JP2004024187A - 米粉を主原料とする食品およびその製造方法 - Google Patents

米粉を主原料とする食品およびその製造方法 Download PDF

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Koichi Fukumori
福盛 幸一
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Abstract

【課題】小麦粉を含まず、従来の製造工程と同様の工程で製造できるとともに外観、内相、食味および日持ちに優れたパン・菓子を製造することのできる米粉組成物、当該組成物を用いて製造された生地および食品、ならびに当該食品の製造方法を提供する。
【解決手段】米粉100重量部と白糠粉1〜300重量部とを含んでなるパン・菓子用米粉組成物、前記米粉組成物を用いて製造された生地およびパン・菓子、ならびに前記米粉組成物に水または水と酵母を加えて混合し、生地を作る工程、および生地を成形して焼成、フライ、蒸煮、マイクロ波加熱または加圧加熱により調理する工程を含む米粉パン・菓子の製造方法。
【選択図】    なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、米粉を主原料とする食品およびその製造方法に関する。より詳細には、小麦粉を含まない米粉組成物、当該組成物を用いて製造された発酵生地または生地およびパン・菓子、ならびに当該パン・菓子の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
通常、発酵パンの主原料として利用されているのは、小麦粉またはライ麦粉であり、小麦パンはふっくら膨らんだ食感が好まれている。小麦粉は、水を加えて練り合わせると、小麦粉中のタンパク質のグリアジンとグルテニンによってガム状の粘弾性を有するグルテンになり、発酵で生じる炭酸ガスを生地中に包蔵する機能が発揮され、発酵パンの容積拡大につながることが知られている。
【0003】
一方、東南アジア諸国では米が伝統的に主食として用いられてきたが、日本では米の消費量が年々低下しており、自給率の高い米を消費して食糧自給率を上げることが望まれている。また、将来予測される食料不足の問題を解決するため、日本のみならず諸外国でも米の用途拡大や消費拡大が叫ばれている。そこで、発酵パンの主原料として、米粉を小麦粉の代替として利用する方法が提案されている。例えば、小麦粉の一部または大部分を米粉に置き替えて発酵パンを製造する方法が、特開平5−15298号公報、特開平11−225661号公報などで提案されている。更に、米粉単独にグルテンを添加して発酵パンを製造する方法が、特開平6−7071号公報、特開平11−32706号公報、特開2001−327242号公報、特開2002−95404号公報などで提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、発酵パンの製造に際して、特開平11−225661公報、特開平11−32706号公報などに記載されているように、米粉の使用割合が高くなると生地の付着性が増大し、操作性、機械適性が劣るようになる。米粉とグルテンとを含有する粉末を使用すると、米粉とグルテンとのなじみが悪くて分離し易く、均一な生地とならなかったり、生地を調製する操作が困難になる。その結果、焼き上げて得られるパンの容積が小さくなったり、甚だ食感が悪くなることなどが知られている。
【0005】
