JP3707038B2 - 食パンの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、食パンを製造する方法に係り、特に、焼成された食パンの内部に大きな空洞を散在させ、該空洞の壁部にバター等の油脂を含浸させ、食するとパン類に油脂を塗布したような食パンの製造方法に関する。
【従来の技術】
【0002】
従来、この種の食パンの製造方法としては、例えば、特開平6−233649号公報に掲載された技術がある。
これは、小麦粉,イースト,油脂等の原料に適量の水を加えて混合して生地を作成し、次に、このパン生地に冷凍したマーガリン等のチップ状油脂を入れ、ミキサーで混合してチップ状油脂の形状を維持した状態でパン生地中に分散させ、チップ状油脂が混合されたパン生地をフロアータイムで60分間醗酵させ、分割・丸目工程の後に、中間醗酵工程を経て、パン生地をチップ状油脂が形状を留めているうちに焙炉,加熱焼成し、焼成されたパン類の内部に、パン生地中に分散されていたチップ状油脂に由来して形成され一般の醗酵による空洞とは異なる多数の大きな空洞を形成するとともに、この大きな空洞の壁部に焼成時に溶融したチップ状油脂を含浸させ、その後固化したことによる油脂含浸部を形成するようにしている。
そして、このようにして製造されたパンを食するときに、再加熱すると、油脂含浸部の油脂が溶け出して、パンに油脂が塗布されたようになり、バター等を塗布したと同様の風味や食感を得ることができるようにしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、この従来の食パンの製造方法にあっては、実際には、チップ状油脂の形状を維持した状態でパン生地中に混合・分散させることは困難であり、また醗酵(ホイロ)されたパン生地をチップ状油脂が形状を留めているうちに焼成することは不可能であった。例えば、パン生地の混捏や分割の際にチップ状油脂は変形するし、また特に中間醗酵工程の後で、パン生地を圧延してガス抜きを行なう際には必然的にチップ状油脂が潰れたりして、ホイロの際に溶融して生地中に練込まれたのに近い状態になってしまうことがあり、空洞や空洞の壁部に油脂含浸部を確実に形成できないことがあり、このため、バター,マーガリン等の油脂を塗布したような風味と味、空洞の油脂が含浸した内壁部の周辺のクラムを噛んだときのソフトなサクッとした食感及び食するときに再加熱をしてもトーストしたパンにバターやマーガリンを塗布して食するときのようなパリッとした食感が損われるおそれがあるという問題があった。
【0004】
また、この従来の方法は、パン生地中のチップ状油脂の溶融をおそれるあまり、パン生地の熟成にとって最も重要な混捏後分割前のバルク生地醗酵の時間が短か過ぎるため、また直捏法(ストレート法)による混捏後のパン生地の醗酵は本来的に安定性に欠けるうえ、まして冷凍したチップ状油脂を多量に含有しているパン生地であるため、醗酵耐性および機械耐性に欠けて焼成後の食パンは醗酵風味等が不足するおそれがある。
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、中間醗酵工程の後でパン生地を圧延してガス抜きを行なう際に、チップ状油脂が潰れて、その後の整形工程(パン生地の巻き込みや折り畳みが伴う)および焙炉工程を経た後においては潰れたチップ状油脂が巻き込まれたり、丸められたり、また、溶融したりして生地中に練込まれてしまう事態を防止するようにした食パンの製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するため、本発明の食パンの製造方法は、本捏後のパン生地にチップ状油脂を添加して混合し、チップ状油脂がパン生地に練り込まれないようにしてパン生地中に分散させ、このチップ状油脂含有パン生地をフロアータイムで醗酵させ、分割・丸目工程の後、中間醗酵工程を経ることなく速やかに型詰めを行ない、その後、焙炉、焼成する食パンの製造方法。
すなわち、分割・丸目工程の後食パン生地を速やかに焼成型に詰めて焙炉をとって焼成するのである。
