JPH0610168A - 銅系材料の腐食抑制剤と該腐食抑制剤を含有する潤滑油 - Google Patents
銅系材料の腐食抑制剤と該腐食抑制剤を含有する潤滑油Info
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- JPH0610168A JPH0610168A JP19300092A JP19300092A JPH0610168A JP H0610168 A JPH0610168 A JP H0610168A JP 19300092 A JP19300092 A JP 19300092A JP 19300092 A JP19300092 A JP 19300092A JP H0610168 A JPH0610168 A JP H0610168A
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Abstract
(57)【要約】
【目的】 銅系材料の腐食抑制剤と該腐食抑制剤を含有
する潤滑油の提供 【構成】 含酸素有機化合物を含有した潤滑剤に起因す
る銅系材料の蟻の巣状腐食に対する抑制剤であって、ア
ミン系有機化合物からなることを特徴とする腐食抑制剤
および該腐食抑制剤を含有する潤滑剤。 【効果】 含酸素有機化合物を含有し、銅系材料に対し
て水との反応により蟻の巣状腐食を生じ易い潤滑油に対
して、銅系材料に対する蟻の巣状腐食性を効果的に防止
できる。
する潤滑油の提供 【構成】 含酸素有機化合物を含有した潤滑剤に起因す
る銅系材料の蟻の巣状腐食に対する抑制剤であって、ア
ミン系有機化合物からなることを特徴とする腐食抑制剤
および該腐食抑制剤を含有する潤滑剤。 【効果】 含酸素有機化合物を含有し、銅系材料に対し
て水との反応により蟻の巣状腐食を生じ易い潤滑油に対
して、銅系材料に対する蟻の巣状腐食性を効果的に防止
できる。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、銅系材料の蟻の巣状腐
食抑制剤と該抑制剤を含んだ潤滑油に関するものであ
り、特に、空調冷凍機器等の配管に用いられる銅管の曲
げ加工、拡管加工そして引伸し加工等に使用される潤滑
油に起因して生じる銅系材料の蟻の巣状腐食について、
その腐食抑制剤と該腐食抑制剤を含んだ潤滑油に関す
る。
食抑制剤と該抑制剤を含んだ潤滑油に関するものであ
り、特に、空調冷凍機器等の配管に用いられる銅管の曲
げ加工、拡管加工そして引伸し加工等に使用される潤滑
油に起因して生じる銅系材料の蟻の巣状腐食について、
その腐食抑制剤と該腐食抑制剤を含んだ潤滑油に関す
る。
【0002】
【従来の技術】銅系材料は、その加工性、熱伝導性、電
気伝導性等より各種用途に用いられているが、家庭用ル
ームエアコン等の空調冷凍機器には熱伝導性を高めるた
め銅管が広く用いられている。近年、このような中空材
の銅管において原因不明の貫通事故が発生しその対策が
問題となっていた。この種の事故が生じた銅管を調査し
た結果、腐食によって貫通事故が発生したことが明らか
になった。この腐食の特徴的な点は腐食孔の表面開口が
目視では見い出せない程小さく、例えば10μm 以下であ
るのに対して、腐食孔内部は、トンネル状に腐食孔が深
さ方向に多数形成されていることであり、この腐食形態
があたかも蟻の巣のように見えることから蟻の巣状腐食
もしくは異常形態腐食と呼ばれている。
気伝導性等より各種用途に用いられているが、家庭用ル
ームエアコン等の空調冷凍機器には熱伝導性を高めるた
め銅管が広く用いられている。近年、このような中空材
の銅管において原因不明の貫通事故が発生しその対策が
問題となっていた。この種の事故が生じた銅管を調査し
た結果、腐食によって貫通事故が発生したことが明らか
になった。この腐食の特徴的な点は腐食孔の表面開口が
目視では見い出せない程小さく、例えば10μm 以下であ
るのに対して、腐食孔内部は、トンネル状に腐食孔が深
さ方向に多数形成されていることであり、この腐食形態
があたかも蟻の巣のように見えることから蟻の巣状腐食
もしくは異常形態腐食と呼ばれている。
【0003】銅管の腐食は、一般に、潰食、孔食および
腐食疲労などに分類されているが、上記蟻の巣状腐食は
従来の腐食の形態とは全く異なる形態の腐食である。蟻
の巣状腐食では、腐食孔近傍表面は、赤褐色に変色した
程度であり、銅配管内面に生じた孔食のように食孔を覆
う緑青色の腐食生成物は表面には認められない。従来、
確認されているのは、銅管の断面観察においてトンネル
状の腐食孔壁面に認められる腐食生成物が亜酸化銅であ
ることがX線回折分析等の結果明らかになっているだけ
であり、代表的な腐食原因物質である塩素、フッ素、イ
オウも検出されず、腐食媒も特定されていないのが現状
である。因みに、上記蟻の巣状腐食は空調機器の組立時
の検査では見出されず、一定期間製品を保管した後の出
荷時の製品検査やユーザーの使用初期に発見されること
が多い。従って、蟻の巣状腐食は製品の組立後短期間に
進行し、貫通に至るものと考えられる。例えば0.35mmの
肉厚の銅管が3ヶ月以内に貫通事故を起こす実例もあ
る。
腐食疲労などに分類されているが、上記蟻の巣状腐食は
従来の腐食の形態とは全く異なる形態の腐食である。蟻
の巣状腐食では、腐食孔近傍表面は、赤褐色に変色した
程度であり、銅配管内面に生じた孔食のように食孔を覆
う緑青色の腐食生成物は表面には認められない。従来、
確認されているのは、銅管の断面観察においてトンネル
状の腐食孔壁面に認められる腐食生成物が亜酸化銅であ
ることがX線回折分析等の結果明らかになっているだけ
であり、代表的な腐食原因物質である塩素、フッ素、イ
オウも検出されず、腐食媒も特定されていないのが現状