本発明者が米粉に少量のグルテンを加えた原料を用いて発酵パンを調製したときにも、発酵工程での発酵時間が短くなって実製造における作業性の悪化が懸念され、焼成後の発酵パンはすだちが悪く、パン容積の増加量が少なくて硬かった。更に、焼成時の水分の蒸発が悪く、その結果、「浮き」が悪くなって硬くなり、表面の皮が殆ど出来ず、表皮の色も白っぽくて外観が悪かった。また、できた発酵パンは保存時の老化が速く、硬くなり易いなど各種の欠点があった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、小麦粉を含まず、従来の製造工程と同様の工程で製造できるとともに外観、内相、食味および日持ちに優れたパン・菓子を製造することのできる米粉組成物、当該組成物を用いて製造された生地および食品、ならびに当該食品の製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく、米粉と混合する原料について鋭意研究したところ、同じ米由来の原料を適切な割合で混合することにより上記目的を達成することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明のパン・菓子用米粉組成物は、米粉100重量部と白糠粉1〜300重量部とを含むことを特徴とする。
【0009】
前記米粉組成物は、さらにグルテン1〜30重量部を含むことが好ましい。
【0010】
前記米粉組成物は、α,α−トレハロースを除く糖類、食塩、ガム質、乳成分、卵成分、油脂、無機塩類およびビタミン類からなる群より選ばれる1種または2種以上をさらに配合してなることが好ましい。
【0011】
本発明の発酵生地は、前記米粉組成物に酵母を作用させてなることを特徴とする。
【0012】
本発明の生地は、前記米粉組成物に液体を加えてなることを特徴とする。
【0013】
本発明の米粉を主原料とするパン・菓子の製造方法は、前記米粉組成物に水および酵母を加えて混合し、発酵させて発酵生地を作る工程、および発酵生地を成形して焼成、フライ、蒸煮、マイクロ波加熱または加圧加熱により調理する工程を含むことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の米粉を主原料とするパン・菓子の製造方法は、前記米粉組成物に液体を加えて混合し、生地を作る工程、および生地を成形して焼成、フライ、蒸煮、マイクロ波加熱または加圧加熱により調理する工程を含むことを特徴とする。
【0015】
本発明の米粉パン・菓子は、前記方法により得られることを特徴とする。
【0016】
前記米粉パン・菓子は、食パン、コッペパン、バターロール、揚げパン、菓子パン、フランスパン、ドイツパン、ベーグル、デニッシュパン、中華饅頭、イーストドーナツ、プレッツェル、ピザもしくはナン、またはケーキ、パイ、スコーン、マフィンもしくはシュークリームであることが好ましい。
【0017】
[作用効果]
本発明の米粉組成物によると、従来の米粉パン原料よりも機械適性に優れ、小麦粉を用いたパン・菓子の製造ラインと同様の工程で米粉パン・菓子を製造するための原料を提供することができる。前記米粉組成物に種々の副原材料を配合することにより、様々な種類のパン・菓子の製造に便利な原料を提供することができる。
【0018】
本発明の発酵生地または生地によると、時間と手間のかかる生地を作る工程を省略することができるとともに所望の時間に品質のばらつきの少ないパン・菓子を製造することができ、一定の品質で出来立てのパン・菓子を各地の消費者に提供することができる。また、本発明の発酵生地または生地は、長期の冷蔵または冷蔵保存でも品質が劣化しにくく、一定期間中は一定の品質のパン・菓子を提供することができる。
【0019】
本発明の米粉パン・菓子の製造方法によると、本発明の米粉組成物または生地を使用することにより、既存の設備を利用して小麦粉パン・菓子と同等以上の外観、内相、食味および日持ちに優れた米粉パン・菓子を製造することができる。また、本発明の製造方法は、本発明の米粉組成物を使用することにより、発酵工程が周囲の温度に大きく依存して熟練を要する小麦粉の場合と比較して、発酵時間が短縮されるので所要時間が半減するとともに、周囲の温度に影響されにくく、発酵時間を制御するだけで容易に米粉パン・菓子を製造することができる。
