JP4249445B2 - パン類の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、全小麦粉量のうち一部の小麦粉と熱湯とを混捏するか、または全小麦粉量のうち一部の小麦粉と水とを加温しながら混捏するか等して湯捏種を作成し、この湯捏種を用いてパン類生地を作成してパン類を製造するパン類の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、小麦粉及び熱湯を混捏して湯捏種を作成し、必要に応じて混捏後の湯捏種のあら熱を除去した後、湯捏種と少なくとも小麦粉,イースト,食塩,糖類及び水からなる原料を混捏してパン類生地を作成して醗酵及び焼成をすることにより、しっとりした柔らかさを有し、また小麦粉に由来する自然な甘味と香を有するパン類を製造する方法が知られている。
従来、この種の方法としては、例えば、特開昭59−156236号公報及び特開2000−262205号公報等に掲載された技術が知られている。
この方法は、例えば、パン類生地を構成する全小麦粉量のうち約5質量%〜50質量%の小麦粉と所定量の熱湯を混捏して湯捏種を作成し、常法の直捏法により該湯捏種と残りの小麦粉,イースト,イーストフード,食塩,糖類,脱脂粉乳,油脂及びその他の残りのパン類生地を構成する原料を原料の状態で混捏してパン類生地を作成し、醗酵及び焼成することによりパン類を製造するというものである。
そして、湯捏種は小麦粉を熱湯で熱処理していることから、小麦澱粉が一部α化(糊化)してることから保水力が向上して、このため湯捏種を使用して作成したパン類は上述した独特の特徴を有するものとなる。
【0003】
ところで、この従来の方法は、以下のような重大な課題を有するものであった。すなわち、湯捏種は小麦粉を熱湯で熱処理しているため、パン類の製造に必須の小麦グルテンは熱損傷を受けることになる。そして、このように熱損傷を受けた小麦グルテンからなる湯捏種を使用して、前記常法の直捏法により混捏したパン類生地は、柔らか過ぎて力が弱く、また粘着性が強い性状となり、更に機械耐性に劣るものであり、このパン類生地から作成した焼成パン類は、オーブンスプリングと容積が小さく、腰持ちが悪く、また機械的大量製パンにおける焼成品の品質の安定性に劣るものであった。
【0004】
そこで、これらの従来の方法の諸課題の一部ではあるが、パン類生地が、柔らか過ぎて力が弱く、パン類生地を焼成したパン類は腰持ちが悪いということを解決するために、上記の従来の技術と同様にパン類生地を構成する全小麦粉量のうち約10質量%〜30質量%の小麦粉と所定量の熱湯を混捏して湯捏種を作成してから、該湯捏種を低温で長時間保存してねかせ、この後上記と同様に、該保存後の湯捏種と残りの小麦粉,イースト,イーストフード,食塩,糖類,脱脂粉乳,油脂,その他の残りのパン類生地を構成する原料を原料そのままの状態で混捏してパン類生地を作成し、醗酵及び焼成をすることによりパン類を製造するという方法が提案されている(例えば、特開2000−262205号公報参照)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この技術によってもなお常法の直捏法により混捏後のパン類生地が柔らか過ぎて力が弱いため焼成パン類が潰れ易いという課題は十分に解決されず、また、その他の従来の方法の諸課題は全く解決されず、従って、これらの従来の方法・技術による焼成パン類は湯捏種を使用して作成した焼成パン類に独特の特徴を十分に発揮できないという問題があった。
【0006】
ところで、湯捏種を使用する技術において、中種法によりパン類を製造する方法も知られている(上掲特開2000−262205号公報参照)。これは、湯捏種以外に、あらかじめ全小麦粉量のうち70質量%の小麦粉,全量(3質量%)のイースト,イーストフード及び水を混捏して中種を作成し、これを4時間中種醗酵させた後、該湯捏種と、該醗酵後の中種と、残量の小麦粉,糖類,油脂,脱脂粉乳,塩及び水等を混捏してパン類生地を作成し、フロアータイムをとった後に分割・丸め工程へ移行するというものである。
しかし、このような従来の標準中種法によると、湯捏種を使用して作成したパン類生地の機械耐性及び機械的大量製パン上の品質の安定性は改善されるかもしれないが、70質量%の小麦粉,全量(3質量%)のイースト及びイーストフードを使用して中種を作成するため、如何せん大量の小麦粉から構成される中種の醗酵が進むため、アルコール,有機酸等の醗酵生成物の生成量が多く、焼成品は小麦粉に由来する麦芽糖の自然な甘味と香が消され、また、生地の醗酵時間が長くなるため、焼成品は引きの強い歯切れの悪い重い食感等を有するようになり、しっとりした柔らかさが失われる。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたもので、湯捏種を使用して作成した焼成パン類に独特の特徴であるしっとりした柔らかさ及び小麦粉に由来する自然な甘味と香の向上を図った焼成パン類の製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、湯捏種を用いてパン類生地を作成しても、混捏後のパン類生地が過度に柔らかくならず一定の弾力性を有し、過度の粘着性がなくて適度な性状を維持し、機械耐性を有し、また該パン類生地を焼成したパン類がオープンスプリングと容積が大きく、腰持ちが良く、そして機械的大量製パンにおける焼成パン類の品質が製品間で安定している等の品質の向上を図ったパン類の製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
このような課題を解決するための本発明のパン類の製造方法は、少なくとも全小麦粉量のうち一部の小麦粉から湯捏種を作成する湯捏種作成工程、すなわち、具体的には、これに限られないが、例えば、少なくとも全小麦粉量のうち一部の小麦粉と熱湯とを混捏するか、または少なくとも全小麦粉量のうち一部の小麦粉と水、好ましくは温水とを加温しながら混捏して湯捏種を作成する湯捏種作成工程と、少なくとも全小麦粉量のうち20質量%〜50質量%の小麦粉,全イースト量のうち一部のイースト及び水からなる原料を混捏して前種を作成する前種作成工程と、該前種を醗酵させる前種醗酵工程と、上記湯捏種と、上記醗酵後の前種と、少なくとも残量の小麦粉,残量のイースト及び水からなる原料とを混捏してパン類生地を作成するパン類生地作成工程とを備える構成としている。
本発明において、湯捏種とは、パン類生地を構成する全小麦粉量のうち一部の小麦粉が吸水して加熱または加温されてその小麦澱粉が部分的にα化した生地であり、パン類の製造に用いることができるような性質のものである。
これにより、前記従来の技術の諸課題を解決することができるようになる。すなわち、従来の技術によれば、直捏法によるパン類生地の混捏工程において湯捏種に直接小麦粉、水等を添加して混捏するものであるため、熱損傷を受けて弱体化した湯捏種の小麦グルテンが混捏後のパン類生地に直接影響を与える。すなわちパン類生地の強靭なグルテン結合を阻害すると推測される。
これに対し、本発明によれば、湯捏種と別に、あらかじめ少なくとも全小麦粉量のうち20質量%〜50質量%の小麦粉,全イースト量のうち一部のイースト及び水からなる原料を混捏して前種を作成し、醗酵させておき、パン類生地を作成する工程において、湯捏種と、醗酵後の前種と、残量の小麦粉,残量のイースト及び水からなる原料を混捏するものであるため、熱損傷を受けて弱体化した湯捏種の小麦グルテンが混捏後のパン類生地に直接影響を与えることが回避される。すなわち湯捏種は既に十分にグルテンが結合し展開し、伸展性を有する醗酵後の前種によって保護されながらパン類生地に混捏することができるのであるから、混捏後のパン類生地は比較的強さを増したグルテン結合が得られると推測される。
