JP3702069B2 - アルミニウム顔料組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は自動車、家電製品の塗装、あるいは印刷インキ等に利用されるアルミニウム顔料に関する。
【0002】
更に詳しくは、本発明は貯蔵中に粒子同志が殆ど凝集しない貯蔵安定性を示すアルミニウム顔料組成物に関する。
【0003】
【従来の技術】
アルミニウム顔料は通常、アルミニウム粉(例えばアトマイズド粉)をボールミル、振動ミル、遊星ミル、スタンプミル、アトライター等の粉砕機によりフレーク状に粉砕して製造される。
【0004】
アルミニウム粉の粉砕の際に通常、オレイン酸、ステアリン酸等の脂肪酸が粉砕助剤として用いられており、粉砕助剤はアルミニウム粉の粉砕微細化および研磨工程(あるいは摩砕工程)において潤滑剤として働くとともに、アルミニウムフレーク粒子の表面に吸着して粒子同志の二次凝集を防止し、またアルミニウム粉顔料の塗料ビヒクルへの分散性、再分散性、分散安定性の向上等に寄与する。
【0005】
自動車、家電製品等のメタリック塗装にオレイン酸等の不飽和脂肪酸を粉砕助剤として製造したアルミニウム顔料が汎用されている。ところが不飽和脂肪酸自体はその構造中に不飽和二重結合を有しているため、大気中に長期間さらされるとラジカル反応を起こしポリマー化するという性質を有している。よって、不飽和脂肪酸を粉砕助剤として用いたときには、アルミニウム顔料の粒子表面に吸着した不飽和脂肪酸が大気中に長期間さらされることによって空気酸化を受けてポリマー化し、それによりアルミニウム粉の粒子同士が凝集し始める。凝集によって生じた粗大粒子は塗膜から突き出した塗膜ブツとなり塗膜品質上大きな問題となる。なぜならば、自動車塗装では塗膜の薄膜化が進行しており、塗膜ブツ等の塗膜品質上の欠陥がより重大になる傾向にあるからである。
【0006】
上記した問題の解決手段として粉砕助剤をオレイン酸等の不飽和脂肪酸からイソステアリン酸等の飽和分岐脂肪酸に変更する等の試みがなされたが(特開昭55−133463号参照)、イソステアリン酸を用いた場合粒子表面に吸着したイソステアリン酸と塗料ビヒクルとの表面張力の関係で他の着色顔料より優先的に塗膜表面に浮いて来る、いわゆる浮き戻り現象が顕著となり、実用化に至っていない。
【0007】
また、粉砕助剤として脂肪族アミンやアルコール系化合物、さらにはフッ素系の化合物等の使用が試みられたが(特開昭46−1033号参照)、これらも粉砕性、製造時の安全性等の点で実用化に至っていない。
【0008】
前述のようにオレイン酸のような不飽和脂肪酸に代わりうる有用な粉砕助剤は今のところ見つかっていない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、粉砕助剤として使用される不飽和脂肪酸に起因して貯蔵中にアルミニウム顔料が空気酸化を受けて二次凝集し粗大化することを防止し、貯蔵安定性に優れたアルミニウム顔料組成物を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らはアルミニウム顔料組成物中に不飽和脂肪酸のラジカル重合反応を停止または抑制させる機能を有する抗酸化剤を配合することにより、本発明の目的を達成することを見出し、本発明を成すに至った。
【0011】
したがって、本発明の主題は、アルミニウム顔料組成物中に不飽和脂肪酸のラジカル反応を停止または抑制させる機能を有する抗酸化剤を含有させることを特徴とするアルミニウム顔料組成物に関する。すなわち、本発明のアルミニウム顔料組成物はアルミニウム粉、粉砕助剤および抗酸化剤から構成され、必要に応じて有機溶剤を含む。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明において、抗酸化剤はアルミニウム顔料組成物中の不飽和脂肪酸のラジカル反応を停止または抑制させる機能を有するものでなければならない。したがって、アルミニウム顔料組成物中の不飽和脂肪酸の自動酸化中に生じるラジカルに対して電子あるいは水素原子を供給して、ラジカル連鎖反応を停止させるような機能を有するならば、いずれの化合物も本発明における抗酸化剤として有効である。本発明において使用される代表的な抗酸化剤として、フェノール化合物が挙げられる。
