JP4995483B2 - 銅管加工用潤滑油及びそれを用いた銅管の製造方法 - Google Patents
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しかしながら、これらの従来技術では、生産性の低下、莫大な設備費や設備設置スペースが必要となる欠点がある。
上記銅管の内面を加工する際に少なくとも該内面に供給され、上記銅管の内面に凹凸形状を設ける転造加工用の銅管加工用潤滑油において、
添加剤として、炭素数9〜18の一価アルコールを5〜40重量%と、
下記の一般式(1)で示される脂肪酸エステル、合成エステル、天然油脂の一種または二種以上を1重量%以上かつ30重量%未満とを含有し、
残部に基油として、分子量30000〜60000のポリイソブチレンと、分子量80〜400のポリイソブチレンまたはイソパラフィン、または温度40℃における動粘度1000cSt以下の精製鉱油とを含有し、
温度40℃における動粘度が100〜2000cStであることを特徴とする銅管加工潤滑油にある(請求項1)。
上記第1添加剤と上記第2添加剤を同時に含有することにより、成形性が向上し、過酷な加工条件下でも使用することができ、境界潤滑性を向上し、プラグへの銅の凝着や銅磨耗粉の発生を抑制することができる。
本発明の銅管の製造方法は、転造加工において、第1の発明に記載の銅管加工用潤滑油を用いることで、高い成形性が得られ、優れた内面形状を有し、焼鈍時に焼き付きや外面変色がなく、成形後に焼鈍した場合の焼鈍後の残油量が少ない銅管を作製することが可能である。
上記第1添加剤としての炭素数9〜18の一価アルコールの含有量が5%未満の場合には、潤滑不足となり、成形性が低下するという問題がある。一方、上記第1添加剤の含有量が40%を超える場合には、焼鈍後の残油量が多くなり、冷媒への不溶解生成物が増加し、相溶性が低下するという問題がある。
また、上記第2添加剤の含有量が1%未満の場合には、連続加工した場合に、成形性が悪くなるという問題があり、一方、上記第2添加剤の含有量が30%以上の場合には、焼鈍後の残油量が多くなるという問題がある。
また、上記炭化水素基R1及び上記炭化水素基R2としては、例えば、アルキル基やアルケニル基等が挙げられる。上記炭化水素基R1及び上記炭化水素基R2としては、アルキル基であることが好ましい。
また、上記ネオペンチルグリコールエステルとしては、特に、オレイン酸、イソステアリン酸、やし油脂肪酸、牛脂脂肪酸のエステルが好ましい。
上記トリメチロールプロパンエステルとしては、特に、オレイン酸、イソステアリン酸、やし油脂肪酸、牛脂脂肪酸のエステルが好ましい。
また、上記ペンタエリスリトールエステルとしては、特に、オレイン酸、イソステアリン酸、やし油脂肪酸、牛脂脂肪酸のエステルが好ましい。
また、上記基油の含有量は、基本的に、上記添加剤の含有量が確保できる範囲とし、潤滑不足を防ぎ、適正な成形性を確保する。
また、平均分子量400以下のイソパラフィン又はポリイソブチレンとしては、引火する危険性や、潤滑油の臭気を考慮すると、平均分子量80〜平均分子量400のイソパラフィン又はポリイソブチレンであることが好ましい。
上記粘度が100cSt未満の場合には、潤滑性が不足するという問題があり、一方、上記粘度が2000cStを超える場合には、粘度が増加し、潤滑油の取り扱い難くなる問題や、潤滑油の循環ろ過が困難になるという問題や、焼鈍後の残油量が増加するという問題がある。
また、本発明の銅管加工用潤滑油は、上記基油と上記油性剤と添加剤とにより100%になるものであるが、実使用に際して、上述の優れた効果を安定的に操業するために、上記100%の外に、必要に応じて、酸化防止剤、錆止め剤、腐食防止剤、消泡剤等の一種又は二種以上をさらに添加することも勿論可能である。
上記炭化水素基R3及びR4としては、具体的に、例えば、アルキル基及びアルケニル基等がある。上記フェノール化合物の炭化水素基R3、R4は、アルキル基であることが好ましい。
