JP4158090B2 - パン類の製造方法 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、全小麦粉量のうち一部の小麦粉を用いて混捏して湯捏種を作成し、この湯捏種を用いて直捏法(ストレート法)によりパン類生地を作成してパン類を製造するパン類の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、小麦粉及び熱湯を混捏して湯捏種を作成し、必要に応じて該混捏後の湯捏種のあら熱を除去した後、該湯捏種と少なくとも小麦粉,イースト,食塩,糖類及び水からなる原料を混捏してパン類生地を作成して醗酵及び焼成をすることにより、しっとりした柔らかさを有し、また小麦粉に由来する自然な甘味と香を有するパン類を製造する方法が知られている。
従来、この種の方法としては、例えば、特開昭59−156236号公報及び特開2000−262205号公報等に掲載された技術が知られている。
この方法は、例えば、パン類生地を構成する全小麦粉量のうち約5質量%〜50質量%の小麦粉と所定量の熱湯を混捏して湯捏種を作成し、常法の直捏法により湯捏種と残りの小麦粉,イースト,イーストフード,食塩,糖類,脱脂粉乳,油脂及びその他の残りのパン類生地を構成する原料を原料の状態で混捏してパン類生地を作成し、醗酵及び焼成することによりパン類生地を製造するというものである。
そして、湯捏種は小麦粉を熱湯で熱処理していることから、小麦澱粉が一部α化していることから保水力が向上して、このため湯捏種を使用して作成したパン類は上述した独特の特徴を有するものとなる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、この従来の方法は、以下のような重大な課題を有するものであった。すなわち、湯捏種は小麦粉を熱湯で熱処理しているため、パン類の製造に必須の小麦グルテンは熱損傷を受けることになる。そして、このように熱損傷を受けた小麦グルテンからなる湯捏種を使用して前記常法の直捏法により混捏したパン類生地は、柔らか過ぎて力が弱く、また粘着性が強い性状となり、更に機械耐性に劣るものであり、該パン類生地から作成した焼成パン類は、オーブンスプリングと容積が小さく、腰持ちが悪く、また機械的大量製パンにおける焼成品の品質の安定性に劣るものであった。
【0004】
このような従来の方法の諸課題の内の一部ではあるが、パン類生地が、柔らか過ぎて力が弱く、該パン類生地を焼成したパン類の腰持ちが悪い点を解決するために、従来においては、上記の従来の方法と同様にパン類生地を構成する全小麦粉量のうち約10質量%〜30質量%の小麦粉と所定量の熱湯を混捏して湯捏種を作成してから、この湯捏種を低温で長時間保存してねかせ、この後やはり上記と同様に、保存後の湯捏種と残りの小麦粉,イースト,イーストフード,食塩,糖類,脱脂粉乳,油脂,その他の残りのパン類生地を構成する原料を原料そのままの状態で混捏してパン類生地を作成し、醗酵及び焼成をすることによりパン類を製造するという方法が提案されている(例えば、特開2000−262205号公報参照)。
しかしながら、この技術によってもなお常法の直捏法により混捏後のパン類生地が柔らか過ぎて力が弱いため焼成パン類が潰れ易いという課題は十分に解決されず、また上記その他の従来の方法の諸課題は全く解決されず、従ってこれらの従来の方法・技術による焼成パン類は湯捏種を使用して作成した焼成パン類に上記の独特の特徴を十分に発揮させることができないという問題があった。
【0005】
以上のことから、従来の問題点をまとめると、
1.湯捏種は小麦グルテンが熱損傷を受けて弱くなっていることから、従来技術によると、この影響が直接大きく混捏後のパン類生地に現れると推測され、混捏直後のパン類生地の性状は一見良好であるかのごとくみえるが、実際には混捏後のパン類生地の小麦グルテンが弱く形成され、また混捏時のパン類生地の水切れが悪いため、パン類生地は過度に柔らかく、弱い性状となる。
2.その結果、パン類生地は、混捏後の分割、整形等の工程でべたつく(粘着性がある)、力がない(腰持ちが悪い等)、切れ易い等の性状となる。
3.また、パン類生地は、機械的製パンにおける機械適性・耐性に欠ける。すなわち、例えば、自動M字整形のときにパン類生地の両端が跳ねたりする。
4.パン類生地の焼成品は、同一の醗酵・焼成条件のとき、オーブンスプリングが小さいため、容積及び比容積が小さくなる傾向がある。また外観は焼色がやや濃く、内相は底溜まり(パンの下側の膨張が不足するため、下側の気胞膜が詰まったような状態となる現象)が生じ、さらに食感もややくちゃつく傾向がある。
5.さらに、従来技術によるパン類生地は機械的大量製パンにおける安定性に大きく欠けるため、パン類生地の焼成品の品質を安定化・均一化するのが極めて困難である。