これにより、中間醗酵工程の後で必要な食パン生地の圧延によるガス抜き工程および整形工程も採る必要がなくなるので、チップ状油脂が潰れたり、変形したりして生地中に練込まれてしまう事態が防止される。
本発明では、分割後の食パン生地の重量が数百グラムと比較的小さいので分割前の大きなバルク生地塊より温度の影響を受け易く、当該生地中のチップ状油脂も溶融し易いため、中間醗酵工程でチップ状油脂の溶融が開始するとその後の圧延工程および整形工程でチップ状油脂が潰れ易く、また変形し易くなるが、これを避けるために中間醗酵工程および圧延工程を省略する。
ここで言うチップ状油脂が生地中に練り込まれないとは、チップ状油脂がパン生地中へ混合されたり、またはパン生地が分割されたり、またはフロアータイム、焙炉等の醗酵がとられることによりパン生地の温度が上昇しチップ状油脂は一部溶融が開始して柔らかくなり、また、これらの物理的圧力により原形(すなわち、当初の形状)を留めないで、変形しながらもパン生地中に多数局所的にまとまった状態で依然としてパン生地中に視覚的に確認もしくは特定することができる状態で存在することを意味する。このことは焙炉工程を経た後においてもチップ状油脂の溶融が著しく進むけれども同様である。このようなパン生地を焼成することにより、パン生地中に存在した油脂は溶けて該パン生地中に空洞を形成し、該空洞の内壁に含浸した痕を残すこととなるものである。
【0006】
チップ状油脂としては、バター,マーガリン等の動物性もしくは植物性固形油脂またはこれらの加工品を、小さい塊にしており、その形状は、サイコロ状,球状,棒状等種々の形態を取り得る。
混捏後のパン生地に添加して混合するチップ状油脂は、添加量が少な過ぎると、焼成した食パンの内部に空洞が形成されないか、または形成される空洞の数がわずかとなり、また空洞の壁部に油脂含浸部が十分に形成されなくなるおそれがある。これに対し、添加量が多過ぎると、パン生地の表面が油脂でベトついてしまうためその後の作業工程で不都合が生じるおそれがあるとともに、ホイロ等においてイースト醗酵によるパン生地の膨張が阻害されたり、焼成時に火通りが悪くなるため膨張不足や焼成後のパンの食感への影響が生じたりするおそれがある。したがって、このチップ状油脂の添加量は30〜45重量%とすることが望ましい。
この場合、チップ状油脂を冷蔵して使用すること、さらには冷凍して使用することが望ましい。これにより、練り込みや、破損して分散する事態が抑制される。
そして、必要に応じ、パン生地にチップ状油脂を添加するにあたり、チップ状油脂と一緒にばい焼小麦粉を添加する構成としている。
ばい焼小麦粉とは、ローストフラワーともいうが、焼成したり、炒ったり等加熱処理を施した小麦粉である。ばい焼小麦粉を工業的に生産するためには、一般に、製粉後の小麦粉をバンドオーブン等の加熱装置で連続的に焼成する。
ばい焼小麦粉は、酵素活性が低下しており、また蛋白質がグルテンの形成を阻害するように変性し、小麦粉に水を加えずに直接焙焼するので、澱粉のα化はほとんどない。このばい焼小麦粉は水を加えても糊状にならず、ダマができ難く、水等に容易に分散するという性質を有する。
【0007】
これにより、チップ状油脂の表面にばい焼小麦粉が付着するので、チップ状油脂同士が直接接触しにくくなり互いの付着が防止されるとともに、チップ状油脂の表面がザラザラ状になることから、短時間の混合時にパン生地との摩擦が増加させられて滑りをなくし、これらによってチップ状油脂がパン生地の内部奥深くまで侵入させられ、また各々独立してパン生地の全体に広くほぼ均一に分散させられる。
上記のばい焼小麦粉の添加は、チップ状油脂の添加と同時に行なっても良いが、パン生地にチップ状油脂を添加するにあたり、あらかじめチップ状油脂の表面にばい焼小麦粉を付着させて添加することが有効である。
この場合には、チップ状油脂の表面に万遍なくばい焼小麦粉を付着させることができるので、より一層チップ状油脂同士の付着が防止され、パン生地との摩擦も確実に増加させられる。
【0008】
