JP3682085B2 - メタクリル酸の改良された精製方法 - Google Patents
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Description
【0001】
(発明の背景)
メタクリル酸を製造する一つの方法は、プロピレンを接触カルボニル化してイソ酪酸を調製し、次に部分的酸化脱水素によってメタクリル酸を得る方法である。この方法からの粗生成物は、水、イソ酪酸、メタクリル酸及び他の成分を含む混合物である。水は、共沸蒸留を行うか、又は溶媒抽出を行って次に蒸留して抽出溶媒を除去して無水混合物を得るという方法を用いて除去される。メタクリル酸は、通常は、蒸留又は結晶化法を用いて無水混合物から分離される。蒸留を包含する分離においては、メタクリル酸及びイソ酪酸の物理的及び化学的特性が類似しているために、通常は、高い生成物純度を得るためには多数の理論段とともに高い還流比が必要とされる。更に、分離法として蒸留を用いると、メタクリル酸が蒸留中に重合する傾向があるために工程が複雑になる。
【0002】
結晶化法を分離において用いる場合には、イソ酪酸の低い融点と、イソ酪酸/メタクリル酸混合物の低い共融点のために、極めて低い結晶化温度を用いる必要がある。このような温度のために、結晶化法は経済的に実施するのが困難である。
【0003】
特開昭62−145044号においては、抽出溶媒を除去し、高沸点及び低沸点不純物の両方を除去して精製するために少なくとも四つの分離蒸留塔と抽出カラムを用いて精製メタクリル酸を得る蒸留方法が記載されている。特開昭52−7917号においては、粗生成物をまず蒸留して水よりも低い沸点を有する物質を除去した後、炭化水素溶媒で抽出してメタクリル酸及び関連する物質を除去するという、イソ酪酸の気相脱水素の粗水性生成物からメタクリル酸を分離するための方法が記載されている。炭化水素溶媒、メタクリル酸及び関連する物質の溶液を、段階的に蒸留して、まず残留水を除去し、次に炭化水素溶媒を除去する。この方法によれば、メタクリル酸が約97重量%であるメタクリル酸生成物組成物が得られる。
【0004】
米国特許第4,780,568号においては、3〜6の等価のステージと、1以上のステージを有する第2の回収セクションを有する段階結晶化分離ユニットを用いて、メタクリル酸、イソ酪酸及び他の不純物の無水混合物を精製する方法が記載されている。この方法は、極めて低い結晶化温度を必要とする。ロシア国特許第639,858号においては、低温の向流結晶化方法を用いてアクリル酸及びメタクリル酸を精製する方法が記載されている。N.WynnのChemical Engineering Progress,88(3),52−60(1992)においては、生成物の純度を向上させるために蒸留と結晶化とを一緒に用いることが記載されている。蒸留を用いて不純物の大半を除去した後、溶融結晶化によって最終的な高純度の生成物を得る。
【0005】
これらの公知の方法はしばしば高コストで、制御が困難であり、及び/又はしばしば所望されているよりも低い純度を生成物を与えるので、イソ酪酸を含む混合物からメタクリル酸を効率的に且つ経済的に分離する改良された方法に対する必要性が継続して存在している。
【0006】
(発明の概要)
本発明は、α,β−不飽和C3 〜C6 カルボン酸とその飽和同族体の混合物からα,β−C3 〜C6 不飽和カルボン酸を分離する方法であって、分別蒸留と溶融結晶化法とを組合せ、高い割合で物質を再循環する方法である。「高い割合」とは、再循環される物質の量が、生成物として工程から取出される物質よりも、少なくとも1.5倍であることを意味する。分別蒸留によって二つの工程流が得られる。一つは、飽和カルボン酸に対するα,β−不飽和カルボン酸の比が重量比で約0.1である塔頂工程流であり、もう一つは、この比が約15である塔底工程流である。塔底流は溶融結晶化器に供給されて、二つの更なる流れが得られる。すなわち、高純度(98重量%を超える)のα,β−不飽和カルボン酸の生成物流と、約80重量%のα,β−不飽和カルボン酸と20重量%の飽和カルボン酸との残渣流である。分別蒸留カラムからの塔頂流は反応器に再循環され、結晶化器残渣流は分別カラムに再循環される。
【0007】
また、工程を逆にして、溶融結晶化を最初に用いて純粋なα,β−不飽和カルボン酸を単離するようにすることができる。次に、溶融結晶化器塔底流を分別蒸留して、反応器に再循環するための飽和カルボン酸に富む流れと、結晶化器に戻すα,β−不飽和カルボン酸に富む再循環流を得る。
【0008】
(詳細な説明)
本発明の一態様は、98重量%を越える純度のα,β−不飽和C3 〜C6 カルボン酸を製造する方法であって、
(a)C3 〜C6 飽和カルボン酸を反応器内で酸化脱水素して、α,β−不飽和C3 〜C6 カルボン酸及び飽和カルボン酸を含み、飽和カルボン酸に対するα,β−不飽和カルボン酸の重量比が約0.2を越える第1の生成物流を調製し;
(b)第1の生成物流を蒸留ユニット内で分別蒸留して、(1)飽和カルボン酸に対するα,β−不飽和カルボン酸の比が第1の生成物流よりも小さく、好ましくは0.5未満、最も好ましくは0.1未満である塔頂流と、(2)飽和カルボン酸に対するα,β−不飽和カルボン酸の比が約5〜約200、好ましくは約9よりも大きい塔底流とを調製し;
(c)塔頂流を反応器中に供給し;
(d)塔底流を結晶化ユニット中で溶融結晶化して、(1)α,β−不飽和カルボン酸を含み、α,β−不飽和カルボン酸含有率が第2の生成物流の約90重量%を超え、好ましくは98重量%を超える第2の生成物と、(2)母液流とを調製し;
(e)母液流を蒸留ユニット中に供給し;
(f)第2の生成物流を、所望の、好ましくは99.9重量%を超えるα,β−不飽和カルボン酸含有率の最終生成物流を得るのに十分な段階数、溶融結晶化し;
(g)工程fの繰り返し溶融結晶化段階からの最終母液を、蒸留ユニット中に供給する;
工程を含む方法である。
【0009】
この方法は、α,β−不飽和カルボン酸及び飽和カルボン酸の混合物を分離する方法、例えば、イソ酪酸からメタクリル酸を分離する、プロピオン酸からアクリル酸を分離する、ブタン酸からクロトン酸を分離するなどの方法(但しこれらに限定されるものではない)において有用である。本方法は、特に、イソ酪酸からメタクリル酸を分離する方法及びプロピオン酸からアクリル酸を分離する方法に適用することができる。なぜならば、融点及び沸点などの物理的/化学的特性におけるこれらの物質の類似性のために、標準的な蒸留及び結晶化法を用いては効率的な分離が困難であるからである。
【0010】
