JP3818120B2 - 車両の安全装置 - Google Patents

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Description

【0001】
本発明は、車両の安全装置に関し、詳しくは、車輪付きの被搬送体を車両に乗せる際及び車両から降ろす際、被搬送体が不意に下降するのを防止するための車両の安全装置に関する。
【発明の属する技術分野】
【0002】
【従来の技術】
従来、人を乗せた状態の車椅子等の車輪付き被搬送体を収納できる自動車は、被搬送体に乗った人を福祉施設や病院等に楽に運ぶことができ、一般的に広く使われている。例えば、図10に示すように、図示外の被搬送者を乗せたままの車椅子200を収納できるワンボックス形状の自動車150では、その車内に設けられた3列のシート160,161,162の内、最後部のシートである所謂サードシート162を折り畳んで、そのサードシート162があった空間の床部、車椅子載置部155に車椅子200が乗り入れられるようになっている。被搬送者を乗せた車椅子200を車内に収納するには、まず、自動車150の車体151後側に設けられた上側テールゲート152及び下側テールゲート153をそれぞれ上方、下方に最大まで開口させる。そして、下側テールゲート153に格納された状態で付設されたスロープ154を車体151の後方に向かって引き出し、図示外の地面に接地させる。この状態で、スロープ154は地面と僅かな角度をなして接地しており、車椅子200は、地面から当該スロープ154上を渡って車内に乗り入れることになる。
【0003】
また、車体151の車椅子載置部155の近傍には、車椅子200を車両に乗り入れる際に、車椅子200が不意にスロープ154上を下降するのを防止する下降防止機構が設けられている。下降防止機構は、セーフティベルト205と回転可能に設けられ、セーフティベルト205を巻き取り及び繰り出し可能なドラムと、ドラムをセーフティベルト205を巻き取る方向に回転付勢するスパイラルスプリングと、作動時にはドラムの巻き取り方向への回転を許容しつつ繰り出し方向への回転は規制し、非作動時にはドラムの巻き取り及び繰り出し方向への回転を許容するロック装置を備えている。
【0004】
そして、車椅子200を車両に乗り入れる際は、ロック装置を非作動状態としてセーフティベルト205を引き出し、セーフティベルト205の先端に設けられた金具206を車椅子200の前輪180のフレーム181に引っ掛けた後、ロック装置を作動状態とし、スロープ154上を上昇移動させる。ロック装置を作動状態としてもドラムは巻き取り方向への回転が許容されているから、車椅子200がスロープ154上を上昇移動するのに伴って、ドラムはスパイラルスプリングの付勢力により巻き取り方向へ回転し、セーフティベルト205を巻き取る。これにより、セーフティベルト205が弛むのが防止される。また、ロック装置作動状態では、ドラムは繰り出し方向への回転が規制されているから、セーフティベルト205が引き出されるのが規制され、車椅子200が不意にスロープ154上を下降するのが防止される。尚、車椅子200を車両から降ろす際は、ロック装置を非作動状態としてセーフティベルト205の引き出しを可能とし、介護者の補助によりセーフティベルト205を引き出しつつ、スロープ154上を下降させる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の従来技術では、車椅子200が車両に乗り込む際、前記下降防止機構によって車椅子200が不意に下降するのを防止できるが、車椅子200の降車時に、スパイラルスプリングによる付勢力のみでは車椅子200が不意に降車方向へ降下するのを防止できない可能性があるという問題があった。
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、車輪付きの被搬送体の乗車及び降車を安全に行うことができる車両の安全装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために、請求項1に係る発明の車両の安全装置は、スロープを渡って車輪付きの被搬送体を車両に乗せる際及び車両から降ろす際、該被搬送体が不意に下降するのを防止するためのものであって、紐状部材と、該紐状部材に設けられ、前記被搬送体に係脱可能な係合手段と、車両に回転可能に設けられ、前記紐状部材を巻き取り可能な巻き取り部材及び該巻き取り部材に常時巻き取り方向への回転力を付与する付勢部材を備える巻き取り手段と、前記巻き取り部材の巻き取り方向への回転は許容するが、繰り出し方向への回転は規制する回転規制手段と、該回転規制手段による前記巻き取り部材の繰り出し方向への回転規制を解除可能な回転規制解除手段と、前記巻き取り部材に対し所定の回転抵抗を付与する回転抵抗付与手段と、該回転抵抗付与手段による前記巻き取り部に対する回転抵抗付与を解除可能な回転抵抗付与解除手段とを備えている。
【0008】
この構成の車両の安全装置では、被搬送体を車両に乗せる際は、回転規制解除手段及び回転抵抗付与解除手段を作動状態として紐状部材を引き出し、係合手段を非搬送体に係合させる。回転規制解除手段及び回転抵抗付与解除手段を作動させると、回転規制手段による巻き取り部材の繰り出し方向への回転規制が解除され、かつ回転抵抗付与手段による巻き取り部材に対する回転抵抗付与が解除されるので、紐状部材を容易に引き出すことができる。
【0009】
次に、回転規制解除手段を非作動状態とし、スロープを渡って被搬送体を車両に乗り込ませる。回転規制解除手段を非作動状態としても、巻き取り部材は巻き取り方向への回転が許容されているから、被搬送体がスロープ上を上昇移動するのに伴って、巻き取り部材はスパイラルスプリングの付勢力により巻き取り方向へ回転し、紐状部材を巻き取る。これにより紐状部材が弛むのが防止される。また、回転抵抗付与解除手段が非作動状態では、巻き取り部材は繰り出し方向への回転が規制されているから、紐状部材が引き出されるのが規制され、被搬送体が不意にスロープ上を下降するのが防止される。