である。因みに、上記蟻の巣状腐食は空調機器の組立時
の検査では見出されず、一定期間製品を保管した後の出
荷時の製品検査やユーザーの使用初期に発見されること
が多い。従って、蟻の巣状腐食は製品の組立後短期間に
進行し、貫通に至るものと考えられる。例えば0.35mmの
肉厚の銅管が3ヶ月以内に貫通事故を起こす実例もあ
る。
【0004】銅管の蟻の巣状腐食に関する従来の研究と
しては、山内等が伸銅技術研究会誌(1983年)22巻に
投稿した論文「銅管の異常形態腐食について」があり、
この報告では、蟻の巣状腐食の腐食媒として脱脂洗浄剤
である塩素系有機溶剤の分解生成物質の可能性を指摘し
ている。また一方、その後、蟻酸により銅管の蟻の巣状
腐食が再現されることが確認されている。しかし、塩素
系有機溶剤が水と反応して加水分解しても蟻酸は生成さ
れず、更に本発明者の研究によると、塩素系有機溶剤に
よる脱脂洗浄工程を受けない銅管においても蟻の巣状腐
食による貫通事故が見つかっている。
しては、山内等が伸銅技術研究会誌(1983年)22巻に
投稿した論文「銅管の異常形態腐食について」があり、
この報告では、蟻の巣状腐食の腐食媒として脱脂洗浄剤
である塩素系有機溶剤の分解生成物質の可能性を指摘し
ている。また一方、その後、蟻酸により銅管の蟻の巣状
腐食が再現されることが確認されている。しかし、塩素
系有機溶剤が水と反応して加水分解しても蟻酸は生成さ
れず、更に本発明者の研究によると、塩素系有機溶剤に
よる脱脂洗浄工程を受けない銅管においても蟻の巣状腐
食による貫通事故が見つかっている。
【0005】そこで本発明者は、塩素系有機溶剤も蟻の
巣状腐食の原因物質の1種と考えられるが、この他に、
共通の腐食原因物質として潤滑油に着目した。即ち、潤
滑油は、塩素系有機溶剤の使用の有無に拘わらず銅管加
工に広く用いられており、しかも潤滑油は各種の有機物
質で構成されるため、その加水分解生成物から蟻の巣状
腐食の原因となる蟻酸も生成するのではないかと考え
た。
巣状腐食の原因物質の1種と考えられるが、この他に、
共通の腐食原因物質として潤滑油に着目した。即ち、潤
滑油は、塩素系有機溶剤の使用の有無に拘わらず銅管加
工に広く用いられており、しかも潤滑油は各種の有機物
質で構成されるため、その加水分解生成物から蟻の巣状
腐食の原因となる蟻酸も生成するのではないかと考え
た。
【0006】
【従来技術の課題】銅管の蟻の巣状腐食は、空調機器伝
熱管や冷媒配管などに見い出される割合が高い。特にア
ルミフィンの装着された熱交換器ユニット内の銅管にお
いて蟻の巣状腐食の発生する割合が高いことが本発明者
の事例解析で判明した。この用途に用いられる銅管は、
銅管メーカーで伸管加工、光輝焼鈍を経た軟質材で熱交
換器加工メーカーに出荷されるが、出荷される銅管は、
オージェ分析等の高精度微量分析機器でその表面を分析
しても大気吸着量に相当するカーボン量が検出されるの
みであり、潤滑油等の汚雑物質が全く認められないレベ
ルまで洗浄されている。熱交換器加工メーカーは、銅管
メーカーから受入れた銅管に潤滑油を塗着させた後、銅
管の切断、口付け部の拡管加工やアルミフィン固定用の
ボール拡管等を施した後にアルミフィンを銅管に固定し
て熱交換器を組立てる。この時に用いられる潤滑油は、
アルミフィンプレス油を転用したものや、マシン油ある
いは冷凍機油等であり、基本的には銅系材料専用の潤滑
油ではなく、銅系材料専用の潤滑油は販売されていない
のが実状である。
熱管や冷媒配管などに見い出される割合が高い。特にア
ルミフィンの装着された熱交換器ユニット内の銅管にお
いて蟻の巣状腐食の発生する割合が高いことが本発明者
の事例解析で判明した。この用途に用いられる銅管は、
銅管メーカーで伸管加工、光輝焼鈍を経た軟質材で熱交
換器加工メーカーに出荷されるが、出荷される銅管は、
オージェ分析等の高精度微量分析機器でその表面を分析
しても大気吸着量に相当するカーボン量が検出されるの
みであり、潤滑油等の汚雑物質が全く認められないレベ
ルまで洗浄されている。熱交換器加工メーカーは、銅管
メーカーから受入れた銅管に潤滑油を塗着させた後、銅
管の切断、口付け部の拡管加工やアルミフィン固定用の
ボール拡管等を施した後にアルミフィンを銅管に固定し
て熱交換器を組立てる。この時に用いられる潤滑油は、
アルミフィンプレス油を転用したものや、マシン油ある
いは冷凍機油等であり、基本的には銅系材料専用の潤滑
油ではなく、銅系材料専用の潤滑油は販売されていない
のが実状である。
【0007】熱交換器の組立ての際に用いられている潤
滑油は、一般的には有機塩素溶剤で洗浄されることが多
いが、熱交換器内の銅配管はS字状に繰返し曲げられて
いるため、銅配管内の潤滑油を完全に洗浄するのは不可
能であり、多少なりとも潤滑油が銅配管に残留している
のが実情である。また、最近では環境汚染を防止するた
め塩素系有機溶剤の使用が規制されており、これに伴っ
て従来用いられていた不揮発性潤滑油に代えて洗浄不要
の自己揮発性潤滑油の使用が増加しつつある。従って、
銅配管に潤滑油が残留するケースが一層多くなってい
る。
滑油は、一般的には有機塩素溶剤で洗浄されることが多
いが、熱交換器内の銅配管はS字状に繰返し曲げられて
いるため、銅配管内の潤滑油を完全に洗浄するのは不可
能であり、多少なりとも潤滑油が銅配管に残留している
のが実情である。また、最近では環境汚染を防止するた
め塩素系有機溶剤の使用が規制されており、これに伴っ
て従来用いられていた不揮発性潤滑油に代えて洗浄不要
の自己揮発性潤滑油の使用が増加しつつある。従って、
銅配管に潤滑油が残留するケースが一層多くなってい
る。
【0008】本発明者は多数の潤滑剤(7社、20種の
製品)について、後述する実施例と同様の方法により、