イソ酪酸からのメタクリル酸の分離に例示される本発明の一態様を図1に示す。図1の工程は、接触脱水素反応器1からの第1の生成物流における飽和カルボン酸に対するα,β−不飽和カルボン酸の比が約15未満である場合に好ましい。接触脱水素反応器からの第1の生成物流は約40%以下の水を含んでいてよい。この流れは、ライン2を通して蒸留ユニット3に直接供給することができ、あるいは、濾過、抽出、共沸蒸留又は脱水のような中間工程を、ユニットに供給する前に行ってもよい。蒸留ユニット3の構造は重要ではない。高効率分別カラムが好ましい。29〜355の還流比で25〜70の理論段数を与える分別カラムが最も好ましい。運転パラメータも重要ではない。しかしながら、蒸留温度を最小にするためには、低圧、好ましくは100mmHg以下の圧力が好ましい。流れは、任意の適当な点で分別カラムに供給することができる。しかしながら、運転を最も効率的にするために、カラムの組成プロフィルを安定状態で決定し、供給流を、好ましくは、供給流と安定状態のカラム組成が同等となる位置に供給すべきである。蒸留によってイソ酪酸に富む塔頂流が得られる。塔頂流中の残りの物質は、第1の生成物流中に存在していたメタクリル酸と低沸点物質である。塔頂流は、ライン4を通して接触脱水素反応器中に再循環され、通常は廃棄されるイソ酪酸が回収され、これにより全体としての収率が向上し、コストがより低くなる。この方法の他の有利性は、接触脱水素反応及び分別のいずれも、得られるメタクリル酸の量を最大にし、得られるイソ酪酸の量を最小にするような条件下で行う必要がないという点である。本発明は、側反応による反応器中におけるイソ酪酸の損失と、重合による分別カラム中におけるメタクリル酸の損失を減少させて、全収率をより高くし、コストをより低くするのに有効である。なぜならば、廃棄物がほとんどなく、したがって運転コストがより低くなるからである。これは、これらの物質を反応器に再循環するためである。
【0011】
少なくとも約90重量%、好ましくは少なくとも約95重量%のメタクリル酸、約10重量%以下のイソ酪酸及び他の少量の高沸点不純物を含む蒸留ユニット塔底流は、ライン5を通して溶融結晶化器6に供給される。バッチタイプの結晶化器を用いることができるが、図2に示すような、その操作を以下に説明する半連続式多段階結晶化器又は同様の技術が好ましい。蒸留もバッチ法で行うことができる。しかしながら、連続工程が好ましく、安定状態での連続工程が最も好ましい。蒸留ユニットが連続的に操作される場合で、結晶化ユニットがバッチ又は半連続法で操作される場合には、蒸留ユニット塔底流を受容する手段を設けなければならない。これは、ライン5中に保持タンク、第2の結晶化ユニット又は同様の手段を設けることによって行うことができる。
【0012】
蒸留ユニットに連続的に供給流を与えるために、保持タンク又は同様の手段を、結晶化ユニットからライン10又は11を通して蒸留ユニットに供給される母液流中に設けることができる。
【0013】
いくつかの場合においては、α,β−不飽和カルボン酸の蒸気圧は飽和カルボン酸の蒸気圧よりも大きくてもよい。このような場合には、蒸留ユニットからの蒸留流を結晶化ユニットに供給すると共に、塔底流を接触脱水素反応器中に再循環する。プロピオン酸からのアクリル酸の分離がこの方法を用いる場合である(実施例10参照)。
【0014】
図2は、本発明において用いることのできる、図1又は図3の溶融結晶化器6の典型的なフローダイアグラムである。分別カラム塔底流は、ライン21(図1におけるライン5及び図3におけるライン32又は39と同一である)を通して溶融結晶化器採集タンク22中に供給され、ここで循環ポンプ23によって流れがライン24を通して結晶化チューブ25に循環し、採集タンク中に戻される。典型的な結晶化条件下においては、流れの約50〜70重量%、好ましくは60〜65重量%がチューブ壁上で結晶化される。チューブ壁の温度は、冷却又は加熱された熱媒液26を、結晶化チューブの周りのジャケット27を循環させることによって制御されている。所望の結晶化温度は流れの組成によって変化する。例えば、1〜1.5時間で混合物の60重量%を結晶化させるためには、メタクリル酸中の0.5重量%のイソ酪酸の混合物は結晶化のために14〜15℃の温度が必要であり、また6%の混合物は8℃の温度が必要である。供給流を結晶化した後、母液を、ライン28(図1におけるライン10及び図3におけるライン34と同一である)を通して系から除去し、分別カラムに供給する。次に、熱媒液の温度を上昇させることによって、結晶化された物質の約5重量%〜約50重量%、好ましくは10〜15重量%を、1〜2時間かけて再溶融する。再溶融された物質(第2の母液流)は系から除去され、母液と別々に又は一緒に、分別カラムに供給することもできる。最後に、好ましくは溶融して第2段階再結晶のための採集タンク中で回収することによって結晶質生成物が回収されるか、あるいは、ライン28(図1におけるライン7及び図3におけるライン33と同一である)を通して生成物として系から取出される。
【0015】
上記に記載した条件下においては、結晶化器6は二つの流れを生成する。第1の流れは、98重量%を超える純粋なメタクリル酸を含み、ライン7(図1)を通して回収される最終生成物流である。結晶化条件、例えば結晶化及び再溶融温度並びに供給速度、更には再結晶化段階の数を変化させることによって、メタクリル酸が99.99重量%を超える生成物を得ることができる。第2の流れは、約80重量%を超えるメタクリル酸及び約20重量%以下のイソ酪酸、並びに他の少量の高沸点不純物を含む最終母液流である。この母液流は、ライン10を通して第1の生成物流と併せて、混合供給物としてライン11を通して分別カラムに戻すことができる。また、母液流と第1の生成物流とを別々に分別カラムに供給することもできる。場合によっては、重い不純物を除去するために、母液流をライン9を通してパージする必要がある場合がある。本発明方法における主たる有利性は、流れを母液流として再循環し、全てのメタクリル酸を回収するので、溶融結晶化器を、カラムの塔底流から最大量のメタクリル酸を除去するように設定された条件下で操作する必要がないという点である。
【0016】
第1の生成物流における飽和カルボン酸に対するα,β−不飽和カルボン酸の比が約15を超える場合には、図3に示す別の工程を用いることができる。この態様においても、例として再びメタクリル酸を用いて説明する。第1の生成物流を、ライン32を通して溶融結晶化器6に供給して、ライン33を通して、実質的に純粋なメタクリル酸(メタクリル酸約98重量%以上、好ましくはメタクリル酸約99.99重量%以上)の最終生成物流を得る。少なくとも約80重量%のメタクリル酸を含む結晶化器からの母液は、ライン34を通して分別カラム3中に供給される。分別カラムは、イソ酪酸に富み、ライン35を通して反応器1に供給される塔頂流、及び、メタクリル酸約95重量%と約5重量%未満のイソ酪酸との混合物であり、ライン36及び37を通して第1の生成物流と合わせられて混合流として溶融結晶化器に戻されるか、又は溶融結晶化器に直接供給される塔底流を与える。図1の工程と同様に、重い不純物はライン36及び38を通して除去することができる。
【0017】
どちらの方法においても、分別カラム及び溶融結晶化器のいずれも、それぞれのユニットにおいて、生成物流からメタクリル酸の最大の分離を得るような方法で別々に操作されるのではない。それぞれは、物質の大半を再循環する二つの再循環流によって分別蒸留と溶融結晶化とを組み合わせることによって、高純度(約99.99重量%を超える)のα,β−不飽和カルボン酸を与え、極めて少量の廃棄物質しか生成せず、妥当な温度及び圧力で操作されるような、新規な限定された方法で操作される。これによって経済的な低いコストの工程が得られる。
【0018】
本発明を例示するために以下の実施例を与えるが、これらは発明の範囲を制限するものではない。他に示さない限り、実施例におけるすべてのパーセントは重量%として表される。
【0019】
(実施例)
