、少なくも空気極と接続される側の表面に、上記スピネル層を備えている。このことにより、スピネル層において金属基材(例えば不動態膜)から移動してくるCrを補足し、Crの拡散を抑制することができる。なお、かかる観点から、スピネル層中、あるいはスピネル層と金属基材との界面等に、金属基材由来のクロム含有化合物が存在することは許容される。
[接合部材]
ここに開示される接合部材60は、SOFCの空気極20と金属製インターコネクタ50、50Aとを機械的に接続する要素である。そしてまた、接合部材60は、SOFCの運転環境において空気極20と金属製インターコネクタ50、50Aとを電気的にも接続する役割を担う。この接合部材60は、一般式:ABO;で表されるペロブスカイト相と、一般式:M ;で表される酸化物相と、を含む。なお、上記一般式中のAは、La、SrおよびBaからなる群から選択される1以上の元素であり、Bは、少なくとも遷移金属元素を含む1以上の元素である。また、Mは、遷移金属から選択される1以上の元素である。
ペロブスカイト相について、上記一般式中、Aは、ペロブスカイト型結晶構造におけるAサイトを占める元素であって、ランタン(La)、ストロンチウム(Sr)およびバリウム(Ba)のいずれか1種以上を含むことができる。これらの元素の他にも、Aサイトには、原子番号57のランタン(Ln)から原子番号71のルテチウム(Lu)までのランタノイド元素(Ln)のいずれかを含むことができる。ランタノイド元素としては、中でも、例えばセリウム(Ce),プラセオジム(Pr),ネオジム(Nd),プロメチウム(Pm),サマリウム(Sm),ユウロピウム(Eu),ガドリニウム(Gd)等の比較的イオン半径の大きな元素であることが好ましい。Aサイトには、いずれか2種の元素が含まれてもよいし、3種以上の元素が組み合わせて含まれてもよい。
ペロブスカイト相について、上記一般式中、Bは、少なくともコバルト(Co)を含む。詳細な理由は明らかではないが、発明者らの検討によると、ペロブスカイト相はBサイトに少量であってもCoを含まないと、接触抵抗が高くなる傾向がある。また、BサイトにはCoを含むことで、比較的低温で高い酸素還元能力を発現することができる。そのため、ここに開示される技術においてペロブスカイト相は、Coを必須の元素として含有するようにしている。なお、ペロブスカイト相はBサイトにCo以外の遷移金属元素を含むことができる。この遷移金属元素については、スピネル層におけるBサイトに含むことができる元素と同様であるために繰り返しの説明は省略する。ペロブスカイト相は、Bサイトに少なくともCoを含む限り、その割合やその他の元素の含有については特に制限されない。ペロブスカイト相に含まれるCo以外の遷移金属元素としては、特に制限されるものではないが、第1遷移元素(3d遷移元素)であることが好ましく、中でも、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)および銅(Cu)からなる群から選択される1種または2種以上が含まれることが好ましい。特に、CoとMnとを組み合わせて含むことで、優れた酸素還元能力を有する酸化物相となり得るために好ましい。この場合も、本願の効果を損ねない範囲において、CoとMnに加えて、第三の元素がBサイトに含まれてもよい。
ペロブスカイト相は、AサイトにLaとSrとを同時に含むことが好ましい。より具体的には、ペロブスカイト相は、ランタン・ストロンチウム・コバルタイトを主相として含むことが好ましい。これにより、SOFCの運転温度を低くした場合であっても好適な電気電子混合導電性を示し得るために好ましい。さらに、例えば、空気極との接合性をより高めるとの観点からは、接合対象である空気極に含まれるペロブスカイト型酸化物と同一か、あるいは共通の元素を含むペロブスカイト型酸化物を主相とすることが好ましい。また、Bサイトは、Coの他に、Feを含むことも好ましい。Feを含むことでペロブスカイト相の焼結開始温度は低下され、この接合部材60を比較的低温で作製することが可能となる。換言すると、単セル10A,10Bと金属製インターコネクタ50、50Aとを、比較的低温で接合することが可能であることを意味する。さらに、Bサイトは、Coの他に、Cuを含むことも好ましい。Cuを含むことで接合部材60は金属製インターコネクタ50、50Aとの密着性および接合性が長期の運転条件下においても良好に維持され、SOFCスタック1の耐久性が好適に高められる。
酸化物相は、一般式:M ;で表される酸化物を含む。ここで、上記一般式において、Mは、Ni、Fe,CoおよびCuからなる群から選択される2以上の元素を含む。換言すると、酸化物相は、Ni、Fe,CoおよびCuからなる群から選択される2以上の元素を含む複酸化物相である。そしてこの酸化物相は、例えば、金属製インターコネクタのスピネル層に含まれる第1スピネル相と同一か、あるいは共通の元素を少なくとも1つ含むことができる。このことにより、接合部材は金属製インターコネクタとの機械的接合性を高めることができる。さらに、この酸化物相は、好ましくはスピネル型結晶構造を有するものであってよい。換言すると、酸化物相は、第2スピネル相を含む形態であり得る。第2スピネル相は、上記の第1スピネル相と同一の組成であってもよいし、異なる組成であってもよい。このことにより、接合部材は金属製インターコネクタとの電気的接合性を高めることができる。
酸化物相としては、上記Ni、Fe,CoおよびCuから選択されるいずれかの金属元素を含む限り、その組成は限定されない。Mは、好ましくは、上記Ni、Fe,CoおよびCuから選択されるいずれか1種の金属元素を0.5当量以上(金属元素中の50モル%以上)の割合で含む。より好ましくは、第2スピネル相を主相とすることが好ましい。このような酸化物相は、上記第1スピネル相と同様に半導体的導電性を備え得る。このことにより、SOFCの運転温度域において良好な電気伝導性を備えることができる。
なお、このような酸化物相に含まれ得る酸化物としては、例えば、コバルト-鉄系酸化物(例えばCoFe)、ニッケル-鉄系酸化物(例えばNiFe)、ニッケル-コバルト系酸化物(例えばNiCo)等が好適な例として挙げられる。これら酸化物相は、スピネル型結晶構造を備える場合に、金属製インターコネクタのスピネル層との接合性が良好となることに加え、基材となるフェライト系ステンレス鋼とCTEが近くなることから、スピネル型結晶構造を備えることがより好ましい。
接合部材60において、酸化物相は少しでも含まれていることで金属製インターコネクタ表面のスピネル層との接合性を高めることができる。ここで、接合性向上の効果を明瞭に発現させるとの観点から、ペロブスカイト相と酸化物相との合計に占める酸化物相の割合は、5質量%を超えるとよく、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上が特に好ましい。しかしながら、酸化物相の割合が過剰になると、空気極との接合性が低下し得る。かかる観点から、ペロブスカイト相と酸化物相との合計に占める酸化物相の割合は、90質量%未満であるとよく、80質量%以下が好ましく、75質量%以下がより好ましく、70質量%以下が特に好ましい。
なお、後述するが、接合部材60は、粉体材料の焼結体として好ましく構成することができる。この場合、接合部材60は、ペロブスカイト相および酸化物相以外のその他の成分として、粉体の焼結を補助する成分である焼結助剤成分を含み得る。焼結助剤は、ペロブスカイト相および酸化物相を構成する成分よりも融点の低い金属成分(典型的には遷移金属成分)とすることができる。そしてその焼成物は、典型的には、金属酸化物(典型的には遷移金属酸化物)等の金属含有成分である。このことから、接合部材60は、ペロブスカイト相および酸化物相の他に、焼結助剤に由来する金属成分含有相を含むことができる。
