JP3962243B2 - 貨物固定装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車、列車などの車両、船舶、飛行機等で輸送される貨物の固定装置に関し、特に、自動車の荷台に車椅子やストレッチャーを固定するのに適した貨物固定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両に車椅子を搭載する際に好適な貨物固定装置として本願出願人は先に、特許第3043365号の「ベルト式拘束装置」を提案している。この装置は床下収納型の貨物固定装置で、貨物として車椅子を固定する際は、まず、床上への引き出し長さを調整できる4本のベルトを車椅子の前後左右からそれぞれ引き出し、これらベルトの先端フックを車椅子の適所に引っ掛ける。このベルトは、床下に収納されているベルト巻取り手段のリトラクタによって巻き取り方向へ付勢されているので、フックを車椅子に引っ掛けた後は自動的に緊張状態となる。この状態から貨物室後部の隅に設けられた回動レバーを引くと、ベルト巻込みロック手段が回動して各ベルトが引き締められるとともにそれ以上引き出せないようにロックされる。これにより車椅子が床へ押し付けられ、輸送中に移動したりしないように固定される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の貨物固定装置にあっては、ベルトのロック操作を行うための回動レバーが床上に設けられていることから、車椅子を載せる際に狭い貨物室内でこれをよける必要があり、また、他の貨物を搭載する際にはレバーを避けてぶつからないように配慮しなくてはならない。つまり、フラットであるべき荷台上にレバーが突出しているため、これが邪魔になるという不具合をもっている。
【0004】
さらには、車椅子を固定する際にどうしても車椅子の回りを一巡して4本のベルトをそれぞれ車椅子の適所へ掛けなければならないが、狭い貨物室内では作業しにくく、また、車椅子前方からのフック掛けは股下へ手を伸ばすことになるので、できるだけ避けたい作業である。
【0005】
このような課題に着目して本発明は、邪魔にならず、作業しやすく且つ不快な作業を避けられるような貨物固定装置を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、少なくとも前後左右4本のベルトを床下から引き出して床上の貨物を固定する床下収納型の貨物固定装置において、巻き取り方向へ付勢力を与えながら引き出せるようにベルトを収容した少なくとも前後左右4つのベルト巻取り手段と、前後一対としたベルト巻取り手段から引き出されている2本のベルトにより1つ保持される少なくとも左右2つの係止具と、ベルト巻取り手段から引き出されたベルトの途中にそれぞれ介在し、主軸とこの主軸の周囲を回る副軸との間にベルトを通すことでその副軸の旋回により主軸にベルトを巻き込んでロックするベルト巻込みロック手段と、左右のベルト巻取り手段の間に設置され、各ベルト巻込みロック手段のロック及び解除操作を一括して行う操作レバー及び解除機構と、備え、その操作レバー及び解除機構は、操作レバーが前後方向へ回動するように設置されるとともに操作レバーが少なくとも解除位置で床下に収納されるようになっていることを特徴とする。
【0007】
このような貨物固定装置の操作レバー及び解除機構は、操作レバーの回動軸に設けられたドライブギアと、このドライブギアにかみ合って、後側左右のベルト巻込みロック手段の副軸を共通に回転させるドリブンギアと、このドリブンギアに従い回転するチェーンホイールと、このチェーンホイールによりチェーン駆動され、前側左右のベルト巻込みロック手段の副軸を共通に回転させるスプロケットと、ドリブンギアに従い回転するラチェットホイールと、このラチェットホイールにかみ合うよう付勢されたラチェット爪と、このラチェット爪を付勢力に逆らってリリースする解除レバーと、からなる構造とすることができる。このような構造により、操作レバー及び解除機構をユニット化することができ、製造やメンテナンスにおいて有利である。またユニット化することでコンパクトになり、左右のベルト巻取り手段の間に設置することが簡単にできることにもなる。
【0008】
この操作レバー及び解除機構においては、特に、解除レバーとラチェット爪との間にプッシュロッドを介在させ、解除レバーの回動によりプッシュロッドが押し込まれることでラチェット爪がリリースされる構造としておくと、たとえば解除レバーが折れたり、石など異物が挟まって回動しなくなったなどの緊急時に、そのプッシュロッドを適当な棒で押し込めばロックを解除できることになるので、好ましい。
【0009】
