JP3642049B2 - 蒸しパン類の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、小麦粉等を原料として製造される蒸しパン類の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、蒸しパン類は、小麦粉等を原料として、イーストを用いて醗酵させたパン類生地から製造されるものと、膨張剤を用いて膨張させたパン類生地から製造されるものがある。そして、例えば、醗酵させたパン類生地の作成においては、小麦粉等の原料とイーストを混捏して製造する直捏法と、小麦粉等の原料の一部とイーストを混捏して中種を作成し、醗酵させた中種に残りの小麦粉等の原料を混捏して製造する中種法とがある。
従来、この中種法を用いた蒸しパン類の製造方法は、図10に示すように、小麦粉等の原料の一部とイーストを混捏して中種を作成する中種作成工程と、この中種を発酵させる中種発酵工程と、醗酵させた中種に残りの小麦粉等の原料を混捏し本捏する蒸しパン類生地作成工程と、この蒸しパン類を発酵させる蒸しパン類生地発酵工程と、この蒸しパン類生地を蒸す蒸し工程とからなる。
【0003】
ところで、このように製造される蒸しパン類の製造方法において、蒸しパン類の老化の抑制、容積の増大、食感の改良等を目的として様々な改良が行なわれてきたが、従来の方法は、それぞれ一長一短があり、所望の蒸しパン類を製造する方法として更なる改良の余地が考えられる。即ち、蒸しパン類の老化は、蒸しパンが経時的に硬くなり、パサつく食感となることであり、この老化による品質低下をできるだけ防止して老化防止効果を向上させるとともに、更には、容積の増大、食感の改良をしたいという要請がある。
一方、焼成パン類の製造方法において、老化の抑制、食感・風味の改良等を目的として、生地を構成する全小麦粉量のうち一部の小麦粉を熱水を用いて小麦粉の湯捏種を作成し、この小麦粉の湯捏種を用いて生地を作成して焼成パン類を製造する方法が知られている(特公平4−24017号公報、特許第3167692号公報等参照)。
そこで、焼成パン類に湯捏種を使用する技術を蒸しパン類に応用して生地を構成する全小麦粉量のうち一部の小麦粉と熱水を混捏して小麦粉の湯捏種を作成し、この小麦粉の湯捏種を用いて蒸しパン類を製造することを試行した。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この従来の焼成パン技術を蒸しパン類に応用して小麦粉の湯捏種を用いたところ、焼成パン類ではみられた改良効果が蒸しパン類ではみられず、むしろクチャクチャした食感、口溶けの悪さ等の品質の劣化をもたらした。
更に、製品のボリュームも減少した。そのため、蒸しパンに小麦粉の湯捏種を使用すると品質が低下するという問題が生じた。
しかし、くちゃつきの感覚はしっとり感と近いことから、蒸しパンに湯捏種を使用することの改良効果が期待できる。そのため、本発明者等は、湯捏種を使用しても品質を低下させることなく蒸しパンを製造する方法を検討した。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたもので、小麦粉の湯捏種を使用する蒸しパン類においてみられた品質の劣化を解決し、(1)老化(蒸しパンが経時的に硬くなり、パサつく食感となること)を抑制して柔らかさと弾力性の維持を図り、および用いる澱粉の種類により(2)容積の増大を図り、(3)食感の改良を図るという課題のうち少なくとも1つ以上の課題の解決を図ることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
このような課題を解決するための本発明の蒸しパン類の製造方法は、小麦粉等を原料として製造される蒸しパン類の製造方法において、澱粉と熱水とを混捏して湯捏種を作成する湯捏種作成工程と、該湯捏種と上記小麦粉等の原料とを用いてパン類生地を作成するパン類生地作成工程とを備えて構成している。
