JP3806694B2 - 急性冠状動脈症候群の診断マーカーおよびその使用方法 - Google Patents

急性冠状動脈症候群の診断マーカーおよびその使用方法 Download PDF

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Description

【0001】
この出願は、2001年5月4日に出願された米国仮特許出願番号60/288,871(Atty整理番号071949−6501);および2001年8月28日に出願された米国仮特許出願番号60/315,642(Atty整理番号071949−5501)に関連し、かつこられの優先権を主張するものであり、引用することによりそのすべてをそれぞれ本明細書の1部として取り込むものである。
【0002】
【発明の属する技術分野】
本発明は、急性冠状動脈症候群(ACS)の診断マーカーの同定と使用に関連する。種々の見地において、この発明は、ACSの早期の検出および識別の方法に関し、また、ACS症状の状態の不利な事象の危険性についての個々人の同定に関する。
【0003】
(発明の背景)
本発明の背景に関する以下の議論は、単に本発明を理解する上で読み手を助けるために提供するものであり、本発明の先行技術を記述または構成するものと認めるものではない。
【0004】
ACSは、心臓への血管傷害の発現であり、また心筋傷害または心筋損傷とも呼ばれ、これは、一般にアテローム硬化症や高血圧症に従属的なものであり、米国における主要な死亡原因である。ACSは、一般にアテローム硬化症のプラーク形成による冠状動脈疾患に関係した閉塞、およびさらなる閉塞または裂のいずれかの進行に起因する。ACSは、安定狭心症、不安定狭心症、または心筋梗塞として発現しうる。
【0005】
「急性冠状動脈症候群」(「ACS」)の用語は、心臓への虚血性の傷害から生じる冠状動脈疾患のグループに適用されてきた。ACSの患者は、病態生理学、臨床的状態、および不利な事象の危険性において異なった、異種のグループを形成する。このような患者は、不安定狭心症、非−ST−上昇(「NST」) 非−Q波心筋梗塞(「MI」)、ST−上昇 非−Q波MI、および経壁(Q波)MI等の連続体を形成する状態を医師に示す。ACSは、1またはそれ以上の冠状動脈中での血栓の沈着と成長に大きく起因すると考えられており、動脈の部分的若しくは完全な閉塞をもたらし、そして頻繁にプラークの破裂を伴い、虚血性傷害をもたらす。ACSは、冠状動脈痙攣や心筋への要求の増加によっても引き起こされうる。総説として、例えばDavis,Clin.Cardiol.20(増補I):I2-I7(1997)を参照のこと。
【0006】
ACSの重大さは、虚血性傷害の結果としての罹患率と死亡率により強調される。例えば、ACSの状態の4から6週間以内で、死亡またはこれに続く心筋梗塞(MI)の危険性は8〜14%であり、死亡、MI、または難治性虚血の割合は15〜25%であると、研究者は推定している(TherouxおよびFuster、Circulation 97:1195-1206、1998)。米国における急性MIによる死亡者の総数は約600,000とされ、ACSの診断、予後、および対処に関連する情報のこの分野の調査は、当然のことながら広範囲に渡っている。循環している心臓トロポニン濃度(例えば、Antman et al.,N.Eng.J.Med.335:1342-9,1996を参照;また、米国特許番号6,147,688、6,156,521、5,947,124、および5,795,725を参照。これらは、引用することによりそのすべてをそれぞれ本明細書の1部として取り込むものである。)、ST部分の降下(例えば、Savonitto et.al.,JAMA 281:707-13,1999を参照。)、循環しているクレアチンキナーゼ濃度(例えば、Alexander et.al.,Circulation(増補)1629,1998を参照)、および循環しているc−反応性タンパク質濃度(例えば、Morrow et.al.,J.Am.Coll.Cardol.31:1460-5,1998参照)等の、ある患者集団においてこのような情報を提供しうるいくつかの可能性のあるマーカーが確認されている。
【0007】
安定狭心症は、激しい活動やストレスによって起こる狭窄した胸部痛により特徴づけられ、休息や舌下のニトログリセリンにより軽減される。不安定狭心症は、舌下のニトログリセリンにより軽減される休息時の狭窄した胸部痛により特徴づけられる。狭心症の胸部痛は、通常舌下のニトログリセリンにより軽減され、痛みは、通常30分以内に治まる。心筋梗塞は、診断の心電図検査(ECG)のQ波を伴いうる、30分以上続く狭窄した胸部痛により特徴づけられる。不安定狭心症は、安定狭心症と心筋梗塞との間の臨床的状態を示すと考えられており、通常アテローム硬化症のプラーク破裂および血栓の形成に関係する。この点において、アテローム硬化症のプラーク破裂は、心筋梗塞の最も一般的な原因となる。
【0008】
安定狭心症の間に炎症が起こり、プラーク破裂のマーカー、血小板の活性化、および早期血栓症が、不安定狭心症の重篤度の進行の同定とモニターに用いられる。定義によれば、狭心症の発作の間に起こる心筋損傷は可逆であり、一方、心筋梗塞の間に起こる損傷は不可逆である。この形式によれば、心筋傷害の特異的マーカーは、心筋梗塞を同定するために用いることができる。穏和な不安定狭心症から重篤な不安定狭心症および心筋梗塞への冠状動脈疾患の進行は、プラークの不安定さおよび動脈の閉塞の度合いに関連する。安定なプラークが増大してより閉塞的になるとこの進行はゆっくりと起こり、不安定なプラークが破裂し、血小板の活性化および閉塞性血栓の形成をもたらすと、これは急激に起こりうる。心筋梗塞は、不安定狭心症と同様の病態生理を最も頻繁に共有するので、これら2つの事象間の唯一の区別が心筋損傷の可逆性とすることが可能である。しかし、重篤な不安定狭心症と穏和な心筋梗塞との間の唯一の区別が臨床的診断に基づいているので、心筋損傷のマーカーは不安定狭心症を有していると診断された患者の末梢循環においても現れるであろう。
【0009】
現在のACSの診断方法は、一般的に臨床的症状、心電図検査(ECG)、および末梢循環の心臓マーカーの測定を含むものである。血管造影も、通常不安定狭心症および急性心筋梗塞(AMI)に関係する重篤な胸部痛の場合に用いられる。ACSの患者は、頻繁に首、あご、肩、または左若しくは両方の腕の内側にしばしば広がる狭窄した胸部痛を有し、呼吸困難、発汗、動悸、頭のふらつき、および吐き気の症状を伴いうる。心筋虚血は、Q波およびST部分の変化等の診断のECGの変化を引き起こしうる。心臓酵素の血漿濃度の上昇は、重篤な不安定狭心症および心筋梗塞に関係した心臓組織壊死の度合いを反映するであろう。
【0010】
従って、この技術分野において、ACSの型を識別し、遅発の不利な事象の危険性を有するこれら個体をも同定できる、ACSの迅速、高感度で特異的な診断方法が現在求められている。このような診断方法は、有益な処置および治療を受けられる患者の数を非常に増加させ、間違った診断に関係する費用を減少させることとなる。
【0011】
(発明の概要)
本発明は、ACS、虚血、および/または壊死の診断および/または予後のマーカーの同定および使用に関連する。ここに記載された方法および組成物は、種々の形態のACSの診断、識別および予後に用いるために、迅速、高感度で特異的な診断方法に対するこの技術分野の要求に合致しうるものである。さらに、本発明の方法および組成物は、ACS患者の処置およびさらなる診断指標の発展を容易にするために用いることもできるものである。
【0012】
「虚血および虚血性の」の用語は、心臓への血流の減少の結果としての心筋への損傷と関連する。「狭心症」、「安定狭心症」、「不安定狭心症」、「無症候性虚血」の用語は、一般的に心筋虚血に関連する。当業者はこれらの用語を認識するはずであり、そしてこれらは「The Merck Manual of Diagnosis and Therapy」第17版、1999、Ed.Keryn A.G.Lane、pp.1662-1668に記載されており、これはここに引用することのみにより本明細書に取り込まれる。虚血の用語は、当業者が軽症の心筋傷害または損傷と見なすであろうものにも関連する。虚血の用語は、Journal of the American College of Cardiology 36、959-969(2000)にさらに記載されており、これはここに引用することのみにより本明細書に取り込まれる。
【0013】
「壊死および壊死性の」の用語は、心臓への血流の減少または停止の結果としての心筋細胞死と関係する。心筋壊死は、心筋虚血より重篤な心臓の状態である。「心筋梗塞」の用語は、一般的に心筋壊死と関連する。当業者はこれらの用語を認識するはずであり、そしてこれらは「The Merck Manual of Diagnosis and Therapy」第17版、1999、Ed.Keryn A.G.Lane、pp.1668-1677に記載されており、これはここに引用することのみにより本明細書に取り込まれる。壊死の用語は、当業者が重症の心筋傷害または損傷と見なすであろうものにも関連する。心筋梗塞および壊死の用語は、Journal of the American College of Cardiology 36、959-969(2000)にさらに記載されており、これはここに引用することのみにより本明細書に取り込まれる。
【0014】
種々の知見として、この発明は、患者のACSの診断、予後、または識別に関係するマーカーを同定する物質および工程に関係し、これらのマーカーを用いて、患者を診断および処置し、および/または処置計画の経過をモニターし、これらの状態の処置や予防の利益を提供しうる化合物および医薬組成物をスクリーニングする物質および工程に関連する。
【0015】
最初の知見として、この発明は、患者から得た試験サンプルを心筋傷害の1またはそれ以上のマーカーの存在または量について分析することによるACSの診断方法を特徴とする。これらの方法は、その存在または量がACSの診断、予後、または識別に関係する、1またはそれ以上のマーカーを同定することを含みうる。このようなマーカーが同定されると、患者サンプル中のこれらのマーカーの濃度が測定できる。ある態様では、これらのマーカーは、ACSの診断、予後、または識別に関係する診断濃度と比較できる。患者の濃度を診断濃度と関連づけることにより、ACSの存在または不存在、および患者における将来の不利な結果の可能性を迅速かつ正確に決定できうる。
【0016】
以下の議論の目的として、心筋梗塞の診断および予後に適用できるとして記載されている方法は、一般的に安定狭心症および不安定狭心症の診断および予後に適用できると考えられる。
【0017】
ある態様では、複数のマーカーから個別にまたは小グループとして得られたものと比較して、分析の予測価を増加させるために、これらの複数のマーカーが組み合わされる。好ましくは、記載された方法の予測価を増強するために、心筋傷害の1またはそれ以上の特異的マーカーが、心筋傷害の1またはそれ以上の非特異的マーカーと組み合わされる。
【0018】
ここで用いられる「マーカー」の用語は、患者の試験サンプルをスクリーニングする標的として用いられる分子を指す。このような分子標的の例としては、タンパク質またはポリペプチドがある。本発明でマーカーとして用いられる「タンパク質またはポリペプチド」は、これらのいずれのフラグメント、特に、免疫学的に検出可能なフラグメントをも含むことを企図されている。当業者は、血管傷害により損傷した心臓の細胞から放出されるタンパク質が、このようなフラグメントに分解または切断されることを認識できるはずである。さらに、あるマーカーは、不活性な形態で合成され、タンパク質分解によりその後活性化されうる。このようなマーカーの例は、以下に記載される。ここで用いられる「関連したマーカー」の用語は、マーカーそれ自身の代理として検出されうる特定のマーカーの1またはそれ以上のフラグメントを指す。
【0019】
現在のところ、BNPおよびBNP関連ペプチドは、心筋虚血のマーカーとしては用いられてこなかった。さらに、炎症、凝固、およびプラーク破裂等の種々の病態進行の他のマーカーは、心筋虚血のマーカーの大きなパネルの部分集合としては用いられてこなかった。この発明の好ましいマーカーは、心筋梗塞、不安定狭心症、および安定狭心症の患者の診断、識別、および予後を助けることができる。
【0020】
ここで用いられる「試験サンプル」の用語は、診断、予後、または評価の目的で得られた生物学サンプルを指す。ある態様では、このようなサンプルは、進行している状態の結果または状態の処置計画の効果を決定する目的のために得られるであろう。好ましい試験サンプルには、血液、血清、血漿、脳脊髄液、尿および唾液が含まれる。さらに、当業者は、いくつかの試験サンプルが分画や精製工程、例えば、全血液を血清または血漿成分に分離すること、の後に、容易に分析できることを認識できるはずである。
【0021】
ここで用いられる「心筋傷害の特異的マーカー」の用語は、心臓組織に典型的に関係する分子であり、そしてそれは心臓傷害に関連づけられるが、他の型の傷害には関連づけられないものを指す。このような心臓傷害の特異的マーカーには、アネキシンV、B型ナトリウム排泄増加性ペプチド、β−エノラーゼ、心臓トロポニンI(遊離および/または複合体)、心臓トロポニンT(遊離および/または複合体)、クレアチンキナーゼ−MB、グリコーゲンホスホリラーゼ−BB、心臓型脂肪酸結合タンパク質、ホスホグリセリン酸ムターゼ−MB、およびS−100aoが含まれる。これらの特異的マーカーは、以下に詳細に記載される。
【0022】
ここで用いられる「心筋傷害の非特異的マーカー」の用語は、凝固および鬱血または急性期反応物質の典型的な一般的マーカーである分子を指す。このようなマーカーは、心臓傷害の事象において上昇しうるが、非心臓の事象によっても上昇しうる。血小板の活性化および凝固の機構の因子には、β−トロンボグロブリン、D−ダイマー、フィブリノペプチドA、血小板由来増殖因子、プラスミン−α−2−抗プラスミン複合体、血小板第4因子、プロトロンビンフラグメント1+2、P−セレクチン、トロンビン−抗トロンビンIII複合体、血栓前駆体タンパク質、組織因子、およびフォン・ビルブラント因子が含まれる。これらの非特異的マーカーは、以下に詳細に記載される。
【0023】
ここで用いられる「急性期反応物質」の用語は、感染、傷害、手術、外傷、組織壊死等を含む種々の傷害で起こるストレスの多いまたは炎症性の状態に応じてその濃度が上昇するタンパク質を指す。急性期反応物質の発現および血清濃度の上昇は、傷害の型に特異的ではなく、むしろ傷害に対する恒常性反応の一部である。
【0024】
いくつかの成分が必要でない場合でも、恐らく広範囲の傷害を処理するために、すべての急性期反応物質は傷害に応じて産生される。古典的急性期タンパク質の例には、C−反応性タンパク質、セルロプラスミン、フィブリノーゲン、α1−酸性糖タンパク質、α1−アンチトリプシン、およびハプトグロビンを含む。インスリン様成長因子−1、インターロイキン−1β、インターロイキン−1レセプターアンタゴニスト、インターロイキン−6、インターロイキン−8、トランスホーミング増殖因子β、単球走化性タンパク質−1、および腫瘍壊死因子αのような種々のサイトカインおよび関連分子は、急性期反応にも深く関与する炎症反応の成分である。このようなサイトカインは、傷害部位から血流に放出され、それ自身他の急性期タンパク質の発現を誘導する能力を有する。
【0025】
心筋傷害の他の非特異的マーカーには、アテローム硬化症のプラーク破裂のマーカーを含む。アテローム硬化症のプラークは、蓄積した脂質、平滑筋細胞、結合組織、およびグリコサミノグリカンからなる。このようなプラークを含む血管は、プラーク形成が進行すると、収縮期の膨張を減少させ、異常急激波伝播を起こし、次第に弾力性を減少させる。プラークは、重篤な狭窄と全体的な動脈閉塞を進行させうる。いくつかのプラークは安定であるが、脂質と炎症細胞を多く含む他のものは典型的に薄い繊維性の被覆を有しており、自然な破裂を受けうる。これらの不安定プラークは、急性虚血事象の発症により緊密に関係する。従って、アテローム硬化症のプラーク破裂のマーカーは、可能性あるACSの犠牲の診断および評価に有用であろう。このようなアテローム硬化症のプラーク破裂のマーカーには、ヒト好中球エラスターゼ、誘導型一酸化窒素シンターゼ、リゾホスファチド酸、マロンジアルデヒド修飾低密度リポタンパク質、マトリックスメタロプロテイナーゼ−1、マトリックスメタロプロテイナーゼ−2、マトリックスメタロプロテイナーゼ−3、およびマトリックスメタロプロテイナーゼ−9が含まれる。
【0026】
心筋傷害の他の非特異的マーカーには、キャスパーゼ−3、ヘモグロビンα2、溶解性細胞間接着分子−1および溶解性血管細胞接着分子−1が含まれる。
【0027】
ここで用いられる「診断」の語は、所定の疾患や状態を患者が患っているかどうかを、当業者が見積もりおよび決定することができる方法を指す。当業者はしばしば、1またはそれ以上の診断指標、即ち、その状態の存在、重篤度、または不存在の表示となるマーカー、その存在、不存在、または量、に基づいて診断を行う。
【0028】
同様に、予後はしばしば、1またはそれ以上の「予後の指標」を試験することにより決定される。これらはマーカーであり、患者(または患者から得たサンプル)中でのその存在または量は、所定の経過または結果が起こる可能性を表示するものである。例えば、1またはそれ以上の予後の指標がこのような患者から得たサンプル中で充分に高い濃度に達した場合、その濃度は、より低いマーカー濃度を示す同様の患者と比較して、その患者が将来事象を経験する増大した可能性を有することを示すこととなる。予後の指標の濃度および濃度の変化は、次に罹患率または死亡の増大した可能性と関係し、患者に「不利な結果となる増大した疾病素因と関係する」ものとみなされる。好ましい予後のマーカーは、患者の遅発の不利な事象の発症、または将来のACSの可能性を予測できる。
【0029】
診断および予後の指標の使用に関連してここで用いられる「関連づけ」の用語は、患者の指標の存在または量を、所定の状態で患うと知られている人若しくはその危険性がある人、または、所定の状態に影響されない、即ち、「健常人」として知られる人の指標の存在または量と比較するものを指す。例えば、患者のサンプルのマーカー濃度は、特異的な型のACSと関係しているとして知られた濃度と比較できる。サンプルのマーカー濃度は、診断と関連づけられたといわれ、これは、当業者が特異的な型のACSを患っている患者かどうかを決定するためにマーカー濃度を使用でき、これに従って対応できることを示すものである。あるいは、サンプルのマーカー濃度は、健常人の集合で見られる平均的な濃度のように、よい結果(例えばACSの不存在)に関係しているとして知られたマーカー濃度と比較することもできる。
【0030】
ある態様では、診断または予後の指標は、単にその存在または不存在によって、状態または疾患と関連づけられる。他の態様では、診断または予後の指標の閾値濃度が確立され、そして患者サンプル中の指標の濃度が単純に閾値濃度と比較されうる。本発明のマーカーの好ましい閾値濃度は、約25pg/mL、約50pg/mL、約60pg/mL、約75pg/mL、約100pg/mL、約150pg/mL、約200pg/mL、約300pg/mL、約400pg/mL、約500pg/mL、約600pg/mL、約750pg/mL、約1000pg/mL、および約2500pg/mLである。この文脈で「約」の用語は、+/−10%を指す。
【0031】
また他の態様では、1またはそれ以上の診断または予後のマーカーの複合的決定が行われ、マーカーの一時的変化が診断または予後の決定に用いられうる。例えば、診断指標が1回目に決定され、そして2回目にも決定されうる。このような態様では、1回目から2回目へのマーカーの増加は、特定の型のACSの診断または所定の予後となりうる。同様に、1回目から2回目へのマーカーの減少は、特定の型のACSの表示または所定の予後となりうる。さらに、1またはそれ以上のマーカーの変化の度合いは、ACSの重篤度および将来の不利な事象に関連しうる。
【0032】
また他の態様では、1またはそれ以上の診断または予後のマーカーの複合的決定が行われ、マーカーの一時的変化が適切な治療の効果をモニターするために用いられうる。このような態様では、効果的な治療の経過の間にわたって、マーカーの減少または増加を観察することが期待される。
【0033】
ある態様では、比較測定が複数の時点で同一の診断マーカーについて行われるが、所定のマーカーを1時点で、第2のマーカーを第2の時点で測定し、これらのマーカーの比較が診断情報を提供しうることを、当業者は理解するであろう。
【0034】
ここで用いられる「予後を決定すること」の語は、当業者が患者の状態の経過や結果を予測できる方法を指す。「予後」の用語は、100%の正確さで状態の経過や結果を予測できるものを指さず、また、所定の経過や結果が試験マーカーの存在、不存在または濃度に基づいておおよそ起こりそうであると予測できるものを指すものでもない。その代わりに、当業者は、「予後」の用語がある特定の経過や結果が起こることの増大した可能性を指すものと理解できるであろうし、これは、その状態を示していない個体と比較したときに、経過や結果が所定の状態を示す患者において、より起こりそうなものである。例えば、その状態を示していない個体において、所定の結果を示す可能性は、約3%である。好ましい態様では、予後は、所定の結果を示す約5%の可能性、約7%の可能性、約10%の可能性、約12%の可能性、約15%の可能性、約20%の可能性、約25%の可能性、約30%の可能性、約40%の可能性、約50%の可能性、約60%の可能性、約75%の可能性、約90%の可能性、および約95%の可能性である。この文脈において「約」の用語は、+/−1%を指す。
【0035】
当業者は、予後の指標を不利な結果の疾病素因と関係づけることは統計分析であると理解するであろう。例えば、統計的優位さの濃度によって決定されるような、80pg/mLより大きなマーカー濃度は、80pg/mLより少ないかまたは同等の濃度の患者より不利な結果を患いやすい。さらに、ベースライン濃度からのマーカー濃度の変化は、患者の予後を反映するものであり、マーカー濃度の変化の度合いは不利な事象の重篤度と関連するであろう。統計的優位さは、2またはそれ以上の集団を比較することによりしばしば決定され、信頼区間および/またはp値が決定される。例えば、DowdyおよびWearden, Statistics for Research, John Wiley & Sons, New York, 1983を参照のこと。この発明の好ましい信頼区間は、90%、95%、97.5%、98%、99%、99.5%、99.9%および99.99%であり、一方好ましいp値は、0.1、0.05、0.025、0.02、0.01、0.005、0.001および0.0001である。予後の指標を不利な結果の疾病素因と関係づける典型的な統計検定は、以下に記載される。
【0036】
他の態様では、予後または診断指標の濃度の変化の閾値度合いが確立され、患者サンプル中の指標の濃度の変化の度合いが、濃度の変化の閾値度合いと単純に比較されうる。この発明のマーカーの濃度の好ましい閾値変化は、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約50%、約75%、約100%および約150%である。この文脈において「約」の用語は、+/−10%を指す。また他の態様では、「ノモグラム」が確立され、これにより、予後または診断指標の濃度を所定の結果に関係した疾病素因と直接関連づけることができる。集団の平均ではなく個々のサンプル測定結果が参照されるので、2つの数値をこの測定の不確定性がマーカー濃度の不確定性と同様であるとの理解と関連させるように、当業者はこのようなノモグラムの使用に熟知している。
【0037】
また他の知見として、この発明は、ACSと診断された患者に用いる処置計画を決定する方法に関連する。この方法は、好ましくは以下に記載されるように1またはそれ以上の診断若しくは予後のマーカーの濃度を決定すること、および患者の診断を決定するためにそのマーカーを用いることを含む。診断に関係する不利な結果の増大する疾病素因を減少させることにより患者の予後を改善する1またはそれ以上の処置計画は、患者を処置するために用いることができる。このような方法は、上述のように、患者の予後を改善できる物質の薬理学的な化合物のスクリーニングにも用いられうる。
【0038】
さらなる知見として、この発明は、患者の診断または予後を決定するためのキットに関連する。これらのキットは、好ましくは患者サンプル中の1またはそれ以上のマーカー濃度を測定する装置および試薬、また分析を行うための使用説明書を含む。任意に、このキットは、マーカー濃度を予後に変換する1またはそれ以上の方法を含みうる。このようなキットは、好ましくは1またはそれ以上のこのような決定を行うのに充分な試薬を含む。
【0039】
(発明の詳細な記載)
本発明に従って、患者のACSの診断、予後、または識別に関係するマーカーの同定と使用のための方法および組成物が提供される。このようなマーカーは、患者の診断および処置および/または処置計画の経過のモニター;このような状態の処置または予防に有益なものを提供する化合物および医薬組成物のスクリーニングに使用できるものである。
【0040】
心筋虚血は、心筋の酸素の供給と要求との平行失調によって起こるものである。特に、不充分な血液供給により要求が供給を超える。心臓は、全体重に対して少ない割合を占めるが、身体の酸素消費の7%の原因となる。心臓組織の代謝は、非常に酸素を消費し、不充分な血液供給に対して補償する蓄えをほとんど有していない。血液供給が心筋の要求に不充分なレベルに減少した場合、その組織は急激に低酸素となり、毒性の細胞代謝産物が取り除かれなくなる。心筋細胞は局所の微小血管内に残存している酸素供給物を急速に使用し、酸素を消費する代謝が持続する時間の長さは動脈閉塞の度合いに間接的に比例する。酸素供給物を使い果たすと、電子受容体としての酸素がもはや利用不可能なので、酸化的リン酸化が持続できなくなり、ピルビン酸はアセチルCoAに変換できず、クエン酸回路に入れなくなる。心筋の代謝は、蓄えられたグリコーゲンとグルコースを用いた無酸素代謝に転換し、ピルビン酸が乳酸に発酵される。乳酸の蓄積は、ACSの個体の胸部痛の主要な原因である。虚血が持続すると、乳酸および他の酸性中間物質が蓄積するので心臓組織はより酸性となり、ATP濃度が低下し、利用可能なエネルギー源が涸渇する。心臓組織は、虚血事象の15〜20分後に再灌流されれば回復できる。細胞の蓄えられたグリコーゲンが涸渇すると、細胞は徐々にミトコンドリアの膨張および細胞膜の完全性の損失等の壊死の特徴を示す。再灌流により、おそらくイオン平衡を維持する細胞の不能の結果として、これらの損傷した細胞は死ぬ。細胞膜の完全性の損失は、細胞質内容物を循環系に放出する原因となる。
【0041】
