JP2007154055A - 銅管加工用潤滑油及びそれを用いた銅管の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】銅管加工用潤滑油である。添加剤として、アルコールを5〜40%、リン酸エステルを1〜20%、アミン誘導体、アルキルスルホン酸塩、数平均分子量200以上1000未満であり水酸基を3〜6個有する多価アルコールのアルキレンオキシド付加物及びそのハイドロカルビルエーテル、数平均分子量120以上1000未満のポリアルキレングリコールのハイドロカルビルエーテル、炭素数2〜10の2価アルコールから選ばれる1種以上を0.01〜2.0%含有する。残部に、基油として、平均分子量30000以上のポリイソブチレンの1種以上と、平均分子量400以下のイソパラフィン又はポリイソブチレンの1種以上とを含有する。粘度は100〜1000cStである。
【選択図】図1
Description
しかしながら、これらの従来技術では、生産性の低下、莫大な設備費や設備設置スペースが必要となる欠点がある。
また、潤滑油によっては、転造時に、プラグに凝着する銅が増加したり、銅磨耗粉の量が多くなることもあった。
添加剤として、1価アルコールを5〜40%と、
リン酸エステルを1〜20%と、
アミン誘導体、アルキルスルホン酸塩、数平均分子量200以上1000未満であると共に水酸基を3〜6個有する多価アルコールのアルキレンオキシド付加物、及びそのハイドロカルビルエーテル、数平均分子量120以上1000未満のポリアルキレングリコールのハイドロカルビルエーテル、及び炭素数2〜10の2価アルコールから選ばれる1種または2種以上を0.01〜2.0%(重量%、以下同じ)とを含有し、
残部に、基油として、平均分子量30000以上のポリイソブチレンの1種又は2種以上と、平均分子量400以下のイソパラフィン又はポリイソブチレンの1種又は2種以上とを含有し、
粘度が100〜1000cSt(at40℃)であることを特徴とする銅管加工用潤滑油にある(請求項1)。
すなわち、上記銅管加工用潤滑油の必須成分として、第1の添加剤(以下第1添加剤という)としての1価アルコールを5〜40%と、第2添加剤(以下第2添加剤という)としてのリン酸エステルを1〜20%と、第3添加剤(以下第3添加剤という)としての、アミン誘導体、アルキルスルホン酸塩、数平均分子量200以上1000未満であると共に水酸基を3〜6個有する多価アルコールのアルキレンオキシド付加物及びそのハイドロカルビルエーテル、数平均分子量120以上1000未満のポリアルキレングリコールのハイドロカルビルエーテル、及び炭素数2〜10の2価アルコールから選ばれる少なくとも1種または2種以上を含有する。これら第1〜第3の添加剤を同時に含有することにより、成形性が向上し、過酷な加工条件下でも使用することができ、境界潤滑性が向上することができ、プラグへの銅の凝着や銅磨耗粉の発生を抑制することができる。
本発明の銅管の製造方法は、抽伸加工あるいは転造加工において、第1の発明の上記銅管加工油を用いることで、優れた内面形状を有し、焼鈍時に焼き付きや外面変色がなく、成形後に焼鈍した場合の焼鈍後の残油量が少ない銅管を作製することが可能である。
また、リン酸エステルの含有量が1%未満の場合には、連続加工した場合に、成形性が悪くなるという問題があり、一方、リン酸エステルの含有量が20%を超える場合には、焼鈍後の残油量が増加するという問題がある。
上記平均分子量30000以上のポリイソブチレンが含まれない場合には、摩擦面へ導入される油量が少なく潤滑不足となるという問題があり、一方、平均分子量400以下のイソパラフィン又はポリイソブチレンが含まれない場合には、高粘度となり、取り扱いが困難で作業性を悪化させるという問題がある。
また、上記基油の含有量は、基本的に、上記添加剤の含有量が確保できる範囲とし、潤滑不足を防ぎ、適正な成形性を確保する。
また、平均分子量400以下のイソパラフィン又はポリイソブチレンとしては、引火の危険性や、潤滑油の臭気性を考慮すると、平均分子量80〜平均分子量400のイソパラフィン又はポリイソブチレンであることがより好ましい。
上記粘度が100cSt未満の場合には、潤滑性が不足するという問題があり、一方、上記粘度が1000cStを超える場合には、粘度が増加し取り扱いが困難になるという問題や、焼鈍後の残油が増加するという問題がある。