しかも、本発明は、従来の中種法のようにあらかじめ全小麦粉量のうち70質量%の小麦粉,全量(3質量%)のイースト及びイーストフードを混捏して中種を作成するものではないため、大量の小麦粉から構成される中種の醗酵が進むために、アルコール、有機酸等の醗酵生成物の生成量が多くなって焼成品は小麦粉に由来する自然な甘味と香が消されたり、また生地の醗酵時間が長くなって焼成品が引きの強い歯切れの悪い重い食感等を有するようになることもなく、しっとりした柔らかさが失われることもない。
従って、本発明によれば、湯捏種を使用して謂わば直捏法により製造したパン類に特徴的な、しっとりした柔らかさ及び小麦粉に由来する麦芽糖の自然な甘味と香が失われずにこれを極力維持しつつ、前記従来の技術の課題を解決することができる。
【0009】
ここで、必要に応じ、上記湯捏種作成工程で湯捏種の作成に用いる小麦粉量を、全小麦粉量の内5〜40質量%にする構成としている。この場合、上記小麦粉量を、全小麦粉量の内10〜30質量%にすることがより有効であり、全小麦粉量の内10〜20質量%にすることがより一層有効である。
湯捏種の小麦粉量が多すぎると、この湯捏種を用いて作成したパン類生地は著しく柔らかすぎて力が弱く、また粘着性が強い性状となり、さらに機械耐性に欠けるようになる。そしてこのようなパン類生地から作成した焼成パン類は容積が小さく、腰持ちが悪く潰れ易く、さらに機械的大量製パンにおける焼成パン類の品質の安定性に欠けるようになる。これに対し、湯捏種の小麦粉量が少な過ぎると、本発明の湯捏種を用いる特徴が現れなくなる。従って、湯捏種の小麦粉量は上述した量であることが望ましい。この範囲で、湯捏種の小麦粉量は、どの程度焼成パン類に本発明の湯捏種を用いる特徴を与えるかによって任意に増減することが可能である。
湯捏種を作成するときの捏上温度、すなわち捏上直後の湯捏種の内部温度は55℃〜70℃に調整することが望ましい。捏上温度が低いと、湯捏種中の麦芽糖の生成及び小麦澱粉のα化が不十分となり、このためこの湯捏種を使用して作成した焼成パン類は本来の小麦粉に由来する麦芽糖の甘みと香りや、しっとりした柔らかさと良好な歯切れと口溶けが顕著に表れないおそれがある。従って、湯捏種の捏上温度は55℃以上が望ましく、更には60℃以上がより一層望ましい。
これに対し、湯捏種の捏上温度の温度が高いと、小麦澱粉が過度に膨張し破裂するおそれが生じ、混捏後の湯捏種中の小麦グルテンの熱変性が過度に進むおそれがあり、こうなると本発明によっても上記従来の方法の課題解決効果が顕著に現れないおそれがある。従って、捏上温度は70℃以下が望ましく、更には65℃以下がより一層望ましい。
すなわち、湯捏種の捏上温度は55℃〜70℃が望ましく、更には60℃〜65℃がより一層望ましい。
【0010】
まず、湯捏種作成工程で、一部の小麦粉と熱湯とを混捏して湯捏種を作成する構成とすることができる。この場合に、湯捏種を作成するときに使用する熱湯の温度は70℃〜100℃である。熱湯の温度が低いと、混捏後の湯捏種中の麦芽糖の生成及び小麦澱粉のα化が不十分となり、このため該湯捏種を使用して作成した焼成パン類は本来の小麦粉に由来する自然な甘みと香りや、しっとりした柔らかさが顕著に現れないおそれがある。これに対し、熱湯の温度が高く、熱湯の量が多いと、混捏後の湯捏種中の小麦グルテンの熱変性が過度に進むおそれがある。
したがって、熱湯を用意するにあたり、後述するニーダー、ミキサーボール等の混捏装置の混捏室内に水を投入し、混捏室を加熱することにより熱湯とする(その後加熱を停止する)場合には、熱湯の温度は75℃〜95℃が望ましく、更には80〜90℃がより一層望ましい。
これに対し、既に加熱した熱湯を冷たい混捏装置の混捏室に投入する場合には、80℃〜100℃が望ましく、更には85℃〜95℃がより一層望ましい。
湯捏種を作成するときに使用する熱湯量は、このときに使用する小麦粉量に対し50〜200質量%が望ましく、80質量%〜150質量%がより望ましく、更には80質量%〜120質量%がより一層望ましい。
【0011】
また、本発明では、湯捏種作成工程で、少なくとも全小麦粉量のうち一部の小麦粉と水とを加温しながら混捏して湯捏種を作成する構成とすることもできる。このように、湯捏種作成工程で一部の小麦粉と水とを加温しながら混捏することにより、熱湯を使用することなく、加温条件を調整することによって湯捏種を作成することができるようになる。この水の量は下記温水の量に準じることができる。
特に、この水として冷水や常温(20℃前後)水ではなく、温水、すなわち40℃〜65℃の温水、好ましくは40℃〜60℃の温水、より好ましくは45℃〜60℃の温水、より一層好ましくは45℃〜55℃の温水を使用することが望ましい。これにより、上述した本発明の基本的な効果に加えて、従来のように熱湯を用いる場合よりも、湯捏種に十分な熱エネルギーを制御下に与えることにより小麦澱粉のα化と低分子化を促進させることができるようになる。その結果、焼成パン類の容積が増大し、クラスト及びクラムともにしっとりとした柔らかさと経時的な老化防止効果が向上し、また、クラスト及びクラムともに歯切れと口溶けが良好となり、さらには、小麦粉由来の麦芽糖の生成量が増加し、それによる甘味と香が向上するようになる。
また、常時均一に安定した湯捏種を容易に作成することができるようになり、これを用いて製造する焼成パン類の前記品質の安定性が湯捏種の不安定化により阻害されることを防止することができるようになる。
そして、温水として、45℃〜60℃の温水を用いる好ましい実施の形態の場合には、所定の温度まで早く到達してしまったり湯捏種の混捏時間が著しく長くなってしまう事態を防止することができ、より一層、湯捏種の小麦澱粉のα化と低分子化を促進させることができるようになる。その結果、焼成パン類の容積が増大し、クラスト及びクラムともにしっとりとした柔らかさと経時的な老化防止効果が向上し、また、クラスト及びクラムともに歯切れと口溶けが良好となり、さらには、小麦粉由来の麦芽糖の生成量の増加により甘味と香が向上するようになる。
【0012】
なお、温水の温度が65℃を超えると、湯捏種の捏上温度が高くなり易く、所定の捏上温度まで早く到達してしまい、湯捏種の混捏時間が短くなって湯捏種に与える熱エネルギーが小さくなってしまい、また、湯捏種の水和にも影響する。こうなると、その小麦粉のα化等が不足することになる。これに対し、温水の温度が40℃未満になると、湯捏種の混捏時間が著しく長くなり、作成された湯捏種の安定性が劣ってくる。また、混捏初期において湯捏種と加熱面との温度差が大きくなるため、湯捏種は局部的に加熱温度が大きく異なり、加温の均一性に欠け易く、不均一な湯捏種となり易い。
【0013】
更にまた、必要に応じ、上記温水の量を、小麦に対して50〜200質量%にする構成としている。好ましくは、上記温水の量を、小麦粉に対して80〜150質量%にすることがより有効である。これにより、長時間混捏することなく効率的かつ確実に湯捏種に熱エネルギーを与えて比較的短時間で小麦粉のα化と低分子化を促進させることができるようになる。
また、必要に応じ、上記小麦粉と水、好ましくは温水とを加温しながら混捏する湯捏種作成工程で、混捏時間を5〜20分にする構成としている。好ましくは上記混捏時間を8〜15分にすること、より一層好ましくは、8〜12分にすることがより有効である。これにより、効率的かつ確実に湯捏種に熱エネルギーを与えて比較的短時間で小麦澱粉のα化と低分子化を促進させることができるようになる。