すなわち、最も大きな影響があるのは、パン類生地の混捏後の分割工程では、1混捏バッチ(200〜300Kg)の分割開始から終了まで約20分間位の時間的ズレが生じることである。これはあたかも混捏後の第一醗酵の時間がそれだけズレることに等しい。この醗酵時間の差がその後の工程におけるパン類生地の性状ならびにパン類生地の焼成品の容積,比容積,外観,内相及び食感等の品質の安定化・均一化に大きく影響する。
【0006】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたもので、湯捏種を用いて直捏法によりパン類生地を作成しても、混捏後のパン類生地が過度に柔らかくならず一定の弾力性を有し、過度の粘着性がなくて適度な性状を維持し、機械耐性を有し、また該パン類生地を焼成したパン類がオーブンスプリングと容積が大きく、腰持ちが良く、そして機械的大量製パンにおける焼成パン類の品質が製品間で安定している等の品質の向上を図ったパン類の製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
このような課題を解決するための本発明のパン類の製造方法は、少なくとも全小麦粉量のうち一部の小麦粉を用いて湯捏種を作成する湯捏種作成工程、すなわち、具体的には、これに限定されないが、例えば、少なくとも全小麦粉量のうち一部の小麦粉と熱湯とを用いて混捏するとか、または少なくとも全小麦粉量のうち一部の小麦粉と水、好ましくは温水とを加温しながら混捏するとかして湯捏種を作成する湯捏種作成工程と、少なくとも上記全小麦粉量の残りの小麦粉,イースト,食塩及び水からなるパン類生地を構成する原料を予め混捏して中間生地を作成する中間生地作成工程と、上記湯捏種と上記中間生地とを加え混捏してパン類生地を作成するパン類生地作成工程とを備える構成としている。
これにより、上記従来の技術の諸課題が解決されるようになる。すなわち、従来の方法・技術によれば、パン類生地の混捏工程において湯捏種に直接小麦粉等を添加して混捏するものであるため、熱損傷を受けて弱体化した湯捏種のグルテンが混捏後のパン類生地に直接影響を与える。すなわち、パン類生地の強靭なグルテン結合を阻害すると推測される。これに対し、本発明によれば、パン類生地の混捏工程において湯捏種以外のパン類生地を構成する小麦粉等の原料をあらかじめ混捏して中間生地を作成し、湯捏種と該中間生地を混捏するものであるため熱損傷を受けて弱体化した湯捏種のグルテンが混捏後のパン類生地に直接影響を与えることが回避される。即ち、中間生地は少なくともある程度すでにグルテン結合が生じているのであるから、混捏後のパン類生地は比較的強さを増したグルテン結合が得られると推測される。
しかも、本発明は、従来の中種法のようにあらかじめ全小麦粉量のうち70質量%の小麦粉、全量(3質量%)のイースト及びイーストフードを混捏して中種を作成するものではないため、大量の小麦粉から構成される中種の醗酵が進むために、アルコール、有機酸等の醗酵生成物の生成量が多くなって焼成品は小麦粉に由来する自然な甘味と香が消されたり、また生地の醗酵時間が長くなって焼成品が引きの強い歯切れの悪い重い食感等を有するようになることもなく、しっとりした柔らかさが失われることもない。
従って、本発明によれば、湯捏種を使用して直捏法により製造したパン類に特徴的な、しっとりとした柔らかさ及び小麦粉に由来する麦芽糖の自然な甘味と香がまったく失われずにこれをそのまま維持しつつ、前記従来の技術の課題を解決することができる。
【0008】
また、本発明のパン類の製造方法において、上記湯捏種作成工程として、少なくとも全小麦粉量のうち一部の小麦粉と水、好ましくは温水とを加温しながら混捏して湯捏種を作成する湯捏種作成工程を採用することにより、熱湯を使用することなく、加温条件を調整することにより湯捏種を作成することができるようになる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に基づいて本発明の実施の形態に係るパン類の製造方法について説明する。
図1に示すように、この本発明の実施の形態の基本的構成は、少なくとも全小麦粉量のうち一部の小麦粉と熱湯とを用いて混捏するとか、この一部の小麦粉と水、好ましくは温水とを加温しながら混捏するとか、その他の方法により、この一部の小麦粉を用いて湯捏種を作成する湯捏種作成工程(1−1)と、好ましくは湯捏種作成工程後に湯捏種を低温でねかせて熟成させる熟成工程(1−2)と、少なくとも残量の小麦粉,イースト及び水からなる原料を混捏して中間生地を作成する中間生地作成工程(1−3)と、湯捏種と中間生地とを混捏してパン類生地を作成するパン類生地作成工程(1−4)と、パン類生地を醗酵するパン類生地醗酵工程(1−5)と、このパン類生地を焼成する焼成工程(1−6)とを備えてなる。
以下、各工程について詳しく説明する。
【0010】
(1−1)湯捏種作成工程
まず、少なくとも全小麦粉量のうち一部の小麦粉を用いて湯捏種を作成する。
本発明において、湯捏種とは、パン類生地を構成する全小麦粉量のうち一部の小麦粉が吸水して加熱または加温されてその小麦澱粉が部分的にα化した生地であり、パン類の製造に用いることができるような性質のものである。
