JP5085942B2 - 銅管加工用潤滑油及びそれを用いた銅管の製造方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、これらの従来技術では、生産性の低下、莫大な設備費や設備設置スペースが必要となる欠点がある。
また、潤滑油によっては、水分、熱、酸素、潤滑油量の条件がある条件になった厳しい環境下で、銅管内あるいは銅管外面に残留した潤滑油が熱と水分と加水分解して、蟻酸、酢酸などの低級有機酸を発生し、この低級有機酸が原因となって、銅管表面が「蟻の巣腐食」という腐食引き起こす場合がある。
上記銅管の内面を加工する際に該内面に供給される内面加工用であり、該内面加工は、上記銅管の内面に凹凸形状を設ける転造加工であり、
添加剤として、一価アルコールを5〜40重量%と、
下記の一般式(1)、(2)で示されるフェノール化合物の1種又は2種以上を0.01〜3重量%とを含有し、
残部に、基油として、平均分子量30000以上のポリイソブチレンの1種又は2種以上と、平均分子量400以下のイソパラフィン又はポリイソブチレンの1種又は2種以上とを含有し、
動粘度が100〜1000cSt(at40℃)であることを特徴とする銅管加工用潤滑油にある(請求項1)。
すなわち、上記添加剤の必須成分として、第1の添加剤(以下第1添加剤という)として、一価アルコールを5〜40重量%含有する。これにより、成形性を向上させることができる。
本発明の銅管の製造方法は、転造加工等の銅管の内面加工において、第1の発明の上記銅管加工油を用いることで、優れた内面形状を有し、焼鈍時に焼き付きや外面変色がなく、成形後に焼鈍した場合の焼鈍後の残油量が少ない銅管を作製することが可能である。
上記一価アルコールの含有量が5重量%未満の場合には、潤滑性が不足し、成形性が低下するという問題があり、一方、上記一価アルコールの含有量が40重量%を超える場合には、焼鈍後の残油量が多くなるという問題がある。
また、上記炭化水素基R1、R2としては、具体的に、例えば、アルキル基及びアルケニル基等が挙げられる。
上記平均分子量30000以上のポリイソブチレンが含まれない場合には、摩擦面へ導入される油量が少なく潤滑不足となるという問題があり、一方、平均分子量400以下のイソパラフィン又はポリイソブチレンが含まれない場合には、高粘度となり、取り扱いが困難で作業性を悪化させるという問題がある。
また、上記基油の含有量は、基本的に、上記添加剤の含有量が確保できる範囲とし、潤滑不足を防ぎ、適正な成形性を確保する。
また、平均分子量400以下のイソパラフィン又はポリイソブチレンとしては、引火する危険性や、潤滑油の臭気を考慮すると、平均分子量80〜平均分子量400のイソパラフィン又はポリイソブチレンであることが好ましい。
上記動粘度が100cSt未満の場合には、潤滑性が不足するという問題があり、一方、上記動粘度が1000cStを超える場合には、動粘度が増加し取り扱いが困難になるという問題や、焼鈍後の残油が増加するという問題がある。
また、上記基油の含有量は、基本的に、上記添加剤の含有量が確保できる、且つ、動粘度が上記特定の値となる範囲とし、潤滑不足を防ぎ、適正な成形性を確保する。
また、本発明の銅管加工用潤滑油は、上記基油と添加剤とにより100重量%になるものであるが、実使用に際して、上述の優れた効果を安定的に操業するために、上記100重量%の外に、必要に応じて、酸化防止剤、錆止め剤、腐食防止剤、消泡剤等の一種又は二種以上をさらに添加することも勿論可能である。
上記錆止め剤としては、例えば、ジノニルナフタレンスルホン酸バリウム等が挙げられる。
上記腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
上記消泡剤としては、例えば、シリコン系のものが挙げられる。
また、上記炭化水素基R3としては、具体的に、例えば、アルキル基及びアルケニル基等が挙げられる。
この場合には、過酷な加工条件下でも使用することができる。