【0020】
本発明の米粉パン・菓子は、小麦粉パン・菓子と同等の食味を呈するとともに原料の米の特徴であるもっちり感やしっとり感もある。さらに、本発明の米粉パン・菓子は、日持ちがよく、食味も落ちにくいので、流通経路を拡大することができ、米の消費拡大ばかりでなくパン・菓子全体の消費拡大にもつながる。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明のパン・菓子用米粉組成物は、米粉100重量部と白糠粉1〜300重量部を含むことを特徴とする。
【0022】
本発明で用いられる米粉は、粳米の生米を粉砕、粉末化したものである。粳米の種類としてはジャポニカ米、インディカ米、ジャバニカ米等特に制限されるものではない。粉砕する前の生米は、精白米、玄米、屑米、古米など特に制限されるものではない。
【0023】
前記米粉は、従来から和菓子の原料として用いられている上新粉とは異なり、米粉の粒子が小さくきめの細かいものが好ましく、粉砕する前の米を各種の方法を用いて処理したり、粉砕して得られる粒子をより細かくしたものが望ましい。米粉の粒径は、通常平均粒径75μm以下、より好ましくは45μm以下である。好ましい米粉としては、例えば、株式会社斉藤製粉製、商品名「こめの粉」、新潟製粉製、商品名「パウダーライス」等があげられる。
【0024】
本発明で用いられる白糠粉は、日本酒の原料となる「酒米」を搗精するときに得られる糠のうち、玄米の外皮部分の糠(赤糠)を除いたものをいう。前記白糠粉としては、搗精率10%〜15%程度の中糠、搗精率15%〜25%程度の上白粉または搗精率25%以上の極上糠があげられる。これらを単独であるいは任意の割合で混合したものを用いることができる。ここで、搗精率とは、(玄米重量−搗精後の米重量)÷玄米重量×100で求めた数字である。
【0025】
白糠粉の割合は、米粉100重量部に対して1〜300重量部であり、5〜50重量部が好ましく、10〜30重量部がより好ましい。1重量部より少ないと、生地がぱさつき、作業性、機械適性が悪くなり、300重量部より多いと、逆に生地の粘りが強すぎて作業性、機械適性が悪くなり、発酵が良好に進みにくい。
【0026】
本発明の米粉組成物は、さらにグルテンを含むことが好ましい。
【0027】
本発明で用いられるグルテンは、活性グルテンが望ましいが、その他のグルテンでもよく、グルテンを全く用いなくてもよい。
【0028】
グルテンの割合は、製造するパン・菓子の種類により米粉100重量部に対して1〜30重量部である。食パンやコッペパン等をふっくらと製造するためには1.5〜25重量部が好ましく、5〜20重量部がより好ましい。本発明の米粉組成物は、白糠を含むことによりグルテンの含有量を従来よりも減らしても発酵工程が良好に進行し、特にパン用の発酵生地を調製したときに十分な膨らみをもつ生地が得られる。グルテンを含まない米粉組成物は、主に、発酵なしで製造されるパン・菓子に好適に用いられる。
【0029】
本発明の米粉組成物には、製造するパン・菓子の種類によって必要に応じ、α,α−トレハロースを除く糖類、食塩、ガム質、乳成分、卵成分、油脂、無機塩類およびビタミン類からなる群より選ばれる1種または2種以上をさらに配合することが好ましい。
【0030】
前記α,α−トレハロースを除く糖類としては、ぶどう糖、果糖、乳糖、砂糖、マルトース、イソマルトースなどの糖、またはソルビト−ル、マルチトール、パラチニット、水添水飴などの糖アルコールがあげられる。
【0031】
前記食塩としては、塩化ナトリウムが99%以上の精製塩、または天日塩もしくは粗塩等の粗製塩が制限なく用いられる。
【0032】
前記ガム質としては、米粉、白糠粉、グルテンその他の原料のなじみをよくする作用を有するものであれば特に制限されないが、アルギン酸、キサンタンガム、デキストリン、セルロース等があげられる。
