JP3794659B2 - 通信機 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、複数の公衆回線が接続され、回線を切換えて信号の送受を行うことができる通信機に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ファクシミリ装置には、公衆回線が1回線だけ収容されていた。公衆回線は、このファクシミリ装置から相手側ファクシミリ装置に向かって画像信号を送信する動作、および相手側ファクシミリ装置から送信された画像信号をこのファクシミリ装置で受信する動作のどちらか一方を行うときに占有されるので、両動作のうちのいずれか一方の動作を実施するとき、両動作のうちのいずれか他方の動作を実施することは困難である。したがって、ファクシミリ装置が画像信号の送信または受信を行っている間、送受の相手側ファクシミリ装置以外の他のファクシミリ装置は、このファクシミリ装置に対して画像信号を送信することができない。ゆえに、上述の場合、他のファクシミリ装置の送信待ち時間が長くなっていた。
【0003】
単一のファクシミリ装置によって画像信号の送受を並列に実施するために、単一のファクシミリ装置に複数の公衆回線を収容することが考えられている。この従来技術として、特開平4−23673号公報と特開平5−219275号公報とのファクシミリ装置が挙げられる。特開平4−23673号公報のファクシミリ装置では、いわゆる同報通信によって、同じ画像信号を複数のファクシミリ装置に送信する。このとき、ファクシミリ装置に収容された全回線が同時に画像信号の送信に使用されることを防止するために、各送信先への送信動作を、予め定める時間だけずらして開始する。また特開平5−219275号公報のファクシミリ装置では、収容した複数の回線を、回線の使用率に応じて、送信動作に用いる回線と受信動作に用いる回線とに振分ける。このように、複数の公衆回線を収容したファクシミリ装置では、収納された全回線が同時に使用されないようにしていたが、全回線に不特定多数の受信が集中したとき全回線が同時に使用されるので、送信待ちの状態が続いていた。
【0004】
【発明が解決するべき課題】
本発明の目的は、ファクシミリ装置を含む通信機において、操作手順を簡略化し、また送信待ち時間を含む通信に要する時間を短縮することができる通信機を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、送受するべき対象信号を送信する相手側通信機を識別するための国際電話番号を受信する受信手段と、
予め定める相手側通信機の国際電話番号を記憶する記憶手段と、
記憶手段に記憶された国際電話番号と受信手段によって受信された国際電話番号とが一致するか否かを判定する判定手段と、
前記対象信号を記録紙に印刷する印刷手段と、
形状および大きさが異なる複数種類の記録紙のうちのいずれか1種類の記録紙を印刷手段に供給する供給手段とを含み、
前記受信手段は、判定手段によって国際電話番号が一致すると判定されたとき、対象信号の受信に関する第1の受信動作を行い、判定手段によって国際電話番号が一致しないと判定されたとき、第1の受信動作とは異なる第2の受信動作を行う手段であり、
前記第1の受信動作は、前記相手側通信機から送信された前記対象信号を受信し、複数種類の記録紙のうちで予め定める種類の記録紙を供給手段から印刷手段に供給させ、かつ印刷手段によって、供給された記録紙に該対象信号を印刷させる動作であり、
前記第2の受信動作は、前記相手側通信機から送信された前記対象信号を受信し、複数種類の記録紙のうちのいずれか1種類の記録紙を供給手段から印刷手段に供給させ、かつ印刷手段によって、供給された記録紙に該対象信号を印刷させる動作であることを特徴とする通信機である。
【0018】
本発明に従えば、通信機は、たとえば該通信機との間の通信の実施が許容されるような、予め定める相手側通信機の国際電話番号を、記憶手段に予め記憶している。通信機は、相手側通信機からの対象信号を受信する場合、対象信号の受信に先立って、相手側通信機からの国際電話番号と記憶手段に記憶された国際電話番号とが一致するか否かを判定し、国際電話番号の一致の有無に応じて、対象信号の受信時の受信手段の受信動作を変更する。
【0019】
たとえば、本請求項の通信機が不特定多数の相手側通信機と通信可能であり、予め定める相手側通信機からの対象信号を受信するときだけ予め定める受信動作を行うことを操作者が望んでいる場合、予め、第1受信動作としてこの予め定める受信動作を設定し、第2受信動作に一般的な受信動作を設定しておく。これによって通信機は、予め定める相手側通信機と通信を行うとき、自動的に予め定める受信動作を実施し、不特定多数の相手側通信機のうちで前記予め定める相手側通信機以外のものと通信を行うとき、自動的に一般的な受信動作を実施する。
【0020】
したがって、予め定める相手側通信機に対する受信動作と、その他の不特定多数の相手側通信機に対する受信動作とを、容易に切換えることができる。また、操作者が識別番号から相手側通信機を見分けて手動で受信動作を変更するような動作を行うことなく、自動的に受信動作を変更することができる。ゆえに、通信機の操作を簡略化することができる。さらにまた、単一の通信機で2通りの受信動作を行うことができるので、前記各受信動作を行うための通信機を個別に準備する必要がない。これによって、対象信号の受信側で準備する通信機の数を減少させることができる。
【0021】
さらに第1および第2の受信動作は、上述のような動作である。受信手段では、或る相手側通信機との間で通信が開始されると、まず国際電話番号を判定し、その国際電話番号が記憶された国際電話番号と一致すれば、供給手段によって予め定める種類の記録紙を印刷手段に供給させる。国際電話番号が記憶された国際電話番号と一致しなければ、供給手段に複数の種類の記録紙のうちの任意の1種類の記録紙を印刷手段に供給させる。印刷手段には受信手段から対象信号が供給され、供給手段から供給された記録紙に対象信号を印刷する。したがって、記憶された国際電話番号によって識別される相手側通信機からの対象信号が、自動的に予め定める種類の記録紙に印刷される。したがって、本請求項の通信機の操作者が記録紙の種類を切換えるための操作を行うことなく、自動的に記録紙が選択される。ゆえに、操作者の操作を簡略化することができる。
【0022】
本発明は、送受するべき対象信号を送信する相手側通信機を識別するための国際電話番号を受信する複数の受信手段と、
予め定める相手側通信機の国際電話番号を記憶する記憶手段と、
記憶手段に記憶された国際電話番号と、各受信手段によって受信された国際電話番号とが一致するか否かを判定する判定手段と、
少なくとも1つの受信手段によって受信された国際電話番号が記憶手段に記憶された国際電話番号と一致すると判定手段によって判定されたとき、複数の受信手段で受信された対象信号を予め定める第1の出力動作によって出力し、各受信手段によって受信された国際電話番号が記憶手段に記憶された国際電話番号と一致しないと判定手段によって判定されたとき、複数の受信手段によって受信された対象信号を第1の出力動作とは異なる予め定める第2の出力動作によって出力する出力手段と、
前記対象信号を記録紙に印刷する印刷手段と、
形状および大きさが異なる複数種類の記録紙のうちのいずれか1種類の記録紙を印刷手段に供給する供給手段とを含み、
複数の前記受信手段のうちの少なくとも1つの受信手段は、判定手段によって国際電話番号が一致すると判定されたとき、対象信号の受信に関する第1の受信動作を行い、判定手段によって国際電話番号が一致しないと判定されたとき、第1の受信動作とは異なる第2の受信動作を行う手段であり、
前記第1の受信動作は、前記相手側通信機から送信された前記対象信号を受信し、出力手段に第1の出力動作を実行させる動作であって、第1の出力動作は、複数種類の記録紙のうちで予め定める種類の記録紙を供給手段から印刷手段に供給させ、かつ印刷手段によって、供給された記録紙に該対象信号を印刷させる動作であり、
前記第2の受信動作は、前記相手側通信機から送信された前記対象信号を受信し、出力手段に第2の出力動作を実行させる動作であって、第2の出力動作は、複数種類の記録紙のうちのいずれか1種類の記録紙を供給手段から印刷手段に供給させ、かつ印刷手段によって、供給された記録紙に該対象信号を印刷させる動作であることを特徴とする通信機である。
【0023】
本発明に従えば、通信機は、全受信手段のうちの少なくとも1つの受信手段が、受信した国際談話番号に応じて受信動作を切換え、また複数の受信手段のうちで予め定める国際談話番号を受信した受信手段があるか否かに応じて、各受信手段で受信された対象信号の出力動作を切換える。
【0024】
これによって、予め定める相手側通信機に対する受信動作と、その他の不特定多数の相手側通信機に対する受信動作とを、自動的にかつ容易に切換えることができ、さらに、予め定める相手側通信機を含む不特定多数の通信機からの対象信号の出力動作と、予め定める相手側通信機を含まない不特定多数の相手側通信機からの対象信号の出力動作とを、自動的にかつ容易に切換えることができる。したがって、通信機の使い勝手をさらに向上させることができる。
【0025】