本発明において、澱粉と熱水を混捏して澱粉の湯捏種を作成して用いることにより、老化の抑制による柔らかさ及び弾力性の維持の効果が現れ、しっとりとした良好な食感となる。また、用いる澱粉の種類によって、ボリュームを増加させることもできるし、さらに、しっとりとしたもっちり感、サクい歯切れ感、またはふわふわしたソフト感といった食感を向上させることができるようになる。
【0007】
また、本発明の蒸しパン類の製造方法は、小麦粉等を原料として製造される蒸しパン類の製造方法において、澱粉と熱水とを混捏して湯捏種を作成する湯捏種作成工程と、少なくとも上記小麦粉の一部とイーストと水とを混捏して中種を作成する中種作成工程と、該湯捏種と該中種と、少なくとも残量の小麦粉及び水からなる原料を用いてパン類生地を作成するパン類生地作成工程とを備えて構成している。澱粉の湯捏種を入れた上記効果を損なうことなく、機械耐性のある生地を製造することができるようになり、機械的大量生産においても蒸しパンの品質の安定性が良くなり、機械的大量生産が容易となる。
【0008】
そして、必要に応じ、上記湯捏種の澱粉を、パン類生地を構成する全小麦粉量に対して2.5〜20質量%にする構成としている。これよりも澱粉の量が多くなるほど、蒸しパンの老化の抑制及び食感の改良は向上するが、その容積の増加は小さくなる。そして、これよりも澱粉の量が少なくなるほど、やはり容積の増加は小さくなり、また老化の抑制及び食感の改良の効果が顕著に現れにくくなる。
ここで、好ましくは、上記澱粉を、パン類生地を構成する全小麦粉量に対して5〜15質量%にすることがより有効である。
尚、上記澱粉としては、ワキシーコーンスターチは除く。
【0009】
更に、必要に応じ、上記湯捏種の澱粉を、小麦澱粉,馬鈴薯澱粉,コーンスターチ,タピオカ澱粉(以上を「未加工澱粉」という),これらの架橋澱粉,化工澱粉(以上を「加工澱粉」という)のうちから1種類又は2種類以上を選択して用いた構成としている。小麦澱粉,馬鈴薯澱粉,化工澱粉及び架橋澱粉は蒸しパンの容積を大きくする効果がある。特に、化工タピオカ澱粉及び架橋タピオカ澱粉は、蒸しパンの容積を大きくする効果が顕著である。
そして、食感においては、しっとり・もっちりとした蒸しパンとしたい場合には、タピオカ澱粉、及び/又は上記未加工澱粉の化工澱粉のうちから選択した1種類若しくは2種類以上を用いると良く、このなかでも化工タピオカ澱粉が最も良い。
特に化工タピオカ澱粉は、老化を抑制して柔らかさと弾力性を維持し、容積が増大し、しっとりとしたもっちり感のある蒸しパン類とする効果が顕著であるため、本発明にとって最も好適な澱粉の一つである。
また、サクい歯切れ感の蒸しパンとしたい場合には、コーンスターチ、及び/又は、上記未加工澱粉の架橋澱粉のうちから選択した1種類若しくは2種類以上を用いると良く、このなかでも架橋タピオカ澱粉が最も良い。ここで、架橋澱粉ではもっちり感は少ないが、しっとり感が出る。また、ふわふわしたソフトな蒸しパンとしたい場合には、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉を用いると良い。
ここで、「加工」澱粉とは、上記未加工澱粉の架橋又は化工澱粉のことであり、「化工」澱粉とは、上記未加工澱粉のエ−テル化またはエステル化澱粉のことである。また、「架橋」とはリン酸化架橋等のことである。
【0010】
そして、必要に応じ、上記湯捏種作成工程において、熱水の温度を、55〜95℃にしている。温度が低い場合には通常の澱粉を添加したものと同等のものになり、温度が高すぎる場合、熱水の澱粉への分散性が悪く、最初に接触した澱粉の一部に急速に吸収されて、その部分だけ糊化が進みすぎ湯捏種の全体としては糊化が不均一となる。また生地の形成が困難になる。
ここで、必要に応じ、上記澱粉を小麦澱粉で構成し、上記湯捏種作成工程において、熱水の温度を、60〜95℃、好ましくは80〜90℃にする構成とすることができる。