【0033】
前記乳成分としては粉乳、脱脂粉乳、大豆粉乳等があげられる。
【0034】
前記卵成分としては、卵黄、卵白、全卵その他の卵に由来する成分があげられる。
【0035】
前記油脂としては、バター、マーガリン、ショートニング、ラード、オリーブ油等があげられる。
【0036】
前記無機塩類としては、塩化アンモニウム、塩化マグネシウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、硫酸アンモニウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、リン酸三カルシウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム、焼成カルシウム、アンモニウムミョウバン等があげられる。
【0037】
前記ビタミン類としては、ビタミンC、ビタミンB 、ビタミンB 、ビタミンD、ビタミンE、カロチン等があげられる。
【0038】
また、本発明の米粉組成物には、本発明の目的内で各種の食品または食品添加物を配合してもよく、例えば、ライ麦粉、ハト麦粉などの他の穀粉、植物の果実、種子もしくは枝葉、またはイーストフード、乳化剤などがあげられる。
【0039】
米粉組成物中におけるこれら原料の含有量は、パン・菓子の種類に応じて適宜設定することができる。
【0040】
本発明の米粉組成物は、プレミックス粉として業務用または家庭用に供され、工業的または家庭的に米粉パン・菓子の(発酵)生地を好適に作ることができる。また、前記生地を調理して、米粉パン・菓子を好適に作ることができる。
【0041】
本発明の発酵生地は、前記米粉組成物に水および酵母を加え、所望によりその他の原料を加え、混合し、所定の時間発酵させることにより得られる。加える水は特に制限されるものではなく、牛乳などの液体であってもよい。前記酵母は、パンや菓子の製造に通常用いられているサッカロミセス・セレビシエのパン酵母が制限なく用いられ、生酵母が好ましい。その他の原料は、前記米粉組成物に加えるもの(例えば、卵、油脂など)を組成物中に配合せずに生地の製造直前に加えてもよい。
【0042】
混合条件は、市販のミキサーを用い、製造するパン・菓子の種類に応じて当業者であれば適宜設定することができる。同様に、捏ね上げ温度および発酵時間も、当業者であれば適宜設定することができるが、捏ね上げ温度は23〜27℃が好ましく、第1発酵時間(フロアータイム)は30〜50分が好ましい。捏ね上げ温度が前記範囲を大きく逸脱しない限り、フロアータイムを前記範囲に制御するだけで良好な第1発酵状態が得られる。次に、ベンチタイムを15〜20分設けることが好ましい。
【0043】
本発明の生地は、前記米粉組成物に液体を加え、所望によりその他の原料を加え、混合することにより得られる。加える液体およびその他の原料は、前記発酵生地の場合と同様である。混合条件は、製造するパン・菓子の種類に応じて当業者であれば適宜設定することができる。目的に応じて、適宜生地をねかせてもよい。
【0044】
このようにして得られた本発明の発酵生地または生地は、成形した後続けて調理してもよいし、冷蔵または冷凍保存し、必要に応じて加温、解凍して調理してもよい。
【0045】
本発明の米粉パン・菓子の製造方法は、前記発酵生地を成形して焼成、フライ、蒸煮、マイクロ波加熱または加圧加熱により調理する工程を含む。発酵生地は、成形した後調理する前に、ホイロタイムを設けることが好ましい。
【0046】
前記工程のなかで、フロアータイムおよびホイロタイムは、良好な発酵状態が得られるためにはそれぞれ30分以上が好ましく、40〜50分がより好ましい。本発明の米粉組成物を用いた場合、ベンチタイム(15〜20分)も含めた全製造工程の所要時間が約120〜150分で外観、内相、食味に優れた高品質の米粉パンに仕上げることができる。これは、小麦粉を用いたパン製造の所要時間の約半分の時間であり、本発明の製造方法は、作業性の点からも優れた方法である。