このときに使用する小麦粉量は、パン類生地を構成する全小麦粉量のうち約5%〜40%の小麦粉量である。このとき使用する小麦粉量が少ないと、湯捏種を利用して製造した焼成パン類に独特の特徴、即ち、しっとりした柔らかさ及び小麦粉に由来する麦芽糖の自然な甘味と香りが顕著に現れないおそれがある。
これに対し、このときに使用する小麦粉量が多いと、湯捏種を使用してパン類生地を作成するにあたり熱損傷を受けた小麦グルテンの割合が多くなり過ぎて、本発明によっても上記従来の方法の課題の解決効果が顕著に現れないおそれがあるからである。すなわち、湯捏種の小麦粉量が多すぎると、やはりこの湯捏種を用いて作成したパン類生地は著しく柔らか過ぎて力が弱く、また粘着性が強い性状となり、さらに機械耐性に欠けるようになる。そしてこのようなパン類生地から作成した焼成パン類は容積が小さく、腰持ちが悪く潰れ易く、さらに機械的大量製パンにおける焼成パン類の品質の安定性に欠けるようになる。しかし、このときに使用する小麦粉量は全小麦粉量のうち10質量%〜30質量%が望ましく、更には10質量%〜20質量%がより一層望ましい。
湯捏種を作成するときの捏上温度、すなわち捏上直後の湯捏種の内部温度は55℃〜70℃に調整することが望ましい。捏上温度が低いと、湯捏種中の麦芽糖の生成及び小麦澱粉のα化が不十分となり、このため該湯捏種を使用して作成した焼成パン類は本来の小麦粉に由来する自然な甘みと香りや、しっとりした柔らかさともちもちさが顕著に現れないおそれがある。従って、湯捏種の捏上温度は55℃以上が望ましく、さらには60℃以上がより一層望ましい。
これに対し、湯捏種の捏上温度が高いと、小麦澱粉が過度に膨張し破裂し、また混捏後の湯捏種中の小麦グルテンの熱変性が過度に進むおそれがあり、こうなると本発明によっても上記従来の方法の課題改善効果が顕著に現れないおそれがある。従って、湯捏種の捏上温度は70℃以下が望ましく、更には65℃以下がより一層望ましい。
すなわち、湯捏種の捏上温度は55℃〜70℃が望ましく、更には60℃〜65℃がより一層望ましい。
この湯捏種作成工程では、例えば、少なくとも全小麦粉量のうち一部の小麦粉及び熱湯からなる原料を混捏して湯捏種を作成することができる。このときに使用する小麦粉量及び湯捏種の捏上温度については上述したとおりである。
湯捏種を作成するときに使用する熱湯量は、このときに使用する小麦粉量に対し50〜200質量%が望ましく、80質量%〜150質量%がより望ましく、更には80質量%〜120質量%がより一層望ましい。
【0011】
湯捏種を作成するときに使用する熱湯の温度は70℃〜100℃である。熱湯の温度が低いと、混捏後の湯捏種中の麦芽糖の生成及び小麦澱粉のα化が不十分となり、このため混捏生地を使用して作成した焼成パン類は本来の小麦粉に由来する自然な甘みと香りや、しっとりした柔らかさが顕著に現れないおそれがある。これに対し、熱湯の温度が高く、熱湯の量が多いと、混捏後の湯捏種中の小麦グルテンの熱変性が過度に進むおそれがある。
すなわち、熱湯を用意するにあたり、後述するニーダ、ミキサーボール等の混捏装置の混捏室内に水を投入し、混捏室を加熱することにより熱湯とする(その後加熱を停止する)場合には、熱湯の温度は75℃〜95℃が望ましく、更には80〜90℃がより一層望ましい。これに対し、既に加熱した熱湯を冷たい混捏室に投入する場合には、80℃〜100℃が望ましく、更には85℃〜95℃がより一層望ましい。
【0012】
また、本発明では、湯捏種作成工程で、少なくとも全小麦粉量のうち一部の小麦粉と水とを加温しながら混捏して湯捏種を作成する構成とすることもできる。このように、湯捏種作成工程で一部の小麦粉と水とを加温しながら混捏することにより、熱湯を使用することなく、加温条件を調整することによって湯捏種を作成することができるようになる。この水の量は下記温水の量に準じることができる。
特に、この水として冷水や常温(20℃前後)水ではなく、温水、すなわち40℃〜65℃の温水、好ましくは40℃〜60℃の温水、より好ましくは45℃〜60℃の温水、より一層好ましくは45℃〜55℃の温水を使用することが望ましい。これにより、上述した本発明の基本的な効果に加えて、従来のように熱湯を用いる場合よりも、湯捏種に十分な熱エネルギーを制御下に与えることにより小麦澱粉のα化と低分子化を促進させることができるようになる。その結果、焼成パン類の容積が増大し、クラスト及びクラムともにしっとりとした柔らかさと経時的な老化防止効果が向上し、また、クラスト及びクラムともに歯切れと口溶けが良好となり、さらには、小麦粉由来の麦芽糖の生産量が増加し、それによる甘味と香が向上するようになる。
また、常時均一に安定した湯捏種を容易に作成することができるようになり、これを用いて製造する焼成パン類の前記品質の安定性が湯捏種の不安定化により阻害されることを防止することができるようになる。