上記動粘度は、JIS K 2283の「原油及び石油製品の動粘度試験方法」に準拠して40℃における動粘度を測定し、測定器具としては、JIS K 2839の「石油類試験用ガラス器具」のキャノン−フェンスケ粘度計を用いて測定することができる。
また、本発明の銅管加工用潤滑油は、上記基油と添加剤とにより100%になるものであるが、実使用に際して、上述の優れた効果を安定的に操業するために、上記100%の外に、必要に応じて、酸化防止剤、錆止め剤、腐食防止剤、消泡剤等の一種又は二種以上をさらに添加することも勿論可能である。
上記錆止め剤としては、例えば、ジノニルナフタレンスルホン酸バリウム等が挙げられる。
上記腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
上記消泡剤としては、例えば、シリコン系のものが挙げられる。
上記1価アルコールの炭化水素基の炭素数が8以下の場合には、潤滑性が劣るという問題があり、一方、上記炭化水素基の炭素数が19以上の場合には、潤滑油が残留し易くなるという問題がある。そのため、上記1価アルコールの炭化水素基の炭素数は12〜15であることがより好ましい。
また、上記炭化水素基R1としては、具体的に、例えば、アルキル基及びアルケニル基等がある。より好ましくは、上記アルコールの炭化水素基R1は、アルキル基又はアルケニル基である。
また、上記特定のリン酸エステルの炭化水素基R3及びR4の炭素数が5以上の場合には、焼鈍後に残油量が増加するおそれがある。
また、上記炭化水素基としては、具体的に、例えば、アルキル基及びアルケニル基等がある。より好ましくは、上記R2はアルキル基又はアルケニル基であり、上記炭化水素基R3及びR4はアルキル基である。
また、上記アミン誘導体は、ヒドロキシル基、エーテル基が含まれていてもよい。
また、上記芳香族アミンとしては、例えば、アニリン、ジメチルアニリン、及びジエチルアニリン等が挙げられる。
また、アルキレンオキシドの付加モル数が6モルを超える場合には、基油への溶解性が悪くなるおそれがある。より好ましくは、アルキレンオキシドの付加モル数は1〜4モルである。
また、上記アルキルスルホン酸塩は、アルキル基が炭素数4〜18であることが好ましい。
アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2−エポキシブタン、2,3−エポキシブタン、1,2−エポキシ−1−メチルプロパン、1,2−エポキシヘプタン、1,2−エポキシヘキサン等がある。
上記アルキレンオキシド等付加物は、例えば、1種類のアルキレンオキシド等の単独重合、2種類以上のアルキレンオキシド等のランダム共重合、ブロック共重合又は、ランダム/ブロック共重合等がある。
また、水酸基を3〜6個有する多価アルコールにアルキレンオキシドを付加させる際、付加される水酸基は、全ての水酸基であっても、一部の水酸基であってもよい。
ハイドロカルビル基は、炭素数1〜24の炭化水素基である。
炭化水素基としては、たとえば、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アルキルシクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基等がある。
このようなアルキレンオキシドとしては、上述の多価アルコールのアルキレンオキシド付加物及びそのハイドロカルビルエーテルを構成するアルキレンオキシドとして列挙したものと同様のもの等がある。
また、上記ポリアルキレングリコールのハイドロカルビルエーテルとしては、ポリアルキレングリコールの末端水酸基の一部又は全てをハイドロカルビルエーテル化させたものを用いることができる。
ハイドロカルビル基としては、例えば、上述の多価アルコールのアルキレンオキシド付加物及びそのハイドロカルビルエーテルを構成するハイドロカルビル基として列挙した各基等がある。
この場合には、成形性をさらに向上させるという効果を得ることができる。
上記芳香族炭化水素の含有量が1%未満である場合には、効果が現れず、一方、上記芳香族炭化水素の含有量が10%を超える場合には、残油量が増加するおそれや、臭気が発生するおそれがある。
銅管の内面に残留した潤滑油を除去することは外面に比べ相当困難である。すなわち、この場合には、残油量が少ないことが重要となるため、特に有効である。上記銅管は、ルームエアコン等の空調機、冷蔵庫、冷凍庫等の冷凍機の熱交換器に用いられる伝熱管として、特に好適に使用することができる。なお、加工の種類を特定することなく、多目的に利用が可能であることは言うまでもない。