また、必要に応じ、上記澱粉をコーンスターチ、及び/又は上記未加工澱粉の化工澱粉のうちから選択した1種類又は2種類以上、好ましくは化工タピオカ澱粉で構成し、上記湯捏種作成工程において、熱水の温度を、65〜95℃、好ましくは70〜90℃、より一層好ましくは80〜90℃にしている。
更に、必要に応じ、上記澱粉を馬鈴薯澱粉で構成し、上記湯捏種作成工程において、熱水の温度を、55〜90℃、好ましくは65〜75℃にしている。
これにより、それぞれの澱粉に適した温度の熱水で湯捏種を混捏することができ、上述した湯捏種に用いる澱粉の特徴をより一層有する蒸しパン類を製造することができる。
【0011】
そして、必要に応じ、上記湯捏種作成工程において、捏上温度を、45〜80℃にする構成としている。湯捏種の捏上温度が低すぎると、蒸しパン類の容積は大きくなるが、通常の澱粉を添加したものと同等のものになり、澱粉のα化が不十分で老化の抑制及び食感の改良の効果が顕著に現れにくくなる。これに対し、湯捏種の捏上温度が高すぎると、蒸しパン類の老化の抑制及び食感の改良は向上するが、その容積の増加は小さくなり、また蒸しパン類生地の形成も困難になる。
また、必要に応じ、上記澱粉を未加工澱粉、これらの架橋澱粉で構成し、上記湯捏種作成工程において、捏上温度を60〜80℃にする構成としている。
更に、必要に応じ、上記澱粉を化工澱粉、好ましくは化工タピオカ澱粉で構成し、上記湯捏種作成工程において、捏上温度を45〜65℃にする構成としている。
これにより、それぞれの澱粉に適した捏上温度で湯捏種を捏ね上げることができ、上述した湯捏種に用いる澱粉の特徴をより一層有する蒸しパン類を製造することができる。
【0012】
そして、必要に応じ、上記湯捏種を、混捏後に静置してねかせる熟成工程を備えている構成としている。全体的に水和作用が均一に進行し、湯捏種の組成を全体的に均質化し、パン類生地の老化防止効果を向上させるとともに、パン類生地の本捏における捏上温度の調整を容易にし、捏上温度を安定化させる。
この場合、必要に応じ、上記澱粉を未加工澱粉、これらの架橋澱粉のうちから選択した1種類又は2種類以上、好ましくは架橋タピオカ澱粉で構成し、上記熟成工程において、湯捏種を15〜20℃で12〜24時間ねかせることがより有効である。
更にまた、必要に応じ、上記澱粉を化工澱粉、好ましくは化工タピオカ澱粉で構成し、上記熟成工程において、湯捏種を0〜20℃で12〜72時間ねかせることがより有効である。
そして、必要に応じ、この場合、上記熱水の量を上記澱粉に対して60〜150質量%にしている。この場合、上記温水の量を上記澱粉に対して80〜120質量%にしたことがより有効である。熱水の量が少ないと作業性に劣り、澱粉のα化も不十分となる。多い場合には糊状や液状になり作業性に劣るようになる。なお、本発明でパン類生地とは、イーストで醗酵させる生地か化学膨張剤で膨化させる生地かを問わず、混捏してグルテンが形成され、混捏後には保形性および可塑性を有する生地をいう。典型的には、イースト醗酵パン生地である。従って、撹拌後に流動状の生地は含まれない。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に基づいて本発明の実施の形態に係る蒸しパン類の製造方法について説明する。
本発明は、直捏法(ストレート法)においても用いることができるが、ここでは、中種法を採用した。
その基本的構成は、図1に示すように、小麦粉等を原料として製造される蒸しパン類の製造方法であって、澱粉と熱水とを混捏して湯捏種を作成する湯捏種作成工程(1−1)と、この湯捏種を混捏後に静置してねかせる湯捏種熟成工程(1−2)とを備えている。
また、少なくとも小麦粉の一部とイーストと水とを混捏して中種を作成する中種作成工程(2−1)と、中種を醗酵させる中種醗酵工程(2−2)とを備えている。
そして、湯捏種と中種と少なくとも残量の小麦粉及び水からなる原料とを用いてパン類生地を作成するパン類生地作成工程(3)と、例えば、パン類生地を醗酵し、分割して丸めを行ない、ベンチタイムをとってガス抜きや成形を行なってから、ホイロをとるパン類生地醗酵工程(4)と、このパン類生地を蒸しあげる蒸し工程(5)とを備えている。