更に、パン生地にチップ状油脂を添加するにあたっては、チップ状油脂に対し3重量%以上のばい焼小麦粉を添加することがより有効である。それ以下だと、チップ状油脂表面に充分に行き渡らないおそれがあり、これに対し、多く添加し過ぎると、混捏後のパン生地や焼成後のパンに多量に残存し、また空洞形成や含浸が不充分になることがある。
ここで、重量%は、すべて「ベーカーズ%」であり、即ち、小麦粉基準の重量%である。
【0009】
本発明においては、中種法によってパン生地を作成する。パン生地にチップ状油脂を混合した後では醗酵が抑制されて不十分となるおそれがあり、また、中間醗酵も採らないため、パン生地の醗酵不足を補うためにチップ状油脂を混合する前の中種を十分に醗酵させ熟成させておく。そして、中種の醗酵は常温では4時間〜8時間行なうことが望ましい。
更に、必要に応じ、上記本捏の際に、さらにイーストを添加する構成としている。
好ましくは、上記本捏の際に添加するイーストは全小麦粉に対し0.5〜1.0重量%である。
これにより、本捏の際にさらにイーストが添加されるので、パン生地のフロアータイムにおける醗酵や焙炉における膨張が促進される。
【0010】
更にまた、必要に応じ、上記フロアータイムを20〜50分間とした構成としている。より好ましくは、フロアータイムは30〜40分間である。
これにより、パン生地のフロアータイムにおける醗酵が促進される。
また、必要に応じ、上記焙炉の時間を70分以上とした構成としている。より好ましくは、焙炉の時間は80分以上である。
これにより、焙炉における膨張が促進される。他方、焙炉工程の時間を長くすればチップ状油脂の溶融が著しく進むがその後直ぐに焼成されるので影響はない。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施の形態に係る食パンの製造方法について説明する。
先ず、小麦粉,イースト,油脂等の原料(1−1)を、中種法により混捏する。この混捏においては、小麦粉の50〜100重量%にイースト,イーストフード,乳化剤及び水の適量を加えて混合し、中種生地を作成する(1−2)。次に、数時間、好ましくは4時間以上醗酵させてからミキサーに戻し、中種生地に残りの小麦粉,砂糖等の糖類,脱脂粉乳,食塩,油脂等のその他の原料及び水を加えて本捏する(1−3)。
【0012】
この、本捏工程では、さらにイーストを添加する(1−3)。添加するイーストは全小麦粉に対し0.5〜1.0重量%であることが望ましい。
これにより、後述のパン生地のフロアータイムにおける醗酵及び焙炉における膨張の促進が行なわれる。
本製造方法においては、パン生地に多量のチップ状油脂という半固形物が含有するため、イースト醗酵によるパン生地の膨張が阻害されるおそれがあり、フロアータイムや焙炉における醗酵の促進は重要である。
【0013】
次に、本捏後のパン生地に予め前工程で用意したチップ状油脂を添加する(1−4)。チップ状油脂のパン生地への添加量は、本願発明の目的とする食パンの食感(食パンの空洞の油脂含浸部のソフトなサクッとした食感および再加熱したときのパリッとした食感)、風味、味の実現と、パン生地の十分な醗酵との調和によって定まる。チップ状油脂の添加量が少ないと本願発明の目的とする食パンの食感、風味、味が実現されず、その添加量が多いと食パンとしてのボリューム、食感、醗酵風味が不足する。これは特にチップ状油脂を冷凍して使用するときに著しい。したがって、チップ状油脂の添加量は、好ましくは30〜45重量%、より好ましくは35〜40%であろう。
前工程においては、例えば、マーガリン等のチップ状油脂を作成し(1−5)、冷凍庫で保管しておき(1−6)、このチップ状油脂の表面にばい焼小麦粉を付着させる(1−7)。
【0014】
その後、ミキサーで軽く混合する(1−8)。この場合、チップ状油脂の表面にばい焼小麦粉が付着しているので、チップ状油脂同士が直接接触しにくくなり互いの付着が防止されるとともに、チップ状油脂の表面がザラザラ状になることから、パン生地との摩擦が増加させられて滑りをなくし、短時間の混合時に、個々のチップ状油脂が各々独立してパン生地の内部奥深くまで侵入させられまた全体に広くほぼ均一に分散させられる。