接合部材60において、ペロブスカイト相および酸化物相は、接合部材60を構成する主体であることが好ましい。ペロブスカイト相および酸化物相の合計は、接合部材60の質量を100質量部としたときに、50質量部以上であることが好ましく、75質量部以上がより好ましく、80質量部以上がさらに好ましく、85質量部以上が特に好ましく、90質量部以上であってよい。ペロブスカイト相および酸化物相以外の結晶相を完全に排除することは困難であると予想されるが、接合部材60は、ペロブスカイト相および酸化物相のみから構成されていてもよい。その一方で、接合部材60が、焼結助剤に由来する金属成分含有相を含む場合は、金属成分含有相は、ペロブスカイト相および酸化物相の合計を100質量部としたときに、おおよそ25質量部以下の割合で含まれ得る。金属成分含有相の割合は、20質量部以下がより好ましく、15質量部以下が更に好ましく、10質量部以下が特に好ましい。金属成分含有相の割合の下限は特に制限されないが、焼結助剤の添加効果が発揮されるには、1質量部以上とすることが適切であり、例えば、3質量部以上とするとよい。
なお、上記のペロブスカイト相および酸化物相の割合は、例えば、後述の試験例1に示すように接合部断面のEDX分析等の結果により把握することができる。つまり、接合部の任意の断面におけるペロブスカイト相と酸化物相との面積割合は、そのまま接合部におけるペロブスカイト相と酸化物相との体積割合を反映し得る。例えば、接合構造の断面における各元素濃度分布から、画像解析の手法によって、各相の分布領域を区分けして各相ごとの合計の面積(単位は、例えば、ピクセル)を算出することで、接合部におけるペロブスカイト相および酸化物相の体積割合を把握することができる。
なお、必ずしもこれに限定されるものではないが、ペロブスカイト相と酸化物相とは、ペロブスカイト相の大きさが酸化物相の大きさと同じであるか、より大きいことが好ましい。より具体的には、一例として、接合部材60が、ペロブスカイト相を含む第1焼結粒子部と、酸化物相を含む第2焼結粒子部とを含むとき、第1焼結粒子部の平均径は、第2焼結粒子部の平均径よりも大きいことが好ましい。なお、ここでいう平均径(大きさ)とは、例えば、接合部材60の任意の断面について顕微鏡観察したときに、元素分析等によって区別したペロブスカイト相を含む第1焼結粒子部と酸化物相を含む第2焼結粒子部との、2軸平均径に基づき判断することができる。第1焼結粒子部および第2焼結粒子部の2軸平均径は、各相の焼結粒子部について、それぞれ10以上の2軸平均径を測定した結果の算術平均値を採用するとよい。観察に用いる顕微鏡は、特に制限されないが、接合部材60の組織観察をするに適した倍率での観察が可能な顕微鏡を用いることができる。例えば、高倍率のマイクロスコープ、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡などである。より具体的には、例えば、ペロブスカイト相は、おおよそ0.1μm以上であることが好ましく、15μm以下であることが好ましい。また、酸化物相は、おおよそ0.1μm以上であることが好ましく、10μm以下であることが好ましい。特に制限されないが、ペロブスカイト相の大きさは、酸化物相の大きさの、1~20倍程度であることが好ましく、2~10倍程度であることがより好ましい。なお、ペロブスカイト相は、全体が一体的に焼結して、例えばマトリックスを形成していてもよい。この場合、酸化物相は、ペロブスカイト相マトリックスの中に、島状に点在する相として観察されうる。
なお、空気極20は多孔質構造を有している。典型的には、空気極20は、気孔率が10~60%程度の多孔質構造を有している。一方で、金属製インターコネクタ50、50Aは原子レベルで緻密な金属組織からなる。したがって、これらを接合し、上記の通り空気極と同一ないしは類似に組成を有する接合部材60は、気孔率が10~60%程度の多孔質構造を有していることが好ましい。これにより、接合部材60は、空気極20と金属製インターコネクタ50、50Aとの間のCTEの差に伴う熱応力を緩和しやすくなるために好ましい。
また、接合部材60の25℃から800℃におけるCTEは、19.3×10-6/K以下であることが好ましい。例えば、ランタンコバルタイトのCTEは、約20×10-6/K程度である。これに対し、金属製インターコネクタ50、50Aを構成するCr-Fe合金のCTEは、上記の通り、7~12×10-6/Kと大幅に低い。本発明者らの検討によると、接合部材60は、CTEを19×10-6/K以下程度にまで低減させることで、Cr-Fe合金との運転環境における長期の接合性が高められるとの知見を得ている。接合部材60のCTEは、18.9×10-6/K以下がより好ましく、18.8×10-6/K以下が特に好ましい。なお、接合部材60のCTEは、ペロブスカイト相および酸化物相の組成に大きく依存する。例えば、ペロブスカイト相および酸化物相がBサイトにFeやCuを含む場合、CTEが大きく低減され得る。このような場合、CTEは、18.7×10-6/K以下がより好ましく、例えば18×10-6/K以下であってよい。CTEの下限は特に制限されず、例えば、17×10-6/Kを超えているとよく、17.5×10-6/K以上、より好ましくは17.8×10-6/K以上とすることができる。
なお、本明細書におけるCTEは、特に言及しない限り、熱機械分析装置(Thermomechanical Analysis:TMA)を用いて、室温(25℃)から800℃までの温度領域において測定した平均線膨張係数を意味し、かかる温度領域における試料の長さの変化量を測定温度差で割った値をいう。この熱膨張係数は、JIS Z2285:2003に規定される金属材料の線膨張係数の測定方法またはJIS R1618:2002に規定されるファインセラミックスの熱機械分析による熱膨張の測定方法に準じて測定することができる。
[導電性接合材料]
接合部材60は、上記の通りの気孔率とCTEとを備えることから、例えば、粉体の焼結体により構成されていることが好ましい。そこで、ここに開示する技術は、接合部材60を好ましく製造することのできる導電性接合材料を提供する。この導電性接合材料は、ペロブスカイト酸化物粉体と合金粉体とを含む。
(ペロブスカイト酸化物粉体)
ペロブスカイト酸化物粉体は、接合部材60におけるペロブスカイト相を形成する。換言すると、ペロブスカイト酸化物粉体が焼結されてペロブスカイト相を形成する。焼成によって原料と焼成体との組成は厳密には異なり得るが、ここに開示される接合部材は、例えば600℃~800℃という比較的低温での焼成により作製できる。このことから、ペロブスカイト酸化物粉体の組成は、上記のペロブスカイト相の組成と概ね同一とすることができる。
また、ペロブスカイト酸化物粉体の平均粒子径は、大きすぎると焼成して接合部材を作製する際に、ペロブスカイト酸化物粉体と合金粉体との反応性が均一とならないために好ましくない。ペロブスカイト酸化物粉体の平均粒子径は、5μm以下程度が適切であり、4μm以下程度が好ましく、例えば3μm以下程度がさらに好ましい。ペロブスカイト酸化物粉体の平均粒子径の下限は特に制限されないが、ハンドリング性の観点から、例えば、0.1μm以上程度を目安とすることができる。