安定狭心症、不安定狭心症、および心筋梗塞はすべて、心筋虚血に関係する狭窄した胸部痛という1つの共通する特徴を共有する。狭心症は、診断のECGの変化を伴う若しくは伴わない臨床的症状の医師による解釈を通じて安定若しくは不安定に分類される。「安定」または「不安定」という狭心症の分類は、プラークそのものの安定性を指すものではなく、むしろ胸部痛を顕在化させるのに必要な激しい活動の度合いを指す。最も注目に値するものとして、明白な心筋梗塞の場合の他は、安定または不安定(または軽症の心筋梗塞でさえ)としての胸部痛の分類は、完全に主観的なものである。診断およびこの場合の区別は、動脈の閉塞度合いを定量しうる血管造影によるのではなく、むしろ臨床的症状の医師の解釈によりなされるのである。
【0042】
安定狭心症は、激しい活動やストレスで起こる狭窄した胸部痛により特徴づけられ、休息や舌下のニトログリセリンにより軽減される。安定狭心症の患者の冠状動脈血管造影により、少なくとも1つの冠状動脈において50〜70%の遮断が通常見られる。安定狭心症は、通常臨床的症状とECGの変化の評価により診断される。安定狭心症の患者は、一時的なST部分の異常を有するが、安定狭心症に関係したこれらの変化の感度と特異性は低い。
【0043】
不安定狭心症は、舌下のニトログリセリンにより軽減される休息時の狭窄した胸部痛により特徴づけられる。狭心症の胸部痛は、通常舌下のニトログリセリンにより軽減され、痛みは通常30分以内に治まる。不安定狭心症には:クラスI、新規の発症で、重篤で、または促進された狭心症として特徴づけられる;クラスII、重篤度が増し、持続し、またはニトログリセリンを必要とすることを特徴とする休息時の亜急性の狭心症;そしてクラスIII、休息時の急性狭心症として特徴づけられる;の3つの分類がある。不安定狭心症は、安定狭心症とAMIとの間の臨床的状態を示し、主として、アテローム硬化症、冠状動脈痙攣、または続いて起こる血栓閉塞を伴う非閉塞性プラークへの出血の重篤度および範囲の進行によるものと考えられている。不安定狭心症の患者の冠状動脈血管造影により、少なくとも1つの冠状動脈において90%またはそれ以上の遮断が通常見られ、ベースラインの心筋の酸素要求を満たす酸素供給でさえ不能となる結果もたらす。安定なアテローム硬化症プラークの遅い成長または後に続く血栓の形成を伴う不安定なアテローム硬化症プラークの破裂は、不安定狭心症の原因となる。これらの原因の両方が、冠状動脈の致命的な狭小をもたらす。不安定狭心症は、通常アテローム硬化症プラークの破裂、血小板の活性化、および血栓の形成に関係する。不安定狭心症は、通常臨床的症状、ECG変化、および(もし存在すれば)心臓マーカーの変化によって診断される。不安定狭心症の患者の処置には、硝酸塩、アスピリン、GPIIb/IIIa阻害剤、ヘパリン、およびベータ遮断薬が含まれる。血栓崩壊治療は、不安定狭心症患者に有益であるとは示されておらず、カルシウムチャネル遮断薬も効果がないであろう。患者は、血管形成術およびステントも受けうる。最後に、不安定狭心症患者は、AMIに発展する危険性がある。
【0044】
心筋梗塞は、診断のECGのQ波を伴いうる30分以上継続する狭窄した胸部痛により特徴づけられる。AMIのほとんどの患者は、冠状動脈疾患を有しており、AMIの25%もの場合で「無症候性」(silent)または無症候の梗塞であり、糖尿病の個体は無症候性梗塞の疑いがよりつよい傾向にある。集団調査により、20〜60%の非致命的な心筋梗塞が患者に認識されない無症候性梗塞であることが示されている。AMIの非定型の臨床的状態には、鬱血性心不全、重篤または持続した発作を伴わない狭心症、非定型の局所の痛み、脳卒中に似た中枢神経系的発現、不安および神経質、突然性躁病または精神病、失神、虚弱、急性消化障害、および末梢塞栓形成が含まれる。AMIは、通常臨床的症状、ECGの変化、および心臓性タンパク質で最も顕著には心臓トロポニン、クレアチンキナーゼ−MBおよびミオグロビンの上昇、により診断される。AMIの処置は、過去10年の間改善し、患者の結果を改善し、AMIに関係した死亡率を30%減少させることとなった。AMI患者の処置は、梗塞の大きさを制限し、および、閉塞物質を除去し、心臓組織への酸素供給を増加させ、または心臓組織の酸素要求を減少させることにより結果を改善する、薬を投与することにより成し遂げられる。処置には、酸素の補給、アスピリン、GPIIb/IIIa阻害剤、ヘパリン、血栓崩壊剤(tPA)、硝酸塩(ニトログリセリン)、マグネシウム、カルシウムチャネルアンタゴニスト、β−アドレナリンレセプター遮断薬、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、血管形成(PTCA)、および管内冠状動脈ステントが含まれる。
【0045】
胸部痛発症から30分の時点は、虚血による可逆性心筋損傷の時期を示すものと考えられる。安定狭心症および不安定狭心症は、血管造影により動脈の閉塞がそれぞれ50〜70%および90%以上のものとして特徴づけられ、心筋梗塞は、完全若しくはほぼ完全な閉塞により特徴づけられる。一般的な誤解は、安定狭心症および不安定狭心症はプラークの安定性を指すもの、または、心筋梗塞と一緒に、別個の疾患であるというものである。安定狭心症はしばしば不安定狭心症に進行し、不安定狭心症はしばしば心筋梗塞に進行するので、安定狭心症、不安定狭心症、心筋梗塞はすべて、重篤度の変化した冠状動脈疾患として特徴づけることができる。近年、次の冠状動脈疾患の進行の生理学的モデルが提唱された:炎症→プラーク破裂→血小板活性化→早期血栓症→早期壊死。このモデルは、安定狭心症の間に炎症が起こり、プラーク破裂、血小板活性化、および早期血栓症のマーカーが不安定狭心症の重篤度の進行を同定しモニターするのに用いることができるとの理論に合致させて設計されたものである。狭心症の発作の間に起こる心筋損傷は、定義上可逆性であるが、心筋梗塞の間に起こる損傷は、不可逆性である。従って、安定狭心症、不安定狭心症、およびAMIの区別のためのこのモデルには、2つの提唱された区切りがある。第1のものは、安定狭心症ではプラーク破裂が起こらないとする理論のもとで、炎症とプラーク破裂との間に起こる。第2のものは、不安定狭心症の間に受けた心筋損傷は可逆性のものであるとの理論のもとで、早期血栓症と早期壊死との間で起こる。早期心筋壊死を除いては、これらの事象が冠状動脈疾患のすべての形態と関係でき、この診断経路に沿った進行が必ずしも疾患の進行を示すものではないとうことを理解するのは重要である。軽症の不安定狭心症から重篤な不安定狭心症および心筋梗塞への冠状動脈疾患の進行は、プラークの不安定性と動脈閉塞の度合いに関連する。安定なプラークが増大しより閉塞的になると、この進行はゆっくりと起こり、血小板活性化および閉塞性血栓の形成により不安定なプラークが破裂すると、これは急激に起こりうる。心筋梗塞は、最も頻繁に不安定狭心症と同一の病態生理を共有するので、これら2つの事象の唯一の区別が心筋損傷の可逆性であるとすることは可能である。定義上、不安定狭心症は可逆性損傷を起こし、一方心筋梗塞は不可逆的損傷を起こす。不安定狭心症の患者には心筋壊死の存在が示されると公表した報告があった。定義上、これらの患者は、実際に早期のAMIを経験するかもしれない。にもかかわらず、これらの患者が早期AMIの代わりに不安定狭心症であると診断されたとしても、高い度合いの重篤度は、早期の集中的な処理により彼らが大いに利益を受けうることを示す。心筋虚血は、安定狭心症、不安定狭心症、および心筋梗塞の病因の主要な決定因子であり、これらは個々の疾患であると考えるべきではない。むしろ、これらは、虚血による心筋損傷の増大する重篤度を反映するものである。
【0046】
ACSの凝固カスケード
血管の損傷に続く血液の損失を止めまたは防ぐために用いられる、基本的な2つのメカニズムがある。第1のメカニズムは、血管傷害部位への付着を容易にする血小板の活性化を伴う。活性化した血小板は、次いで血液の損失を減少させまたは一時的に止める血小板栓を形成するように凝集する。活性化した血小板から分泌される多数の因子によって、血小板の凝集の進行、栓の形成および組織の修復がすべて促進され、増強される。血小板の凝集および栓の形成は、活性化した血小板同士の間のフィブリノーゲン架橋の形成により媒介される。第2のメカニズムにより同時に起こる活性化である凝固カスケードは、フィブリノーゲンからのフィブリンの発生および血小板栓を強固にする不溶性のフィブリン血塊の形成をもたらす。
【0047】
凝固カスケードは、不活性またはチモーゲンの形態で通常存在する多数のセリンプロテイナーゼを伴う酵素による経路である。血管構造または血管の傷害の異質な表面の存在は、それぞれ、内因性および外因性の凝固経路の活性化をもたらす。最終の共通の経路が続き、これは、セリンプロテイナーゼトロンビンによるフィブリン、および最終的には架橋したフィブリン血塊の発生をもたらすものである。凝固カスケードにおいて、1つの活性化酵素が最初に形成され、これは他のものを活性化する他の酵素を活性化できるものであり、この工程は、調整されずにおかれれば、すべての凝固酵素が活性化されるまで続くこととなる。都合のよいことに、フィブリン溶解並びに凝固経路および血塊形成の活性を調整する内因性のプロテイナーゼ阻害因子の作用等の、適切なメカニズムがある。
【0048】
フィブリン溶解は、タンパク質分解による血塊溶解工程である。凝固に類似した方法により、フィブリン溶解は、チモーゲンから活性化したセリンプロテイナーゼにより媒介される。セリンプロテイナーゼプラスミンは、フィブリンを血塊から遊離された小さい分解物に分解する原因となり、血塊の溶解をもたらす。フィブリン溶解は、血塊形成を調整するために凝固のすぐ後に活性化される。内因性セリンプロテイナーゼ阻害因子も、フィブリン溶解の調整剤として機能する。
【0049】
血小板は、2〜4μmの平均直径を有する円形または楕円形の円盤であり、通常血液中に200,000〜300,000/μlの濃度で見出される。これらは、血管の完全性を維持し、血管の傷害部位で血小板栓を形成することにより出血を最初に止め、血小板栓を安定化するフィブリン形成の工程に寄与することにより、止血を維持する基本的な役割を果たす。血管傷害が起こると、血小板は傷害部位および互いに付着し、付着した血小板および傷害が起こった内皮細胞から放出される種々の物質により凝集するように刺激される。これは、放出反応に次ぐものであり、この放出反応では血小板から細胞内顆粒の内容物を分泌し、血小板栓を形成する。凝固カスケードにおいてトロンビンによるフィブリンの形成は、血塊反応に続く栓の硬化およびフィブリンの架橋による栓の安定化を可能にさせる。活性トロンビンは、同時に起こる凝固カスケードで発生し、血小板の活性化および凝集を誘導する能力も有する。
【0050】
凝固カスケードは、外因性または内因性のいずれかの経路を通じて活性化されうる。これらの酵素の経路は、1つの最終の共通経路を共有する。凝固活性化の結果は、架橋したフィブリン血塊の形成である。フィブリン溶解は、凝固活性化のすぐ後に活性化されるタンパク質分解による血塊の溶解工程であり、おそらく血塊形成の速度と量を制御する作用である。ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(uPA)および組織型プラスミノーゲン活性化因子(tPA)は、タンパク質分解によりプラスミノーゲンを切断し、活性セリンプロテイナーゼプラスミンを発生させる。プラスミンは、タンパク質分解により架橋フィブリンを消化し、血塊溶解およびフィブリン分解物の産生と放出をもたらす。
【0051】
凝固カスケードの共通経路の第1の工程は、活性トロンビンを生成する第Xa因子/第Va因子プロトロンビナーゼ複合体によるプロトロンビンのタンパク質分解による切断を伴う。トロンビンは、フィブリンを形成するようにフィブリノーゲンをタンパク質分解により切断するセリンプロテイナーゼであり、これは血塊形成の間の架橋ネットワーク中に最終的に蓄積される。
【0052】
マーカーの具体例
(i)心筋傷害の特異的マーカー
アネキシンVは、リポコルチンV、エンドネキシンII、カルホビンジンI、カルシウム結合タンパク質33、胎盤抗凝固タンパク質I、トロンボプラスミン阻害因子、血管抗凝固因子−α、およびアンコリンCIIとも呼ばれ、間接阻害因子であり組織因子の調整因子である33kDaのカルシウム結合タンパク質である。アネキシンVは、すべのアネキシンファミリー構成員に共通するコンセンサス配列を有する4つの相同繰り返しから構成され、カルシウムおよびホスファチジルセリンに結合し、心臓、骨格筋、肝臓、および内皮細胞等の広く種々の組織で発現する(Giambanco, I. et al., J. Histochem. Cytochem. 39:P1189-1198, 1991; Doubell, A.F. et al., Cardiovasc. Res. 27:1359-1367, 1993)。アネキシンVの正常血漿濃度は、<2ng/mlである(Kaneko, N. et al., Clin. Chim. Acta 251:65-80, 1996)。アネキシンVの血漿濃度は、AMIの個体では上昇する(Kaneko, N. et al., Clin. Chim. Acta 251:65-80, 1996)。広い組織への分布により、アネキシンVの血漿濃度の上昇は、非心臓組織の傷害を含むいずれの状態とも関係するであろう。しかし、血漿アネキシンV濃度が以前の心筋梗塞、胸部痛症候群、弁の心臓疾患、肺疾患、および腎臓疾患の患者では、有意には上昇しないことが1つの研究により見出された(Kaneko, N. et al., Clin. Chim. Acta 251:65-80, 1996)。これらの先行する結果は、ACSマーカーとしてのアネキシンVの臨床的利用が決定される前に、確認を必要とする。アネキシンVは、AMI発症のすぐ後に血流に放出される。AMI患者の血漿中のアネキシンV濃度は、最初の(入院時の)値から減少し、これが血流から急速に除去されることを示す(Kaneko, N. et al.. Clin. Chim. Acta 251:65-80, 1996)。
【0053】
B型ナトリウム排泄増加性ペプチド(BNP)は、脳型ナトリウム排泄増加性ペプチドとも呼ばれ、32のアミノ酸であり、血圧および液体平衡を調整するためのナトリウム排泄増加系に関係する4kDaのペプチドである(Bonow, R.O., Circulation 93:1946-1950, 1996)。BNPの前駆体は、「プレプロBNP」と呼ばれる108のアミノ酸分子として合成され、これは、「NTプロBNP」と呼ばれる76のアミノ酸N末端ペプチド(アミノ酸1−76)と、BNPまたはBNP32と呼ばれる32のアミノ酸の成熟ホルモン(アミノ酸77−108)とに、タンパク質分解によりプロセシングされる。これは、これらの種−NTプロBNP、BNP32、およびプレプロBNP−の各々がヒト血漿中で循環できることを示している(Tateyama et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 185: 760-7 (1992); Hunt et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 214: 1175-83 (1995))。プレプロBNPおよびNTプロBNPの2つの形態、並びにBNP、プレプロBNP、およびNTプロBNP由来のペプチド、並びにBNP、NTプロBNPおよびプレプロBNPのタンパク質分解の結果として血液中に存在するペプチドは、BNPに関連しまたは関係したマーカーとして集合的に記載される。BNPおよびBNPに関連したペプチドのタンパク質分解による分解は、文献にも記載されており、これらのタンパク質分解によるフラグメントも、「BNP関連ペプチド」の用語に含まれる。BNPおよびBNP関連ペプチドは、心室の分泌顆粒中に主に見出され、心室体積の拡張および圧力の過負荷の双方に応じて心臓から放出される(Wilkins, M. et al., Lancet 349:1307-1310, 1997)。BNPの上昇は、増大した心房および肺の楔入圧、心室の収縮期および拡張期の低下した機能、左心室肥大、および心筋梗塞に関係している(Sagnella, G.A., Clinical Science 95:519-529, 1998)。さらに、鬱血性心不全および腎不全に関係した上昇したBNP濃度についての多数の報告がある。BNPおよびBNP関連ペプチドはACSに特異的なものではないが、これらが虚血による細胞損傷のみではなく、ACSに関係したナトリウム排泄増加系の混乱をも示すのであり得るので、これらはACSの高感度のマーカーとなりうる。ここで用いられる「BNP」の用語は、成熟32アミノ酸のBNP分子そのものを指す。当業者が認識するように、しかし、BNPに関連した他のマーカーも、ACSの患者の診断または予後の指標として役に立ちうる。例えば、BNPは、76アミノ酸の「NTプロBNP」と32アミノ酸のBNP分子とにタンパク質分解によりプロセシングされる108アミノ酸のプレプロBNP分子として合成される。BNPとのその関係によって、NTプロBNP分子の濃度も、患者の診断または予後の情報を提供しうる。「BNPに関連するマーカーまたはBNP関連ペプチド」の語は、32アミノ酸のBNP分子そのもの以外の、プレプロBNP分子を起源とするいずれのポリペプチドをも指す。従って、BNPに関連しまたは関係したマーカーには、NTプロBNP分子、プロドメイン、全32アミノ酸配列よりも小さいBNPのフラグメント、BNP以外のプレプロBNPのフラグメント、およびプロドメインのフラグメントが含まれる。当業者は、循環系がBNPおよびBNP関連分子をタンパク質分解できるプロテアーゼを含んでおり、これらのタンパク質分解された分子(ペプチド)も「BNP関連」とみなされ、そしてこの発明のさらなる主題であることをも認識するであろう。
【0054】
エノラーゼは、α、β、およびγサブユニットから産生される78kDaのホモまたはヘテロダイマーの細胞質タンパク質である。エノラーゼは、解糖経路における2−ホスホグリセレートとホスホエノールピルベートとの変換を触媒する。エノラーゼは、αα、αβ、ββ、αγ、およびγγアイソフォームとして存在する。αサブユニットはほとんどの組織で見出され、βサブユニットは心臓および骨格筋で見出され、γサブユニットはニューロンおよび神経内分泌組織で主として見出される。β−エノラーゼは、αβおよびββエノラーゼから構成され、筋肉に特異的なものである。β−エノラーゼの正常血漿濃度は、<10ng/ml(120pM)である。β−エノラーゼは、AMIの個体の血清中で上昇するが、狭心症の個体では上昇しない(Nomura, M. et al., Br. Heart J. 58:29-33, 1987; Herraez-Dominguez, M.V. et al., Clin. Chim. Acta 64:307-315, 1975)。不安定狭心症および安定狭心症に関係した血漿β−エノラーゼ濃度の起こりうる変化についてのさらなる研究が、必要である。β−エノラーゼの血漿濃度は、心臓手術、筋ジストロフィー、および骨格筋傷害の間で上昇する(Usui, A. et al., Cardiovasc. Res. 23:737-740, 1989; Kato, K. et al., Clin. Chim. Acta 131:75-85, 1983; Matsuda, H. et al., Forensic Sci. Int. 99:197-208, 1999)。β−エノラーゼは、心臓または骨格筋傷害に続いて直ちに血流に放出される。血漿β−エノラーゼ濃度は、心臓手術の手術時段階で150ng/ml以上に上昇し、1週間上昇したまま維持した。血清β−エノラーゼ濃度は胸部痛およびAMIの発症の約12〜14時間後に最大となり、発症から1週間経過後にベースラインに近づき、最大濃度は1μg/mlに近づいた(Kato, K. et al., Clin. Chim. Acta 131:75-85, 1983; Nomura, M. et al., Br. Heart J. 58:29-33, 1987)。
【0055】
トロポニンI(TnI)は、25kDaのトロポニン複合体の阻害要素であり、すべての横紋筋組織で見出される。TnIは、Ca2+の不存在下でアクチンに結合し、アクトミオシンのATPアーゼ活性を阻害する。心臓組織で見出されるTnIアイソフォーム(cTnI)は、骨格筋TnIから40%分岐したものであり、双方のアイソフォームは免疫学的に識別可能である。cTnIの正常血漿濃度は、<0.1ng/ml(4pM)である。血漿cTnI濃度は、AMIの患者で上昇する。不安定狭心症の患者の血漿cTnI濃度の変化についての研究では、相反した結果が得られたが、cTnIは、安定狭心症の個体の血漿では上昇しない(Benamer, H. et al., Am. J. Cardiol. 82:845-850, 1998; Bertinchant, J.P. et al., Clin. Biochem. 29:587-594, 1996; Tanasijevic, M.J. et al., Clin. Cardiol. 22:13-16, 1999; Musso, P. et al., J. Ital. Cardiol. 26:1013-1023, 1996; Holvoet, P. et al., JAMA 281:1718-1721, 1999; Holvoet, P. et al., Circulation 98:1487-1494, 1998)。心筋虚血の程度が不安定狭心症の重篤度と直接比例するので、不安定狭心症に関係した相反した結果は、cTnIが不安定狭心症の重篤度を決定するために役立ちうることを示している。血漿cTnI濃度は、心臓外傷、鬱血性心不全、および心臓手術、非虚血性拡張型心筋症、筋障害、CNS障害、HIV感染、慢性腎不全、敗血症、肺疾患、および内分泌障害と連動して上昇しうる(Khan, I.A. et al., Am. J. Emerg. Med. 17:225-229, 1999)。この明らかな非特異性は、イムノアッセイに用いられる抗体の品質と特異性に関連するであろう。cTnIは、心臓細胞死に続いて血流に放出される。AMIの患者のcTnIの血漿濃度は、発症の4〜6時間後に有意に上昇し、12〜16時間の間に最大となり、1週間上昇したまま持続しうる。不安定狭心症に関係するcTnIの放出の動態も同様であろう。遊離心臓トロポニンI並びに心臓トロポニンIとトロポニンCおよび/またはTとの複合体等の、心臓トロポニンの特異的形態の測定は、ACSの種々の段階を同定する能力を使用者に提供しうる。
【0056】
遊離および複合体化した心臓トロポニンTは、上述の心臓トロポニンIと類似の方法により用いることができるであろう。心臓トロポニンT複合体は、単独でも、あるいは、全心臓トロポニンIとの一部として発現している時でも、進行している心筋損傷の存在と関連した情報を提供し、有用であろう。進行中の虚血は心臓トロポニンTIC複合体の放出をもたらし、心臓トロポニンTIC:全心臓トロポニンIの高い比率が、解決していない虚血による継続性の損傷の表示となり得ることを示すであろう。
【0057】
クレアチンキナーゼ(CK)は、ATPおよびクレアチンからADPおよびホスホクレアチンの可逆的な形成を触媒する85kDaの細胞質ゾル酵素である。CKは、MおよびB鎖から構成されるホモまたはヘテロダイマーである。CK−MBは、心臓組織に最も特異的であるが、骨格筋および他の組織にも存在するアイソフォームである。CK−MBの正常血漿濃度は、<5g/mlである。血漿CK−MB濃度は、AMIの患者では有意に上昇する。血漿CK−MBは、安定狭心症の患者では上昇せず、不安定狭心症の患者における血漿CK−MB濃度の上昇に関する研究では、相反した結果が得られた(Thygesen, K. et al., Eur. J. Clin. Invest. 16:1-4, 1986; Koukkunen, H. et al., Ann. Med. 30:488-496, 1998; Bertinchant, J.P. et al., Clin. Biochem. 29:587-594, 1996; Benamer, H. et al., Am. J. Cardiol. 82:845-850, 1998; Norregaard-Hansen, K. et al., Eur. Heart J. 13:188-193, 1992)。心筋虚血の範囲が直接不安定狭心症の重篤度に比例するので、不安定狭心症に関連した相反した結果は、CK−MBが不安定狭心症の重篤度を決定するのに役に立ちうることを示している。血漿CK−MB濃度の上昇は、骨格筋の傷害および腎疾患に関係している。CK−MBは、心臓細胞死に続いて血流に放出される。AMIの患者のCK−MBの血漿濃度は、発症の4〜6時間後に有意に上昇し、12〜14時間の間に最大となり、3日後にベースラインに戻る。不安定狭心症に関係するCK−MB放出の動態も、同様であろう。
【0058】