図2に示すような実験用溶融結晶化器を用いて溶融結晶化を行った。分別蒸留の残りの物質は、蒸留工程のシミュレーションを与えるためにFLOWTRANプログラム(モンサント社)を用いてコンピュータ処理された安定状態シミュレーションから得た。このプログラムは、J.D.Seader, W.D.Seider及びA.C.PaulsのFLOWTRANシミュレーション−イントロダクション,第2版,Cambridge:CACHE,1977に記載されている。このシミュレーションにおいては、液体活性係数(liquid activity coefficients)に関して理想溶液を想定した。液体フガシティーに関してはChao−Seadel相関を想定し、気体フガシティーに関しては理想気体を想定した。更に、液体及び気体フガシティーは、E.Sebastiani及びL.LacquanitiのChem.Eng.Sci.,22,1155(1967)に記載されている方法によって気相中における有機酸会合に関して補正した。
【0020】
(実施例1)
約0.5%のイソ酪酸を含むメタクリル酸の溶融結晶化精製
氷メタクリル酸中に0.49%のイソ酪酸(iBuA)を含む溶液を三つに分割した。第1の部分は、約1時間かけて実験用結晶化器に供給し、この間に、第1段階結晶化のために温度を14.8℃から13.8℃に下げた。供給流の約60%が結晶化した。次に、温度を1.5時間かけて14℃〜16℃の範囲に上げて、結晶化した物質の10%を再溶融させた。母液、再溶融物及び結晶化した物質を、それぞれ別々に採取し、iBuA含有率に関して分析した。第2及び第3の部分を同等の方法で処理した。第1段階結晶化に関する代表的な結果を表1に示す。メタクリル酸(MAA)純度及び結晶化の効率は、結晶化した物質中のiBuA含有率をモニターすることによって決定した。
【0021】
【表1】
【0022】
第1段階結晶化からの結晶化された部分を合わせて、約1/3を実験用溶融結晶化器に供給し、第2段階結晶化のために50分間かけて温度を17.0℃から16.1℃に下げた。供給流の約64%が結晶化した。次に、温度を15.7℃に保持して、結晶化した物質の10%を再溶融させた。再び、母液、再溶融物及び結晶を別々に採取し、iBuA含有率に関して分析した。第2段階結晶化の代表的な結果を表2に示す。
【0023】
【表2】
【0024】
(実施例2)
約5%のイソ酪酸を含むメタクリル酸の溶融結晶化精製
実施例1の手順を用いて、MAA中に約5.8%のiBuAを含む溶液を実験用溶融結晶化器に供給し、約80分間かけて温度を13.5℃から8℃に下げた。供給流の約62%が結晶化した。約4.7時間かけて温度を14.0℃に上昇させて、結晶化した物質の10%を再溶融した。母液、再溶融物及び結晶化した物質を、それぞれ別々に採取し、イソ酪酸含有率に関して分析した。これらの分析の代表的な結果を表3に示す。
【0025】
【表3】
【0026】
(実施例3)
約0.05%のプロピオン酸を含むアクリル酸の溶融結晶化精製
実施例1の手順を用いて、アクリル酸(AA)中に約0.05%のプロピオン酸(PA)を含む溶液を、四つのフラクションに分割した。それぞれのフラクションを、約10℃の温度で19〜68分間かけて実験用溶融結晶化器に供給した。供給流の約42%が結晶化した。結晶化した物質の7〜27%を45〜232分間かけて再溶融した。得られた母液、再溶融物及び結晶フラクションを別々に合わせて、PA含有率に関して分析した。これらの結晶化の代表的な結果を表4に示す。
【0027】
【表4】
【0028】
以下の実施例4〜10及び比較例2に関しては、蒸留カラムデータを、上記に記載の安定状態プロセスシミュレータ(FLOWTRAN)を用いてシミュレートした。それぞれの流れに関するシミュレータインプットの詳細は各実施例において示している。溶融結晶化(母液、再溶融物及び結晶の量及び純度)のデータは、上記の実施例1〜3において示された結果を用いて外挿した。
【0029】
(比較例1)
80%のMAA及び20%のiBuAを含む新しい供給流を溶融結晶化器に供給した。最終生成物の規格を、iBuAが0.005%であるように設定した。この規格を満たすためには、計算では4.6の結晶化段階が必要であった。しかし、最終母液は70.59%のMAAを含有し、再循環できなかった。
(実施例4)
80%のMAA及び20%のiBuAを含む新規供給流を、溶融結晶化器からの母液と混合した。一緒にされた流れは分別カラムに導入された。留出物の規格をiBuAが90%であるように設定し、塔底流の規格をiBuAが0.5%であるように設定し、最終生成物の規格を、iBuAが0.005%であるように設定した。この規格を満たすためには、分別カラムにおける必要な段(理論段)の数は、塔頂圧力が30mmHgと仮定して、45(234の還流比)から55(101の還流比)とすることができる。結晶化段階の必要な数は2.6である。表5に、これらの条件のそれぞれに関して算出された物質バランスの詳細を示す。
【0030】
【表5】
実施例4の物質バランス
成分 新規供給流 再循環流 混合流 留出物 塔底物 生成物
図1-Ref* 2 10 11 4 5 7
流れ(pph)** 100.00 137.90 237.90 22.22 215.68 77.78
MAA% 80.00 99.22 91.14 10.00 99.50 99.995
iBuA% 20.00 0.78 8.86 90.00 0.50 0.005
* 図1のプロセスフローラインの参照番号
**pph =1時間あたりのポンド数
【0031】
(実施例5)
実施例5の規格は、塔底流におけるiBuAの規格が5.0%に上昇した他は実施例4と同一であった。これらの規格を満たすためには、分別カラムにおいて必要な段数は、塔頂圧力が30mmHgと仮定して、30(194の還流比)から40(61の還流比)とすることができる。結晶化段階の必要な数は3.8であった。表6に、これらの条件のそれぞれに関して算出された物質バランスの詳細を示す。
【0032】
【表6】
実施例5の物質バランス
成分 新規供給流 再循環流 混合流 留出物 塔底物 生成物
図1-Ref* 2 10 11 4 5 7
流れ(pph)** 100.00 281.37 381.37 22.22 359.16 77.78
MAA% 80.00 93.62 90.05 10.00 95.00 99.995
iBuA% 20.00 6.38 9.95 90.00 5.00 0.005
* 図1のプロセスフローラインの参照番号
**pph =1時間あたりのポンド数
【0033】
(実施例6)
実施例6の規格は、塔底流におけるiBuAの規格が10.0%に上昇した他は実施例4と同一であった。これらの規格を満たすためには、分別カラムにおいて必要な段数は、塔頂圧力が30mmHgと仮定して、25(197の還流比)から35(42の還流比)とすることができる。結晶化段階の必要な数は4.2であった。表7に、これらの条件のそれぞれに関して算出された物質バランスの詳細を示す。
【0034】
【表7】
実施例6の物質バランス
成分 新規供給流 再循環流 混合流 留出物 塔底物 生成物
図1-Ref* 2 10 11 4 5 7
流れ(pph)** 100.00 340.96 440.96 22.22 418.75 77.78
MAA% 80.00 87.72 85.97 10.00 90.00 99.995