(合金粉体)
また、合金粉体は、接合部材60における酸化物相を形成する。換言すると、合金粉体は焼成により酸化されて焼結されて酸化物相(典型的には複酸化物相)を形成する。したがって、合金粉体の組成は、上記の酸化物相に含まれている金属元素に対応したものを含むことができる。具体的には、合金粉体は、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、鉄(Fe)および銅(Cu)からなる群から選択される2種以上からなる合金を含む。合金粉体は、上記の4種の金属元素のうちのいずれか2種以上のみからなる合金であってもよいし、上記の2種の金属元素と他の元素とを含む合金粉体であってもよい。この合金粉体が、金属単体からなる粉末の混合ではなく、合金を形成していることで、焼成時の反応性(酸化)が均一かつ良好に進行しうるために好ましい。また、焼成後に得られる酸化物について、良好な複酸化物(典型的には、スピネル構造を有する酸化物)を好適に形成し得るために好ましい。
合金粉体の平均粒子径は特に制限されない。例えば、上記のペロブスカイト酸化物粉体と良好に混合できる程度の大きさであればよい。例えば、合金粉体の平均粒子径は、10μm以下程度が適切であり、9μm以下程度が好ましく、例えば8μm以下程度がさらに好ましい。合金粉体の平均粒子径の下限は特に制限されないが、ハンドリング性の観点から、例えば、0.1μm以上程度を目安とすることができる。なお、ペロブスカイト酸化物粉体および合金粉体は、これらを構成する粒子が独立して存在している場合に限り、上記のペロブスカイト相または酸化物相の粒径と概ね対応すると考えることができる。
また、ペロブスカイト酸化物粉体と合金粉体とは、平均粒子径が同じであってもよいし、異なっていてもよい。平均粒子径を異ならせる場合、ペロブスカイト酸化物粉体の方が相対的に小さく、合金粉体の方が相対的に大きいことが好ましい。合金粉体は、ペロブスカイト酸化物粉体に比べて融点が低い。また、合金粉体は、ペロブスカイト酸化物粉体に比べてCTEが小さい。したがって、ペロブスカイト酸化物粉体を合金粉体よりも小さくすることで、ペロブスカイト酸化物粉体に起因する焼成収縮率の増大を抑制することができる。また、ペロブスカイト酸化物粉体を合金粉体よりも小さくすることで、より少ない量でCTEを低減させる効果を発揮することができる。
また、例えば代表的なランタンコバルタイトのCTEは、約22×10-6/K程度である。これに対し、マンガンコバルタイトやフェライト系ステンレス鋼のCTEはそれぞれ、約13×10-6/K程度、約7~12×10-6/K程度であり得る。したがって、接合部材のCTEを、例えば好適に14×10-6/K以上19×10-6/K以下程度に調整するには、必ずしもこれに特に制限されないが、合金粉体の大きさはペロブスカイト酸化物粉体の大きさの、1倍以上であることが好ましく、1.4倍以上がより好ましく、5倍以上が更に好ましく、7倍以上がより一層好ましく、例えば10倍以上としてもよい。ペロブスカイト酸化物粉体の合金粉体に対する大きさの上限は特に制限されないが、上記好適な粒子径の範囲を考慮すると、例えば30倍以下、好ましくは20倍以下、典型的には15倍以下程度とするとよい。
導電性接合材料において、ペロブスカイト酸化物粉体と合金粉体との割合は、接合部材60におけるペロブスカイト相と酸化物相との割合に関係する。例えば、CTEの相対的に小さい合金粉体が多いほど、接合部材60のCTEを低減することができる。かかる観点から、ペロブスカイト酸化物粉体と合金粉体との合計に占める合金粉体の割合は、5質量%を超えることが好ましい。合金粉体の割合は、7質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上がより特に好ましい。しかしながら、合金粉体が過剰に含まれると、空気極との接合性が低下し得るために好ましくない。したがって、合金粉体の割合は、おおよそ80質量%未満が適切であり、75質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、65質量%以下がさらに好ましく、60質量%以下が特に好ましい。例えば、合金粉体は20質量%以上50質量%以下とすることができる。
(分散媒)
なお、ここに開示される導電性接合材料は、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて、上記の粉体材料の他に、分散媒等の他の構成成分を含むことができる。かかる他の構成成分については、SOFCの単セル10A、10Bの形成手法などの種々の基準に照らして調整することができる。
上記の粉体状の導電性接合材料は、そのまま圧縮成形する等して、SOFCの単セル10A、10Bと金属製インターコネクタ50Aとの接合に供してもよいし、あるいは、粉体状の導電性接合材料を分散媒中に分散したペースト(インク、スラリー、サスペンションなどを包含する)の形態に調製して用いるようにしてもよい。このとき用いる分散媒としては、上記の第1および第2の酸化物粉体および必要に応じて焼結助剤を良好に分散し得るものであればよく、従来のこの種のペーストに用いられている各種の分散媒を特に制限なく使用することができる。典型的には、かかる分散媒としては、粘度調整のための有機バインダと有機溶剤との混合物を考慮することができる。
有機溶剤としては、例えば、エチレングリコールおよびジエチレングリコール誘導体(グリコールエーテル系溶剤)、トルエン、キシレン、ブチルカルビトール(BC)、ターピネオール等の高沸点有機溶剤の1種を単独で、または、2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、有機バインダとしては、粘性を示す種々の樹脂成分を含むことができる。かかる樹脂成分はペーストを調製するのに良好な粘性および塗膜形成能(例えば、印刷性や、基板に対する付着性等を含む)を付与し得るものであればよく、従来のこの種のペーストに用いられているものを特に制限なく使用することができる。例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、セルロース系高分子、ポリビニルアルコール、ロジン樹脂等を主体とするものが挙げられる。このうち、特にエチルセルロース等のセルロース系高分子が含まれているのが好ましい。なお、かかる分散媒には、分散剤や可塑剤等のこの種の分散媒に一般的に使用され得る任意の添加剤が含まれていても良い。
分散媒の割合は、導電性接合材料の使用目的に応じて適宜調整することができる。例えば、金属製インターコネクタ50Aのセル対向面52の形態や、その成形に採用する手法等に応じて、適宜調整することができる。一例として、ペースト状の形態の導電性接合材料は、印刷等の手法により金属製インターコネクタ50Aのセル対向面52に供給するのに好ましく用いることができる。この場合、分散媒が、ペースト状の導電性接合材料全体に占める割合は、5質量%以上60質量%以下程度とすることが好ましく、7質量%以上50質量%以下がより好ましく、10質量%以上40質量%以下が特に好ましい。また、ビヒクルに含まれる有機バインダは、例えば、ペースト全体の1質量%以上15質量%以下程度、好ましくは1質量%以上10質量%以下程度、より好ましくは1質量%以上7質量%以下程度の割合とすることが例示される。かかる構成とすることで、例えば、導電性接合材料の粉体成分を均一な厚さの層状体(例えば、塗膜)として形成(塗布)し易く、取扱いが容易であり、さらにかかる塗布物から分散媒を除去するのに長時間を要することがないために好適である。