グリコーゲンホスホリラーゼ(GP)は、糖原分解の間無機リン酸の存在下でグリコーゲンの非還元末端からグルコースの除去(グルコース−1−リン酸として遊離される)を触媒する188kDaの細胞間アロステリック酵素である。GPはホモダイマーとして存在し、これは4量体の酵素的に活性なホスホリラーゼAを形成するように、もう一つのホモダイマーと結びつく。免疫学的に識別できる、GPの3つのアイソフォームがある。BBアイソフォームは脳および心臓組織で見出され、MMアイソフォームは骨格筋および心臓組織で見出され、LLアイソフォームは肝臓で優位に見出される(Mair, J. et al., Br. Heart J. 72:125-127, 1994)。GP−BBは、通常筋小胞体糖原分解複合体に関係し、この関係は、心筋の代謝状態に依存する(Mair, J., Clin. Chim. Acta 272:79-86, 1998)。低酸素症の発症時にはグリコーゲンが切断され、GP−BBが結合形態から遊離細胞質形態に転換される(Krause, E.G. et al.. Mol. Cell Biochem. 160-161:289-295, 1996)。正常血漿GP−BB濃度は、<7ng/ml(36pM)である。血漿GP−BB濃度は、AMIおよび一時的ST−T上昇の不安定狭心症の患者で有意に上昇するが、安定狭心症では上昇しない(Mair, J. et al., Br. Heart J. 72:125-127, 1994; Mair, J., Clin. Chim. Acta 272:79-86, 1998; Rabitzsch, G. et al., Clin. Chem. 41:966-978, 1995; Rabitzsch, G. et al., Lancet 341:1032-1033, 1993)。さらに、GP−BBは、冠状動脈バイパス手術を受けている患者の手術中のAMIおよび心筋虚血の検出にも用いることができる(Rabitzsch, G. et al., Biomed. Biochim. Acta 46:S584-S588, 1987; Mair, P. et al., Eur. J. Clin. Chem. Clin. Biochem. 32:543-547, 1994)。GP−BBは、CK−MB、心臓トロポニンT、およびミオグロビンに比べ、発症後早期の不安定狭心症およびAMIのより高感度のマーカーであることが示された(Rabitzsch, G. et al., Clin. Chem. 41:966-978, 1995)。これは脳でも見出されるので、血漿GP−BB濃度は、虚血性脳傷害の間でも上昇しうる。GP−BBは、通常は細胞壊死の結果である細胞膜の透過性の増加も伴う虚血状態下で血流に放出される。GP−BBは、不安定狭心症および一時的ST−T ECG変化を有する個体の胸部痛の4時間以内に有意に上昇し、ミオグロビン、CK−MB、および心臓トロポニンTが正常濃度にとどまる一方で、有意に上昇する(Mair, J. et al., Br. Heart J. 72:125-127, 1994)。さらに、GP−BBは、AMIの患者の胸部痛の発症後1〜2時間で有意に上昇しうる(Rabitzsch, G. et al., Lancet 341:1032-1033, 1993)。不安定狭心症およびAMIの患者の血漿GP−BB濃度は、50ng/ml(250pM)を超えうる(Mair, J. et al., Br. Heart J. 72:125-127, 1994; Mair, J., Clin. Chim. Acta 272:79-86, 1998; Krause, E.G. et al., Mol. Cell Biochem. 160-161:289-295, 1996; Rabitzsch, G. et al., Clin. Chem. 41:966-978, 1995; Rabitzsch, G. et al., Lancet 341:1032-1033, 1993)。GP−BBは、CK−BBの特異性と同様に、心筋虚血の非常に高感度のマーカーと思われる。GP−BB血漿濃度は、AMI発症後の最初の4時間以内に上昇し、これは心筋損傷の早期のマーカーとして非常に役に立ちうることを示している。さらに、GP−BBは心臓虚血の間に非結合形態に放出され、外傷性傷害では通常放出されないため、これは心臓組織損傷だけではなく虚血のより特異的マーカーである。これが、心臓手術中の心筋虚血の検出において、GP−BBの有用性として示される最良のものである。GP−BBは、AMIおよび重篤な不安定狭心症の間の早期の心筋虚血の非常に有用なマーカーであろう。
【0059】
心臓型脂肪酸結合タンパク質(H−FABP)は、脂質代謝を伴う細胞質ゾルの15kDaの脂質結合タンパク質である。心臓型FABP抗原は、心臓組織だけでなく、腎臓、骨格筋、大動脈、副腎、胎盤、および脳でも見出されている(Veerkamp, J.H. and Maatman, R.G., Prog. Lipid Res. 34:17-52, 1995; Yoshimoto, K. et al., Heart Vessels 10:304-309, 1995)。さらに、心臓型FABP mRNAは、精巣、卵巣、肺、乳腺、および胃に見出される(Veerkamp, J.H. and Maatman, R.G., Prog. Lipid Res. 34:17-52, 1995)。FABPの正常血漿濃度は、<6ng/ml(400pM)である。血漿H−FABP濃度は、AMIおよび不安定狭心症の患者で上昇する(Ishii, J. et al., Clin. Chem. 43:1372-1378, 1997; Tsuji, R. et al., Int. J. Cardiol. 41:209-217, 1993)。さらに、H−FABPは、AMIの患者の梗塞の大きさを見積もるのに有用であろう(Glatz, J.F. et al., Br. Heart J. 71:135-140, 1994)。H−FABP源としての心筋組織は、ミオグロビン/FABP(グラム/グラム)比を決定することにより確かめることができる。約5の比は、FABPが心筋源のものであり、より高い比は骨格筋源であることを示す(Van Nieuwenhoven, F.A. et al., Circulation 92:2848-2854, 1995)。骨格筋、腎臓および脳のH−FABPの存在のために、血漿H−FABP濃度の上昇は、骨格筋傷害、腎臓疾患、または脳卒中と関係しうる。H−FABPは、心臓組織壊死に続いて血流に放出される。血漿H−FABP濃度は、CK−MBおよびミオグロビンよりも早く、胸部痛の発症後1〜2時間で有意に上昇する(Tsuji, R. et al., Int. J. Cardiol. 41:209-217, 1993; Van Nieuwenhoven, F.A. et al., Circulation 92:2848-2854, 1995; Tanaka, T. et al., Clin. Biochem. 24:195-201, 1991)。さらに、H−FABPは急速に血流から除去され、血漿濃度はAMI発症後24時間後にベースラインに戻る(Glatz, J.F. et al., Br. Heart J. 71:135-140, 1994; Tanaka, T. et al., Clin. Biochem. 24:195-201, 1991)。
【0060】
ホスホグリセリン酸ムターゼ(PGAM)は、マグネシウムの存在下で3−ホスホグリセリン酸の2−ホスホグリセリン酸への転換を触媒する、29kDaのMまたはBサブユニットから構成される57kDaのホモまたはヘテロダイマーの細胞間糖分解酵素である。心臓組織はアイソザイムMM、MB、およびBBを含有し、骨格筋は主としてPGAM−MMを、他のほとんどの組織はPGAM−BBを含有する(Durany, N. and Carreras, J., Comp. Biochem. Physiol. B. Biochem. Mol. Biol. 114:217-223, 1996)。従って、PGAM−MBは、心臓組織に最も特異的なアイソザイムである。PGAMは、AMIの患者の血漿中で上昇するが、AMI、不安定狭心症および安定狭心症に関係する血漿PGAM濃度の変化を決定するためにはさらなる研究がなされる必要がある(Mair, J., Crit. Rev. Clin. Lab. Sci. 34:1-66, 1997)。血漿PGAM−MB濃度の上昇は、関連のない心筋のまたは恐らく骨格組織の損傷と関係するかもしれない。PGAM−MBは、細胞壊死に続いて循環系に最も放出されやすい。PGAMは、ラットの血流中では2時間以下の半減期である(Grisolia, S. et al., Physiol. Chem. Phys. 8:37-52, 1976)。
【0061】
S−100は、αおよびβサブユニットから産生される21kDaのホモまたはヘテロダイマーの細胞質ゾルのCa2+結合タンパク質である。これは、Ca2+依存シグナル導入経路に沿った細胞工程の活性化に関与すると考えられる(Bonfrer, J.M. et al., Br. J. Cancer 77:2210-2214, 1998)。S−100ao(ααアイソフォーム)は横紋筋、心臓および腎臓で見出され、S−100a(αβアイソフォーム)はグリア細胞で見出されるがシュヴァン細胞では見出されず、そしてS−100b(ββアイソフォーム)はグリア細胞およびシュヴァン細胞で高濃度で見出され、ここではこれが主要な細胞質ゾルの構成要素である(Kato, K. and Kimura, S., Biochim. Biophys. Acta 842:146-150, 1985; Hasegawa, S. et al., Eur. Urol. 24:393-396, 1993)。S−100aoの正常血清濃度は、<0.25ng/ml(12pM)であり、その濃度は年齢および性別により影響され、男性および年をとった個体では高い濃度となる(Kikuchi, T. et al., Hinyokika Kiyo 36:1117-1123, 1990; Morita, T. et al., Nippon Hinyokika Gakkai Zasshi 81:1162-1167, 1990; Usui, A. et al., Clin. Chem. 36:639-641, 1990)。S−100aoの血清濃度は、AMIの患者で上昇するが、疑似AMIの狭心症患者では上昇しない(Usui, A. et al., Clin. Chem. 36:639-641, 1990)。不安定および安定狭心症と関係するS−100aoの血漿濃度の変化を決定するためには、さらなる研究が必要である。血清S−100aoは、腎細胞癌、膀胱癌、腎不全、および前立腺癌、並びに切開心臓手術を受けている患者の血清中で上昇する(Hasegawa, S. et al., Eur. Urol. 24:393-396, 1993; Kikuchi, T. et al., Hinyokika Kiyo 36:1117-1123, 1990; Morita, T. et al., Nippon Hinyokika Gakkai Zasshi 81:1162-1167, 1990; Usui, A. et al., Clin. Chem. 35:1942-1944, 1989)。S−100aoは、細胞死に続いて細胞外空間に放出されるであろう細胞質ゾルタンパク質である。S−100aoの血清濃度は、AMIの患者の入院時に有意に上昇し、入院後8時間で最大に増加し、1週間後に減少してベースラインに戻る(Usui, A. et al., Clin. Chem. 36:639-641, 1990)。さらに、S−100aoは、CK−MBと比べ、AMI発症後の早期に有意に上昇すると思われる(Usui, A. et al., Clin. Chem. 36:639-641, 1990)。最大血清S−100ao濃度は、100ng/mlを超えうる。再灌流およびその尿素濃度の上昇に続いて心臓手術患者の血清S−100ao濃度の急速な減少により示されるように、S−100aoは腎臓により血流から急速に除去されうるが、ACSとの関連でS−100aoの血流への放出および血流からのクリアランスの動態を決定するためにさらなる研究が必要である(Usui, A. et al., Clin. Chem. 35:1942-1944, 1989)。S−100aoは、心臓組織中で高濃度で見出され、心臓傷害の高感度のマーカーと思われる。ACSのためのこのマーカーの非特異性の主要な供給源には、骨格筋および腎臓組織の傷害が含まれる。S−100aoは、AMI発症のすぐ後に有意に上昇し、不安定狭心症からのAMIの区別を可能にしうる。虚血性エピソードと関係した胸部痛で苦しんでいることを示す狭心症および疑似AMIの患者は、有意に上昇したS−100ao濃度を有していなかった。非特異性の危険性にもかかわらず、CK−MBおよびミオグロビンのものとの区別がないと思われるが、S−100aoは、医師が不安定狭心症からAMIを区別することを可能にしうる。
【0062】
(ii)凝固に関連する心筋傷害のための非特異的マーカー
プラスミンは、タンパク質分解により架橋フィブリンを消化し、血塊溶解をもたらす78kDaのセリンプロテイナーゼである。70kDaのセリンプロテイナーゼ阻害因子α2−アンチプラスミン(α2AP)は、プラスミンと共有結合の1:1化学量論的複合体を形成することによりプラスミンの活性を調整する。得られる〜150kDaのプラスミン−α2AP複合体(PAP)は、プラスミン阻害複合体(PIC)とも呼ばれ、α2APがフィブリン溶解の間に活性化されたプラスミンと接触した後直ぐに形成される。PAPの正常血清濃度は、<1μg/ml(6.9nM)である。PAPの血清濃度の上昇は、フィブリン溶解の活性化の結果であると考えられる。PAPの血清濃度の上昇は、血塊の存在、またはフィブリン溶解に起因し若しくはフィブリン溶解の結果であるいずれの状態にも関係しうる。これらの状態には、アテローム硬化症、播種性血管内凝固症候群、AMI、手術、外傷、不安定狭心症、脳卒中、および血栓性血小板減少性紫斑病を含みうる。PAPは、プラスミンのタンパク質分解による活性化に続いて直ぐに形成される。PAPは、フィブリン溶解活性化および最近の若しくは継続的な凝固能亢進性状態の存在の特異的マーカーである。これはACSに特異的なものではなく、多数の他の疾患状態でも上昇しうる。
【0063】
β−トロンボグロブリン(βTG)は、血小板の活性化によって放出される36kDaの血小板α顆粒成分である。βTGの正常血漿濃度は、<40ng/ml(1.1nM)である。βTGの血漿濃度は、不安定狭心症およびAMIの患者では上昇しているように思えるが、安定狭心症では上昇していない(De Caterina, R. et al., Eur. Heart J. 9:913-922, 1988; Bazzan, M. et al., Cardiologia 34, 217-220, 1989)。血漿βTGの上昇は、不安定狭心症の患者の虚血エピソードに関連づけられるように見える(Sobel, M. et al., Circulation 63:300-306, 1981)。βTGの血漿濃度の上昇は、血塊の存在と関係し、または血小板の活性化の原因となるいずれの状態とも関係しうる。これらの状態には、アテローム硬化症、播種性血管内凝固症候群、手術、外傷、血栓性血小板減少性紫斑病、および脳卒中を含めることができる(Landi, G. et al., Neurology 37:1667-1671, 1987)。βTGは、血小板の活性化および凝集の直後に循環系に放出される。これは、血漿中で延長された1時間の半減期に続く、10分間の2相半減期を有する (Switalska, H.I. et al., J. Lab. Clin. Med. 106:690-700, 1985)。血漿βTG濃度は、伝えるところによれば不安定狭心症およびAMIの間で上昇するが、これらの研究は完全に信頼できるものではないであろう。血液採取工程の間の血小板の活性化を避けるために、特別な予防措置が必要である。血小板の活性化は、通常の血液採取の間で一般的なものであり、血漿βTG濃度の人為的な上昇を導くこととなる。さらに、血流に放出されたβTGの量は、個体の血小板数に依存し、これは非常に変動しうるものである。ACSに関係したβTGの血漿濃度は、70ng/ml(2nM)に近づきうるが、この値は、採取工程の間の血小板の活性化に影響されるであろう。
【0064】
血小板第4因子(PF4)は、血小板の活性化により放出される40kDaの血小板α顆粒成分である。PF4は、血小板活性化のマーカーであり、ヘパリンに結合し中和する能力を有する。PF4の正常血漿濃度は、<7ng/ml(175pM)である。PF4の血漿濃度は、AMIおよび不安定狭心症の患者では上昇しているように思えるが、安定狭心症では上昇していない(Gallino, A. et al., Am. Heart J. 112:285-290, 1986; Sakata, K. et al., Jpn. Circ. J. 60:277-284, 1996; Bazzan, M. et al., Cardiologia 34:217-220, 1989)。血漿PF4の上昇も、不安定狭心症の患者の虚血のエピソードと関連づけられるように見える(Sobel, M. et al., Circulation 63:300-306, 1981)。PF4の血漿濃度の上昇は、血塊の存在、または血小板の活性化の原因となるいずれの状態とも関連づけらるであろう。これらの状態には、アテローム硬化症、播種性血管内凝固症候群、手術、外傷、血栓性血小板減少性紫斑病、および急性脳卒中を含めることができる(Carter, A.M. et al., Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 18:1124-1131, 1998)。PF4は、血小板の活性化および凝集の直後に循環系に放出される。血漿中で延長した20分の半減期に続く、1分間の2相半減期を有する。血漿中のPF4の半減期は、ヘパリンの存在により20〜40分間延長されうる(Rucinski, B. et al., Am. J. Physiol. 251:H800-H807, 1986)。血漿PF4濃度は、伝えるところによれば不安定狭心症およびAMIの間で上昇するが、これらの研究は完全に信頼できるのもではないであろう。血液採取工程の間の血小板の活性化を避けるために、特別な予防措置が必要である。血小板の活性化は、通常の血液採取の間で一般的なものであり、血漿PF4濃度の人為的な上昇を導くこととなる。さらに、血流に放出されたPF4の量は、個体の血小板数に依存し、これは非常に変動しうるものである。疾患に関係したPF4の血漿濃度は、100ng/ml(2.5nM)を超えうるが、この値は、採取工程の間の血小板の活性化に影響されうるであろう。
【0065】
フィブリノペプチドA(FPA)は、16アミノ酸の、トロンビンの作用によりフィブリノーゲンのアミノ末端から遊離した1.5kDaのペプチドである。フィブリノーゲンは、肝臓により合成され分泌される。FPAの正常血漿濃度は、<5ng/ml(3.3nM)である。血漿FPA濃度は、AMI、不安定狭心症、および異型狭心症の患者で上昇するが、安定狭心症では上昇しない(Gensini, G.F. et al., Thromb. Res. 50:517-525, 1988; Gallino, A. et al., Am. Heart J. 112:285-290, 1986; Sakata, K. et al., Jpn. Circ. J. 60:277-284, 1996; Theroux, P. et al., Circulation 75:156-162, 1987; Merlini, P.A. et al., Circulation 90:61-68, 1994; Manten, A. et al., Cardiovasc. Res. 40:389-395, 1998)。さらに、血漿FPAは狭心症の重篤度を示しうる(Gensini, G.F. et al., Thromb. Res. 50:517-525, 1988)。FPAの血漿濃度の上昇は、脳卒中、手術、癌、播種性血管内凝固症候群、ネフローゼ、および血栓性血小板減少性紫斑病等の、凝固経路の活性化を伴ういずれの状態にも関係する。FPAは、トロンビンの活性化およびフィブリノーゲンの切断に続いて循環系に放出される。FPAは小さなペプチドであるので、血流から急速に除去されやすい。FPAは、血塊形成に続いて1ヶ月以上上昇していることが示され、活性な狭心症では最大血漿FPA濃度が40ng/mlを超えうる(Gensini, G.F. et al., Thromb. Res. 50:517-525, 1988; Tohgi, H. et al., Stroke 21:1663-1667, 1990)。
【0066】
血小板由来増殖因子(PDGF)は、相同性サブユニットAおよび/またはBから構成される、28kDaの分泌されたホモまたはヘテロダイマータンパク質である(Mahadevan, D. etal., J. Biol. Chem. 270:27595-27600, 1995)。PDGFは、間葉細胞のための能力のあるマイトジェンであり、アテローム硬化症の病因に関係している。PDGFは、凝集した血小板および血管傷害部位の近くの単球から放出される。PDGFの正常血漿濃度は、<0.4ng/ml(15pM)である。血漿PDGF濃度は、健康な対象や安定狭心症の個体に比べ、AMIおよび不安定狭心症の個体では、高い(Ogawa, H. et al., Am. J. Cardiol. 69:453-456, 1992; Wallace, J.M. et al., Ann. Clin. Biochem. 35:236-241, 1998; Ogawa, H. et al., Coron. Artery Dis. 4:437-442, 1993)。これらの個体での血漿PDGF濃度の変化は、増加した血小板および単球の活性化により最も起こりうる。血漿PDGFは、脳腫瘍、乳癌、および高血圧の個体で上昇する(Kurimoto, M. et al., Acta Neurochir. (Wien) 137:182-187, 1995; Seymour, L. et al., Breast Cancer Res. Treat. 26:247-252, 1993; Rossi, E. et al., Am. J. Hypertens. 11:1239-1243, 1998)。血漿PDGFは、いずれの前炎症性状態または、手術、外傷、播種性血管内凝固症候群、および血栓性血小板減少性紫斑病等の血小板の活性化の原因となるいずれの状態でも上昇しうる。PDGFは、活性化により血小板および単球の分泌性顆粒から放出される。PDGFは、動物では、約5分間および1時間の2相半減期を有する(Cohen, A.M. et al., J. Surg. Res. 49:447-452, 1990; Bowen-Pope, D.F. et al., Blood 64:458469, 1984)。ACSでの血漿PDGF濃度は、0.6ng/ml(22pM)を超えうる(Ogawa, H. et al., Am. J. Cardiol. 69:453-456, 1992)。PDGFは、血小板活性化の高感度かつ特異的マーカーであり得る。さらに、血管傷害並びに付随する単球および血小板活性化の高感度のマーカーであり得る。
【0067】
プロトロンビンフラグメント1+2は、トロンビンの活性化の間にトロンビンのアミノ末端から遊離する32kDaのポリペプチドである。F1+2の正常血漿濃度は、<32ng/ml(1nM)である。ACSに関係する血漿F1+2濃度上昇の研究報告は、対立している。F1+2の血漿濃度は、伝えるところによればAMIおよび不安定狭心症の患者で上昇するが、安定狭心症では上昇せず、その変化は大きくない(Merlini, P.A. et al., Circulation 90:61-68, 1994)。他の報告では、心臓血管疾患で血漿F1+2濃度の有意な変化がないことを示している(Biasucci, L.M. et al., Circulation 93:2121-2127, 1996; Manten, A. etal., Cardiovasc. Res. 40:389-395, 1998)。血漿中のF1+2の濃度は、脳卒中、手術、外傷、血栓性血小板減少性紫斑病、および播種性血管内凝固症候群等の凝固活性化に関係したいずれの状態の間でも、上昇しうる。F1+2は、トロンビンの活性化により直ぐに血流に放出される。F1+2は、血漿中で約90分間の半減期を有し、この長い半減期がトロンビン形成の突発を遮蔽しうることが示された(Biasucci, L.M. et al., Circulation 93:2121-2127, 1996)。
【0068】
P−セレクチンは、顆粒膜タンパク質−140、GMP−140、PADGEM、およびCD−62Pとも呼ばれ、血小板および内皮細胞で発現する〜140kDaの接着分子である。P−セレクチンは、血小板のアルファ顆粒および内皮細胞のヴァイベル−パラーデ体に蓄えられる。活性化により、P−セレクチンは内皮細胞および血小板の表面に急速に移行し、好中球および単球との「ローリング(rolling)」細胞表面相互作用を容易にする。P−セレクチンの膜結合性および溶解性の型が、同定されている。溶解性P−セレクチンは、細胞外P−セレクチン分子のタンパク質分解または表面結合性P−セレクチン分子の極近傍での細胞内骨格細胞成分のタンパク質分解のいずれかによる、膜結合性P−セレクチンの発散により産生されうる(Fox, J.E., Blood Coagul. Fibrinolysis 5:291-304, 1994)。さらに、溶解性P−セレクチンは、N−末端膜内外ドメインをエンコードしないmRNAから翻訳されうる(Dunlop, L.C. et al., J. Exp. Med. 175:1147-1150, 1992; Johnston, G.I. et al., J. Biol. Chem. 265:21381-21385, 1990)。活性化血小板は、膜結合性P−セレクチンを発散して循環系にとどまることができ、P−セレクチンの発散は、血漿P−セレクチン濃度を約70ng/mlに上昇させることができる(Michelson, A.D. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 93:11877-11882, 1996)。溶解性P−セレクチンは、膜結合性P−セレクチンと異なったコンフォメーションにも適合しうる。溶解性P−セレクチンは、1つの末端に球状ドメインを有するモノマーの棒状構造であり、膜結合分子は、外側に向けた球状ドメインを有するロゼット構造を形成する(Ushiyama, S. etal., J. Biol. Chem. 268:15229-15237, 1993)。溶解性P−セレクチンは、白血球と活性化した血小板および内皮細胞との相互作用を遮蔽することにより炎症と血栓症を調整する重要な役割を果たすであろう(Gamble, J.R. et al., Science 249:414-417, 1990)。溶解性P−セレクチンの正常血漿濃度は、<200ng/mlである。血液は、通常抗凝固剤としてクエン酸を用いて採取されるが、いくつかの研究では血小板の活性化を防ぐためにプロスタグランジンEのような添加剤を加えたEDTA血漿を用いていた。EDTAは、クエン酸を用いて得たものと比較しうる結果をもたらす適切な抗凝固剤であろう。さらに、溶解性P−セレクチンの血漿濃度は、採取工程の間の潜在的な血小板活性化によっては、影響されないであろう。血漿の溶解性P−セレクチン濃度は、AMIおよび不安定狭心症の患者では有意に上昇したが、安定狭心症では、運動ストレス試験の後であっても上昇しなかった(Ikeda, H. et al., Circulation 92:1693-1696, 1995; Tomoda, H. and Aoki, N., Angiology 49:807-813, 1998; Hollander, J.E. et al., J.Am. Coll. Cardiol. 34:95-105, 1999; Kaikita, K. et al., Circulation 92:1726-1730, 1995; Ikeda, H. et al., Coron. Artery Dis. 5:515-518, 1994)。AMIについて、膜結合性P−セレクチン対溶解性P−セレクチンの感度および特異性は、71%対76%および32%対45%であった(Hollander, J.E. et al., J. Am. Coll. Cardiol. 34:95-105, 1999)。不安定狭心症+AMIについて、膜結合性P−セレクチン対溶解性P−セレクチンの感度および特異性は、71%対79%および30%対35%であった(Hollander, J.E. et al., J. Am. Coll. Cardiol. 34:95-105, 1999)。P−セレクチン発現は、安定狭心症のものと比べ、不安定狭心症の個体からの冠状動脈内粥腫切除標本の方が大きい(Tenaglia, A.N. et al., Am. J. Cardiol. 79:742-747, 1997)。