【0010】
また、被搬送体を車両から降ろす際は、回転規制解除手段を作動させ、回転抵抗付与解除手段を非作動状態とし、作業者が被搬送体を後方に引っ張る。回転規制解除手段を作動させ、回転抵抗付与解除手段を非作動状態とすると、巻き取り部材は繰り出し方向への回転は可能であるが、回転の際は所定の回転抵抗が付与されるので、紐状部材を引き出すことは可能であるが、所定値以上の力が作用しなければ引き出すことはできない。従って、作業者が被搬送体を引っ張るのを止めると、被搬送体はその場に停止するか又は非常に低速で下降する。以上のように、被搬送体を車両に乗り込ませる際及び降ろす際に被搬送対が不意に下降するのを防止することができる。
【0011】
また、請求項2に係る発明の車両の安全装置は、請求項1に記載の車両の安全装置の構成に加えて、前記回転規制手段は、前記巻き取り部材と一体に回転する第1のラチェットと、該第1のラチェットに噛み合う位置と、第1のラチェットとの噛み合いが外れた位置とに移動可能な第1の噛み合い部材と、該第1の噛み合い部材を噛み合い位置側に付勢する付勢部材とを備え、前記巻き取り部材が巻き取り方向に回転しようとした際は、前記第1の噛み合い部材は前記第1のラチェットの歯を乗り越えることができ、前記巻き取り部材が繰り出し方向に回転しようとした際は、前記第1の噛み合い部材は前記第1のラチェットの歯を乗り越えることができないように構成されている。
【0012】
この構成の車両の安全装置では、請求項1に記載の発明の作用に加えて、巻き取り部材が巻き取り方向に回転しようとした際は、第1の噛み合い部材は第1のラチェットの歯を乗り越えることができ、巻き取り部材が繰り出し方向に回転しようとした際は、第1の噛み合い部材は第1のラチェットの歯を乗り越えることができないようになっているので、被搬送体を車両に乗せる場合、第1の噛み合い部材が第1のラチェットの歯を乗り越えると、巻き取り部材が巻き取り方向へのみ回転するので、被搬送体が降車方向へ移動してしまうのを防止することができ、被搬送体に乗った被搬送者の安全を確保することができる。
【0013】
また、請求項3に係る発明の車両の安全装置では、請求項2に記載の車両の安全装置の構成に加えて、前記回転規制解除手段は、前記第1の噛み合い部材を前記第1のラチェットとの噛み合いが外れた位置に移動させかつその位置保持させる。
【0014】
この構成の車両の安全装置では、請求項2に記載の発明の作用に加えて、回転規制解除手段は、前記第1の噛み合い部材を前記第1のラチェットとの噛み合いが外れた位置に移動させかつその位置保持させることができるので、巻き取り部材を繰り出し方向に回転させ、紐状部材を繰り出し方向に引き出して、紐状部材に設けられた係合手段を車外の被搬送体に係合させることができる。
【0015】
また、請求項4に係る発明の車両の安全装置では、請求項1乃至3の何れか1項に記載の車両の安全装置の構成に加えて、前記回転抵抗付与手段は、前記巻き取り部材の回転軸と同軸上で前記巻き取り部材に対して回転可能に設けられた第2のラチェットと、前記巻き取り部材と一体に回転する第1の摺接部材と、該第1の摺接部材に摺接しつつ前記第2のラチェットと一体に回転し、前記第1の摺接部材との摩擦により所定の回転抵抗を付与しつつ前記巻き取り部材と前記第2のラチェットとの相対回転を許容する第2の摺接部材と、前記第2のラチェットに噛み合う位置と、第2のラチェットとの噛み合いが外れた位置とに移動可能で、前記第2のラチェットに噛み合うことにより、前記第2のラチェットが前記巻き取り部材の巻き取り方向へ回転するのを規制する第2の噛み合い部材とを備えることを特徴とする。
【0016】
この構成の車両の安全装置では、請求項1乃至3の何れか1項に記載の発明の作用に加えて、回転抵抗付与手段では、第2のラチェットが巻き取り部材の回転軸と同軸上で巻き取り部材に対して回転可能に設けられ、第1の摺接部材が巻き取り部材と、第2の摺接部材が第2のラチェットとそれぞれ一体に回転するようになっており、第2の摺接部材は、第1の摺接部材に摺接して、第1の摺接部材に対して所定の回転抵抗を付与し、巻き取り部材と第2のラチェットとの相対回転を許容することができる。従って、被搬送体が車両から下りる際、その降車方向への移動に対してブレーキをかけることができるので、被搬送体が落下又は後退してしまうのを防止することができ、被搬送体に乗った被搬送者の安全を確保することができる。
【0017】
また、請求項5に係る発明の車両の安全装置では、請求項4に記載の車両の安全装置の構成に加えて、前記回転抵抗付与解除手段は、前記第2の噛み合い部材を前記第2のラチェットとの噛み合いが外れた位置に移動させかつその位置保持させる。
【0018】
この構成の車両の安全装置では、請求項4に記載の発明の作用に加えて、回転抵抗付与解除手段は、第2の噛み合い部材を第2のラチェットとの噛み合いが外れた位置に移動させかつその位置保持させることができるので、噛み合いが外れた状態で、巻き取り部材及び第1の摺接部材と第2のラチェット及び第2の摺接部材とが一体に回転することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した一実施形態について、自動車の車内後部に設けられた車両の安全装置を例に挙げ図面を参照して説明する。ここで、図1は、車椅子Wを収納可能な自動車75の後部構造を示す斜視図である。本実施の形態では、車椅子を収納可能な自動車として、ワンボックス型の自動車を例に挙げて説明する。図1に示すように、被搬送者H(図9参照)を乗せた車椅子Wを収納可能な自動車75は、その室内に車体70の前後方向に3列並んだシート78,79,80を備えている。車椅子Wは、車体70の後側の開放部から室内に乗り込み、その最後部の所謂サードシート80を室内の側面に向かって折り畳むことによってできた空間、車椅子載置部35まで乗り入れることができるようになっている。