【0047】
また、本発明の米粉パン・菓子の製造方法は、前記生地を成形して焼成、フライ、蒸煮、マイクロ波加熱または加圧加熱により調理する工程を含む。
【0048】
発酵生地または生地を調理する方法は、焼成、フライ、蒸煮、マイクロ波加熱または加圧加熱などの公知の方法が適宜採用できる。焼成方法としては、例えば、上面及び/又は下面から加熱するオーブン、または、前もって加熱された炉面などに直接接触させて加熱するなどの方法を用いることができる。フライ方法としては、例えば、食用油を使って加熱する調理法、いわゆる妙める、揚げるなどの方法を用いることができる。蒸煮方法としては、例えば、火炎上で加熱することにより蒸気を発生させて加熱する蒸し器、または、ボイラーを用いて予め作られた蒸気を容器内に送り込んで加熱するなどの方法を用いることができる。マイクロ波による方法としては、例えば、マイクロ波を発生、照射することのできる機能を備えた機器、装置を用いて加熱するなどの方法を用いることができる。加圧加熱方法としては、例えば、高温高圧条件で加熱することのできる圧力鍋、装置を用いて加圧加熱する方法を用いることができる。
【0049】
前記発酵生地または生地を成形する際に、アン、カレー、各種惣菜などの具材料を包み込んでアンパン、カレーパン、惣菜パンや中華饅頭等に仕上げることも有利に実施できる。あるいは、生地を加熱した後に生クリーム、カスタードクリーム等を加えることにより、ケーキ、シュークリーム等に仕上げることも可能である。
【0050】
本発明の製造方法により得られた米粉パン・菓子は、食パン、コッペパン、バターロール、揚げパン、菓子パン、フランスパン、ドイツパン、ベーグル、デニッシュパン、中華饅頭、イーストドーナツ、プレッツェル、ピザもしくはナン等の発酵により得られるパン・菓子、またはケーキ、パイ、スコーン、マフィンもしくはシュークリームなどの発酵せずに得られるパン・菓子など多種多様に及ぶが、本発明の米粉組成物を用いて、本発明の製造方法により得られるものであればこれらに限定されるものではない。
【0051】
このようにして得られた米粉パン・菓子は、日持ちがよく、冷蔵または冷凍保存することも容易であり、必要に応じて加温、解凍して喫食し、その食味を楽しむことも有利に実施できる。
【0052】
【実施例】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。
【0053】
(試験例1)
米粉パン製造用プレミックス粉に配合する白糠の量
グルテンを15重量%含有する米粉((株)斉藤製粉製、商品名「こめの粉(パン用)」)118重量部(米粉として100重量部に相当する)に対して、白糠(上白粉)を0、1、5、10、20または30重量部、砂糖7.2重量部、食塩2.4重量部、デキストリン2.4重量部および脱脂粉乳3.6重量部をミキサーを用いて混合し、製パン用のプレミックス粉を調製した。
【0054】
前記各プレミックス粉中の米粉と白糠粉の重量100重量部に対し、海洋酵母(三共フーズ(株)製)3重量部および水73.3重量部を加えて、ミキサーを用い、27℃で、低速5分、中速4分で混捏し、一時停止した後、更に中速で3分間混捏して生地を作製した。次いで、これをフロアータイムとして40分間発酵させた。生地は80gに分割して丸めを行い、15分間のベンチタイムを取った後、成形を行った。成形した生地の一部は、−20℃で冷凍保存した。
【0055】
成形した生地を38℃、湿度80%のホイロにて40分間の発酵を行った。発酵終了後、上火220℃、下火200℃のオーブンにて13分間焼成し、米粉コッペパンを得た。
【0056】
得られたコッペパンの外観、内相および食味について7人のパネラーによる官能試験を行い、以下の項目について、良、普通、不良で評価した。