さらに、血漿の溶解性P−セレクチンは、不安定狭心症の患者に比べ、AMIの患者の方が大きい度合いで上昇しうる。血漿の溶解性および膜結合性P−セレクチンは、非インスリン依存性糖尿病および鬱血性心不全の個体でも上昇する(Nomura, S. et al., Thromb. Haemost. 80:388392, 1998; O'Connor, C.M. et al., Am. J. Cardiol. 83:1345-1349, 1999)。溶解性P−セレクチン濃度は、特発性血小板減少性紫斑病、慢性関節リュウマチ、高コレステロール血症、急性脳卒中、アテローム硬化症、高血圧、急性肺傷害、結合組織疾患、血栓性血小板減少性紫斑病、溶血性尿毒症症候群、播種性血管内凝固症候群、および慢性腎不全の個体の血漿で上昇する(Katayama, M. et al., Br. J. Haematol. 84:702-710, 1993; Haznedaroglu, I.C. et al., Acta Haematol. 101:16-20, 1999; Ertenli, I. et al., J.Rheumatol. 25:1054-1058, 1998; Davi, G. et al., Circulation 97:953-957, 1998; Frijns, C.J. et al., Stroke 28:2214-2218, 1997; Blann, A.D. et al., Thromb. Haemost. 77:1077-1080, 1997; Blann, A.D. et al., J. Hum. Hypertens.11:607-609, 1997; Sakamaki, F. et al., A. J. Respir. Crit. Care Med.151:1821-1826, 1995; Takeda, I. et al., Int. Arch. Allergy Immunol. 105:128-134, 1994; Chong, B.H. et al., Blood 83:1535-1541, 1994; Bonomini, M. et al., Nephron 79:399-407, 1998)。さらに、血小板の活性化を伴ういずれの状態も、潜在的にはP−セレクチンの血漿上昇の供給源となりうる。P−セレクチンは、内皮細胞血小板の活性化に続いて細胞表面に即座に現れる。膜内外ドメインを欠いた代替mRNAから翻訳された溶解性P−セレクチンも、この活性化に続いて細胞外空間に放出される。溶解性P−セレクチンは、膜結合性P−セレクチンを伴う直接および間接のいずれかによるタンパク質分解によっても形成されうる。血漿の溶解性P−セレクチンは、tPAまたは冠状動脈形成の処置をされたAMIの患者の入院時に上昇し、発症後4時間で最大上昇が起こる(Shimomura, H. etal., Am. J. Cardiol. 81:397-400, 1998)。血漿の溶解性P−セレクチンは、不安定狭心症の患者の狭心症の発作に続いて1時間以内に上昇し、その濃度は時間経過とともに減少し、発作の発症後5時間以上でベースラインに近づいた(Ikeda, H. etal., Circulation 92:1693-1696, 1995)。溶解性P−セレクチンの血漿濃度は、ACSで1μg/mlに近づく(Ikeda, H. et al., Coron. Artery Dis. 5:515-518, 1994)。血流への溶解性P−セレクチンの放出および血流から除去に関するさらなる研究がなされる必要がある。P−セレクチンは、血小板および内皮細胞の活性化、血栓の形成を支持する状態、および炎症、の高感度かつ特異的なマーカーでありうる。しかし、これはACSの特異的マーカーではない。心臓組織傷害に特異的な他のマーカーとともに用いた場合、P−セレクチンは、不安定狭心症およびAMIを安定狭心症から識別するのに有用であろう。さらに、溶解性P−セレクチンは、不安定狭心症よりAMIにおいて大きな度合いで上昇しうる。P−セレクチンは、通常は膜結合性と溶解性の2つの型で存在する。公表された研究では、P−セレクチンの溶解型は、血小板および内皮細胞により、膜結合性P−セレクチンを遮蔽することにより、潜在的にはタンパク質分解機構により産生されるとしている。その血漿濃度が、PF4およびβTGのような他の血小板活性化マーカーのように血液採取工程によって影響されないので、溶解性P−セレクチンは、血小板活性化の現在同定されている最も有用なマーカーであることが証明される。
【0069】
トロンビンは、フィブリノーゲンをタンパク質分解により切断してフィブリンを形成する37kDaのセリンプロテイナーゼであり、これは最終的には血塊形成の間に架橋したネットワーク中に蓄積される。アンチトロンビンIII(ATIII)は、トロンビン、第XIa因子、第XIIa因子、および第IXa因子のタンパク質分解による活性化の生理学的調整因子である65kDaのセリンプロテイナーゼ阻害因子である。ATIIIの阻害活性は、ヘパリンの結合に依存する。ヘパリンは、2〜3桁の大きさでATIIIの阻害活性を増強し、ATIIIにより阻害されるプロテイナーゼのほとんど瞬時の不活性化をもたらす。ATIIIは、共有結合の1:1化学量論的複合体の形成を通じて、その標的プロテイナーゼを阻害する。約100kDaのトロンビンATIII複合体(TAT)の正常血漿濃度は、<5ng/ml(50pM)である。TAT濃度は、AMIおよび不安定狭心症の患者で、特に突発性虚血エピソードの間で上昇する(Biasucci, L.M. et al., Am. J. Cardiol. 77:85-87, 1996; Kienast, J. et al., Thromb. Haemost. 70:550-553, 1993)。さらに、TATは、安定狭心症の個体の血漿でも上昇しうる(Manten, A. et al., Cardiovasc. Res. 40:389395, 1998)。他の公表された報告では、ACS患者の血漿のTAT濃度に有意な違いはないことが見出された(Manten, A. et al., Cardiovasc. Res. 40:389-395, 1998; Hoffmeister, H.M. et al., Atherosclerosis 144:151-157, 1999)。ACSに関係した血漿TAT濃度の変化を決定するためには、さらなる研究が必要である。血漿TAT濃度の上昇は、脳卒中、手術、外傷、播種性血管内凝固症候群、および血栓性血小板減少性紫斑病等の凝固活性化に関係したいずれの状態にも関係する。TATは、ヘパリンの存在下でトロンビンの活性化に続いて直ぐに形成され、これはこの相互作用の限定因子である。TATは、血流中で約5分間の半減期を有する(Biasucci, L.M. et al., Am. J. Cardiol. 77:85-87, 1996)。TAT濃度は上昇し、15分後に急激な落ち込みを示して、凝固活性化に続いて1時間以内にベースラインに戻る。TATの血漿濃度は、ACSで50ng/mlに近づく(Biasucci, L.M. et al., Circulation 93:2121-2127, 1996)。TATは、凝固活性化、特にトロンビンの活性化の特異的マーカーである。TATは、プラーク破裂および/または心臓組織傷害に特異的な他のマーカーとともに診断パネルの凝固活性化のマーカーとして有用であろう。
【0070】
D−ダイマーは、200kDaの概算分子量を有する架橋フィブリン分解物である。D−ダイマーの正常血漿濃度は、<150ng/ml(750pM)である。D−ダイマーの血漿濃度は、AMIおよび不安定狭心症の患者で上昇するが、安定狭心症では上昇しない(Hoffmeister, H.M. et al., Circulation 91:2520-2527, 1995; Bayes-Genis, A. et al., Thromb. Haemost. 81:865-868, 1999; Gurfinkel, E. et al., Br. Heart J. 71:151-155, 1994; Kruskal, J.B. et al., N. Engl. J. Med. 317:1361-1365, 1987; Tanaka, M. and Suzuki, A., Thromb. Res. 76:289-298, 1994)。D−ダイマーの血漿濃度は、脳卒中、手術、アテローム硬化症、外傷、および血栓性血小板減少性紫斑病等の凝固およびフィブリン溶解活性化に関係したいずれの状態の間でも上昇するであろう。D−ダイマーは、プラスミンによるタンパク質分解による血塊溶解に続いて直ぐに血流中に放出される。血漿D−ダイマー濃度は、ACS発症後直ぐに上昇し(6時間以内に)、個体の凝固能亢進の度合いに比例して上昇したまま維持するであろう。この点で、ACSに続く血流からのD−ダイマーの除去の動態を決定するためには、さらなる研究が必要である。D−ダイマーの血漿濃度は、不安定狭心症の患者では2μg/mlを超えうる(Gurfinkel, E. et al., Br. Heart J. 71:151-155, 1994)。血漿D−ダイマーは、フィブリン溶解の特異的マーカーであり、AMIおよび不安定狭心症に関係したプロトロンビンの状態の存在を示すものである。D−ダイマーは、ACSに特異的ではなく、D−ダイマーの血漿上昇は、ACSの様々な危険因子に関係するであろう。しかし、心臓傷害に特異的なマーカーを含むパネルの構成員として用いる場合、D−ダイマーは、安定狭心症からの不安定狭心症およびAMIの区別を可能にしうる。この識別は、医師が急性の胸部痛を示している患者をより効率的に処置することを可能にしうる。
【0071】
フォン・ビルブラント因子(vWF)は、一連の高分子量多量体を形成することに関係する220kDaのモノマーから構成される、血小板、巨核球、および内皮細胞により産生される血漿タンパク質である。これらの多量体は、通常600〜20,000kDaの分子量の範囲に入る。vWFは、循環している凝固因子VIIIを安定化すること、および他の血小板と同様に、露出した内皮下層への血小板の接着を媒介することにより、凝固工程に参加する。vWFのA1ドメインは、血小板糖タンパク質Ib−IX−V複合体および非原繊維VI型コラーゲンに結合し、A3ドメインは、原繊維IおよびIII型コラーゲンに結合する(Emsley, J. et al., J. Biol. Chem. 273:10396-10401, 1998)。vWF分子に存在する他のドメインには、血小板−血小板相互作用を媒介するインテグリン結合ドメイン、11A型フォン・ビルブラント疾患の病因に関連すると思われるプロテイナーゼ切断ドメイン、が含まれる。vWFの血小板との相互作用は、正常の生理状態では、vWFと血小板との相互作用を避けるために厳しく調整される。vWFは、通常球状の状態で存在し、高い剪断応力の状態下で伸長した鎖構造へのコンフォメーション転移を受け、これは通常血管傷害部位に見出される。このコンフォメーションの変化は、分子の分子内ドメインを露出し、vWFが血小板と相互作用することを可能にする。さらに、剪断応力は、内皮細胞からのvWFの放出の原因となり、非常に多数のvWF分子を血小板と相互作用可能にする。vWFのコンフォメーションの変化は、リストセチンおよびボトロセチンのような非生理学的調整因子の添加によりin vitroで誘発されうる(Miyata, S. et al., J. Biol. Chem. 271:9046-9053, 1996)。血管傷害部位では、vWFは、内皮下層マトリックスのコラーゲンと迅速に結合し、実質上不可逆的に血小板に結合し、傷害部位において血小板と血管内皮下層との間の架橋を効果的に形成する。vWFのコンフォメーションの変化が内皮下層マトリックスとの相互作用に必要ないかもしれないという証拠も示されている(Sixma, J.J. and de Groot, P.G., Mayo Clin. Proc. 66:628-633, 1991)。これは、vWFが、血管傷害部位において露出した内皮下層マトリックスに結合し、非常に局在化した剪断応力のためにコンフォメーションの変化を受け、循環している血小板に迅速に結合し、新しく形成した血栓中に蓄積されるであろうことを示している。vWFの全量の測定は、当業者が脳卒中や心臓血管疾患に関係した全vWF濃度の変化を同定することを可能にする。この測定は、種々の形態のvWF分子を測定することを通じて行われる。A1ドメインの測定は、循環系の活性vWFの測定を可能にし、A1ドメインが血小板の結合に近づきやすいので、凝固促進性の状態が存在することを示すこととなる。この点において、露出したA1ドメインと、インテグリン結合ドメイン若しくはA3ドメインのいずれかと、の双方においてvWF分子を特異的に測定するアッセイは、それぞれ、血小板−血小板相互作用を媒介することを可能にするか、または血小板の血管内皮下層への架橋を媒介する、活性vWFの同定をも可能にしうる。これらのvWF形態のいずれかの測定は、プロテアーゼ切断ドメインに特異的な抗体を用いるアッセイを用いた場合に、フォン・ビルブラント疾患の存在にかかわらず、いずれの個体においても種々のvWF形態の循環している濃度を決定するために用いるアッセイを可能にしうる。vWFの正常血漿濃度は、血小板凝集物として測定した場合、5〜10μg/mlまたは60〜110%の活性度である。vWFの特異的形態の測定は、脳卒中および心臓血管疾患等のいずれの型の血管疾患においても重要であろう。血漿vWF濃度は、伝えるところによればAMIおよび不安定狭心症の患者では上昇するが、安定狭心症では上昇しない(Goto, S. et al., Circulation 99:608-613, 1999; Tousoulis, D.et al., Int. J. Cardiol. 56:259262, 1996; Yazdani, S. et al., J Am Coll Cardiol 30:1284-1287, 1997; Montalescot, G. et al., Circulation 98:294-299)。さらに、血漿vWF濃度の上昇は、不安定狭心症の患者の不利な臨床的結果の予測量になりうる(Montalescot, G. et al., Circulation 98:294-299)。vWF濃度は、脳卒中およびクモ膜下出血の患者でも上昇することが示されており、脳卒中に続く死亡の危険の評価にも有用と思われる(Blann, A. et al., Blood Coagul. Fibrinolysis 10:277-284, 1999; Hirashima, Y. et al.. Neurochem Res. 22:1249-1255, 1997; Catto, A.J. et al., Thromb. Hemost. 77:1104-1108, 1997)。vWFの血漿濃度は、内皮細胞の損傷または血小板の活性化に関係するいずれの事象とも連動して上昇しうる。vWFは、血流中で高濃度で存在し、活性化により血小板および内皮細胞から放出される。vWFは、血小板の活性化、または、特に血小板の活性化および血管傷害部位への接着に好ましい状態、のマーカーとして最良の有益がありそうである。vWFのコンフォメーションは、部分的に狭窄した血管に関係するような、高い剪断応力により変化することも知られている。血液が狭窄した血管を流れると、疾患を有しない個体の循環系で遭遇するものよりも相当高い剪断応力を受ける。この発明の他の知見は、剪断応力から生じるvWFの形態およびACSの存在に対するその形態の相関を測定することである。
【0072】
組織因子(TF)は、脳、腎臓および心臓で発現する45kDaの細胞表面タンパク質であり、血管周辺の細胞および単球上で転写により調整される。TFは、Ca2+イオンの存在下で第VIIa因子と複合体を形成し、それが膜結合の場合に生理学的に活性である。この複合体は、第X因子を、第Xa因子を形成するようにタンパク質分解により切断する。これは、通常血流から隔離されている。組織因子は、血流中で溶解型、第VIIa因子に結合したもの、または第VIIa因子との複合体、および第Xa因子をも含みうる組織因子経路阻害因子、として検出されうる。TFは、マクロファージの表面でも発現し、これは通常アテローム硬化症プラーク中で見出される。TFの正常血清濃度は、<0.2ng/ml(4.5pM)である。血漿TF濃度は、虚血性心臓疾患の患者で上昇する(Falciani, M. et al., Thromb. Haemost. 79:495-499, 1998)。TFは、不安定狭心症およびAMIの患者で上昇するが、安定狭心症の患者では上昇しない(Falciani, M. et al., Thromb. Haemost. 79:495-499, 1998; Suefuji, H. et al., Am. Heart J. 134:253-259, 1997; Misumi, K. et al., Am. J. Cardiol. 81:2226, 1998)。さらに、マクロファージでのTFの発現およびアテローム硬化症プラークでのTFの活性は、安定狭心症より不安定狭心症においてより一般的である(Soejima, H. et al., Circulation 99:2908-2913, 1999; Kaikita, K. et al., Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 17:2232-2237, 1997; Ardissino, D. et al., Lancet 349:769-771, 1997)。不安定狭心症に対する安定狭心症の血漿TF濃度の違いは、統計的に有意なものではないであろう。TFの血清濃度の上昇は、外因性経路を通じた凝固活性化の原因となるまたはその結果であるいずれの状態にも関係する。これらの状態には、クモ膜下出血、播種性血管内凝固症候群、腎不全、脈管炎、および鎌状赤血球症を含めることができる(Hirashima, Y. et al., Stroke 28:1666-1670, 1997; Takahashi, H. et al., Am. J. Hematol. 46:333-337, 1994; Koyama, T. et al., Br. J. Haematol. 87:343-347, 1994)。TFは、血管傷害が血管外細胞障害と結びつくと、直ぐに放出される。虚血性心臓疾患患者のTF濃度は、発症の2日以内に800pg/mlを超えうる(Falciani, M. et al., Thromb. Haemost. 79:495-499, 1998)。TF濃度は、慢性期と比べて、AMIの慢性期では減少した(Suefuji, H. et al., Am. Heart J. 134:253-259, 1997)。TFは、外因性凝固経路の活性化および一般的な凝固能亢進性状態の存在の特異的マーカーである。これは、プラーク破裂による血管傷害の高感度のマーカーとなり、パネル構成員として有益であろう。これは、ACSに特異的ではなく、多くの疾患状態でも上昇し、血液採取工程により人為的にも上昇しうる。しかし、血栓崩壊治療の患者を除外するためのマーカーとしてTFを用いることは可能であろう。血栓崩壊治療の間の組織型プラスミノーゲン活性化因子(tPA)の注入は、フィブリン溶解の活性化をもたらし、患者は、血塊を維持できなくなる。血管傷害の個体へのtPAの投与は、最終的には出血をもたらすこととなる。
【0073】
凝固カスケードは、外因性または内因性のいずれかの経路を通じて活性化されうる。これらの酵素的経路は、1つの最終の共通経路を共有する。共通経路の第1の工程は、第Xa因子/第Va因子プロトロンビナーゼ複合体によるプロトロンビンのタンパク質分解による切断を伴い、活性トロンビンを生成する。トロンビンは、フィブリノーゲンをタンパク質分解により切断するセリンプロテイナーゼである。トロンビンは、フィブリノーゲンからフィブリノペプチドAを最初に取り除いてdesAAフィブリンモノマーを生成し、これは、フィブリン分解物、フィブリノーゲン分解物、desAAフィブリン、およびフィブリノーゲン等のすべの他のフィブリノーゲン由来タンパク質と複合体を形成しうる。desAAフィブリンモノマーは、フィブリノーゲン切断の最初の産物であるので、一般的には溶解性フィブリンを指すが、第XIIIa因子を介して不溶性フィブリン血塊に未だ架橋していない。desAAフィブリンモノマーは、トロンビンによるさらなるタンパク質分解による切断を受けて、フィブリノペプチドBを取り除き、desAABBフィブリンモノマーを生成する。このモノマーは、他のdesAABBフィブリンモノマーと重合して溶解性desAABBフィブリンポリマーを形成し、これは溶解性フィブリンまたは血栓前駆体タンパク質(TpTTM)とも呼ばれる。TpTTMは、溶解性フィブリンの直近の前駆体であり、これは「網状」構造を形成して新しく形成した血栓に構造的な強固さを提供する。この点において、血漿中のTpTTMの測定は、活性な血塊形成の直接的な測定となる。TpTTMの正常血漿濃度は、<6ng/mlである(Laurino, J.P. et al., Ann. Clin. Lab. Sci. 27:338-345, 1997)。アメリカンバイオジェネティックサイエンシーズは、TpTTMのアッセイを開発し(米国特許番号5453359および5843690)、TpTTMアッセイは、AMIの早期診断、胸部痛を有する患者のAMIの除外、およびAMIに進行するであろう不安定狭心症の患者の同定、を補助できると述べている。他の研究により、TpTTMがAMIの患者において、発症の6時間以内に最もしばしば上昇することが確認された(Laurino, J.P. et al., Ann. Clin. Lab. Sci. 27:338-345, 1997; Carville, D.G. etal., Clin. Chem. 42:1537-1541, 1996)。TpTTMの血漿濃度は、不安定狭心症の患者でも上昇するが、これらの上昇は、狭心症の重篤度および来るべきAMIの進行の表示となりうる(Laurino, J.P. et al., Ann. Clin. Lab. Sci. 27:338-345, 1997)。血漿中のTpTTMの濃度は、播種性血管内凝固症候群、深層静脈血栓症、鬱血性心不全、手術、癌、胃腸炎、およびコカインの過剰投与等の凝固活性化の原因となるまたはその結果であるいずれの状態の間にも、理論的には上昇するであろう(Laurino, J.P. et al., Ann. Clin. Lab. Sci. 27:338-345, 1997)。TpTTMは、トロンビンの活性化に続いて直ぐに血流に放出される。TpTTMは、血塊形成部位において不溶性フィブリンに即座に転換されるので、血流中では短い半減期を有することとなる。血漿TpTTM濃度は、AMI発症の3時間以内に最大となり、発症から12時間後に正常に戻る。TpTTMの血漿濃度は、CVDで30ng/mlを超えうる(Laurino, J.P. et al., Ann. Clin. Lab. Sci. 27:338-345, 1997)。TpTTMは、凝固活性化の高感度かつ特異的マーカーである。心臓組織傷害の特異的マーカーと併せて用いた場合のみであるが、TpTTMがAMIの診断に有用であることが示された。TpTTMは、ACSに特異的なマーカーではなく、その濃度は、ACSの発展の危険因子と見なされる状態等の凝固活性化を伴う多数の疾患状態において上昇するであろう。TpTTMは、不安定狭心症の重篤度を決定するのにも有用であろう。アメリカンバイオジェネティックサイエンシーズ社は、TpTTMELISAアッセイキットの使用者に抗凝固剤としてクエン酸を用いて血液を採取することを指示しており、彼らはEDTAを用いることに反対の提言をしている。血漿TpTTM濃度に対する血液採取の間に用いられる抗凝固剤の効果は、現状では不明確である。血液採取工程が制御できれば、TpTTMは凝固活性化の利用可能な最良のマーカーであろう。
【0074】
(iii)アテローム硬化症のプラーク破裂に関連した心筋傷害の非特異的マーカー
アテローム硬化症のプラーク破裂に関連したマーカーの出現は、ACSがアテローム硬化症のプラーク破裂による場合、心筋傷害の特異的マーカーに先行するであろう。アテローム硬化症のプラーク破裂の可能性のあるマーカーには、ヒト好中球エラスターゼ、誘導型一酸化窒素シンターゼ、リゾホスファチド酸、マロンジアルデヒド修飾低密度リポタンパク質、並びにMMP−1、−2、−3および−9等のマトリックスメタロプロテイナーゼ−(MMP)ファミリーの種々の構成員が含まれる。
【0075】
ヒト好中球エラスターゼ(HNE)は、好中球のアズール親和顆粒に通常含まれる30kDaのセリンプロテイナーゼである。HNEは、好中球の活性化により放出され、その活性は循環しているα1−プロテイナーゼ阻害因子により調整される。活性化した好中球は、アテローム硬化症プラーク中で通常見出され、これらのプラークの破裂はHNEの放出をもたらしうる。血漿HNE濃度は、通常HNE−α1−PI複合体を検出することにより測定される。これらの複合体の正常濃度は、50ng/mlであり、これはHNEについては約25ng/ml(0.8nM)の正常濃度であることを示す。HNEの放出は、血漿中で、特異的HNE由来フィブリノペプチドである、フィブリノペプチドBβ30-43の特異的検出を通じても測定される。血漿HNEは、冠状動脈狭窄の患者で上昇し、その上昇は単純プラークを有するものよりも複合プラークを有する患者の方が大きい(Kosar, F. et al., Angiology 49:193-201, 1998; Amaro, A. et al., Eur. Heart J. 16:615-622, 1995)。血漿HNEは、安定狭心症の患者では有意に上昇しないが、不安定狭心症およびAMIの患者では上昇し、フィブリノペプチドBβ30-43の測定による決定では、不安定狭心症での濃度は、AMIに関連したものに比べ2.5倍高い(Dinerman, J.L. et al., J. Am. Coll. Cardiol. 15:1559-1563, 1990; Mehta, J. et al., Circulation 79:549-556, 1989)。血清HNEは、心臓手術、運動に誘導される筋肉の損傷、巨細胞性動脈炎、急性呼吸窮迫症候群、虫垂炎、膵臓炎、敗血症、喫煙に関係した気腫、および嚢胞性繊維症で上昇する(Genereau, T. et al., J. Rheumatol. 25:710-713, 1998; Mooser, V. et al., Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 19:1060-1065, 1999; Gleeson, M. et al.. Eur. J. Appl. Physiol. 77:543-546, 1998; Gando, S. et al., J Trauma 42:1068-1072, 1997; Eriksson, S. etal., Eur. J. Surg. 161:901-905, 1995; Liras, G. et al., Rev. Esp. Enferm. Dig. 87:641-652, 1995; Endo, S. et al., J. Inflamm. 45:136-142, 1995; Janoff, A., Annu Rev Med 36:207-216, 1985)。HNEは、血液凝固の間で放出されうる(Plow, E.F. and Plescia, J., Thromb. Haemost. 59:360-363, 1988; Plow, E.F., J. Clin. Invest. 69:564-572, 1982)。HNEの血清上昇は、好中級のリクルートメントおよび活性化を伴ういずれの非特異的感染または炎症にも関係しうる。活性化した好中級がアテローム硬化症プラークに存在するので、これはプラーク破裂により最も放出されやすい。HNEは、おそらくα1−PIとの複合体を形成した後に肝臓により除去される。