【0014】
更に、必要に応じ、上記小麦粉と水、好ましくは温水とを加温しながら混捏する湯捏種作成工程で、油脂を添加して混捏する構成としている。好ましくは、上記湯捏種作成工程で、湯捏種の小麦粉に対して5〜30質量%の油脂を添加して混捏することがより有効である。これにより、湯捏種の作成工程中における湯捏種の蓄熱効果がより高まり、その小麦澱粉のα化と低分子化を一層促進させることができるようになる。また、この湯捏種を用いたパン類生地の作成工程において油脂の添加量を減少させることができるため、混捏時間を短くし、かつ短い混捏時間でもパン類生地の小麦グルテンの十分な結合と発達を達成させることができる。更に、湯捏種の粘着性を軽減し、なめらかな湯捏種を作成することができる。
湯捏種作成工程で油脂を添加する場合には、その添加量だけパン類生地作成工程で添加する油脂を減じることが望ましい。
【0015】
本発明において加温とは、本発明の湯捏種の作成に適したすべての加熱方法を含む概念であり、後述の発明の実施の形態および実施例に示す加熱方法に限定されるわけではない。
なお、上述した3通りの湯捏種作成工程は、具体的例示として挙げたものであり、本発明における湯捏種作成工程としては、上述した湯捏種を作成することができるのであれば、どのような方法でも採用することが可能である。
更にまた、湯捏種作成工程において、小麦粉及び熱湯の他、食塩、糖類、脱脂粉乳、米粉等のうちから選択した1種類または2種類以上のものを添加することができる。これにより、湯捏種及び湯捏種を使用して混捏したパン類生地を引き締めることができる。これらの原料の添加量は湯混捏の小麦粉に対してそれぞれ0.1〜5.0質量%ずつが望ましい。
【0016】
そして、必要に応じ、上記湯捏種作成工程後に、上記湯捏種を低温で長時間ねかせる熟成工程を備えた構成としている。湯捏種を低温で長時間ねかせることにより、湯捏種の温度を内部まで均一に低下させることができ、湯捏種と前種と残量の小麦粉とを混捏してパン類生地を作成するときに、パン類生地の捏上温度を適正温度(パンの種類、製法等により異なるが、通常26〜29℃である)に調整することが極めて容易となる。また、湯捏種の全体的に均一な水和を十分に達成することができ、湯捏種の成分が全体的に均質化し、さらに粘着性が軽減して比較的滑らかとなり、混捏後のパン類生地を良好な状態に維持することができる。
また、必要に応じ、上記前種作成工程において、使用するイーストの量を全小麦粉量に対して0.5質量%〜1.5質量%とし、より好ましくは1.0質量%〜1.5質量%とする構成としている。こうすることにより、すなわち、前種作成工程において全小麦粉量のうち20〜50質量%の小麦粉を使用し、且つ全イースト量のうち一部の0.5質量%〜1.5質量%のイースト、好ましくは1.0質量%〜1.5質量%のイーストを使用することにより、前種の醗酵を適度に調整して小麦グルテンの適度な熟成を促し、またアルコール、有機酸等の醗酵生成物の生成量が控えめとなり、製造するパン類生地は確実に機械耐性及び機械製造上の安定性が付与されるようになるとともに、該パン類生地から製造されるパン類は十分に小麦粉に由来する麦芽糖の自然な甘味と香を維持することができるようになる。
【0017】
そしてまた、必要に応じ、上記パン類生地作成工程において使用する残りのイーストの量を全小麦粉量に対して0.3質量%〜1.6質量%とする構成としている。
こうすることにより、パン類生地の機械製造上の安定性、特に醗酵条件の変化に対する許容性を維持しながら、パン類生地の醗酵を十分に促進することができるようになる。
更には、このようにイースト量を調整した上で、パン類生地を構成する全イースト量を1.5質量%〜2.5質量%とすることがより一層望ましい。これにより一層本発明における湯捏種および前種の特徴を生かしたパン類を製造することができるようになる。なお、パン類生地を構成する全イースト量は製造するパン類の種類毎に異なるものだが、一般的には、本発明が最も適する食パンでは約1.7質量%〜2.3質量%である。
なお、本明細書においてイーストとは生イーストのことであり、イーストの
量は生イーストとして添加した場合の量を示している。
【0018】
このようにして前種を作成した後、前種を醗酵させる。前種を一定の時間醗酵させなければ、パン類生地作成工程で前種を使用したとしても、製造されるパン類生地は機械耐性および機械製造上の安定性を欠くおそれがある。前種の醗酵は製造するパン類の種類ごとに常法の中種法の中種醗酵の温度、湿度および時間等の条件に準じて実施することができるが、27℃〜32℃の温度で、2〜6時間とすることが望ましく、3〜5時間とすることがより望ましく、3時間30分〜4時間30分とすることがより一層望ましい。
この場合、上記前種作成工程において、使用するイースト量を全小麦粉量に対して0.5質量%〜1.5質量%とし、好ましくは1.0質量%〜1.5質量%とし、かつ上記前種醗酵工程において前種の醗酵時間を2〜6時間とすることがより有効であるため望ましい。こうすることにより、一層、前種の醗酵を適度に調整し、確実にアルコール、有機酸等の醗酵生成物の生成量を控えめとし、又小麦グルテンの適度な熟成を促し、パン類生地の機械耐性及び機械製造上の安定性を十分に維持することができるようになる。
また、必要に応じ、上記前種作成工程において、イーストフード、酸化剤、酵素剤及び乳化剤その他の改良剤を添加しない構成としている。ここでいう改良剤とは、パン類生地中でイーストを活性化するか、またはイーストが活性化し易いようにパン類生地の性状を調整する作用を有する改良剤のことである。前種を作成する工程においてこのような改良剤の一切を使用しないことにより、更に一層前種の過度な醗酵を抑制し、アルコール、有機酸等の醗酵生成物の生成量を控えめとすることができるようになる。
【0019】
更に、必要に応じ、上記前種作成工程において、塩を添加する構成としている。これにより、やはり同様に、更に一層前種の過度の醗酵を制御するとともに、小麦グルテンの適度な熟成を促すことができるようになる。この場合、前種への塩の添加量は、パン類生地を構成する全小麦粉量に対して0.01質量%〜0.3質量%とすることが望ましく、0.15質量%〜0.25質量%とすることがより一層望ましい。
そして、必要に応じ、上記パン類生地作成工程において、上記湯捏種を上記醗酵後の前種で被覆してから混捏する構成としている。この被覆にあたり、醗酵後の前種から大部分または一部の空気が脱気される。これにより、小麦グルテンが熱損傷を受けて弱体化し、粘着性が著しく増した湯捏種を、小麦グルテンが十分に結合し展開し、伸展性を有する醗酵後の前種で保護しながらパン類生地を混捏することができるようになり、より一層本発明の効果の達成に有効であると言える。
【0020】
また、必要に応じて、上記パン類生地作成工程において、上記醗酵後の前種と少なくとも残量の小麦粉,残量のイースト及び水からなる原料とを混捏して中間生地を作成してから、上記湯捏種と該中間生地とを混捏してパン類生地を作成する構成としている。
これにより、パン類生地作成工程において、小麦粉、水等の残りの原料を原料のまま添加することなく、湯捏種と中間生地のみを混捏するものであるため、熱損傷を受けて弱体化した湯捏種の小麦グルテンが混捏後のパン類生地に直接影響を与えることがより一層回避される。すなわち、湯捏種は、湯捏種の小麦粉以外の全小麦粉からなり、既に十分にグルテンが結合し展開し、伸展性を有する中間生地によって保護されながらパン類生地に混捏されるのであるから、より一層混捏後のパン類生地は比較的強さを増したグルテン結合が得られると推測される。この方法は、上記の通常の前種法を採用する場合よりも、製パン適性、特に機械耐性及び機械的製造上の安定性、及び焼成後のパン類の容積、腰折れ等の品質の改善効果があるため望ましい方法である。