従って、焼成後に1斤にスライスした食パンは、比較的小さいものであるにもかかわらず、個々の製品間における空洞や空洞内壁の油脂含浸部の出来具合がほぼ均等化し易くなる。
ばい焼小麦粉は、その添加による効果をよりよく奏するためには、チップ状油脂に対し3重量%以上、好ましくは5重量%以上添加することが望ましい。また、小麦粉に対して4重量%以下添加すること、特に3重量%以下添加することが望ましい。ばい焼小麦粉は、個々のチップ状油脂の表面にほぼ万遍無く付着し得る量まで添加することができようが、ばい焼小麦粉の添加・混合は一旦パン生地の混捏が終了した後に行ない、またその混合も短時間で行なうのであるから、あまり多く添加し過ぎると、パン生地中に粉のまま残存し、焼成後の食パンの食感と味に影響を与えるおそれがある。例えば、このような食パンを食したときにはザラザラ、ボソボソ等の違和感が残るのである。
【0015】
混合が終わったならば、フロアータイムにおいて、所定時間パン生地を寝かせて、醗酵させる(1−9)。
この場合、フロアータイムを20〜50分間とし、特にフロアータイムを30〜40分間とすることが望ましい。
これは、油脂の溶融があまり起こらない範囲で、フロアータイムを延長することによりパン生地のフロアータイムにおける醗酵の促進を図るためである。
詳しくは、通常の食パンの製造方法においてはフロアータイムは混捏直後のパン生地を休ませ(このとき発酵が伴う)、その粘着性を少なくし、また熟成を最終的に調整するために20分間前後とるであろう。これに対し、本実施の形態においては、パン生地に多量のチップ状油脂という半固形物が含有しているため、イースト醗酵によるパン生地の膨張が阻害されるおそれがあり、また、後述の中間醗酵工程(ベンチタイム)を割愛する場合にはなお一層のこと、フロアータイムを延長することによる醗酵の促進は重要である。
【0016】
このフロアータイム後、分割・丸目工程に入り(1−10)、中間醗酵(ベンチタイム)を行なわないで(1−11)、圧延ガス抜きも行なう必要がない(1−12)。
中間発酵(ベンチタイム)を行なわないのは、チップ状油脂の溶融を防止するためであり、また中間醗酵工程の後に必要な圧延によるガス抜き工程も省略して溶融が開始して潰れ易くなったチップ状油脂の潰れを防止するためである。
詳しくは、通常の食パンの製造方法においては分割され丸目されたパン生地を休ませ(このとき醗酵が伴う)て伸展性を付与し次の成形工程に備えるために28、9℃前後の温度で20分間くらい中間醗酵工程(ベンチタイム)を採る。これに対して、本実施の形態においてはこの中間醗酵工程(ベンチタイム)を採ると分割後の個々のパン生地中におけるチップ状油脂の溶融が進むため、この工程を割愛してチップ状油脂の溶融を防止するようにしている。
また、例えば、中間醗酵(ベンチタイム)にオーバーヘッドプルーファーを使用したとすると、パン生地搬送用バケットに多量の油脂が付着するため、この油脂を除去しなければ、次の別製品のパン生地の表面が不要な油脂で汚れたりする。しかし、オーバーヘッドプルーファー内のパン生地搬送用バケットの清掃は厄介な作業であり、中間醗酵工程の割愛により、これが解消される。
【0017】
また、この場合、パン生地を圧延してガス抜きを行なう必要もない。
これは、チップ状油脂の崩壊、潰れによる練込を防止するためである。
詳しくは、通常の食パンの製造方法においては圧延工程終了時のパン生地の厚さ、すなわち最終の圧延モルダーローラーの間隔は2mm前後である。これに対し、本実施の形態においてはこの圧延工程それ自体を省略することにより、チップ状油脂の崩壊、潰れによる練込の防止を図っている。圧延工程における圧延工程終了時のパン生地の厚さが2.0mm未満となると、チップ状油脂の潰れ具合が一層進み、その後の整形工程およびホイロ工程を経た後においては潰れたチップ状油脂が巻き込まれたり、丸められたり、また、チップ状油脂の溶融も一層進み、これらが著しい時にはパン生地に練り込まれた状態に近くなる。
【0018】
また、通常の食パンの製造方法におけるパン生地の厚さ(2mm前後)まで圧延してしまうと、本願発明の半固形の油脂を大量に含有するパン生地にとってはチップ状油脂の周囲、特にその上下におけるパン生地への圧力が強過ぎて、その気泡膜を潰すため焼成してもボリューム不足のパンとなる。