Figure 2004024187
尚、評価でパネラーの意見がばらついた場合には、最も多い人数の評価を採用した。結果を表1に示す。
【0057】
【表1】
Figure 2004024187
評価したプレミックス粉は、白糠を含有しないものを除いてパン生地を製造するに際し、生地の付着性がなく、操作性、機械適性も良好であった。また、小麦粉を使用した場合と比べてフロアータイムおよびホイロタイムでの発酵時間は半分程度に短縮され、発酵時の生地の膨張は同じであり、作業性が良好であった。焼成してできるパンは、外観の変形もなく、容積の増加量が大きく、ふっくら膨らみ、色調も良好であった。パンの内相は、きめ、色調および触感も程良く、食味も良好であった。特に、白糠を10〜20重量部含有するプレミックス粉を用いた場合、すべての評価項目に優れていた。
【0058】
(試験例2)
米粉パン製造用発酵生地の冷凍によるパンの食味の影響
試験例1で冷凍保存した生地を、30日後に室温で解凍し、試験例1と同様にホイロタイムをとり、オーブンにて焼成し、米粉コッペパンを得た。得られたコッペパンを7名のパネラーにより官能試験を行ったところ、白糠を含有しない生地を除いて、解凍後の発酵において、冷凍保存しないものと比較しても差が見られず、食味も良好であった。
【0059】
(実施例1)
米粉食パンの製造
グルテンを15重量%含有する米粉((株)斉藤製粉製、商品名「こめの粉(パン用)」)118重量部(米粉として100重量部に相当する)に対して、白糠(上白粉)を10重量部、砂糖6.6重量部、食塩2.2重量部、海洋酵母(三共フーヅ(株)製)3.3重量部、デキストリン2.2重量部、無塩バター6.6重量部、脱脂粉乳3.3重量部、イーストフード0.1重量部および水85.8重量部をミキサーを用い、27℃で、低速5分、中速4分で混捏し、一時停止した後、更に中速で4分間混捏し、生地を作製した。次いで、これをフロアータイムとして40分間発酵させた。生地は分割比容積3.7に分割して丸めを行い、15分間のベンチタイムを取った後、型下3.5cmの容器に入れて山食パンに成形を行い、38℃、湿度80%のホイロにて40分間の発酵を行った。発酵終了後、上火210℃、下火240℃のオーブンにて45分間焼成し、米粉山食パンを調製した。
【0060】
本実施例で調製した生地は付着性なく、操作性、機械適性が良好で、小麦粉を使用した場合と比べてフロアータイム工程およびホイロ工程での発酵時間は半分程度に短縮され、発酵時の生地の膨張は同じであり、作業性は良好であった。また、できあがった山食パンは、容積の増加量が大きく、ふっくら膨らみ、色調も良好であって、断面のきめも程良く、食味も良かった。更に、1週間冷蔵庫内(5℃)で放置した後のパンの食感も殆ど変化がなく、硬化によるパサツキも見られず保存性もよかった。
【0061】
(実施例2)
米粉バターロールの製造
グルテンを15重量%含有する米粉((株)斉藤製粉製、商品名「こめの粉(パン用)」)118重量部(米粉として100重量部に相当する)に対して、白糠(上白粉)を20重量部をミキサーを用いて混合し、米粉組成物(プレミックス粉)を調製した。
【0062】
前記プレミックス粉138重量部に対して、砂糖14.4重量部、デキストリン2.4重量部、食塩2.04重量部、海洋酵母(三共フーヅ(株)製)3.6重量部、全卵18重量部、バター14.4重量部、牛乳24重量部、イーストフード0.1重量部および水46重量部をミキサーを用い、27℃で、低速5分、中速4分で混捏し、一時停止した後、更に中速で4分間混捏し、生地を作製した。次いで、これをフロアータイムとして40分間発酵させた。生地は40gに分割して丸めを行い、15分間のベンチタイムを取った後、ロールパンに成形を行い、38℃、湿度80%のホイロにて40分間の発酵を行った。発酵終了後、上火220℃、下火200℃のオーブンにて10分間焼成し、ロールパンを調製した。