そして、温水として、45℃〜60℃の温水を用いる好ましい実施の形態の場合には、所定の温度まで早く到達してしまったり湯捏種の混捏時間が著しく長くなってしまう事態を防止することができ、より一層、湯捏種の小麦澱粉のα化と低分子化を促進させることができるようになる。その結果、焼成パン類の容積が増大し、クラスト及びクラムともにしっとりとした柔らかさと経時的な老化防止効果が向上し、また、クラスト及びクラムともに歯切れと口溶けが良好となり、さらには、小麦粉由来の麦芽糖の生成量の増加により甘味と香が向上するようになる。
なお、温水の温度が65℃を超えると、湯捏種の捏上温度が高くなり易く、所定の捏上温度まで早く到達してしまい、湯捏種の混捏時間が短くなって湯捏種に与える熱エネルギーが小さくなってしまい、また、湯捏種の水和にも影響する。こうなると、その小麦粉のα化等が不足することになる。これに対し、温水の温度が40℃未満になると、湯捏種の混捏時間が著しく長くなり、作成された湯捏種の安定性が劣ってくる。また、混捏初期において湯捏種と加熱面との温度差が大きくなるため、湯捏種は局部的に加熱温度が大きく異なり、加温の均一性に欠け易く、不均一な湯捏種となり易い。
更にまた、必要に応じ、上記温水の量を、小麦に対して50〜200質量%にする構成としている。好ましくは、上記温水の量を、小麦粉に対して80〜150質量%にすることがより有効である。これにより、長時間混捏することなく効率的かつ確実に湯捏種に熱エネルギーを与えて小麦粉のα化と低分子化を促進させることができるようになる。
また、必要に応じ、上記小麦粉と水、好ましくは温水とを加温しながら混捏する湯捏種作成工程で、混捏時間を5〜20分にする構成としている。好ましくは上記混捏時間を8〜15分にすること、より一層好ましくは、8〜12分にすることがより有効である。これにより、効率的かつ確実に湯捏種に熱エネルギーを与えて比較的短時間で小麦澱粉のα化と低分子化を促進させることができるようになる。
【0013】
更に、必要に応じ、上記小麦粉と水、好ましくは温水とを加温しながら混捏する湯捏種作成工程で、油脂を添加して混捏する構成としている。好ましくは、上記湯捏種作成工程で、湯捏種の小麦粉に対して5〜30質量%の油脂を添加して混捏することがより有効である。これにより、湯捏種の作成工程中における湯捏種の蓄熱効果がより高まり、その小麦澱粉のα化と低分子化を一層促進させることができるようになる。また、この湯捏種を用いたパン類生地の作成工程において油脂の添加量を減少させることができるため、混捏時間を短くし、かつ短い混捏時間でもパン類生地の小麦グルテンの十分な結合と発達を達成させることができる。更に、湯捏種の粘着性を軽減し、なめらかな湯捏種を作成することができる。
湯捏種作成工程で油脂を添加する場合には、その添加量だけパン類生地作成工程で添加する油脂を減じることが望ましい。
本発明において加温とは、本発明の湯捏種の作成に適したすべての加熱方法を含む概念であり、発明の実施の形態および実施例に示す加熱方法に限定されるわけではない。
なお、上述した3通りの湯捏種作成工程は、具体的例示として挙げたものであり、本発明における湯捏種作成工程としては、上述した湯捏種を作成することができるのであれば、どのような方法でも採用することが可能である。
更にまた、湯捏種作成工程において、小麦粉及び熱湯の他、食塩,糖類,脱脂粉乳,米粉等のうちから選択した1種類または2種類以上のものを添加することができる。これにより、湯捏種及び湯捏種を使用して混捏したパン類生地を引き締めることができる。これらの原料の添加量は湯捏種の小麦粉に対してそれぞれ0.1〜5.0質量%ずつが望ましい。
【0014】
(1−2)熟成工程
次に、上記湯捏種作成後に、湯捏種を低温で長時間ねかせて熟成させる熟成工程をとることが望ましい。湯捏種を低温でねかせることにより、湯捏種の温度を内部まで均一に低下させることができ、湯捏種を中間生地に加えて混捏してパン類生地を作成するときに、パン類生地の捏上温度を適正温度(パンの種類、製法等により異なるが、通常26〜29℃である)に調整することが極めて容易となる。また、湯捏種の全体的に均一な水和を十分に達成することができ、湯捏種の成分が全体的に均質化し、さらに粘着性が軽減して比較的滑らかとなり、混捏後のパン類生地を良好な状態に維持することができる。
混捏生地をねかせるときの温度は5℃〜20℃が望ましい。
混捏生地をねかせるときの時間は12時間〜24時間が望ましい。
【0015】
(1−3)中間生地作成工程
湯捏種と別に、少なくとも残りの小麦粉,イースト,食塩及び水からなるパン類生地を構成する原料をあらかじめ混捏して中間生地を作成する。中間生地を作成するにあたり使用する小麦粉量は、上記湯捏種を作成したときに使用した小麦粉量の残り量である。また、イースト及び食塩の量は常法のストレート法における量を添加することが可能である。