以下に、各工程について詳しく説明する。
【0014】
(1−1)湯捏種作成工程
湯捏種作成工程では、澱粉と熱水とを混捏して湯捏種を作成する。澱粉は、必要に応じて、小麦澱粉,馬鈴薯澱粉,コーンスターチ,タピオカ澱粉(以上「未加工澱粉」という),これらの架橋澱粉,化工澱粉(以上「加工澱粉」という)のうちから1種類又は2種類以上を選択して用いられる。その質量は、パン類生地を構成する全小麦粉量に対して2.5〜20質量%が望ましく、5〜15質量%であることがより一層望ましい。
また、湯捏種作成工程において、用いる熱水の量は、好ましくは澱粉に対して60〜150質量%であり、より好ましくは熱水の量を上記澱粉に対して80〜120質量%が有効である。熱水の量が少ないと作業性に劣り、澱粉のα化も不十分となる。多い場合には糊状や液状になり作業性に劣るようになる。
また、ここで用いる熱水の温度は、好ましくは55〜95℃にしている。温度が低い場合には生地に通常の澱粉を添加したものと同等のものになり、温度が高すぎる場合、熱水の澱粉への分散性が悪く、最初に接触した澱粉の一部に急速に吸収されて、その部分だけ生地形成が困難になる。好ましい熱水の温度は、用いる澱粉の種類により異なり、小麦澱粉の場合には、60〜95℃、好ましくは80〜90℃である。更には、コーンスターチ、または、化工タピオカ澱粉を含めて化工澱粉の場合には、65〜95℃、好ましくは70〜90℃、より一層好ましくは80〜90℃であり、馬鈴薯澱粉の場合には、55〜90℃、好ましくは65〜75℃である。
【0015】
(1−2)熟成工程
湯捏種を混捏後に静置してねかせて熟成させる。全体的に水和作用が均一に進行し、湯捏種の組成を全体的に均質化させる。
【0016】
(2−1)中種作成工程
他方で、湯捏種とは別に、少なくとも全小麦粉量のうち一部の小麦粉,全イーストもしくは常法において中種に通常添加する標準量のイースト及び水からなる原料を混捏して中種を作成する。通常このイースト量は2〜4質量%である。
この工程では、小麦粉はパン類生地を構成する全小麦粉量のうち50質量%以上の小麦粉を使用する。ここで使用する小麦粉の量は、全小麦粉量のうち60質量%〜80質量%が望ましい。
(2−2)中種醗酵工程
このようにして中種を作成した後、中種を醗酵させる。常法の中種法の中種醗酵条件(時間、温度、湿度)を採用することができるが、これに限らない。
【0017】
(3)パン類生地作成工程
次に、湯捏種と、醗酵後の中種と、少なくとも残量の小麦粉及び水からなる原料を混捏してパン類生地を作成する。
【0018】
(4)パン類生地醗酵工程
このパン類生地を所要時間醗酵する。醗酵は、常法の中種法の生地醗酵条件(時間、温度、湿度)を採用することができる。しかし、ホイロは40〜60%の湿度の乾ホイロとすることが望ましい。
ここでは、フロアタイムでの醗酵後、分割して丸めを行なう。その後、ベンチタイムをとり、ガス抜きや整形を行なってからホイロする。
【0019】
(5)蒸し工程
ホイロ後のパン類生地を蒸す。この蒸したパン類においては、従来のように湯捏種を用いない場合よりも、経時的な老化(経時的に硬くなったり、パサつく食感となること)防止効果及び柔らかさと弾力性の維持効果が向上し、また、用いる澱粉の種類によって、蒸しパン類の容積が増大し、及び/又はしっとりしたもっちり感、サクイ歯切れ感、もしくはふわふわしたソフト感といった食感が良好となる。
更に、湯捏種と予め作成した中種と、残量の小麦粉及び水等からなる原料を混捏することにより、湯捏種を使用しても混捏後のパン類生地が過度に柔らかくならず一定の弾力性を有し、過度の粘着性がなくて適度な性状を維持し、機械耐性を有し、蒸しパン類は蒸し工程における膨張が大きく、腰持ちが良く、そして機械的大量製パンにおける蒸しパン類の品質を製品間で安定させることができるようになる。
【0020】
【実施例】
実施例1
次に、実施例(実施例1)について説明する。図2に示す配合表及び図3に示す仕込み工程表に従って説明する。