iBuA% 20.00 12.28 14.03 90.00 10.00 0.005
* 図1のプロセスフローラインの参照番号
**pph =1時間あたりのポンド数
【0035】
(実施例7)
実施例7の規格は、新規供給流を、MAAが60%でiBuAが40%に設定した他は実施例5と同一であった。これらの規格を満たすためには、分別カラムにおいて必要な段数は、塔頂圧力が30mmHgと仮定して、30(136の還流比)から40(40の還流比)とすることができる。結晶化段階の必要な数は3.8であった。表8に、これらの条件のそれぞれに関して算出された物質バランスの詳細を示す。
【0036】
【表8】
実施例7の物質バランス
成分 新規供給流 再循環流 混合流 留出物 塔底物 生成物
図1-Ref* 2 10 11 4 5 7
流れ(pph)** 100.00 200.98 300.98 44.44 256.54 55.56
MAA% 60.00 93.62 82.45 10.00 95.00 99.995
iBuA% 40.00 6.38 17.55 90.00 5.00 0.005
* 図1のプロセスフローラインの参照番号
**pph =1時間あたりのポンド数
【0037】
(実施例8)
実施例8の規格は、新規供給流におけるiBuAを10.0%に下げた他は実施例7と同一であった。これらの規格を満たすためには、分別カラムにおいて必要な段数は、塔頂圧力が30mmHgと仮定して、30(232の還流比)から40(79の還流比)とすることができる。結晶化段階の必要な数は3.8であった。表9に、これらの条件のそれぞれに関して算出された物質バランスの詳細を示す。
【0038】
【表9】
実施例8の物質バランス
成分 新規供給流 再循環流 混合流 留出物 塔底物 生成物
図1-Ref* 2 10 11 4 5 7
流れ(pph)** 100.00 321.57 421.57 11.11 410.46 88.89
MAA% 90.00 93.62 92.76 10.00 95.00 99.995
iBuA% 10.00 6.38 7.24 90.00 5.00 0.005
* 図1のプロセスフローラインの参照番号
**pph =1時間あたりのポンド数
【0039】
(実施例9)
実施例9の規格は、新規供給流におけるiBuAを5.0%に下げ、塔底流におけるiBuAを0.5%に下げた他は実施例7と同一であった。更に、 図3の手順を用いた。これらの規格を満たすためには、分別カラムにおいて必要な段数は、塔頂圧力が30mmHgと仮定して、45(355の還流比)から55(157の還流比)とすることができる。結晶化段階の必要な数は3.3であった。表10に、これらの条件のそれぞれに関して算出された物質バランスの詳細を示す。
【0040】
【表10】
実施例9の物質バランス
成分 新規供給流 塔底流 混合流 留出物 母液 生成物
図3-Ref* 32 37 39 35 34 33
流れ(pph)** 100.00 247.58 347.58 5.55 253.13 94.45
MAA% 95.00 99.50 98.21 10.00 97.54 99.995
iBuA% 5.00 0.50 1.79 90.00 2.46 0.005
* 図3のプロセスフローラインの参照番号
**pph =1時間あたりのポンド数
【0041】
(実施例10)
80%のAA及び20%のPAを含む新規供給流を、溶融結晶化器からの母液流と混合した。一緒にした流れを分別カラムに供給した。留出物の規格をPAが9%に設定し、塔底流の規格をPAが70%に設定し、最終生成物の規格をPAが0.005%に設定した。これらの規格を満たすためには、分別カラムにおける必要な段の数は、塔頂圧力が1mmHgと仮定して、還流比29で70である。結晶化段階の必要な数は10.8であった。表11に、算出された物質バランスの詳細を示す。この場合においては、AAはPAよりも揮発性であるので、塔底流を反応器に再循環し、留出物を結晶化器に供給した。
【0042】
【表11】
実施例10の物質バランス
成分 新規供給流 再循環流 混合流 留出物 塔底物 生成物
図1-Ref* 2 10 11 5 4 7
流れ(pph)** 100.00 977.54 1077.54 1048.98 28.57 71.43
AA% 80.00 90.34 89.38 91.00 30.00 99.995
PA% 20.00 9.66 10.62 9.00 70.00 0.005
* 図1のプロセスフローラインの参照番号
**pph =1時間あたりのポンド数
【0043】
(比較例2)
80%のMAA及び20%のiBuAを含む新規供給流を分別カラムに供給した。留出物の規格をiBuAが99%に、塔底流の規格をiBuAが0.005%に設定した。これらの規格を満たすためには、分別カラムにおける計算された段(理論段)の数は、塔頂圧力が30mmHgと仮定して、還流比50.6で150である。
【0044】
これらの実施例は、安定状態において、再循環される物質の量が、生成した生成物の量と比較して高いことを示している。しかしながら、生成した生成物は高い純度のものである。再循環された物質は失われず、生成物又は脱水素化反応器へ戻される物質として回収されるので、全体の工程は効率的なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の実施態様のフローダイヤグラムである。
【図2】図2は実験溶融結晶化器のフローダイヤグラムである。
【図3】図3は本発明の他の実施態様のフローダイヤグラムである。
(発明の背景)
メタクリル酸を製造する一つの方法は、プロピレンを接触カルボニル化してイソ酪酸を調製し、次に部分的酸化脱水素によってメタクリル酸を得る方法である。この方法からの粗生成物は、水、イソ酪酸、メタクリル酸及び他の成分を含む混合物である。水は、共沸蒸留を行うか、又は溶媒抽出を行って次に蒸留して抽出溶媒を除去して無水混合物を得るという方法を用いて除去される。メタクリル酸は、通常は、蒸留又は結晶化法を用いて無水混合物から分離される。蒸留を包含する分離においては、メタクリル酸及びイソ酪酸の物理的及び化学的特性が類似しているために、通常は、高い生成物純度を得るためには多数の理論段とともに高い還流比が必要とされる。更に、分離法として蒸留を用いると、メタクリル酸が蒸留中に重合する傾向があるために工程が複雑になる。
【0002】
結晶化法を分離において用いる場合には、イソ酪酸の低い融点と、イソ酪酸/メタクリル酸混合物の低い共融点のために、極めて低い結晶化温度を用いる必要がある。このような温度のために、結晶化法は経済的に実施するのが困難である。
【0003】
特開昭62−145044号においては、抽出溶媒を除去し、高沸点及び低沸点不純物の両方を除去して精製するために少なくとも四つの分離蒸留塔と抽出カラムを用いて精製メタクリル酸を得る蒸留方法が記載されている。特開昭52−7917号においては、粗生成物をまず蒸留して水よりも低い沸点を有する物質を除去した後、炭化水素溶媒で抽出してメタクリル酸及び関連する物質を除去するという、イソ酪酸の気相脱水素の粗水性生成物からメタクリル酸を分離するための方法が記載されている。炭化水素溶媒、メタクリル酸及び関連する物質の溶液を、段階的に蒸留して、まず残留水を除去し、次に炭化水素溶媒を除去する。この方法によれば、メタクリル酸が約97重量%であるメタクリル酸生成物組成物が得られる。