従って、湯捏種を多く使用するとか、小麦澱粉のα化を著しく促進した湯捏種を使用するとかして、焼成後のパン類に湯捏種の特徴をより強く出したいと希望するときには好適である。
パン類生地を作成するための中間生地と湯捏種の混捏は、生地の最適状態が得られるまで行なう。この際、油脂は、中間生地の混捏時には添加しないで、パン類生地を作成するための中間生地と湯捏種の混捏時において途中で、好ましくは小麦グルテンが完全に結合した後に添加して混捏し、パン類生地中に均一に練り込むことが望ましい。小麦グルテンが完全に結合する前に油脂を添加すると結合が阻害されるおそれがあるからである。
また、必要に応じ、上記パン類生地作成工程において、イーストフード,酸化剤,酵素剤,乳化剤,その他の改良剤のうち任意に選択した一種または二種類以上のものを使用する構成としている。これにより、前種の特徴を阻害することなく、従来の様々な生地改良、醗酵促進等の製パン効果を実現することができる。なお、パン類生地作成工程においてあらかじめ上記中間生地を作成するときには、中間生地の混捏時にこれらの改良剤を添加することが望ましい。
なお、本発明のパン類とは、食パン、菓子パン、ロールパン、フランスパンその他の焼成により製造されるパンをいうが、本発明は食パンに最も適している。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に基づいて本発明の実施の形態に係るパン類の製造方法について説明する。
先ず、本発明の第一の実施の形態について説明する。図1に示すように、この本発明の第一の実施の形態の基本的構成は、少なくとも全小麦粉量のうち一部の小麦粉から湯捏種を作成する湯捏種作成工程(1−1)と、湯捏種作成工程後に、湯捏種を低温でねかせて熟成させる熟成工程(1−2)と、少なくとも全小麦粉量のうち一部の小麦粉,全イースト量のうち一部のイースト及び水からなる原料を混捏して前種を作成する前種作成工程(1−3)と、この前種を醗酵させる前種醗酵工程(1−4)と、湯捏種,醗酵後の前種及び少なくとも残量の小麦粉,残量のイースト及び水からなる原料とを混捏してパン類生地を作成するパン類生地作成工程(1−5)と、パン類生地を醗酵するパン類生地醗酵工程(1−6)と、このパン類生地を焼成する焼成工程(1−7)とを備えてなる。
以下、各工程について詳しく説明する。
【0022】
(1−1)湯捏種作成工程
まず、少なくとも全小麦粉量のうち一部の小麦粉から湯捏種を作成する。湯捏種の作成で用いる小麦粉の量は、パン類生地を構成する全小麦粉量のうち5質量%〜40質量%である。さらには10質量%〜30質量%が望ましく、10質量%〜20質量%が一層望ましい。
この湯捏種作成工程では、上述した湯捏種を作成することができるのであれば、どのような方法でも採用することが可能である。
具体的には、例えば、少なくとも前記一部の小麦粉と熱湯とを混捏して湯捏種を作成することができる。
この場合、湯捏種を作成するときに使用する熱湯量は、このときに使用する小麦粉量に対し50質量%〜200質量%であり、より望ましくは80質量%〜150質量%が良い。また、熱湯の温度は70℃〜100℃であり、熱湯を用意するにあたり、後述するニーダー、ミキサーボール等の混捏装置の混捏室内に水を投入し、混捏室を加熱することにより熱湯とする(その後加熱を停止する)場合には、熱湯の温度は75℃〜95℃が望ましく、更には80〜90℃がより一層望ましい。
これに対し、既に加熱した熱湯を冷たい混捏装置の混捏室に投入する場合には、80℃〜100℃が望ましく、更には85℃〜95℃がより一層望ましい。
このときに、湯捏種を作成するときの捏上温度、すなわち捏上直後の湯捏種の内部温度は55℃〜70℃に調整する。
また、例えば、湯捏種作成工程において、上記熱湯に変えて水を使用し、且つ上記混捏を加温しながら行なうこと、すなわち、前記一部の小麦粉と水とを加温しながら混捏して湯捏種を作成することができる。
特に、この水として冷水や常温(20℃前後)水ではなく、温水、すなわち40℃〜65℃の温水、好ましくは40℃〜60℃の温水、より好ましくは45℃〜60℃の温水、より一層好ましくは45℃〜55℃の温水を使用することが望ましい。
湯捏種作成工程においては、小麦粉及び熱湯若しくは水の他に、食塩,砂糖,脱脂粉乳,米粉等のうちから任意に選択した1種類または2種類以上のものを添加することができるとするものである。これにより、湯捏種及び湯捏種を使用したパン類生地を引き締めることができる。これらの原料の添加量はそれぞれ0.1質量%〜5.0質量%ずつが望ましい。
【0023】
(1−2)熟成工程
次に、湯捏種を低温でねかせて熟成させる。好ましくは湯捏種を、5℃〜20℃で12〜24時間ねかせて熟成させる。例えば、15kgに分割して、平らにして樹脂シートに包み込み5〜15℃の空調で16〜20時間熟成させる。
【0024】
(1−3)前種作成工程
他方で、湯捏種以外に、少なくとも全小麦粉量のうち一部の小麦粉,全イースト量のうち一部のイースト及び水からなる原料を混捏して前種を作成する。
この工程では、小麦粉はパン類生地を構成する全小麦粉量のうち20質量%〜50質量%の小麦粉を使用する。ここで使用する小麦粉の量は、全小麦粉量のうち30質量%〜50質量%が望ましい。
また、前種を作成する工程では、全イースト量のうち一部のイーストを使用する。このイースト量は全小麦粉量に対して0.5質量%〜1.5質量%とすることが望ましく、1.0質量%〜1.5質量%とすることがより一層望ましい。
更に、前種作成工程において、イーストフード、酸化剤、酵素剤及び乳化剤その他の改良剤を添加しないことが望ましいとするものである。上記従来の技術の中種法では、一般的に、イーストフード,酸化剤及び酵素剤は中種の混捏工程で添加することが多く、また乳化剤も中種の混捏工程で添加することがあり得る。しかし、本発明では、これらの改良剤を前種を作成する工程で添加すると、前種の醗酵が進み過ぎたり、混捏後のパン類生地の醗酵条件の変化に対する許容性が小さくなったりするため、このような現象は避けることが望ましい。
【0025】
更にまた、前種作成工程において、塩を添加するようにすることが望ましい。また、前種作成工程及びパン類生地作成工程において、使用する小麦粉を強力粉とすることが望ましい。小麦粉として一部に薄力粉及び/または中力粉を使用するときには、使用量を少なめに加減したり、または高蛋白粉を使用して全体的な小麦蛋白量を補わなければ、混捏後のパン類生地は柔らか過ぎて力が弱く、該パン類生地を焼成した製品も腰持ちが悪い等の従来の技術の課題を十分に解決することができないおそれがある。さらには、湯捏種の小麦粉も強力粉とすることが望ましい。
(1−4)前種醗酵工程
このようにして前種を作成した後、前種を醗酵させる。この前種の醗酵は常法の中種法における中種醗酵条件(温度、湿度、時間)を採用して行なうことが可能であるが、27〜32℃の温度で、2〜6時間とすることが望ましく、3〜5時間とすることがより望ましく、3時間30分〜4時間30分とすることがより一層望ましい。
【0026】
(1−5)パン類生地作成工程