【0020】
また、自動車75の車体70には、その後部を開放するリアゲート64,65がそれぞれ上下方向に回動可能に軸支されて設けられている。そして、リアゲート64を上方へ、リアゲート65を下方へそれぞれ回動させると、車体70後部が開放されるようになっている。また、下側のリアゲート65の室内側面65aには複数の板部材からなるスロープ40が設けられており、通常状態でスロープ40は伸縮可能に格納された状態となっている。そして、車体70の後部を開放した後、下側のリアゲート65からスロープ40を車体70の後方向に向かって引き出し、スロープ40のリアゲート65側でない端部を図示外の地面に接地させることで、車椅子Wが車内へ乗り入れられる状態となる。
【0021】
また、車体70室内後部の車椅子載置部35は、2列目シート79までの床部55よりも1段低く窪んだ形状になっており、車椅子Wがスロープ40を伝って室内にスムーズに乗り入れられるようになっている。さらに、床部55の2列目シート79の後側、即ち車椅子載置部35の車両前側端部近傍には、車椅子Wを車両に乗せる際及び車両から降ろす際、車椅子Wが不意に下降するのを防止して、乗車時及び降車時に被搬送者Hの安全を確保するための安全装置Sが設けられている。
【0022】
この安全装置Sの構造について図2乃至図4を参照して説明する。ここで、図2は安全装置Sの構造を示す分解斜視図であり、図3は安全装置Sの部分断面図であり、図4は安全装置Sの平面図である。図2に示すように、安全装置Sは、正面視略コの字型形状を有しその左右側壁10b,10cに固定用ソレノイド6及びブレーキ用ソレノイド8が設けられたベース部材10に各部材が設けられて構成されている。詳細には、ベース部材10の左右側壁10b,10c間に回転可能に渡設されたピン4に、クラッチ5と巻き取り部材15と、当該巻き取り部材15の一端に固設された固定用ラチェット11と、巻き取り部材15を挟んで固定用ラチェット11の反対側に設けられたブレーキ用ラチェット12と、スパイラルスプリング68とが設けられて安全装置Sが構成されている。また、巻き取り部材15の表面には螺旋状に溝16が形成されており、当該溝16には、請求項1に記載の紐状部材に対応するワイヤ20(図4参照)が巻き付けられるようになっている。そして、ワイヤ20は、巻き取り部材15により車体70側に巻き取り可能となっている。
【0023】
また、図3及び図4に示すように、ベース部材10は、正面視略コの字型形状で、略長方形の底壁10aと、図3での底壁10aの左右側縁からそれぞれ上方に垂設された何れも略長方形の左側壁10b及び右側壁10cとから構成されており、その左側壁10b及び右側壁10cには、側面視で重なる位置にそれぞれ貫通孔22,23が穿設されている。そして、当該貫通孔22,23には、ベース部材10の左側壁10bと右側壁10cとの間に渡設されるピン4の長さ方向両端部の凸部4b,4cが嵌合することになる。ピン4は、その基部となる略円柱形の胴部4aと、当該胴部4aの長さ方向両端部からその長さ方向外側に凸設された、胴部4aよりも一回り径の小さい略円柱形状の凸部4b,4cと、胴部4aの凸部4c近傍で、その外側面の法線方向に突出した一対の突起17,17とから構成されている。突起17,17は、凸部4b,4cよりもさらに径の小さい略円柱形状であり、胴部4aの断面に現れる円の直径とほぼ同一長さだけ突出している。さらに、胴部4aの外側面には、凸部4b側端部から胴部4aの略半分の長さの範囲に、平面に切り欠かれた平面部18が形成されており、ピン4の全体の長さは、左右側壁10b,10c間の寸法よりも長くなっている。
【0024】
ピン4は、クラッチ5とブレーキ用ラチェット12と巻き取り部材15とが回転する際の軸となるように、各部材の中心軸部に挿入されてベース部材10に取り付けられることになる。これら部材の内、巻き取り部材15は、略円柱形状を有し、その外側面には螺旋状の溝16が形成されている。また、その軸方向中心部には、図3での右側端部から左側へ向かって、クラッチ5を収容するクラッチ収容部15aが設けられている。クラッチ収容部15aは略円柱形に凹んだ形状となっており、その左側端部即ちクラッチ収容部の底部15a1からさらに巻き取り部材15の左側端部に向かってピン4が挿入されるピン挿入孔15bが穿設されている。ピン挿入孔15bは、ピン4をちょうど挿入できる程度の径を有する略円柱形の貫通孔であり、ピン4の平面部18が嵌合するための平面部(図示外)を備えている。そして、当該平面部にピン4の平面部18が嵌合することにより、巻き取り部材15とピン4とが一体となって回転することができる。
【0025】
そして、巻き取り部材15の外側面に形成された溝16には、ワイヤ20が螺旋状に巻き付けられることになる。このワイヤ20の巻き取り部材15側でない端部には、請求項1に記載の係合手段に相当する略S字型のフック21が設けられており、当該フック21は、図9に示す車椅子Wの前輪26のフレーム28に係合できるようになっている。また、巻き取り部材15の左側壁10b側端面には、固定用ラチェット11がボルトにより一体に固設されている。固定用ラチェット11は、所定厚を有し、中心部がピン挿入孔15bよりも大きく開放されたリング形状であり、その厚さ方向断面に複数の歯が形成された歯車形状となっている。
【0026】