この貨物固定装置によると、操作レバーが解除位置で床下に収納されるので、貨物搭載の邪魔になることはない。しかも、操作レバーを床下に収納したことから、これを荷台の中央部分に設けたとしても貨物の邪魔になることがないので、操作レバーを荷台中央の操作しやすい位置に設置することが可能となる。これにより、操作レバーを前後方向の動作とし且つ左右のベルト巻取り手段の間に設けることが可能となり、装置を格段にコンパクトにすることができ、作業に必要なスペースを少なくすることができる。
【0010】
また、前後のベルト巻取り手段から延びるベルトを一対として1つの係止具を保持するようにしてあるので、特に車椅子やストレッチャーを固定する場合に、作業しやすい車後方からの作業で左右の係止具を掛ければ前後左右4本のベルトをすべて掛けられる。すなわち、従来のように車椅子の回りを一巡してフックをそれぞれ別々に掛けていく必要が無くなり、非常に作業しやすい。さらに、前側からの作業が無くなるので、車椅子に乗る人の股下へ手を伸ばすようなこともない。
【0011】
また、ベルト巻取り手段が前後左右の4つ設けられていることにより、前後のベルトが自在に伸び縮みするので、係止具の引っ掛け作業が容易であるし、引っ掛け位置も前後に自由に調整できる。
【0012】
以上のような特徴をもつ貨物固定装置の係止具は、少なくとも2つのフック部を前後に離間させて設けたものとするとよい。すなわち、前後の離れた位置を押さえることで固定を確実なものとし、なおかつ、車椅子やストレッチャーの場合であればそのフレームの縱支柱を間に挟み込んでずれないように固定することもできる。
【0013】
具体的形態としては、かすがい形の連結部材の前後端部に2つのU字形フック部材をそれぞれ固定(溶接やロウ付け)した構造が可能である。U字形フック部材は、1つで2本のフック部を形成できるので、これを連結部材の前後端部に固定すれば合計4本のフック部をもつことができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の一例を説明する。なお、図1〜図4中、上が前方で、下が後方である。
【0015】
図1に、貨物固定装置1の平面図、図2に、図1中の矢示X方向からみた場合の内部構造図を示している。図示のように本例の貨物固定装置1は、床下に収納されており、貨物室の床面がフラットに保たれるようになっている。すなわち、床下に設けた筐体2の中に、ベルト巻取り手段3、係止具4、ベルト巻込みロック手段5、操作レバー及び解除機構6が収納されている。
【0016】
ベルト巻取り手段3は、シートベルトのリトラクタを使用したもので、これから引き出されるベルトB(破線で示す)は、巻き取り方向へ常に付勢されている。このベルト巻取り手段3は、前後左右の計4つ設けられており、その前後のものを一対として係止具4が1つ共有されている。したがって、係止具4は左右の2つ設けられる。
【0017】
ベルト巻取り手段3から引き出されたベルトBは、ベルト巻込みロック手段5を通した後、途中で引っかかることのないようにガイドリングGを通して係止具4へ到達している。本例の場合、前側左右のベルトBは、ベルト巻取り手段3からベルト巻込みロック手段5及びガイドリングGを通って係止具4へ至るまでほぼ直線状の経路である一方、後側左右のベルトBは、ベルト巻取り手段3から出た後、ベルト巻込みロック手段5で一回折り返され、そしてガイドリングGで再び折り返されて係止具4へ至る折返し式の経路となっている。
【0018】
係止具4は、かすがい形の連結部材4aの前後の端部に、U字形のフック部材4bをそれぞれ溶接して形成されている。その各フック部材4bの2本の先端はかぎ爪状に湾曲させてフック部としてあり(図2)、したがって、1つの係止具4には4つのフック部が形成されている。また、本例の係止具4の場合、フック部材4bにゴムバンド4cを引っ掛けられるようにしてあり、ベルトBの先端に形成した保持輪に係止具4を通した後、ゴムバンド4cを図示のようにフック部材4bへ引っ掛けることで、脱落が防止されるようになっている。
【0019】
このような係止具4は、連結部材4aの長さを変更するだけで、フック部材4bの間隔が異なったものを簡単に作れるので、車椅子やストレッチャーなど固定する貨物のタイプに応じた適切な形状の係止具4を簡単に低コストで作成可能である。
【0020】
ベルト巻込みロック手段5は、主軸5aと、この主軸5aの周囲を回ってベルトBを巻き込む副軸5bと、から構成されている。主軸5aは、左右のベルトBに共通のものとして設けられており、したがって前後に2本、左右共通の主軸5aが設けられている。そして、この主軸5aのベルトBを通す部位に、若干の隙間を形成するようにして板状の副軸5bが固定され、当該主軸5aと副軸5bとの間の隙間にベルトBが通されるようになっている。