【0076】
誘導型一酸化窒素シンターゼ(iNOS)は、その発現がインターフェロン−γ、インターロイキン−1β、インターロイキン−6、および腫瘍壊死因子α等のサイトカイン並びにリポ多糖類により調整される、上皮細胞マクロファージの130kDaの細胞質ゾルタンパク質である。iNOSは、L−アルギニンからの一酸化窒素(NO)の合成を触媒し、その誘導は持続した高出力のNO産生をもたらし、これは抗菌活性を有し、様々な生理的および炎症性事象の媒介物である。iNOSによるNO産生は、構成的発現型NOSにより産生される量の約100倍以上である(Depre, C. et al., Cardiovasc. Res. 41:465-472, 1999)。ACSに関連した血漿iNOS濃度変化についての公表された研究はない。iNOSは、冠状動脈アテローム硬化症プラークで発現し、過酸化窒素の産生を通じてプラークの安定性を妨害し、これはNOと過酸化物との産物であり血小板の接着と凝固を増進するものである(Depre, C. et al., Cardiovasc. Res. 41:465-472, 1999)。心臓虚血の間のiNOSの発現は上昇せず、iNOSがAMIから狭心症を識別するために有用であり得ることを示している(Hammerman, S.I. et al., Am. J. Physiol. 277:H1579-H1592, 1999; Kaye, D.M. et al., Life Sci 62:883-887, 1998)。血漿iNOS濃度の上昇は、肝硬変、鉄欠乏性貧血、または細菌感染等のマクロファージの活性化をもたらすいずれの他の状態にも関係しうる(Jimenez, W. et al., Hepatology 30:670-676, 1999; Ni, Z. et al., Kidney Int. 52:195-201, 1997)。iNOSは、アテローム硬化症のプラーク破裂の結果として血流に放出され、血流中のiNOSの増加した量の存在は、プラーク破裂が起こっただけでなく、血小板の接着を促進するための理想的な環境が創生されたことを示すであろう。しかし、iNOSは、アテローム硬化症のプラーク破裂に特異的ではなく、その発現は、非特異的な炎症状態の間にも誘導されうる。
【0077】
リゾホスファチチド酸(LPA)は、ホスホグリセリド類およびトリアシルグリセロールの合成において形成されるリゾリン脂質の中間体である。これは、アシル−補酵素Aによるグリセロール−3リン酸のアシル化により、低密度リポタンパク質(LDL)の穏やかな酸化の間に形成される。LPAは、血管作用性の性質を有する脂質の第2メッセンジャーであり、血小板活性化因子として機能できる。LPAは、アテローム硬化症病巣の成分であり、特に中心部にあり、最も破裂しやすい(Siess, W., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 96, 6931-6936, 1999)。正常血漿LPA濃度は、540nMである。血清LPAは、腎不全並びに卵巣癌および他の婦人科の癌で上昇する(Sasagawa, T. et al., J. Nutr. Sci. Vitaminol. (Tokyo) 44:809-818, 1998; Xu, Y. et al., JAMA 280:719-723, 1998)。不安定狭心症との関連で、LPAは、プラーク破裂の直接の結果として最も放出されやすい。血漿LPA濃度は、婦人科の癌の患者において60μMを超えうる(Xu, Y. et al., JAMA 280:719-723, 1998)。血清LPAは、アテローム硬化症のプラーク破裂の有用なマーカーであり、安定狭心症からの不安定狭心症の区別を可能にしうる。しかし、LPAは、プラーク破裂の他のマーカーのように特異的ではないであろう。
【0078】
マロンジアルデヒド修飾低密度リポタンパク質(MDA−修飾LDL)は、ホスホリパーゼ活性、プロスタグランジン合成、または血小板の活性化の結果としてのLDLのapoB−100部分の酸化の間に形成される。LDLのMDA修飾が脂質の過酸化の不存在下で起こるので、MDA−修飾LDLは、酸化LDLから識別できる(Holvoet, P., Acta Cardiol. 53:253-260, 1998)。MDA−修飾LDLの正常血漿濃度は、4μg/ml(〜10μM)以下である。酸化LDLの血漿濃度は、安定狭心症、不安定狭心症、およびAMIで上昇し、アテローム硬化症のマーカーであり得ることを示す(Holvoet, P., Acta Cardiol. 53:253-260, 1998; Holvoet, P. et al., Circulation 98:1487-1494, 1998)。血漿MDA−修飾LDLは、安定狭心症では上昇しないが、不安定狭心症およびAMIでは有意に上昇する(Holvoet, P., Acta Cardiol. 53:253-260, 1998; Holvoet, P. et al., Circulation 98:1487-1494, 1998; Holvoet, P. et al., JAMA 281:1718-1721, 1999)。血漿MDA−修飾LDLは、ベータ−サラセミアの個体および腎臓移植患者において上昇する(Livrea, M.A. et al., Blood 92:3936-3942, 1998; Ghanem, H. et al., Kidney Int. 49:488-493, 1996; van den Dorpel, M.A. et al., Transpl. Int. 9 Suppl. 1:S54-S57, 1996)。さらに、血清MDA−修飾LDLは、低酸素症の間に上昇する(Balagopalakrishna, C. et al., Adv. Exp. Med. Biol. 411:337-345, 1997)。MDA−修飾LDLの血漿濃度は、胸部痛の発症から6〜8時間以内に上昇する。MDA−修飾LDLの血漿濃度は、AMIの患者では20μg/ml(〜50μM)に、不安定狭心症の患者では15μg/ml(〜40μM)に近づきうる(Holvoet, P. et al., Circulation 98:1487-1494, 1998)。血漿MDA−修飾LDLは、マウスで5分以下の半減期を有する(Ling, W. et al., J. Clin. Invest. 100:244-252, 1997)。MDA−修飾LDLは、急性冠状動脈症候群のアテローム硬化症のプラーク破裂の特異的マーカーと思われる。しかし、MDA−修飾LDLの血漿濃度の上昇がプラーク破裂の結果であるのか、または血小板の活性化の結果であるのかは、不明確である。最も妥当な説明は、MDA−修飾LDLの増大した量の存在は両方の事象の表示であるというものである。MDA−修飾LDLは、安定狭心症からの不安定狭心症およびAMIの区別に有用でありうるが、それ単独では不安定狭心症からのAMIを識別できない。この点において、MDA−修飾LDLは、特に不安定狭心症からAMIを区別できる他のマーカーとともに用いた場合に、マーカーのパネルの一部として最も有用であろう。
【0079】
マトリックスメタロプロテイナーゼ−1(MMP−1)は、コラゲナーゼ−1とも呼ばれ、主としてI型コラーゲンを切断するがII、III、VIIおよびX型コラーゲンも切断する、41/44kDaの亜鉛およびカルシウム結合プロテイナーゼである。活性な41/44kDaの酵素は、自己分解を受けなお活性な22/27kDaの形態になりうる。MMP−1は、平滑筋細胞、マスト細胞、マクロファージ由来泡沫細胞、Tリンパ球、および内皮細胞等の種々の細胞により合成される(Johnson, J.L. et al., Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 18:1707-1715, 1998)。MMP−1は、他のMMPと同様に、細胞外マトリックスの再構築に関係しており、これは傷害に続いて、または血管間細胞移動の間に起こりうる。MMP−1は、遊離またはその天然阻害因子であるTIMP−1との複合体のいずれかの形態で血流中で見出される。MMP−1は、血漿中で通常<25ng/mlの濃度で見出される。ACSに関係したMMP−1の血清または血漿濃度変化についての結論的な公表された研究はない。しかし、MMP−1は、アテローム硬化症プラークの肩領域で見出され、これは最も破裂しやすい領域であり、アテローム硬化症プラークの不安定化に関係しうる(Johnson, J.L. et al., Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 18:1707-1715, 1998)。さらに、MMP−1は、心筋再灌流傷害の病因に関連する(Shibata, M. et al., Angiology 50:573-582, 1999)。血清MMP−1は、マスト細胞の分解を誘導する炎症性状態で上昇しうる。血清MMP−1濃度は、関節炎および全身性エリテマトーデスの患者で上昇する(Keyszer, G. et al., Z Rheumatol 57:392-398, 1998; Keyszer, G. J. Rheumatol. 26:251-258, 1999)。血清MMP−1は、前立腺癌の患者でも上昇し、その上昇の度合いは、腫瘍の転移の可能性に対応する(Baker, T. et al., Br. J. Cancer 70:506-512, 1994)。MMP−1の血清濃度は、他の型の癌の患者においても上昇する。血清MMP−1は、ヘモクロマトーシスの患者および慢性ウイルス性肝炎の患者で減少し、ここではその濃度が重篤度に反比例している(George, D.K. et al., Gut 42:715-720, 1998; Murawaki, Y. et al., J. Gastroenterol. Hepatol. 14:138-145, 1999)。MMP−1は、マスト細胞の脱顆粒の間で放出され、おそらくアテローム硬化症のプラーク破裂の間で放出される。MMP−1濃度は、EDTA血漿または血清に比べヘパリンを加えた血漿では低く、希釈したサンプルは、希釈しないサンプルに比べELISAアッセイで高い濃度値を示し、タンパク質MMP阻害因子またはマトリックス成分の阻害効果の減少によるものと考えられる(Lein, M. et al., Clin. Biochem. 30:491-496, 1997)。血清MMP−1は、AMIに続く最初の4日間で減少し、その後増加し、AMI発症の2週間後に最大濃度に達した(George, D.K. et al., Gut 42:715-720, 1998)。
【0080】
マトリックスメタロプロテイナーゼ−2(MMP−2)は、ゼラチナーゼAとも呼ばれ、不活性な72kDaの前駆体として合成される、66kDaの亜鉛およびカルシウム結合プロテイナーゼである。成熟MMP−2は、I型ゼラチン並びにIV、V、VIIおよびX型コラーゲンを切断する。MMP−2は、血管平滑筋細胞、マスト細胞、マクロファージ由来泡沫細胞、Tリンパ球、および内皮細胞等の種々の細胞により合成される(Johnson, J.L. et al., Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 18:1707-1715, 1998)。MMP−2は、血漿中で通常その生理学的調整因子であるTIMP−2との複合体として見出される(Murawaki, Y. et al., J. Hepatol. 30:1090-1098, 1999)。MMP−2の正常血漿濃度は、<〜550ng/ml(8nM)である。MMP−2の発現は、アテローム硬化症の病巣の血管平滑筋細胞で上昇し、これはプラークが不安定の場合に血流に放出されうる(Kai, H. et al., J. Am. Coll. Cardiol. 32:368-372, 1998)。さらに、MMP−2は、プラークの不安定性および破裂に寄与するものとして関係する(Shah, P.K. et al., Circulation 92:1565-1569, 1995)。血清MMP−2濃度は、安定狭心症、不安定狭心症、およびAMIの患者で上昇し、不安定狭心症およびAMIでは、安定狭心症に比べその上昇は有意に高かった(Kai, H. et al., J. Am. Coll. Cardiol. 32:368-372, 1998)。トレッドミル運動試験後の安定狭心症の個体における血清MMP−2濃度の変化はなかった(Kai, H. et al., J. Am. Coll. Cardiol. 32:368-372, 1998)。血清および血漿MMP−2は、胃癌、幹細胞癌、肝硬変、尿路上皮癌、リューマチ様関節炎、および肺癌の患者で上昇する(Murawaki, Y. et al., J. Hepatol. 30:1090-1098, 1999; Endo, K. et al., Anticancer Res. 17:2253-2258, 1997; Gohji, K. et al., Cancer 78:2379-2387, 1996; Gruber, B.L. et al., Clin. Immunol. Immunopathol. 78:161-171, 1996; Garbisa, S. et al., Cancer Res. 52:4548-4549, 1992)。さらに、MMP−2は、血小板凝集の間に血小板細胞質ゾルから細胞外空間にも転移しうる(Sawicki, G. et al., Thromb. Haemost. 80:836-839, 1998)。MMP−2は、不安定狭心症およびAMIの個体の血清で入院時に上昇し、最大濃度は1.5μg/ml(25nM)に近づいた(Kai, H. et al., J. Am. Coll. Cardiol. 32:368-372, 1998)。血清MMP−2濃度は、不安定狭心症およびAMIの双方において発症の1〜3日後に最大となり、1週間後に正常に戻り始めた(Kai, H. et al., J. Am. Coll. Cardiol. 32:368-372, 1998)。
【0081】
マトリックスメタロプロテイナーゼ−3(MMP−3)は、ストメリシン−1とも呼ばれ、不活性な60kDaの前駆体として合成される45kDaの亜鉛およびカルシウム結合プロテイナーゼである。成熟MMP−3は、プロテオグリカン、フィブリネクチン、ラミニン、およびIV型コラーゲンを切断するが、I型コラーゲンを切断しない。MMP−3は、平滑筋細胞、マスト細胞、マクロファージ由来泡沫細胞、Tリンパ球、および内皮細胞等の種々の細胞により合成される(Johnson, J.L. et al., Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 18:1707-1715, 1998)。MMP−3は、他のMMPと同様に、細胞外マトリックスの再構築に関係しており、これは傷害に続いて、または血管間細胞移動の間に起こりうる。MMP−3は、血漿中で通常<125ng/mlの濃度で見出される。血清MMP−3濃度も年齢とともに増加することが示され、男性における濃度は、女性よりも約2倍高い(Manicourt, D.H. et al., Arthritis Rheum. 37:1774-1783, 1994)。ACSに関係したMMP−3の血清または血漿濃度変化についての結論的な公表された研究はない。しかし、MMP−3は、アテローム硬化症プラークの肩領域で見出され、これは最も破裂しやすい領域であり、アテローム硬化症プラークの不安定化に関係しうる(Johnson, J.L. et al., Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 18:1707-1715, 1998)。従って、MMP−3濃度は、不安定狭心症のアテローム硬化症のプラーク破裂の結果として上昇しうる。血清MMP−3は、マスト細胞の脱顆粒を誘導する炎症状態で上昇しうる。血清MMP−3濃度は、関節炎および全身性エリテマトーデスの患者で上昇する(Zucker, S. et al. J. Rheumatol. 26:78-80, 1999; Keyszer, G. et al., Z Rheumatol. 57:392-398, 1998; Keyszer, G. et al. J. Rheumatol. 26:251-258, 1999)。血清MMP−3は、前立腺および尿路上皮の癌並びに糸球体腎炎の患者でも上昇する(Lein, M. et al., Urologe A 37:377-381, 1998; Gohji, K. et al., Cancer 78:2379-2387, 1996; Akiyama, K. et al., Res. Commun. Mol. Pathol. Pharmacol. 95:115-128, 1997)。MMP−3の血清濃度は、他の型の癌の患者でも上昇しうる。血清MMP−3は、ヘモクロマトーシスの患者で減少する(George, D.K. et al., Gut 42:715-720, 1998)。
【0082】
マトリックスメタロプロテイナーゼ−9(MMP−9)は、ゼラチナーゼBとも呼ばれ、不活性な92kDaの前駆体として合成される84kDaの亜鉛およびカルシウム結合プロテイナーゼである。成熟MMP−9は、IおよびV型ゼラチン、並びにIVおよびV型コラーゲンを切断する。MMP−9は、モノマー、ホモダイマー、および25kDaのα2−ミクログロブリン−関連タンパク質とのヘテロダイマーとして存在する(Triebel, S. et al., FEBS Lett. 314:386-388, 1992)。MMP−9は、種々の細胞型により、最も顕著には好中球により合成される。MMP−9の正常血漿濃度は、<35ng/ml(400pM)である。MMP−9の発現は、アテローム硬化症病巣の血管平滑筋細胞で上昇し、これはプラークが不安定の場合に血流に放出されうる(Kai, H. et al., J. Am. Coll. Cardiol. 32:368-372, 1998)。さらに、MMP−9は、ACSの発生に病原の役割を有しうる(Brown, D.L. et al., Circulation 91:2125-2131, 1995)。血漿MMP−9濃度は、不安定狭心症およびAMIの患者で有意に上昇するが、安定狭心症では上昇しない(Kai, H. et al., J. Am. Coll. Cardiol. 32:368-372, 1998)。AMIの患者での上昇は、これらの個体が不安定狭心症を患っていたことも示しうる。MMP−9の血漿濃度の上昇は、不安定狭心症がAMIに比べ大きいであろうが、これらの違いは統計的に有意ではないであろう。安定狭心症の患者のトレッドミル運動試験後の血漿MMP−9濃度の有意な変化はなかった(Kai, H. et al., J. Am. Coll. Cardiol. 32:368-372, 1998)。血漿MMP−9は、リューマチ性関節炎、敗血症性ショック、巨細胞性動脈炎および種々の癌腫の個体で上昇する(Gruber, B.L. et al., Clin. Immunol. Immunopathol. 78:161-171, 1996; Nakamura, T. et al., Am. J. Med. Sci. 316:355-360, 1998; Blankaert, D. et al., J. Acquir. Immune Defic. Syndr. Hum. Retrovirol. 18:203-209, 1998; Endo, K. et al.. Anticancer Res. 17:2253-2258, 1997; Hayasaka, A. et al., Hepatology 24:1058-1062, 1996; Moore, D.H. et al., Gynecol. Oncol. 65:78-82, 1997; Sorbi, D. et al., Arthritis Rheum. 39:1747-1753, 1996; Iizasa, T. et al., Clin., Cancer Res.. 5:149-153, 1999)。さらに、血漿MMP−9濃度は、脳卒中および脳出血で上昇しうる(Mun-Bryce, S. and Rosenberg, G.A., J. Cereb. Blood Flow Metab. 18:1163-1172, 1998; Romanic, A.M. et al., Stroke 29:1020-1030, 1998; Rosenberg, G.A., J. Neurotrauma 12:833-842, 1995)。MMP−9は、不安定狭心症およびAMIの個体の血清で入院時に上昇し、最大濃度は150ng/ml(1.7nM)に近づいた(Kai, H. et al., J. Am. Coll. Cardiol. 32:368-372, 1998)。血清MMP−9濃度は、不安定狭心症の患者の入院時に最高であり、その濃度は処置後徐々に減少し、発症の1週間以上後にベースラインに近づいた(Kai, H. et al., J. Am. Coll. Cardiol. 32:368-372, 1998)。
【0083】
(iv)心筋傷害の他の非特異的マーカー
炎症性反応の活性化は、ACSの初期段階で明白であろう。この点において、炎症および急性期反応物の非特異的マーカーの循環系濃度の測定は、ACSの個体および発生するACSの危険性を有する個体を同定するために用いられるであろう。炎症および急性期反応物に関係するこのようなマーカーの例には、C−反応性タンパク質、インターロイキン−1β、インターロイキン−1レセプターアンタゴニスト、インターロイキン−6、単球走化性タンパク質−1、溶解性細胞間接着分子−1、溶解性血管細胞接着分子−1、腫瘍壊死因子α、キャスパーゼ−3およびヘモグロビンα2がある。
【0084】
C−反応性タンパク質(CRP)は、宿主の防御に関連する21kDaのサブユニットを有するホモ5量体のCa2+結合急性期タンパク質である。CRPは、微生物の膜の一般的な構成成分であるホスホリルコリンに選択的に結合する。ホスホリルコリンは、動物細胞膜でも見出されるが、CRPと反応しうる形態では存在しない。CRPのホスホリルコリンとの相互作用は、補体カスケードを活性化するのと同様に、細菌の凝集反応およびオプソニン作用を促進し、これらすべては細菌のクリアランスに関連する。さらに、CRPは、DNAおよびヒストンと相互作用でき、これはCRPが損傷細胞から循環系に放出された核物質のスカベンジャーであることを示す(Robey, F.A. et al., J. Biol. Chem. 259:7311-7316, 1984)。CRP合成はIL−6により誘導され、IL−1が肝臓洞様血管のクップファー細胞によるIL−6の合成の引き金となりうるため、IL−1により間接的に誘導される。CRPの正常血漿濃度は、健康な集団の90%では<3μg/ml(30nM)であり、健康な個体の99%では<10μg/ml(100nM)である。血漿CRP濃度は、比濁法またはELISAにより測定できる。CRPの血漿濃度は、AMIおよび不安定狭心症の患者で有意に上昇するが、安定狭心症では上昇しない(Biasucci, L.M. et al., Circulation 94:874-877, 1996; Biasucci, L.M. et al., Am. J. Cardiol. 77:85-87, 1996; Benamer, H. et al., Am. J. Cardiol. 82:845-850, 1998; Caligiuri, G. et al., J. Am. Coll. Cardiol. 32:1295-1304, 1998; Curzen, N.P. et al., Heart 80:23-27, 1998; Dangas, G. et al., Am. J. Cardiol. 83:583-5, A7, 1999)。CRPは、変異体(variant)または消散型(resolving)の不安定狭心症の個体の血漿でも上昇するが、相反した結果が報告されている(Benamer, H. et al., Am. J. Cardiol. 82:845-850, 1998; Caligiuri, G. et al., J. Am. Coll. Cardiol. 32:1295-1304, 1998)。CRPは、AMIまたは不安定狭心症の患者の結果を予測するためには有用ではないであろう(Curzen, N.P. et al., Heart 80:23-27, 1998; Rebuzzi, A.G. et al., Am. J. Cardiol. 82:715-719, 1998; Oltrona, L. et al., Am. J. Cardiol. 80:1002-1006, 1997)。CRPの濃度は、感染、手術、外傷、および脳卒中のような急性期反応を顕在化させうるいずれの状態の個体でも、血漿において上昇するであろう。CRPは、合成直後に血流に放出される分泌性タンパク質である。CRP合成は、IL−6により調整され、血漿CRP濃度は、刺激の6時間以内に有意に上昇する(Biasucci, L.M. et al., Am. J. Cardiol. 77:85-87, 1996)。血漿CRP濃度は、刺激後約50時間で最大となり、血流において約19時間の半減期で減少し始める(Biasucci, L.M. et al., Am. J. Cardiol. 77:85-87, 1996)。他の研究により、不安定狭心症の個体の血漿CRP濃度が確認された(Biasucci, L.M. et al., Circulation 94:874-877, 1996)。CRPの血漿濃度は、ACSの個体で100μg/ml(1μM)に近づく(Biasucci, L.M. et al., Circulation 94:874-877, 1996; Liuzzo, G. et al., Circulation 94:2373-2380, 1996)。CRPは、急性期反応の特異的マーカーである。CRPの上昇は、AMIおよび不安定狭心症の個体の血漿で同定され、アテローム硬化症のプラーク破裂または心臓組織傷害と関係した急性期反応の活性化の結果として最もあり得ることである。CRPは、ACSに極めて非特異的なマーカーであり、血漿におけるCRP濃度の上昇は、免疫系の活性化を伴う状態に関連せずに起こるであろう。ACSに対する非特異性のその高い度合いにもかかわらず、心臓組織傷害に特異的な他のマーカーとともに使用された場合に、CRPは不安定狭心症およびAMIの同定に有用であろう。血漿は、高濃度のCRPを有し、報告された健康な個体の血液中のCRP濃度には、高い変動性がある。明らかに健康な個体の血漿のCRP濃度の上限を決定するためには、競合イムノアッセイが最も可能性が高いが、様々な血漿サンプルについての単一のアッセイを用いたさらなる研究が必要である。