上記第4添加剤の含有量が1%未満の場合には、連続加工した場合に、成形性が悪くなるおそれがあり、一方、上記第4添加材の含有量が20%を超える場合には、焼鈍後の残油量が増加するおそれがある。
また、上記特定のリン酸エステルの炭化水素基R6及びR7の炭素数が5以上の場合には、焼鈍後に残油量が増加するおそれがある。
また、上記アミン誘導体は、ヒドロキシル基、エーテル基が含まれていてもよい。
また、上記芳香族アミンとしては、例えば、アニリン、ジメチルアニリン、及びジエチルアニリン等が挙げられる。
また、アルキレンオキシドの付加モル数が6モルを超える場合には、基油への溶解性が悪くなるおそれがある。より好ましくは、アルキレンオキシドの付加モル数は1〜4モルである。
また、上記アルキルスルホン酸塩は、アルキル基が炭素数4〜18であることが好ましい。
アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2−エポキシブタン、2,3−エポキシブタン、1,2−エポキシ−1−メチルプロパン、1,2−エポキシヘプタン、1,2−エポキシヘキサン等がある。
上記アルキレンオキシド等付加物は、例えば、1種類のアルキレンオキシド等の単独重合、2種類以上のアルキレンオキシド等のランダム共重合、ブロック共重合又は、ランダム/ブロック共重合等がある。
また、水酸基を3〜6個有する多価アルコールにアルキレンオキシドを付加させる際、付加される水酸基は、全ての水酸基であっても、一部の水酸基であってもよい。
ハイドロカルビル基は、炭素数1〜24の炭化水素基である。
炭化水素基としては、たとえば、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アルキルシクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、及びアリールアルキル基等がある。
この場合には、成形性をさらに向上させるという効果を得ることができる。
上記芳香族炭化水素の含有量が1%未満である場合には、効果が現れず、一方、上記芳香族炭化水素の含有量が10%を超える場合には、残油量が増加するおそれや、臭気が発生するおそれがある。
銅管の内面に残留した潤滑油を除去することは外面に比べ相当困難である。すなわち、この場合には、残油量が少ないことが重要となるため、特に有効である。上記銅管は、ルームエアコン等の空調機、冷蔵庫、冷凍庫等の冷凍機の熱交換器に用いられる伝熱管として、特に好適に使用することができる。なお、加工の種類を特定することなく、多目的に利用が可能であることは言うまでもない。
上記転造加工は、銅管内にプラグを入れて、外面から、例えば、回転ボールで圧下することによって、銅管内面に複雑なリップルフィンを付与する、非常に過酷な加工である。また、内面形状が複雑となる分だけ残油しやすくなる。このような転造加工においても、上記潤滑油は、優れた成形性を有し、焼鈍後の残油量を少なくすることができ、特に有効である。
この場合には、焼鈍後の上記銅管の内面に残留する潤滑油の量の低減に非常に有効である。
次に、本発明の銅管加工用潤滑油にかかる実施例に及び比較例について説明する。
本例の実施例の銅管加工用潤滑油は、銅又は銅合金よりなる銅管を加工するための銅管加工用潤滑油であって、添加剤として、炭素数9〜18の一価アルコールを5〜40%と、上記一般式(1)で示される脂肪酸エステル、合成エステル、天然油脂の一種または二種以上を1〜30%とを含有し、残部に基油として、分子量30000以上のポリイソブチレンと、分子量400以下のポリイソブチレンまたはイソパラフィン、または1000cSt以下の精製鉱油とを含有し、動粘度が100〜2000cStである。
A1:平均分子量60000のポリイソブチレン
A2:平均分子量30000のポリイソブチレン
A3:平均分子量3700のポリイソブチレン
B1:平均分子量120のイソパラフィン
B2:平均分子量270のポリイソブチレン