また、本請求項の通信機は複数の受信手段を有している。これら受信手段のうちの一部の受信手段だけを上述のように識別信号によって受信動作を切換させ、全受信手段のうちで前記一部の受信手段以外の残余の受信手段は識別信号に無関係に動作させることもできる。このとき、前記残余の受信手段は、不特定多数の相手側通信機から対象信号をそれぞれ受信することができる。これによって、従来技術の一般的な受信動作を行う通信機と、識別信号の一致の有無に応じて受信動作を変更する通信機とを、1体の通信機で兼用することができる。これによって、2通りの受信動作を行う通信機を1体の通信機で実現することができるので、受信側で準備するべき通信機の数を減少させることができる。
【0026】
さらに第1および第2の受信動作は、上述のような動作である。通信機は、複数の受信手段のうちの少なくとも1つが、国際電話番号の一致の有無に応じて対象信号を印刷すべき記録紙の種類を切換える。またこの通信機は、複数の受信手段のうちの一部の受信手段だけで上述のように国際電話番号に応じて記録紙を選択させ、残余の受信手段では国際電話番号に無関係に記録紙を選択させるようにすることもできる。
【0027】
したがって、本請求項の通信機は、予め定める相手側通信機からの対象信号を予め定める種類の記録紙に印刷させる通信機と汎用の通信機とを、1体の通信機で兼用することができる。したがって、この通信機を用いて従来技術の通信機と同様に通信を行うことができ、かつさらに記録紙の選択のための操作を簡略化することができる。これによって、通信機の使い勝手をさらに向上させることができる。
【0043】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の第1実施形態の通信機であるファクシミリ装置1の概略的な電気的構成を表すブロック図である。このファクシミリ装置1は、原稿を読取ってその読取り結果を印刷する複写機を兼ねる。ファクシミリ装置1は、画像読取り部3と、ファクシミリ制御部4と、画像出力部5とを含む。ファクシミリ制御部4は、公衆回線17,18を収納しており、通信制御部7,8と、回線選択部9と、画像記憶部10とを含む。通信制御部7は、送受部11と、番号記憶部12と、判定部13とを含む。通信制御部8は、送受部14と、番号記憶部15と、判定部16とを含む。
【0044】
画像読取り部3は、読取り対象物である原稿を読取ってその原稿像を表す画像データ信号を作成し、その画像データ信号を画像記憶部10と画像出力部5とに与える。画像読取り部3は、ファクシミリ装置において送信対象となる原稿を読取るための読取り手段と、複写機において複写対象となる原稿を読取るための読取り手段とを兼用する。
【0045】
通信制御部7のうちの送受部11は、公衆回線17と接続される。送受部11は、ファクシミリ通信のための送信回路と受信回路とを備え、公衆回線17を介して相手側ファクシミリ装置との間で回線を確立して、後述する伝送フェイズに基づいてファクシミリ通信を実施する。番号記憶部12は、予め定める通信先である相手側ファクシミリ装置の国際電話番号を予め記憶する。番号記憶部12に記憶された国際電話番号は、通信制御部7と通信を行うことが許容された予め定める相手側ファクシミリ装置を表す識別信号に相当する。判定部13は、後述の伝送フェイズのうちのフェイズBで送信される送信端末識別信号TSIから国際電話番号を抽出し、その国際電話番号と番号記憶部12に記憶された国際電話番号とが一致するか否かを判定する。送受部11は判定部13の比較結果に応答して、両国際電話番号が一致したとき、ファクシミリ通信を続けて対象信号を受信する。両国際電話番号が一致しないとき、送受部11は、対象信号を受信しないままファクシミリ通信を終了する。対象信号は、画像データ信号を、ファクシミリ通信の伝送方式に応じて変換した信号である。
【0046】
通信制御部8の各部14〜16は、通信制御部7の各部11〜13と比較して、公衆回線17が公衆回線18に置換えられた点が異なり、他の構成および動作は等しい。また、通信制御部8は、各部15,16が省略されて送受部14だけで構成されて、一般的な通信制御を行うものであってもよい。また、通信制御部7,8の各部11〜16は、通信制御部7,8を構成する演算回路の演算動作によって実現される仮想回路であってもよく、実在の回路であってもよい。
【0047】
回線選択部9は、全通信制御部7,8のうちのいずれか1つを選択して、選択した通信制御部と画像記憶部10とを接続する。これによって、選択された通信制御部で受信された対象信号が、画像記憶部10に記憶される。また、画像読取り部3から出力されて画像記憶部10に記憶された画像データ信号を選択した通信制御部に与えて、その選択した通信制御部の送受部で対象信号に変換して、該送受部から相手側ファクシミリ装置に送信させる。
【0048】
さらに、回線選択部9は、通信制御部7,8で同時に対象信号が受信された場合、各判定部13,16の判定結果に応答して、送受部11,14で受信された対象信号の出力動作を切換える。たとえば、判定部13,16のいずれか一方の判定部で国際電話番号が一致したと判定されたとき、そのいずれか一方の判定部を含む通信制御部の送受部で受信された対象信号を、いずれか他方の判定部を含む通信制御部の送受部で受信された対象信号に先立って出力する。また、判定部13,16の両方で国際電話番号が一致したとき、回線選択部9は、送受部11,14で受信された対象信号を集約して単一の対象信号として出力し、画像記憶部10に記憶させる。回線選択部9は、請求項の出力手段に当たる。
【0049】
画像出力部5は、画像記憶部10に記憶された対象信号を取得し、その対象信号を画像展開して、画像データ信号を取得する。または、画像読取り部3によって作成された画像データ信号を取得する。画像出力部5は、これら画像データ信号が表す画像を、記録紙に印刷する。またはその画像を表示装置に表示する。画像出力部5は、ファクシミリ装置において受信された画像データ信号を印刷または表示するための手段と、複写機において読取られた画像を印刷または表示するための手段とを兼用する。
【0050】
図2は、ファクシミリ装置1の基本的な電気的および機械的構成を表すブロック図である。図3は、ファクシミリ装置1の具体的な機械的構造を表す図である。図2,3を併せて説明する。図2では、信号の流れを実線の矢符で表し、記録紙の流れを破線の矢符で表し、光を1点鎖線の矢符で表す。ファクシミリ装置1は、画像読取り部3とファクシミリ制御部4と画像出力部5との他に、操作部30と中央制御部105とハンドセット109とを含む。
【0051】
操作部30は、ファクシミリ装置1の操作者がファクシミリ装置1を操作するために備えられ、たとえば、表示装置とキースイッチと警告灯を含む。表示装置には、操作のために必要な情報が表示される。操作者は、表示装置に表示された情報を参照して操作内容を決定し、それに応じてキースイッチを操作する。キースイッチの操作結果が、操作部30からの操作結果として、ファクシミリ装置1の各部に供給される。警告灯は、ファクシミリ装置1の動作状態を操作者に知らせるときに、その動作状態に応じた所定の態様で点灯する。
【0052】
画像読取り部3は、透明平板である原稿載置台33、両面対応型の自動原稿送り装置34、およびスキャナ部35を含む。
【0053】
原稿載置台33は、ファクシミリ装置1の筺体1aの鉛直方向上側の部分に、はめ込まれる。ゆえに、原稿載置台33を通して筺体1a内部から外部を見ることができる。両面対応型の自動原稿送り装置34は、原稿載置台33の上側に配置される。自動原稿送り装置34は、複数枚の原稿を原稿収納部36に予め収納しておき、操作者によって指定された送給手法を用いて、原稿の片面または両面が原稿載置台33の表面に向くように、原稿を一枚ずつ原稿載置台33に送給する。指定された送給手法が原稿の片面だけを読取らせる手法であれば、その原稿は1回だけ原稿載置台33に送給される。原稿の両面を読取らせる手法であれば、その原稿は1回原稿載置台33に送給された後、面の向きを逆転させてから、原稿載置台33に再び送給される。
【0054】
スキャナ部35は、発光源37、反射鏡38〜40、撮像素子42,および結像レンズ43を含む。発光源37は、たとえばランプリフレクタアセンブリで実現され、原稿を露光するために、原稿載置台33に載置された原稿に向かってレーザ光を発射する。このレーザ光は、原稿載置台33を通過して原稿表面に当たり、その原稿表面で該原稿の像の濃淡に応じた反射率で反射される。原稿からの反射光は、反射鏡38〜40によって順次反射されて、その光路が折曲げられる。これによって、原稿からの反射光によって表される反射光像は、折線41で表す光路をたどって、複数の光電変換素子を含む撮像素子42の結像面に導かれる。結像レンズ43は、反射鏡40と撮像素子42との間の光路上に介在され、反射光像を、撮像素子42の結像面上に結像させる。
【0055】
撮像素子42の結像面には、光電変換素子が複数並べられている。各光電変換素子は、この撮像素子で得られる画像の各画素に対応する。撮像素子42は、結像面上に結像された反射光像を、各光電変換素子で分割して受光する。各光電変換素子は、その光電変換素子で受光した反射光の受光量に対応して、対応する画素の濃度を表す画素データを出力する。この画素データは、この段階では、反射光の受光量に比例して増減するアナログ電気信号である。全光電変換素子からの画素データの集合が、画像を表すアナログ画像信号として、撮像素子から出力される。このアナログ画像信号は、画像処理部45に与えられる。