次に、湯捏種と、醗酵後の前種と、少なくとも残量の小麦粉,残量のイースト及び水からなる原料を混捏してパン類生地を作成する。このとき、湯捏種と、醗酵後の前種と、残量の小麦粉、残量のイースト、水等からなる原料を一緒にミキサーに導入して一度に混捏することができる。しかし、油脂を添加するときには、混捏の途中で添加することが望ましい。この残量のイースト量は全小麦粉量に対して0.3〜1.6質量%とすることが望ましい。更に、上記前種作成工程において使用するイースト量と、上記パン類生地作成工程において使用するイースト量とを合わせた全イースト量は、全小麦粉量に対して1.5質量%〜3.0質量%とすることが望ましく、1.5質量%〜2.5質量%とすることがより一層望ましい。
(1−6)パン類生地醗酵工程
このパン類生地を所要時間醗酵する。醗酵は、常法の中種法の生地醗酵条件(時間、温度、湿度)を採用することができる。ここでは、フロアタイムでの醗酵後、分割して丸めを行なう。その後、ベンチタイムをとり、ガス抜きや成型を行なってからホイロする。
(1−7)焼成工程
それから、このパン類生地を焼成する。この焼成したパン類においては、湯捏種と予め作成した前種と、残量の小麦粉,残量のイースト及び水等からなる原料を混捏することにより、湯捏種を使用したパン類に特徴的なしっとりした柔らかさ及び小麦粉に由来する麦芽糖の自然な甘味と香を維持しながら、湯捏種を使用しても混捏後のパン類生地が過度に柔らかくならず一定の弾力性を有し、過度の粘着性がなくて適度な性状を維持し、機械耐性を有し、焼成パン類はオーブンスプリングと容積が大きく、腰持ちが良く、そして機械的大量製パンにおける焼成品の品質を製品間で安定させることができるようになる。
【0027】
次に、本発明の第二の実施の形態について説明する。
図2に示すように、この本発明の第二の実施の形態の基本的構成は、少なくとも全小麦粉量のうち一部の小麦粉から湯捏種を作成する湯捏種作成工程(2−1)と、湯捏種作成工程後に、湯捏種を低温でねかせて熟成させる熟成工程(2−2)と、少なくとも全小麦粉量のうち一部の小麦粉,全イースト量のうち一部のイースト及び水からなる原料を混捏して前種を作成する前種作成工程(2−3)と、この前種を醗酵させる前種醗酵工程(2−4)と、醗酵後の前種と、少なくとも残量の小麦粉,残量のイースト及び水からなる原料を混捏して中間生地を作成する中間生地作成工程(2−5)と、湯捏種と中間生地とを混捏してパン類生地を作成するパン類生地作成工程(2−6)と、パン類生地を醗酵するパン類生地醗酵工程(2−7)と、このパン類生地を焼成する焼成工程(2−8)とを備えてなる。
【0028】
詳しくは、先ず、湯捏種作成工程(2−1),熟成工程(2−2),前種作成工程(2−3),前種醗酵工程(2−4)は、上述した第一の実施の形態と同様である。
(2−5)中間生地作成工程
醗酵後の前種と、少なくとも残量の小麦粉,残量のイースト及び水からなる原料を混捏して中間生地を作成する。この残量のイースト量は全小麦粉量に対して0.3〜1.6質量%とすることが望ましい。更に、上記前種作成工程において使用するイースト量と、上記パン類生地作成工程において使用するイースト量とを合わせた全イースト量は、全小麦粉量に対して1.5質量%〜3.0質量%とすることが望ましく、1.5質量%〜2.5質量%とすることがより一層望ましい。
(2−6)パン類生地作成工程
次に、湯捏種と中間生地とを混捏してパン類生地を作成する。
(2−7)パン類生地醗酵工程
このパン類生地を所要時間醗酵する。醗酵は、常法の中種法の生地醗酵条件(時間、温度、湿度)を採用することができる。ここでは、フロアタイムでの醗酵後、分割して丸めを行なう。その後、ベンチタイムをとり、ガス抜きや成型を行なってからホイロする。
【0029】
(2−8)焼成工程
それから、このパン類生地を焼成する。この焼成したパン類においては、湯捏種と予め作成した中間生地とを混捏することにより、湯捏種を使用したパン類に特徴的なしっとりした柔らかさ及び小麦粉に由来する麦芽糖の自然な甘味と香を維持しながら、上記第一の実施の形態におけるパン類生地作成工程を採用する場合よりも、湯捏種を使用しても混捏後のパン類生地が過度に柔らかくならず一定の弾力性を有し、過度の粘着性がなくて適度な性状を維持し、機械耐性を有し、焼成パン類はオーブンスプリングと容積が大きく、腰持ちが良く、そして機械的大量製パンにおける焼成品の品質を製品間で安定させることができるようになる。
そして、この方法は、特に湯捏種を作成する工程で使用する小麦粉が多く、これに対し、前種及び/またはパン類生地を作成する工程で使用する小麦粉が相対的に少ない(すなわち、湯捏種を多く使用する)とか、小麦澱粉のα化を著しく促進した湯捏種を使用するとかして、焼成後のパン類に湯捏種の特徴をより強く出したいと希望するときには極めて有効である。
【0030】
また、本発明の第三の実施の形態に係るパン類の製造方法を示す。
これは、上述した第一の実施の形態に係るパン類の製造方法における(1−5)パン類生地作成工程において、湯捏種と醗酵後の前種とを別々にミキサーへ投入して混捏するのではなく、あらかじめ湯捏種を醗酵後の前種で被覆してから、ミキサーヘ投入し、混捏するものである。この被覆にあたり、醗酵後の前種から大部分または一部の空気が脱気される。これにより、小麦グルテンが熱損傷を受けて弱体化し、粘着性が著しく増した湯捏種を、小麦グルテンが十分に結合し展開し、伸展性を有する醗酵後の前種で保護しながらパン類生地に混捏することができるようになり、この方法もより一層本発明の効果の達成に有効であると言える。
【0031】
【実施例】
次に、実施例について説明する。
[実施例1]
図3〜5には、実施例1の各工程の条件を示す。
まず、全小麦粉量のうち一部の小麦粉と熱湯とをニーダーで混捏して湯捏種を作成する。図3(a)、図3(b)にそれぞれ湯捏種の配合、製造条件を示す。一方、湯捏種とは別に、 全小麦粉量のうち一部の小麦粉、全イースト量のうち一部のイースト、塩、水からなる原料を混捏して前種を作成した。図4(a)に前種作成の原料の配合比を示す。
そして、図4(b)に示す製造条件で前種を作成するとともに、その後、前種を醗酵させた。
湯捏種と,醗酵後の前種と、残量の小麦粉、残量のイースト,水等からなる原料を混捏してパン類生地を作成した。図5(a)にパン類生地原料の配合比(湯混捏としては実施例1のものを使用する)を示す。また、図5(b)に製造条件を示す。
図5(b)に示す条件で、パン類生地をフロアタイムでの醗酵後、分割して丸めを行ない、その後、ベンチタイムをとり、ガス抜きや整形を行なってからホイロをとった。ホイロ後、パン類生地を焼成して食パンを作成した。
【0032】
この実施例1によれば、湯捏種を使用したパン類に特徴的なしっとりした柔らかさ及び小麦粉に由来する麦芽糖の自然な甘味と香を維持しながら、湯捏種を使用しても混捏後のパン類生地が過度に柔らかくならず一定の弾力性を有し、過度の粘着性がなくて適度な性状を維持し、機械耐性を有し、焼成パン類はオーブンスプリングと容積が大きく、腰持ちが良く、そして機械的大量製パンにおける焼成品の品質を製品間で安定させることができるようになる。
しかも、従来の中種法のようにあらかじめ全小麦粉量のうち70質量%の小麦粉、全量イースト及びイーストフードを混捏して中種を作成するものではないため、中種法のように大量の小麦粉から構成される中種の醗酵が進むことから、アルコール、有機酸等の醗酵生成物の生産量が多くなって焼成品は小麦粉に由来する麦芽糖の甘味と香が消されることもない。
従って、湯捏種を使用して直捏法により製造したパン類に特徴的な、小麦粉に由来する麦芽糖の甘味と香が失われずにこれを極力維持しつつ、前記従来の技術の課題を解決する。
【0033】
[実施例2]