【0021】
このようなベルト巻込みロック手段5の動作を図3に示してある。まず、係止具4を貨物へ引っ掛けるためにベルトBを引き出す段階では図3(A)の解除状態となっており、ベルトBの引き出し方向に対して副軸5bが障害になっておらず、ベルトBは主軸5a及び副軸5bのなす隙間をスムーズに通過できる。継いで、係止具4を貨物へ引っ掛けた後に、操作レバー及び解除機構6の操作レバー6aを半分ほどロック方向へ操作したときの状態が図3(B)に示してあり、副軸5bによりベルトBが主軸5aへ半周ほど巻き込まれている。そして、操作レバー6aを完全にロック位置まで操作すると、図3(C)に示すように副軸5bが一回転し、ベルトBは、主軸5aに一回転巻き付けられた後にさらに副軸5bで折り返された状態となる。こ状態では、ベルトBが引っ張られると、副軸5bが主軸5aの方へ、つまり隙間を狭める方向へ変形させられる状態となり、確実なロック状態が得られることになる。
【0022】
なお、本例では機構簡素化のため、主軸5a上に副軸5bを取り付けて両者を一緒に回転させるタイプとしてあるが、主軸は回転させずに副軸だけを主軸周囲に旋回させる構造でも同等の作用がある。つまり、少なくとも副軸さえ旋回すればよい。
【0023】
このようなベルト巻込みロック手段5を操作する操作レバー及び解除機構6は、その操作レバー6aが前後方向へ回動し、図1に実線で示した解除位置と、これから180°回転した点線で示すロック位置と、の両位置で完全に床下に収納されるよう筐体2内に設置される。また平面上では、後側左右のベルト巻取り手段3の中央に位置している。このようにベルトBのロックと解除にかかる機構をまとめてユニット化した操作レバー及び解除機構6を装置中央部分に配置したことで、貨物固定装置1が全体的にコンパクト化されている。なお、操作レバー6aが解除位置とロック位置の両方で床下に収納される例を示しているが、ロック位置の場合は必ずしも床下に収納される必要はない。すなわち、操作レバー6aを操作するのは貨物を積み込んだ後なので、邪魔になる可能性は少ない。
【0024】
この操作レバー及び解除機構6の詳細について図4及び図5に示している。図4が平面図、図5が図4中の矢示Y方向からみた構造図である。
【0025】
操作レバー6aは180°回動可能に軸支されており、これと同軸にして、ドライブギア6bが設けられている。そして、このドライブギア6bとかみ合うようにして、ベルト巻込みロック手段5の主軸5aに固定したドリブンギア6cが設けられる。このドライブギア6bとドリブンギア6cのギア比は1/2で、ドライブギア6bの半回転でドリブンギア6cが1回転する。すなわち、操作レバー6aを180°回転させると、ドリブンギア6cが1回転することになる。このドリブンギア6cの回転に伴って、後側左右共通の主軸5aが回転するとともに左右の副軸5bが旋回し、図3に示した動作が実行される。
【0026】
また、主軸5aにはチェーンホイール6dが固定されており、ドリブンギア6cとともに回転する。このチェーンホイール6dにより駆動されるチェーンCは、前側の左右共通の主軸5aに固定されたスプロケット6e(図1)に巻回されており、したがって前側の主軸5aも操作レバー6aの操作により同時に図3の動作を行う。つまり、操作レバー6aにより、前後左右のベルト巻込みロック手段5を一括して操作できるようになっている。
【0027】
さらに主軸5aには、ラチェットホイール6fが固定されており、ドリブンギア6cとともに回転する。そして、このラチェットホール6fに係合するように、中央部分を軸支したラチェット爪6gが設けられている。ラチェット爪6gは、その背中から板バネ6hにより付勢され、ラチェットホイール6fと係合している。このラチェット爪6gの軸を挟んで爪とは反対側の端部に、スライド動作するL字形のプッシュロッド6iが当接している。解除レバー6jは軸6kにより軸支されており、その把持部分を引き上げて回動させるとプッシュローラ6lによりプッシュロッド6iが押し込まれるようになっている。こうして押し込まれたプッシュロッド6iは、板バネ6hによる付勢力に逆らう方向へラチェット爪6gを回転させるので、ラチェットホイール6fとの係合が外れてリリースされる。したがって、解除レバー6jを引き上げるようにしつつ操作レバー6aを解除位置へ戻すように操作することで、ベルトBのロックが解除される。
【0028】
このようにプッシュロッド6iを介在させてあると、たとえば、解除レバー6jの下側に石などがつまって操作できなくなったときなどの異常事態に対し、図6に示す緊急解除孔Eから棒などをつっこんでプッシュロッド6iを押し込むことでラチェットのリリースを行うことができるので、具合がよい。