なお、ペースト状に調製するに際し、上記粉体状の導電性接合材料および分散媒の混合には、例えば、公知の三本ロールミル等を用いることができる。これにより、ペロブスカイト酸化物粉体、合金粉体および焼成助剤を均一に混合することができる。また、これらの粉体材料を分散媒に均質に分散させることができる。その結果、ペースト状の導電性接合材料を得ることができる。ペースト状の導電性接合材料は、所望の用途に応じて適切な粘度に調整することによって、塗布または印刷等の形態で導電性接合材料を所望の位置に所望の形態にて簡便に供給することが可能となる。
導電性接合材料は、金属製インターコネクタ50Aのセル対向面52と、SOFCの単セル10Aの空気極20との間に供給される。つまり、例えば、金属製インターコネクタ50Aのセル対向面52に導電性接合材料を供給した後、単セル10Aの空気極20側が導電性接合材料に当接するように単セル10Aを重ねあわせる。このようにして単セル10A、10Bと金属製インターコネクタ50、50Aとをスタックした後、焼成する。この場合の焼成温度は、従来と同様に1000~1150℃程度とすることもできるが、ここに開示された技術によると、焼成温度は、900℃以下、例えば700~900℃程度とすることができる。焼成時間は、例えば、1~5時間程度とすることができる。これにより、導電性接合材料に含まれるバインダや分散媒等が消失し、ペロブスカイト酸化物粉体および合金粉体が焼結して、接合部材60が形成される。同時に、接合部材60によって、SOFCの空気極20と金属製インターコネクタ50Aとを強固に密着性よく接合することができる。
なお、上記の導電性接合材料の焼成温度は、SOFCの空気極20の焼成温度とほぼ同じである。また、導電性接合材料を構成する上記ペロブスカイト酸化物粉体および合金粉体は、空気極材料と共通の組成であり得る。そこで、ここに開示する技術は、かかる導電性接合材料を、空気極20の形成用材料としても提供する。
(空気極形成用材料)
空気極(カソード)20は、上記燃料極40と同様に多孔質構造を有している。一般に、空気極20は接合部材60よりも気孔率が大きい。空気極20の気孔率は特に限定されないものの、気孔率は、電気化学反応のための燃料ガス,固体電解質層,空気極等による3相界面の割合と適切な強度と両立するために、10%以上50%以下(好適には10%以上40%以下、例えば15%以上30%以下)であることが好ましい。
そこで、導電性接合材料を空気極形成用材料として用いる場合は、導電性接合材料に造孔材を加えるとよい。造孔材は、空気極20等の電極を多孔質構造に形成するために電極形成用材料に配合される材料であって、電極作製時(焼成時)に消失する各種の材料を用いることができる。例えば、造孔材としては、粒状の合成樹脂材料、炭素粉体、天然有機粉体等を好ましく用いることができる。
粒状樹脂材料としては、電極の焼成時(典型的には、700~900℃程度の焼成時)に消失することができる各種の合成樹脂からなる粒子状の材料を用いることができる。典型的には、いわゆる樹脂ビーズを好ましく用いることができる。かかる粒状樹脂材料は、粒子の粒径が揃ったものを容易に入手することができ、また表面形態も滑らかであるため、電極形成用のスラリーを調製したときの流動性を良好に保ち得るために好ましい。また、所望の多孔質構造(例えば、細孔径分布がシャープな多孔質構造等)の電極を形成し得る点においても好ましい。かかる粒状樹脂材料を構成する樹脂の種類は特に制限されず、例えば、代表的には、ポリエチレン,ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン,スチレン・アクリロニトリル共重合体,アクリロニトリル・ブタジエン・スチレンポリマー等のポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ビニルエステル系樹脂およびこれらの複合体等が例示される。
造孔材として各種の炭素粉体を用いることもできる。かかる炭素粉体は700℃~900℃でほぼ焼失するため、電極の焼成時にほぼ全てが燃え抜けるために好適である。炭素粉体としては、その結晶構造や製造方法等は特に制限されず、黒鉛(天然黒鉛およびその改質体、人造黒鉛)等に代表される各種の炭素材料を用いることができる。
天然有機粉体としては、例えば、澱粉を含む各種の植物のうち、澱粉を多く含む種子(胚乳)、塊根等の部位を粉体にしたものや、かかる部位か抽出した澱粉粉体であってよい。例えば、代表的には、もち米粉、米粉、大麦粉、小麦粉、オート(燕麦)粉、とうもろこし粉、えんどう豆粉、じゃがいも粉、さつまいも粉、キャッサバ粉、葛粉、サゴ粉、アマランス粉、バナナ粉、アロールート粉、カンナ粉などの食物粉、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、タピオカ粉等の澱粉粉体を例示することができる。
空気極20の形成に際しても、導電性接合材料と造孔材の他に、分散媒等の他の構成成分を含むことができる。分散媒は、上記の通り、ペースト状の導電性接合材料を調製する場合と同様の材料を用いることができる。分散媒の割合は、空気極20の形成手法に応じて調整することができる。一般に空気極20は、ペースト状の空気極形成用材料を、スクリーン印刷やドクターブレード法等の手法により、SOFCのハーフセル(燃料極40と固体電解質層30からなる半セル)の固体電解質層30上に供給して焼成する。この場合、分散媒は、ペースト全体の5質量%以上60質量%以下程度とすることが好適である。空気極形成用材料の供給は、焼成後に得られる空気極20が所定の形状および寸法となるように適宜調整することができる。空気極20は、固体電解質層30の形状に応じてその形状を適宜変更することができる。空気極20の厚みは、典型的には1μm~200μm程度であり、好ましくは5μm~100μm程度、より好ましくは10μm~100μmであるが、かかる厚みに限定されるものではない。
なお、SOFCの製造方法は、従来公知の製造方法に準じればよく特別な処理を必要としないため、詳細な説明は省略する。これにより、SOFCの空気極20の少なくとも一部を、ここに開示される導電性接合材料(空気極形成用材料)の焼成物により構成することができる。この場合、空気極20の焼成と、SOFCのスタック時の焼成とは、同時に行うことも可能である。
以下、本発明に関する幾つかの試験例を説明するが、本発明をかかる試験例に示すものに限定することを意図したものではない。
[試験例1]
[接合用材料の用意]
接合用材料として、Fe-Co合金粉体と、ペロブスカイト型酸化物粉体とを用意した。具体的には、平均粒子径(D50(Alloy))が8.0μmのFe-50%Co合金粉体(エプソンアトミックス(株)製)と、平均粒子径(D50(ABO3))が0.7μmで一般式:La0.6Sr0.4CoO;で表される組成のペロブスカイト型酸化物(La0.6Sr0.4CoO)粉体とを用い、合金粉体とペロブスカイト型酸化物粉体の合計に占める合金粉体の割合(質量%)を、下記の表1に示すように0.1~100質量%の間で12通りに変化させて混合した。そしてこの混合粉体に、バインダとしてのエチルセルロースと、有機溶剤としてのテルピネオールとを添加し、三本ロールミルで混合することで、例1-1~1-12の接合用ペーストを調製した。なお、Fe-Co合金粉体とペロブスカイト型酸化物粉体の合計100質量部に対して、バインダは3質量部の割合で、有機溶剤は20質量部の割合で配合した。