【0056】
画像処理部45は、アナログ画像信号をデジタル信号である画像データ信号に変換して記憶する。この画像データ信号は、ファクシミリ制御部4の画像記憶部10に与えられて記憶される。さらに、画像データ信号から、原稿像を含み記録紙に印刷すべき画像を表す印刷データ信号を生成して、画像出力部5に与える。画像処理部45の詳細な構造および動作は後述する。
【0057】
画像出力部5は、給紙部51、第1および第2トレイ52,53、手差し給紙部66、画像形成部81、搬送部91、定着部95、ソータ100を含む。給紙部51は、記録紙を収納するための第1および第2トレイ52,53に関連して設けられる。給紙部51,第1および第2トレイ52,53、ならびに手差し給紙部66は、供給部201を構成する。画像形成部81と搬送部91と定着部95とは、印刷部202を構成する。
【0058】
第1および第2トレイ52,53は、載置部材54,55をそれぞれ含む。載置部材54,55は、第1および第2トレイ52,53の鉛直方向上側に設けられ、給紙部51側の端部が、第1および第2トレイ52,53の底面から離反する方向および近接する方向に角変位自在となるように、第1および第2トレイ52,53に取付けられる。記録紙は、この載置部材54,55上にその端部が載置されるように、第1および第2トレイ52,53に載置される。載置部材54,55が底面から離反する方向および近接する方向のどちらに角変位するかは、中央制御部105内の出力トレイ切換部105aによって制御される。
【0059】
給紙部51は、呼込みローラ56,57、第1および第2案内部材58,59、各一対の給紙ローラ60,61および各一対の搬送ローラ62,63を含む。呼込みローラ56,57は、載置部材54,55の前記端部が底面から離反する方向に角変位された状態で前記端部に近接する位置に設けられる。第1案内部材58は、第1および第2トレイ52,53の前記端部側に、ファクシミリ装置1の底面に対してほぼ垂直に設けられ、その下側端部が第2トレイ53に近付くように弯曲する。第2案内部材59は、第1トレイ52の前記端部側に設けられ、その下側端部が第1トレイ52に近付くように弯曲する。給紙ローラ60,61は、呼込みローラ56,57と各案内部材59,58との間に配置される。搬送ローラ62は、第1案内部材58のうちで給紙ローラ61よりも上側に配置される。搬送ローラ63は、第1および第2案内部材58,59の上側端部の近傍に配置される。給紙部51の各ローラの動作は、出力トレイ切換部105aによって制御される。
【0060】
手差し給紙部66は、記録紙を載置するための載置台67と、呼込みローラ68と、一対の給紙ローラ69とを含む。載置台67は、ファクシミリ装置1の筺体1aの開口部に設けられて、外部から記録紙を載置することができる。この載置台67は、筺体1aの側面にその底面が平行になるように、筺体内1aに収納することができ、図3では収納した状態で表す。呼込みローラ68は載置台67の開口部近傍に設けられる。給紙ローラ69は、呼込みローラ68よりも筺体1aの内側に設けられる。手差し給紙部66の各ローラの動作は、出力トレイ切換部105aによって制御される。
【0061】
第2トレイ53から記録紙を供給するとき、出力トレイ切換部105aは、まず載置部材55を底面から離反する方向に角変位させる。この状態で呼込みローラ57を回転させると、第2トレイ53に載置された記録紙のうちで最も上方に載置された記録紙が、一対の給紙ローラ61の間にその先端が当接するように搬送される。この状態で一対の給紙ローラ61を回転させると、記録紙はその一対の給紙ローラ61の間を通過して、第1案内部材58にその先端が当接するように搬送される。先端が当接した後、記録紙は第1案内部材58に沿って筺体1aの鉛直方向下方から鉛直方向上方に搬送される。途中、記録紙は一対の搬送ローラ62の間を通過し、このときにこれら搬送ローラ62を回転させることによってさらに上方に搬送される。さらにこの記録紙は、一対の搬送ローラ63の間を通過し、このときにこれら搬送ローラ63を回転させることによって、画像形成部81へと搬送される。この一連の動作によって、記録紙は曲線71で表す搬送経路を通過して、第2トレイ53から画像形成部81に搬送される。
【0062】
第1トレイ52から記録紙を供給するとき、出力トレイ切換部105aは、まず載置部材54を底面から離反する方向に角変位させる。この状態で呼込みローラ56を回転させると、第1トレイ52に載置された記録紙のうちで最も上方に載置された記録紙が、一対の給紙ローラ60の間にその先端が当接するように搬送される。この状態で一対の給紙ローラ60を回転させると、記録紙はそれら一対の搬送ローラ60の間を通過して、第2案内部材59にその先端が当接するように搬送される。先端が当接した後、記録紙は第2および第1案内部材59,58に沿って搬送されて一対の搬送ローラ63の間を通過する。このときこれら搬送ローラ63を回転させることによって、記録紙は画像形成部81へと搬送される。この一連の動作によって、記録紙は曲線72で表す搬送経路を通過して、曲線71で表す搬送経路に途中から合流し、この搬送経路を通過する。これによって記録紙は、第1トレイ52から画像形成部81へと搬送される。
【0063】
手差し給紙部66から記録紙を供給するとき、まず載置台67をその底面が略水平になるように設置して、その上に記録紙を載置する。この状態で出力トレイ切換部105が呼込みローラ68を回転させると、載置台67に載置された記録紙のうちで最も上方に載置された記録紙が、一対の給紙ローラ69の間にその先端が当接するように搬送される。この状態で一対の給紙ローラ69を回転させると、記録紙はその一対の搬送ローラ69の間を通過して、画像形成部81へと搬送される。この一連の動作によって、記録紙は曲線73で表す搬送経路を通過して曲線71で表す搬送経路に途中から合流し、この搬送経路を通過する。これによって、記録紙は、載置台67から画像形成部81へと搬送される。
【0064】
画像形成部81は、感光体82、帯電部83、露光部84、現像部85、転写部86、除電部87、および清掃部88を含む。搬送部91は、一対のレジストローラ91とサクション92とを含む。画像形成部81は、いわゆる電子写真方式、またはPPC(PLAIN PAPER COPIER)方式によって、記録紙に画像を印刷する。搬送部91は、給紙部51または手差し給紙部52から給紙された記録紙を画像形成部81に搬送し、さらに画像印刷後の記録紙を画像形成部81から定着部95に搬送する。
【0065】
円筒状の感光体82は、その底面中心を回転軸線として、円周方向に平行な副走査方向に回転している。帯電部83、現像部85、転写部86、除電部87、および清掃部88は、感光体82の円周に沿って、副走査方向にこの順で配置される。また帯電部83と現像部85との間を通過して、感光体82表面に、露光部83から発射されたレーザ光が照射される。PPC方式では、帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程、および除電工程の5つの基本工程と感光体82を繰返し使用するための清掃工程とを含む6つの工程を繰返すことによって、記録紙に画像を繰返し印刷することができる。
【0066】
具体的には、画像形成部81が画像を印刷するとき、まず、帯電部83によって、感光体82の表面を一様に帯電させる。露光部84は、その内部のシーケンスコントローラによって制御され、画像処理部45から与えられた2値信号である印刷データ信号のビットに応じて、光源89からのレーザ光の発射と停止が制御される。露光部84は、光源89からのレーザ光を時間経過に伴って偏向角度を変化させつつ偏向させて発射し、そのレーザ光によって、感光体82の帯電済の表面を、円筒の回転軸線に平行な主走査方向に走査する。これによって、感光体82表面に静電潜像が形成される。現像部85は、その内部に収納されるトナー剤を感光体82表面に付着させることによって静電潜像を現像する。これによって、静電潜像がトナー像として顕像化される。
【0067】
一対のレジストローラ92は、そのローラ間に給紙部51または手差し給紙部66から供給された記録紙を通過させて、感光体82と転写部86との間に搬送する。転写部86は、感光体82表面のトナー像を、搬送された記録紙に転写する。転写後の記録紙は、サクション93によって、定着部95に搬送される。サクションは、たとえば、両端が接続された帯状部材の内側にローラを挿入し、そのローラを回転させることによって帯状部材を移動させ、かつ帯状部材に空気流れによって搬送すべき物体を吸着させるものであり、帯状部材の上に載置された物体がそのまま搬送される。転写後の感光体82は、除電部87によってその表面の電荷が除去された後、清掃部88によって、その表面に残ったトナーを除去して清掃される。清掃後、感光体82は、帯電工程から清掃工程までの一連の工程を再度実施することができる状態に戻る。
【0068】