【0029】
以上の床下収納型貨物固定装置1の使用状態を図6に示している。まず、使用しないときには荷台をフラットにするよう貨物固定装置1の上面を覆って蓋が閉められている。この状態で車椅子を載せ、定位置に止めてブレーキをかけたところで蓋を開け、係止具4と操作レバー6aを露出させる。続いて、点線で示すように操作レバー6aが解除位置にある状態で、係止具4を持ってベルトBを引き出し、車椅子フレームの適所に引っ掛ける。このときに、たとえばフレームの縱支柱Fが係止具4のフック部材4bの間に入る状態にすることもできる。
【0030】
係止具4を引っ掛けた後は、操作レバー6aを引き上げて、ロック位置まで回動させる。これによりベルトBが引き締められるとともにロックされる。すなわち、ベルト巻込みロック手段5の巻き込みによりベルトBがその分だけ引き込まれ、車椅子を床へ押し付けるように働き、確実な固定状態が得られるとともに、その状態でロックされる。
【0031】
固定した車椅子を降ろすには、操作レバー6aが勢いよく回転しないように押さえつつ解除レバー6jを引き上げ、ラチェットをリリースする。後は、解除位置まで操作レバー6aを戻せばロックが解除され、係止具4を外すことでベルトBはベルト巻取り手段3により自動的に巻き取られ、収納される。
【0032】
【発明の効果】
本発明の床下収納型貨物固定装置によれば、操作レバーが少なくとも解除位置で床下に収納されるので、貨物搭載時の邪魔にならず、貨物室を広く使うことができる。また、操作レバーを前後方向回動とし且つ左右のベルト巻取り手段の間に配置するようにしてあるので、装置がコンパクトになり、作業しやすくなっている。さらに、固定用のベルトを前後一対として1つの係止具を保持する構造になっているので、後方からの作業だけで固定作業を終えられ、股下に手を突っ込むような不快な作業を避けられるようになっている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る貨物固定装置の平面図。
【図2】図1の矢示Xからみたときの概略構造図。
【図3】ベルト巻込みロック手段の動作説明図。
【図4】操作レバー及び解除機構の拡大図。
【図5】図4の矢示Yからみたときの概略構造図。
【図6】貨物固定装置の使用状態説明図。
【符号の説明】
1 貨物固定装置
2 筐体
3 ベルト巻取り手段
4 係止具
5 ベルト巻込みロック手段
6 操作レバー及び解除機構
Claims (2)
- 少なくとも前後左右4本のベルトを床下から引き出して床上の貨物を固定する床下収納型の貨物固定装置において、
巻き取り方向へ付勢力を与えながら引き出せるようにベルトを収容した少なくとも前後左右4つのベルト巻取り手段と、
前後一対とした前記ベルト巻取り手段から引き出されている2本のベルトにより1つ保持される少なくとも左右2つの係止具と、
前記ベルト巻取り手段から引き出されたベルトの途中にそれぞれ介在し、主軸とこの主軸の周囲を回る副軸との間に前記ベルトを通すことでその副軸の旋回により前記主軸に前記ベルトを巻き込んでロックするベルト巻込みロック手段と、
左右の前記ベルト巻取り手段の間に設置され、前記各ベルト巻込みロック手段のロック及び解除操作を一括して行う操作レバー及び解除機構と、
を備え、
前記操作レバー及び解除機構は、
操作レバーの回動軸に設けられたドライブギアと、
該ドライブギアにかみ合って、後側左右の前記ベルト巻込みロック手段の副軸を共通に回転させるドリブンギアと、
該ドリブンギアに従い回転するチェーンホイールと、
該チェーンホイールによりチェーン駆動され、前側左右の前記ベルト巻込みロック手段の副軸を共通に回転させるスプロケットと、
前記ドリブンギアに従い回転するラチェットホイールと、
該ラチェットホイールにかみ合うよう付勢されたラチェット爪と、
該ラチェット爪を前記付勢力に逆らってリリースする解除レバーと、
を含んで構成され、
前記操作レバーが前後方向へ回動するように設置されるとともに該操作レバーが少なくとも解除位置で床下に収納されるようになっており、
前記解除レバーと前記ラチェット爪との間にプッシュロッドを介在させ、前記解除レバーの回動により前記プッシュロッドが押し込まれることで前記ラチェット爪がリリースされるようにしてある
ことを特徴とする貨物固定装置。 - 係止具は、かすがい形の連結部材の前後端部に2つのU字形フック部材をそれぞれ固定することで、該2つのフック部を前後に離間させて設けてあることを特徴とする請求項1記載の貨物固定装置。
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