【0004】
米国特許第4,780,568号においては、3〜6の等価のステージと、1以上のステージを有する第2の回収セクションを有する段階結晶化分離ユニットを用いて、メタクリル酸、イソ酪酸及び他の不純物の無水混合物を精製する方法が記載されている。この方法は、極めて低い結晶化温度を必要とする。ロシア国特許第639,858号においては、低温の向流結晶化方法を用いてアクリル酸及びメタクリル酸を精製する方法が記載されている。N.WynnのChemical Engineering Progress,88(3),52−60(1992)においては、生成物の純度を向上させるために蒸留と結晶化とを一緒に用いることが記載されている。蒸留を用いて不純物の大半を除去した後、溶融結晶化によって最終的な高純度の生成物を得る。
【0005】
これらの公知の方法はしばしば高コストで、制御が困難であり、及び/又はしばしば所望されているよりも低い純度を生成物を与えるので、イソ酪酸を含む混合物からメタクリル酸を効率的に且つ経済的に分離する改良された方法に対する必要性が継続して存在している。
【0006】
(発明の概要)
本発明は、α,β−不飽和C3 〜C6 カルボン酸とその飽和同族体の混合物からα,β−C3 〜C6 不飽和カルボン酸を分離する方法であって、分別蒸留と溶融結晶化法とを組合せ、高い割合で物質を再循環する方法である。「高い割合」とは、再循環される物質の量が、生成物として工程から取出される物質よりも、少なくとも1.5倍であることを意味する。分別蒸留によって二つの工程流が得られる。一つは、飽和カルボン酸に対するα,β−不飽和カルボン酸の比が重量比で約0.1である塔頂工程流であり、もう一つは、この比が約15である塔底工程流である。塔底流は溶融結晶化器に供給されて、二つの更なる流れが得られる。すなわち、高純度(98重量%を超える)のα,β−不飽和カルボン酸の生成物流と、約80重量%のα,β−不飽和カルボン酸と20重量%の飽和カルボン酸との残渣流である。分別蒸留カラムからの塔頂流は反応器に再循環され、結晶化器残渣流は分別カラムに再循環される。
【0007】
また、工程を逆にして、溶融結晶化を最初に用いて純粋なα,β−不飽和カルボン酸を単離するようにすることができる。次に、溶融結晶化器塔底流を分別蒸留して、反応器に再循環するための飽和カルボン酸に富む流れと、結晶化器に戻すα,β−不飽和カルボン酸に富む再循環流を得る。
【0008】
(詳細な説明)
本発明の一態様は、98重量%を越える純度のα,β−不飽和C3 〜C6 カルボン酸を製造する方法であって、
(a)C3 〜C6 飽和カルボン酸を反応器内で酸化脱水素して、α,β−不飽和C3 〜C6 カルボン酸及び飽和カルボン酸を含み、飽和カルボン酸に対するα,β−不飽和カルボン酸の重量比が約0.2を越える第1の生成物流を調製し;
(b)第1の生成物流を蒸留ユニット内で分別蒸留して、(1)飽和カルボン酸に対するα,β−不飽和カルボン酸の比が第1の生成物流よりも小さく、好ましくは0.5未満、最も好ましくは0.1未満である塔頂流と、(2)飽和カルボン酸に対するα,β−不飽和カルボン酸の比が約5〜約200、好ましくは約9よりも大きい塔底流とを調製し;
(c)塔頂流を反応器中に供給し;
(d)塔底流を結晶化ユニット中で溶融結晶化して、(1)α,β−不飽和カルボン酸を含み、α,β−不飽和カルボン酸含有率が第2の生成物流の約90重量%を超え、好ましくは98重量%を超える第2の生成物と、(2)母液流とを調製し;
(e)母液流を蒸留ユニット中に供給し;
(f)第2の生成物流を、所望の、好ましくは99.9重量%を超えるα,β−不飽和カルボン酸含有率の最終生成物流を得るのに十分な段階数、溶融結晶化し;
(g)工程fの繰り返し溶融結晶化段階からの最終母液を、蒸留ユニット中に供給する;
工程を含む方法である。
【0009】
この方法は、α,β−不飽和カルボン酸及び飽和カルボン酸の混合物を分離する方法、例えば、イソ酪酸からメタクリル酸を分離する、プロピオン酸からアクリル酸を分離する、ブタン酸からクロトン酸を分離するなどの方法(但しこれらに限定されるものではない)において有用である。本方法は、特に、イソ酪酸からメタクリル酸を分離する方法及びプロピオン酸からアクリル酸を分離する方法に適用することができる。なぜならば、融点及び沸点などの物理的/化学的特性におけるこれらの物質の類似性のために、標準的な蒸留及び結晶化法を用いては効率的な分離が困難であるからである。
【0010】
イソ酪酸からのメタクリル酸の分離に例示される本発明の一態様を図1に示す。図1の工程は、接触脱水素反応器1からの第1の生成物流における飽和カルボン酸に対するα,β−不飽和カルボン酸の比が約15未満である場合に好ましい。接触脱水素反応器からの第1の生成物流は約40%以下の水を含んでいてよい。この流れは、ライン2を通して蒸留ユニット3に直接供給することができ、あるいは、濾過、抽出、共沸蒸留又は脱水のような中間工程を、ユニットに供給する前に行ってもよい。蒸留ユニット3の構造は重要ではない。高効率分別カラムが好ましい。29〜355の還流比で25〜70の理論段数を与える分別カラムが最も好ましい。運転パラメータも重要ではない。しかしながら、蒸留温度を最小にするためには、低圧、好ましくは100mmHg以下の圧力が好ましい。流れは、任意の適当な点で分別カラムに供給することができる。しかしながら、運転を最も効率的にするために、カラムの組成プロフィルを安定状態で決定し、供給流を、好ましくは、供給流と安定状態のカラム組成が同等となる位置に供給すべきである。蒸留によってイソ酪酸に富む塔頂流が得られる。塔頂流中の残りの物質は、第1の生成物流中に存在していたメタクリル酸と低沸点物質である。塔頂流は、ライン4を通して接触脱水素反応器中に再循環され、通常は廃棄されるイソ酪酸が回収され、これにより全体としての収率が向上し、コストがより低くなる。この方法の他の有利性は、接触脱水素反応及び分別のいずれも、得られるメタクリル酸の量を最大にし、得られるイソ酪酸の量を最小にするような条件下で行う必要がないという点である。本発明は、側反応による反応器中におけるイソ酪酸の損失と、重合による分別カラム中におけるメタクリル酸の損失を減少させて、全収率をより高くし、コストをより低くするのに有効である。なぜならば、廃棄物がほとんどなく、したがって運転コストがより低くなるからである。これは、これらの物質を反応器に再循環するためである。
【0011】
少なくとも約90重量%、好ましくは少なくとも約95重量%のメタクリル酸、約10重量%以下のイソ酪酸及び他の少量の高沸点不純物を含む蒸留ユニット塔底流は、ライン5を通して溶融結晶化器6に供給される。バッチタイプの結晶化器を用いることができるが、図2に示すような、その操作を以下に説明する半連続式多段階結晶化器又は同様の技術が好ましい。蒸留もバッチ法で行うことができる。しかしながら、連続工程が好ましく、安定状態での連続工程が最も好ましい。蒸留ユニットが連続的に操作される場合で、結晶化ユニットがバッチ又は半連続法で操作される場合には、蒸留ユニット塔底流を受容する手段を設けなければならない。これは、ライン5中に保持タンク、第2の結晶化ユニット又は同様の手段を設けることによって行うことができる。