[CTE測定]
各例の接合用ペーストを焼成することで得られる接合部(焼成物)のCTEを測定した。すなわち、先ず、各例の接合用ペーストを所定の試験片寸法に対応した成形型に充填し、乾燥させた後、1100℃で焼成することで焼成体を得た。そして焼成体の寸法が4mm×5mm×20mmとなるように成形することで、CTE測定用の試験片とした。この試験片を用い、熱機械分析装置(株式会社リガク製、TMA8310)を使用して、室温(25℃)~800℃の温度範囲における熱膨張係数(CTE)を測定した。熱膨張係数は、JIS 1618:2002のファインセラミックスの熱機械分析による熱膨張の測定方法に準じ、大気中で、示差膨張式にて測定した平均線膨張率から求めた。その結果を、以下の表1の「CTE」の欄に示した。
[接合性試験]
[評価用SOFCの作製]
接合性評価用のSOFCを以下の手順で作製した。
まず、酸化ニッケル(NiO,平均粒子径0.5μm)粉末と8%イットリア安定化ジルコニア(8%YSZ,平均粒子径0.5μm)粉末との質量比60:40の混合粉末48~58質量%に、有機溶剤(キシレン)24質量%、有機バインダ(ポリビニルブチラール;PVB)8.5質量%、気孔形成材(炭素成分)5~15質量%および可塑剤4.5質量%を加えて混練することにより、ペースト状の燃料極支持体形成用組成物を調製した。そしてこの燃料極支持体形成用組成物を、ドクターブレード法によりキャリアシート上に塗布・乾燥することを繰り返すことで、厚みが0.5~1.0mmの燃料極支持体グリーンシートを形成した。
次に、上記と同様のNiO粉末48質量%、8%YSZ粉末32質量%、有機溶剤(ターピネオール)18質量%およびバインダ(エチルセルロース;EC)2質量%を混合することで、燃料極形成用組成物を調製した。そしてこの燃料極形成用組成物を上記燃料極支持体グリーンシートの上にスクリーン印刷法により供給し、乾燥させて、厚みが約10μmの燃料極グリーンシートを形成した。
固体電解質材料としての8%YSZ(平均粒子径0.5μm)粉末65質量%と、バインダ(EC)4質量%と、有機溶剤(ターピネオール)31質量%とを混練することにより、ペースト状の固体電解質層形成用組成物を調製した。これを上記燃料極グリーンシート上にスクリーン印刷法によってシート状に供給し、乾燥させることで、厚みが約10μmの固体電解質層グリーンシートを形成した。
また、反応防止層材料としての10%ガドリニウムドープセリア粉末(10%GDC,平均粒子径0.5μm)粉末65質量%と、バインダ(EC)4質量%と、有機溶剤(ターピネオール)31質量%とを混練することにより、ペースト状の反応防止層形成用組成物を調製した。これを上記固体電解質層グリーンシート上にスクリーン印刷法によってシート状に供給し、乾燥させることで、厚みが約5μmの反応防止層グリーンシートを形成した。
このようにして用意した積層グリーンシートを円形に切り抜き、1350℃で共焼成することで、燃料極支持体,燃料極層,固体電解質層および反応防止層が順に一体的に積層されたSOFCのハーフセルを得た。なお、焼成後のハーフセルの形状は、直径20mmの円形となるように調整した。
次いで、空気極材料として、平均粒子径が1μmのランタンストロンチウムコバルトフェライト(LSCF)粉末を用い、これにバインダ(EC)および分散媒(TE)を、LSCF:EC:TE=80:3:17の質量比で混合することで、ペースト状の空気極形成用組成物を調製した。そしてこの空気極形成用組成物を、上記で用意したSOFCのハーフセルの反応防止層上にスクリーン印刷法によって円形シート状に供給し、乾燥させることで、空気極層グリーンシートを形成した。その後、空気極層グリーンシートをハーフセルごと1100℃で焼成して層状の空気極を形成することで、評価用のSOFCを得た。なお、空気極の寸法は、直径10mm、厚み約30μmとなるようにスクリーン印刷条件を調整した。
[カソードとの接合強度]
評価用のSOFCのカソード表面に、用意した例1-1~1-12の接合用ペーストを乾燥膜厚が約40μmとなるようそれぞれ塗布し、乾燥させた後、850℃で焼成することで、接合層を形成した。そしてこの接合層とSOFCのカソードとの物理的(機械的)接合性について評価した。
具体的には、接合層とカソードとの接合強度を、JIS K5600-5-6:1999に規定されるクロスカット試験に準じて評価した。クロスカット試験では、まず、接合層の端部から5mm以上離れた位置に、1mmの間隔で6本の平行なカットを入れることで、25マスの格子パターンを形成した。そして格子パターンを覆うように幅24mmの透明感圧付着テープ(付着強さ4.01N/mm)を貼り付け、テープのなす角が約60°となる方向に引き剥がしたのち、クロスカットの全面積(25マス)に占める剥がれた部分の面積割合(剥離面積率)P(%)を算出した。
そして下記に示すように、接合部材の剥離面積率Pに対応した評価記号を、表1の「カソード接合強度」の欄に示した。なお、下記の評価記号は、日本塗料検査協会の碁盤目試験の評価点数と概ね対応しており、「×」は0点に、「△」は2点に、「〇」は4~6点に、「◎」は8~10点に相当する。
×:65<P
△:35<P≦65
○: 5<P≦35
◎: 0≦P≦5
[金属製ICとの接合強度]
上記のSOFCのカソードに代えて、金属製インターコネクタ(IC)の表面に、用意した例1-1~1-12の接合用ペーストを乾燥膜厚が約40μmとなるようそれぞれ塗布し、乾燥させた後、850℃で焼成することで、接合層を形成した。そしてこの接合層と金属製ICとの物理的(機械的)接合性について、上記カソードについての試験と同様に評価し、その結果を、表1の「IC接合強度」の欄に示した。
なお、金属製ICとしては、Coコーティングの前駆層を備えたフェライト系ステンレス板を用いた。具体的には、この金属製ICは、フェライト系ステンレス板の表面にNiをストライクめっきして下処理をしたのち、CoめっきにてCo膜を形成したものである。この金属製ICには、上記850℃の焼成による熱処理によって、最表面にCoスピネル相を主体とするCoコーティングが形成されるように設計されている。Coめっきは、Coコーティングの厚みが約5μmとなるように形成した。なお、この金属製ICは、上記熱処理によってステンレス板の表面にCrが析出し得るが、その最表面にCoコーティングが存在することによってCrの拡散(Cr被毒)が抑制されている。
[接触抵抗率]
接合用ペーストを焼成して得られる接合部材と金属製ICとの電気的接合性について評価した。具体的には、用意した例1-1~1-12の接合用ペーストを、上記と同様のCoコーティングを設けたフェライト系ステンレス板(25mm×25mm)のコーティング層の側の表面に塗布し、850℃で焼成することで、厚みが約30μmの薄層状の接合部材を作製した。そして得られた接合部材と金属製ICとの間に生じる接触抵抗を測定することで、電気的接合性を評価した。接触抵抗は、抵抗率計(型式:ソーラトロン社製ポテンショスタット、SI1287)を用い、700℃の環境下、電圧を±10mVで掃引したときのIV曲線の傾きから算出した。そして得られた接触抵抗率を、表1の「接触抵抗」の欄に評価記号によって示した。なお、各評価記号は、以下の接触抵抗率に対応している。
×:0.1Ωcm
△:0.05Ωcm超0.1Ωcm以下
○:0.02Ωcm超0.05Ωcm以下
◎:0.02Ωcm以下
[EDX分析]