定着部95は、加熱源96、一対の加熱ローラ97、剥離爪98、および清掃用ローラ102,103を含む。加熱源96は、一対の加熱ローラ97の一方のローラ内部に備えられ、加熱ローラ97を予め定める温度まで加熱する。搬送部81によって搬送された記録紙は、一対の加熱ローラ97間を通過する。このとき、加熱ローラ97の熱によって記録紙上のトナーが融解し、加熱ローラ97通過後にトナーが冷えて記録紙に固着する。これによって、トナー像が記録紙に定着される。
【0069】
加熱後の記録紙は、剥離爪98によって加熱ローラ97から剥離されて、筺体1aの排出口99から筺体1a外部に排出される。また排出口99にソータ100が取付けられているとき、剥離後の記録紙は、排出分離部材101によってソータ100の各トレイに収納されるように排出される。また、操作部30から両面印刷が指示されるとき、記録紙の片面への印刷が終了した段階では、記録紙は排出口またはソータ100には排出されず、第1トレイ52に戻される。第1トレイ52は、この記録紙を裏返して、載置される記録紙のうちの最も上に載置する。記録紙剥離後の一対の加熱ローラ97は、清掃用ローラ102,103によって、その表面に付着したトナーが除去される。
【0070】
中央制御部105は、操作部30、画像読取り部3、画像処理部45、ソータ100の挙動を制御し、これらの動作を同期させる。このために、中央制御部105は、各部30,3,45およびソータ100との間でシリアル通信を行う。
【0071】
ファクシミリ制御部4を構成する各種の回路部品は3枚の基板に分けて実装され、主制御基板部材106と副制御基板部材107と電話制御基板部材108とを構成する。主制御基板部材106は、ファクシミリ通信の回線制御やファクシミリの各種の機能の制御を行うための回路部品を含む。副制御基板部材107は、画像出力部5と主制御基板部材106との間の画像データ信号のインタフェイスとして動作する回路部品を含む。また副制御基板部材107は、画像出力部5をファクシミリ装置の印刷手段として用いるために、対象信号を画像展開して、画像データ信号を生成するための回路部品も含む。電話制御基板部材108は、公衆回線17,18とファクシミリ制御部4との物理的な接続と、基本的な電話制御を行うための回路部品を含む。また、電話制御基板部材108に関連して、ハンドセット109が備えられる。ハンドセット109を用いるとき、電話制御基板部材108は、公衆回線17,18を介して、相手側電話機との間で回線を確立して、音声信号を送受させる。
【0072】
図4は画像処理部45の具体的な電気的構成を表すブロック図である。画像処理部45は、概略的には、信号入力部111、信号処理部112、信号出力部113、およびメモリ114を含む。このメモリ114は、たとえば前述の画像記憶部10を兼ねていても良く、別個に準備されてもよい。
【0073】
信号入力部111は、初期処理部117、ヒストグラム処理部118および誤差拡散処理部119を含む。信号入力部111は、概略的には、撮像素子42から出力されたアナログ画像信号をデジタル信号に変換し、その濃度情報を表すヒストグラムをとりながら、誤差拡散法によって2値化して、メモリ114に一旦記憶する。
【0074】
具体的には、撮像素子42からのアナログ画像信号は初期処理部117に与えられる。初期処理部117は、アナログ画像信号を構成する各画素の画素データをアナログ/デジタル変換し、さらに、MTF補正、白黒補正およびガンマ補正を行う。これによって、各画素データは、たとえば256階調、すなわち8ビットのデジタル信号としてヒストグラム処理部へ出力される。ヒストグラム処理部118は、初期処理部117から出力された画素データを、256階調の画素濃度別に加算する。これによって、画像の濃度情報であるヒストグラムデータが得られる。このヒストグラムデータは中央制御部105および誤差拡散処理部119に与えられる。
【0075】
誤差拡散処理部119では、疑似中間調処理の一種である誤差拡散法を用いて、初期処理部117から出力された画素データを2値化する。誤差拡散法は、2値化処理によって発生する誤差を、処理対象の画素に隣接する画素の2値化判定に反映させる方法である。具体的には、誤差拡散処理部119は、初期処理部117から出力された8ビットのデジタル信号である画素データを2値化して、1ビットのデジタル信号にに変換し、さらに、画像を印刷するときに原稿内の局所領域の濃度を忠実に再現するための再配分演算を行う。誤差拡散処理部119によって処理された各画素データは、元の画像信号と同様に集約されて、画像データ信号として、メモリ114に記憶される。
【0076】
信号処理部112は、多値化処理部121,122、合成処理部123、濃度変換処理部124、変倍処理部125、画像プロセス部126、誤差拡散処理部127、圧縮処理部128およびパターンジェネレータ129を含む。信号処理部112は、概略的には、メモリ114に記憶された画像データ信号を、ファクシミリ装置1の操作者が希望する画像を表す印刷データ信号に変換して、再度メモリ114に記憶させる。ただし、信号処理部112に含まれている各処理部121〜128は、必要に応じて機能するものであり、たとえば操作部30からの指示によって休止する場合もある。この場合、その処理部は、入力された信号をそのまま出力する。
【0077】
具体的には、まず多値化処理部121,122は、メモリ114から誤差拡散処理部119で2値化された各画素データを読出し、その画素データを256階調を表す画素データに再度変換する。合成処理部123は、多値処理部121,122から出力された画素データとパターンジェネレータ129から出力されたビットデータとを合成するために、各画素データ毎に論理演算を選択的に実施する。論理演算は、論理和、論理積、および排他的論理和の演算を含む。
【0078】
濃度変換処理部124には、予め、画像の各画素の濃度を補正するために、原稿の画素の濃度に対する出力画像の画素の濃度の関係を表す階調変換テーブルが記憶されている。濃度変換処理部124は、この階調変換テーブルに基づいて、合成処理部123から出力された画素データを補正する。変倍処理部125は、操作部30から指示された変倍率に応じて、濃度変換処理部124から出力された画素データの集合である画像データ信号が表す画像を拡大または縮小する。具体的には、拡大または縮小後の画像の各画素の濃度を表す画素データを、濃度変換処理部124から出力された画素データを用いた補間処理を行うことによって求める。この処理は、たとえば、拡大または縮小後の画像のうちで感光体82の副走査方向に対応する方向に並ぶ画素について行われた後に、感光体82の主走査方向に対応する方向に並ぶ画素について行われる。
【0079】
画像プロセス部126は、変倍処理部125から出力された画像データ信号に対して、様々な画像処理が行われる。また、この画像データ信号から、特徴抽出などのデータ列に対する情報収集が行われる。誤差拡散処理部127は、信号入力部111の誤差拡散処理部119と同じ処理によって、画像プロセス部126から出力された画像データ信号を2値化して、印刷データ信号を作成する。圧縮処理部128では、たとえばランレングス符号化によって、印刷データ信号を圧縮する。また、多値化処理部121,122から誤差拡散処理部128までの処理を数回繰返すような場合、圧縮処理部128は、最終的に印刷データ信号として画像処理部45から出力されるべき画像データ信号が作成された時点で動作し、その他のときは休止する。圧縮後の印刷データ信号は、メモリ114に記憶される。
【0080】
信号出力部113は復元部131、多値化処理部132、および誤差拡散処理部133を含む。信号出力部131は、概略的には、圧縮された状態でメモリ114に記憶されている印刷データ信号を復元し、さらに元の256階調の信号に再度変換して4値データの誤差拡散を行い、露光部84にそのデータを与える。具体的には、復元部131は、メモリ114から圧縮された印刷データ信号を読出して伸長することによって、印刷データ信号を復元する。多値化処理部132は、信号処理部113の多値化処理部121,122と同じ処理によって、復元部131から出力された印刷データ信号の各画素データを多値化する。誤差拡散処理部133は、4値データの誤差拡散法を用いて、多値化処理部132から出力された画素データを4値化する。4値データの誤差拡散法は、信号入力部111の誤差拡散処理部119で行われた2値データの誤差拡散法と類似の処理であり、その結果得られる画素データは、2値データの誤差拡散法によって処理された画素データよりも滑らかな中間調表現を行うことができる。
【0081】
これら画素データで構成される印刷データ信号は、画像形成部81の露光部84に与えられる。露光部84では、この印刷データ信号の各画素データを、光源89によるレーザ光の発振/休止を制御するための信号に変換して、光源89に与える。これによって光源89は、印刷データ信号の画素データの値に応じて、レーザ光を発振/休止する。
【0082】
なお、画像データ信号および印刷データ信号は、メモリ114の容量を削減するため、基本的には2値化されたデジタルデータの形態でメモリ114に記憶され、この形態で信号入力部111、信号処理部112、および信号出力部113に取扱われる。これらデータ信号は、データ信号の劣化を考慮して、4値化されたデジタルデータの形態で記憶しかつ取扱うようにしてもよい。また、画像データ信号に代わって印刷データ信号をファクシミリ制御部4に与えて、この印刷データ信号から対象信号を作成してもよい。