【0085】
インターロイキン−1β(IL−1β)は、急性期反応に関連する17kDaの分泌性前炎症性サイトカインであり、多くの疾患の病原性媒介物である。IL−1βは、通常マクロファージおよび上皮細胞により産生される。IL−1βは、アポトーシスが進行中の細胞からも放出される。IL−1βの正常血清濃度は、<30pg/ml(1.8pM)である。ACSの個体のIL−1βの血漿濃度の潜在的上昇についての結論的な研究はなく、おそらくアッセイの感度限界またはACS発症直後の血流からのIL−1βのクリアランスによるものであろう。IL−1βは急性期反応の早期の関係物であるので、理論的には、IL−1βは不安定狭心症およびAMIにおけるCRPのような他の急性期反応タンパク質に比べ早期に上昇するであろう。さらに、IL−1βは、アポトーシスが進行中の細胞から放出され、これは虚血の早期の段階で活性化されうる。この点において、ACSに関係した血漿IL−1β濃度の上昇については、高感度のアッセイを用いたさらなる研究が必要である。血漿IL−1β濃度の上昇は、外傷および感染のような前炎症性状態における急性期反応の活性化に関係する。IL−1βは、4時間に続く5分間の2相生理学的半減期を有する(Kudo, S. et al., Cancer Res. 50:5751-5755, 1990)。IL−1βは、炎症性反応またはアポトーシスの活性化により細胞外環境に放出される。AMIおよび不安定狭心症エピソード後のわずかな短い時間だけIL−1βが上昇する可能性があり、入院時のACSの患者から採取されたほとんどの血液サンプルが、発作に続くIL−1β上昇の時期の範囲外となる。
【0086】
インターロイキン−1レセプターアンタゴニスト(IL−1ra)は、肝細胞、上皮細胞、単球、マクロファージ、および好中級において優勢的に発現する17kDaのIL−1ファミリーの構成員である。IL−1raは、選択的スプラシングを通じて産生される細胞内および細胞外形態の両方を有する。IL−1raは、生理的IL−1活性の調整に関係すると考えられている。IL−1raは、IL−1様の生理的活性を有していないが、IL−1αおよびIL−1βの結合を遮蔽してそれらの生化学的活性を阻害して、IL−1βと同様の親和性によりT細胞および繊維芽細胞のIL−1レセプターに結合することができる(Stockman, B.J. et al., Biochemistry 31:5237-5245, 1992; Eisenberg, S.P. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 88:5232-5236, 1991; Carter, D.B. et al., Nature 344:633-638, 1990)。IL−1raは、通常血漿中でIL−1に比べ高濃度で存在し、IL−1ra濃度がIL−1に比べて疾患の重篤度とより相関していることが示された(Biasucci, L.M. et al., Circulation 99:2079-2084, 1999)。さらに、IL−1raが急性期タンパク質であるという証拠がある(Gabay, C. et al., J. Clin. Invest. 99:2930-2940, 1997)。IL−1raの正常血漿濃度は、<200pg/ml(12pM)である。IL−1raの血漿濃度は、AMIおよびAMI、死亡、または難治性狭心症に進行する不安定狭心症の患者で上昇する(Biasucci, L.M. et al., Circulation 99:2079-2084, 1999; Latini, R. et al., J. Cardiovasc. Pharmacol. 23:1-6, 1994)。さらに、IL−1raは、合併症を伴わないAMIと比較して重篤なAMIで有意に上昇する(Latini, R. et al., J. Cardiovasc. Pharmacol. 23:1-6, 1994)。これは、IL−1raが不安定狭心症およびAMIにおいてACSの重篤度の有用なマーカーであり得ることを示す。IL−1raの血漿濃度の上昇は、感染、外傷、および関節炎等の炎症性または急性期反応の活性化を伴ういずれの状態にも関係する。IL−1raは、前炎症性状態の血流に放出され、急性期反応の関連物としても放出されうる。血流からのIL−1raのクリアランスの主要な起点は、腎臓および肝臓であると思われる(Kim, D.C. et al., J. Pharm. Sci. 84:575-580, 1995)。IL−1ra濃度は、不安定狭心症の個体の血漿で発症の24時間以内に上昇し、これらの上昇は発症の2時間以内でさえも明白であろう(Biasucci, L.M. et al., Circulation 99:2079-2084, 1999)。不安定狭心症が重度に進行した患者では、IL−1raの血漿濃度は、入院時の濃度に比べ発症の48時間後の方が高いが、一方平穏に進行した患者では、その濃度が減少した(Biasucci, L.M. et al., Circulation 99:2079-2084, 1999)。さらに、不安定狭心症に関係したIL−1raの血漿濃度は、1.4ng/ml(80pM)に近づきうる。IL−1raは、ACSの重篤度の有用なマーカーであろう。これはACSの特異的マーカーではないが、IL−1raの血漿濃度の変化は、疾患の重篤度に関連していると思われる。さらに、これは、前炎症性状態においてIL−1の放出と連動してまたはその直後に放出されやすく、IL−1に比べ高い濃度で見出される。これは、IL−1raがIL−1活性の有用な間接的なマーカーであり得ることを示し、IL−1はIL−6の産生を顕在化させるものである。従って、IL−1raは、不安定狭心症およびAMIの重篤度を等級付けするのみならず、IL−6濃度が有意に上昇する前に、急性期反応の早期の段階を同定するのに有用であろう。
【0087】
インターロイキン−6(IL−6)は、ヘマトポエチンファミリーの前炎症性サイトカインである20kDaの分泌性タンパク質である。IL−6は、急性期の反応物であり、接着分子等の種々のタンパク質の合成を刺激する。その主要な機能は、肝臓タンパク質の急性期産生を媒介することであり、その合成はサイトカインIL−1により誘導される。IL−6は、通常マクロファージおよびTリンパ球により産生される。IL−6の正常血清濃度は、<3pg/ml(0.15pM)である。IL−6の血漿濃度は、AMIおよび不安定狭心症の患者で上昇し、AMIにおいて大きい度合いである(Biasucci, L.M. et al., Circulation 94:874-877, 1996; Manten, A. et al., Cardiovasc. Res. 40:389-395, 1998; Biasucci, L.M. etal., Circulation 99:2079-2084, 1999)。IL−6は、安定狭心症の患者の血漿では有意には上昇しない(Biasucci, L.M. et al., Circulation 94:874-877, 1996; Manten, A. et al., Cardiovasc. Res. 40:389-395, 1998)。さらに、IL−6濃度は、重篤な進行の不安定狭心症患者の血漿では、発症の48時間以降に増加するが、平穏の進行のものでは減少する(Biasucci, L.M. et al., Circulation 99:2079-2084, 1999)。これは、IL−6が疾患の進行の有用な指標となりうることを示している。IL−6の血漿上昇は、外傷、感染、または急性期反応を顕在化させる他の疾患のようないずれの非特異的前炎症性状態にも関係する。IL−6は、血流中で4.2時間の半減期を有し、AMIおよび不安定狭心症に続いて上昇する(Manten, A. et al., Cardiovasc. Res. 40:389-395, 1998)。IL−6の血漿濃度は、AMI発症の8〜12時間以内に上昇し、100pg/mlに近づきうる。不安定狭心症の患者のIL−6の血漿濃度は、発症の72時間後に最大濃度に上昇し、おそらく発作の重篤度によるものである(Biasucci, L.M. et al., Circulation 94:874-877, 1996)。IL−6は、ACSに関係した炎症の高感度のマーカーと思われる。しかし、これはACSに特異的ではなく、ACSの危険因子と見なされる種々の状態で上昇しうる。しかし、IL−6は、AMIまたは不安定狭心症の重篤度を同定するのに有用であり、医師が疾患の進行についてこれらの患者を詳しくモニターすることを可能にしうる。さらに、IL−6は、不安定狭心症およびAMIを安定狭心症から識別するのに有用であろう。
【0088】
腫瘍壊死因子α(TNFα)は、急性期反応に関連した17kDaの分泌性前炎症性サイトカインであり、多くの疾患の病原性の媒介物である。TNFαは、通常マクロファージおよびナチュラルキラー細胞により産生される。TNFαの正常血清濃度は、40pg/ml(2pM)である。TNFαの血漿濃度は、AMIの患者で上昇し、不安定狭心症の患者でわずかに上昇する(Li, D. et al., Am. Heart J. 137:1145-1152, 1999; Squadrito, F. et al., Inflamm. Res. 45:1419, 1996; Latini, R. et al., J. Cardiovasc. Pharmacol. 23:1-6, 1994; Carlstedt, F. et al., J. Intern. Med. 242:361-365, 1997)。TNFαの血漿濃度の上昇は、外傷、脳卒中、および感染等のいずれの前炎症性状態にも関係する。TNFαは、血流中で約1時間の半減期を有し、症状の発症直後に循環系から除去されうることを示す。AMIの患者では、TNFαは、胸部痛の後4時間で上昇し、発症の48時間以内に正常濃度に徐々に減少する(Li, D. et al., Am. Heart J. 137:1145-1152, 1999)。AMI患者の血漿中のTNFαの濃度は、300pg/ml(15pM)を超えた(Squadrito, F. et al., Inflamm. Res. 45:14-19, 1996)。
【0089】
溶解性細胞間接着分子(sICAM−1)は、CD54とも呼ばれ、白血球のリクルートメントおよび移動の間の白血球の抗原存在細胞および内皮細胞への結合を促進する、85〜110kDaの細胞表面結合免疫グロブリン様インテグリンリガンドである。sICAM−1は、血管内皮、造血幹細胞および、非造血幹細胞により通常産生され、これは腸および表皮で見出されるものである。sICAM−1は、細胞死の間またはタンパク質分解活性の結果として細胞表面から放出されうる。sICAM−1の正常血漿濃度は、約250ng/ml(2.9nM)である。sICAM−1の血漿濃度は、AMIおよび不安定狭心症の患者で有意に上昇するが、安定狭心症では上昇しない(Pellegatta, F. et al., J. Cardiovasc. Pharmacol. 30:455-460, 1997; Miwa, K. et al., Cardiovasc. Res. 36:37-44, 1997; Ghaisas, N.K. et al., Am. J. Cardiol. 80:617-619, 1997; Ogawa, H. et al., Am. J. Cardiol. 83:38-42, 1999)。さらに、ICAM−1は、アテローム硬化症の病巣および病巣の形成を受けやすい範囲で発現し、このためこれはプラーク破裂により血流に放出されうる(Iiyama, K. et al., Circ. Res. 85:199-207, 1999; Tenaglia, A.N. et al., Am. J. Cardiol. 79:742-747, 1997)。sICAM−1の血漿濃度の上昇は、虚血性脳卒中、頭部の外傷、アテローム硬化症、癌、子癇前症、多発性硬化症、嚢胞性線維症、および他の非特異的炎症性状態に関係する(Kim, J.S., J. Neurol. Sci. 137:69-78, 1996; Laskowitz, D.T. et al., J. Stroke Cerebrovasc. Dis. 7:234-241, 1998)。sICAM−1の血漿濃度は、AMIおよび不安定狭心症の急性段階の間で上昇する。血漿sICAM−1の上昇は、AMI発症の9〜12時間以内にその最大に達し、24時間以内に正常濃度に戻る(Pellegatta, F. et al., J. Cardiovasc. Pharmacol. 30:455-460, 1997)。sICAMの血漿濃度は、AMIの患者で700ng/ml(8nM)に近づく(Pellegatta, F. et al., J. Cardiovasc. Pharmacol. 30:455-460, 1997)。sICAM−1は、AMIおよび不安定狭心症の個体の血漿で上昇するが、これらの疾患に特異的ではない。しかし、血漿上昇が安定狭心症に関係しないため、これは安定狭心症からのAMIおよび不安定狭心症の識別に有用なマーカーであろう。興味深いことに、ICAM−1は、アテローム硬化症プラーク中に存在し、プラーク破裂により血流に放出されうる。従って、sICAMは、炎症のみならず、ACSに関係したプラーク破裂のマーカーとしても有用であろう。
【0090】
血管細胞接着分子(VCAM)は、CD106とも呼ばれ、リンパ球のリクルートメントの間のBリンパ球および発生中のTリンパ球の抗原存在細胞への結合を促進する、100〜110kDaの細胞表面結合免疫グロブリン様インテグリンリガンドである。VCAMは、通常内皮細胞により産生され、これは血管およびリンパ管、心臓、並びに他の体腔の内側を覆うものである。VCAM−1は、細胞死の間またはタンパク質分解活性の結果として細胞表面から放出されうる。sVACMの正常血清濃度は、約650ng/ml(6.5nM)である。sVCAM−1の血漿濃度は、AMI、不安定狭心症、および安定狭心症の患者でわずかに上昇する(Mulvihill, N. et al., Am. J. Cardiol. 83:1265-7, A9, 1999; Ghaisas, N.K. et al., Am. J. Cardiol. 80:617619, 1997)。しかし、sVCAM−1は、アテローム硬化症の病巣で発現し、その血漿濃度は、アテローム硬化症の範囲に関連づけられる(Iiyama, K. et al., Circ. Res. 85:199-207, 1999; Peter, K. et al., Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 17:505-512, 1997)。sVCAM−1の血漿濃度の上昇は、虚血性脳卒中、癌、糖尿病、子癇前症、血管傷害、および他の非特異的炎症性状態に関係する(Bitsch, A. et al., Stroke 29:2129-2135, 1998; Otsuki, M. et al., Diabetes 46:20962101, 1997; Banks, R.E. et al., Br. J. Cancer 68:122-124, 1993; Steiner, M. et al., Thromb. Haemost. 72:979-984, 1994; Austgulen, R. et al., Eur. J. Obstet. Gynecol. Reprod. Biol. 71:53-58, 1997)。
【0091】
単球走化性タンパク質−1(MCP−1)は、単球および好塩基球を引き寄せるが、好中級および好酸球を引き寄せない10kDaの走化性因子である。MCP−1は、通常モノマーおよびホモダイマーの形態の間で平衡して見出され、通常単球および血管内皮細胞中で産生され、かつ分泌される(Yoshimura, T. et al., FEBS Lett. 244:487-493, 1989; Li, Y.S. et al., Mol. Cell. Biochem. 126:61-68, 1993)。MCP−1は、乾癬、リューマチ性関節炎、およびアテローム硬化症等の単球浸潤を伴う種々の疾患の病原と関係する。血漿中のMCP−1の正常濃度は、<0.1ng/mlである。MCP−1の血漿濃度は、AMI患者で上昇し、不安定狭心症の患者の血漿ではおそらく上昇するが、安定狭心症に関係しては上昇しない(Soejima, H. et al., J. Am. Coll. Cardiol. 34:983-988, 1999; Nishiyama, K. et al., Jpn. Circ. J. 62:710-712, 1998; Matsumori, A. et al., J. Mol. Cell. Cardiol. 29:419-423, 1997)。興味深いことに、MCP−1は、アテローム硬化症の間で動脈血管壁への単球のリクルートメントにも関係しうる。MCP−1の血清濃度の上昇は、アルコール性肝臓疾患、間隙性肺疾患、敗血症、および全身性エリテマトーデス等の炎症に関係する種々の状態に関係する(Fisher, N.C. et al., Gut 45:416-420, 1999; Suga, M. et al., Eur. Respir. J. 14:376-382, 1999; Bossink, A.W. et al., Blood 86:3841-3847, 1995; Kaneko, H. et al. J. Rheumatol. 26:568-573, 1999)。MCP−1は、単球および内皮細胞の活性化により血流中に放出される。AMIの患者からの血漿中のMCP−1の濃度は、1ng/ml(100pM)に近づくことが報告され、1ヶ月間上昇したまま維持されうる(Soejima, H. et al., J. Am. Coll. Cardiol. 34:983-988, 1999)。ACSとの関連でMCP−1の血流への放出および血流からのクリアランスの動態は、現在不明である。MCP−1は、単球の移動を伴う前炎症性状態の存在の特異的マーカーである。MCP−1は、ACSに特異的ではないが、伝えるところによればその濃度がAMIの患者の血漿中で上昇する。さらに、MCP−1濃度は、不安定狭心症または安定狭心症の患者の血漿では上昇せず、これはMCP−1がAMIを不安定および安定狭心症から区別するのに有用であろうことを示す。
【0092】
キャスパーゼ−3は、CPP−32、YAMA、およびアポパインとも呼ばれ、細胞アポトーシスの間で活性化されるインターロイキン−1β転換酵素(ICE)様細胞内システインプロテイナーゼである。キャスパーゼ−3は、アポトーシス誘導の間にタンパク質分解により20kDaと11kDaのサブユニットのヘテロダイマーに活性化される、不活性の32kDaの前駆体として存在する(Fernandes-Alnemri, T. et al., J. Biol. Chem. 269:30761-30764, 1994)。その細胞基質には、ポリ(ADPリボース)ポリメラーゼ(PARP)およびステロール調整因子結合タンパク質(SREBPs)が含まれる(Liu, X. et al., J. Biol. Chem. 271:13371-13376, 1996)。キャスパーゼ−3の正常血漿濃度は、不明である。ACSに関係したキャスパーゼ−3の血漿濃度の変化に関する公表された研究はない。虚血および低酸素症に関係した心臓筋細胞のアポトーシス誘導の仮説を支持する増加する量の証拠がある(Saraste, A., Herz 24:189-195, 1999; Ohtsuka, T. et al., Coron. Artery Dis. 10:221-225, 1999; James, T.N., Coron. Artery Dis. 9:291-307, 1998; Bialik, S. et al., J. Clin. Invest. 100:1363-1372, 1997; Long, X. et al., J. Clin. Invest. 99:2635-2643, 1997)。血漿キャスパーゼ−3濃度の上昇は、アポトーシスを伴ういずれの生理的事象にも関係しうる。アポトーシスが、運動の間およびその後の骨格筋中で、および大脳虚血で誘導されることを示唆する証拠がある(Carraro, U. and Franceschi, C., Aging (Milano) 9:19-34, 1997; MacManus, J.P. et al., J. Cereb. Blood Flow Metab. 19:502-510, 1999)。AMIの患者の末梢血液中でのキャスパーゼ−3の発見に関する公表された報告がないので、心臓細胞死のマーカーとしてのキャスパーゼ−3の有用性は、現在不明である。興味深いことに、虚血誘導アポトーシスは、それを他の形態のアポトーシスから識別する特徴を有しうるが、キャスパーゼ−3の誘導は、すべてのアポトーシス経路に共通である。これらのマーカーのすべてが血漿の膜の完全性の損失に続いて放出されるので、キャスパーゼ−3は心臓細胞死の他の細胞質ゾルのマーカーより有用であるとは証明されないであろう。アポトーシスを受けている細胞が、壊死の特徴である、膜の完全性を失うということがないことを示唆する証拠もあるが、むしろ、これらは最終的にはマクロファージおよび他の近接細胞により摂取される完全な膜を有するアポトーシス体を形成する(Saraste, A., Herz 24:189-195, 1999; James, T.N., Coron. Artery Dis. 9:291-307, 1998)。この点において、細胞内容物の放出は、壊死の結果であり、キャスパーゼ−3は、特にアポトーシスの結果としての、心臓細胞死の同定に適したマーカーではないであろう。
【0093】
ヘモグロビン(Hb)は、赤血球に見出される酸素運搬鉄含有球状タンパク質である。これは、2つのグロブリンユニットのヘテロダイマーである。α2γ2は胎児Hbと呼ばれ、α2β2は成人HbAと呼ばれ、そしてα2δ2は成人HbA2と呼ばれる。ヘモグロビンの90〜95%はHbAであり、α2グロブリン鎖はすべてのHb型で、鎌状赤血球ヘモグロビンでも、見出される。Hbは、身体全体にわたり細胞に酸素を運搬する責任を有する。Hbα2は、通常は血清中では検出されない。ACSパネルでのHbα2の有用性は、溶血の範囲を決定すること、および赤血球起源タンパク質の、測定された血清濃度への寄与をもたらすことにあろう。溶血の許容濃度は、赤血球に存在する血清マーカーの測定で確立されるべきものである。
【0094】
ヒトリポカリン型プロスタグランジンDシンターゼ(hPDGS)は、β−トレースとも呼ばれ、プロスタグランジンHからのプロスタグランジンD2の形成を触媒する30kDaの糖タンパク質である。明らかに健康な個体のhPDGS濃度の上限は、約420ng/mlであると報告されている(欧州特許公開番号EP0999447A1)。hPDGSの上昇は、不安定狭心症および脳梗塞の患者からの血液中で同定された(欧州特許公開番号EP0999447A1)。さらに、hPDGSは、虚血性エピソードの有用なマーカーと思われ、hPDGSの濃度は、経皮的経管的冠状動脈形成(PTCA)の後の狭心症の患者において経時的に減少することが見出され、虚血としてのhPDGS濃度減少が解決することを示している(欧州特許公開番号EP0999447A1)。
【0095】
好ましい態様として、心筋傷害の1またはそれ以上の特異的マーカーは、ACSの診断パネルを作成するために、心筋傷害の1またはそれ以上の非特異的マーカーと組み合わせられる。さらに、本発明は、このような複数のマーカーの成分を決定する方法を提供する。このようなパネルが組み立てられると、種々のマーカーそれぞれの存在または濃度が1またはそれ以上の患者サンプルにおいて決定され、そして任意にそれぞれのマーカーの診断濃度とまたは正常濃度と比較される。
【0096】
アッセイ測定方策
本発明のマーカーの検出および分析のために、非常に多くの方法および装置が当業者によく知られている。患者試験サンプルにおけるポリペプチドまたはタンパク質に関しては、イムノアッセイの装置および方法がしばしば用いられる。例えば、米国特許6,143,576; 6,113,855; 6,019,944; 5,985,579; 5,947,124; 5,939,272; 5,922,615; 5,885,527; 5,851,776; 5,824,799; 5,679,526; 5,525,524;および5,480,792を参照のこと。これらのそれぞれは、すべての表、図面および請求の範囲を含めてその全体を、引用することにより本明細書に取り込まれる。これらの装置および方法は、種々のサンドイッチ、競合、または非競合のアッセイ形態においてラベル化された分子に利用でき、目的とする分析物の存在または量と関連するシグナルを発生する。さらに、バイオセンサーおよびオプティカルイムノアッセイのような、ある特定の方法および装置は、ラベル化された分子を必要とせずに分析物の存在または量を決定するために使用することができる。米国特許5,631,171および 5,955,377を参照のこと。これらのそれぞれは、すべての表、図面および請求の範囲を含めてその全体を、引用することにより本明細書に取り込まれる。
【0097】
好ましくは、マーカーはイムノアッセイを用いて分析されるが、他の方法も当業者にはよく知られている(例えば、マーカーRNA濃度の測定)。マーカーの存在または量は、一般的には、各々のマーカーに特異的な抗体を用いて特異的結合を検出することにより決定される。例えば、酵素結合イムノアッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIAs)、競合結合アッセイ等の、いずれの適当なイムノアッセイも利用しうる。マーカーへの抗体の特異的免疫的結合は、直接的または間接的に検出できる。直接ラベルには、抗体に結合した、蛍光若しくは発光タグ、金属、染料、放射性核種等が含まれる。間接ラベルには、アルカリホスファターゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ等のような、この技術分野でよく知られた種々の酵素が含まれる。
【0098】
マーカーに特異的な固定化抗体の使用も、本発明により企図されたものである。抗体は、磁気またはクロマトグラフィーのマトリックス粒子、(マイクロタイターウェルのような)アッセイ場所の表面、(プラスチック、ナイロン、紙のような)固体基質物質の断片等のような、種々の固体担体上で固定化される。アッセイ片は、抗体や固体担体上に配列した複数の抗体を被覆することにより調製される。この片は、その後試験サンプル中に浸漬され、そして、洗浄および検出工程を通じて即座に処理され、着色した点のような測定可能なシグナルを発生させる。