上記リン酸エステルの含有量が1重量%未満の場合には、連続加工した場合に、成形性が悪くなるおそれがあり、一方、リン酸エステルの含有量が20重量%を超える場合には、焼鈍後の残油量が増加するおそれがある。
また、上記特定のリン酸エステルの炭化水素基R5及びR6の炭素数が5以上の場合には、焼鈍後に残油量が増加するおそれがある。
また、上記炭化水素基としては、具体的に、例えば、アルキル基及びアルケニル基等が挙げられる。
上記第4添加剤の含有量が0.01重量%未満の場合には、銅粉の凝集力及びロールコーティング抑制の効果が見られず、一方、上記第4添加剤の含有量が2.0重量%を超える場合には、銅分の凝集効果が伸びず、コストアップとなる。また、含有量が多くなると、基油揮発後の残留分が多くなり、品質を悪化させることにつながる。上記含有量は0.1〜1.0重量%がより好ましい。
また、上記アミン誘導体は、ヒドロキシル基、エーテル基が含まれていてもよい。
また、上記芳香族アミンとしては、例えば、アニリン、ジメチルアニリン、及びジエチルアニリン等が挙げられる。
また、アルキレンオキシドの付加モル数が6モルを超える場合には、基油への溶解性が悪くなるおそれがある。より好ましくは、アルキレンオキシドの付加モル数は1〜4モルである。
また、上記アルキルスルホン酸塩は、アルキル基が炭素数4〜18であることが好ましい。
アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2−エポキシブタン、2,3−エポキシブタン、1,2−エポキシ−1−メチルプロパン、1,2−エポキシヘプタン、1,2−エポキシヘキサン等がある。
上記アルキレンオキシド等付加物は、例えば、1種類のアルキレンオキシド等の単独重合、2種類以上のアルキレンオキシド等のランダム共重合、ブロック共重合又は、ランダム/ブロック共重合等がある。
また、水酸基を3〜6個有する多価アルコールにアルキレンオキシドを付加させる際、付加される水酸基は、全ての水酸基であっても、一部の水酸基であってもよい。
ハイドロカルビル基は、炭素数1〜24の炭化水素基である。
炭化水素基としては、たとえば、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アルキルシクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基等がある。
炭素数6〜10のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等がある。
このようなアルキレンオキシドとしては、上述の多価アルコールのアルキレンオキシド付加物及びそのハイドロカルビルエーテルを構成するアルキレンオキシドとして列挙したものと同様のもの等がある。
ハイドロカルビル基としては、例えば、上述の多価アルコールのアルキレンオキシド付加物及びそのハイドロカルビルエーテルを構成するハイドロカルビル基として列挙した各基等がある。
この場合には、成形性をさらに向上させるという効果を得ることができる。
上記芳香族炭化水素の含有量が1重量%未満である場合には、効果が現れず、一方、上記芳香族炭化水素の含有量が10重量%を超える場合には、残油量が増加するおそれや、臭気が発生するおそれがある。
内面加工を施す場合には、内面に残留した潤滑油を除去することは困難である。すなわち、この場合には、残油量が少ないことが重要となるため、特に有効である。上記銅管は、ルームエアコン等の空調機、冷蔵庫、冷凍庫等の冷凍機の熱交換器に用いられる伝熱管として、特に好適に使用することができる。なお、加工の種類を特定することなく、多目的に利用が可能であることは言うまでもない。
上記転造加工は、銅管内にプラグを入れて、外面から回転ボールで圧下することによって、銅管内面に複雑なリップルフィンを付与する、非常に過酷な加工である。また、内面形状が複雑となる分だけ残油しやすくなる。このような転造加工においても、上記潤滑油は、優れた成形性を有し、焼鈍後の残油量を少なくすることができ、特に有効である。
この場合には、焼鈍後の上記銅管の内面に残留する潤滑油の量の低減に非常に有効である。