【0063】
本実施例で調製した生地は付着性なく、操作性、機械適性良好で、小麦粉を使用した場合と比べてフロアータイム工程およびホイロ工程での発酵時間は半分程度に短縮され、発酵時の生地の膨張は同じであり、作業性は良好であった。また、できあがったロールパンは、容積の増加量が大きく、ふっくら膨らみ、色調も良好であって、断面のきめも程良く、食味も良かった。更に、1週間冷蔵庫内(5℃)で放置した後のパンの食感も殆ど変化がなく、硬化によるパサツキも見られず保存性もよかった。
【0064】
(実施例3)
米粉アンパンの製造
実施例2のプレミックス粉を用いて、米粉アンパンを製造した。プレミックス粉138重量部に対して、砂糖30重量部、デキストリン2.4重量部、食塩1.2重量部、海洋酵母(三共フーヅ(株)製)4.8重量部、全卵18重量部、マーガリン12重量部、脱脂粉乳3.6重量部、イーストフード0.1重量部および水72重量部をミキサーを用い、27℃で、低速5分、中速4分で混捏し、一時停止した後、更に中速で4分間混捏し、生地を作製した。次いで、これをフロアータイムとして50分間発酵させた。生地は40gに分割して丸めを行い、15分間のベンチタイムを取った後、アン種を入れて成形を行い、38℃、湿度80%のホイロにて50分間の発酵を行った。発酵終了後、上火220℃、下火200℃のオーブンにて10分間焼成し、米粉アンパンを調製した。
【0065】
本実施例で調製した生地は付着性なく、操作性、機械適性良好で、小麦粉を使用した場合と比べてフロアータイム工程およびホイロ工程での発酵時間は半分程度に短縮され、発酵時の生地の膨張は同じであり、作業性は良好であった。また、できあがった菓子パンは、容積の増加量が大きく、ふっくら膨らみ、色調も良好であって、断面のきめも程良く、食味も良かった。更に、1週間冷蔵庫内(5℃)で放置した後のパンの食感も殆ど変化がなく、硬化によるパサツキも見られず保存性もよかった。
【0066】
(実施例4)
米粉デニッシュパンの製造
実施例2のプレミックス粉を用いて、米粉デニッシュパンを製造した。プレミックス粉138重量部に対して、砂糖12重量部、デキストリン2.4重量部、食塩2.5重量部、海洋酵母(三共フーヅ(株)製)4.8重量部、無塩バター6重量部、脱脂粉乳4.8重量部、イーストフード0.1重量部および水85重量部をミキサーを用い、24℃で、低速5分、中速3分で混捏し、一時停止した後、更に中速で2分間混捏し、生地を作製した。次いで、これをフロアータイムとして20分間発酵させた。生地は238gに分割してシート状にし、−10℃で30分間ねかせた。次いで、シートの三折りを2回行い、さらに−10℃で30分間ねかせ、三折りをさらに1回行った。次いで、生地を厚さ3mmにのし、細三角形に切って成形を行い、30℃、加湿なしのホイロにて40分間の発酵を行った。発酵終了後、上火230℃、下火200℃のオーブンにて13分間焼成し、米粉デニッシュの一種米粉クロワッサンを調製した。
【0067】
クロワッサン生地製造時の生地は付着性なく、操作性、機械適性良好で、小麦粉を使用した場合と比べて製造時間は半分程度に短縮され、発酵時の生地の膨張も小麦粉を使用した場合と同じであり、作業性は良好であった。また、できあがったクロワッサンは、容積の増加量が大きく、ふっくら膨らみ、色調も良好であって、断面のきめも程良く、食味も良かった。更に、1週間冷蔵庫内(5℃)で放置した後の米粉クロワッサンの食感も殆ど変化がなく、硬化によるパサツキも見られず保存性も良かった。
【0068】
(実施例5)
米粉カレーパンの製造