銅管の蟻の巣状腐食の再現試験を試みた。その結果、1
7種の潤滑剤について上記蟻の巣状腐食を再現すること
に成功し、蟻の巣状腐食の原因が潤滑剤であることを見
出した。この結果の一例を図1に示す。図1は市販の潤
滑油に銅管を3ケ月浸漬して蟻の巣状腐食が発生した金
属組織を示す顕微鏡写真(倍率100倍)である。ま
た、蟻の巣状腐食を生じた潤滑剤は、水と反応して蟻酸
あるいは酢酸を生成することがイオンクロマトグラフ分
析によって確認された。更にこれらの潤滑剤には何れも
共通成分として含酸素有機化合物、即ち、エステル、エ
ーテル、高級アルコール等が含まれていることが機器分
析により明らかにされた。これらの化合物は水と加水分
解して低分子量のアルコール、アルデヒドを生成するこ
とが知られており、従って、潤滑剤に含まれる含酸素有
機化合物が上記蟻の巣状腐食の原因物質の1つであるこ
とが予想された。
製品)について、後述する実施例と同様の方法により、
銅管の蟻の巣状腐食の再現試験を試みた。その結果、1
7種の潤滑剤について上記蟻の巣状腐食を再現すること
に成功し、蟻の巣状腐食の原因が潤滑剤であることを見
出した。この結果の一例を図1に示す。図1は市販の潤
滑油に銅管を3ケ月浸漬して蟻の巣状腐食が発生した金
属組織を示す顕微鏡写真(倍率100倍)である。ま
た、蟻の巣状腐食を生じた潤滑剤は、水と反応して蟻酸
あるいは酢酸を生成することがイオンクロマトグラフ分
析によって確認された。更にこれらの潤滑剤には何れも
共通成分として含酸素有機化合物、即ち、エステル、エ
ーテル、高級アルコール等が含まれていることが機器分
析により明らかにされた。これらの化合物は水と加水分
解して低分子量のアルコール、アルデヒドを生成するこ
とが知られており、従って、潤滑剤に含まれる含酸素有
機化合物が上記蟻の巣状腐食の原因物質の1つであるこ
とが予想された。
【0009】本発明者は上記知見に基づき、潤滑剤の分
解生成物であるメチルアルコール、ホルムアルデヒド、
蟻酸のC1 化合物、およびエチルアルコール、アセトア
ルデヒド、酢酸のC2 化合物に注目し、これらの単一化
合物を用いて銅管の蟻の巣状腐食の再現を試みたとこ
ろ、何れの化合物についても蟻の巣状腐食が発生した。
なお、この一例を図2に示す。図2はアセトアルデヒド
に銅管を1ケ月浸漬して蟻の巣状腐食が発生した金属組
織を示す顕微鏡写真(倍率200倍)である。また上記
腐食再現試験における侵蝕深さに基づく腐食の相対的な
強さは次の通りであった。なお酢酸の場合は腐食形態が
孔食的であった。 ホルムアルデヒド>蟻酸>メチルアルコール=アセトア
ルデヒド>エチルアルコール>酢酸
解生成物であるメチルアルコール、ホルムアルデヒド、
蟻酸のC1 化合物、およびエチルアルコール、アセトア
ルデヒド、酢酸のC2 化合物に注目し、これらの単一化
合物を用いて銅管の蟻の巣状腐食の再現を試みたとこ
ろ、何れの化合物についても蟻の巣状腐食が発生した。
なお、この一例を図2に示す。図2はアセトアルデヒド
に銅管を1ケ月浸漬して蟻の巣状腐食が発生した金属組
織を示す顕微鏡写真(倍率200倍)である。また上記
腐食再現試験における侵蝕深さに基づく腐食の相対的な
強さは次の通りであった。なお酢酸の場合は腐食形態が
孔食的であった。 ホルムアルデヒド>蟻酸>メチルアルコール=アセトア
ルデヒド>エチルアルコール>酢酸
【0010】以上のように、銅系材料に見られる蟻の巣
状腐食の主な原因物質は、潤滑剤に含まれる含酸素有機
物の分解生成物であるアルデヒド、カルボン酸、アルコ
ールであり、なかでもアルデヒドが最も強い腐食性を有
することが判明した。これらの物質は、例えばアルコー
ルは酸化されてアルデヒドになり、またカルボン酸はア
ルデヒドの酸化によって生成するなど、何れもアルデヒ
ド基(−CHO基)が関与することから、蟻の巣状腐食
にはアルデヒド基の還元性が強く影響していること明ら
かである。従来、腐食原因として最も一般的に考えられ
るのは酸の存在である。ところが蟻の巣状腐食は前述の
如く、アルデヒド基等の還元性物質の存在が大きな影響
を与えており、単に酸性物質の存在に止まらず還元性物
質の存在が重要である点が従来の腐食機構と大きく相違
する。
状腐食の主な原因物質は、潤滑剤に含まれる含酸素有機
物の分解生成物であるアルデヒド、カルボン酸、アルコ
ールであり、なかでもアルデヒドが最も強い腐食性を有
することが判明した。これらの物質は、例えばアルコー
ルは酸化されてアルデヒドになり、またカルボン酸はア
ルデヒドの酸化によって生成するなど、何れもアルデヒ
ド基(−CHO基)が関与することから、蟻の巣状腐食
にはアルデヒド基の還元性が強く影響していること明ら
かである。従来、腐食原因として最も一般的に考えられ
るのは酸の存在である。ところが蟻の巣状腐食は前述の
如く、アルデヒド基等の還元性物質の存在が大きな影響
を与えており、単に酸性物質の存在に止まらず還元性物
質の存在が重要である点が従来の腐食機構と大きく相違
する。
【0011】蟻の巣状腐食は、滴状に付着した水滴を媒
体にして進む酸素濃淡電池型の湿式腐食であり、水滴中
の溶存酸素を仲立ちとして腐食が進行する。具体的に
は、蟻の巣状腐食特有の腐食孔内部におけるトンネル状
の侵食は、トンネル状腐食孔先端のアノード部に還元性
の−CHO基が作用して腐食孔先端は常に活性を維持
し、アノードとなってCuの溶出を生じ、これを繰り返
す結果、腐食孔が一方向に延びたトンネル状の侵食が生
ずると考えられる。また一方、腐食孔の壁面には厚い亜
酸化銅膜が認められる。これは、トンネル状腐食孔の壁
面において溶存酸素の還元によるカソード反応が進むと
考えられ、従って腐食が進み腐食孔がトンネル状に深く