【0013】
フェノール化合物としては、2−ヒドロキシ安息香酸、ブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、n−オクタデシル3−(3,5−ジターシャリイブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2−ターシャリイブチル−6−(3−ターシャリイブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−ターシャリイブチルフェノール)、テトラキス〔メチレン3−(3,5−ジターシャリイブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、モノターシャリイブチルヒドロキノン、2,4,5−トリヒドロキシブチロフェノン、1,16−ビス(2,5−ジヒドロキシフェニル)ヘキサデカン、1,7−ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)ヘプタン、4−ヒドロキシメチル−2,6−ジターシャリイブチルフェノール、3,5−ジアルキル−4−ヒドロキシベンジルエーテル、ペンタエリトリットテトラ−3−(3,5−ジターシャリイブチル−4−ヒドロキシフェニル)、4,4’−メチレンビス−(2,6−ジメチルフェノール)、2,6−ジターシャリイブチルパラクレゾール、1,1−ビス−(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)イソブタン、2,2’−メチレンビス−(4−メチル−6−ターシャリイ−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(メチル−5−ターシャリイブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、4,4’−チオビス(6−ターシャリイブチルメタクレゾール)、1,1−ジ−(3−ターシャリイブチル−4−ヒドロキシ−6−メチルフェニル)ブタン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン等が包含される。
【0014】
これらの抗酸化剤はアルミニウム粉の粉砕時から最終のミキサー段階のどの工程で添加しても良いが、アルミニウム粉の粉砕時に粉砕助剤と同時に添加する方法、および粉砕後の最終ミキサー段階で添加して均一混合する方法が好ましい。
【0015】
ミネラルスピリット等の有機溶媒を用いる湿式粉砕において最終ミキサー段階で添加する場合には、抗酸化剤を不揮発分調整用のミネラルスピリット中に溶解させて添加するのが便利である。上記した抗酸化剤の大半はミネラルスピリットに可溶であるが、ミネラルスピリットに難溶性の化合物はアルミニウム顔料組成物中の溶剤をメタノール等の他の溶剤に置換してミキサー段階で添加する。あるいは、抗酸化剤をアルコール等の溶剤に溶解後、ミネラルスピリットを含むアルミニウム顔料に混合添加してもよい。
【0016】
抗酸化剤の添加量としてはアルミニウム分100重量部に対して0.1〜20重量部、好ましくは0.5〜10重量部、より好ましくは1〜5重量部である。添加量が0.1重量部未満では抗酸化剤としての効果がない。20重量部を越えて添加した場合抗酸化剤としての効果は充分であるが、アルミニウム顔料組成物中に含まれる溶剤の溶解能力を超えるため塗料化されたときに塗膜ブツ、塗膜物性低下、例えば硬化遅れによる塗膜強度の低下(チッピング性が落ちる)等の品質上の問題を生じる。
【0017】
上記した抗酸化剤に加えて、本発明のアルミニウム顔料組成物はアルミニウム粉、粉砕助剤を含み、必要に応じて有機溶剤を含む。
【0018】
アルミニウム粉は、アルミニウムのみから構成されていても、またアルミニウム基合金から構成されていても良く、その純度は特に限定されない。
【0019】