【0012】
蒸留ユニットに連続的に供給流を与えるために、保持タンク又は同様の手段を、結晶化ユニットからライン10又は11を通して蒸留ユニットに供給される母液流中に設けることができる。
【0013】
いくつかの場合においては、α,β−不飽和カルボン酸の蒸気圧は飽和カルボン酸の蒸気圧よりも大きくてもよい。このような場合には、蒸留ユニットからの蒸留流を結晶化ユニットに供給すると共に、塔底流を接触脱水素反応器中に再循環する。プロピオン酸からのアクリル酸の分離がこの方法を用いる場合である(実施例10参照)。
【0014】
図2は、本発明において用いることのできる、図1又は図3の溶融結晶化器6の典型的なフローダイアグラムである。分別カラム塔底流は、ライン21(図1におけるライン5及び図3におけるライン32又は39と同一である)を通して溶融結晶化器採集タンク22中に供給され、ここで循環ポンプ23によって流れがライン24を通して結晶化チューブ25に循環し、採集タンク中に戻される。典型的な結晶化条件下においては、流れの約50〜70重量%、好ましくは60〜65重量%がチューブ壁上で結晶化される。チューブ壁の温度は、冷却又は加熱された熱媒液26を、結晶化チューブの周りのジャケット27を循環させることによって制御されている。所望の結晶化温度は流れの組成によって変化する。例えば、1〜1.5時間で混合物の60重量%を結晶化させるためには、メタクリル酸中の0.5重量%のイソ酪酸の混合物は結晶化のために14〜15℃の温度が必要であり、また6%の混合物は8℃の温度が必要である。供給流を結晶化した後、母液を、ライン28(図1におけるライン10及び図3におけるライン34と同一である)を通して系から除去し、分別カラムに供給する。次に、熱媒液の温度を上昇させることによって、結晶化された物質の約5重量%〜約50重量%、好ましくは10〜15重量%を、1〜2時間かけて再溶融する。再溶融された物質(第2の母液流)は系から除去され、母液と別々に又は一緒に、分別カラムに供給することもできる。最後に、好ましくは溶融して第2段階再結晶のための採集タンク中で回収することによって結晶質生成物が回収されるか、あるいは、ライン28(図1におけるライン7及び図3におけるライン33と同一である)を通して生成物として系から取出される。
【0015】
上記に記載した条件下においては、結晶化器6は二つの流れを生成する。第1の流れは、98重量%を超える純粋なメタクリル酸を含み、ライン7(図1)を通して回収される最終生成物流である。結晶化条件、例えば結晶化及び再溶融温度並びに供給速度、更には再結晶化段階の数を変化させることによって、メタクリル酸が99.99重量%を超える生成物を得ることができる。第2の流れは、約80重量%を超えるメタクリル酸及び約20重量%以下のイソ酪酸、並びに他の少量の高沸点不純物を含む最終母液流である。この母液流は、ライン10を通して第1の生成物流と併せて、混合供給物としてライン11を通して分別カラムに戻すことができる。また、母液流と第1の生成物流とを別々に分別カラムに供給することもできる。場合によっては、重い不純物を除去するために、母液流をライン9を通してパージする必要がある場合がある。本発明方法における主たる有利性は、流れを母液流として再循環し、全てのメタクリル酸を回収するので、溶融結晶化器を、カラムの塔底流から最大量のメタクリル酸を除去するように設定された条件下で操作する必要がないという点である。
【0016】
第1の生成物流における飽和カルボン酸に対するα,β−不飽和カルボン酸の比が約15を超える場合には、図3に示す別の工程を用いることができる。この態様においても、例として再びメタクリル酸を用いて説明する。第1の生成物流を、ライン32を通して溶融結晶化器6に供給して、ライン33を通して、実質的に純粋なメタクリル酸(メタクリル酸約98重量%以上、好ましくはメタクリル酸約99.99重量%以上)の最終生成物流を得る。少なくとも約80重量%のメタクリル酸を含む結晶化器からの母液は、ライン34を通して分別カラム3中に供給される。分別カラムは、イソ酪酸に富み、ライン35を通して反応器1に供給される塔頂流、及び、メタクリル酸約95重量%と約5重量%未満のイソ酪酸との混合物であり、ライン36及び37を通して第1の生成物流と合わせられて混合流として溶融結晶化器に戻されるか、又は溶融結晶化器に直接供給される塔底流を与える。図1の工程と同様に、重い不純物はライン36及び38を通して除去することができる。
【0017】
どちらの方法においても、分別カラム及び溶融結晶化器のいずれも、それぞれのユニットにおいて、生成物流からメタクリル酸の最大の分離を得るような方法で別々に操作されるのではない。それぞれは、物質の大半を再循環する二つの再循環流によって分別蒸留と溶融結晶化とを組み合わせることによって、高純度(約99.99重量%を超える)のα,β−不飽和カルボン酸を与え、極めて少量の廃棄物質しか生成せず、妥当な温度及び圧力で操作されるような、新規な限定された方法で操作される。これによって経済的な低いコストの工程が得られる。
【0018】
本発明を例示するために以下の実施例を与えるが、これらは発明の範囲を制限するものではない。他に示さない限り、実施例におけるすべてのパーセントは重量%として表される。
【0019】
(実施例)
図2に示すような実験用溶融結晶化器を用いて溶融結晶化を行った。分別蒸留の残りの物質は、蒸留工程のシミュレーションを与えるためにFLOWTRANプログラム(モンサント社)を用いてコンピュータ処理された安定状態シミュレーションから得た。このプログラムは、J.D.Seader, W.D.Seider及びA.C.PaulsのFLOWTRANシミュレーション−イントロダクション,第2版,Cambridge:CACHE,1977に記載されている。このシミュレーションにおいては、液体活性係数(liquid activity coefficients)に関して理想溶液を想定した。液体フガシティーに関してはChao−Seadel相関を想定し、気体フガシティーに関しては理想気体を想定した。更に、液体及び気体フガシティーは、E.Sebastiani及びL.LacquanitiのChem.Eng.Sci.,22,1155(1967)に記載されている方法によって気相中における有機酸会合に関して補正した。
【0020】
(実施例1)
約0.5%のイソ酪酸を含むメタクリル酸の溶融結晶化精製
氷メタクリル酸中に0.49%のイソ酪酸(iBuA)を含む溶液を三つに分割した。第1の部分は、約1時間かけて実験用結晶化器に供給し、この間に、第1段階結晶化のために温度を14.8℃から13.8℃に下げた。供給流の約60%が結晶化した。次に、温度を1.5時間かけて14℃〜16℃の範囲に上げて、結晶化した物質の10%を再溶融させた。母液、再溶融物及び結晶化した物質を、それぞれ別々に採取し、iBuA含有率に関して分析した。第2及び第3の部分を同等の方法で処理した。第1段階結晶化に関する代表的な結果を表1に示す。メタクリル酸(MAA)純度及び結晶化の効率は、結晶化した物質中のiBuA含有率をモニターすることによって決定した。
【0021】
【表1】
【0022】