なるに従い、カソード部が増大して侵食速度は加速度的
に増大すると考えられる。以上のような腐食反応が起こ
るため、他の腐食には例を見ない侵食速度で腐食が進行
し、0.35mmの肉厚の銅管が僅か3ヶ月程度で貫通事故に
至ると考えられる。また、腐食媒が、これまでに多くの
研究者による各種高精度分析機器を用いた調査にもかか
わらず特定できないのも、腐食媒が前述したアルコー
ル、アルデヒド、カルボン酸であるとすれば、その蒸発
性、水溶性より理解できる。
体にして進む酸素濃淡電池型の湿式腐食であり、水滴中
の溶存酸素を仲立ちとして腐食が進行する。具体的に
は、蟻の巣状腐食特有の腐食孔内部におけるトンネル状
の侵食は、トンネル状腐食孔先端のアノード部に還元性
の−CHO基が作用して腐食孔先端は常に活性を維持
し、アノードとなってCuの溶出を生じ、これを繰り返
す結果、腐食孔が一方向に延びたトンネル状の侵食が生
ずると考えられる。また一方、腐食孔の壁面には厚い亜
酸化銅膜が認められる。これは、トンネル状腐食孔の壁
面において溶存酸素の還元によるカソード反応が進むと
考えられ、従って腐食が進み腐食孔がトンネル状に深く
なるに従い、カソード部が増大して侵食速度は加速度的
に増大すると考えられる。以上のような腐食反応が起こ
るため、他の腐食には例を見ない侵食速度で腐食が進行
し、0.35mmの肉厚の銅管が僅か3ヶ月程度で貫通事故に
至ると考えられる。また、腐食媒が、これまでに多くの
研究者による各種高精度分析機器を用いた調査にもかか
わらず特定できないのも、腐食媒が前述したアルコー
ル、アルデヒド、カルボン酸であるとすれば、その蒸発
性、水溶性より理解できる。
【0012】
【発明の解決課題】以上述べたように銅系材料の蟻の巣
状腐食は潤滑油が原因であるが、従来は腐食メカニズム
が不明であり、従って、その腐食抑制剤として有効な物
質は見出されておらず、その原因物質である潤滑油も全
く改善されていない。しかも、前述の如く、蟻の巣状腐
食は従来の単なる酸腐食と異なり、アルデヒドなどの還
元物質が大きく関与しており、このため従来の腐食抑制
剤として知られている物質をそのまま転用しても殆ど腐
食抑制効果がない。例えば、従来用いられているアルコ
ール系腐食抑制剤は蟻の巣状腐食においてはむしろ腐食
原因物質であり全く効果がない。また潤滑油には種々の
目的で各種添加剤が添加されることがある。例えば潤滑
油の分解防止のためフェノール系の酸化防止剤が添加さ
れたり、金属の腐食防止のため、アントラキノン系の金
属不活性剤や、スルホネート系の腐食防止剤が添加され
ることがある。そこでこれらの物質について後述する実
施例と同様な実験条件で蟻の巣状腐食に対する腐食抑制
効果を試験した。試験には添加剤として、フェノール系
では、2.6-ジ-tert-ブチル−p−クレゾール、アントラ
キノン系では、1.4 −ジオキシアントラキノン、スルホ
ネート系では、Na- スルホネートを用いたが、いずれも
りん脱酸銅管の蟻の巣腐食抑制には効果を示さなかっ
た。このように、従来その腐食メカニズムが不明であっ
た蟻の巣状腐食について、本発明はその有効な腐食抑制
物質を提供することを目的とし、腐食の原因である潤滑
油について腐食抑制効果を有する改良された潤滑油を提
供することを目的とする。
状腐食は潤滑油が原因であるが、従来は腐食メカニズム
が不明であり、従って、その腐食抑制剤として有効な物
質は見出されておらず、その原因物質である潤滑油も全
く改善されていない。しかも、前述の如く、蟻の巣状腐
食は従来の単なる酸腐食と異なり、アルデヒドなどの還
元物質が大きく関与しており、このため従来の腐食抑制
剤として知られている物質をそのまま転用しても殆ど腐
食抑制効果がない。例えば、従来用いられているアルコ
ール系腐食抑制剤は蟻の巣状腐食においてはむしろ腐食
原因物質であり全く効果がない。また潤滑油には種々の
目的で各種添加剤が添加されることがある。例えば潤滑
油の分解防止のためフェノール系の酸化防止剤が添加さ
れたり、金属の腐食防止のため、アントラキノン系の金
属不活性剤や、スルホネート系の腐食防止剤が添加され
ることがある。そこでこれらの物質について後述する実
施例と同様な実験条件で蟻の巣状腐食に対する腐食抑制
効果を試験した。試験には添加剤として、フェノール系
では、2.6-ジ-tert-ブチル−p−クレゾール、アントラ
キノン系では、1.4 −ジオキシアントラキノン、スルホ
ネート系では、Na- スルホネートを用いたが、いずれも
りん脱酸銅管の蟻の巣腐食抑制には効果を示さなかっ
た。このように、従来その腐食メカニズムが不明であっ
た蟻の巣状腐食について、本発明はその有効な腐食抑制
物質を提供することを目的とし、腐食の原因である潤滑
油について腐食抑制効果を有する改良された潤滑油を提
供することを目的とする。
【0013】本発明者は銅系材料の蟻の巣状腐食につい
て、その腐食メカニズムを追求し、従来、腐食抑制効果
を有するものと考えられていたアルデヒドなどの還元物
質がむしろ腐食原因であることを解明し、この知見に基
づき、多数の化合物について検討した結果、顕著な腐食
抑制効果を有する化合物を見出した。またこの化合物を
潤滑油に添加することにより、銅系材料の蟻の巣状腐食
について優れた腐食抑制効果を有する潤滑油が得られ
た。
て、その腐食メカニズムを追求し、従来、腐食抑制効果
を有するものと考えられていたアルデヒドなどの還元物
質がむしろ腐食原因であることを解明し、この知見に基
づき、多数の化合物について検討した結果、顕著な腐食
抑制効果を有する化合物を見出した。またこの化合物を
潤滑油に添加することにより、銅系材料の蟻の巣状腐食
について優れた腐食抑制効果を有する潤滑油が得られ
た。
【0014】