C1:ヘキサデシルアルコール
C2:ドデシルアルコール
C3:ウンデシルアルコール
C4:オレイルアルコール
D1:カプリン酸エチル
D2:トリメチロールプロパンオレイン酸トリエステル
D3:ペンタエリスリトールオレイン酸テトラエステル
D4:オレイン酸メチル
E1:ベンゼンプロパン酸−3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシオクチルエステル
E2:ジ−ターシャリーブチルパラクレゾール
F1:リン酸トリトリル
G1:トリプロピレングリコール
G2:N,N−ジシクロヘキシルアミンエチレンオキシド2モル付加物
G3:ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム
H1:エチルベンゼン
<リップルフィン高さ>
リップルフィン高さH(図1)は、転造加工直後の銅管長手方向における、転造開始より100mの位置の断面を、拡大鏡を用いて観察し、存在する全てのリップルフィンの高さを測定し、それらの平均値を求めることにより成形性を評価した。評価が3以上のものを合格とし、評価が1、2のものを不合格とした。
(評価基準)
5:0.235mm以上
4:0.230mm以上0.235mm未満
3:0.225mm以上0.230mm未満
2:0.220mm以上0.225mm未満
1:0.220mm未満
<リップルフィン高さ維持性>
リップルフィン高さ維持性は、転造直後の銅管長手における転造開始より100m、及び転造終了100m手前の2ヵ所の位置での、リップルフィン高さを、リップルフィン高さHと同様に測定し、両測定値の差分より成形性を評価した。評価が3以上のものを合格とし、評価が1、2のものを不合格とした。
(評価基準)
5:0.005mm以下
4:0.005mm超え0.010mm以下
3:0.010mm超え0.015mm以下
2:0.015mm超え0.020mm以下
1:0.020mm超え
また、焼鈍後の各試料について以下の評価試験を行った。結果を表3及び表4に示す。
(評価基準)
5:0.03mg/m以下
4:0.03mg/m超え0.05mg/m以下
3:0.05mg/m超え0.07mg/m以下
2:0.07mg/m超え0.10mg/m以下
1:0.10mg/m超え
相溶性は、JISK2211「冷凍機油」の付属書2「冷媒との化学安定性試験方法(シールドチューブテスト)」に準拠して、シールドチューブテストを実施し、得られた焼鈍残油が冷凍システムに与える影響を調査することで評価した。
上記シールドチューブテストは以下のように行った。まず、内径が10mmであるガラス管に10ミリリットルの冷媒と、1ミリリットルの試料油と、太さが1.6mm、長さ50mmである金属線からなる触媒とを入れた後、ガラス管の上部を溶融して密閉した。次に、上記ガラス管を170℃の温度で14日間保持した後に、液層の状態変化を観察し、相溶性を評価した。試料油としては、焼鈍残油0.01gと冷凍機油1.0gとを混合したものを使用し、触媒としては、鉄、銅及びアルミニウムの線材を用いた。また、冷媒としては、R410Aを使用し、冷凍機油としてはエステル油を用いた。評価が○のものを合格とし、評価が×のものを不合格とした。
(評価基準)
○:液層の状態変化がない場合
×:触媒の劣化、液相の変色、白濁もしくは析出物が存在する場合
ピンオンディスク式摩擦摩耗試験機を用い、コーティングを評価した。ピンオンディスク装置は、ピンを固定する支持部と、これに対面して回転可能に配設されたディスク部とを有する。ピンとして、先端R2mm、φ5mm、8mmLの純銅、ディスクとして、冷間工具鋼SKD11、φ50mm、5mmtを用い、荷重20kgf、周速18m/minの条件で20分間、試験を実施した。また、ピンとディスクとは、各種供試油100mL中に浸してある。
試験後のディスク表面を目視にて観察し、銅のコーティングを評価した。評価が○、△のものを合格とし、評価が×のものを不合格とした。
(評価基準)