さらに、ベース部材10上の固定用ラチェット11と対向する位置即ち右側壁10c側には、ピン4に回転可能に軸支されるブレーキ用ラチェット12が設けられるようになっている。ブレーキ用ラチェット12は所定厚を有し、固定用ラチェット11よりも小さな径の略円形形状であって、固定用ラチェット11と同様にその厚さ方向断面に複数の歯を備えた歯車形状となっている。また、ブレーキ用ラチェット12の中心部には、ピン4が挿入されるピン挿入孔12aが穿設されており、正面視で当該ピン挿入孔12aを挟み込むように2つの窪み部12b,12cが直線上に並んで設けられている。この窪み部12b,12cは、ブレーキ用ラチェット12の図3での左側面に設けられている。
【0027】
固定用ラチェット11は、その厚さ方向断面に形成された複数の歯が図5に示す噛合部材13と噛み合った状態で、図5での時計回り方向にしか回転できないような形状となっており、ブレーキ用ラチェット12もまた、その厚さ方向断面に形成された複数の歯が図5に示す噛合部材14と噛み合った状態で、図5での時計回り方向にしか回転できないような形状となっている。
【0028】
また、クラッチ5は略円柱形状を有し、その軸方向中心部にはピン4が挿入されるピン挿入孔5aが穿設されている。クラッチ5は、ピン挿入孔5aが穿設され、ピン4を保持してピン4と相対回転するピン保持部5bと、ブレーキ用ラチェット12に設けられた窪み部12b,12cに嵌合するラチェット嵌合部5cと、ラチェット嵌合部5cに設けられた摩擦板50,51と、当該摩擦板50,51を右方向に付勢するスプリング45とから構成されており、ラチェット嵌合部5cがピン保持部5bを覆った状態となっている。ラチェット嵌合部5cは、略円筒形状であり、その右側側縁の一部からは、ブレーキ用ラチェット12の窪み部12b,12cに嵌合する凸部30,30が凸設されている。凸部30,30は略同一形状となっており、ブレーキ用ラチェット12の窪み部12b,12cと同様に、ラチェット嵌合部5cを正面又は背面から見たときに、その中心に対して一対に、かつ一直線上に位置するようにそれぞれ設けられている。
【0029】
また、ラチェット嵌合部5cの内側面5c1の長さ方向(図3の左右方向)中間部からは、当該長さ方向に対して略垂直な壁部31が凸設されている。壁部31は、ラチェット嵌合部5cの内側面5c1に沿って設けられており、ラチェット嵌合部5cを正面視したとき、壁部31の中心部に位置するように貫通孔31aが穿設されている。さらに、壁部31の左側面及び右側面には、壁部31と略同一形状の、僅かな板厚を有する摩擦板50及び摩擦板51が設けられている。そして、壁部31の左側面に設けられた摩擦板50は、ラチェット嵌合部5cとピン保持部5bとの間に設けられたスプリング45と当接して、当該スプリング45により右方向に付勢され、右側面に設けられた摩擦板51は、後述するピン保持部5bの突起保持部36の左側面に当接して、スプリング45により右方向に付勢されることになる。
【0030】
また、ピン保持部5bは、前記壁部31に穿設された貫通孔31aにちょうど嵌合する外径を有する略円筒形状の胴部32と、当該胴部32の右側端部に設けられ、ピン4の表面から突出した突起17,17が嵌合するための溝37,37を備えた突起保持部36と、胴部32を挟んで突起保持部36と対向する位置に胴部32に対して略垂直に設けられた壁部38とから構成されており、何れの部材もその中心軸部がピン挿入孔5aにより貫通されている。また、突起保持部36は、胴部32よりも大きい径を持つ略円柱形状であり、正面視でその中心部のピン挿入孔5aを挟んで、溝37,37が対向して設けられている。溝37,37は、ピン4の表面から突出した突起17,17と同様に、ピン挿入孔5aの法線方向に一対に設けられており、それぞれピン挿入孔5aと連通している。また、溝37,37の深さは、突起保持部36の厚さ(図3での左右方向寸法)の略半分となっている。
【0031】
また、壁部38の右側面は、ラチェット嵌合部5cとピン保持部5bとの間に設けられたスプリング45が当接するスプリング当接面38aとなっており、当該スプリング当接面38aからは、壁部38に対して略垂直に円筒部39が凸設されている。クラッチ5において、円筒部39はラチェット嵌合部5c内に収まり、円筒部39によってスプリング45が覆われるようになっている。
【0032】
そして、ピン保持部5bの突起保持部36と壁部38との間にラチェット嵌合部5cの内側面5c1に設けられた壁部31が配置され、各々の部材間にスプリング45が設けられた状態で、ピン保持部5bとラチェット嵌合部5cとが取り付けられてクラッチ5が構成されることになる。詳細には、ラチェット嵌合部5cの壁部31の右側面に設けられた摩擦板51と、ピン保持部5bの突起保持部36の左側面とが当接し、かつ、ラチェット嵌合部5cの壁部31の左側面に設けられた摩擦板50と、ラチェット嵌合部5cとピン保持部5bとの間に設けられたスプリング45とが当接して、スプリング45により各摩擦板50,51が右方向に付勢され、ピン保持部5bの円筒部39がスプリング45を覆った状態でクラッチ5が構成されることになる。
【0033】
さらに、ベース部材10の左側壁10bの内側面10b1には、固定用ラチェット11に噛み合う噛合部材13が軸部33(図5参照)を中心に回転可能に設けられている。この噛合部材13は、左側壁10bの内側面10b1に設けられた略直方体の固定用ソレノイド6により直線運動をする略円柱形のプランジャ7に連結されており、当該プランジャ7を介して軸部33を中心に回転可能となっている。同様に、右側壁10cの内側面10c1には、ブレーキ用ラチェット12に噛み合う噛合部材14が軸部34(図5参照)を中心に回転可能に設けられている。
【0034】