さらに、冷凍したチップ状油脂を使用した場合には、チップ状油脂の冷熱がパン生地に広く深く浸透し易すく、その後の発酵に影響を与えるおそれがある。
これに対し、中間醗酵工程を経ながら圧延工程を省略したり、不十分であったりすると、パン生地のガス抜きが不十分となり、その気泡膜が不均一かつ粗く形成されるため、このようなパン生地を焼成した食パンはボリュームが小さく、外観・形状も安定しておらず、内相の気泡も不均一かつ目が粗い。また、このようなパン生地はいわゆるブカブカのパン生地となり、整形工程を厄介なものとするだけでなく、整形工程においてカーリングが伴う場合にはカーリングにより局所的に集まった発酵ガスの圧迫によってパン生地の表面付近が破裂し、ホイロ及び焼成工程におけるパン生地の発酵ガスの捕捉を阻害して膨張不良の原因となり易い。しかし、本発明ではこのような問題は生じない。
【0019】
次に、整形工程(通常、圧延工程で扁平状に延展したパン生地を端から端までカーリングして巻き込んでから折り畳む)も経ることなく、丸目工程の後速やかに焼成型に型詰めし(1−13,14)、焙炉を行ない(1−15)、その後、焼成して(1−16)、製品とする(1−17)。
この焙炉においては、焙炉時間を70分以上とし、特に焙炉時間を80分以上とすることが望ましい。
これは、多量の油脂断片を含有するパン生地の焙炉における膨張の促進を図るためであり、また、中間醗酵工程を省略したことによるパン生地の醗酵不足の解消を図るためでもある。
通常の食パンの製造方法において、焙炉は40〜50分間、長くても60分間くらいであろう。圧延後に整形された生地はガス抜きされて膨らみがなく、また粘着性を呈しているため、これを38℃前後、80〜90%という高温・多湿の醗酵室に入れてイースト発酵を急速に進めてパン生地を再膨張させ(通常焼成後の製品容積の70〜80%位まで膨張させ)、パン生地に熟成度と伸展性を与え、焼成工程に備えてパン生地の状態を回復させる。これに対し、本実施の形態においては、焙炉をかなり長時間とることによりパン生地の膨張の促進を図っている。また、焙炉の温度は、パン生地中のチップ状油脂の完全な溶融を避けながら十分にパン生地の醗酵の促進を図るという観点から、33〜35℃の低めの温度が望ましい。
また、焼成前の工程において醗酵や膨張の不十分なパン生地は、グルテン膜が厚く、ガス気泡がなく、このようなパン生地を焼成すると、火通りが悪いため、食べたときにグチャグチャした重い食感であり、香や風味に乏しいパンとなるが、本実施の形態においては、焙炉をかなり長時間とるので、この点の改善が図られる。これとは反対に、焙炉が過剰になるとパン生地のグルテン網を弱め膨張不足となり、また腰持ちが悪くなり高さ方向への伸びが不足する。焙炉は100分以下が望ましく、90分以下がより望ましいであろう。
なお、本発明の食パンの型(タイプ)は問わないが、本発明による焼成食パンは圧延工程を省略したことで比較的大きなグルテン気泡膜が形成されるため、角型(プルマンタイプ)食パンとしたときにはケーブイン(腰折れ)がし易くなるおそれがあり、したがって山型(ワンローフタイプ)食パンとするほうが望ましい。
【0020】
【実施例】
次に、最適と考えられる食パンの試作品を製造した。この試作品は山型(ワンローフタイプ)食パンであり、その原料配合及び製造工程の条件を図2に示す。なお、チップ状油脂は直径約5mm、長さ約5〜30mmの円柱状のもので、融点が約39℃のものを使用した。
【実験例】
以下、各種の条件において製造した食パンの比較試験(実験例1〜7)を行ない、所要の項目について評価を行なった。評価において、◎は極めて良好,■は良好,△はやや悪い,×は悪いを表わす。
[実験例1]
上述した実施例、すなわち中間醗酵工程および圧延工程を採らない製パン法と、上述した従来の技術、すなわち30分間の中間醗酵工程を経てから圧延工程を採る製パン法について、圧延工程終了時におけるパン生地の厚さを変えて比較試験を実施し、▲1▼〜▲6▼の各比較項目について検討した結果を図3に示す。