粉砕助剤としては、通常不飽和脂肪酸を使用する。ここで使用される不飽和脂肪酸としてはオレイン酸、リノール酸、リノレイン酸、リシノール酸、エライジン酸、ゾーマリン酸、ガドレイン酸、エルカ酸等が挙げられる。粉砕助剤の量は特に規定されないが、用途等により異なり、アルミニウム100重量部に対し、通常0.1〜20重量部、好ましくは0.5〜10重量部が使用される。
【0020】
有機溶剤は必要に応じて所定量加えれば良く、用途によっては全く含まなくても良い。有機溶剤としては安全性の面から通常ミネラルスピリットのような沸点の高い溶剤が好ましい。
【0021】
また必要に応じて界面活性剤や他の添加剤、例えば脂肪族アミン等を添加しても良い。
【0022】
【作用・効果】
アルミニウム顔料を製造する際に粉砕助剤としてオレイン酸等の不飽和脂肪酸を使用した場合、貯蔵中にアルミニウム顔料組成物が空気酸化を受けると不飽和脂肪酸がラジカル反応してポリマー化するためにアルミニウム粉の粒子同士が二次凝集し、粗大化する問題があったが、本発明によれば、アルミニウム顔料組成物中の不飽和脂肪酸のラジカル反応を停止または抑制させる機能を有する抗酸化剤を添加することにより、不飽和脂肪酸に起因するアルミニウム粉粒子の二次凝集・粗大化が防止され、貯蔵安定性に優れたアルミニウム顔料組成物が提供される。本発明のアルミニウム顔料組成物は製造工程途中で保管される際の貯蔵安定性も優れている。
【0023】
本発明によれば、アルミニウム顔料組成物の貯蔵中にアルミニウム粉の粒子同士が二次凝集して粗大化することがないため、塗膜からの粗大粒子の突き出し等塗膜品質上の問題も解決され、近年の自動車業界を含めた産業界の厳しい要件に適合するアルミニウム顔料組成物を提供することができる。
【0024】
本発明のアルミニウム顔料組成物を使用すると、従来のものよりも薄くかつ塗膜ブツ等の品質上の欠陥を持たない塗膜を形成することができる。
【0025】
本発明によれば、アルミニウム粉粒子の二次凝集が防止されるために隠蔽性の優れたアルミニウム顔料組成物が提供できる。すなわち、顔料の隠蔽性に対しては微粒子部分が大きく寄与するが、本発明によれば不飽和脂肪酸を介してアルミニウム粉粒子同志が凝集することがなくなるので長期間の保存後でもアルミニウム顔料は本来の隠蔽性を維持することができる。
【0026】
尚、本発明によるアルミニウム顔料組成物は、塗料、顔料、インキ等に用いられるのみでなく、樹脂への練り込み用アルミニウムフレークとしても用いられ得る。
【0027】
また、本発明には含まれないが、アルミニウム顔料に代えて他のメタリック顔料を用いても同様の効果が得られることは当業者には容易に理解できるであろう。
【0028】
【実施例】
を直径50cmのボールミルに入れ4時間粉砕した。粉砕終了後スラリーを30g/リットルのオレイン酸および25g/リットルのBHTを含むミネラルスピリット20リットルでミルから洗い出し、325メッシュのスクリーンを通した。
【0029】
その後フィルターにて固液分離を行い、アルミニウム分71重量となるようにミキサーにて調整し、サンプルを得た。
【0030】
を直径50cmのボールミルに入れ4時間粉砕した。
【0031】
粉砕終了後スラリーを30g/リットルのオレイン酸を含むミネラルスピリット20リットルでミルから洗い出し、325メッシュのスクリーンを通した。
【0032】
その後フィルターにて固液分離を行い、アルミニウム分75重量%からなるフィルターケーキを得た。
【0033】
別に、アルミニウム分に対してそれぞれ0.1、0.5、1、5、10、20重量%のBHTをミネラルスピリットに溶解させ、最終的に不揮発分が65%になるように調整した溶液を用意し、この溶液を上記フィルターケーキ1000gに添加しミキサーで1時間混練してサンプルを得た。
【0034】
比較例1
抗酸化剤を全く加えない以外は、実施例1と全く同様な方法でアルミニウム分78%のフィルターケーキを得た。最終的に不揮発分が65%になるように調整し、ミキサーで1時間混練してサンプルを得た。
【0035】
比較例2
BHTの添加量をアルミニウム分に対して25重量%にした以外は、実施例2と全く同様な方法でサンプルを得た。
【0036】
試験例
実施例1〜2および比較例1〜2で得られたサンプルの貯蔵安定性を調べた。
【0037】