実施例2のプレミックス粉を用いて、米粉カレーパンを製造した。プレミックス粉138重量部に対して、砂糖6重量部、デキストリン2.4重量部、食塩2.4重量部、海洋酵母(三共フーヅ(株)製)3.6重量部、ベーキングパウダー2.16重量部、ショートニング6重量部、脱脂粉乳3.6重量部、イーストフード0.1重量部および水88重量部をミキサーを用い、25℃で、低速5分、中速3分で混捏し、一時停止した後、更に中速で2分間混捏し、生地を作製した。次いで、これをフロアータイムとして40分間発酵させた。生地は40gに分割して丸めを行い、15分間のベンチタイムを取った後、カレー種を入れて成形を行い、38℃、湿度75%のホイロにて40分間の発酵を行った。発酵終了後、上火170℃、下火200℃のオーブンにて8分間焼成した後、170℃の油で揚げ、米粉カレーパンを調製した。
【0069】
本実施例で調製した生地は付着性なく、操作性、機械適性良好で、小麦粉を使用した場合と比べてフロアータイム工程およびホイロ工程での発酵時間は半分程度に短縮され、発酵時の生地の膨張は同じであり、作業性は良好であった。また、できあがった米粉カレーパンは、容積の増加量が大きく、ふっくら膨らみ、色調も良好であって、食味も良かった。
【0070】
(実施例6)
米粉マフィンの製造
グルテンを含まない米粉((株)斉藤製粉製「こめの粉」)1400g、白糠(上白粉)280g、ベーキングパウダー36gおよび重曹18gを混合し、篩にかけた。油脂480gとグラニュー糖900gをよく混ぜ合わせ、全卵(LL)12個を加えてさらに混ぜた後、前記米粉組成物をふるい入れ、かるく混ぜた。次に、ミルクパウダー300gと水900gを加え、さらにブルーベリーホール1200g、ブルーベリードライ150gおよびオレンジペースト小さじ1/2杯を加え、軽く混ぜてマフィン生地を作製した。前記生地をマフィン型に流し入れ、上火180℃、下火170℃のオーブンにて20分間焼成し、ブルーベリー米粉マフィンを調製した。
【0071】
米粉マフィン生地製造時の生地は付着性なく、操作性、機械適性良好で、小麦粉を使用した場合と比べて製造時間は変わりなく、発酵時の生地の膨張も小麦粉を使用した場合と同じであり、作業性は良好であった。また、できあがった米粉マフィンは、容積の増加量が大きく、ふっくら膨らみ、色調も良好であって、断面のきめも程良く、食味も良かった。更に、1週間冷蔵庫内(5℃)で放置した後の米粉マフィンの食感も殆ど変化がなく、硬化によるパサツキも見られず保存性も良かった。

Claims (9)

  1. 米粉100重量部と白糠粉1〜300重量部とを含んでなるパン・菓子用米粉組成物。
  2. さらにグルテン1〜30重量部を含んでなる請求項1記載の米粉組成物。
  3. α,α−トレハロースを除く糖類、食塩、ガム質、乳成分、卵成分、油脂、無機塩類およびビタミン類からなる群より選ばれる1種または2種以上をさらに配合してなる請求項1または2に記載の米粉組成物。
  4. 請求項1〜3いずれかに記載の米粉組成物に酵母を作用させてなる発酵生地。
  5. 請求項1〜3いずれかに記載の米粉組成物に液体を加えてなる生地。
  6. 請求項1〜3いずれかに記載の米粉組成物に水および酵母を加えて混合し、発酵させて発酵生地を作る工程、および発酵生地を成形して焼成、フライ、蒸煮、マイクロ波加熱または加圧加熱により調理する工程を含む米粉を主原料とするパン・菓子の製造方法。
  7. 請求項1〜3いずれかに記載の米粉組成物に液体を加えて混合し、生地を作る工程、および生地を成形して焼成、フライ、蒸煮、マイクロ波加熱または加圧加熱により調理する工程を含む米粉を主原料とするパン・菓子の製造方法。
  8. 請求項6または7に記載の方法により得られる米粉パン・菓子。
  9. 米粉パン・菓子が食パン、コッペパン、バターロール、揚げパン、菓子パン、フランスパン、ドイツパン、ベーグル、デニッシュパン、中華饅頭、イーストドーナツ、プレッツェル、ピザもしくはナン、またはケーキ、パイ、スコーン、マフィンもしくはシュークリームである請求項8に記載の米粉パン・菓子。
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