中間生地を作成するときは、これ以外に、イーストフード,酸化剤,酵素剤、生地改良剤,乳化剤,糖類,脱脂粉乳,油脂,乳製品等から選択された1種類または2種類以上のものを適宜量使用することが可能である。尚、後述するとおり、油脂はこのときに添加しないで、中間生地に湯捏種を加えて混捏した後で最後に添加して混捏することが望ましい。
中間生地を作成するための原料の混捏は、少なくともピックアップステージ(低速攪拌)を経てクリーンアップステージ(水切れ)に入り、小麦粉に水が完全に分散・吸収されて一つの塊状の生地となるまで行なうか、更に、ディベロップメントステージに入り、中間生地の小麦グルテンがある程度発達するまで行なうことが望ましい。これに対し、ファイナルステージに入るまで混捏することは、後述する通り望ましくない。
【0016】
(1−4)パン類生地作成工程
次に、湯捏種と中間生地とを混捏してパン類生地を作成する。
従来の方法・技術はすべて、湯捏種を使用してパン類生地を作成するときには、湯捏種と、残りの小麦粉,イースト,イーストフード,食塩,糖類,脱脂粉乳,油脂,その他残りのパン類生地を構成する原料を原料の状態で混捏してパン類生地を作成するというものであった。これに対し、本発明は、湯捏種及び中間生地をそれぞれ作成した後、この中間生地に湯捏種を加えて混捏してパン類生地を作成することを特徴とする。
パン類生地を作成するための中間生地と湯捏種の混捏は、生地の最適状態が得られるまで行なう。この際、油脂は、上述した通り、中間生地の混捏時には添加しないで、パン類生地を作成するための中間生地と湯捏種の混捏時においてその途中で、すなわちパン類生地が形成された後に添加して混捏し、パン類生地中に均一に練り込むことが望ましい。パン類生地が形成される前に油脂を添加するとこれが阻害されるおそれがあるからである。
本発明では、中間生地を作成するときに使用する小麦粉としては強力粉を使用する必要があり、更には、湯捏種を作成するときに使用する小麦粉としても強力粉を使用することが望ましい。
【0017】
(1−5)パン類生地醗酵工程
このパン類生地を所要時間醗酵する。該醗酵は、常法の直捏法の醗酵条件(温度、湿度、時間等)を採用して行うことができる。ここでは、フロアタイム(第一醗酵)での醗酵後、分割して丸めを行ない、その後ベンチタイムをとり、ガス抜きや整形を行なってから、ホイロをとる。
(1−6)焼成工程
それから、このパン類生地を焼成する。この焼成したパン類においては、湯捏種と予め作成した中間生地とを混捏することにより、湯捏種を使用したパン類に特徴的なしっとりした柔らかさ及び小麦粉に由来する自然な甘味と香を維持しながら、湯捏種を使用しても混捏後のパン類生地が過度に柔らかくならず一定の弾力性を有し、過度の粘着性がなくて適度な性状を維持し、機械耐性を有し、焼成パン類はオーブンスプリングと容積が大きく、腰持ちが良く、そして機械的大量製パンにおける焼成品の品質を製品間で安定させることができるようになる。
すなわち、従来の方法・技術によれば、パン類生地の混捏工程において湯捏種に直接小麦粉等を添加して混捏するものであるため、熱損傷を受けて弱体化した湯捏種のグルテンが混捏後のパン類生地に直接影響を与える。すなわち、パン類生地の強靭なグルテン結合を阻害すると推測される。これに対し、本発明によれば、パン類生地の混捏工程において湯捏種以外のパン類生地を構成する小麦粉等の原料をあらかじめ混捏して中間生地を作成し、湯捏種と該中間生地を混捏するものであるため熱損傷をうけて弱体化した湯捏種のグルテンが混捏後のパン類生地に直接影響を与えることが回避される。即ち、中間生地は少なくともある程度すでにグルテン結合が生じているのであるから、混捏後のパン類生地は比較的強さを増したグルテン結合が得られると推測される。
従って、上記温度の温水を用いて加温しながら混捏して湯捏種を作成し、且つ該湯捏種と予め作成した中間生地とを混捏してパン類生地を製造することにより、上述した湯捏種を用いて製造するパン類にとって独特の特徴を顕著に具備するパン類を安定的に製造することができるようになる。
なお、本発明のパン類とは、食パン、菓子パン、ロールパン、フランスパン、その他の焼成することにより製造されるパンをいうが、本発明は特に食パンに最も適している。
【0018】
【実施例】
以下に本発明の実施例を示す。
[実施例1]
湯捏種及び中間生地の原料配合は図2(単位は質量%)の通りである。
(湯捏種)
ニーダー(下記〔実施例3〕と同様のもの)に水を添加して80℃に加熱する。その後加熱を停止する。小麦粉,砂糖及び塩を添加する(図2(a)参照)。24回転/分で2分間混合する。捏上温度を60℃に調整する。これにより湯捏種が作成される。湯捏種はあら熱を除去し、すなわち室温に長時間放置して室温程度の温度まで放冷してから使用する。
(中間生地)
湯捏種以外の、小麦粉その他のパン生地を構成する全原料(但し、油脂を除く。図2(b)参照)を添加して低速2分、高速4〜5分で混捏することにより中間生地を作成する。中間生地はある程度グルテン結合が進んでいる。
(パン類生地)