【0099】
複数のマーカーの分析は、1つの試験サンプルで別個にまたは同時に実行されうる。いくつかのマーカーは、多数のサンプルの効率的な処理のために1つの試験に併合されうる。さらに、当業者は、同一の個体からの(例えば、経時的な時点での)多数のサンプルを試験することの価値を認識するであろう。一連のサンプルのこのような試験は、経時的なマーカー濃度の変化の同定を可能にするであろう。マーカー濃度の増加または減少は、マーカー濃度の変化の不存在と同様に、これらに限定されないが、事象の発症からのおおよその時間、救出可能な組織の存在および量、投薬治療の適切さ、再灌流や症状の消散により示されるような種々の治療効果、種々の型のACSの識別、事象の重篤度の同定、疾患の重篤度の同定、および将来の事象の危険性等の患者の結果の同定、を同定することを含む疾患の状態についての有用な情報を提供しうる。
【0100】
上述したマーカーからなるパネルは、ACSの診断若しくは予後およびACSの患者の管理に関連した適切な情報を提供するために構築されうる。このようなパネルは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15または20の個体のマーカーを用いて構築されうる。単一のマーカー、またはマーカーの多数のパネルを含むマーカーの部分集合の分析は、種々の臨床的環境において臨床的な感度または特異性を最適化することにより当業者により実行されうる。これらには、限定されないが、通院、緊急治療、危機治療、集中治療、監視室、入院患者、外来患者、医院、医療診療所、および健康診断環境が含まれる。さらに、当業者は、前述した環境の各々において臨床的感度および特異性を最適化するために、単一のマーカー、またはマーカーの多数のパネルを含むマーカーの部分集合を、診断閾値の調整と組み合わせて用いることができる。アッセイの臨床的感度は、アッセイが正確に予測する疾患を有するものの割合として定義され、アッセイの特異性は、アッセイが正確に予測する疾患を有しないものの割合により定義される(Tietz Textbook of Clinical Chemistry, 2nd edition, Carl Burtis and Edward Ashwood eds., W.B. Saunders and Company, p. 496)。
【0101】
なお、マーカーの分析は、種々の実際的な形態において実行されうる。例えば、マイクロタイタープレートやオートメーションの使用は、多数の試験サンプルの処理を容易にしうる。あるいは、単一のサンプルの形態は、例えば、通院移動または緊急室の環境において、適時の仕方で即座の処理および診断を促進するために構築される。
【0102】
他の態様として、本発明は、マーカーの分析のためのキットを提供する。このようなキットは、好ましくは、少なくとも1つの試験サンプルの分析のための装置および試薬並びにアッセイ実行のための指示書を含む。任意に、キットは、患者の診断または予後のためにマーカー濃度を変換する1またはそれ以上の方法を含みうる。
【0103】
【実施例】
実施例1 血液の採取
血液標本は、訓練した研究職員により採取された。サンプルは、既述のように採取され処理された。de Lemos et al., The prognostic value of B-type natriuretic peptide in patients with acute coronary syndromes(急性冠状動脈症候群の患者のB−型ナトリウム排泄増加性ペプチドの予後の価値)、 N Engl J Med 345:1014-21 (2001)を参照のこと。血漿サンプルは、クエン酸抗凝固剤中で採取され、採取から60分以内に研究現場において−20℃またはそれより冷たくして凍結された。標本は、TIMI小児病院心臓マーカーコア研究所(ボストン、マサチューセッツ州)にドライアイスを用いて輸送され、そこでは、これらは−70℃で保存された。OPUS−TIMI16試験の完了に続き、50/50の処置アームからのすべての血漿標本は、バイオサイトインコーポレーテッド(サンディエゴ、カリフォルニア州)にドライアイスを用いて輸送され、そこでアッセイが行われた。
【0104】
実施例2 生化学的分析
マーカーは、標準的なイムノアッセイ技術を用いて測定された。これらの技術には、タンパク質標的に特異的に結合する抗体の使用が含まれた。選択されたマーカーに対して誘導されたモノクローナル抗体は、N−ヒドロキシサクシニミドビオチン(NHS−ビオチン)を用いて、抗体当たり約5のNHS−ビオチン部分の割合で、ビオチン化された。そして、抗体−ビオチンコンジュゲートは、標準アビジン384ウェルマイクロタイタープレートのウェルに加えられ、プレートに結合していない抗体コンジュゲートは除去された。これは、マイクロタイタープレートの「抗マーカー」を形成した。同一のマーカーに対して誘導された他のモノクローナル抗体は、サクシニミジル4−[N−マレイミドメチル]−シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)およびN−サクシニミジル3−[2−ピリジルジチオ]プロピオネート(SPDP)(ピアース、ロックフォード、イリノイ州)を用いてアルカリホスファターゼにコンジュゲートされた。
【0105】
イムノアッセイは、TECANジェネシスRSP 200/8ワークステーションを用いて行われた。ビオチン化された抗体は、あらかじめアビジンで被覆されたマイクロタイタープレートのウェルにピペットで移され、60分間インキュベートされた。結合していない抗体を含む溶液は除去され、細胞は、150mMのNaCl、0.1%のアジ化ナトリウム、および0.02%のTween−20を含む20mMのホウ酸塩(pH7.42)からなる洗浄バッファーを用いて洗浄された。血漿サンプル(10μL)は、マイクロタイタープレートのウェルにピペットで移され、60分間インキュベートされた。そして、サンプルは取り出され、ウェルは洗浄バッファーにより洗浄された。そして、抗体−アルカリホスファターゼコンジュゲートがウェルに加えられ、さらに60分間インキュベートされ、その後、抗体コンジュゲートは取り除かれ、ウェルは洗浄バッファーにより洗浄された。基質(AttoPhos(登録商標)、プロメガ、マジソン、ウイスコンシン州)がウェルに加えられ、蛍光産物の形成速度は、患者サンプルのマーカーの濃度と関連づけされた。
【0106】
BNPのアッセイは、サイオスインコーポレーテッド (サニーヴェール、カリフォルニア州)から得たネズミ抗BNPモノクローナル抗体106.3を用いて行った。mAb106.3を分泌するハイブリドーマ細胞系は、FOX−NY細胞と、BSAにコンジュゲートされたヒトBNP1−32により免役されたBalb/cマウスからの脾臓細胞との融合により発生させた。第2のネズミ抗BNP抗体は、バイオサイトインコーポレーテッド(サンディエゴ、カリフォルニア州)により、既述(米国特許番号6,057,098)のように抗原ファージディスプレイにより、標準技術によりKLHにコンジュゲートしたヒトBNP抗原(サイオスインコーポレーテッド、サニーヴェール、カリフォルニア州;米国特許番号5,114,923)を用いて、産生された。ヒトBNP抗原は、アッセイの標準化のためにも用いた。
【0107】
MMP−9のアッセイは、バイオサイトインコーポレーテッドにより、既述(米国特許番号6,057,098)のようにファージディスプレイおよび組み換えタンパク質発現を用いて発生させたネズミ抗MMP−9抗体を用いて行った。市販のMMP−9抗原は、アッセイの標準化のために用いた(カルバイオケム−ノババイオケムコーポレーション、サンディエゴ、カリフォルニア州)。抗体産生のために用いた免疫原は、バイオサイトインコーポレーテッドにより調製された。PCRプライマーは、ヒトMMP−9の5’−末端の配列およびヒトMMP−9の3’−末端のコード配列に対応して作製した(ジェンバンク取得番号J05070)。金属キレートアフィニティークロマトグラフィーによる組み換えタンパク質の精製を補助するために、6つのヒスチジンコドンが、コード配列の終端と終止コドンとの間に挿入された。5’−末端MMP−9プライマーは、プライマーAと表され、以下のヌクレオチド配列からなる;5’−AGGTGTCGTAAGCTTGAATTCAGACACCTCTGCCGCCACCATGAG−3’(SEQ ID NO:1)。5’プライマーは、その5’−末端において、EcoRI部位および直ぐ上流の配列に対応するpEAK12ベクター配列(エッジバイオシステムズ、ガイサーバーグ、メリーランド州)の21塩基対をも含む。3’−末端MMP−9プライマーは、プライマーBと表され、以下のヌクレオチド配列からなる;5’−GGCTGGCTTACCTGCGGCCTTAGTGATGGTGATGGTGATGGTCCTCAGG GCACTGCAGGATG−3’(SEQ ID NO:2)。3’プライマーは、その5’末端において、NotI部位の6塩基および直ぐ下流の配列等のベクター配列のさらなる20塩基対を含む。これらのプライマーの5’−末端におけるベクター配列は、T4DNAポリメラーゼ処理により、pEAK12ベクターのものに特異的で相補的な一本鎖オーバーハングを形成するであろう。MMP−9遺伝子挿入のPCR増幅は、100pmolの5’プライマー(A)、100pmolの3’プライマー(B)、2.5単位のエクスパンドポリメラーゼ、10μlの2mMdNTPs、10μlの10xエクスパンド反応バッファー、テンプレートとしての1μlのクロンテック−クイック−クローンヒト脾臓cDNA(クロンテックラボラトリーズ、パロアルト、カリフォルニア州)、および100μlの水を含む、2x100μlの反応スケールで行われた。反応は、(米国特許6,057,098の)実施例18に記載されたように、パーキン−エルマーサーマルサイクラー中で実行された。PCR産物は、沈殿され、アガロースゲル電気泳動により分画され、完全長産物がゲルから切除され、精製され、水中に再懸濁された(米国特許6,057,098の実施例17)。pEAK12ベクターは、NotIおよびEcoRI(ニューイングランドバイオラボ、ビバリー、マサチューセッツ州)を用いた消化による挿入物を受け取るために調製された。挿入物およびEcoRI/NotI消化pEAK12ベクターは、1.0μlの10xバッファーAを1.0μgのDNAに添加して水により最終容積が9μlとすることによるT4エキソヌクレアーゼ消化のために、調製した。サンプルは、1μl(1U/μl)のT4DNAポリメラーゼにより30℃で4分間消化された。T4DNAポリメラーゼは、70℃で10分間インキュベートすることにより加熱不活性化された。サンプルは冷却され、短時間遠心分離され、新しいマイクロヒュージチューブ中で45ngの消化挿入物が100ngの消化されたpEAK12ベクターに添加された。1.0μlの10xアニーリングバッファーの添加後、容積は、水により10μlとされた。混合物は、70℃で2分間加熱され、20分以上室温にまで冷却され、挿入物とベクターがアニーリングできるようにした。アニーリングされたDNAは、蒸留水で4倍に希釈され、30μlのエレクトロコンポーネントE.coli株、DH10B(インビトロジェン、カールスバッド、カリフォルニア州)中にエレクトロポレーションされた。形質転換された細胞は、2xYT培養液により1.0mlに希釈され、アンピシリン(75μg/ml)を補給されたLB寒天プレートに10μl、100μl、300μlを培養し、37℃で一夜成長させた。コロニーを取り出し、37℃で2xYT(75μg/mlのアンピシリン)中で一夜成長させた。翌日グリセロール凍結保存物を−80℃での長期保存のために作製した。これらのクローン(MMPpeak12)の配列は、マコーネルリサーチ(サンディエゴ、カリフォルニア州)で、ジデオキシ鎖終了法により、シークワタームシーケンシングキット(エピセンターテクノロジー、マジソン、ウィスコンシン州)、オリゴヌクレオチドプライマーC、5’−TTCTCAAGCCTCAGACAGTG−3’(SEQ ID NO:3)、およびD、5’−CCTGGATGCAGGCTACTCTAG−3’(SEQ ID NO:4)を用い、これらはpEAK12ベクターの挿入物の5’および3’側にそれぞれ結合し、そしてLI−COR4000L自動シーケンサー(LI−COR、リンカーン、ネブラスカ州)を用いて確認した。トランスフェクションに適したプラスミドおよびこれに続くヒトMMP−9の発現と精製は、製造者の提案に従いエンドフリープラスミドメガキット(キアジェン、ヴァレンシア、カリフォルニア州)を用いて、クローンMMP9peak12.2から調製した。HEK293(「Peak」)細胞は、1mlの凍結バイアル保存物(5x106細胞/ml)からT−75フラスコに、5%胎児ウシ血清(FBS)(JRHバイオサイエンシーズ、レネキサ、カンザス州)、20単位/mlのヘパリン、0.1%のプルロニックF−68(JRHバイオサイエンシーズ、レネキサ、カンザス州)、および50μl/mlのゲンタマイシン(シグマ、セントルイス、ミズーリ州)を含むIS293培地(アーバインサイエンティフィック、サンタアナ、カリフォルニア州)中で拡張された。37℃、湿度85%、5%CO2で2〜3日間インキュベートした後、FBSを培地中2%に減少させて細胞はT−175フラスコに拡張された。そして細胞は、2〜3週間にわたって連続的に1:2に拡張され、接着した細胞の均一な単層を確立した。上記の方法により成長したPeak細胞は、1000rpmで6分間遠心分離され、上清が捨てられた。密度を確立するために細胞を数え、標準染色試験により少なくとも90%の生存力を確認した後、細胞は、5x105細胞/mlで、2%FBSおよび50μl/mlゲンタミシンマイシを含む400mlのIS293中で再懸濁され、1Lのスピナーフラスコに加えた。そして、コニカルチューブに、400mlスピナーフラスコ当たり5mlのIS293および320μgのMMP−9を加えた。これは、混合され、室温で2分間インキュベートされた。スピナー当たり400μlのX−tremeGENE RO−1539トランスフェクション試薬(ロシュディアグノスティックス、インディアナポリス、インディアナ州)が、チューブに加えられ、そして混合され、室温で20分間インキュベートされた。混合物は、スピナーフラスコに加えられ、37℃、湿度85%、5%CO2、100rpmで、4日間インキュベートされた。上記のスピナーフラスコからの細胞培養液は、3500rpmで20分間沈降され、上清がMMP−9の精製のために確保された。20mlのキレーティングファーストフロー樹脂(アマシャムファルマシアバイオテック、ピスケータウェイ、ニュージャージー州)を含むNiCl2で充填されたカラムは、BBSで平衡化された。そして、スピナーフラスコからの上清は、カラムに投入され、BBS+10mMイミダゾールで洗浄され、200mMイミダゾールで溶出された。溶出液は、10mMにCaCl2を添加した後次の精製工程の投入のために使用された。5mlのゼラチンセファロース4B樹脂(アマシャムファルマシアバイオテック、ピスケータウェイ、ニュージャージー州)のカラムは、BBS+10mMCaCl2で平衡化された。抗原を投入後、カラムは平衡バッファーにより洗浄され、MMP−9は平衡バッファー+2%ジメチルスルフォオキシド(DMSO)を用いて溶出された。ポリオキシエチレングリコールドデシルエーテル(BRIJ−35)(0.005%)およびEDTA(10mM)は、溶出液に添加され、これは最終バッファー(50mMTris、400mMNaCl、10mMCaCl2、0.01%NaN3、pH7.5、0.005%BRIJ−35、10mMEDTA)中に透析された。最後に、タンパク質は、4℃での保存のために約0.25mg/mlに濃縮された。ザイモグラムゲルは、MMP−9の産生および精製の確認に用いられた。ウエスタンブロットも、タンパク質の活性を確認するために用いられた。MMP−9(オンコジーンリサーチプロダクツ、ケンブリッジ、マサチューセッツ州)は、PEAK細胞系を用いて作製された精製抗原と既知の標準との比較のために用いられた。
【0108】
MMP−9のアッセイは、バイオサイトインコーポレーテッドで発生させたネズミ抗MMP−9抗体を用い、ファージディスプレイおよび組み換えタンパク質発現技術を用いて行った。市販のMMP−9抗原を、アッセイの標準化のために用いた(カルバイオケム−ノババイオケムコーポレーション、サンディエゴ、カリフォルニア州)。MMP−9の濃度は、アルカリホスファターゼコンジュゲート抗体の結合を検出することにより定量した。このアッセイの最小検出可能濃度は、0.3ng/mLであり、報告可能範囲の上限は、2000ng/mLである。
【0109】
血栓前駆体タンパク質(TpTTM)のアッセイは、アメリカンバイオジェネティックサイエンシーズインコーポレーテッド、コロンビア、メリーランド州から得た試薬を用いて行った。溶解性フィブリンポリマーの異なるエピトープを認識する2つのネズミモノクローナル抗体は、アッセイに使用された。アッセイは、アメリカンバイオジェネティックサイエンシーズにより供給されたTpTTMを用いて検定された。サンプルは、アッセイに先立ち1:4に希釈された。最小検出可能濃度は、0.25μg/mlであり、報告可能範囲の上限は、25μg/mlである。従って、1μg/mlと100μg/mlの間のサンプルは、報告可能な範囲でアッセイされうる。
【0110】
単球走化性タンパク質−1(MCP−1)のアッセイは、バイオサイトにおいて開発された抗体を用いて行われた。アッセイは、免疫学的測定(サンドイッチ)形態で開発された。アッセイは、社内MCP−1リファレンス調製物を用いて検定された。このアッセイの最小検出可能濃度は、20pg/mlであり、報告可能範囲の上限は、10,000pg/mlであった。
【0111】
種々の形態のトロポニンI(TIC複合体および全TnI)のアッセイは、捕捉のために市販のヤギ抗TnIを用い、酵素ラベル化コンジュゲートとしてバイオサイトで開発された抗体を用いて行われた。アッセイは、社内TIC複合体およびTnIリファレンス溶液を用いて検定された。最小検出可能濃度は、TnIが40pg/ml、TIC複合体が50pg/mlであった。報告可能範囲の上限は、両方のアッセイで10,000pg/mlであった。
【0112】
脂肪酸結合タンパク質(FABP)のアッセイは、市販のモノクローナル抗体および市販のFABP抗原を用いて行われた。最小検出可能濃度は、6ng/mlであり、報告可能範囲の上限は10,000ng/mlであった。
【0113】
C−反応性タンパク質(CRP)およびフィブリノーゲンは、市販のアッセイ(デードベーリングインコーポレーテッド、ニューアーク、デラウエア州)を用いて測定された。
【0114】
実施例3 例示的マーカーパネル
心筋損傷をもたらす種々の病理学的事象のマーカーを含むマーカーパネルを、構築することができる。このようなパネルには、炎症、アテローム硬化症のプラーク破裂、血小板の活性化、血栓症、および心筋の傷害または壊死のマーカーが含まれうる。このパネルに現れるであろう適切なマーカーは、IL−6、マロンジアルデヒド修飾低密度リポタンパク質(MDA−修飾LDL)、P−セレクチン、トロンビン−抗トロンビンIII(TAT)複合体、BNP、遊離心臓トロポニンI、全心臓トロポニンI、トロポニンTおよび/またはCの複合体の心臓トロポニンI、遊離心臓トロポニンT、全心臓トロポニンT、トロポニンIおよび/またはCの複合体の心臓トロポニンT、C−反応性タンパク質、および/またはMMP−9である。マーカーパネルは、患者の臨床的な徴候および症状との関連で評価されるであろう。典型的には、ACSの患者は、胸部痛の有力な症状を有する。
【表1】
Figure 0003806694
【0115】
パネルの1つ以上のマーカーの経時的上昇および変化は、ACSの進行の表示となりうる。例えば、IL−6、MD−修飾LDL、P−セレクチン、およびTAT複合体の上昇は、アテローム硬化症のプラーク破裂が起こったことを示し、そして、この破裂は血小板の凝集及び凝固の活性化の原因となり、血管の狭小をもたらしうる。さらに、P−セレクチンおよびTAT複合体の上昇は、状態が血塊形成に有利であることを示しうる。経時的なその後のマーカー濃度の減少は、病的工程が遅くなったかまたは停止したことを示しうる。例えば、経時的なTAT複合体濃度の減少は、凝固工程が遅くなったかまたは停止したことを示しうる。この点において、経時的なMDA−修飾LDL濃度の減少は、プラーク破裂が継続していないことを示しうる。
【0116】
他のマーカーが、上記の例に挙げられたマーカーに置き換え、または加えられうる。代替のまたはさらなる心筋傷害のマーカーには、アネキシンV、BNPおよび/またはBNP関連ペプチド、β−エノラーゼ、クレアチンキナーゼ−MB、グリコーゲンホスホリラーゼ−BB、心臓型脂肪酸結合タンパク質、ホスホグリセリン酸ムターゼ−MB、およびS−100aoが含まれる。
【0117】
代替のまたはさらなる凝固活性化のマーカーには、プラスミン−α−2−抗プラスミン複合体、フィブリノペプチドA、プロトロンビンフラグメント1+2、D−ダイマー、1またはそれ以上の形態のフォン・ビルブラント因子、組織因子、および血栓前駆体タンパク質(TpP)が含まれる。
【0118】
代替のまたはさらなる血小板活性化のマーカーには、β−トロンボグロブリン、血小板第4因子および血小板由来増殖因子が含まれる。
【0119】
代替のまたはさらなるアテローム硬化症のプラーク破裂のマーカーには、ヒト好中球エラスターゼ、誘導型一酸化窒素シンターゼ、リゾホスファジチン酸、マトリックスメタロプロテイナーゼ−1、マトリックスメタロプロテイナーゼ−2、マトリックスメタロプロテイナーゼ−3、およびマトリックスメタロプロテイナーゼ−9(MMP−9)が含まれる。
【0120】
代替のまたはさらなる炎症または急性期反応のマーカーには、C−反応性タンパク質、インターロイキン−1β、インターロイキン−1レセプターアンタゴニスト、腫瘍壊死因子α、溶解性細胞間接着分子−1、溶解性血管細胞接着分子−1、および単球走化性タンパク質−1が含まれる。
【0121】
さらに、他のマーカーがパネルの診断力を増強するためにパネルに加えられることができる。
【0122】
実施例4: ACSの予後マーカーとしてのMMP−9、全cTnI、cTnTIC、BNP、CRP、FABP、TpP、およびMCP−1
研究母集団
不安定冠状動脈症候群の患者のオーボフィバンによる経口糖タンパク質IIb/IIIa阻害(OPUS−TIMI16)試験は、10,288人のACS患者における経口糖タンパク質IIb/IIIa阻害因子、オーボフィバンをプラセボと比較した、無作為化した複数の研究機関にまたがった試験である。Cannon et al., Oral glycoprotein IIb/IIIa inhibition with orbofiban in patients with unstable coronary syndromes (OPUS-TIMI 16) trial(不安定冠状動脈症候群の患者のオーボフィバンによる経口糖タンパク質IIb/IIIa阻害(OPUS−TIMI16)試験)、Circulation 102:149-56 (2000)を参照のこと。患者は、彼らが虚血症状の発症から72時間以内に現れ、次の基準の1つに適合するならば、登録する資格があるとした:糖尿病または血管疾患を有する65歳以上;以前に冠状動脈疾患であった;動的なECG変化を有する;または上昇した心臓マーカーを有する。研究は、各々の病院の倫理調査委員会により承認され、すべての患者から書面のインフォームドコンセントが提供された。患者は、次の3つの処置アームの1つに無作為化された:オーボフィバン50mgを1日2回(50/50グループ)、オーボフィバン50mgを1日2回1月間、その後にオーボフィバン30mgを1日2回(50/30グループ)、またはプラセボ。OPUS−TIMI16研究は、50/30グループにおいて増加した死亡率が見出されたため、時期尚早に終了した。50/50グループでは死亡率の上昇はなかった。本研究は、50/50グループに割り当てられた患者により実施され、MMP−9、全cTnI、cTnTIC、BNP、CRP、FABP、TpP、およびMCP−1の分析に適したベースライン血漿標本が提供された。
【0123】
OPUS−TIMI16に登録した症状の発症からの中央値時間は、40時間であった。
【0124】
MMP−9アッセイ
MMP−9のアッセイは、バイオサイトインコーポレーテッドで発生させたネズミ抗MMP−9抗体を用いて、ファージディスプレイおよび組み換えタンパク質技術を用いて行われた。市販のMMP−9抗原を、アッセイの標準化のために用いた(カルバイオケム−ノババイオケムコーポレーション、サンディエゴ、カリフォルニア州)。アッセイは、自動ハイスループットプラットフォームの348ウェルマイクロタイタープレートで行った(TECANジェネシスRSP200/8)。MMP−9の濃度は、アルカリホスファターゼコンジュゲート抗体の結合を検出することにより定量した。すべてのサンプルは、2回実行した。このアッセイの最小検出可能濃度は、3.0ng/mLであり、報告可能範囲の上限は、2000ng/mLであった。
【0125】
クリニカルエンドポイント
死亡、致命的でないMI、および鬱血性心不全のすべての原因は、30日目および10ヶ月の追跡期間の終了まで評価された。MIは、すでに報告された基準を用いて定義され、臨床事象委員会により判断された。Antman et al., Enoxaparin prevents death and cardiac ischemic events in unstable angina/non-Q-wave myocardial infarction: Results of the thrombolysis in myocardial infarction (TIMI) 11B trial(エノキサパリンは不安定狭心症/非Q波心筋梗塞の死亡および心臓虚血事象を防ぐ:心筋梗塞の血栓症の結果(TIMI)11B試験)、Circulation 100:1593-601 (1999)を参照のこと。新規若しくは悪化しているCHF、または心臓性のショックのエンドポイントは、症例記録用紙から集め、判定されていない。
【0126】
統計的分析
被験者は、試験に登録した時点のマーカー濃度に基づいて四分位に分けた。平均値およびベースライン変数に対する割合は、連続変数についてのANOVAおよびカテゴリー変数についてのχ2トレンド検定を用いて四分位の間で比較した。マーカーと他の連続ベースライン変数との直接の相関は、ピアソンの積率相関係数を用いて評価された。マーカー濃度は、研究のエンドポイントに合致した患者と合致していない患者との間で、ウィルコクソンランクサム検定を用いて比較した。累積ハザード関数を用いて、不利な事象の頻度を10ヶ月の追跡調査期間の終了時点で評価した。ログランク検定を用いて、四分位の間での結果を比較した。
【0127】