上記転造加工は、銅管内にプラグを入れて、外面から、例えば、回転ボールで圧下することによって、銅管内面に複雑なリップルフィンを付与する、非常に過酷な加工である。また、内面形状が複雑となる分だけ残油しやすくなる。このような転造加工においても、上記潤滑油は、優れた成形性を有し、焼鈍後の残油量を少なくすることができ、特に有効である。
この場合には、焼鈍後の上記銅管の内面に残留する潤滑油の量の低減に非常に有効である。
なお、転造加工では、フィン高さ0.24mm、フィン頂角10°、リード角30°の条件で加工を行うことにより、図1に示すごとく、内側に突出した多数のリップルフィンを有する断面形状に成形した。
A1:平均分子量60000のポリイソブチレン
A2:平均分子量30000のポリイソブチレン
A3:平均分子量3700のポリイソブチレン
B1:平均分子量120のイソパラフィン
B2:平均分子量270のポリイソブチレン
C1:ヘキサデシルアルコール
C2:ドデシルアルコール
C3:ウンデシルアルコール
C4:オレイルアルコール
D1:ドデシルフォスフォン酸ジメチルエステル
D2:テトラデシルフォスフォン酸ジメチルエステル
D3:オレイルフォスフォン酸ジメチルエステル
D4:リン酸トリトリル
E1:トリプロピレングリコール
E2:N,N−ジシクロヘキシルアミンエチレンオキシド2モル付加物
E3:ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム
<リップルフィン高さ>
リップルフィン高さH(図1)は、転造加工直後の銅管長手方向における、転造開始より100mの位置の断面を、拡大鏡を用いて観察し、存在する全てのリップルフィンの高さを測定し、それらの平均値を求めることにより評価した。
(評価基準)
5:0.235mm以上
4:0.230mm以上0.235mm未満
3:0.225mm以上0.230mm未満
2:0.220mm以上0.225mm未満
1:0.220mm未満
リップルフィン高さ維持性は、転造直後の銅管長手における転造開始より100m、及び転造終了100m手前の2ヵ所の位置での、リップルフィン高さを上記リップルフィン高さHと同様にして測定し、両測定値の差分より評価した。
(評価基準)
5:0.005mm以下
4:0.005mm超え0.010mm以下
3:0.010mm超え0.015mm以下
2:0.015mm超え0.020mm以下
1:0.020mm超え
また、焼鈍処理後の各試料について以下の評価試験を行った。結果を表3及び表4に示す。
残油量は、焼鈍処理後、上記レベルワウンドコイル上面に相当する銅管をコイルの入り口端から出側端までの各段について1m長さで残油測定用銅管を採取し、有機溶剤で抽出洗浄し、赤外分光分析法によって3000〜2800cm-1における赤外吸光度を測定した。事前に作成しておいた検量線を元に、銅管内に残留する焼鈍残油量を求め、評価した。
(評価基準)
5:0.03mg/m以下
4:0.03mg/m超え0.05mg/m以下
3:0.05mg/m超え0.07mg/m以下
2:0.07mg/m超え0.10mg/m以下
1:0.10mg/m超え
相溶性は、JISK2211「冷凍機油」の付属書2「冷媒との化学安定性試験方法(シールドチューブテスト)」に準拠して、シールドチューブテストを実施し、得られた焼鈍残油が冷凍システムに与える影響を調査することで評価した。
上記シールドチューブテストは以下のように行った。内径がφ10mmであるガラス管に10mLの冷媒と、1mLの試験油と、太さが1.6mm、長さ50mmである金属線からなる触媒とを入れた後、ガラス管の上部を溶融して密閉した。次に、ガラス管を170℃の温度で14日間保持した後に、液層の状態変化を観察し、相溶性を評価した。
(評価基準)
○:液層の状態変化がない場合
×:触媒の劣化、液層の変色、白濁もしくは析出物が存在する場合
ピンオンディスク式摩擦磨耗試験機を用い、コーティングを評価した。ピンオンディスク装置は、ピンを固定する支持部と、これに対面して回転可能に配設されたディスク部とを有する。ピンとして、先端R2mm、φ5mm、8mmLの純銅、ディスクとして、φ50mm、5mmtの冷間工具鋼SKD11を用い、荷重20kgf、周速18m/minの条件で20分間、試験を実施した。
試験後のディスク表面を目視にて観察し、銅のコーティング量を評価した。
(評価基準)
○:明瞭な銅のコーティングが確認されない場合