(1−1)湯捏種作成工程
湯捏種作成工程では、澱粉として化工タピオカ澱粉(具体的には、ヒドロキシプロピルエーテル化タピオカ澱粉)を用い、熱水を80℃として、澱粉:熱水=1:1の割合で混捏して湯捏種を作成する。混捏は、低速2分、高速30秒で行ない、混捏後の湯捏種の捏上温度は55℃であった。
【0021】
(1−2)熟成工程
湯捏種を18℃で約12時間程、静置してねかせて熟成させる。
【0022】
(2−1)中種作成工程
他方で、湯捏種と別に、全小麦粉量のうち一部(70質量%)の小麦粉(強力粉),全イースト、ブドウ糖及び水からなる原料を混捏して中種を作成する。混捏は、低速2分、高速3分で行ない、混捏後の中種の温度は26℃であった。
(2−2)中種醗酵工程
このようにして中種を作成した後、中種を醗酵させる。常法の中種法の中間醗酵条件(時間、温度、湿度)を採用することができるが、ここでは、温度30℃,湿度80%で90分間醗酵させた。
【0023】
(3)パン類生地作成工程
次に、湯捏種と、醗酵後の中種と、少なくとも残量(30質量%)の小麦粉(薄力粉)及び水からなる原料を混捏してパン類生地を作成する。混捏は、油脂を除き、低速2分、高速4分で行ない、油脂を添加後、低速2分、高速3分行なった。ここで捏上温度は、27℃であった。
【0024】
(4)パン類生地醗酵工程
このパン類生地を所要時間醗酵する。醗酵は、常法の中種法の生地醗酵条件(時間、温度、湿度)を採用することができる。
ここでは、フロアタイムを10分間行なって醗酵させた後、分割して丸めを行なう。その後、ベンチタイムをとり、ガス抜きをした後、成形を行なってからホイロする。ホイロは、温度40℃,湿度50%で55分間行なった。
【0025】
(5)蒸し工程
ホイロの後、蒸して製品とする。蒸し条件は、蒸気圧1.3Kg/cm2 (約0.13MPa)で13分間行なった。
このようにして製造した蒸しパンは、老化が抑制されて柔らかさと弾力性を維持し、容積が著しく増大し、また食感はしっとりとしてもっちり感が優れたものであった。
【0026】
実施例6
上記実施例1において、湯捏種の澱粉として小麦澱粉を用い、また湯捏種の捏上温度を65℃に調整し、その他の条件は上記実施例1と同様にして実施してみたところ、製造した蒸しパンは、老化が抑制されて柔らかさと弾力性を維持し、容積も増大し、また食感はふわふわしたソフト感が優れたものであった。
【0027】
実施例7
上記実施例1において、湯捏種の澱粉として馬鈴薯澱粉を用い、また熱水の温度を70℃として、湯捏種の捏上温度を60℃に調整し、その他の条件は上記実施例1と同様にして実施してみたところ、製造した蒸しパンは、老化が抑制されて柔らかさと弾力性を維持し、容積も増大し、また食感はふわふわしたソフト感が優れたものであった。
【0028】
実施例8
上記実施例1において、湯捏種の澱粉としてコーンスターチ、又は小麦澱粉、馬鈴薯澱粉及びコーンスターチの架橋澱粉を用い、また捏上温度を60℃に調整し、その他の条件は上記実施例1と同様にして実施してみたところ、製造した蒸しパンは、老化が抑制されて柔らかさと弾力性を維持し、また食感はサクい歯切れ感が優れたものであった。
【0029】
実施例9
上記実施例1において、湯捏種の澱粉としてタピオカ澱粉を用い、また熱水の温度を85℃として、湯捏種の捏上温度を60℃に調整し、その他の条件は上記実施例1と同様にして実施してみたところ、製造した蒸しパンは、老化が抑制されて柔らかさと弾力性を維持し、また食感はしっとりしたもっちり感が優れたものであった。
【0030】
実施例10
上記実施例1において、湯捏種の澱粉として架橋タピオカ澱粉(具体的には、リン酸架橋タピオカ澱粉)を用いて、その他の条件は上記実施例1と同様にして実施してみたところ、製造した蒸しパンは、老化が抑制されて柔らかさと弾力性を維持し、容積も著しく増大し、また食感はサクい歯切れ感としっとり感が優れたものであった。
【0031】
【実験例】
(1)実験1