この噛合部材14は、右側壁10cの内側面10c1に設けられた略直方体のブレーキ用ソレノイド8により直線運動をする略円柱形のプランジャ9に連結されており、当該プランジャ9を介して軸部34を中心に回転可能となっている。噛合部材13及び噛合部材14は、図5に示すように、何れも側面視長方形の略直方体形状であり、噛合部材13は図5での右側側面に固定用ラチェット11に噛み合う噛合部13aを、噛合部材14は図5での右下部分にブレーキ用ラチェット12に噛み合う噛合部14aをそれぞれ有している。そして、固定用ソレノイド6により、プランジャ7に連結された噛合部材13が軸部33を中心に所定角度範囲内で左右方向へ回転し、固定用ラチェット11と噛み合い、また噛み合いが解除されるようになっている。また、ブレーキ用ソレノイド8により、プランジャ9に連結された噛合部材14が軸部34を中心に所定角度範囲内で上下方向へ回転し、ブレーキ用ラチェット12と噛み合い、また噛み合いが解除されるようになっている。
【0035】
ここで、固定用ラチェット11に噛合部材13が、ブレーキ用ラチェット12に噛合部材14がそれぞれ噛み合って、各ラチェット11,12の回転方向が規制されることで、請求項1に記載の回転規制手段が構成されており、また、固定用ラチェット11と噛合部材13との噛み合いが外れ、ブレーキ用ラチェット12と噛合部材14との噛み合いが外れて、各ラチェット11,12が自由に回転可能となることで、請求項1に記載の回転規制解除手段及び回転抵抗付与解除手段が構成されている。
【0036】
そして、以上のように構成されたクラッチ5、ブレーキ用ラチェット12及び巻き取り部材15は、その中心軸部に穿設されたピン挿入口5a,ピン挿入口12a,ピン挿入口15bをピン4によって貫通されて、ピン4の長さ方向両端部の凸部4b,4cがベース部材10の左右両側壁10b,10cに穿設された貫通孔22,23に嵌合することにより、ベース部材10に取り付けられることになる。また、このとき、ベース部材10の左側壁10bに穿設された貫通孔22に嵌合したピン4の凸部4bは、その先端が左側壁10bのさらに左側に現出しており、その凸部4bの先端にはスパイラルスプリング68が設けられることになる。スパイラルスプリング68は、対象となる物体の直線運動ではなく回転運動に対して付勢力を付与することができるものであり、ここではスパイラルスプリング68によって、ピン4のワイヤ20の引き出し方向への回転が規制されることになる。それにより、車椅子Wが車内に乗り入れるのに伴って、安全装置Sのワイヤ20が巻き取り部材15に巻き取られることになる。また、スパイラルスプリング68は、その外側がカバー69によって覆われた状態となっている。
【0037】
次に、図8を参照して、固定用ラチェット11及びブレーキ用ラチェット12の回転動作を制御する固定用ソレノイド6とブレーキ用ソレノイド8との電気的構成について説明する。ここで、図8は、固定用ソレノイド6及びブレーキ用ソレノイド8の回路図である。図8に示すように、固定用ソレノイド6とブレーキ用ソレノイド8とは電気的に並列に接続されており、各々の一端が直流12V電源90のプラス側に接続されている。その内、固定用ソレノイド6の電源側でない端部には接点85が設けられており、当該接点85は、直流12V電源90のマイナス側に接続された引き出し接点95もしくは降車接点96にスイッチ88内で選択的に接続できるようになっている。
【0038】
そして、図9に示すワイヤ20の引き出し時には接点85を引き出し接点95に接続し、ワイヤ20の巻き取り時には降車接点96に接続する。また、車椅子Wの乗車時には、接点85を何れの接点95,96にも接続しない状態とする。尚、固定用ソレノイド6は、その接点85が引き出し接点95もしくは降車接点96に接続された状態でオン状態、即ちスイッチ88内を電流が流れ、図5に示すプランジャ7に連結された噛合部材13が固定用ラチェット11に噛み合っていない状態となる。また、何れの接点にも接続されていない状態でオフ状態、即ちスイッチ88内を電流が流れず、プランジャ7に連結された噛合部材13が固定用ラチェット11に噛み合った状態となる。
【0039】
また、ブレーキ用ソレノイド8の電源側でない端部には接点86が設けられており、当該接点86は、直流12V電源90のマイナス側に接続された引き出し接点97にスイッチ89内で選択的に接続できるようになっている。そして、図9に示すワイヤ20の引き出し時には接点86を引き出し接点97に接続し、車椅子Wの乗車時には、接点86を接点97に接続しない状態とする。尚、ブレーキ用ソレノイド8は、その接点86が引き出し接点97に接続された状態でオン状態、即ちスイッチ89内を電流が流れ、図5に示すプランジャ9に連結された噛合部材14がブレーキ用ラチェット12に噛み合っていない状態となる。また、引き出し接点97に接続されていない状態でオフ状態、即ちスイッチ89内を電流が流れず、プランジャ9に連結された噛合部材14がブレーキ用ラチェット12に噛み合った状態となる。
【0040】
以上のように構成された固定用ソレノイド6とブレーキ用ソレノイド8とを備えた安全装置Sの動作について、以下図5乃至図7を参照して説明する。図5乃至図7に示すように、安全装置Sは、固定用ラチェット11の回転が、固定用ソレノイド6により直線運動を行うプランジャ7に連結された噛合部材13によって制限され、またブレーキ用ラチェット12の回転が、ブレーキ用ソレノイド8により直線運動を行うプランジャ9に連結された噛合部材14によって制限されるようになっている。また、前述したように、固定用ラチェット11及びブレーキ用ラチェット12は、その各々が各噛合部材13,14と噛み合った状態であっても、各ラチェット11,12の図中の時計回り方向(以下、「巻き取り方向」という。)への回転時には、各噛み合い部材13,14が各ラチェット11,12の歯を乗り越えることができ、反対に図中の半時計回り方向(以下、「引き出し方向」という。)への回転時には、各噛み合い部材13,14が各ラチェット11,12の歯を乗り越えることができない状態となる。尚、前記引き出し方向は、本発明の請求項における繰り出し方向に対応する。