×:明瞭な銅のコーティングが確認される場合
摺動部材としてのSUJ2製鋼球(3/16インチ)、試験材としての150mmLのリン脱酸銅板を用い、板温度50℃、摺動速度5mm/sec、摺動回数150回として、バウデンレーベン摩擦試験を実施し、摩擦係数を求めることによって境界潤滑性を評価した。
(評価基準)
○:摩擦係数が0.15未満の場合
×:摩擦係数が0.15以上の場合
リップルフィン高さ、リップルフィン高さ維持性、残油性とも、評価1以下を不合格、相溶性、コーティング、及び境界潤滑性は評価×を不合格とした。
また、本発明の比較例である試料C2は、基油として平均分子量30000以上のポリイソブチレンを含有していないため潤滑不足になり、また、添加剤として、第2添加剤及び第3添加剤を含有しておらず、成形性、銅粉の凝集力、及びロールコーティング抑制の効果が見られないため、リップルフィン高さ及びコーティングが不合格であった。
また、本発明の比較例である試料C4は、基油として平均分子量30000以上のポリイソブチレンを含有しておらず、また、第3添加剤を含有していないため、残油量、リップルフィン高さ、外面変色、及びコーティングが不合格であった。
また、本発明の比較例である試料C6は、基油として平均分子量30000以上のポリイソブチレンを含有していないため潤滑不足となり、また、第3添加剤を含有しておらず、銅粉の凝集力、及びロールコーティング抑制の効果が見られないため、リップルフィン高さ及びコーティングが不合格であった。
また、本発明の比較例である試料C11は、潤滑油全体の粘度が本発明の上限を上回るため、残油量が不合格であった。
また、本発明の比較例である試料C13は、アルコールの含有量が本発明の下限を下回るため、潤滑不足となり成形性が低下するため、リップルフィン高さが不合格であった。
また、本発明の比較例である試料C15は、リン酸エステルの含有量が本発明の上限を上回るため、焼鈍後の残油量が増加するため、残油量が不合格であった。
また、試料C17は、芳香族化合物の含有量が本発明の好ましい範囲の下限を下回るため、成形性を向上させる効果が見られないためリップルフィン高さが優れない。
また、試料C18は、芳香族化合物の含有量が本発明の好ましい範囲の上限を上回るため、残油量が優れない。
2 リップルフィン
Claims (9)
- 銅又は銅合金よりなる銅管を加工するための銅管加工用潤滑油であって、
添加剤として、1価アルコールを5〜40%と、
リン酸エステルを1〜20%と、
アミン誘導体、アルキルスルホン酸塩、数平均分子量200以上1000未満であると共に水酸基を3〜6個有する多価アルコールのアルキレンオキシド付加物、及びそのハイドロカルビルエーテル、数平均分子量120以上1000未満のポリアルキレングリコールのハイドロカルビルエーテル、及び炭素数2〜10の2価アルコールから選ばれる1種または2種以上を0.01〜2.0%(重量%、以下同じ)とを含有し、
残部に、基油として、平均分子量30000以上のポリイソブチレンの1種又は2種以上と、平均分子量400以下のイソパラフィン又はポリイソブチレンの1種又は2種以上とを含有し、
粘度が100〜1000cSt(at40℃)であることを特徴とする銅管加工用潤滑油。 - 請求項1〜3において、上記アミン誘導体は、脂肪族アミン、アルカノールアミン、脂肪族ポリアミン、芳香族アミン、脂環式アミン、複素環アミン、及びそれらのアルキレンオキシド付加物であることを特徴とする銅管加工用潤滑油。
- 請求項1〜4のいずれか一項において、添加剤として、さらに、芳香族炭化水素を1〜10%含有することを特徴とする銅管加工用潤滑油。
- 請求項1〜5のいずれか一項において、上記銅管加工用潤滑油は、上記銅管の内面を加工する際に該内面に供給される内面加工用であることを特徴とする銅管加工用潤滑油。
- 請求項6において、上記内面加工は、上記銅管の内面に凹凸形状を設ける転造加工であることを特徴とする銅管加工用潤滑油。
- 銅又は銅合金からなる銅管の少なくとも内面に、請求項1〜7のいずれか一項に記載の上記銅管加工用潤滑油を供給し、抽伸加工あるいは転造加工により内面加工を施すことを特徴とする銅管の製造方法。
- 請求項8において、上記内面加工を施した上記銅管の管内雰囲気を非酸化性ガスで置換し、焼鈍を行うことを特徴とする銅管の製造方法。
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