次に、前記実施例1において湯捏種に用いる熱水の温度および捏上温度を変えながら種々の実施例(実施例2〜5)を作成し、比較例とともに「もちもち感」,「しっとり感」,ボリューム等についての試験を行なった。実施例2〜5の製造工程は、上記実施例1に準拠した。
比較例として、図4に示すように、従来の製造方法による蒸しパン類を作成した。
実施例2 :熱水の温度60℃ → 捏上温度44℃
実施例3 :熱水の温度70℃ → 捏上温度47℃
実施例4 :熱水の温度80℃ → 捏上温度51℃
実地例5 :熱水の温度90℃ → 捏上温度55℃
結果を図4に示す。
澱粉として化工タピオカ澱粉(具体的には、ヒドロキシプロピルエーテル化タピオカ澱粉)を用いた湯捏種を使用すると、比較例と比較して吸水が増加し、湯捏種に用いる熱水の温度が高い程吸水が増加することが確認できた。また熱水の温度が高いほどしっとりしたもちもち感・しっとりしたソフトさを附与できることも確認した。熱水の温度が90℃で蒸しパン類の生地が甘く感じられることから、澱粉の糊化が進んで、小麦粉由来のアミラーゼの作用を強く受けて麦芽糖等が多く生成されたことが予想された。しっとり感が熱水の温度が80℃でピークとなったことからも90℃では糊化の度合いがさらに進むと推察した。また、80℃の熱水で調整した湯捏を使用すると、よりもちもち感・しっとり感を附与することができ、同時に従来法よりも4%の吸水増が可能となることが分かる。
【0032】
次に、図4に示す製造方法により製造した生地の50g分割生地玉を蒸した蒸しパン類のボリュームを測定した。結果を図5に示す。
比較例に比較して実施例のものはボリュームが増加することが確認でき、さらに熱水の温度が70℃と80℃のときに、それぞれ60℃、70℃のときと比較していずれもボリュ−ムが増加していることが分かった。また、熱水の温度が80〜90℃のときに、最もボリュームが大きかった。
【0033】
(2)実験2
前記実施例1において、熱水の温度を変えながら作成した湯捏種を用いてパン類生地を作成し、該生地40グラムに詰め具材、包込み具材等の具材としてメンチカツをのせ通常通り蒸したときの生地の浮き具合を試験した。結果を示す内相写真に基づく図を図6に示す。
この結果より、蒸し工程における生地の浮き具合が比較例に比較して実施例のものは、湯捏種に使用する熱水の温度の上昇に従って改善され、特に、熱水の温度が、70℃と80℃のときに、それぞれ60℃、70℃のときと比較していずれも生地の浮きの改善が起こっていることが確認できた。
また、熱水の湯度が80℃〜90℃のときに、具材をのせた生地の浮き具合が最も大きかった。
【0034】
次にまた、前記実施例6〜10に従い種々の蒸しパン類を作成し、比較例とともに以下の各実験を行なった。
比較例としては、上記と同様に、図4に示す従来の製造方法(従来法)による蒸しパン類を製造した。また、湯捏種を澱粉に代えて小麦粉を用いて作成して蒸しパン類を製造した。
実施例6:湯捏種の澱粉として小麦澱粉使用
実施例7:湯捏種の澱粉として馬鈴薯澱粉使用
実施例8:湯捏種の澱粉としてコーンスターチ使用
実施例9(=実施例1):湯捏種の澱粉としてヒドロキシプロピルエーテル化タピオカ澱粉使用
実施例10:湯捏種の澱粉としてリン酸架橋タピオカ澱粉使用
【0035】
(3)実験3
上記実施例6〜10及び比較例について硬さの実験を行なった。
結果を図7に示す。
この結果から各種澱粉湯捏種を使用した場合、生地が柔らかくなること、及び硬くなりにくいということが分かる。
【0036】
(4)実験4
上記実施例6〜10及び比較例について弾力の実験を行なった。
結果を図8に示す。
この結果から各湯捏種を使用した場合、弾力が強くなり、傾きの度合いから弾力の低下が小さい、つまり、老化しにくくなっているということが分かる。
【0037】
(5)実験5
上記実施例6〜10及び比較例について容積の実験を行なった。
結果を図9に示す。
この結果からコーンスターチでは容積が減少するが、他の澱粉、特に加工タピオカ澱粉を使用した場合(実施例9及び10)大幅な容積増が示されているということが分かる。