本例では、本発明の実施例および比較例として、表1〜表3に示す組成の銅管加工用潤滑油(試料E1〜試料E25、試料C1〜試料C11)を使用して、総重量500kgのリン脱酸銅管の転造加工を行い、管外径7.00mm、内径6.35mm、肉厚0.25mm、長さ約5000mとし、切断及び整列巻取りして重量250kgのレベルワウンドコイルを作製した。
A1:平均分子量60000のポリイソブチレン
A2:平均分子量30000のポリイソブチレン
A3:平均分子量3700のポリイソブチレン
B1:平均分子量120のイソパラフィン
B2:平均分子量270のポリイソブチレン
C1:ヘキサデシルアルコール
C2:ドデシルアルコール
C3:オレイルアルコール
C4:オクチルアルコール
D1:ベンゼンプロパン酸−3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシオクチルエステル
D2:ジ−ターシャリーブチルパラクレゾール
E1:リン酸トリトリル
F1:ドデシルフォスフォン酸ジメチルエステル
F2:テトラデシルフォスフォン酸ジメチルエステル
F3:オレイルフォスフォン酸ジメチルエステル
F4:トリプロピレングリコール
F5:N,N−ジシクロヘキシルアミンエチレンオキシド2モル付加物
F6:ジ2エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム
G1:エチルベンゼン
<リップルフィン高さ>
リップルフィン高さH(図1)は、転造加工直後の銅管長手方向における、転造開始より100mの位置の断面を、拡大鏡を用いて観察し、存在する全てのリップルフィンの高さを測定し、それらの平均値を求めることにより成形性を評価した。
(評価基準)
5:0.235mm以上
4:0.230mm以上0.235mm未満
3:0.225mm以上0.230mm未満
2:0.220mm以上0.225mm未満
1:0.220mm未満
<リップルフィン高さ維持性>
リップルフィン高さ維持性は、転造直後の銅管長手における転造開始より100m、及び転造終了100m手前の2ヵ所の位置での、リップルフィン高さを、リップルフィン高さHと同様に測定し、両測定値の差分より成形性を評価した。
(評価基準)
5:0.005mm以下
4:0.005mm超え0.010mm以下
3:0.010mm超え0.015mm以下
2:0.015mm超え0.020mm以下
1:0.020mm超え
また、焼鈍処理後の各試料について以下の評価試験を行った。結果を表4及び表5に示す。
残油量は、焼鈍処理後、上記レベルワウンドコイル上面に相当する銅管をコイルの入り口端から出側端までの各段について1m長さで残油測定用銅管を採取し、有機溶剤で抽出洗浄し、赤外分光分析法によって3000〜2800cm-1における赤外吸光度を測定し、事前に作成しておいた検量線を元に、銅管内に残留する焼鈍残油量を求め、焼鈍後の残油量を評価した。
(評価基準)
○:残油量が0.10mg/m以下の場合
×:残油量が0.10mg/m超えの場合
供試油6mL、蒸留水50mL及び銅粉1g(平均粒子径75〜150μm)を100mLビーカーに入れ、アルミ箔で密封し、90℃の恒温乾燥機中で48時間加熱した。水層中の低級有機酸イオン(ギ酸イオン)をイオンクロマトグラフにて定量した。ギ酸イオン量を測定することによって低級有機酸防止性を評価した。
(評価基準)
○:ギ酸イオン量が10ppm未満の場合
×:ギ酸イオン量が10ppmを超える場合
摺動部材としてのSUJ2製鋼球(3/16インチ)、試験材としての0.5mmt、10mmw、150mmLのリン脱酸銅板を用い、板温度50℃、摺動速度5mm/sec、摺動回数150回として、バウデンレーベン摩擦試験を実施し、摩擦係数を求めることによって、境界潤滑性を評価した。
(評価基準)
○:摩擦係数が0.15未満の場合
×:摩擦係数が0.15以上の場合
ピンオンディスク式摩擦摩耗試験機を用い、コーティング(磨耗粉発生性)を評価した。ピンオンディスク装置は、ピンを固定する支持部と、これに対面して回転可能に配設されたディスク部とを有する。ピンとして、先端R2mm、φ5mm、8mmLの純銅、ディスクとして、冷間工具鋼SKD11、φ50mm、5mmtを用い、荷重20kgf、周速18m/minの条件で20分間、試験を実施した。また、ピンとディスクとは、各種供試油100mL中に浸してある。