中間生地に湯捏種を添加して低速1分、高速5分で混捏する。混捏生地に油脂を添加して低速1分、高速5分で混捏する。捏上温度を27℃に調整する。これによりパン生地が作成される。
(その後の製造工程)
第一醗酵 60分間
分割(ディバイター使用)500g
丸め(ラウンダー使用)
中間醗酵 28℃ 20分間
圧廷(ガス抜き)
カーリング(圧廷生地の巻込整形)M字折り(自動機械使用)
ホイロ 38℃ 50分間
焼成 200℃ 35分間
【0019】
(結果)
このようにして製造されたパン類生地は、適度な伸展性と柔軟性を有し、粘着性が控えめであり、その後の機械製造工程中における弛みや切断がなく、粘着性の悪化もなく、パン類生地を焼成した食パンは、しっとりした柔らかさ及び小麦粉に由来する自然な甘味や香があった。
【0020】
[実施例2]
上記実施例1と同様にして湯捏種を作成した後、10℃〜15℃で16〜18時間ねかせる。
中間生地は、実施例1と同様にして作成する。
パン類生地は、中間生地にねかせた湯捏種を添加した後は、上記実施例1と同様にしてパン類生地を製造し、その後の製造工程もまた同様である。
(結果)
このようにして製造されたパン類生地は、混捏後の状態として極めて良好な伸展性と柔軟性を有し、また粘着性がなく、更にその後の機械的加工中における弛み,崩壊及び断裂も全くなく、また粘着性の発生もなく、機械的加工耐性に優れていた。
パン類生地を焼成した食パンは、オーブンスプリングと容積が大きく、腰持ちが良好で、より一層、しっとりした柔らかさ及び小麦粉に由来する自然な甘味や香があり、この性質はどの焼成パンについて見ても一定に確認され、品質の安定性が向上した。
【0021】
次に、別の実施例について説明する。
[実施例3]
実施例3−1は、湯捏種作成工程及び熟成工程の例である。
湯捏種作成は、以下のような工程による。
1)ニーダーに50℃の湯水を入れる。
ニーダーとしては、蒸気加熱式、ガス直火式等が知られているが、本実施例においては蒸気加熱式のものを用いる。これは、概略、撹拌装置を備えた缶体と該缶体を覆うジャケット部とからなり、ジャケット部に高温の蒸気を供給することにより缶体を温め、缶体内部に投入した食材を間接的に加温しながら撹拌するものである。
2)油脂の一部,小麦粉,塩,砂糖(上白糖)の順にニーダーに入れる。
湯捏種の生地配合比を図3(a)に示す。ここでは、油脂の配合比が湯捏種の小麦粉に対して20質量%である。
3)蒸気を通さないで、1分間粗混ぜをして均一な状態にする。
4)蒸気圧を0.5kgF/cm2(約0.05MPa)程度で加温しながら24回転/分で約10分間混捏を行ない、生地温度62〜63℃に捏ね上げる。混捏時、糊化が進んでくると、生地がまとまり出し、生地の色が若干黄色がかってくるので捏上の判断基準とする。
これにより湯捏種が作成される。
そして、この湯捏種を熟成工程で熟成する。
湯捏種は、15kgに分割して、平らにして樹脂シートに包み込み、あら熱を除去し、12〜13℃の空調で16〜18時間熟成させる。
【0022】
[実施例3−2]
実施例3−2は、上記実施例3−1と略同様であるが、図3(b)に示すように、湯捏種の生地配合比において、油脂の配合比を湯捏種の小麦粉に対して10質量%にしている。
[実施例3−3]
実施例3−3は、上記実施例3−1と略同様であるが、図3(c)に示すように、湯捏種の生地配合において、油脂を加えていない(油脂の配合比を0質量%)。
【0023】
[実施例3−4]
湯捏種としては、上記実施例3−1,実施例3−2及び実施例3−3で作成した湯捏種のいずれかを用いた。
(1)中間生地作成工程
湯捏種以外の、小麦粉その他のパン生地を構成する全原料(但し、油脂を除く)を添加して低速2分、中速4〜5分で混捏することにより中間生地を作成する。中間生地の原料配合比を図4に示す。中間生地はある程度グルテン結合が進んでいる。
(2)パン類生地作成工程
また、本実施例において、パン類生地作成工程は以下のようにした。
中間生地に上記の湯捏種を湯捏種の小麦粉が全小麦粉量の20質量%となるように添加して低速1分、中速5分で混捏する。混捏生地に油脂を添加して低速1分、中速5分で混捏する。捏上温度を27℃に調整する。
これによりパン生地が作成される。
【0024】
(3)その後の製造工程
第一醗酵(フロアタイム) 60分間
分割(ディバイター使用) 500g
丸め(ラウンダー使用)
中間醗酵(ベンチタイム) 28℃ 20分間
圧廷(ガス抜き)
カーリング(圧廷生地の巻込整形)・M字折り(自動機械使用)
ホイロ 38℃ 50分間
焼成 200℃ 35分間
【0025】
(本実施例の結果)
このようにして製造されたパン類生地は、適度な伸展性と柔軟性を有し、粘着性が控えめであり、その後の機械製造工程中における弛みや切断がなく、粘着性の悪化もなく、パン類生地を焼成した食パンは、容積が大きく、しっとりした柔らかさと経時的な老化防止効果を奏し、小麦粉に由来する麦芽糖の甘味や香があった。
【0026】