なお、例1-5で作製した接合部材と金属製ICとの接合体の接合部の断面を、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)で観察するとともに、その観察領域の一部について、エネルギー分散型X線分光分析(Energy Dispersive X-ray spectrometry:EDX)を行った。EDX分析装置としては、日本電子(株)製,JSM-6610LAを用い、走査型電子顕微鏡(SEM)による2000倍の観察領域(画像データ)について、LaのL線、SrのL線、FeのK線、CoのK線、CrのK線、OのK線を検出することで、各元素の元素マップを得た。その結果を、図2に示した。図2の各図は、(a)SEM像、(b)Laマップ、(c)Srマップ、(d)Feマップ、(e)Coマップ、(f)Crマップ、(g)Oマップを示している。なお、各元素マップにおいて、対象元素が検出された位置は相対的に白く(明るく)表示される。また、SEM像について示したように、各図の上下方向の下側の帯状部分がフェライト系ステンレス板に、上側が接合部材に、その界面(中央付近)がスピネル層に相当する。
[酸化物相の割合]
また、上記EDX分析にて得られた元素マップ(例えばCoやFe等)を基に、画像解析法によって、各例の接合部の断面におけるペロブスカイト相と酸化物相との割合を調べた。画像解析には、米国国立衛生研究所(NIH)製の画像解析ソフト、Image J(1.45p)を用いた。例1-5のCoマップについて解析した様子を図4(a)~(d)に例示した。
具体的には、まず(a)に示す元素マップ(ここではCoマップ)から、全領域が接合部で占められるように接合部の領域を切取り、画像解析に供した(b~d参照)。次いで、画像全体に対し、Binary(二値化)サブメニューにてMake Binary(二値化画像の作成)処理を行い、(b)に示す二値画像を得た。ここで、Coが多く検出された領域が白、Coが多く検出されなかった領域が黒で表されている。次いで、NioseサブメニューにてDespeckle(ノイズ除去)処理をした後、Binary(二値化)サブメニューにてDilate(ダイレーション)処理を行い、再びNioseサブメニューにて、Remove Outliers (外れ値の除去)処理を行ったのち、Binary(二値化)サブメニューにて、Erode(エロージョン)処理を行うことで、(c)に示す図を得た。なお、外れ値の除去条件は、Radius(半径):2pixels、Threshold(閾値):50、Which Outliers(外れ方向):brightとした。以上の処理により、Coマップを、酸化物相の領域(白)と、ペロブスカイト相の領域(黒)とに区別した。次いで、Analyze Particles(粒子解析)処理を行うことで、(d)に示すように、このバイナリー画像における酸化物相領域(白)の数を数え、その面積(単位:ピクセル)等の計測を実施した。この結果から、次式:酸化物相の面積率(%)=酸化物相領域の面積(白色部のピクセル数)÷接合部解析全面積(全ピクセル数)×100);として酸化物相の面積率を算出し、表1に示した。
Figure 0007062522000001
[評価]
表1に示されるように、接合用ペースト中に含まれるCo-Fe合金の割合が多くなるほど、焼成後に得られる接合部における酸化物相の割合が増えることがわかった。なお、例1-12で面積率が0%となっているのは、全体が酸化物相となって二値化できなかったことによるものであり、実際は酸化物相100%の意味である。また、接合部の物性については、CTEが比較的大きいペロブスカイト型酸化物粉体(ABO3)に対し、合金粉体(Alloy)を加えて接合用ペーストを調製することで、得られる接合部材のCTEを合金粉体の混合比(質量比)に応じて変化させられることがわかった。本例の接合用ペーストを焼成して得られる接合部材のCTEは、19.2×10-6/K~18.0×10-6/Kの範囲で変化することが確認できた。また、例1-1、1-2に示されるように、接合用ペーストのペロブスカイト型酸化物粉末に加える合金粉末の量が少ないと、形成される接合部材とカソードとの接合強度は十分であるものの、従来と同様に金属製ICとの良好な接合を実現することができず、接合強度は極めて低くなってしまう。これは、金属製ICの表面に焼成によってスピネル層(スピネルコーティング)が形成され、このスピネル層と、ペロブスカイト型酸化物粉体のみを用いた接合部材との接合性が良好ではないことによる。具体的には示さないが、合金粉末を加えない接合用ペーストでは、金属製ICとの接合強度はさらに低くなる。このことから、接合用ペーストに合金粉末を加えることで、金属製ICのスピネル層と接合部材との接合性を改善できることがわかった。また、これら接合部材と金属製ICとの接合性を接触抵抗により評価すると、接合用ペーストに加える合金粉末の割合は、5質量%程度以上とすることがよく、10質量%程度以上が好適であり、20質量%程度以上とすることがより好適であることがわかった。
その一方で、例1-3~12に示されるように、接合用ペースト中にある程度の量の合金粉末を含ませることで、接合部材とカソードおよび金属製ICとの両方の接合強度を十分に高くできることがわかった。しかしながら、接合用ペースト中に過剰の合金粉末を含ませると、金属製ICとの接合強度は十分に得られるものの、例1-11、1-12に示されるように、カソードとの接合強度は却って低下してしまうことがわかった。したがって、接合用ペーストに加える合金粉末の割合は、80質量%程度以下とすることがよく、70質量%程度以下とすることが好適であり、例えば50質量%程度以下とすることがより好適であることがわかった。
また、EDX分析の結果から、図2のSEM像に示されるように、接合体は、緻密なステンレス板の表面に形成されたスピネル層の上に、接合部材が形成されていることが確認できる。(d)Feマップ、(f)Crマップに示されるように、フェライト系ステンレス板の位置には、他の部位に比べてFeおよびCrが高濃度に存在することがわかる。また、例えば(e)(f)(g)の比較から解るように、ステンレス板の表面には、熱処理によってスピネル層であるCoコーティングが形成されていることがわかる。そして、(d)(e)に示されるように、接合部材のうちで合金粉体が存在していた箇所には、Fe-Co合金粒子に由来するFe、Coが丸く高濃度で検出されることがわかった。これに対し、(b)(c)に示されるように、当該Fe-Co合金粒子に対応する位置では、Fe,Coではない測定対象元素(La,Sr)が丸く低濃度に検出されることがわかった。また、接合用ペースト中のFe-Co合金粉体は焼成によって酸化されやすいため、(g)に示されるように、Fe-Co合金粒子に対応する位置にはOが高濃度で検出され、Fe-Co合金が酸化されていることがわかった。具体的には示していないが、FeとCoとは主としてCoFeからなるスピネル型複酸化物を構成しており、部分的に少量のCo、Feを形成することが確認されている。さらに、(b)(c)(e)(g)などから解るように、接合部材のうちで合金粉体が存在していない箇所には、ペロブスカイト型酸化物粉末を構成するLa、Sr、Co、Oが概ね均一な濃度で存在することが確認できた。