【0041】
まず、車椅子Wを車体70内部に乗り入れる際の安全装置Sの動作について説明する。図1に示す車椅子Wが車体70内部に乗り入れる際、事前に安全装置Sの巻き取り部材15に巻き付けられたワイヤ20を車外に引き出しておく必要がある。ワイヤ20の引き出し時には、図8に示す固定用ソレノイド6のスイッチ88及びブレーキ用ソレノイド8のスイッチ89の両方をオン状態として、図5に示すように、固定用ラチェット11にプランジャ7に連結された噛合部材13を噛み合わせず、かつブレーキ用ラチェット12にはプランジャ9に連結された噛合部材14を噛み合わせない状態とする。
【0042】
これにより、固定用ラチェット11及びブレーキ用ラチェット12は、共に自由に回転可能であるので、巻き取り部材15を引き出し方向に回転させてワイヤ20を車外へ引き出すことができる。このとき、図2に示す、ピン4とクラッチ5と巻き取り部材15と固定用ラチェット11とブレーキ用ラチェット12とは、全て一体となって回転することになる。そして、車体70後方に引き出したワイヤ20の先端に設けられたフック21を車椅子Wの前輪26のフレーム28に係合させた後、車椅子Wが車内へ乗り入れるためにワイヤ20を車体70側へ巻き取るようになっている。
【0043】
そして、車椅子Wの乗り入れ時には、図8に示す固定用ソレノイド6のスイッチ88及びブレーキ用ソレノイド8のスイッチ89の両方をオフ状態とし、図6に示すように、固定用ラチェット11にプランジャ7に連結された噛合部材13を噛み合わせ、かつブレーキ用ラチェット12にはプランジャ9に連結された噛合部材14を噛み合わせた状態とする。これにより、固定用ラチェット11及びブレーキ用ラチェット12は、共に巻き取り方向への回転のみが可能で、引き出し方向へは回転できない状態となるので、車椅子Wが乗り入れ方向に移動するのに伴って、巻き取り部材15が巻き取り方向に回転して、ワイヤ20が車体70側へ巻き取られることになる。このとき、図2に示す、ピン4とクラッチ5と巻き取り部材15と固定用ラチェット11とブレーキ用ラチェット12とは全て一体となって回転することになる。
【0044】
また、車内に乗り入れた車椅子Wを降車させる際には、図8に示す固定用ソレノイド6のスイッチ88をオン状態に、ブレーキ用ソレノイド8のスイッチ89をオフ状態とし、図7に示すように、固定用ラチェット11にはプランジャ7に連結された噛合部材13を噛み合わせず、かつブレーキ用ラチェット12にはプランジャ9に連結された噛合部材14を噛み合わせた状態とする。これにより、ブレーキ用ラチェット12は回転できなくなり、固定用ラチェット11のみが引き出し方向へ回転可能な状態になる。このとき、図3に示すように、固定用ラチェット11と連動して巻き取り部材15とクラッチ5とピン4とが回転することになるが、ブレーキ用ラチェット12に穿設された窪み部12b,12cにクラッチ5のラチェット嵌合部5cに設けられた凸部30,30が嵌合しているので、ラチェット嵌合部5cも回転できない状態になる。
【0045】
従って、クラッチ5のラチェット嵌合部5cにおいて、その内側面5c1から凸設された壁部31の右側面に設けられた摩擦板51が、ピン保持部5bの突起保持部36の左側面に当接しており、前記壁部31の左側面に設けられた摩擦板50が、ラチェット嵌合部5cとピン保持部5bとの間に設けられたスプリング45と当接して、各々の摩擦板50,51はスプリング45により右方向に付勢されているので、ブレーキ用ラチェット12に嵌合した不動状態のラチェット嵌合部5cと、固定用ラチェット11と連動して回転しようとするピン保持部5bとの間に摩擦力が生じることになる。これは、請求項1に記載の回転抵抗付与手段に対応している。そして、このクラッチ5内での摺動抵抗により、ワイヤ20にはその引き出し方向に対してブレーキがかかり、車椅子Wには、その後退及び落下を防止する方向に力が働くので、被搬送者H(図9参照)が安全な状態で車椅子Wを車外に降車させることができる。
【0046】
以上説明したように、本実施の形態の車両の安全装置では、車椅子Wの乗車の際、その乗車前には、固定用ソレノイド6のスイッチ88及びブレーキ用ソレノイド8のスイッチ89を何れもオン状態とし、固定用ラチェット11及びブレーキ用ラチェット12を、それぞれに対応する噛合部材13,14に何れも噛み合わせない状態、即ち、回転規制解除手段及び回転抵抗付与解除手段が作動した状態とするので、各ラチェットは共に自由に回転可能となり、巻き取り部材15を引き出し方向に回転させてワイヤ20を車外へ引き出すことができ、その後ワイヤ20の端部に設けられたフック21を車椅子Wの前輪26のフレーム28に係合させることができる。そして、フック21が係合した車椅子Wは、固定用ソレノイド6のスイッチ88及びブレーキ用ソレノイド8のスイッチ89の各々をオフ状態とし、固定用ラチェット11及びブレーキ用ラチェット12にそれぞれに対応する噛合部材13,14を噛み合わせた状態、即ち、回転規制解除手段を非作動状態とすると、車椅子Wが車両側へ移動するのに伴って、巻き取り部材15がスパイラルスプリング68の付勢力により巻き取り方向へのみ回転するので、ワイヤ20が弛むことなく巻き取られ、被搬送者Hを乗せた車椅子Wが不意にスロープ40上を下降するのが防止される。
【0047】