○:明瞭な銅のコーティングが確認されない場合
△:極わずかに銅のコーティングが確認される場合
×:明瞭な銅のコーティングが確認される場合
摺動部材としてのSUJ2製鋼球(3/16インチ)、試験材としての0.5mmt、10mmw、150mmLのリン脱酸銅板を用い、板温度50℃、摺動速度5mm/sec、摺動回数150回として、バウデンレーベン摩擦試験を実施し、摩擦係数を求めることによって、境界潤滑性を評価した。評価が○のものを合格とし、評価が×のものを不合格とした。
(評価基準)
○:摩擦係数が0.15未満の場合
×:摩擦係数が0.15以上の場合
供試油6mL、蒸留水50mL及び銅粉1g(平均粒子径75〜150μm)を100mLビーカーに入れ、アルミ箔で密封し、90℃の恒温乾燥機中で48時間加熱した。水層中の有機酸イオンをイオンクロマトグラフにて定量することで低級有機酸防止性を評価した。評価が○及び△の場合を合格とし、評価が×の場合を不合格とした。
(評価基準)
○:ギ酸イオン量が10ppm以下の場合
△:ギ酸イオン量が10ppm超え20ppm以下の場合
×:ギ酸イオン量が20ppm超えの場合
また、試料E13及び試料E14は第3添加剤を含有しているため、低級有機酸防止性が特に優れている。
また、本発明の比較例としての試料C3は、第1添加剤の含有量が本発明の上限を上回り、焼鈍後の残油量が多くなり、冷媒への不溶解生成物が増加するため、残油量及び相溶性が不合格であった。
また、本発明の比較例としての試料C5は、第2添加剤の含有量が本発明の上限を上回るため、焼鈍後の残油量が多くなり残油量が不合格であった。
また、本発明の比較例としての試料C7は、基油全体の動粘度が本発明の上限を上回るため、焼鈍後の残油量が増加し、残油量が不合格であった。
2 リップルフィン
Claims (8)
- 銅又は銅合金よりなる銅管を加工するための銅管加工用潤滑油であって、
上記銅管の内面を加工する際に少なくとも該内面に供給され、上記銅管の内面に凹凸形状を設ける転造加工用の銅管加工用潤滑油において、
添加剤として、炭素数9〜18の一価アルコールを5〜40重量%と、
下記の一般式(1)で示される脂肪酸エステル、合成エステル、天然油脂の一種または二種以上を1重量%以上かつ30重量%未満とを含有し、
残部に基油として、分子量30000〜60000のポリイソブチレンと、分子量80〜400のポリイソブチレンまたはイソパラフィン、または温度40℃における動粘度1000cSt以下の精製鉱油とを含有し、
温度40℃における動粘度が100〜2000cStであることを特徴とする銅管加工潤滑油。
- 請求項1〜3のいずれか一項において、添加剤として、更に、アミン誘導体、アルキルスルホン酸塩、数平均分子量200以上1000未満であると共に水酸基を3〜6個有する多価アルコールのアルキレンオキシド付加物、そのハイドロカルビルエーテル、数平均分子量120以上1000未満のポリアルキレングリコールのハイドロカルビルエーテル、及び炭素数2〜10の2価アルコールから選ばれる1種または2種以上を0.01〜2.0重量%含有することを特徴とする銅管加工用潤滑油。
- 請求項4において、上記アミン誘導体は、脂肪族アミン、アルカノールアミン、脂肪族ポリアミン、芳香族アミン、脂環式アミン、複素環アミン、又はそれらのアルキレンオキシド付加物であることを特徴とする銅管加工用潤滑油。
- 請求項1〜5のいずれか一項において、添加剤として、更に、芳香族炭化水素を1〜10重量%含有することを特徴とする銅管加工用潤滑油。
- 銅又は銅合金からなる銅管の少なくとも内面に、請求項1〜6のいずれか一項に記載の上記銅管加工用潤滑油を供給し、転造加工により内面加工を施すことを特徴とする銅管の製造方法。
- 請求項7において、上記内面加工を施した上記銅管の管内雰囲気を非酸化性ガスで置換し、焼鈍を行うことを特徴とする銅管の製造方法。
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