【課題の解決手段】即ち、本発明によれば、含酸素有機
化合物を含有した潤滑剤に起因する銅系材料の蟻の巣状
腐食に対する抑制剤であって、アミン系有機化合物から
なることを特徴とする腐食抑制剤が提供される。更に本
発明によれば、含酸素有機化合物を含有した銅系材料の
加工用潤滑油であって、銅系材料の蟻の巣状腐食に対す
る抑制剤であるアミン系有機化合物からなる腐食抑制剤
を含有することを特徴とする潤滑油が提供される。
化合物を含有した潤滑剤に起因する銅系材料の蟻の巣状
腐食に対する抑制剤であって、アミン系有機化合物から
なることを特徴とする腐食抑制剤が提供される。更に本
発明によれば、含酸素有機化合物を含有した銅系材料の
加工用潤滑油であって、銅系材料の蟻の巣状腐食に対す
る抑制剤であるアミン系有機化合物からなる腐食抑制剤
を含有することを特徴とする潤滑油が提供される。
【0015】前記アミン系有機腐食抑制剤として特に好
適なものは次の一般式に示されるものである。 R(NH2 )n (式中、Rはアルキル基、フェニル基、ナフチル基また
はアルキルフェニル基、n=1〜3) R1 R2 (NH)m (式中、R1 、R2 はアルキル基、フェニル基、ナフチ
ル基またはアルキルフェニル基、m=1〜2) R1 R2 R3 N (式中、R1 、R2 、R3 はアルキル基、フェニル基、
ナフチル基またはアルキルフェニル基)
適なものは次の一般式に示されるものである。 R(NH2 )n (式中、Rはアルキル基、フェニル基、ナフチル基また
はアルキルフェニル基、n=1〜3) R1 R2 (NH)m (式中、R1 、R2 はアルキル基、フェニル基、ナフチ
ル基またはアルキルフェニル基、m=1〜2) R1 R2 R3 N (式中、R1 、R2 、R3 はアルキル基、フェニル基、
ナフチル基またはアルキルフェニル基)
【0016】このアミン系有機化合物は、銅系表面に優
先的に吸着して、局部的腐食を防止するとともに、エス
テル、エーテル等の含酸素有機化合物の加水分解反応自
体を抑制し、蟻の巣状腐食の発生、成長を抑制する。
先的に吸着して、局部的腐食を防止するとともに、エス
テル、エーテル等の含酸素有機化合物の加水分解反応自
体を抑制し、蟻の巣状腐食の発生、成長を抑制する。
【0017】上記アミン系有機化合物の代表的な具体例
を以下に示す。
を以下に示す。
【化1】
【化2】
【化3】 また次式( 化4、化5) に示すN,N'- ジフェニル-p- フ
ェニレンジアミンのような繰り返し性を有するジアミ
ン、N-フェニル-N'-イソプロピル-p- フェニレンジアミ
ンのようなアルキル基とフェニル基の組み合わせによる
ジアミンも有効である。
ェニレンジアミンのような繰り返し性を有するジアミ
ン、N-フェニル-N'-イソプロピル-p- フェニレンジアミ
ンのようなアルキル基とフェニル基の組み合わせによる
ジアミンも有効である。
【化4】
【化5】
【0018】前記アミン系有機腐食抑制剤の潤滑油に対
する添加量としては、潤滑油中に含まれる含酸素有機化
合物量の影響を受け、また潤滑油の用いられる環境条件
によって影響を受けるため、一律に定め難いが、0.0
1〜50 g/lの範囲が好ましい。0.01g/l 以下では
蟻の巣状腐食の抑制効果が小さく、また50g/l を越え
てもそれ以上の改善効果を期待できず、むしろ潤滑油本
来の機能が低下するので好ましくない。
する添加量としては、潤滑油中に含まれる含酸素有機化
合物量の影響を受け、また潤滑油の用いられる環境条件
によって影響を受けるため、一律に定め難いが、0.0
1〜50 g/lの範囲が好ましい。0.01g/l 以下では
蟻の巣状腐食の抑制効果が小さく、また50g/l を越え
てもそれ以上の改善効果を期待できず、むしろ潤滑油本
来の機能が低下するので好ましくない。
【0019】また、前記アミン系有機腐食抑制剤は、潤
滑油に対して溶解性を有しているのが望ましく、潤滑油
には少くとも0.005g/l 以上溶解していることが、
潤滑油の分解、防止効果及び銅系材料への吸着性からみ
て好ましい。
滑油に対して溶解性を有しているのが望ましく、潤滑油
には少くとも0.005g/l 以上溶解していることが、
潤滑油の分解、防止効果及び銅系材料への吸着性からみ
て好ましい。
【0020】更に、銅系材料の蟻の巣状腐食は、水を媒
体して生ずる腐食であるため、前記アミン系有機腐食抑
制剤は、水に対する溶解性も有していることが、蟻の巣
状腐食の抑制の点から好ましく、充分な抑制効果を発揮
するためにも水に対して0.005g/100ml 以上の溶解
性を有していることが望ましい。
体して生ずる腐食であるため、前記アミン系有機腐食抑
制剤は、水に対する溶解性も有していることが、蟻の巣
状腐食の抑制の点から好ましく、充分な抑制効果を発揮
するためにも水に対して0.005g/100ml 以上の溶解
性を有していることが望ましい。
【0021】本発明のアミン系有機腐食抑制剤を添加し
た潤滑油は以下の効果を有する。 (1) 有機腐食抑制剤を含んでいるため、潤滑油の水に対
する安定性が向上し、蟻の巣状腐食の腐食媒である低分
子量のアルコール、アルデヒド、蟻酸の生成が抑制され
る。 (2) 潤滑油中の有機腐食抑制剤が銅系材料表面の活性点
に優先的に吸着し、銅系材料自体が水と直接々触するの
を防ぐとともに、銅系材料の表面安定性を高めて腐食を
抑制する。 (3) 有機腐食抑制剤は、潤滑油に対する溶解性を有する
ため、潤滑油の劣化防止効果が高い。 (4) 有機腐食抑制剤は水に対する溶解性を有しているた
め、潤滑油の分解劣化によって生じた腐食媒が、潤滑油
から水中に溶け出て腐食作用に参加するのに対して、有
機腐食抑制剤も潤滑油中から水中へ溶け込んで、銅系材
料表面に吸着して表面を保護するとともに腐食媒と反応