【0038】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の蒸しパン類の製造方法によれば、澱粉と熱水とを混捏して湯捏種を作成し、この湯捏種を用いてパン類生地を作成するので、製造された蒸しパン類は老化の抑制と柔らかさ及び弾力性の維持を図ることができ、また湯捏種に用いる澱粉の種類に応じて所定の食感を改良させることができるようになる。前記食感の改良については、タピオカ澱粉及び/又は化工澱粉(小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉)、特に化工タピオカ澱粉を選択して用いる場合には、蒸しパン類のしっとりしたもっちり感を、コーンスターチ及び/又は架橋澱粉(小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉)を選択して用いる場合には、サクイ歯切れの良い食感、馬鈴薯澱粉及び/又は小麦澱粉を選択して用いる場合には、ふわふわしたソフト感をそれぞれ向上させることができるようになる。
【0039】
また、湯捏種と該湯捏種とは別に中種を作成し、該湯捏種と該中種とを用いて蒸しパン類生地を作成する場合には、澱粉湯捏種を入れた効果を損なうことなく、機械耐性のある生地を製造することができるようになり、蒸しパン類の安定性が良く、機械的大量生産が容易となる。
そして、澱粉を、パン類生地を構成する全小麦粉量に対して2.5〜20質量%、好ましくは5〜15質量%にした場合には、老化の抑制及び食感の改良を適正にすることができる。
【0040】
更に、澱粉を、小麦澱粉,馬鈴薯澱粉,コーンスターチ,タピオカ澱粉,これらの架橋澱粉,化工澱粉のうちから1種類又は2種類以上を選択して用いる場合には、蒸しパン類の老化の抑制と柔らかさ、弾力性の維持及び食感の改良をより確実に行なうことができる。また、それだけでなく、これらの澱粉は、コーンスターチを除き、蒸しパン類の容積を大きくする効果がある。特に、化工タピオカ澱粉及び架橋タピオカ澱粉は、蒸しパンの容積を大きくする効果が顕著である。更にまた、湯捏種作成工程において、温水の温度を、55〜95℃、好ましくは、60〜95℃、更に好ましくは80〜90℃にした場合には、糊化が進みすぎて分散性を悪化させることなく、生地形成を容易にすることができる。
また、湯捏種作成工程において、捏上温度を、45〜80℃にした場合には、糊化が進みすぎて分散性を悪化させることなく、生地形成を容易にすることができる。
【0041】
更に、湯捏種を、混捏後に静置してねかせる熟成工程を備えた場合には、全体的に水和作用が均一に進行し、湯捏種の組成を全体的に均質化し、パン類生地の老化防止効果を向上させることができる。
更にまた、温水の量を澱粉に対して60〜150質量%、好ましくは80〜120質量%にした場合には、糊化が進みすぎて分散性を悪化させることなく、生地形成を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る蒸しパン類の製造方法を示す工程図である。
【図2】本発明の実施例1に係る蒸しパン類の配合を示す表図である。
【図3】本発明の実施例1に係る蒸しパン類の仕込み工程を示す図である。
【図4】本発明の実施例2乃至5及び比較例の配合表及び生地状態試験結果を示す表図である。
【図5】本発明の実施例2乃至5及び比較例の生地玉ボリュームの測定結果を示す表図である。
【図6】本発明の実施例2乃至5及び比較例の生地にメンチカツをのせて蒸煮したときの浮き具合を試験した結果を示す内相写真に基づく図である。
【図7】本発明の実施例6乃至10及び比較例の生地の硬さの実験結果を示すグラフ図である。
【図8】本発明の実施例6乃至10及び比較例の生地の弾力の実験結果を示すグラフ図である。
【図9】本発明の実施例6乃至10及び比較例の生地の容積の実験結果を示すグラフ図である。
【図10】従来の蒸しパン類の製造方法の一例を示す工程図である。