第1段階結晶化からの結晶化された部分を合わせて、約1/3を実験用溶融結晶化器に供給し、第2段階結晶化のために50分間かけて温度を17.0℃から16.1℃に下げた。供給流の約64%が結晶化した。次に、温度を15.7℃に保持して、結晶化した物質の10%を再溶融させた。再び、母液、再溶融物及び結晶を別々に採取し、iBuA含有率に関して分析した。第2段階結晶化の代表的な結果を表2に示す。
【0023】
【表2】
【0024】
(実施例2)
約5%のイソ酪酸を含むメタクリル酸の溶融結晶化精製
実施例1の手順を用いて、MAA中に約5.8%のiBuAを含む溶液を実験用溶融結晶化器に供給し、約80分間かけて温度を13.5℃から8℃に下げた。供給流の約62%が結晶化した。約4.7時間かけて温度を14.0℃に上昇させて、結晶化した物質の10%を再溶融した。母液、再溶融物及び結晶化した物質を、それぞれ別々に採取し、イソ酪酸含有率に関して分析した。これらの分析の代表的な結果を表3に示す。
【0025】
【表3】
【0026】
(実施例3)
約0.05%のプロピオン酸を含むアクリル酸の溶融結晶化精製
実施例1の手順を用いて、アクリル酸(AA)中に約0.05%のプロピオン酸(PA)を含む溶液を、四つのフラクションに分割した。それぞれのフラクションを、約10℃の温度で19〜68分間かけて実験用溶融結晶化器に供給した。供給流の約42%が結晶化した。結晶化した物質の7〜27%を45〜232分間かけて再溶融した。得られた母液、再溶融物及び結晶フラクションを別々に合わせて、PA含有率に関して分析した。これらの結晶化の代表的な結果を表4に示す。
【0027】
【表4】
【0028】
以下の実施例4〜10及び比較例2に関しては、蒸留カラムデータを、上記に記載の安定状態プロセスシミュレータ(FLOWTRAN)を用いてシミュレートした。それぞれの流れに関するシミュレータインプットの詳細は各実施例において示している。溶融結晶化(母液、再溶融物及び結晶の量及び純度)のデータは、上記の実施例1〜3において示された結果を用いて外挿した。
【0029】
(比較例1)
80%のMAA及び20%のiBuAを含む新しい供給流を溶融結晶化器に供給した。最終生成物の規格を、iBuAが0.005%であるように設定した。この規格を満たすためには、計算では4.6の結晶化段階が必要であった。しかし、最終母液は70.59%のMAAを含有し、再循環できなかった。
(実施例4)
80%のMAA及び20%のiBuAを含む新規供給流を、溶融結晶化器からの母液と混合した。一緒にされた流れは分別カラムに導入された。留出物の規格をiBuAが90%であるように設定し、塔底流の規格をiBuAが0.5%であるように設定し、最終生成物の規格を、iBuAが0.005%であるように設定した。この規格を満たすためには、分別カラムにおける必要な段(理論段)の数は、塔頂圧力が30mmHgと仮定して、45(234の還流比)から55(101の還流比)とすることができる。結晶化段階の必要な数は2.6である。表5に、これらの条件のそれぞれに関して算出された物質バランスの詳細を示す。
【0030】
【表5】
実施例4の物質バランス
成分 新規供給流 再循環流 混合流 留出物 塔底物 生成物
図1-Ref* 2 10 11 4 5 7
流れ(pph)** 100.00 137.90 237.90 22.22 215.68 77.78
MAA% 80.00 99.22 91.14 10.00 99.50 99.995
iBuA% 20.00 0.78 8.86 90.00 0.50 0.005
* 図1のプロセスフローラインの参照番号
**pph =1時間あたりのポンド数
【0031】
(実施例5)
実施例5の規格は、塔底流におけるiBuAの規格が5.0%に上昇した他は実施例4と同一であった。これらの規格を満たすためには、分別カラムにおいて必要な段数は、塔頂圧力が30mmHgと仮定して、30(194の還流比)から40(61の還流比)とすることができる。結晶化段階の必要な数は3.8であった。表6に、これらの条件のそれぞれに関して算出された物質バランスの詳細を示す。
【0032】
【表6】
実施例5の物質バランス
成分 新規供給流 再循環流 混合流 留出物 塔底物 生成物
図1-Ref* 2 10 11 4 5 7
流れ(pph)** 100.00 281.37 381.37 22.22 359.16 77.78
MAA% 80.00 93.62 90.05 10.00 95.00 99.995
iBuA% 20.00 6.38 9.95 90.00 5.00 0.005
* 図1のプロセスフローラインの参照番号
**pph =1時間あたりのポンド数
【0033】
(実施例6)
実施例6の規格は、塔底流におけるiBuAの規格が10.0%に上昇した他は実施例4と同一であった。これらの規格を満たすためには、分別カラムにおいて必要な段数は、塔頂圧力が30mmHgと仮定して、25(197の還流比)から35(42の還流比)とすることができる。結晶化段階の必要な数は4.2であった。表7に、これらの条件のそれぞれに関して算出された物質バランスの詳細を示す。
【0034】
【表7】
実施例6の物質バランス
成分 新規供給流 再循環流 混合流 留出物 塔底物 生成物
図1-Ref* 2 10 11 4 5 7
流れ(pph)** 100.00 340.96 440.96 22.22 418.75 77.78
MAA% 80.00 87.72 85.97 10.00 90.00 99.995
iBuA% 20.00 12.28 14.03 90.00 10.00 0.005
* 図1のプロセスフローラインの参照番号
**pph =1時間あたりのポンド数
【0035】
(実施例7)
実施例7の規格は、新規供給流を、MAAが60%でiBuAが40%に設定した他は実施例5と同一であった。これらの規格を満たすためには、分別カラムにおいて必要な段数は、塔頂圧力が30mmHgと仮定して、30(136の還流比)から40(40の還流比)とすることができる。結晶化段階の必要な数は3.8であった。表8に、これらの条件のそれぞれに関して算出された物質バランスの詳細を示す。
【0036】
【表8】
実施例7の物質バランス
成分 新規供給流 再循環流 混合流 留出物 塔底物 生成物
図1-Ref* 2 10 11 4 5 7
流れ(pph)** 100.00 200.98 300.98 44.44 256.54 55.56
MAA% 60.00 93.62 82.45 10.00 95.00 99.995
iBuA% 40.00 6.38 17.55 90.00 5.00 0.005
* 図1のプロセスフローラインの参照番号
**pph =1時間あたりのポンド数
【0037】
(実施例8)
実施例8の規格は、新規供給流におけるiBuAを10.0%に下げた他は実施例7と同一であった。これらの規格を満たすためには、分別カラムにおいて必要な段数は、塔頂圧力が30mmHgと仮定して、30(232の還流比)から40(79の還流比)とすることができる。結晶化段階の必要な数は3.8であった。表9に、これらの条件のそれぞれに関して算出された物質バランスの詳細を示す。
【0038】
【表9】
実施例8の物質バランス
成分 新規供給流 再循環流 混合流 留出物 塔底物 生成物
図1-Ref* 2 10 11 4 5 7
流れ(pph)** 100.00 321.57 421.57 11.11 410.46 88.89