分析は、年齢、性別、糖尿病の存在、および徴候診断により定義されたあらかじめ特定されたサブグループにおいて行われた。追跡調査(10ヶ月)の終了まで死亡のすべての原因について、コックスの比例ハザードモデルがフォーワードステップワイズ変数選択を用いて構築された。不変のp値が<0.1で、データが>75%の患者で利用可能な場合は、臨床的変数がモデルに入れられ、多重変化p値が>0.1の場合は、変数が除かれた。そして、全cTnI、BNP、およびMMP−9のベースライン濃度は、完成モデルに加えられた。すべての変数について完全なデータを有する患者のみが、これらの多重変化分析に含められた(n=2068)。モデルは、C−反応性タンパク質の測定を受けている患者の部分集合について、続いて繰り返された(n=736)。
【0128】
MMP−9とベースライン臨床的変数との関係
MMP−9の高いベースライン濃度は、女性、非白人種および現在のたばこ使用者に関係するが、老齢、糖尿病、または以前の高コレステロール血症、冠状動脈疾患若しくは鬱血性心不全には関係しなかった。高MMP−9濃度は、早い心拍、キリップクラス>I、並びにトロポニンIおよびC−反応性タンパク質の上昇した濃度と関係した(表1)。対照的に、MMP−9は、ボディマス指標、腎機能、心電図の変化、上昇したBNP、LVEF、または冠状動脈血管造影で測定された冠状動脈疾患の範囲には関係しなかった。MMP−9濃度と、試験への登録のための症状発症からの時間との間には、関係はなかった。MMP−9と、CRP(R=0.16、p<0.001)、cTnI(R=0.07、p=0.001)、および記録された最大のCKMB(R=0.05、p=0.04)との濃度の相関は、わずかであった。MMP−9と、BNP(R=0.005、p=0.82)またはフィブリノーゲン(R=−0.05、p=0.12)との濃度の関係はなかった。
【表2】
Figure 0003806694
【表3】
Figure 0003806694
【0129】
MMP−9と臨床的結果との関係
MMP−9の濃度は、次のいずれの時点でも生存していた患者に対し、30日以内(p=0.002)または10ヶ月以内(p<0.0001)に死亡した患者では、有意に高かった。同様に、MMP−9濃度は、非致命的MIおよびCHFを有する患者は、これらのエンドポイントを有しないものに比べ、高かった。(30日および10ヶ月の双方におけるそれぞれのエンドポイントは、p<0.01)
【表4】
Figure 0003806694
【0130】
調整していない死亡率が、それぞれMMP−9濃度の連続する四分位で増加した(p<0.001)。同様の関係が、MMP−9と死亡および非致命的MIの混合との間(p<0.001)、並びに、MMP−9と鬱血性心不全との間(p<0.001)に観察された。方向性を持つ一致した関係が、MMP−9と、症状の発症から処置までの時間、徴候による診断、性別、糖尿病、および年齢により定義された患者のサブグループにおける死亡率との間に、観察された。
【表5】
Figure 0003806694
【0131】
全cTnIとベースライン臨床的変数との関係
データは、2523人の患者から評価した。全cTnIの高いベースライン濃度は、男性、糖尿病の不存在、以前の冠状動脈疾患の不存在、処置を必要とする高血圧症の不存在、およびたばこの使用に関係したが、老齢または人種には関係しなかった。高い全cTnI濃度は、腎機能、心電図の変化、キリップクラス>I、およびCK−MBの上昇した濃度に関係した(表4)。対照的に、全cTnIは、ボディマス指標、冠状動脈血管造影で測定された冠状動脈疾患の範囲、ストレス試験、または人種とは関係しなかった。全cTnIの濃度と症状の発症から試験への登録までの時間との間には、関係がなかった。全cTnIとCRP(R=0.05、p=0.16)またはフィブリノーゲン(R=0.04、p=0.18)の濃度との間には、関係がなかった(表5)。
【表6】
Figure 0003806694
【表7】
Figure 0003806694
【表8】
Figure 0003806694
【0132】
全cTnIと臨床的結果との関係
全cTnIの濃度は、同時点で生存していた患者に対して30日以内に死亡した患者で有意に高かった(p=0.004)。同様に、全cTnI濃度は、死亡や非致命的MIの組み合わされたエンドポイントを有する患者の方が、これらのエンドポイントを有さないものに比べ高かった。(30日および10ヶ月の両方における各々のエンドポイントについてp<0.01(表6および7))
【表9】
Figure 0003806694
【表10】
Figure 0003806694
【0133】
cTnTICとベースライン臨床的変化との関係
データは、2439人の患者から評価した。cTnTICの高いベースライン濃度は、男性、糖尿病の不存在、以前の冠状動脈疾患の不存在、処置が必要な高血圧症の不存在、およびたばこの使用に関連したが、老齢または人種には関係しなかった。高いcTnTIC濃度は、腎機能、心電図の変化、キリップクラス>I、cTnIの上昇した濃度、およびCK−MBの上昇した濃度に関係した(表8)。対照的に、cTnTICは、ボディマス指数、冠状動脈血管造影により測定された冠状動脈疾患の範囲、ストレス試験、または人種には関係しなかった。cTnTICとCRP(R=0.03、p=0.36)またはフィブリノーゲン(R=0.04、p=0.29)の濃度との間には、関係がなかった(表9)。
【表11】
Figure 0003806694
【表12】
Figure 0003806694
【表13】
Figure 0003806694
【0134】
cTnTICと臨床的結果との関係
cTnTICの濃度は、同時点で生存していた患者に対して30日以内に死亡した患者で有意に高かった(p<0.05)(表10)。低い四分位のcTnTIC濃度のトレンドは、10ヶ月で緊急血管再生を必要とする虚血の増加した頻度と関係があった(表11)。対照的に、高い四分位のcTnTIC濃度のトレンドは、喫煙の履歴を有しない患者において、死亡、緊急血管再生を必要とする虚血、および、死亡、非致命的MI、若しくは事象後30日で緊急血管再生を必要とする虚血の組み合わされたエンドポイント、に関係した(表12)。
【表14】
Figure 0003806694
【表15】
Figure 0003806694
【表16】
Figure 0003806694
【0135】
BNPとベースラインの臨床的変化との関係
データは、2525人の患者から評価した。BNPの高いベースラインの四分位の濃度は、年齢、高血圧症、およびたばこの使用に関係した。高い四分位のBNP濃度は、鬱血性心不全、腎機能、心電図の変化、キリップクラス>I、およびCK−MBの上昇した濃度に関係した(表13)。対照的に、四分位のBNP濃度は、冠状動脈疾患の以前の履歴、ボディマス指標、および糖尿病とは関係しなかった。BNPと連続したベースライン変化のCRP(R=0.2、p<0.0001)、フィブリノーゲン(R=0.18、p<0.0001)、LVEF(R=0.23、p<0.0001)との濃度の間で有意な相関があった。BNP濃度とボディマス指数との相関は、わずかであった(R=0.06)(表14)。さらに、高い平均BNP濃度は、50%またはそれ以上の狭窄症の血管の数、低い駆出率、および陽性ストレス試験結果と有意に関係した(表15)。
【表17】
Figure 0003806694
【表18】
Figure 0003806694
【表19】
Figure 0003806694
【表20】
Figure 0003806694
【0136】
BNPと臨床的結果との関係
BNPの濃度は、同時点で生存していた患者に対して、30日以内(p<0.0001)および10ヶ月以内(p<0.0001)に死亡した患者で有意に高かった(表16)。さらに、BNP濃度は、非致命的MIを経験していない患者に対して、これを30日以内(p=0.01)および10ヶ月以内(p=0.02)に経験した患者で有意に高かった(表16)。高いBNP濃度と30日および10ヶ月以内の死亡との関係は、徴候による診断に基づいたサブグループの分析でも観察された(表17)。
【表21】
Figure 0003806694
【表22】
Figure 0003806694
【0137】
FABPとベースライン臨床的変数との関係
データは、2287人の患者から評価した。FABPとベースライン臨床的変数との関係づけは、8ng/mlのFABPの切点を用いて行った。FABPの高いベースライン濃度は、年齢、鬱血性心不全の履歴、腎機能、心電図の変化、キリップクラス>I、並びにCK−MB、cTnI、BNP、およびCRPの上昇した濃度に関係した(表18)。対照的に、四分位のFABP濃度は、冠状動脈疾患の以前の履歴、ボディマス指数、高血圧症、および糖尿病には関係しなかった。FABPの濃度とcTnI濃度との間に有意な相関があった(R=0.21、p<0.0001)。FABP濃度と他の連続変数の間の相関は、わずかであった(R2<0.03)(表19)。
【表23】
Figure 0003806694
【表24】
Figure 0003806694
【表25】
Figure 0003806694
【0138】
FABPと臨床的結果との関係
FABPの平均濃度は、同時点で生存していた患者に対して、30日以内(p<0.0001)および10ヶ月以内(p<0.0001)に死亡した患者で有意に高かった(表20)。平均FABP濃度は、エンドポイントを有しない患者に対して、30日以内(p<0.0001)および10ヶ月以内(p<0.0001)の死亡、非致命的MI、または血管再生の組み合わせたエンドポイントを有する患者で有意に高かった(表20)。さらに、平均FABP濃度は、CHFを有しないものに対し、30日以内(p<0.0001)および10ヶ月以内(p<0.0001)にCHFを有した患者で有意に高かった(表20)。FABP濃度が陽性(FABP>8)または陰性(FABP=8またはそれ以下)のいずれかに分類されたときに、これらの関係は統計的な有意さを維持した(表21)。
【表26】
Figure 0003806694
【表27】
Figure 0003806694
【0139】
TpPとベースライン臨床的変数との関係
データは、2349人の患者から評価した。TpPの高いベースライン濃度は、年齢、冠状動脈疾患の履歴、腎機能、CHFの履歴、アスピリンの使用に関係し、白人の人種およびヘパリン治療に逆に関係した(表22)。対照的に、TpP濃度は、心拍数、キリップクラス>I、ボディマス指数、高血圧症、冠状動脈疾患の範囲、および糖尿病には関係しなかった。
【表28】
Figure 0003806694
【表29】
Figure 0003806694
【0140】
TpPと臨床的結果との関係
TpP濃度は、同時点で生存した患者に対して、10ヶ月以内に死亡した患者で有意に高かった(p<0.05)(表23)。TpP濃度は、入院を必要とする虚血を経験しないものに対し、10ヶ月以内に入院を必要とする虚血を経験した患者で有意に高かった(p=0.0062)(表23)。TpP濃度は、エンドポイントを経験しない患者に対して、10ヶ月以内に、死亡若しくは非致命的MI、または、死亡、非致命的MI若しくは緊急血管再生の組み合わせたエンドポイントを有する患者で有意に高かった(p<0.02)(表23)。
【表30】
Figure 0003806694
【0141】
MCP−1とベースライン臨床的変数との関係
データは、2270人の患者から評価した。MCP−1の高いベースライン濃度は、年齢、冠状動脈疾患の履歴、腎機能、CHFの履歴、糖尿病、高血圧症、キリップクラス>I、およびアスピリンの使用に関係した(表24)。対照的に、MCP−1濃度は、心拍数、ボディマス指数、冠状動脈疾患の範囲、および喫煙には関係しなかった。
【表31】
Figure 0003806694
【表32】
Figure 0003806694
【0142】
MCP−1と臨床的結果との関係
平均MCP−1濃度は、同時点で非致命的MIを経験していない患者に対して、30日以内(p=0.01)または10ヶ月以内(p=0.04)に経験した患者で有意に高かった(表25)。さらに、平均MCP−1濃度は、エンドポイントを経験しない患者に対して、10ヶ月以内に、死亡若しくは非致命的MI(p=0.05)、または、死亡、非致命的MI若しくはCHFの組み合わせたエンドポイントを有する患者で有意に高かった(p<0.02)(表25)。これらの所見は、四分位MCP−1濃度および結果の分析でも観察された(表26)。
【表33】
Figure 0003806694
【表34】
Figure 0003806694
【表35】
Figure 0003806694
【0143】
年齢、糖尿病、腎機能、CHFの徴候、ECGの変化、並びにcTnIおよびBNPの濃度等、長期の死亡率の他の独立した予測値で調整した多変量モデルにおいて、増加するMMP−9の濃度は、高い10ヶ月の死亡率と関係したまま維持された。MMP−9の第2、第3、および第4の四分位の患者の10ヶ月での死亡の調整された確率比は、4.5(1.3−15.6)、6.4(1.9−21.4)、7.6(2.3−25.5)であった。CRP等のすべての変数について完全なデータで736人の患者においてモデルを繰り返した場合、MMP−9は、10ヶ月の死亡率と有意に関係したまま維持された。調整した確率比は、第2、第3、および第4の四分位において、3.1(0.9−10.7)、3.9(1.1−13.1)および4.2(1.3−14.4)であった。
【表36】
Figure 0003806694
【0144】
モデル1は、C−反応性タンパク質を除きすべての変数について完全なデータを有する患者を含む。モデル2は、C−反応性タンパク質を含むすべての変数について完全なデータを有する患者を含む。列挙された変数に加えて、モデルは、高コレステロール血症、鬱血性心不全、または末梢動脈疾患;ヘパリン、硝酸塩、または利尿剤の以前の使用;徴候による診断(不安定狭心症、非ST上昇MI、ST上昇MI);徴候事象の管理のための硝酸塩またはACE抑制剤の使用;血圧;および心電図のSTの変化、の以前の徴候について調整した。
【0145】
MMP−9の血漿濃度は、急性冠状動脈症候群の状態後の最初の数日以内に測定され、死亡率、非致命的MI、および鬱血性心不全の危険性の予測となる。MMP−9と死亡率の関係は、ベースライン臨床的変数、ECG所見、およびトロポニンI、C−反応性タンパク質、およびB型ナトリウム排泄増加性ペプチドのような確立された心臓生体マーカーの濃度と独立している。多変量解析により、マトリックスメタロプロテイナーゼ−9、C−反応性タンパク質、B型ナトリウム排泄増加性ペプチド、およびトロポニンIの上昇した濃度は、増加した10ヶ月の死亡率の予測値からそれぞれ有意に独立していた。
【0146】
以前の研究において、MMP−9濃度は、虚血についての症状および心電図の徴候にもかかわらず、安定狭心症の患者における運動の後では増加しなかった(Kai H et al., Peripheral blood levels of matrix metalloproteases-2 and -9 are elevated in patients with acute coronary syndrome, J Am Coll Cardiol 32:368-372 (1998))。本研究において、MMP−9とアテローム硬化症の範囲との間に関係はなく、MMP−9とCKMBおよびcTnIのような心臓壊死のマーカーとの間に、一般的に貧弱な相関が観察された。MMP−9と結果との間の関係は、不安定狭心症の患者と心筋梗塞の患者との間のものと同様であった。
【0147】
本実施例は、個々のマーカーの上昇と結果との間の関係の臨床的な利用を示している。さらに、危険性の層別化のための固有の病理学的工程に関連した異なる独立したマーカーを導入するという、多重マーカー方策を用いることによる利益も示される。この実施例で選択されたマーカーは、心筋損傷(cTnI、cTnTIC、およびFABP)、心室機能不全(BNP)、マトリックス分解またはプラーク破裂(MMP−9)、炎症(MCP−1およびCRP)、および凝固活性化(TpP)を示すものである。当業者は、これらの病理学的工程がこの実施例で記載された不利な事象に独立して関係していると承知している。この点において、それぞれのこれらの種々の病理学的工程の代替マーカーは、ACS患者の危険性の層別化のためのこの実施例のマーカーに置き換えうる。さらに、種々の病理学的工程のためのマーカーの種々の組み合わせは、ACSの患者の危険性の層別化に有用であろう。
【0148】
実施例5:診断的利用
MMP−9は、不安定狭心症からST部上昇心筋梗塞(STEMI)まで、急性冠状動脈系のすべての濃度で上昇する。TIMI OPUS−16研究集団は、不安定狭心症(UA)、非ST部上昇心筋梗塞(NSTEMI)、およびSTEMIの3つのグループに分離できる。特に興味深いこととは、不安定狭心症の正常健康ドナーからの区別において、95%の特異性における感度の水準(97.8〜100%)である(表28)。心臓損傷の最も広く受け入れられたマーカーであるTnIは、急性冠状動脈症候群のこの部分集合においてわずかに50%を超える感度を達成したにすぎない。
【表37】
Figure 0003806694
【0149】
NSTEMIまたはSTEMIのいずれかの個体において、TnIは、特に症状発症時から6時間から24時間の間において、優れた感度および特異性を有する(表29および30)。不安定狭心症においてTnIがほんのわずかしか上昇しえない一方、MMP−9が上昇するという事実は、深刻でない不安定狭心症とより深刻な心筋梗塞との間の区別の有用な方法を提供するものである。医師がこの情報を利用可能であれば、治療の選択肢は影響されることとなる。
【表38】
Figure 0003806694
【表39】
Figure 0003806694
【0150】
BNPは、不安定狭心症においても幾分上昇するが、これは、心筋梗塞の、特に事象の早期において、より表示となるものである。MMP−9とTnIの組み合わせで用いた場合、BNPは、急性冠状動脈症候群の診断の有用な情報を加えうる。
【0151】
TpP、MCP−1、およびFABPはすべて、急性冠状動脈症候群の間の種々の時点で度合いを変化させて上昇し、その結果、診断を形成するのに使用される情報を加えうる。
【0152】
これらのマーカーのすべてが異なる機能を供給し、種々の供給源から由来するので、急性冠状動脈症候群の間の循環系へのこれらのマーカーの出現は、お互い独立しているようである。したがって、2またはそれ以上のマーカーを用いる診断パネルは、治療を導くことを助ける情報を提供する臨床医にとって有益であろう。
【0153】
実施例6: 患者の治療におけるマーカーの使用
MMP−9、cTnI、BNP、およびCRPがそれぞれ独立に10ヶ月の患者の死亡率に関係しているという所見は、ACSと疑われる患者における多重マーカー試験方策が個々のマーカーの測定と比べて危険予測を有利に改善できることを示す。このような予後および診断の利用に加え、本発明のマーカーは、ACS患者への治療の実施を助けるために用いることもできる。例えば、これらの生体マーカーの危険「プロフィール」は、異なった基礎をなす病態生理学的機構の標的特異的治療に用いられるであろう。この「危険プロフィール」は、MMP−9、cTnI、BNP、およびCRPの種々の組み合わせにより、上記マーカーに加えて、またはその置き換えとして用いる他のマーカーと同様に、決定されるであろう。
【0154】
加えて、アテローム硬化症およびその合併症において直接の病因の役割を果たすMMP−9のようなマーカーは、薬剤発見のための新規な治療の標的を提供できる。例えば、MMP系は、少なくとも4つの水準で調整されている:遺伝子転写、メッセージの翻訳、前酵素の活性化、およびメタロプロテアーゼの組織阻害因子(TIMPs)による阻害。これらの工程の1またはそれ以上の修飾は、アテローム硬化症のプラーク破裂を防ぎ、不利な血管および心臓の再構築を修正するであろう。
【0155】
治療方策には、例えば、MMP−9の合成を妨害するためのアンチセンス組成物の実施;レセプターを基礎とする治療の実施(例えばMMP−9またはそのフラグメントに向けられた抗体組成物);および/または小分子治療の実施(例えばヘパリンはMMP−9合成を減少させることができ、テトラサイクリン抗体は亜鉛をキレートすることによりMMPを不活性化でき、そしてHMG Co−Aレダクターゼ阻害因子およびペルオキソーム増殖因子活性化レセプター(PPAR)−ガンマはマクロファージからのMMP−9の発現を減少させることができる)を、含めることができる。このような方策は、標的分子そのものに向けられ(この実施例のMMP−9)、または、その代わりに標的の活性化若しくは活性のために必要な上流の分子に向けられる(例えば、プラスミンのようなプロテアーゼで、これはMMP−9チモーゲンをその活性形態に切断する)。
【0156】
この発明は当業者がこれを作製し、使用するために充分詳細に既述され、例示されているが、種々の代替、修正、および改良がこの発明の精神および範囲から離れることなく明白であろう。
【0157】
当業者は、本発明が、これらに内在するものと同様に、その目的を実行し、言及された目的および有利な点を得るのによく適していることを、容易に認識する。ここに提供された実施例は、好ましい態様の代表であり、例示であり、この発明の範囲の限定として意図するものではない。これらの修正および他の使用は、当業者に思い浮かぶものである。これらの修正は、この発明の精神の範囲に入るものであり、請求の範囲により定義されるものである。
【0158】
当業者にとって、様々な置き換えや修正がこの発明の範囲および精神から離れることなくここに記載された発明に対してなされうることは、容易で明白であろう。
【0159】
明細書に言及されたすべての特許および刊行物は、この発明の属する通常の知識を有するものの水準を示すものである。すべての特許および刊行物は、各々の個々の刊行物が特別に個別に参照により取り込まれることを示したように、同様の範囲で参照することによりここに取り込まれる。
【0160】
ここに適して例証的に記載された発明は、ここに特別に開示されていないいずれもの要素、限定の存在なしに実施されうる。したがって、例えば、ここの各々の事例において、「含む」、「本質的に〜からなる」および「〜からなる」のいずれの用語も、他の2つのいずれの用語にも置き換えることができる。使用された用語および表現は、記述の用語として用いられ、限定のものではなく、そしてこのような用語および表現の使用において、示され、記載された特徴またはその部分のいずれの均等物をも排除する意図はないが、種々の修正がこの請求された発明の範囲に入ることが可能であると認識できる。したがって、本発明は好ましい態様および任意の特徴により特に記載されているが、ここに開示された概念の修正および多様化が当業者によって行われ、このような修正および多様化が添付の請求の範囲により定義されるこの発明の範囲に入ると見なされることを、理解すべきである。
【0161】
他の態様は、特許請求の範囲により明らかにされる。

Claims (8)

  1. 患者から得たサンプル中のBNPの濃度およびBNPに関連するマーカーの濃度から成る群より選ばれる第1の診断指標を決定すること;
    前記患者の1またはそれ以上の第2の診断指標を決定すること、ここで前記1またはそれ以上の第2の診断指標が、アネキシンV、β−エノラーゼ、心臓トロポニンI(遊離および/または複合体)、心臓トロポニンT(遊離および/または複合体)、クレアチンキナーゼ−MB、グリコーゲンホスホリラーゼ−BB、心臓型脂肪酸結合タンパク質、ホスホグリセリン酸ムターゼ−MB、およびS−100aoからなる群より選ばれるマーカーの濃度であり;および、
    前記第1の診断指標および前記1またはそれ以上の第2の診断指標を前記患者の心筋虚血の存在または不存在と関連づけること;
    を含む、患者の心筋虚血の検出方法。
  2. 請求項1に記載の方法であって、
    前記患者の1またはそれ以上の第3の診断指標を決定すること、ここで前記1またはそれ以上の第3の診断指標が、β−トロンボグロブリン、D−ダイマー、フィブリノペプチドA、血小板由来増殖因子、プラスミン−α−2−抗プラスミン複合体、血小板第4因子、プロトロンビンフラグメント1+2、P−セレクチン、トロンビン−抗トロンビンIII複合体、血栓前駆体タンパク質、組織因子、およびフォン・ビルブラント因子からなる群より選ばれるマーカーの濃度であり;および、
    前記1またはそれ以上の第3の診断指標を前記患者の心筋虚血の存在または不存在と関連づけること;
    をさらに含む、方法。
  3. 請求項1に記載の方法であって、
    前記患者の1またはそれ以上の第3の診断指標を決定すること、ここで前記1またはそれ以上の追加の診断指標が、C−反応性タンパク質、セルロプラスミン、フィブリノーゲン、α1−酸性糖タンパク質、α1−アンチトリプシン、およびハプトグロビンからなる群より選ばれるマーカーの濃度であり;および、
    前記1またはそれ以上の第3の診断指標を前記患者の心筋虚血の存在または不存在と関連づけること;
    をさらに含む、方法。
  4. 請求項1に記載の方法であって、
    前記患者の1またはそれ以上の第3の診断指標を決定すること、ここで前記1またはそれ以上の追加の診断指標が、インスリン様成長因子−1、インターロイキン−1β、インターロイキン−1レセプターアンタゴニスト、インターロイキン−6、インターロイキン−8、トランスホーミング増殖因子β、単球走化性タンパク質−1、および腫瘍壊死因子αからなる群より選ばれるマーカーの濃度であり;および、
    前記1またはそれ以上の第3の診断指標を前記患者の心筋虚血の存在または不存在と関連づけること;
    をさらに含む、方法。
  5. 請求項1に記載の方法であって、
    前記患者の1またはそれ以上の第3の診断指標を決定すること、ここで前記1またはそれ以上の追加の診断指標が、ヒト好中球エラスターゼ、誘導型一酸化窒素シンターゼ、リゾホスファチド酸、マロンジアルデヒド修飾低密度リポタンパク質、マトリックスメタロプロテイナーゼ−1、マトリックスメタロプロテイナーゼ−2、マトリックスメタロプロテイナーゼ−3、マトリックスメタロプロテイナーゼ−9、キャスパーゼ−3、ヘモグロビンα2、溶解性細胞間接着分子−1および溶解性血管細胞接着分子−1からなる群より選ばれるマーカーの濃度であり;および、
    前記1またはそれ以上の第3の診断指標を前記患者の心筋虚血の存在または不存在と関連づけること;
    をさらに含む、方法。
  6. 前記サンプルが、血液サンプル、血清サンプル、および血漿サンプルから成る群より選ばれる、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
  7. 前記方法が、前記患者の心筋壊死と心筋虚血とを識別する、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
  8. 心筋虚血が、狭心症、安定狭心症、不安定狭心症、および無症候性虚血からなる群から選ばれる請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
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