実施例2は、実施例1の製造方法において、湯捏種作成工程のみを変更して食パンを製造したものである。湯捏種は、全小麦粉量のうち一部の小麦粉、砂糖、塩、油脂および常温の水をニーダーで加温しながら混捏して作成する。
図6には、実施例2の湯捏種の配合と製造条件を示す。但し、湯捏種の水の温度を20℃、ニーダの蒸気圧を約0.05Mpaに設定し、混捏時間を24回転/分で20分間とした。
この実施例2によっても、湯捏種を使用したパン類に特徴的なしっとりした柔らかさ及び小麦粉に由来する麦芽糖の自然な甘味と香を維持しながら、湯捏種を使用しても混捏後のパン類生地が過度に柔らかくならず一定の弾力性を有し、過度の粘着性がなくて適度な性状を維持し、機械耐性を有し、焼成パン類はオーブンスプリングと容積が大きく、腰持ちが良く、そして機械的大量製パンにおける焼成品の品質を製品間で安定させることができるようになる。
【0034】
[実施例3]
実施例3は、上記実施例2のパン類の製造方法において、湯捏種作成工程の一部のみを変更して食パンを製造したものである。すなわち、湯捏種作成工程において使用する水の温度を常温の水から温水へ変更する。
図7には、実施例3の湯捏種の配合と製造条件を示す。但し、湯捏種の温水の温度を50℃、混捏時間を10分間とした。すなわち、湯捏種作成は、以下にような工程による。
1)ニーダに50℃の温水を入れる。
2)油脂の一部、小麦粉、塩、砂糖(上白糖)の順にニーダに入れる。ここでは、油脂の配合比が湯捏種の小麦粉に対して20質量%である。
3)蒸気を通さないで、1分間粗混ぜをして均一な状態にする。
4)蒸気圧を約0.05MPa 程度で加温しながら24回転/分で約10分間混捏を行ない、生地温度62〜63℃に捏ね上げる。混捏時、糊化が進んでくると、生地がまとまり出し、生地の色が若干黄色がかってくるので捏上の判断基準とする。
これにより湯捏種が作成される。
そして、この湯捏種を熟成工程で熟成する。
湯捏種は、15Kgに分割して、平らにして樹脂シートに包み込み、あら熱を除去し、12〜13℃の空調で17〜18時間熟成させる。
一方、湯捏種と別に、 全小麦粉量のうち一部の小麦粉、全イースト量のうち一部のイースト、塩、水からなる原料を混捏して実施例1および2と同様に前種を作成した。上記の図4(a)に前種作成の原料の配合比を示す。
そして、上記の図4(b)に示す条件で前種を作成するとともに、その後、前種を醗酵させた。
湯捏種と、醗酵後の前種と、残量の小麦粉、残量のイースト、水等からなる原料を混捏して実施例1および2と同様にパン類生地を作成した。上記の図5(a)にパン類生地原料の配合比(湯捏種としては実施例3のものを使用する)を示す。また、上記の図5(b)に製造条件を示す。
図5(b)に示す条件で、パン類生地をフロアタイムでの醗酵後、分割して丸めを行ない、その後、ベンチタイムをとり、ガス抜きや整形を行なってからホイロをとった。ホイロ後、パン類生地を焼成して食パンを作成した。
【0035】
この実施例3によると、湯捏種と、予め作成し醗酵後の前種と、残量の小麦粉、残量のイースト及び水等からなる原料を混捏することにより、湯捏種を使用したパン類に特徴的なしっとりした柔らかさ及び小麦粉に由来する麦芽糖の自然な甘みと香を十分に維持しながら、湯捏種を使用しても混捏後のパン類生地が過度に柔らかくならず一定の弾力性を有し、過度の粘着性がなくて適度な性状を維持し、機械耐性を有し、焼成パン類はオープンスプリングと容積が大きく、腰持ちが良く、そして機械的多量製パンにおける焼成品の品質を製品間で安定させることができる。
しかも、従来の中種法のようにあらかじめ全小麦粉量のうち70質量%の小麦粉、全量イースト及びイーストフードを混捏して中種を作成するものではないため、中種法のように大量の小麦粉から構成される中種の醗酵が進むことから、アルコール、有機酸等の醗酵生成物の生成量が多くなって焼成品は小麦粉に由来する麦芽糖の甘味と香が消されることもない。
この焼成したパン類においては、湯捏種作成工程において熱湯を用いる場合(実施例1)や、常温の水を用いて加温しながら混捏する場合(実施例2)よりも、湯捏種の小麦澱粉のα化と低分子化を促進させることができるようになるため、焼成パン類の容積が増大し、クラスト及びクラムともにしっとりとした柔らかさと経時的な老化防止効果が向上し、また、クラスト及びクラムともに歯切れと口溶けが良好となり、さらには、小麦粉由来の麦芽糖の生成量が増加し、これによる甘味と香が向上するようになる。
また、常時均一に安定した湯捏種を容易に作成することができるようになり、これを用いて製造する焼成パン類の前記品質の安定性が湯捏種の不安定化により阻害されることを防止することができるようになる。
従って、湯捏種を使用して直捏法により製造したパン類に特徴的な、小麦粉に由来する麦芽糖の甘味と香が失われずにこれを極力維持しつつ、前記従来の技術の課題を解決する効果がより一層顕著である。
【0036】
【実験例】
[比較例1]
湯捏種作成の条件は上記実施例1と同様である(図3参照)。図8には該湯捏種を用いるパン類生地の原料の配合条件、製造条件を示す。
図8に示すように、比較例1は、前記、従来の技術の直捏法と同様に、パン類生地作成工程で湯捏種に直接小麦粉等のパン類生地を構成する残りの原料を添加して混捏する方法により山型食パンを製造した。
【0037】
[比較例2]
湯捏種作成の条件は上記実施例1と同様である(図3参照)。
湯捏種と別に、全小麦粉量のうち一部の小麦粉、全イースト、イーストフード、水等からなる原料を混捏して中種を作成する。図9(a)に中種作成の原料の配合比を示す。
そして図9(b)に示す条件で中種を作成するとともに、その後、中種を醗酵させた。
湯捏種と、醗酵後の中種と、残量の小麦粉、水等からなる原料を混捏してパン類生地を作成した。図10(a)にパン類生地原料の配合比を示す。また、図10(b)に製造条件を示す。
図10(b)の条件で、パン類生地をフロアタイムでの醗酵後, 分割して丸めを行ない、その後、ベンチタイムをとり、ガス抜きや整形を行なってからホイロをとった。ホイロ後、パン類生地を焼成して山型食パンを作成した。
【0038】
上記実施例1、比較例1,2について、ホイロ時間、整形時生地状態、容積・比容積、香、風味、食感、腰持ち、外観・内相、生地の機械的大量生産上の安定性の各比較項目について比較試験を行なった。
本実験例では、実施例1ならびに比較例1および2ともに、機械的大量生産方式による機械的分割(大型ホッパー付きディバイダー使用)のため、1バッチの大量の混捏生地の分割の開始から終了までに20〜30分間を要する。これはパン類生地作成工程後のパン類生地醗酵工程におけるフロアータイムの時間をそれぞれ延長することに等しい。
【0039】
各結果の評価基準について説明する。
(1)ホイロ時間
適正なホイロまでの時間が分割開始からの時間経過によりどの程度変わるかを見た。
極めて良好(◎)は、適性なホイロまでの時間が分割開始からの時間経過により変わらない(標準の50分間を維持している)。
不良(×)は、適正なホイロまでの時間が分割開始からの時間経過により数分間ズレる。
【0040】
(2)整形時生地状態
整形時の生地の伸展性、弾力性,粘着性、表面の滑らかさ等について評価した。
極めて良好(◎)は、伸展性、弾力性が十分であり、粘着性がなく、表面が滑らかである。不良(×)は、著しく伸展性、弾力性を欠き、柔らか過ぎて、粘着性が強く、表面が切れたり、ザラザラしている。
(3)容積・比容積
極めて良好(◎)は、分割開始からの時間経過にかかわらず安定しており、平均して大きい。
不良(×)は、分割開始からの時間経過により著しく大小異なり、平均して小さい。
(4)香・風味