【比較試験】
次に、本発明の効果を示すために従来の技術と比較する試験を実施した。
〔比較試験1〕
図5に示すように、本発明として実施例4(上記実施例2に準じるが、パン類生地作成工程〜焼成工程の条件を図5に記載のとおり変更したもの。また、ワンローフ食パンの生地分割重量は260gである)と、比較例として、実施例4において、パン類生地の混捏工程において中間生地をあらかじめ作成することなく、従来の技術と同様に、湯捏種に直接小麦粉等のパン類生地を構成する残りの原料を添加して混捏する方法(その他の条件は実施例4と同様である)とにより角型(プルマン)および山型(ワンローフ)食パンを製造し、以下の各項目について比較し評価した。
なお、本比較試験において、フロアータイムは、60分間が標準工程であり、80分間は、60分間のフロアータイムにその後の生地の分割開始から終了までに経過する時間(20分間)が加わったことを意味している。フロアータイムを標準工程より20分間延長することに等しい。
【0027】
結果を図5に示す。すなわち、このようにして製造されたパン類生地の状態については、本発明では、混捏後(捏上時)においては、粘着性がなく、極めて良好な伸展性と柔軟性を有しており、その後の機械的加工(分割、成形等)中においてもこれらは同様であり、また生地の弛みや腰落ちおよび切れがなく、機械的加工耐性に優れていた。これに対し、比較例はミキシング終了時の伸展性が本発明(実施例4)と同等なため、見かけの生地状態は良好であるが、その後の機械的加工中における生地の弛みが大きく、べたつきや生地の切れなどが見られた。これはパン類生地のグルテン形成の違いによると思われる。
すなわち、本発明ではパン類生地は比較的強さを増したグルテン結合が形成されているのに対し、比較例ではこれが阻害されていると推測される。
ホイロ時間に関しては、本発明では、分割開始時に分割したパン類生地と分割終了時に分割したパン類生地とでホイロ時間が一定であるのに対し、比較例では、このホイロ時間に数分間のズレがある。このため、機械的ライン化製造における焼成パン類の品質の安定化が極めて難しい。
このようなパン類生地を焼成したパン類についてみると、本発明品は、比較例よりも、フロアータイムが同一時間であれば容積、比容積ともに大きく(山型(ワンローフ)で比較した)、また腰持ちも良好であった。また、分割の時間的ズレがあっても、容積の大小変化が小さく、製品間で容積が安定していた。さらに、パン類の品質及びその安定性についてみると、本発明品は、分割(ひいてはフロアータイム)の時間的ズレにもかかわらず、パン類の外観、内相、官能等の品質が製品間であまり相違がなく、安定して良好であった。これに対し、比較例は、パン類の外観は焼色がやや濃く、内相はパンの下側の膨張が不足するため下側の気泡膜が目詰まりをしたような状態(底溜まり)が生じ、さらに食感もややくちゃつく傾向がみられたし、これらの品質が製品間で一定していなかった。
この結果から、本発明の実施例では、中間生地は少なくともある程度すでにグルテン結合が生じていることから、熱損傷を受けて弱体化した湯捏種のグルテンが混捏後のパン類生地に直接影響を与えることが回避されることに起因して、混捏後のパン類生地が過度に柔らかくならず一定の弾力性を有し、過度の粘着性がなくて適度な性状を維持し、機械耐性を有し、該パン類生地を焼成したパン類がオーブンスプリングと容積が大きく、腰持ちが良く、そして機械的大量製パンにおける焼成パン類の品質が製品間で安定している等のことが分かる。
【0028】
〔比較試験2〕
さらに、本発明として上記実施例2と、比較例として標準中種法(図6参照。また、湯捏種は上記実施例2と同様のものを使用した。図2(a)参照)とにより食パン(角型)を製造し、クラム中の麦芽糖含有量、同じくエタノール及び酢酸含有量、クラムの応力及びクラストの破断荷重について比較検討をしてみたところ、図7に示す結果となった。また、図8に測定方法を示す。
これによると、一方で本発明は食パンのクラム中の麦芽糖含有量が比較例より著しく多いのに対し、他方で本発明はクラム中のエタノール及び酢酸の含有量が比較例より著しく少ないことから、本発明はエタノール及び酢酸の臭いの影響が小さく、小麦粉由来の麦芽糖の自然なほんのりとした甘い香りと風味が強いことがわかる。
また、本発明は、食パンのクラムの応力およびクラストの破断荷重がD+1〜D+4のいずれにおいても比較例より著しく小さいことから、本発明はクラムが経時的な老化が抑制されて柔らかく、またクラストも引きが弱く、歯切れが良く、軽い食感であることがわかる。
これに対し、比較例は、機械的大量生産上の安定性は良好であるが、食パンのクラムの香・風味はアルコール臭・酢酸臭が強く、小麦粉由来の麦芽糖の自然な甘い香・風味があまり感じられない。また、クラムは早く柔らかさが失われやすく、クラストとともに食感は引きが強く、歯切れが悪く、重くなる傾向があった。
【0029】
【発明の効果】
