JP3840639B2 - おから配合膨化食品 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はおからを配合したパン、ピザ、クッキーなどの膨化食品であり、食物繊維等の豊富なおからを高含有率で配合しながら、食感や風味に優れたものを提供する。
【0002】
【従来の技術】
パン、クッキーなどの膨化食品は、小麦粉などの穀粉類、各種デンプン類などを主原料として、オーブンなどで加熱調理して製造される。
近年、栄養価が高く、安価であるうえ、食物繊維、ビタミン類などを豊富に含んだ膨化食品として、おからを配合し、或はこれに豆乳などを併用添加したパン類、ピザ類などが注目されている。
例えば、特開2001−169715号公報には、おからを小麦粉100重量部に対して5〜95重量部配合したおから配合パンが開示されている。
特開平11−318322号公報には、湿式粉砕おからを小麦粉に対して20〜80重量%配合した同おからパンが開示されている。
特開平11−266774号公報には、豆乳とおからを一定割合で充分に混合した組成物(おから・豆乳一体化物)を、小麦粉100重量部に対して2〜25重量部(ベーカーズパーセント)配合した同おからパンが開示されている。
特開平11−289968号公報には、豆乳とおからと油脂からなる豆乳クリームを小麦粉100重量部に対して3〜35重量部(ベーカーズパーセント)配合したおからパンが開示されている。
また、特開平11−46673号公報には、デンプン類と食用油と水を原材料とするピザ生地におからを配合したおからピザが開示されている。
【0003】
しかしながら、上記従来技術では、健康指向の要請からおからの配合率を増すと、先ず、パサついた食感が増して違和感を禁じ得ず、さらに、おから独特の臭気、或はえぐ味が強くなって、風味も損なう。従って、おからをパンやピザ生地に配合する場合には、小麦粉などの穀粉類やデンプン類の合計に対して最大でも15重量%程度しか配合できないのが実情であった。
また、小麦粉と異なり、おからはグルテンを含まないため、生地が硬く、焼き上がったときの膨化が充分でないなどの問題もある。
【0004】
一方、本出願人は、先に、特開昭63−177753号公報(以下、先行技術1という)で、豆腐:小麦粉=30〜70:70〜30(重量比)の混合物に、卵白又は全卵とベーキングパウダーなどの膨化剤を配合し、また、必要に応じておから、或は、デンプン、グルカン等の糖質などを配合し(同公報の第3頁の左下欄参照)、送風下でマイクロ波加熱を施すことにより、良好な膨化と、風味及び食感に優れたパン、ケーキ又はクッキー様の膨化食品を開示した。
また、本出願人は、特開平7−147936号公報(以下、先行技術2という)で、大豆蛋白質40〜85部と小麦粉15〜60部との混合物に、大豆皮、ガラクトオリゴ糖などの食物繊維と、起泡剤を配合し、必要に応じてデンプン(好ましくはワキシスターチ)などを配合し、マイクロ波加熱することにより、低カロリーで美味な食物繊維添加膨化食品を開示した。
さらに、同じく、特開平9−107887号公報(以下、先行技術3という)で、大豆蛋白とコーンスターチ、小麦デンプン、化工デンプンなどのデンプン類とを、大豆蛋白:デンプン類=1:0.3〜0.7の割合で混合した物に卵成分と膨化剤を配合し、また、必要に応じて生おから、おから粉末などの食物繊維を配合して(同公報の段落11参照)、マイクロ波加熱することにより、クリスピーな食感で、栄養バランスに優れたパン又はクッキー様の膨化食品を開示した。
【0005】
他方、本出願人が開示した上記先行技術と同様に、マイクロ波加熱で製造した膨化食品の従来技術としては、次のものがある。
即ち、特開平2−5828号公報には、ゲル化大豆蛋白と非ゲル化大豆蛋白の混合物に、凍結乾燥山芋を含有する卵白などの起泡剤と、モチ米粉を配合し、また、必要に応じて、おから、米粉以外のデンプンなどを配合し(同公報の第4頁の左下欄参照)、マイクロ波加熱することにより、風味、食感に優れたパン又はクッキー様の膨化食品が開示されている。
同様に、特開平7−23739号公報には、大豆蛋白とコーンスターチ、小麦デンプン、化工デンプンなどのデンプン類と生おから、おから粉末などの食物繊維とを、大豆蛋白:デンプン類:食物繊維=1:0.2〜0.8:0.01〜0.4の割合で混合した物に植物性起泡剤を配合し、マイクロ波加熱することにより、栄養バランスに優れ、コレステロール含量が低いパン又はクッキー様の膨化食品が開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、おからの配合率を増した膨化食品ではパサつき感が強く、風味に欠けるという前記問題点を解消すべく、上記先行技術1〜3を出発点として、小麦粉などの穀粉類におからを配合し、或はさらに豆乳を配合し、これらに化工デンプンの代表例であるα化デンプンを配合して食品生地を調製し、オーブン加熱して膨化食品を製造することを試みたが、おからの配合率が高い場合には、やはり食感と風味で満足できるものを得るのは容易でなかった。