極めて良好(◎)は、小麦粉由来の麦芽糖のほんのり甘い香・風味を顕著に感じる。アルコール・酢酸臭がほとんどない。
不良(×)は、アルコール臭・酢酸臭が強い。小麦粉由来の麦芽糖のほんのり甘い香・風味を感じない。
(5)食感
極めて良好(◎)は、クラスト、クラムともに引きがなく、歯切れが良く、軽い。また、著じるしくしっとりとした柔らかさがある。
不良(×)は、クラスト、クラムともに引きが強く、歯切れが悪く、重い。また、しっとりとした柔らかさを欠いている。
【0041】
(6)腰持ち
焼成後のパンの潰れにくさ、弾力性、形状保持性について評価した。
極めて良好(◎)は、焼成後のパンが弾力性があって潰れにくく、形状保持性に優れている。
不良(×)は一般に、焼成後のパンが弾力性を欠いて腰折れや潰れ易く、形状保持性に劣る。
(7)外観
焼成後のパンの外観・形状および内相について評価した。
極めて良好(◎)は、焼成後のパンの外観・形状が均整がとれていて形も良好である。内相はきめが全体的に均等に形成されていて目詰まりもない。
不良(×)は、外観・形状が均整を欠き、また形も悪い。内相はきめが均等に形成されていなかったり、目詰まりがある。
(8)機械的大量生産上の安定性
極めて良好(◎)は、上記の各比較項目の結果が分割開始からの時間経過の有無にかかわらずほぼ一定して良好以上である。
不良(×)は、上記の各比較項目の結果が分割開始からの時間経過により大きく異なる。
なお、上記(1)〜(8)において、〇は良好であり、△はやや不良であることを意味する。
【0042】
その結果を図11に示す。これによれば、実施例1は、混捏後のパン類生地の分割開始から終了までの時間経過にもかかわらず、ホイロ時間が安定している。焼成後のパンの容積・比容積ともに安定して大きい。香、風味も、アルコール類や酢酸臭がなくて、小麦粉由来の麦芽糖による自然でほんのりしたまろやかな甘味が顕著に感じられる。食感も、クラスト、クラムともにしっとり柔らかで、また引きがなく、歯切れが良く、軽く、くちゃくちゃしたところがない。
焼成後のパンの腰持ちも安定して良好である。整形時生地状態は、伸展性と弾力性があり、粘着性はなくて良好である。機械的大量生産上の安定性も良好であり、上記各比較項目の良好な結果が混捏後のパン類生地分割開始からの時間的ズレの有無にかかわらず常に一定している。
これに対し、比較例1は、ホイロ時間が分割開始時から終了時までのどの時点の生地かによって大きく変化する(約3〜4分間のホイロ時間のずれが生じる)。このことから、一定時間の経過により次工程へ自動的に移行する機械的大量生産方式における実施は困難であることが明らかである。容積・比容積も同様に一定しないで不安定であり、また一般に小さい。したがって機械的大量生産上、生地の安定性に欠け、ひいては焼成製品の品質の安定性に欠ける。また、整形時の生地状態が伸展性と弾力性がなく、柔らか過ぎ、粘着性が強くて切れ易く、生地の機械耐性も不良である。外観は形が悪く均整を欠いており、内相も焼成製品の下側に膨張不足による底溜り(目詰まり)がある。腰持ちも悪く、腰折れし易い。
また、比較例2は、アルコール類や酢酸臭があり、小麦粉由来の麦芽糖による自然でほんのりしたまろやかな甘味があまり感じられず、風味も同様である。また、食感は、クラスト、クラムともに引きがあり、歯切れもやや悪く、重いし、しっとりとした柔らかさも少ない。
【0043】
そして、実施例1、比較例2に準じて食パン(角型)を製造し、クラム中の糖量、クラム中の醗酵生成成分、クラム応力、クラスト破断荷重の各点について試験した。
結果を図12に示す。また、測定方法を図13に示す。
この結果から、焼成後の食パンのクラム中の麦芽糖含有量については、実施例1は、比較例2よりも1質量%を超えて多く含有していることがわかる(【図12(a)】参照)。比較例2では、標準中種法であり、中種醗酵により非常に活発化したイーストにより、パン類生地醗酵工程においてパン類生地中の麦芽糖が資化されていると推測される。
また、焼成後の食パンのクラム中の醗酵生成物含有量については、実施例1は、比較例2よりもこれらの醗酵生成物によりエタノールおよび酢酸ともに少なく、食パンは小麦粉に由来する麦芽糖の自然な甘味と香が消されにくいことがわかる(【図12(b)】参照)。
さらに、焼成後の食パンのクラムの応力についてみると、実施例1は、比較例2よりも、D+1、D+3およびD+4(それぞれ製造日=Dから数えて1日、3日、4日経過した日)のいずれにおいても測定値が小さく、クラムが柔らかいことがわかる(【図12(c)】参照)。
さらに、食パンのクラストの破断荷重についてみると、実施例1は、比較例2よりも、D+3およびD+4(それぞれ製造日=Dから数えて3日および4日経過した日)のいずれにおいても測定値が小さく、クラストは引きが弱く、歯切れの良い軽い食感であることがわかる(【図12(d)】参照)。
【0044】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の湯捏種を用いてパン類生地を作成するパン類の製造方法によれば、前種作成工程で作成し、前種醗酵工程で醗酵させた前種を用い、パン類生地作成工程で湯捏種と、予め作成し醗酵後の前種と、残量の小麦粉,残量のイースト及び水等からなる原料とを混捏するので、湯捏種を使用したパン類に特徴的なしっとりした柔らかさ及び小麦粉に由来する麦芽糖の自然な甘味と香を維持しながら、湯捏種を使用しても混捏後のパン類生地が過度に柔らかくならず一定の弾力性を有し、過度の粘着性がなくて適度な性状を維持し、機械耐性を有し、焼成パン類はオーブンスプリングと容積が大きく、腰持ちが良く、そして機械的大量製パンにおける焼成品の品質を製品間で安定させることができるようになる。
【0045】
また、湯捏種作成工程で、少なくとも全小麦粉量のうち一部の小麦粉と水とを加温しながら混捏して湯捏種を作成する構成とした場合には、湯捏種作成工程で一部の小麦粉と水とを加温しながら混捏することにより、熱湯を使用することなく、加温条件を調整することによって湯捏種を作成することができるようになる。
特に、この水として冷水や常温(20℃前後)水ではなく、温水すなわち40℃〜65℃の温水を用いた場合には、熱湯を用いる場合よりも、湯捏種に十分な熱エネルギーを制御下に与えることにより小麦澱粉のα化と低分子化を促進させることができるようになる。その結果、焼成パン類の容積が増大し、クラスト及びクラムともにしっとりとした柔らかさと経時的な老化防止効果が向上し、また、クラスト及びクラムともに歯切れと口溶けが良好となり、さらには、小麦粉由来の麦芽糖の生成量が増加し、それによる甘味と香が向上するようになる。
また、常時均一に安定した湯捏種を容易に作成することができるようになり、これを用いて製造する焼成パン類の前記品質の安定性が混捏種の不安定化により阻害されることを防止することができるようになる。
【0046】
更に、湯捏種を低温で長時間ねかせる熟成工程を備えた場合には、湯捏種の温度を内部まで均一に低下させることができ、湯捏種と前種と残量の小麦粉等の残りの原料とを混捏してパン類生地を作成するときに、パン類生地の捏上温度を適正温度に調整することが極めて容易となる。また、湯捏種の全体的に均一な水和を十分に達成することができ、湯捏種の成分が全体的に均質化し、さらに粘着性が軽減して比較的滑らかとなり、混捏後のパン類生地を良好な状態に維持することができる。
【0047】
更にまた、前種作成工程において、使用するイーストの量を0.5質量%〜1.5質量%とした場合には、製造するパン類生地には機械耐性及び機械製造上の安定性が付与されるようになるとともに、該パン類生地から製造されるパン類は十分に小麦粉に由来する麦芽糖の自然な甘味と香を維持することができるようになる。