さらに、車椅子Wが車内に収納された状態から、固定用ソレノイド6のスイッチ88をオン状態に、ブレーキ用ソレノイド8のスイッチ89をオフ状態にして、固定用ラチェット11に噛合部材13が噛み合わず、ブレーキ用ラチェット12に噛合部材14が噛み合った状態、即ち回転規制解除手段を作動させ、回転抵抗付与解除手段を非作動状態とすると、固定用ラチェット11のみが引き出し方向に回転することになる。このとき、クラッチ5のラチェット嵌合部5cは、不動状態のブレーキ用ラチェット12に嵌合しているため不動となっており、クラッチ5のピン保持部5bは、固定用ラチェット11と連動して回転可能となっているので、ラチェット嵌合部5cの壁部31右側面に設けられた摩擦板51とピン保持部5bの突起保持部36の左側面との間で摺動抵抗が生じ、それにより固定用ラチェット11の引き出し方向への回転にブレーキがかかり、巻き取り部材15の回転が規制されるようになっている。従って、車椅子Wの降車を外部から補助する作業者等が車椅子Wを降車方向へ引っ張るのを止めると、車椅子Wはその場で停止するか又は非常に低速で下降するので、降車の際に車椅子Wが不意に下降するのが防止され、被搬送者Hの安全を確保することができる。
【0048】
また、車椅子載置部35の後端部には車内に乗り入れた車椅子Wを車体に対し確実に固定するための車椅子固定装置47が設けられている。車椅子固定装置47は、ワイヤ47aと、ワイヤ47aを巻き取り及び繰り出し可能な図略の巻き取り装置と、巻き取り装置によるワイヤ47aの巻き取り及び繰り出しを規制するロック装置と、ワイヤ47aの先端に設けられたフック47bとを備えている。車椅子Wを固定するには、車椅子Wの前輪26のフレーム28に安全装置Sのフック21が係合し、ワイヤ20に弛みがない状態で、固定用ソレノイド6をオフ状態として、ワイヤ20を引き出すことができないように、即ち車椅子Wが後退しないようにしておく。そしてこの状態で、車椅子固定装置47のワイヤ47aを引き出し、フック21を車椅子Wの後輪27のフレームに係合させ、ワイヤ47aの弛み分を巻き取り装置により巻き終わった後、ロック装置を作動させ、ワイヤ47aが引き出されないように、即ち車椅子Wが前進及び左右に動かないようにする。これにより、車椅子Wの動きが規制され確実に車体に固定される。車椅子Wを車内から降ろす際は、車椅子固定装置47のロック装置を非作動状態とし、ワイヤ47aを引き出しつつフック21の車椅子Wとの係合を解除した後前述の操作をすればよい。
【0049】
尚、本発明は各種の変形が可能である。例えば、安全装置Sは、車椅子Wが自動車75内へ乗り入れる際の使用に限られず、ストレッチャ等の搬送体を自動車やバス等に乗り入れさせる際にも使用することができる。また、福祉車両における被搬送体の乗車もしくは降車の際だけでなく、大型の貨物車等において、大きな精密機器等の荷物を積み下ろす際にも使用することができる。さらに、本実施の形態では、クラッチ5により巻き取り部材15の引き出し方向への回転に対してブレーキをかけたが、ブレーキの機構はこの形態には限られず、ベース部材10にラチェットの回転を規制するブレーキ機構を設けてもよい。
【0050】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に係る発明の車両の安全装置では、被搬送体を車両に乗せる際は、回転規制解除手段及び回転抵抗付与解除手段を作動状態として紐状部材を引き出し、係合手段を非搬送体に係合させる。回転規制解除手段及び回転抵抗付与解除手段を作動させると、回転規制手段による巻き取り部材の繰り出し方向への回転規制が解除され、かつ回転抵抗付与手段による巻き取り部材に対する回転抵抗付与が解除されるので、紐状部材を容易に引き出すことができる。次に、回転規制解除手段を非作動状態とし、スロープを渡って被搬送体を車両に乗り込ませる。回転規制解除手段を非作動状態としても、巻き取り部材は巻き取り方向への回転が許容されているから、被搬送体がスロープ上を上昇移動するのに伴って、巻き取り部材はスパイラルスプリングの付勢力により巻き取り方向へ回転し、紐状部材を巻き取る。これにより紐状部材が弛むのが防止される。また、回転抵抗付与解除手段が非作動状態では、巻き取り部材は繰り出し方向への回転が規制されているから、紐状部材が引き出されるのが規制され、被搬送体が不意にスロープ上を下降するのが防止される。
【0051】
また、被搬送体を車両から降ろす際は、回転規制解除手段を作動させ、回転抵抗付与解除手段を非作動状態とし、作業者が被搬送体を後方に引っ張る。回転規制解除手段を作動させ、回転抵抗付与解除手段を非作動状態とすると、巻き取り部材は繰り出し方向への回転は可能であるが、回転の際は所定の回転抵抗が付与されるので、紐状部材を引き出すことは可能であるが、所定値以上の力が作用しなければ引き出すことはできない。従って、作業者が被搬送体を引っ張るのを止めると、被搬送体はその場に停止するか又は非常に低速で下降する。以上のように、被搬送体を車両に乗り込ませる際及び降ろす際に被搬送対が不意に下降するのを防止することができる。
【0052】
また、請求項2に係る発明の車両の安全装置では、請求項1に係る発明の効果に加えて、巻き取り部材が巻き取り方向に回転しようとした際は、第1の噛み合い部材は第1のラチェットの歯を乗り越えることができ、巻き取り部材が繰り出し方向に回転しようとした際は、第1の噛み合い部材は第1のラチェットの歯を乗り越えることができないようになっているので、被搬送体を車両に乗せる場合、第1の噛み合い部材が第1のラチェットの歯を乗り越えると、巻き取り部材が巻き取り方向へのみ回転するので、被搬送体が降車方向へ移動してしまうのを防止することができ、被搬送体に乗った被搬送者の安全を確保することができる。
【0053】
また、請求項3に係る発明の車両の安全装置では、請求項2に係る発明の効果に加えて、回転規制解除手段は、前記第1の噛み合い部材を前記第1のラチェットとの噛み合いが外れた位置に移動させかつその位置保持させることができるので、巻き取り部材を繰り出し方向に回転させ、紐状部材を繰り出し方向に引き出して、紐状部材に設けられた係合手段を車外の被搬送体に係合させることができる。