【0083】
図5は、ファクシミリ通信の基本的な伝送フェイズを説明するための制御フロー図である。図5では、線分138,139が送信側および受信側ファクシミリ装置を示し、これら線分138,139間の矢印が、両ファクシミリ装置で送受される信号を表す。この信号は、公衆回線内の各種の装置、たとえば交換機を経由し、そのときに信号に処理が施されることもあるが、その説明は省略する。また、線分138,139に平行に時間軸が設定されており、矢印で表す信号の送受タイミングは、図面の上側の矢印よりも下側の矢印のほう遅い。この伝送フェイズは、いわゆるバイナリ符号方式の伝送フェイズである。ファクシミリ通信の伝送フェイズは、フェイズA〜フェイズEに分けられる。
【0084】
フェイズAは、呼の設定および回線確立を行う過程である。送信側ファクシミリ装置と受信側ファクシミリ装置とが公衆回線に接続された状態で、まず送信側ファクシミリ装置は、受信側ファクシミリ装置に、1100Hzのトーン信号であるコーリングトーン(Calling Tone)TELを与える。受信側ファクシミリ装置は、コーリングトーンTELに応答して、2100Hzのトーン信号である被呼端末識別信号(Called Station Identification)CEDを、送信側ファクシミリ装置に与えて、フェイズAを終了する。これによって、両ファクシミリ装置間で回線が確立される。フェイズA終了後、フェイズBに移る。
【0085】
フェイズBは、対象信号の伝送のための前処理の過程である。まず、受信側ファクシミリ装置は、送信側ファクシミリ装置に、デジタル識別信号(Digital Identification Signal)DIS、被呼端末識別信号(Called Subscriber Identification)CSI、非標準機能識別信号(Non-Standard Facilition)NSFを与える。これら信号DIS,CSI,NSFに応答して、送信側ファクシミリ装置は、受信側ファクシミリ装置に、非標準機能設定信号(Non-Standard facilities Set-up)NSS、送信端末識別信号(Transmitting Subscriber Identification)TSI、トレーニングチェック(Training Check)TCFを順次出力する。受信側ファクシミリ装置は、これら信号NSS,TSI,TCFに応答して、送信側ファクシミリ装置に、受信準備確認信号(Confirmation to Receive)CRFを送信して、フェイズBを終了する。フェイズB終了後、フェイズCに移る。また、フェイズB中に、送信側または受信側ファクシミリ装置に対象信号の送受に拘わる不都合が生じたとき、受信側ファクシミリ装置は、受信準備確認信号CFRに代わって、対象信号の送受の中止を指示する制御信号を出力して、フェイズBからフェイズEに移る。
【0086】
デジタル識別信号DISは、受信側ファクシミリ装置がCCITT標準の受信機能を有することを表す。被呼端末識別信号CSIは、国際電話番号によって、受信側ファクシミリ装置を表す。非標準機能識別信号NSFは、Tシリーズ勧告の範囲外にある非標準機能のうちで受信側ファクシミリ装置で実施可能な機能を表示する。非標準機能設定信号NSSは、非標準機能識別信号NSFによって表示された非標準機能のうちで、送信側ファクシミリ装置が使用することを選択した機能を示し、この機能の実施を設定するための命令信号である。送信端末識別信号TSIは、国際電話番号によって、送信側ファクシミリ装置を表す。トレーニングチェックTCFは、受信側ファクシミリ装置に備えられるモデムのトレーニングを確かめ、トレーニングチェックを送信したときの信号の伝送速度でチャネルを使用することができるか否かを確認するための信号である。受信準備確認信号CRFは、受信側ファクシミリ装置における対象信号を受信する準備が完了し、対象信号の送出を開始してよいことを送信側ファクシミリ装置に示すための応答信号である。
【0087】
フェイズCは、対象信号を伝送する過程である。受信準備確認信号CFRを受信した後、送信側ファクシミリ装置は、受信側ファクシミリ装置に、送信すべき画像を表す対象信号を与える。対象信号は、1頁の画像毎、すなわち画像読取り部3で読取られる原稿1枚毎に作成されており、原稿が複数枚あるとき、同数の対象信号が準備される。各頁の画像を表す対象信号が送信されるたびに、それを示す制御信号が送信される。対象信号の送信と並行して、両ファクシミリ装置間で、送信確認および同期保持等の処理のための制御信号が送受される。対象信号をすべて送信すると、フェイズCを終了する。フェイズC終了後、フェイズDに移る。
【0088】
フェイズDは、対象信号の伝送のための後処理の過程である。対象信号の送信終了後、送信側ファクシミリ装置は、受信側ファクシミリ装置に、手順終了信号(End Of Procedures)EOPを与える。この信号に応答して、受信側ファクシミリ装置は、送信側ファクシミリ装置に、メッセージ確認信号MCF(Message Confirmation)を与えて、フェイズDを終了する。フェイズD終了後、フェイズEに移る。手順終了信号EOPは、対象信号の頁終了と、準備された対象信号のうちで未だ送信されていない対象信号がないことを表す。メッセージ確認信号MCFは、手順終了信号EOPの肯定応答であり、対象信号が誤りなく受信されたことを示す。
【0089】
フェイズEは、呼の解除および回線切断のための過程である。メッセージ確認信号MCFを受信した後、またはフェイズBで出力された中止を指示する制御信号を受信した後、送信側ファクシミリ装置は、受信側ファクシミリ装置に、切断命令信号(Desconnect)DCNを与えて、該送信側ファクシミリ装置と公衆回線との回線を切断する。受信側ファクシミリ装置は、切断命令信号DCNに応答して、公衆回線が該受信側ファクシミリ装置との回線を切断して、フェイズEを終了する。切断命令信号DCNは、受信側ファクシミリ装置にフェイズEの開始を指示するための制御信号である。このように、フェイズA〜フェイズEまでの一連の処理手順に基づいて、ファクシミリ通信が実施される。
【0090】
図6は、通信制御部7で実施される受信動作を説明するためのフローチャートである。通信制御部7は、相手側ファクシミリ装置からの各種の信号を受信可能な待機状態で待機し、この状態で、コーリングトーンTELが与えられると、ステップa1からステップa2に進む。ステップa2では、送受部11は、前述のフェイズAの受信側の処理手順に従って信号を送受することによって、呼の設定および回線の確立を行う。次いで、ステップa3では、送受部11は、前述のフェイズBの受信側の処理手順に従って信号を送受することによって、前処理を行う。この前処理の実施中に、送信端末識別信号TSIが相手側ファクシミリ装置からファクシミリ装置1に与えられる。
【0091】
続いて、ステップa4では、判定部13は、まず、送信端末識別信号TSIから、相手側通信機の国際電話番号を抽出する。次いで番号記憶部12から予め定める国際電話番号を読出し、この読出した国際電話番号と抽出された国際電話番号とが一致するか否かを判定する。両国際電話番号が一致すると判定されたとき、ステップa4からステップa5に進み、送受部11は前述のフェイズCの受信側の処理手順に従って信号を送受することによって、対象信号を受信する。さらに、対象信号の受信終了後、ステップa6で、送受部11は、前述のフェイズDの受信側の処理手順に従って信号を送受することによって、後処理を行う。後処理終了後、送受部11はステップa7で前述のフェイズEの受信側の処理手順に従って信号を送受することによって回線を切断して、ステップa8で処理を終了する。
【0092】
また、ステップa4で、読出した国際電話番号と抽出された国際電話番号とが一致しないと判定されたとき、ステップa4から直接ステップa7に進み、送受部11によって対象信号を受信することなく、前述のフェイズEの受信側の処理手順に従って信号を送受することによって回線を切断して、ステップa8で処理を終了する。
【0093】
これによって、送受部11は、番号記憶部12に記憶された国際電話番号によって識別される相手側ファクシミリ装置からの対象信号をだけ受信し、その他のファクシミリ通信からの対象信号を受信しない。すなわち送受部11は、番号記憶部12に国際電話番号が記憶された予め定める相手側ファクシミリ装置以外の不特定多数のファクシミリ装置からの対象信号の受信を自動的に拒否する。これによって、通信部11および公衆回線17は、予め定める相手側ファクシミリ装置からの対象信号を受信するための専用の受信手段として動作する。ゆえに、予め定める相手側ファクシミリ装置がファクシミリ装置1に対して対象信号の送信を行う場合、送受部11は必ず空いているので、即座に相手側ファクシミリ装置からの信号を受信する。
【0094】