Claims (15)

  1. 小麦粉等を原料として製造される蒸しパン類の製造方法において、
    澱粉と熱水とを混捏して湯捏種を作成する湯捏種作成工程と、該湯捏種と上記小麦粉等の原料とを用いてパン類生地を作成するパン類生地作成工程とを備えたことを特徴とする蒸しパン類の製造方法。
  2. 小麦粉等を原料として製造される蒸しパン類の製造方法において、
    澱粉と熱水とを混捏して湯捏種を作成する湯捏種作成工程と、少なくとも上記小麦粉の一部とイーストと水とを混捏して中種を作成する中種作成工程と、上記湯捏種と上記中種と少なくとも残量の小麦粉及び水からなる原料を用いてパン類生地を作成するパン類生地作成工程とを備えたことを特徴とする蒸しパン類の製造方法。
  3. 上記澱粉を、パン類生地を構成する全小麦粉量に対して2.5〜20質量%にしたことを特徴とする請求項1または2記載の蒸しパン類の製造方法。
  4. 上記澱粉を、小麦澱粉,馬鈴薯澱粉,コーンスターチ,タピオカ澱粉,これらの架橋澱粉,化工澱粉のうちから1種類又は2種類以上を選択して用いたことを特徴とする請求項1,2または3記載の蒸しパン類の製造方法。
  5. 上記湯捏種作成工程において、熱水の温度を55〜95℃にしたことを特徴とする請求項1,2,3または4記載の蒸しパン類の製造方法。
  6. 上記澱粉を小麦澱粉で構成し、上記湯捏種作成工程において熱水の温度を60〜95℃にしたことを特徴とする請求項1,2または3記載の蒸しパン類の製造方法。
  7. 上記澱粉をコーンスターチ、及び/又は小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉の化工澱粉のうちから選択した1種類若しくは2種類以上で構成し、上記湯捏種作成工程において熱水の温度を65〜95℃にしたことを特徴とする請求項1,2または3記載の蒸しパン類の製造方法。
  8. 上記澱粉を馬鈴薯澱粉で構成し、上記湯捏種作成工程において、熱水の温度を55〜90℃にしたことを特徴とする請求項1,2または3記載の蒸しパン類の製造方法。
  9. 上記湯捏種作成工程において、捏上温度を45℃〜80℃にしたことを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6,7または8記載の蒸しパン類の製造方法。
  10. 上記澱粉を小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉、これらの架橋澱粉のうちから選択した1種類又は2種類以上で構成し、上記湯捏種作成工程において、捏上温度を60〜80℃にしたことを特徴とする請求項1,2または3記載の蒸しパン類の製造方法。
  11. 上記澱粉を化工澱粉で構成し、上記湯捏種作成工程において、捏上温度を45〜65℃にしたことを特徴とする請求項1,2または3記載の蒸しパン類の製造方法。
  12. 上記湯捏種を、混捏後に静置してねかせる熟成工程を備えたことを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6,7,8,9,10または11記載の蒸しパン類の製造方法。
  13. 上記澱粉を小麦澱粉・馬鈴薯澱粉・コーンスターチ・タピオカ澱粉、これらの架橋澱粉のいずれか1種類又は2種類以上で構成し、上記熟成工程において、湯捏種を15〜20℃で12〜24時間ねかせることを特徴とする請求項12記載の蒸しパン類の製造方法。
  14. 上記澱粉を化工澱粉で構成し、上記熟成工程において、湯捏種を0〜20℃で12〜72時間ねかせることを特徴とする請求項12記載の蒸しパン類の製造方法。
  15. 上記熱水の量を上記澱粉に対して60〜150質量%にしたことを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13または14記載の蒸しパン類の製造方法。
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