してその腐食活動を抑制する。
た潤滑油は以下の効果を有する。 (1) 有機腐食抑制剤を含んでいるため、潤滑油の水に対
する安定性が向上し、蟻の巣状腐食の腐食媒である低分
子量のアルコール、アルデヒド、蟻酸の生成が抑制され
る。 (2) 潤滑油中の有機腐食抑制剤が銅系材料表面の活性点
に優先的に吸着し、銅系材料自体が水と直接々触するの
を防ぐとともに、銅系材料の表面安定性を高めて腐食を
抑制する。 (3) 有機腐食抑制剤は、潤滑油に対する溶解性を有する
ため、潤滑油の劣化防止効果が高い。 (4) 有機腐食抑制剤は水に対する溶解性を有しているた
め、潤滑油の分解劣化によって生じた腐食媒が、潤滑油
から水中に溶け出て腐食作用に参加するのに対して、有
機腐食抑制剤も潤滑油中から水中へ溶け込んで、銅系材
料表面に吸着して表面を保護するとともに腐食媒と反応
してその腐食活動を抑制する。
【0022】或る種の潤滑油は、自己揮発性を有し、外
気温の変化によって蒸発凝縮を繰り返し、本来塗布され
た部分と異なる部位において潤滑油の凝集を生ずること
があり、これら自己揮発性の潤滑油による蟻の巣状腐食
を抑制するためには、有機腐食抑制剤が潤滑油中の腐食
性蒸発部分と同様な蒸発挙動を示すのが好ましく、常温
で或る程度の気化性を有しているのが好ましい。また不
揮発性の潤滑油については不揮発性の腐食抑制剤が好ま
しい。本発明の有機腐食抑制剤は潤滑油の上記性質に応
じて適宜選択される。
気温の変化によって蒸発凝縮を繰り返し、本来塗布され
た部分と異なる部位において潤滑油の凝集を生ずること
があり、これら自己揮発性の潤滑油による蟻の巣状腐食
を抑制するためには、有機腐食抑制剤が潤滑油中の腐食
性蒸発部分と同様な蒸発挙動を示すのが好ましく、常温
で或る程度の気化性を有しているのが好ましい。また不
揮発性の潤滑油については不揮発性の腐食抑制剤が好ま
しい。本発明の有機腐食抑制剤は潤滑油の上記性質に応
じて適宜選択される。
【0023】次に本発明を実施例によりさらに具体的に
説明する。銅系材料としては、φ9.52×0.35×300mm の
りん脱酸銅管OL材(JISH3300、C1220T-OL )を腐食試
験に用いた。りん脱酸銅管はアセトン中で超音波洗浄
し、充分清浄化した後、乾燥し、試験材とした。この清
浄化したりん脱酸銅管の片端をシリコン栓で密栓し、銅
管内には腐食液を1ml注入した後、他端をシリコン栓で
密栓した後、管をよく振り、管内面に腐食液すなわち潤
滑油を付着させた。
説明する。銅系材料としては、φ9.52×0.35×300mm の
りん脱酸銅管OL材(JISH3300、C1220T-OL )を腐食試
験に用いた。りん脱酸銅管はアセトン中で超音波洗浄
し、充分清浄化した後、乾燥し、試験材とした。この清
浄化したりん脱酸銅管の片端をシリコン栓で密栓し、銅
管内には腐食液を1ml注入した後、他端をシリコン栓で
密栓した後、管をよく振り、管内面に腐食液すなわち潤
滑油を付着させた。
【0024】腐食液の作製方法は、次の通りである。潤
滑油としては、発明者の実施した蟻の巣状腐食再現試験
の中で最も大きな蟻の巣状腐食を生じた自己揮発性潤滑
油(商品名OAK50-5 )、また比較的蟻の巣状腐食を起こ
し難かった不揮発性潤滑油(商品名OAK11-b )、更に潤
滑油の構成々分の代表としてポリプロピレングリコール
を選択した。そしてこれら潤滑油に第1表〜第3表に示
すアミン系有機腐食抑制剤を所定量添加した後に良く攪
拌し、有機腐食抑制剤の潤滑油中への溶解を図った後、
メスピペットで0.5ml の有機腐食抑制剤入りの潤滑油を
りん脱酸銅管内に注入し、別のメスピペットで引続いて
0.5ml の純水をりん脱酸銅管内に注入し、実施例の腐食
液1mlとした。比較例の腐食液についても有機腐食抑制
剤を添加しない以外は実施例と同じ方法により調製し
た。
滑油としては、発明者の実施した蟻の巣状腐食再現試験
の中で最も大きな蟻の巣状腐食を生じた自己揮発性潤滑
油(商品名OAK50-5 )、また比較的蟻の巣状腐食を起こ
し難かった不揮発性潤滑油(商品名OAK11-b )、更に潤
滑油の構成々分の代表としてポリプロピレングリコール
を選択した。そしてこれら潤滑油に第1表〜第3表に示
すアミン系有機腐食抑制剤を所定量添加した後に良く攪
拌し、有機腐食抑制剤の潤滑油中への溶解を図った後、
メスピペットで0.5ml の有機腐食抑制剤入りの潤滑油を
りん脱酸銅管内に注入し、別のメスピペットで引続いて
0.5ml の純水をりん脱酸銅管内に注入し、実施例の腐食
液1mlとした。比較例の腐食液についても有機腐食抑制
剤を添加しない以外は実施例と同じ方法により調製し
た。
【0025】次に腐食液の注入されたりん脱酸銅管(管
長 300mm)を恒温水槽に、長手方向に立て水中に半分浸
漬して保持した。恒温水槽には25℃で12時間、40
℃で12時間の1日1サイクルの条件で温度変化を与
え、これによりりん脱酸銅管に昼夜の温度サイクルを模
擬した加熱、冷却を加え蟻の巣状腐食の生じ易い環境条
件を形成した。試験期間は、自己揮発性潤滑油(商品名
OAK50-5 )とポリプロピレングリコールを含む腐食液に
ついては1ヶ月、不揮発性潤滑油(商品名OAK11-b )に
ついては3ヶ月とした。
長 300mm)を恒温水槽に、長手方向に立て水中に半分浸
漬して保持した。恒温水槽には25℃で12時間、40
℃で12時間の1日1サイクルの条件で温度変化を与
え、これによりりん脱酸銅管に昼夜の温度サイクルを模
擬した加熱、冷却を加え蟻の巣状腐食の生じ易い環境条
件を形成した。試験期間は、自己揮発性潤滑油(商品名
OAK50-5 )とポリプロピレングリコールを含む腐食液に
ついては1ヶ月、不揮発性潤滑油(商品名OAK11-b )に