この結果から、本発明の実施例は、これらの工程におけるチップ状油脂の潰れや溶融がほとんどなく空洞と壁部の油脂含浸部の形成および焼成パンの食感が極めて良好となった。また、醗酵,膨張,ボリュームやすだち等の他の要素も極めて良好か、良好になった。
【0021】
[実験例2]
上述した実施例、すなわち中種法で4時間30分の中種醗酵及び30分間のフロアータイムをとる製パン法と、上述した従来の技術、すなわち直捏法で混捏後に60分間の醗酵をとる製パン法との比較試験を実施し、▲1▼及び▲2▼の比較項目について検討した結果を図4に示す。
この結果から、実施例のソフト感は極めて良好であり、風味も良好になった。
【0022】
[実験例3]
上述した実施例において、中種醗酵の時間を変えて、比較試験を実施し、▲1▼焼成後の食パンの醗酵風味及び▲2▼同様にソフト感の比較項目について検討した。
この結果から、中種醗酵を4時間以上にすると、風味やソフト感が良好になり、特に、4時間30分以上にすると極めて良好になった。
また、上述した実施例や常法における中種醗酵の温度であまり長時間醗酵させると過醗酵によりパン生地のグルテン網を損傷し、焙炉や焼成においてパン生地からガスが抜ける原因となるため、これらの温度における中種醗酵の時間は8時間程度が上限だろう。より好ましくは6時間であろう。しかし、中種を低温で醗酵させるときにはこれよりも長時間の醗酵が可能となる。
【0023】
[実験例4]
上述した実施例、すなわちイーストを中種に2.3重量%及び本捏で0.7重量%添加する製パン法と、イーストを中種に3.0重量%添加する製パン法との比較試験を実施し、▲1▼焙炉におけるパン生地の醗酵・膨張及び▲2▼焼成におけるパン生地の膨張の各比較項目について検討した結果、実施例は本捏無添加に比較していずれも良好である。
【0024】
[実験例5]
上述した実施例すなわち焙焼小麦粉をチップ状油脂の表面に付着させてパン生地に添加する方法及び上述した従来の技術すなわち裸のチップ状油脂を添加する方法の比較試験を実施し、▲1▼〜▲4▼の比較項目について検討した結果を図5に示す。
この結果から、焙焼小麦粉をチップ状油脂の表面に付着させたものにおいては、チップ状油脂の分離,均一分散性,侵入度や食感は、いずれも極めて良好になった。
【0025】
[実験例6]
上述した実施例において、チップ状油脂に付着させる焙焼小麦粉の添加量を当該油脂に対して変えて▲1▼〜▲3▼の比較項目について検討した結果を図6に示す。
この結果から、焙焼小麦粉の添加量を油脂に対して3重量%以上にした場合に、良好になり、特に、5重量%以上にした場合に、いずれも極めて良好になった。
【0026】
[実験例7]
上述した実施例において、チップ状油脂に付着させる焙焼小麦粉の添加量を小麦粉に対して変えて、▲1▼及び▲2▼の比較項目について検討した結果を図7に示す。
この結果から、焙焼小麦粉の添加量を小麦粉に対して4.0%以下にした場合に、触感及び食感は良好になり、特に、3.0%以下の範囲でいずれも極めて良好になった。
【0027】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の食パンの製造方法によれば、中間醗酵工程を経ることなく、パン生地を圧延してガス抜きを行なう工程を採る必要のない構成としたので、圧延工程によりチップ状油脂が潰れて焙炉工程を経た後においても生地中に練込まれたのに近い状態となることを防止することができ、そのため、空洞の壁部に油脂含浸部を確実に形成することができることから品質を大幅に向上させることができる。
すなわち、本願発明による食パンは、空洞の油脂含浸壁部周辺のクラムを噛んだときのソフトなサクッとした食感、バター,マーガリン等の油脂を塗布したような風味と味、また食するときに再加熱をすると、トーストしたパンにバターやマーガリンを塗布したばかりのようなパリッとした食感と油脂の風味と味をよりよく実現することができる。
【0028】
また、パン生地にチップ状油脂を添加するにあたり、チップ状油脂と一緒にばい焼小麦粉を添加した場合には、チップ状油脂の表面にばい焼小麦粉が付着することになり、そのため、チップ状油脂同士が直接接触しにくくなり互いの付着を防止することができる。