ここで、(f)Crマップに示されるように、フェライト系ステンレス板の領域にはCrが確認できるが、接合部材の領域にはCrの存在は確認できない。従来の金属製ICとカソードとの接合構造によると、ステンレス表面にCrからなる不動態層を形成するためにステンレス中のCrが表面に向かって移動するとともに、このCrは、接合部材中を拡散し、カソードにまで到達していた。そしてカソード材料であるLSCFのSr等と反応してSrCrOを形成し、カソードの反応効率を低下させる原因となっていた。これに対し、ここに開示される接合構造においては、接合部材にCrはほぼ見られない。換言すると、ステンレス板の表面をスピネル層によってコーティングすることで、ステンレス板から拡散してきたCrをスピネル層で補足し、接合部材およびカソードへのCrの拡散を抑制することができる。また、上述のように、ここに開示される接合部材によると、このスピネル層を備える金属製ICと接合部材との接合を強固なものとすることができ、接合界面における接触抵抗を低く抑えることができる。したがって、ここに開示される接合体は、金属製ICを用いた場合であってもカソードのCr被毒を抑制しつつ、金属製ICとカソードとの高強度で低抵抗な接合を実現していることが確認できた。
[試験例2]
[接合用材料の用意]
上記試験例1と同様にして、例2-1~2-5の接合用ペーストを調製した。ただし、接合用ペーストにおける、合金粉体(Alloy)とペロブスカイト型酸化物粉体(ABO3)との混合比(質量%比)は20:80で一定とした。また、合金(Fe-50%Co)粉体とペロブスカイト型酸化物(La0.6Sr0.4CoO)粉体の平均粒子径およびその組み合わせを下記表2に示すように変化させた。なお、その他の条件は試験例1と同様にした。
用意した例2-1~2-5の接合用ペーストを用いて、試験例1と同様にして、接合部材とカソードまたは金属製ICとの接合強度、ならびに接触抵抗をそれぞれ調べた。その結果を、下記の表2に示した。
Figure 0007062522000002

表2の例2-1,2-3,2-4に示されるように、接合用ペーストを構成する粉末の平均粒子径は、合金粉末については、小さくしても大きくしても各種接合性に影響は見られないことがわかる。しかしながら、ペロブスカイト型酸化物粉末については、比較的小粒径の場合に接合部材とカソードおよび金属製ICとの接合が良好になることがわかった。特に本試験例は、ペロブスカイト型酸化物粉末に対する合金粉末の割合が比較的少ない条件であることから、ペロブスカイト型酸化物粉末の平均粒子径が大きすぎると焼結後の接合部材におけるペロブスカイト型酸化物粉末の気孔部分に合金粉末が十分充填できず、接合性の低下が生じる虞がある。しかしながら、ペロブスカイト型酸化物粉末の平均粒子径を合金粉末よりも小さく設定することで、比較的良好な接合が実現できることがわかった。
[試験例3]
[接合用材料の用意]
合金粉体の組成とペロブスカイト型酸化物粉体の組成とを、下記の表3のとおり変化させ、その他の条件(各粉体の平均粒子径および配合)は上記試験例1の例1-5と同様にして、例3-1~3-5の接合用ペーストを調製した。合金粉体としては、Fe-Co合金、Fe-Ni合金、Cu-Fe合金を用いた。
なお、これらの合金は焼成により酸化されて、Fe-Co合金はCoFeを主相とする酸化物相に、Fe-Ni合金はNiFeを主相とする酸化物相に、Cu-Fe合金はCuFeを主相とする酸化物相に変化する。そこで、合金粉体に代えて、高温で安定な酸化物であるCo、NiO、Feを使用することで、例3-6~8の接合用ペーストを調製した。
また、例3-9として合金粉体を使用せずにペロブスカイト型酸化物粉体のみを用いた接合用ペーストを、例3-10として粉体としてスピネル構造を有するMnCoのみを使用した接合用ペーストを、例3-11として合金粉体に代えてスピネル構造を有するMnCoを使用した接合用ペーストを、それぞれ作製した。
そして用意した例3-1~3-11の接合用ペーストを用い、試験例1と同様にして、接合部材のCTE、接合部材とカソードまたは金属製ICとの接合強度、および接触抵抗をそれぞれ調べた。その結果を、下記の表3に示した。
また、参考までに、Fe-Ni合金のみを含むペーストとFe-Co合金のみを含むペースト(例1-12参照)とを、850℃で焼成した焼成体についてのXRD分析結果を、図3(1)および(2)に示した。
Figure 0007062522000003
例3-1~3-5に示されるように、合金粉体は、Fe,Co,Ni,Cuのうちの2つ以上からなる組成であれば、カソードおよび金属製ICに対する良好な接合性を有する接合部材を形成できることがわかった。ただし、AサイトにLaしか含まないペロブスカイト型酸化物粉末を用いた例3-5については、例えば例3-1、3-4と比較してカソードおよび金属製ICに対する接合性は良好であるにもかかわらず、接触抵抗が高くなるという結果であった。したがって、接合用ペーストに添加するペロブスカイト型酸化物粉末としては、AサイトにLaのほかに第二の元素(ここではSr)を含むとよいことが解った。
なお、図3に示すように、例3-1および例3-2の接合用ペーストを焼成すると、合金粉体が焼成されてスピネル相を主相とし、その他の酸化物相を副相とする焼成体(接合部材)が得られることが解る。このことから、例3-1~3-5の接合用ペーストに用いた合金粉体は、焼成によって酸化され、接合部材においては主としてCoFe、NiFe、CuFe等の複酸化物の形態で存在しているといえる。これに対し、例3-6~3-8では、合金粉体に代えて、上記元素のいずれか1種の酸化物(Co、NiO、またはFe)粉体を用いて接合用ペーストを調製し、接合体を形成している。したがって、例3-6~3-8の接合体にはCo,Ni,Feが、Co、NiO、Feの形態で存在している。この例3-6~3-8の接合部材についてのCTEは、例3-1等の接合部材におけるCTEと大きく変わらない。にもかかわらず、例3-6~3-8の接合体では、金属製ICに対する接合性が大きく低下し、また、接触抵抗も大幅に高くなってしまう。このことから、接合部材におけるFe,Co,Ni,Cu等の元素は、少なくともスピネル型結晶構造を有する酸化物の形態で含まれていることが、金属製ICのスピネル層との接合性と抵抗特性とを高める上で好ましいことがわかる。延いては、Fe,Co,Ni,Cu等の元素は、接合用ペースト中に安定な酸化物として存在するのではなく、例えば合金の形態で添加されて存在しているのがよいと言える。また、Fe,Co,Ni,Cu等が金属の単体として存在するのではなく、2種以上の合金の形態で存在することで、焼成中に接合部材中にスピネル相を好適に形成しやすく、金属製ICとの良好な接合を実現できるために好ましいといえる。
これに対し、接合性ペーストに合金粉末を含まない例3-9については、金属製ICの表面にスピネル層が形成されるものの、接合部材中にスピネル相は形成されない。その結果、スピネル層によって金属製ICからのCrの拡散を抑制することはできるものの、このスピネル層を備える金属製ICと接合部材との接合強度が顕著に低下してしまうことが確認できた。