【0054】
また、請求項4に係る発明の車両の安全装置では、請求項1乃至3の何れか1項に係る発明の効果に加えて、回転抵抗付与手段では、第2のラチェットが巻き取り部材の回転軸と同軸上で巻き取り部材に対して回転可能に設けられ、第1の摺接部材が巻き取り部材と、第2の摺接部材が第2のラチェットとそれぞれ一体に回転するようになっており、第2の摺接部材は、第1の摺接部材に摺接して、第1の摺接部材に対して所定の回転抵抗を付与し、巻き取り部材と第2のラチェットとの相対回転を許容することができる。従って、被搬送体が車両から下りる際、その降車方向への移動に対してブレーキをかけることができるので、被搬送体が落下又は後退してしまうのを防止することができ、被搬送体に乗った被搬送者の安全を確保することができる。
【0055】
また、請求項5に係る発明の車両の安全装置では、請求項4に係る発明の効果に加えて、回転抵抗付与解除手段は、第2の噛み合い部材を第2のラチェットとの噛み合いが外れた位置に移動させかつその位置保持させることができるので、噛み合いが外れた状態で、巻き取り部材及び第1の摺接部材と第2のラチェット及び第2の摺接部材とが一体に回転することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 車椅子Wを収納可能な自動車75の後部構造を示す斜視図である。
【図2】 安全装置Sの構造を示す分解斜視図である。
【図3】 安全装置Sの部分断面図である。
【図4】 安全装置Sの平面図である。
【図5】 安全装置Sの側面図である。
【図6】 安全装置Sの側面図である。
【図7】 安全装置Sの側面図である。
【図8】 固定用ソレノイド6及びブレーキ用ソレノイド8の回路図である。
【図9】 被搬送者Hを乗せた車椅子Wの前輪26のフレーム28にフック21が係合した状態を示す斜視図である。
【図10】 従来の、車椅子200を収納可能な自動車150の後部構造を示す斜視図である。
【符号の説明】
4 ピン
5 クラッチ
6 固定用ソレノイド
7 プランジャ
8 ブレーキ用ソレノイド
9 プランジャ
10 ベース部材
11 固定用ラチェット
12 ブレーキ用ラチェット
12b,12c 窪み部
13,14 噛合部材
15 巻き取り部材
16 溝
17 突起
20 ワイヤ
21 フック
30 凸部
37 溝
40 スロープ
45 スプリング
50,51 摩擦板
68 スパイラルスプリング
70 車体
75 自動車
S 安全装置
H 被搬送者
W 車椅子

Claims (5)

  1. スロープを渡って車輪付きの被搬送体を車両に乗せる際及び車両から降ろす際、該被搬送体が不意に下降するのを防止するための車両の安全装置であって、
    紐状部材と、
    該紐状部材に設けられ、前記被搬送体に係脱可能な係合手段と、
    車両に回転可能に設けられ、前記紐状部材を巻き取り可能な巻き取り部材及び該巻き取り部材に常時巻き取り方向への回転力を付与する付勢部材を備える巻き取り手段と、
    前記巻き取り部材の巻き取り方向への回転は許容するが、繰り出し方向への回転は規制する回転規制手段と、
    該回転規制手段による前記巻き取り部材の繰り出し方向への回転規制を解除可能な回転規制解除手段と、
    前記巻き取り部材に対し所定の回転抵抗を付与する回転抵抗付与手段と、
    該回転抵抗付与手段による前記巻き取り部に対する回転抵抗付与を解除可能な回転抵抗付与解除手段とを備えていることを特徴とする車両の安全装置。
  2. 前記回転規制手段は、前記巻き取り部材と一体に回転する第1のラチェットと、該第1のラチェットに噛み合う位置と、第1のラチェットとの噛み合いが外れた位置とに移動可能な第1の噛み合い部材と、該第1の噛み合い部材を噛み合い位置側に付勢する付勢部材とを備え、
    前記巻き取り部材が巻き取り方向に回転しようとした際は、前記第1の噛み合い部材は前記第1のラチェットの歯を乗り越えることができ、前記巻き取り部材が繰り出し方向に回転しようとした際は、前記第1の噛み合い部材は前記第1のラチェットの歯を乗り越えることができないように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両の安全装置。
  3. 前記回転規制解除手段は、前記第1の噛み合い部材を前記第1のラチェットとの噛み合いが外れた位置に移動させかつその位置保持させることができるものであることを特徴とする請求項2に記載の車両の安全装置。
  4. 前記回転抵抗付与手段は、前記巻き取り部材の回転軸と同軸上で前記巻き取り部材に対して回転可能に設けられた第2のラチェットと、前記巻き取り部材と一体に回転する第1の摺接部材と、該第1の摺接部材に摺接しつつ前記第2のラチェットと一体に回転し、前記第1の摺接部材との摩擦により所定の回転抵抗を付与しつつ前記巻き取り部材と前記第2のラチェットとの相対回転を許容する第2の摺接部材と、前記第2のラチェットに噛み合う位置と、第2のラチェットとの噛み合いが外れた位置とに移動可能で、前記第2のラチェットに噛み合うことにより、前記第2のラチェットが前記巻き取り部材の巻き取り方向へ回転するのを規制する第2の噛み合い部材とを備えることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の車両の安全装置。
  5. 前記回転抵抗付与解除手段は、前記第2の噛み合い部材を前記第2のラチェットとの噛み合いが外れた位置に移動させかつその位置保持させることができるものであることを特徴とする請求項4に記載の車両の安全装置。
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