したがって、相手側ファクシミリ装置からファクシミリ装置1へ対象信号が送信されるとき、相手側ファクシミリ装置が送信動作を開始したときから相手側ファクシミリ装置とファクシミリ装置1との間で実際に回線が接続されて送信可能になるときまで送信待ち時間を、従来技術のファクシミリ装置よりも短縮することができる。また、通信制御部8も、図6のフローチャートで説明した手順を用いて受信動作を行うことによって、通信制御部7と同様に、送信待ち時間を短縮することができる。また上述の受信動作は、ファクシミリ装置1に公衆回線が1回線だけ収納されている場合も実施することができる。
【0095】
また、通信制御部7を上述したように各部11〜13を含む構成とし、通信制御部8の各部15,16を削除して送受部14だけを含む構成とすることによって、通信制御部8に識別信号に無関係に対象信号を受信させてもよい。このとき、ファクシミリ装置1では、通信制御部8の送受部14および公衆回線18を用いて、不特定多数の相手側ファクシミリ装置との間で対象信号の送受を行うことができる。したがって、このファクシミリ装置1は、通信制御部7を特定の相手側ファクシミリ装置からの対象信号の受信専用の通信制御部として用い、通信制御部8を汎用の通信制御部として用いることができる。
【0096】
ゆえに、通信制御部8を用いて不特定多数の相手側ファクシミリ装置と対象信号の送受を行う場合も、通信制御部7が空いているので、予め定める相手側ファクシミリ装置からの対象信号をいつでも即座に受信することができる。したがって、このファクシミリ装置では、不特定多数のファクシミリ装置との対象信号の送受を任意に行い、かつ予め定める相手側ファクシミリ装置の送信待ち時間を短縮することができる。これによって、ファクシミリ装置の使い勝手をさらに向上させることができる。また、上述の2つの動作は単一のファクシミリ装置によって実現することができるので、従来技術のように受信専用のファクシミリ装置と送受用のファクシミリ装置とを別個に設ける必要がなくなる。
【0097】
また、通信制御部7,8で同時に対象信号が受信された場合、回線切換え部9は、予め定める相手側ファクシミリ装置からの対象信号を優先的に画像出力部5に与えて印刷させる。具体的には、まず各判定部13,16によって、抽出された国際電話番号と予め定める国際電話番号との一致を調べる。一致する国際電話番号があるとき、回線制御部9は、その国際電話番号を含む送信端末識別信号TSIを受信した送受部で受信された対象信号を、他の送受部で受信された対象信号に先立って、画像出力部5に与える。また、両判定部13,16で国際電話番号が一致しないと判定されたときは、各送受部11,14で受信された対象信号を、予め定める順序で出力する。この順序は、たとえば着信順、または予め通信制御部7,8に定められた出力順序順である。
【0098】
これによって、予め定める相手側ファクシミリ装置から対象信号が送信されるとき、その対象信号を他の不特定多数の相手側ファクシミリ装置からの対象信号よりも優先的に出力することができる。これによって、たとえば、ファクシミリ装置1の公衆回線が混雑している場合、相手側ファクシミリ装置からファクシミリ装置への送信が行われるとき、対象信号が送信された時点から実際に対象信号が出力される時点までの出力待ち時間を短縮することができる。したがって、送信側ファクシミリ装置とファクシミリ装置1との間の通信に要する時間を短縮することができる。
【0099】
また、上述のように、通信制御部7,8が不特定多数の相手側ファクシミリ装置と対象信号の送受を行う場合、各番号記憶12,15に記憶された国際電話番号が異なっていても良い。この場合、回線選択部9は、通信制御部7,8が同時に対象信号を受信すると、それら対象信号を集約して、1つの対象信号として画像記憶部10に記憶させまた画像出力部5に与えるようにしてもよい。これは、たとえば以下のように利用される。
【0100】
まず、送信側では、送信すべき原稿を複数に分割し、分割後の各原稿を、番号記憶部12,15に記憶された国際電話番号によって識別される複数の相手側ファクシミリ装置によって、ファクシミリ装置1に個別に送信する。これによって、送信側で、原稿を読取って対象信号を作成するために要する時間を、単一のファクシミリ装置を用いて同じ元の原稿を送信する場合と比較して短縮することができる。また、各対象信号の信号量が原稿を一括して読取らせて作成した対象信号よりも少ないので、各送信側ファクシミリ装置から受信手段への対象信号の送信に要する時間を、原稿を一括して読取らせて作成した対象信号をそのまま送信する場合と比較して短縮することができる。
【0101】
受信側のファクシミリ装置1では、各通信制御部7,8がこの対象信号をほぼ同時に受信する。回線選択部9は、各判定部13,16の判定結果に応答して、両判定部で国際電話番号が一致すると判定されたときに、これら対象信号を集約する。これによって、元の原稿を表す対象信号が自動的に作成されるので、後の取扱いは、元の原稿を単一の相手側ファクシミリ装置から送信した場合と等しい。したがって、上述の手順で原稿を送信した場合、相手側ファクシミリ装置とファクシミリ装置1との間の通信に要する時間を短縮することができる。
【0102】
図7は、本発明の第2実施形態の通信機であるファクシミリ装置141の概略的な電気的構成を表すブロック図である。ファクシミリ装置141は、第1実施形態のファクシミリ装置1と比較して、ファクシミリ制御部4がファクシミリ制御部142に置換えられた点が異なり、他は等しい。また、ファクシミリ装置141の具体的な構成および基本的な送信フェイズは、第1実施形態のファクシミリ装置1と等しいので、説明は省略する。ファクシミリ装置141のうちでファクシミリ装置1と同一の部品には同一の符号を付し、説明は省略する。
【0103】
ファクシミリ制御部142は、通信制御部143,144と回線選択部9と画像記憶部10とを含む。通信制御部143,144は、送受部145,146と番号記憶部15,16と、判定部13,16とを個別に含む。通信制御部143に接続される公衆回線17は、たとえば、相手側ファクシミリ装置との間の回線を形成する。通信制御部144に接続される公衆回線18aは、たとえばいわゆる構内回線であり、転送側ファクシミリ装置との間の回線を形成する。転送側ファクシミリ装置は、相手側ファクシミリ装置から送信された対象信号の転送先となるべきファクシミリ装置である。
【0104】
送受部145,146は、ファクシミリ通信の送信回路と受信回路とを含み、対象信号の送受を行う。通信制御部143の送受部145は、相手側ファクシミリ装置の国際電話番号が番号記憶部12に記憶された国際電話番号と一致すると判定部13で判定された場合、その相手側ファクシミリ装置からの対象信号を、回線選択部を介して通信制御部144の送受部146に与えて、送受部146から転送側ファクシミリ装置に送信させる。
【0105】
このファクシミリ装置141では、たとえば、予め定める相手側ファクシミリ装置の国際電話番号を番号記憶部12に記憶させ、その相手側ファクシミリ装置からの対象信号を転送すべき部署に備えられる転送側ファクシミリ装置の国際電話番号、たとえば内線番号を、この国際電話番号に対応付けて予め記憶させておく。この状態で、予め定める相手側ファクシミリ装置からファクシミリ装置141に対象信号が送信された場合、ファクシミリ装置141は、自動的に転送側ファクシミリ装置に対象信号を受信させることができる。
【0106】
図8は、通信制御部143,144で実施される受信動作を説明するためのフローチャートである。通信制御部143は、相手側ファクシミリ装置からの信号を受信可能な待機状態で待機し、この状態で、相手側ファクシミリ装置からコーリングトーンTELが与えられると、ステップb1からステップb2に進み、公衆回線17を介して回線が接続されたことを確認して、ステップb3に進む。ステップb3では、送受部145は、前述のフェイズAの受信側の処理手順に従って信号を送受することによって、呼の設定および回線の確立を行う。次いで、ステップb4では、送受部145は、前述のフェイズBの受信側の処理手順に従って信号を送受することによって、前処理を行う。この前処理の実施中に、送信端末識別信号TSIが相手側ファクシミリ装置からファクシミリ装置141に与えられる。
【0107】
続いて、ステップb5では、判定部13は、まず、送信端末識別信号TSIから、相手側通信機の国際電話番号を抽出する。次いで判定部13は、番号記憶部12から予め定める国際電話番号を読出し、この読出した国際電話番号と抽出された国際電話番号とが一致するか否かを判定する。両国際電話番号が一致すると判定されたとき、ステップb5からステップb6に進み、ステップb6〜b11の転送処理を行う。この転送処理が行われる間、送受部145は、フェイズC〜Eの受信側の処理手順に従って、相手側ファクシミリ装置から送信される対象信号の受信動作を続ける。これによって、送受部145は対象信号を受信し、さらに対象信号の受信終了後に、回線を切断する。
【0108】
転送処理は、具体的には、以下のように行われる。まずステップb6で、送受部145は送受部146を起動させる。送受部146は、判定部13で一致すると判定された国際電話番号に応答して定められる転送側ファクシミリ装置の国際電話番号を取得し、公衆回線18aを介して、その転送側ファクシミリ装置に対して発呼する。すなわち転送側ファクシミリ装置に対してコーリングトーンTELを出力する。次いで、送受部146は、ステップb7で、前述のフェイズAの送信側の処理手順に従って信号を送受することによって、呼の設定および回線の確立を行う。転送側ファクシミリ装置は、これに応答して、フェイズAの呼の設定および回線の確立を行う。次いで、ステップb8では、送受部146は、前述のフェイズBの送信側の処理手順に従って信号送受することによって、前処理を行う。