更に、チップ状油脂の表面にばい焼小麦粉が付着するので、チップ状油脂の表面がザラザラ状になることから、パン生地との摩擦を増加させて滑りをなくすることができ、そのため、混合時に、摩擦によってチップ状油脂をパン生地の内部奥深くまで侵入させることができる。
その結果、チップ状油脂をパン生地内に充分に分散させることができるようになり、品質を大幅に向上させることができる。
【0029】
そしてまた、パン生地にチップ状油脂を添加するにあたり、あらかじめチップ状油脂の表面にばい焼小麦粉を付着させて添加する場合には、チップ状油脂の表面に万遍なくばい焼小麦粉を付着させることができるので、より一層チップ状油脂同士の付着を防止できるとともに、摩擦も確実に増加させることができ、より確実にチップ状油脂をパン生地内に分散させることができるようになる。
【0030】
また、中間醗酵工程を割愛した場合には、この間にチップ状油脂が溶融を開始してしまう事態をなくすることができることから、焼成の前にチップ状油脂が溶融してしまう事態を確実に防止し、焼成時に、空洞を確実に成長させてこの壁部に油脂含浸部を確実に形成できるようになる。
また、中間醗酵工程を割愛すれば、オーバーヘッドプルーファーを使用しなくても良くなり、そのため、オーバーヘッドプルーファー内のパン生地搬送用バケットの清掃をなくすることができ、作業を容易にすることができるという効果がある。
【0031】
更に、本捏の際に、さらにイーストを添加した場合には、パン生地のフロアータイムにおける醗酵や焙炉における膨張を促進させることができ、パン生地に多量のチップ状油脂という半固形物が含有することによる弊害を防止することができる。
更にまた、フロアータイムを20〜50分間とした構成とした場合には、パン生地のフロアータイムにおける醗酵を促進することができる。
また、焙炉の時間を70分以上とした場合には、焙炉における膨張を促進させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る食パンの製造方法を示す工程図である。
【図2】本発明の実施例に係る食パンの原料配合と工程の条件を示す表図である。
【図3】圧延工程終了時におけるパン生地の厚さを変えて行なった実験例1の結果を示す表図である。
【図4】実施例と従来の技術との比較実験例2の結果を示す表図である。
【図5】実施例と従来の技術との比較実験例5の結果を示す表図である。
【図6】チップ状油脂に付着させる焙焼小麦粉の添加量を油脂に対して変えて行なった実験例6の結果を示す表図である。
【図7】チップ状油脂に付着させる焙焼小麦粉の添加量を小麦粉に対して変えて行なった実験例7の結果を示す表図である。

Claims (6)

  1. 小麦粉,イースト等の原料に適量の水を加えて混合して中種生地を作成し、次に、これを醗酵させてから本捏し、この本捏後のパン生地にあらかじめ表面にばい焼小麦粉を付着させたチップ状油脂を添加して混合し、チップ状油脂がパン生地に練り込まれないようにしてパン生地中に分散させ、チップ状油脂が混合されたパン生地をフロアータイムで醗酵させ、分割・丸目工程の後に、中間醗酵工程を経ることなく速やかに型詰めを行ない、その後、焙炉,加熱焼成することを特徴とする食パンの製造方法。
  2. チップ状油脂に対し3重量%以上のばい焼小麦粉を添加することを特徴とする請求項記載の食パンの製造方法。
  3. 上記本捏の際に、さらにイーストを添加することを特徴とする請求項1または2記載の食パンの製造方法。
  4. 上記本捏の際に添加するイーストは全小麦粉に対し0.5〜1.0重量%であることを特徴とする請求項記載の食パンの製造方法。
  5. 上記フロアータイムを20〜50分間としたことを特徴とする請求項1,2,3または4記載の食パンの製造方法。
  6. 上記焙炉の時間を70分以上としたことを特徴とする請求項1,2,3,4または5記載の食パンの製造方法。
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