ついては3ヶ月とした。
【0026】試験終了後、りん脱酸銅管を恒温水槽より
取り出し、銅管を長手方向に2分割した後、断面研磨、
光学顕微鏡観察を行って銅管の蟻の巣状腐食の侵食深さ
を計測した。これらの結果を第1表から第3表に示す。
また比較例1について試料の顕微鏡断面写真を図3に示
す。尚、蟻の巣状腐食は、銅管内面の赤色斑点状腐食部
下に存在するので、この部分の断面研磨、検鏡により容
易に見つけることができる。第1表から第3表に示すよ
うに、本発明のアミン系有機腐食抑制剤は、潤滑油によ
る蟻の巣状腐食に対して顕著な腐食防止及び抑制効果を
有する。一方、本発明の腐食抑制剤を用いない比較例に
おいては、図3に示すように典型的な蟻の巣状腐食が発
生している。
取り出し、銅管を長手方向に2分割した後、断面研磨、
光学顕微鏡観察を行って銅管の蟻の巣状腐食の侵食深さ
を計測した。これらの結果を第1表から第3表に示す。
また比較例1について試料の顕微鏡断面写真を図3に示
す。尚、蟻の巣状腐食は、銅管内面の赤色斑点状腐食部
下に存在するので、この部分の断面研磨、検鏡により容
易に見つけることができる。第1表から第3表に示すよ
うに、本発明のアミン系有機腐食抑制剤は、潤滑油によ
る蟻の巣状腐食に対して顕著な腐食防止及び抑制効果を
有する。一方、本発明の腐食抑制剤を用いない比較例に
おいては、図3に示すように典型的な蟻の巣状腐食が発
生している。
【0027】銅ニッケル合金管(9-1 キュプロ JIS C70
60)について、上記実施例と同様に方法により、自己揮
発性潤滑油(商品名OAK50-5 )に本発明の有機腐食抑制
剤を添加したものと、添加しないものについて腐食試験
を行った。この結果を表4に示す。この結果から明らか
なように、銅合金に対しても本発明の有機腐食抑制剤を
添加した潤滑油では蟻の巣状腐食が全く発生せず、優れ
た腐食防止ないし腐食抑制効果が確認された。
60)について、上記実施例と同様に方法により、自己揮
発性潤滑油(商品名OAK50-5 )に本発明の有機腐食抑制
剤を添加したものと、添加しないものについて腐食試験
を行った。この結果を表4に示す。この結果から明らか
なように、銅合金に対しても本発明の有機腐食抑制剤を
添加した潤滑油では蟻の巣状腐食が全く発生せず、優れ
た腐食防止ないし腐食抑制効果が確認された。
【0028】更に、これらのアミン系有機腐食抑制剤
は、潤滑油に添加して用いる態様に限らず、銅系材料表
面に予め塗布した後、潤滑油と接触させても潤滑油によ
る蟻の巣状腐食に対してほぼ同様な抑制効果を発揮す
る。
は、潤滑油に添加して用いる態様に限らず、銅系材料表
面に予め塗布した後、潤滑油と接触させても潤滑油によ
る蟻の巣状腐食に対してほぼ同様な抑制効果を発揮す
る。
【0029】
【発明の効果】このように、本発明によれば、含酸素有
機化合物を含有し、銅系材料に対して水との反応により
蟻の巣状腐食を生じ易い潤滑油でも、アミン系有機腐食
抑制剤を含有させることにより、銅系材料に対する蟻の
巣状腐食性を効果的に防止できる。またこの有機腐食抑
制剤を銅系材料の表面に塗布することにより同様の腐食
抑制効果を得ることができる。
機化合物を含有し、銅系材料に対して水との反応により
蟻の巣状腐食を生じ易い潤滑油でも、アミン系有機腐食
抑制剤を含有させることにより、銅系材料に対する蟻の
巣状腐食性を効果的に防止できる。またこの有機腐食抑
制剤を銅系材料の表面に塗布することにより同様の腐食
抑制効果を得ることができる。
【図1】 市販の潤滑油に銅管を3ケ月浸漬して蟻の巣
状腐食が発生した金属組織を示す顕微鏡写真(倍率10
0倍)。
状腐食が発生した金属組織を示す顕微鏡写真(倍率10
0倍)。
【図2】 アセトアルデヒドに銅管を1ケ月浸漬して蟻
の巣状腐食が発生した金属組織を示す顕微鏡写真(倍率
200倍)。
の巣状腐食が発生した金属組織を示す顕微鏡写真(倍率
200倍)。
【図3】 比較例1の蟻の巣状腐食が発生した金属組織
を示す顕微鏡写真(倍率200倍)。
を示す顕微鏡写真(倍率200倍)。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 渡辺 雅人 埼玉県北本市下石戸上1975番地2 北本製 作所内
Claims (7)
- 【請求項1】 含酸素有機化合物を含有した潤滑剤に起
因する銅系材料の蟻の巣状腐食に対する抑制剤であっ
て、アミン系有機化合物からなることを特徴とする腐食
抑制剤。 - 【請求項2】 請求項1の腐食抑制剤であって、次の一
般式で表わされるアミン系有機化合物からなる腐食抑制
剤。 R(NH2 )n (式中、Rはアルキル基、フェニル基、ナフチル基また
はアルキルフェニル基、n=1〜3) R1 R2 (NH)m (式中、R1 、R2 はアルキル基、フェニル基、ナフチ
ル基またはアルキルフェニル基、m=1〜2) R1 R2 R3 N (式中、R1 、R2 、R3 はアルキル基、フェニル基、
ナフチル基またはアルキルフェニル基) - 【請求項3】 含酸素有機化合物を含有した銅系材料の
加工用潤滑油であって、銅系材料の蟻の巣状腐食に対す
る抑制剤であるアミン系有機化合物からなる腐食抑制剤
を含有することを特徴とする潤滑油。 - 【請求項4】 含酸素有機化合物を含有した銅系材料の
加工用潤滑油であって、請求項2の一般式で示されるア
ミン系有機化合物からなる腐食抑制剤を少なくとも1種
または2種以上含有することを特徴とする潤滑油。 - 【請求項5】 上記有機腐食抑制剤を0.01〜50 g
/l含有することを特徴とする請求項3または4の銅系材
料の加工用潤滑油。 - 【請求項6】 上記有機腐食抑制剤が潤滑油に少なくと
も0.005 g/l以上溶解していることを特徴とする請