【0109】
次いでステップb9では、送受部145で受信された対象信号を送受部146に与え、送受部146にフェイズCの送信側の処理手順に従って、この対象信号を転送側ファクシミリ装置に送信させる。さらに、対象信号の送信終了後、ステップb10で、送受部146は、前述のフェイズDの送信側の処理手順に従って信号を送受して、後処理を行う。後処理終了後、送受部146は、ステップb11で前述のフェイズEの送信側の処理手順に従って信号を送受することで回線を切断して、ステップb15で処理を終了する。このように対象信号が転送側ファクシミリ装置に転送されたとき、この対象信号は、転送側ファクシミリ装置の画像出力部で記録紙に印刷される。
【0110】
また、ステップb5で、読出した国際電話番号と抽出された国際電話番号とが一致しないと判定されたとき、ステップb4からステップb12に進む。ステップb12では、送受部145は前述のフェイズCの受信側の処理手順に従って信号を送受することによって、対象信号を受信する。さらに、対象信号の受信終了後、ステップb13で、送受部11は、前述のフェイズDの受信側の処理手順に従って信号を送受することによって、後処理を行う。後処理終了後、送受部11は、ステップb14で前述のフェイズEの受信側の処理手順に従って信号を送受することによって回線を切断して、ステップb15で処理を終了する。このように対象信号が転送されないとき、この対象信号は、ファクシミリ装置1の画像出力部5で記録紙に印刷される。したがって、通信制御部143では、番号記憶部12に記憶された国際電話番号によって識別される相手側ファクシミリ装置からの対象信号を、転送側ファクシミリ装置に自動的に転送する。
【0111】
これによって、このファクシミリ装置141は、予め定める相手側ファクシミリ装置と転送側ファクシミリ装置との間の中継用ファクシミリ装置として動作する。したがって、ファクシミリ装置141の操作者が対象信号の転送のための操作を行うことなく、自動的に対象信号の転送が行われる。したがって、ファクシミリ装置141を中継用ファクシミリ装置として動作させるために操作者がファクシミリ装置を操作する必要がないので、操作者の操作を簡略化することができる。またこの転送動作は、通信制御部144に公衆電話回線18aを介して接続されたファクシミリ装置を相手側ファクシミリ装置とみなし、通信制御部143に接続されたファクシミリ装置を転送側ファクシミリ装置とみなせば、上述のフローチャートで通信制御部143,144の動作を入換えるだけで実施することができる。
【0112】
また、上述のファクシミリ装置141では、転送側ファクシミリ装置は、構内回線である公衆回線を介して、ファクシミリ装置141に接続されていた。これによって、ファクシミリ装置141が公衆回線とは異なる別個の通信経路、いわゆる内線通信用の通信経路を持たない場合でも、このファクシミリ装置141と転送側ファクシミリ装置とを接続することができる。したがって、この接続構成では、ファクシミリ装置141に内線等の通信経路が備えられていなくても、内線通信用の通信経路を介してファクシミリ装置が接続された場合と同じようにファクシミリ装置を接続して、相互に対象信号を送受することができる。
【0113】
また、このファクシミリ装置141に内線通信用の通信経路が備えられている場合、さらに送受部145と内線通信用の通信経路とを接続/遮断するためのリレー回路を備えさせてもよい。この場合、ステップb5で国際電話番号が一致していると判定されたとき、送受部146を動作させるかわりに、送受部145がフェイズC〜Eの受信側の処理動作に基づいて信号を送受する間、このリレー回路によって送受部145と通信経路とを接続して、受信した対象信号を通信経路を介して転送側ファクシミリ装置に与えても良い。このように装置を構成すれば、ファクシミリ装置141に公衆回線が1回線だけ収納されている場合も、上述の受信動作を実施することができる。
【0114】
図9は、本発明の第3実施形態の通信機であるファクシミリ装置151の概略的な電気的構成を表すブロック図である。ファクシミリ装置151は、第1実施形態のファクシミリ装置1と比較して、ファクシミリ制御部4がファクシミリ制御部152に置換えられた点が異なり、他は等しい。また、ファクシミリ装置151の具体的な構成および基本的な送信フェイズは、第1実施形態のファクシミリ装置1と等しいので、説明は省略する。ファクシミリ装置151のうちでファクシミリ装置1と同一の部品には同一の符号を付し、説明は省略する。
【0115】
ファクシミリ制御部152は、通信制御部153,154と回線選択部9と画像記憶部10とを含む。通信制御部153,154は、送受部155,156と番号記憶部15,16と、判定部13,16とを個別に含む。送受部155,156は、ファクシミリ通信の送信回路と受信回路とを個別に含み、相手側ファクシミリ装置の国際電話番号が番号記憶部12に記憶された国際電話番号と一致すると判定部13で判定された場合、その国際電話番号に対応づけて予め定められる専用印字情報を読出し、第1および第2トレイ52,53ならびに手差し給紙部66のうちでこの専用印字情報によって指定されるトレイまたは給紙部から記録紙を画像形成部81に供給させ、この供給された記録紙に対象信号を印刷させる。
【0116】
図10は、通信制御部153で実施される受信動作を説明するためのフローチャートである。通信制御部153は、相手側通信機からの信号を受信可能な待機状態で待機し、この状態で、コーリングトーンTELが与えられると、ステップc1からステップc2に進む。ステップc2では、送受部155は、前述のフェイズAの受信側の処理手順に従って信号を送受することによって、呼の設定を行う。次いで、ステップc3では、送受部155は、前述のフェイズBの受信側の処理手順に従って信号を送受することによって、前処理を行う。この前処理の実施中に、送信端末識別信号TSIが相手側ファクシミリ装置からファクシミリ装置1に与えられる。
【0117】
続いて、ステップc4では、判定部13は、まず、送信端末識別信号TSIから、相手側通信機の国際電話番号を抽出する。次いで判定部13は、番号記憶部12から予め定める国際電話番号を読出し、この読出した国際電話番号と抽出された国際電話番号とが一致するか否かを判定する。両国際電話番号が一致すると判定されたとき、ステップc4からステップc5に進む。ステップc5では、送受部155は、その国際電話番号に対応付けられた専用印字情報をたとえば番号記憶部12から読出し、出力トレイ切換え部105aに、画像選択部9と画像記憶部10と印刷部202とを介して与える。出力トレイ切換え部105aは、この専用印字情報によって指定される第1および第2トレイ52,53または手差し給紙部66から記録紙が供給されるように、供給部201のうちで第1および第2トレイ52,53の載置部材54,55ならびに手差し給紙部66および給紙部51の各ローラを選択的に稼働させる。専用印字情報の供給後、ステップc5からステップc6に進む。
【0118】
また、ステップc4で両国際電話番号が一致しないと判定されたとき、出力トレイ切換え部105aは、画像形成部81に前記第1および第2トレイ51,52および手差し給紙部66のうちで任意のいずれか1つから記録紙を画像形成部81に供給されるように、前記載置部材54,55および各ローラを選択的に稼働させる。第1および第2トレイ51,52および手差し給紙部66のうちのいずれか1つは、たとえば、ファクシミリ装置151の初期設定で定められるもの、またはファクシミリ装置151の操作部30を操作者が操作することによって指定したものが選ばれる。この場合ステップc4から直接ステップc6に進む。
【0119】
ステップc6では、送受部155は、前述のフェイズCの受信側の処理手順に従って信号を送受することによって、対象信号を受信する。この対象信号は、たとえば受信動作と並行して、画像出力部5で記録紙に印刷される。さらに、対象信号の受信終了後、ステップc7で、送受部155は、前述のフェイズDの受信側の処理手順に従って信号を送受することによって、後処理を行う。後処理終了後、送受部11は、ステップc8で前述のフェイズEの受信側の処理手順に従って信号を送受することによって回線を切断して、ステップc9で処理を終了する。
【0120】
これによって、印刷部202では、予め定める相手側ファクシミリ装置からの対象信号を自動的に予め定める種類の記録紙に印刷させることができる。したがって、ファクシミリ装置151の操作者が記録紙の種類を切換えるための操作を行うことなく、自動的に記録紙が選択される。ゆえに、操作者の操作を簡略化することができる。これは、たとえば以下のような使用状況で用いられるとよい。
【0121】