試験後のディスク表面を目視にて観察し、銅のコーティングを評価した。
(評価基準)
○:明瞭な銅のコーティングが確認されない場合
×:明瞭な銅のコーティングが確認される場合
また、試料E12は、一価アルコールの炭素数が本発明の好ましい範囲内であり、また、第3添加剤を含有しているため、リップルフィン高さ及びリップルフィン高さ維持性が優れていた。
また、上記試料E22は、一価アルコールの炭素数が本発明の好ましい範囲内であり、また、第5添加剤を含有しているため、成形性が優れていた。
これにより、本発明の銅管加工用潤滑油は、成形性に優れ、焼鈍後の残油量が少なく、低級有機酸の発生を防止することが可能であることが分かる。
また、本発明の比較例としての試料C3及び試料C4は、第1添加剤を含有していないため、潤滑性が不足し、成形性が低下するため、リップルフィン高さ及びリップルフィン高さ維持性が不合格であった。
また、本発明の比較例としての試料C6は、第1添加剤の含有量が本発明の上限を上回るため、焼鈍後の残油量が多く、不合格であった。
また、本発明の比較例としての試料C8は、第2添加剤の含有量が本発明の下限を下回るため、低級有機酸防止性の効果を得られないという問題があり、低級酸防止性が不合格であった。
また、本発明の比較例としての試料C9は、第2添加剤の含有量が本発明の上限を上回るため、焼鈍後の残油量が多く、不合格であった。
また、本発明の比較例としての試料C11は、基油全体の動粘度が本発明の上限を上回るため、一方、上記動粘度が1000cStを超える場合には、焼鈍後の残油が増加するという問題があり、残油量が不合格であった。
2 リップルフィン
Claims (9)
- 銅又は銅合金よりなる銅管を加工するための銅管加工用潤滑油であって、
上記銅管の内面を加工する際に該内面に供給される内面加工用であり、該内面加工は、上記銅管の内面に凹凸形状を設ける転造加工であり、
添加剤として、一価アルコールを5〜40重量%と、
下記の一般式(1)、(2)で示されるフェノール化合物の1種又は2種以上を0.01〜3重量%とを含有し、
残部に、基油として、平均分子量30000以上のポリイソブチレンの1種又は2種以上と、平均分子量400以下のイソパラフィン又はポリイソブチレンの1種又は2種以上とを含有し、
動粘度が100〜1000cSt(at40℃)であることを特徴とする銅管加工用潤滑油。
- 請求項1又は2において、添加剤として、さらに、リン酸エステルを1〜20重量%含有することを特徴とする銅管加工用潤滑油。
- 請求項1〜4のいずれか一項において、添加剤として、さらに、アミン誘導体、アルキルスルホン酸塩、数平均分子量200以上1000未満であると共に水酸基を3〜6個有する多価アルコールのアルキレンオキシド付加物、そのハイドロカルビルエーテル、数平均分子量120以上1000未満のポリアルキレングリコールのハイドロカルビルエーテル、及び炭素数2〜10の2価アルコールから選ばれる1種または2種以上を0.01〜2.0重量%を含有することを特徴とする銅管加工用潤滑油。
- 請求項5において、上記アミン誘導体は、脂肪族アミン、アルカノールアミン、脂肪族ポリアミン、芳香族アミン、脂環式アミン、複素環アミン、又はそれらのアルキレンオキシド付加物であることを特徴とする銅管加工用潤滑油。
- 請求項1〜6のいずれか一項において、添加剤として、さらに、芳香族炭化水素を1〜10重量%含有することを特徴とする銅管加工用潤滑油。
- 銅又は銅合金からなる銅管の少なくとも内面に、請求項1〜7のいずれか一項に記載の上記銅管加工用潤滑油を供給し、転造加工を施すことを特徴とする銅管の製造方法。
- 請求項8において、上記転造加工を施した上記銅管の管内雰囲気を非酸化性ガスで置換し、焼鈍を行うことを特徴とする銅管の製造方法。
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