また、パン類生地作成工程において使用する残りのイーストの量を0.3質量%〜1.6質量%とした場合には、製造するパン類生地は確実に機械耐性及び機械製造上の安定性が付与されるようになるとともに、該パン類生地から製造されるパン類は十分に小麦粉に由来する自然な甘味と香を維持することができるようになる。また、こうすることにより、パン類生地の機械製造上の安定性、特に醗酵条件の変化に対する許容性を維持しながら、パン類生地の醗酵を十分に促進することができるようになる。
特に、前種作成工程において使用するイースト量とパン類生地作成工程において使用するイースト量とを合わせた全イースト量を全小麦粉量に対して1.5質量%0〜2.5質量%にした場合には、より一層、前種と湯捏種の特徴を生かしたパン類を製造することができるようになる。すなわち製造するパン類生地は確実に機械耐性及び機械製造上の安定性が附与されるようになるとともに、該パン類生地から製造されるパン類は十分に小麦粉に由来する麦芽糖の自然な甘味と香を維持することができるようになる。
【0048】
また、パン類生地作成工程において、湯捏種を醗酵後の前種で被覆してから混捏すれば、被覆の際に醗酵後の前種から大部分または一部の空気が脱気されることにより、小麦グルテンが熱損傷を受けて弱体化し、粘着性が著しく増した湯捏種を小麦グルテンが十分に結合し展開し、伸展性を有する醗酵後の前種で保護しながらパン類生地を混捏することができるようになり、より一層、製造したパン類に特徴的な、しっとりした柔らかさともちもちさ、及び小麦粉に由来する自然な甘味と香が失われずにこれを極力維持したパン類とすることができる。
更に、醗酵後の前種と少なくとも残量の小麦粉,残量のイースト及び水からなる原料とを混捏して中間生地を作成し、パン類生地作成工程で湯捏種と予め作成した中間生地とを混捏してパン類生地を作成した場合には、より一層混捏後のパン類生地が過度に柔らかくならず一定の弾力性を有し、過度の粘着性がなくて適度な性状を維持し、機械耐性を有し、焼成パン類はオーブンスプリングと容積が大きく、腰持ちが良く、そして機械的大量製パンにおける焼成品の品質を製品間で安定させることができるようになる。そして、この方法は、特に湯捏種を作成する工程で使用する小麦粉が多く、これに対し前種及び/またはパン類生地を作成する工程で使用する小麦粉が相対的に少ないときには極めて有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一の実施の形態に係るパン類の製造方法を示す工程図である。
【図2】本発明の第二の実施の形態に係るパン類の製造方法を示す工程図である。
【図3】本発明の実施例1の湯捏種の条件を示す表図である。
【図4】本発明の実施例1〜3の前種作成の条件を示す表図である。
【図5】本発明の実施例1〜3のパン類生地作成の条件を示す表図である。
【図6】本発明の実施例2の湯捏種作成の条件を示す表図である。
【図7】本発明の実施例3の湯捏種作成の条件を示す表図である。
【図8】比較例1のパン類生地作成の条件を示す表図である。
【図9】比較例2の中種作成の条件を示す表図である。
【図10】比較例2のパン類生地作成の条件を示す表図である。
【図11】本発明の実施例1と比較例1・2の各パン類生地の機械耐性等及び製造されたパン類についての食感等の試験結果を示す表図である。
【図12】本発明の実施例1と比較例2に準じて角型食パンを製造し、これらのクラム中の糖量等について行った比較試験結果を示す表図である。
【図13】本発明の実施例1と比較例2に準じて角型食パンを製造して行ったクラム中の糖量等についての比較試験の測定方法を示す表図である。

Claims (8)

  1. 少なくとも全小麦粉量のうち一部の小麦粉(強力粉)から湯捏種を作成する湯捏種作成工程と、
    少なくとも全小麦粉量のうち20質量%〜50質量%の小麦粉(強力粉)
    全イースト量のうち一部の0.5質量%〜1.5質量%のイースト、
    0.01質量%〜0.3質量%の塩及び水を混捏して、
    イーストフード、酸化剤、酵素剤、乳化剤、その他の改良剤の一切を使用しないで、前種を作成する前種作成工程と、
    該前種を27℃〜32℃の温度で、3時間〜5時間醗酵させる前種醗酵工程と、
    上記湯捏種と、上記醗酵後の前種と、少なくとも残量の小麦粉(強力粉)、残量のイースト及び水からなる原料とを混捏してパン類生地を作成するパン類生地作成工程とを備える
    ことを特徴とする食パン類の製造方法。
  2. 少なくとも全小麦粉量のうち一部の小麦粉(強力粉)と熱湯とを混捏して湯捏種を作成する湯捏種作成工程と、
    少なくとも全小麦粉量のうち20質量%〜50質量%の小麦粉(強力粉)
    全イースト量のうち一部の0.5質量%〜1.5質量%のイースト、
    0.01質量%〜0.3質量%の塩及び水を混捏して、
    イーストフード、酸化剤、酵素剤、乳化剤、その他の改良剤の一切を使用しないで、前種を作成する前種作成工程と、
    該前種を27℃〜32℃の温度で、3時間〜5時間醗酵させる前種醗酵工程と、
    上記湯捏種と、上記醗酵後の前種と、少なくとも残量の小麦粉(強力粉)、残量のイースト及び水からなる原料とを混捏してパン類生地を作成するパン類生地作成工程とを備える
    ことを特徴とする食パン類の製造方法。
  3. 少なくとも全小麦粉量のうち一部の小麦粉(強力粉)と水または温水とを加温しながら混捏して湯捏種を作成する湯捏種作成工程と、
    少なくとも全小麦粉量のうち20質量%〜50質量%の小麦粉(強力粉)
    全イースト量のうち一部の0.5質量%〜1.5質量%のイースト、
    0.01質量%〜0.3質量%の塩及び水を混捏して、
    イーストフード、酸化剤、酵素剤、乳化剤、その他の改良剤の一切を使用しないで、前種を作成する前種作成工程と、
    該前種を27℃〜32℃の温度で、3時間〜5時間醗酵させる前種醗酵工程と、
    上記湯捏種と、上記醗酵後の前種と、少なくとも残量の小麦粉(強力粉)、残量のイースト及び水からなる原料とを混捏してパン類生地を作成するパン類生地作成工程とを備える
    ことを特徴とする食パン類の製造方法。
  4. 上記パン類生地作成工程において使用する残りのイーストの量を全小麦粉量に対して0.3質量%〜1.6質量%とすることを特徴とする請求項1,2または3記載の食パン類の製造方法。
  5. 上記前種作成工程において使用するイースト量と上記パン類生地作成工程において使用するイースト量とを合わせた全イースト量を全小麦粉量に対して1.5質量%〜2.5質量%とすることを特徴とする請求項1,2,3または4記載の食パン類の製造方法。
  6. 上記パン類生地作成工程において、上記湯捏種を上記醗酵後の前種で被覆してから混捏することを特徴とする請求項1,2,3,4または5記載の食パン類の製造方法。
  7. 上記醗酵後の前種と少なくとも残量の小麦粉,残量のイースト及び水からなる原料とを混捏して中間生地を作成してから、上記パン類生地作成工程において、上記湯捏種と該中間生地とを混捏してパン類生地を作成することを特徴とする請求項1,2,3,4,または5記載の食パン類の製造方法。
  8. 上記湯捏種を低温で長時間ねかせる熟成工程を備えたことを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6または7記載の食パン類の製造方法。
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