以上説明したように本発明のパン類の製造方法によれば、少なくとも全小麦粉量のうち一部の小麦粉を用いて湯捏種を作成する湯捏種作成工程、すなわち、具体的には、これに限定されないが、例えば、少なくとも全小麦粉量のうち一部の小麦粉と熱湯とを用いて混捏するとか、または少なくとも全小麦粉量のうち一部の小麦粉と水、好ましくは温水とを加温しながら混捏するとかして湯捏種を作成する湯捏種作成工程と、少なくとも上記全小麦粉量の残りの小麦粉,イースト,食塩及び水からなるパン類生地を構成する原料を予め混捏して中間生地を作成する中間生地作成工程と、上記湯捏種と上記中間生地とを加え混捏してパン類生地を作成するパン類生地作成工程とを備える構成としたので、熱損傷を受けて弱体化した湯捏種のグルテンが混捏後のパン類生地に直接影響を与えることが回避される。即ち、中間生地は少なくともある程度すでにグルテン結合が生じているのであるから、混捏後のパン類生地は比較的強さを増したグルテン結合が得られると推測される。その結果、混捏後のパン類生地が過度に柔らかくならず一定の弾力性を有し、過度の粘着性がなくて適度な性状を維持し、機械耐性を有し、該パン類生地を焼成したパン類がオーブンスプリングと容積が大きく、腰持ちが良く、そして機械的大量製パンにおける焼成パン類の品質が製品間で安定している等の特徴をより一層発揮させることができる。
【0030】
また、本発明のパン類の製造方法において、湯捏種作成工程として、少なくとも全小麦粉量のうち一部の小麦粉と水好ましくは温水とを加温しながら混捏して湯捏種を作成する湯捏種作成工程を採用することにより、熱湯を使用することなく、加温条件を調整することにより湯捏種を作成することができるようになる。更に、湯捏種作成工程後に、湯捏種を低温でねかせて熟成させる熟成工程を設けた場合には、湯捏種を低温でねかせることにより、湯捏種の温度を内部まで均一に低下させることができ、湯捏種を中間生地に加えて混捏してパン類生地を作成するときに、パン類生地の捏上温度を適正温度に調整することが極めて容易となる。また、湯捏種の全体的に均一な水和を十分に達成することができ、湯捏種の成分が全体的に均質化し、更に粘着性が軽減して比較的滑らかとなり、混捏後のパン類生地を良好な状態に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係るパン類の製造方法を示す工程図である。
【図2】本発明の実施例に係る原料配合量を示し、(a)は湯捏種の原料配合量を示す表図、(b)は中間生地の原料配合量を示す表図である。
【図3】本発明の実施例に係る原料配合量を示し、(a)は実施例3−1の湯捏種の原料配合量を示す表図、(b)は実施例3−2の湯捏種の原料配合量を示す表図、(c)は実施例3−3の湯捏種の原料配合量を示す表図である。
【図4】本発明の実施例3−4の原料配合量を示す表図である。
【図5】本発明の実施例4及び比較例の条件及び性状比較結果を示す表図である。
【図6】パン類の製造方法の比較例に係る原料配合量および条件を示す表図である。
【図7】本発明の実施例2及び比較例の性状比較結果を示す表図である。
【図8】本発明の実施例2及び比較例の性状比較のための測定方法を示す表図である。
Claims (6)
- 少なくとも全小麦粉量のうち一部の小麦粉を用いて湯捏種を作成する湯捏種作成工程と、
少なくとも上記全小麦粉量の残りの小麦粉,イースト,食塩及び水からなるパン類生地を構成する原料を予め混捏して中間生地を作成する中間生地作成工程と、
上記湯捏種と上記中間生地とを混捏してパン類生地を作成するパン類生地作成工程とを備えることを特徴とするパン類の製造方法。 - 少なくとも全小麦粉量のうち一部の小麦粉と熱湯とを用いて混捏して湯捏種を作成する湯捏種作成工程と、
少なくとも上記全小麦粉量の残りの小麦粉,イースト,食塩及び水からなるパン類生地を構成する原料を予め混捏して中間生地を作成する中間生地作成工程と、
上記湯捏種と上記中間生地とを混捏してパン類生地を作成するパン類生地作成工程とを備えることを特徴とするパン類の製造方法。 - 少なくとも全小麦粉量のうち一部の小麦粉と水とを加温しながら混捏して湯捏種を作成する湯捏種作成工程と、
少なくとも上記全小麦粉量の残りの小麦粉,イースト,食塩及び水からなるパン類生地を構成する原料を予め混捏して中間生地を作成する中間生地作成工程と、
上記湯捏種と上記中間生地とを混捏してパン類生地を作成するパン類生地作成工程とを備えることを特徴とするパン類の製造方法。 - 上記水が温水であることを特徴とする請求項3記載のパン類の製造方法。
- 油脂を上記パン類生地作成工程における湯捏種と中間生地との混捏の途中で添加することを特徴とする請求項1,2,3または4記載のパン類の製造方法。
- 上記湯捏種作成工程後に、湯捏種を低温でねかせて熟成させる熟成工程を設けたことを特徴とする請求項1,2,3,4または5記載のパン類の製造方法。
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