金属製ICとして用いたステンレス板の表面には、Coコーティングの前駆層が備えられていたことから、金属製ICには焼成によってスピネル層が形成される。このスピネル層によって、ステンレス板から接合部材に向けて拡散してくるCrを補足し、接合部材およびカソードへのCrの拡散を抑制することができる。ここで、金属製ICのステンレス板の表面にスピネル層が形成されないと、ステンレス板に含まれるCrは接合部材中を拡散し、カソードに到達し得る。その結果、拡散したCrは、接合部材やカソードに含まれるランタンストロンチウムコバルタイト(La0.6Sr0.4CO)等に含まれるSr等と反応してSrCrOを形成し、接合部材およびカソードの特性を悪化させる。これに対し、ここに開示される接合構造では、金属製ICの表面にはスピネル層が備えられているとともに、接合部材中にもスピネル相が存在する。このことにより、スピネル層によりCrの拡散を抑制するとともに、このスピネル層を備える金属製ICと接合部材との接合を強固なものとすることができ、接合界面における接触抵抗を低く抑えることができる。したがって、ここに開示される接合体は、金属製ICを用いた場合であってもカソードのCr被毒を抑制しつつ、金属製ICとカソードとの強固な接合を実現することができる。
また、例3-10、3-11の接合ペーストは、合金粉体の代わりに、スピネル型結晶構造のMnCo粉体を含み、接合部材もまたMnCo相を含む。金属製ICとして使用したフェライト系ステンレス鋼の一般的なCTEは7×10-6~12×10-6/K程度と低く、また、金属ICの表面に備えられるスピネル層のCTEは例えばMnCo(バルク)で13×10-6/K程度である。したがって、例3-10、3-11の接合部材は、金属ICの表面に備えられるスピネル層と共通のMnCo相を有し、かつ、CTEも近いという観点から、金属製ICとの接合が良好になったと考えられる。しかしながら、例3-10の接合部材は、ペロブスカイト型酸化物粉末を含まないペーストから形成されているためにカソードとの接合性が良好ではなく、接触抵抗が高くなってしまうことが確認された。また、例3-11の接合部材は、ペロブスカイト型酸化物粉末を含むためにカソードと金属製ICの両方との接合性が良好であるるものの、接触抵抗が高く、接合部材とスピネル層の電気的な接合が良好ではないと考えられる。このことからも、接合ペーストに添加するFe,Co,Ni,Cu等の元素は、酸化物の形態ではなく、合金の形態であるとよいことがわかる。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
1 SOFCスタック
10,10A,10B 単セル
20 空気極(カソード)
30 固体電解質
40 燃料極(アノード)
50,50A 金属製インターコネクタ
52 ,54 セル対向面
53 空気流路
55 燃料ガス流路

Claims (10)

  1. 固体酸化物形燃料電池の空気極と、金属製インターコネクタと、前記空気極および前記金属製インターコネクタを接合する接合部材とを含み、
    前記金属製インターコネクタは、
    少なくともFeとCrとを含む金属基材と、
    前記金属基材の前記接合部材に対向する側の表面に備えられ、一般式:M (ただし、式中のMは、遷移金属から選択される1以上の元素);で表される第1スピネル相を含むスピネル層と、を備え、
    前記接合部材は、
    一般式:ABO(ただし、式中のAは、La、SrおよびBaからなる群から選択される2以上の元素であり、Bは、少なくともCoを含む1以上の元素);で表されるペロブスカイト相と、
    一般式:M (ただし、式中のMは、Ni、Fe,CoおよびCuからなる群から選択される2以上の元素であり、前記第1スピネル相と共通の元素を少なくとも1つ含む);で表される酸化物相と、
    を含み、
    前記ペロブスカイト相および前記酸化物相の合計を100質量%としたときに、前記酸化物相の割合は、10質量%以上70質量%以下であり、
    前記ペロブスカイト相は、前記元素AとしてLaおよびSrを含み、前記元素BとしてCoを含む、接合構造。
  2. 固体酸化物形燃料電池の空気極と、金属製インターコネクタと、前記空気極および前記金属製インターコネクタを接合する接合部材とを含み、
    前記金属製インターコネクタは、
    少なくともFeとCrとを含む金属基材と、
    前記金属基材の前記接合部材に対向する側の表面に備えられ、一般式:M (ただし、式中のMは、遷移金属から選択される1以上の元素);で表される第1スピネル相を含むスピネル層と、を備え、
    前記接合部材は、
    一般式:ABO(ただし、式中のAは、La、SrおよびBaからなる群から選択される2以上の元素であり、Bは、少なくともCoを含む1以上の元素);で表されるペロブスカイト相と、
    一般式:M (ただし、式中のMは、Ni、Fe,CoおよびCuからなる群から選択される2以上の元素であり、前記第1スピネル相と共通の元素を少なくとも1つ含む);で表される酸化物相と、
    を含み、
    前記ペロブスカイト相および前記酸化物相の合計を100質量%としたときに、前記酸化物相の割合は、10質量%以上70質量%以下であり、
    前記酸化物相は、NiFe 、NiCo 、およびCoFe から選択されるいずれか1種を主相とする、接合構造。
  3. 前記金属基材は、フェライト系ステンレス鋼である、
    請求項1または2に記載の接合構造。
  4. 固体酸化物形燃料電池の空気極と金属製インターコネクタとを接合する接合部材を形成するための導電性接合材料であって、
    ここで、前記金属製インターコネクタは、
    少なくともFeとCrとを含む金属基材と、
    前記金属基材の前記接合部材に対向する側の表面に備えられ、一般式:M (ただし、式中のMは、遷移金属から選択される1以上の元素を含む);で表される第1スピネル相を含むスピネル層と、を備え、
    前記導電性接合材料は、
    一般式:ABO(ただし、式中のAは、La、SrおよびBaからなる群から選択される2以上の元素であり、Bは、少なくともCoを含む1以上の元素);で表されるペロブスカイト型結晶構造を有するペロブスカイト酸化物粉体と、
    Ni、Fe,CoおよびCuからなる群から選択される2以上の元素を含み、前記第1スピネル相と共通の元素を少なくとも1つ含む合金粉体と、を含み、
    前記ペロブスカイト酸化物粉体および前記合金粉体の合計を100質量%としたときに、前記合金粉体の割合は、10質量%以上70質量%以下であり、
    前記ペロブスカイト酸化物粉体の平均粒子径は、前記合金粉体の平均粒子径よりも小さい、導電性接合材料。
  5. 前記ペロブスカイト酸化物粉体の平均粒子径は0.1μm以上5μm以下であって、
    前記合金粉体の平均粒子径は0.1μm以上10μm以下である、
    請求項に記載の導電性接合材料。
  6. 焼結助剤として、金属成分含有粉体をさらに含む、
    請求項4または5に記載の導電性接合材料。
  7. 前記焼結助剤として、Cu含有粉体を含み、
    前記ペロブスカイト酸化物粉体は、前記BサイトにCuを含む、
    請求項に記載の導電性接合材料。
  8. 前記ペロブスカイト酸化物粉体および前記合金粉体を分散させる分散媒を含み、ペースト状に調製されている、
    請求項のいずれか1項に記載の導電性接合材料。
  9. 前記ペースト状に調製された前記導電性接合材料であって、
    150℃で乾燥後に850℃で焼成したときの焼成収縮率が3%以下である、
    請求項に記載の導電性接合材料。
  10. 燃料極と固体電解質と空気極とを備える固体酸化物形燃料電池と、
    金属製インターコネクタと、
    前記空気極と前記金属製インターコネクタとを接合する接合部材と、
    を備え、
    前記接合部材は、請求項のいずれか1項に記載の導電性接合材料の焼成物により構成されている、SOFCスタック。
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