貯蔵安定性を調べるために、サンプル70gを1/12リッターの金属製の缶に入れ、蓋をせずに50℃の恒温槽に1ヶ月貯蔵し、貯蔵前後のミネラルスピリットに対する分散性を以下のように測定し比較した。
【0038】
まずサンプル10gを100gのミネラルスピリット中に入れ、ガラス棒で分散させた。これを大量のミネラルスピリット中で目開き45μmのJIS標準篩いを通し篩い上に残ったアルミニウム粉の篩い残分を乾燥させ重量を測定した。評価は篩い残分のアルミニウム粉の乾燥重量を篩う前のアルミニウム粉の全重量で除し、重量%で表示した。篩い残分が10重量%以下であれば実用上貯蔵安定性であると評価される。
【0039】
表1に示す如く抗酸化剤を全く添加しなかった比較例1のサンプルでは1ヶ月の貯蔵後にほとんどのアルミニウム粉粒子が2次凝集し粗大化しているのに較べて、抗酸化剤を0.1重量%以上添加したサンプルでは凝集はほとんど見られず、貯蔵安定性が著しく改善された。
【0040】
抗酸化剤としてBHTを25重量%添加した比較例2のサンプルでは、アルミニウム顔料組成物中のミネラルスピリットの溶解力を上回る量のBHTを添加したため不溶解物を生じ、貯蔵前にすでに粗大粒子が認められた。
【0041】
実施例1と2の比較から明らかなように、抗酸化剤をアルミニウム粉の粉砕時に添加しても、粉砕後の最終ミキサー段階で添加しても効果は同等であった。
【0042】
【表1】
Claims (2)
- アルミニウム粉、アルミニウム粉の粒子表面に吸着した不飽和脂肪酸より成る粉砕助剤およびアルミニウム分100重量部に対して0.1〜20重量部の抗酸化剤を含有するアルミニウム顔料組成物であり、前記抗酸化剤が、2−ヒドロキシ安息香酸、ブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、n−オクタデシル3−(3,5−ジターシャリイブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2−ターシャリイブチル−6−(3−ターシャリイブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−ターシャリイブチルフェノール)、テトラキス〔メチレン3−(3,5−ジターシャリイブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、モノターシャリイブチルヒドロキノン、2,4,5−トリヒドロキシブチロフェノン、1,16−ビス(2,5−ジヒドロキシフェニル)ヘキサデカン、1,7−ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)ヘプタン、4−ヒドロキシメチル−2,6−ジターシャリイブチルフェノール、3,5−ジアルキル−4−ヒドロキシベンジルエーテル、ペンタエリトリットテトラ−3−(3,5−ジターシャリイブチル−4−ヒドロキシフェニル)、4,4’−メチレンビス−(2,6−ジメチルフェノール)、2,6−ジターシャリイブチルパラクレゾール、1,1−ビス−(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)イソブタン、2,2’−メチレンビス−(4−メチル−6−ターシャリイ−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(メチル−5−ターシャリイブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、4,4’−チオビス(6−ターシャリイブチルメタクレゾール)、1,1−ジ−(3−ターシャリイブチル−4−ヒドロキシ−6−メチルフェニル)ブタン、および2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンより成る群から選択される1種または2種以上の化合物であることを特徴とする前記組成物。
- 抗酸化剤の量がアルミニウム分100重量部に対して0 . 5〜10重量部であることを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム顔料組成物。
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