MAA% 90.00 93.62 92.76 10.00 95.00 99.995
iBuA% 10.00 6.38 7.24 90.00 5.00 0.005
* 図1のプロセスフローラインの参照番号
**pph =1時間あたりのポンド数
【0039】
(実施例9)
実施例9の規格は、新規供給流におけるiBuAを5.0%に下げ、塔底流におけるiBuAを0.5%に下げた他は実施例7と同一であった。更に、 図3の手順を用いた。これらの規格を満たすためには、分別カラムにおいて必要な段数は、塔頂圧力が30mmHgと仮定して、45(355の還流比)から55(157の還流比)とすることができる。結晶化段階の必要な数は3.3であった。表10に、これらの条件のそれぞれに関して算出された物質バランスの詳細を示す。
【0040】
【表10】
実施例9の物質バランス
成分 新規供給流 塔底流 混合流 留出物 母液 生成物
図3-Ref* 32 37 39 35 34 33
流れ(pph)** 100.00 247.58 347.58 5.55 253.13 94.45
MAA% 95.00 99.50 98.21 10.00 97.54 99.995
iBuA% 5.00 0.50 1.79 90.00 2.46 0.005
* 図3のプロセスフローラインの参照番号
**pph =1時間あたりのポンド数
【0041】
(実施例10)
80%のAA及び20%のPAを含む新規供給流を、溶融結晶化器からの母液流と混合した。一緒にした流れを分別カラムに供給した。留出物の規格をPAが9%に設定し、塔底流の規格をPAが70%に設定し、最終生成物の規格をPAが0.005%に設定した。これらの規格を満たすためには、分別カラムにおける必要な段の数は、塔頂圧力が1mmHgと仮定して、還流比29で70である。結晶化段階の必要な数は10.8であった。表11に、算出された物質バランスの詳細を示す。この場合においては、AAはPAよりも揮発性であるので、塔底流を反応器に再循環し、留出物を結晶化器に供給した。
【0042】
【表11】
実施例10の物質バランス
成分 新規供給流 再循環流 混合流 留出物 塔底物 生成物
図1-Ref* 2 10 11 5 4 7
流れ(pph)** 100.00 977.54 1077.54 1048.98 28.57 71.43
AA% 80.00 90.34 89.38 91.00 30.00 99.995
PA% 20.00 9.66 10.62 9.00 70.00 0.005
* 図1のプロセスフローラインの参照番号
**pph =1時間あたりのポンド数
【0043】
(比較例2)
80%のMAA及び20%のiBuAを含む新規供給流を分別カラムに供給した。留出物の規格をiBuAが99%に、塔底流の規格をiBuAが0.005%に設定した。これらの規格を満たすためには、分別カラムにおける計算された段(理論段)の数は、塔頂圧力が30mmHgと仮定して、還流比50.6で150である。
【0044】
これらの実施例は、安定状態において、再循環される物質の量が、生成した生成物の量と比較して高いことを示している。しかしながら、生成した生成物は高い純度のものである。再循環された物質は失われず、生成物又は脱水素化反応器へ戻される物質として回収されるので、全体の工程は効率的なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の実施態様のフローダイヤグラムである。
【図2】図2は実験溶融結晶化器のフローダイヤグラムである。
【図3】図3は本発明の他の実施態様のフローダイヤグラムである。
Claims (14)
- 98重量%を超える純度のα,β−不飽和C3−C6カルボン酸を製造する方法であって、
a.飽和C3−C6カルボン酸を反応器内で酸化脱水素して、α,β−不飽和C3−C6カルボン酸および飽和カルボン酸を含み、飽和カルボン酸に対するα,β−不飽和カルボン酸の比が約15を超える第1の生成物流れを調製し、
b.第1の生成物流れを結晶化ユニット中に供給し、
c.第1の生成物流れを結晶化ユニット中で1回以上溶融結晶化し、
(1)約98重量%を超えるα,β−不飽和カルボン酸を含む第2の生成物流れ、および
(2)約80重量%を超えるα,β−不飽和カルボン酸を含む1以上の母液流とを調製し、
d.1以上の母液流を蒸留ユニット中に供給し、
e.1以上の母液流を蒸留ユニット中で分別蒸留し、
(1)塔頂流、および
(2)塔底流を調製し、
f.塔頂流を反応器中に供給し、
g.塔底流を溶融結晶化器に供給する;工程を含む方法。 - 溶融結晶化工程が、(i)第1の生成物流の約50重量%〜約70重量%を結晶化し;
(ii)母液流を分離し;
(iii)結晶の約5重量%〜約50重量%を溶融して第2の母液流を調製し;
(iv)第2の母液流を残りの結晶から分離し;
(v)母液流及び第2の母液流を分別蒸留カラムに供給し;
(vi)任意に、残りの結晶を溶融して、溶融した残りの結晶を第1の生成物流の代わりに用いて、残りの結晶中において98重量%を超える不飽和カルボン酸含有率を得るのに十分な回数、工程i〜vを繰り返す;工程を含む請求項1に記載の方法。 - 塔頂流における飽和カルボン酸に対するα,β−不飽和カルボン酸の比が約0.5未満である請求項1に記載の方法。
- 塔頂流における飽和カルボン酸に対するα,β−不飽和カルボン酸の比が約0.1未満である請求項3に記載の方法。
- 飽和カルボン酸が、プロピオン酸、ブタン酸及びイソ酪酸から選択される請求項1に記載の方法。
- 飽和カルボン酸がイソ酪酸である請求項1に記載の方法。
- 母液流及び第2の母液流を、分別蒸留カラムに供給する前に混合する請求項2に記載の方法。
- 第1の生成物流を、溶融結晶化の前に脱水する請求項1に記載の方法。
- 第2の生成物流のα,β−不飽和カルボン酸含有率が約99.9重量%を超える請求項1に記載の方法。
- 蒸留ユニットと結晶化ユニットとを接続するライン中に、物質を保持する手段が包含されている請求項1に記載の方法。
- 約98重量%を越える純度のアクリル酸を製造する方法であって、(a)プロピオン酸を反応器内で酸化脱水素して、アクリル酸及びプロピオン酸を含み、プロピオン酸に対するアクリル酸の比が約15を超える第1の生成物流を調製し;
(b)第1の生成物流を結晶化ユニット中に供給し;
(c)結晶化ユニット中で第1の生成物流を1回以上溶融結晶化して、(1)約98重量%を超えるアクリル酸を含む第2の生成物流と、(2)約80重量%を超えるアクリル酸を含む1以上の母液流とを調製し;
(d)1以上の母液流を蒸留ユニット中に供給し;
(e)1以上の母液流を蒸留ユニット内で、アクリル酸の蒸気圧がプロピオン酸の蒸気圧よりも大きい条件下で分別蒸留して、(1)塔頂流と(2)塔底流とを調製し;
(f)塔底流を反応器に供給し;
(g)塔頂流を溶融結晶化器に供給する;工程を含む方法。 - 第1の生成物流を、溶融結晶化の前に脱水する請求項11に記載の方法。
- 第2の生成物流のアクリル酸含有率が約99.9重量%を超える請求項11に記載の方法。
- 蒸留ユニットと結晶化ユニットとを接続するライン中に、物質を保持する手段が包含されている請求項11に記載の方法。
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