たとえば、相手側ファクシミリ装置が日本国外に設置されている場合、その相手側ファクシミリ装置によって読取られる原稿は、一般的に、インチ系の用紙を使用していることが多い。ゆえに、この相手側ファクシミリ装置の国際電話番号を番号記憶部12に記憶させ、さらにこの国際電話番号に対応づけてインチ系の記録紙を収納したトレイを選択させるような専用印字情報を記憶させておく。これによって、この相手側ファクシミリ装置から送信された対象信号をインチ系の記録紙に印刷し、他の相手側ファクシミリ装置から送信された対象信号を、たとえばA判の記録紙に印刷することができる。
【0122】
また、このファクシミリ装置151で、第1実施形態のファクシミリ装置1で説明したように回線選択部9が通信制御部153,154が同時に受信した対象信号を集約して1つの対象信号とするようにした場合、通信制御部153,154の番号記憶部12,15に記憶された国際電話番号に対応する記録紙を同じ種類にしておけば、これら受信された対象信号を、同じフォーマットで印刷することができる。
【0123】
このように、第1〜第3実施形態のファクシミリ装置1,141,151は、対象信号の送信側である相手側ファクシミリ装置の国際電話番号に応じて、受信動作および出力動作を変更する。これらファクシミリ装置1,141,151は、複写機のための構成を含むので、画像出力部10において対象信号の印刷に関して実施可能な処理動作の数が、一般的なファクシミリ装置の画像出力部よりも多い。ゆえに、国際電話番号に応じた受信動作および出力動作を、これら処理動作の実施の有無を含むようにしてもよい。また、第1〜第3実施形態で説明した各種の受信動作および出力動作は、任意に組合されて実施されてもよい。たとえば、単一のファクシミリ装置で3種類の受信動作と2種類の出力動作とを全て実施してもよい。これによって、そのファクシミリ装置の使い勝手をさらに向上させることができる。
【0124】
たとえば、或る国際電話番号によって識別される相手側ファクシミリ装置から対象信号が送信されたとき、その対象信号を記録紙の両面に印刷するようにしてもよい。これによって、対象信号を印刷する記録紙の消費量を削減することができる。またこのとき、対象信号を複数回繰返し印刷して、対象信号を印刷した記録紙を複数部作成したり、これら記録紙を1部ずつステープル装置で綴じてもよい。このように処理することによって、従来技術のようにファクシミリ装置によって対象信号が印刷された記録紙を複写機でさらに複写して必要な部数の書類を作成するような動作を、国際電話番号に応じて自動的に実施することができる。したがって、国際電話番号、すなわち対象信号の送信元に応じて、自動的に書類の作成手法を変更することができる。
【0125】
第1〜第3実施形態のファクシミリ装置は、本発明の通信機の例示であり、主要な動作が等しければ、他の様々な形で実施することができる。特に各部の詳細な動作は、同じ処理の結果が得られれば、これに限らず他の動作によって実現されてもよい。また本発明の通信機は、送信側の通信機を識別するための識別信号が対象信号の送信に先立って送信される通信形態であれば、ファクシミリ装置以外の通信機によって実現されてもよい。たとえば発信番号を受信側の電話機に送信するサービスを併用した電話通信で実現され、たとえば留守番電話の記録の有無を発信側の電話番号に応じて切換えるようにしてもよい。
【0126】
【発明の効果】
【0128】
本発明によれば、通信機は、相手側通信機の国際電話番号と予め定める国際電話番号の一致の有無に応答して、受信動作を切換える。これによって、予め定める相手側通信機に対する受信動作と、その他の不特定多数の相手側通信機に対する受信動作とを、自動的かつ容易に切換えることができる。
また通信機は、相手側通信機の国際電話番号と予め定める国際電話番号とが一致するとき予め定める種類の記録紙に対象信号を印刷し、一致しないとき任意の種類の記録紙に対象信号を印刷する。したがって、本請求項の通信機の操作者が記録紙の種類を切換えるための操作を行うことなく、自動的に記録紙が選択される。ゆえに、操作者の操作を簡略化することができる。さらにこの通信機は、所定の相手側通信機からの対象信号を所定の種類の記録紙に印刷させる通信機と汎用の通信機とを、1体の通信機で兼用する。したがって、従来技術と同様に通信を行うことができ、かつさらに記録紙の選択のための操作を簡略化することができる。これによって、通信機の使い勝手をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態の通信機であるファクシミリ装置1の概略的な構成を説明するためのブロック図である。
【図2】ファクシミリ装置1の基本的な電気的および機械的構成を示すブロック図である。
【図3】ファクシミリ装置1の具体的な機械的構成を示す断面図である。
【図4】画像処理部45の具体的な電気的構成を示すブロック図である。
【図5】ファクシミリ装置1の基本的な伝送フェイズを説明するための図である。
【図6】ファクシミリ装置1の受信動作を説明するためのフローチャートである。
【図7】本発明の第2実施形態の通信機であるファクシミリ装置141の概略的な構成を説明するためのブロック図である。
【図8】ファクシミリ装置141の受信動作を説明するためのフローチャートである。
【図9】本発明の第3実施形態の通信機であるファクシミリ装置151の概略的な構成を説明するためのブロック図である。
【図10】ファクシミリ装置151の受信動作を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
1,141,151 ファクシミリ装置
3 画像読取り部
4 ファクシミリ制御部
5 画像出力部
9 回線選択部
11,14;145,146;155,156 送受部
12,15 番号記憶部
13,16 判定部
201 供給部
202 印刷部
51 給紙部
52 第1トレイ
53 第2トレイ
66 手差し給紙部
81 画像形成部
95 定着部
105a 出力トレイ切換部
Claims (2)
- 送受するべき対象信号を送信する相手側通信機を識別するための国際電話番号を受信する受信手段と、
予め定める相手側通信機の国際電話番号を記憶する記憶手段と、
記憶手段に記憶された国際電話番号と受信手段によって受信された国際電話番号とが一致するか否かを判定する判定手段と、
前記対象信号を記録紙に印刷する印刷手段と、
形状および大きさが異なる複数種類の記録紙のうちのいずれか1種類の記録紙を印刷手段に供給する供給手段とを含み、
前記受信手段は、判定手段によって国際電話番号が一致すると判定されたとき、対象信号の受信に関する第1の受信動作を行い、判定手段によって国際電話番号が一致しないと判定されたとき、第1の受信動作とは異なる第2の受信動作を行う手段であり、
前記第1の受信動作は、前記相手側通信機から送信された前記対象信号を受信し、複数種類の記録紙のうちで予め定める種類の記録紙を供給手段から印刷手段に供給させ、かつ印刷手段によって、供給された記録紙に該対象信号を印刷させる動作であり、
前記第2の受信動作は、前記相手側通信機から送信された前記対象信号を受信し、複数種類の記録紙のうちのいずれか1種類の記録紙を供給手段から印刷手段に供給させ、かつ印刷手段によって、供給された記録紙に該対象信号を印刷させる動作であることを特徴とする通信機。 - 送受するべき対象信号を送信する相手側通信機を識別するための国際電話番号を受信する複数の受信手段と、
予め定める相手側通信機の国際電話番号を記憶する記憶手段と、
記憶手段に記憶された国際電話番号と、各受信手段によって受信された国際電話番号とが一致するか否かを判定する判定手段と、
少なくとも1つの受信手段によって受信された国際電話番号が記憶手段に記憶された国際電話番号と一致すると判定手段によって判定されたとき、複数の受信手段で受信された対象信号を予め定める第1の出力動作によって出力し、各受信手段によって受信された国際電話番号が記憶手段に記憶された国際電話番号と一致しないと判定手段によって判定されたとき、複数の受信手段によって受信された対象信号を第1の出力動作とは異なる予め定める第2の出力動作によって出力する出力手段と、
前記対象信号を記録紙に印刷する印刷手段と、
形状および大きさが異なる複数種類の記録紙のうちのいずれか1種類の記録紙を印刷手段に供給する供給手段とを含み、
複数の前記受信手段のうちの少なくとも1つの受信手段は、判定手段によって国際電話番号が一致すると判定されたとき、対象信号の受信に関する第1の受信動作を行い、判定手段によって国際電話番号が一致しないと判定されたとき、第1の受信動作とは異なる第2の受信動作を行う手段であり、
前記第1の受信動作は、前記相手側通信機から送信された前記対象信号を受信し、出力手段に第1の出力動作を実行させる動作であって、第1の出力動作は、複数種類の記録紙のうちで予め定める種類の記録紙を供給手段から印刷手段に供給させ、かつ印刷手段によって、供給された記録紙に該対象信号を印刷させる動作であり、
前記第2の受信動作は、前記相手側通信機から送信された前記対象信号を受信し、出力手段に第2の出力動作を実行させる動作であって、第2の出力動作は、複数種類の記録紙のうちのいずれか1種類の記録紙を供給手段から印刷手段に供給させ、かつ印刷手段によって、供給された記録紙に該対象信号を印刷させる動作であることを特徴とする通信機。
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