求項3、4または5の銅系材料の加工用潤滑油。 - 【請求項7】 上記有機腐食抑制剤が水に対して少なく
とも0.005 g/100ml以上の溶解性を有していること
を特徴とする請求項3、4、5または6の銅系材料の加
工用潤滑油。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP19300092A JPH0610168A (ja) | 1992-06-26 | 1992-06-26 | 銅系材料の腐食抑制剤と該腐食抑制剤を含有する潤滑油 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP19300092A JPH0610168A (ja) | 1992-06-26 | 1992-06-26 | 銅系材料の腐食抑制剤と該腐食抑制剤を含有する潤滑油 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH0610168A true JPH0610168A (ja) | 1994-01-18 |
Family
ID=16300549
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP19300092A Withdrawn JPH0610168A (ja) | 1992-06-26 | 1992-06-26 | 銅系材料の腐食抑制剤と該腐食抑制剤を含有する潤滑油 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH0610168A (ja) |
Cited By (7)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH10306232A (ja) * | 1997-05-07 | 1998-11-17 | Toyo Alum Kk | アルミニウム顔料組成物 |
JP2007154055A (ja) * | 2005-12-06 | 2007-06-21 | Sumitomo Light Metal Ind Ltd | 銅管加工用潤滑油及びそれを用いた銅管の製造方法 |
JP2007246725A (ja) * | 2006-03-16 | 2007-09-27 | Sumitomo Light Metal Ind Ltd | 銅管加工用潤滑油及びそれを用いた銅管の製造方法 |
JP2007302791A (ja) * | 2006-05-11 | 2007-11-22 | Sumitomo Light Metal Ind Ltd | 銅管加工用潤滑油及びそれを用いた銅管の製造方法 |
JP2008169279A (ja) * | 2007-01-10 | 2008-07-24 | Sumitomo Light Metal Ind Ltd | 銅管加工用潤滑油及びそれを用いた銅管の製造方法 |
WO2009113677A1 (ja) * | 2008-03-14 | 2009-09-17 | ステラケミファ株式会社 | 低腐食性イオン液体及びそれを含む潤滑油組成物 |
US8123063B2 (en) | 2007-09-06 | 2012-02-28 | Lube Co., Ltd. | Cartridge tank for lubrication agent |
-
1992
- 1992-06-26 JP JP19300092A patent/JPH0610168A/ja not_active Withdrawn
Cited By (8)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH10306232A (ja) * | 1997-05-07 | 1998-11-17 | Toyo Alum Kk | アルミニウム顔料組成物 |
JP2007154055A (ja) * | 2005-12-06 | 2007-06-21 | Sumitomo Light Metal Ind Ltd | 銅管加工用潤滑油及びそれを用いた銅管の製造方法 |
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JP2007302791A (ja) * | 2006-05-11 | 2007-11-22 | Sumitomo Light Metal Ind Ltd | 銅管加工用潤滑油及びそれを用いた銅管の製造方法 |
JP2008169279A (ja) * | 2007-01-10 | 2008-07-24 | Sumitomo Light Metal Ind Ltd | 銅管加工用潤滑油及びそれを用いた銅管の製造方法 |
US8123063B2 (en) | 2007-09-06 | 2012-02-28 | Lube Co., Ltd. | Cartridge tank for lubrication agent |
WO2009113677A1 (ja) * | 2008-03-14 | 2009-09-17 | ステラケミファ株式会社 | 低腐食性イオン液体及びそれを含む潤滑油組成物 |
JP2009242765A (ja) * | 2008-03-14 | 2009-10-22 | Stella Chemifa Corp | 低腐食性イオン液体及びそれを含む潤滑油組成物 |
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A300 | Withdrawal of application because of no request for examination |
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