本発明は、小麦粉などの穀粉類におからを高含有率で配合しても膨化食品の食感と風味を良好に改善することを技術的課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、小麦粉などの穀粉類と、化工デンプンと、おからと、膨化剤を生地とする膨化食品において、当該化工デンプンの種類、或は、生地の加熱方法などを鋭意研究した結果、化工デンプンに特定の冷水膨潤度を有するα化架橋デンプンを使用し、さらには、生地の膨化用加熱をマイクロ波加熱で行うと、小麦粉などの穀粉類に高含有率でおからを配合しても、パサつき感やおから特有の臭気を抑制できることを見い出し、本発明を完成した。
【0008】
即ち、本発明1は、おからと、小麦粉などの穀粉類と、化工デンプンと、膨化剤とを配合して食品生地を調製し、当該食品生地を加熱して膨化したおから配合膨化食品において、
上記化工デンプンが冷水膨潤度4〜35のα化架橋デンプンであり、
穀粉類と化工デンプンの合計量AとおからBの重量比率が、B/A=3/1〜1/5で配合するとともに、
上記膨化用の加熱がマイクロ波加熱であることを特徴とするおから配合膨化食品である。
【0009】
本発明2は、上記本発明1において、食品生地に、さらに豆乳と豆腐の少なくともいずれかを配合したおから配合膨化食品である。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明は、第一に、小麦粉などの穀粉類と特定の化工デンプンとおからと膨化剤を配合した生地にマイクロ波加熱を施した膨化食品であり、第二に、おからに豆乳や豆腐を併用添加した膨化食品である。
【0011】
上記特定の化工デンプンは冷水膨潤度4〜35のα化架橋デンプンである。
上記α化架橋デンプンはα化と架橋の両処理を施したデンプンであり、任意の方法で製造できるが、生産性の見地からデンプンを予め架橋処理した架橋デンプンをα化するのが好ましい。
上記架橋デンプンは、常法により架橋剤のみを反応させた架橋デンプンでも良いし、架橋処理とエーテル化処理或はエステル化処理を組み合わせたエーテル化架橋デンプンやエステル化架橋デンプンであっても良い。
上記架橋剤はトリメタリン酸塩、ヘキサメタリン酸塩、オキシ塩化リン、アジピン酸などであり、エステル化剤は無水酢酸、酢酸ビニル、無水コハク酸などであり、エーテル化剤はプロピレンオキサイドなどである。
架橋デンプンの製造に用いる原料デンプンは、馬鈴薯デンプン、甘薯デンプン、タピオカデンプン、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、小麦デンプンなどを初め、任意のデンプンが使用できる。当該架橋デンプンのα化は、常法によりドラムドライヤー(ホットロール)法又はエクストルーダー法などにより行われる。
本発明のα化架橋デンプンの冷水膨潤度は、主に架橋の程度によって左右され、架橋を強くすると冷水膨潤度は低くなるが、その一方、α化(糊化)の条件によっても影響を受けるため、この架橋処理の程度とα化処理の条件を適正に設定して、α化架橋デンプンの冷水膨潤度を4〜35に調整することが重要である。
上記冷水膨潤度は、多量の水の存在下に一定温度で30分間置いた際に、当該デンプンの乾物が水を吸収して膨潤する度合であり、具体的には下記の方法で測定される。
即ち、α化架橋デンプンの試料約1gを30℃の蒸留水100mlに分散し、30℃の恒温槽中で30分間撹拌して膨潤させた後、3000rpm、10分間の条件で遠心分離してゲル層と上澄み層に分け、当該ゲル層の重量Pを、このゲル層を105℃で乾燥した乾固物の恒量Qで除して、冷水膨潤度(=P/Q)を算出するのである。
上記α化架橋デンプンの冷水膨潤度が4より小さいと、小麦粉などの穀粉とおからの配合によるなじみが低下し、膨化食品に粉っぽさが増して喉越しが悪くなるとともに、冷水膨化度が35を越えると、食品に粘着性が出て口溶けが悪くなる。
【0012】
上記穀粉類は、小麦粉として慣用の強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉などを初め、コーンスターチ、ワキシスターチ、タピオカデンプン、馬鈴薯デンプン、米粉、甘薯デンプン、小麦デンプン、米デンプン、ハイアミロースコーンスターチ、コーンフラワーなどである。また、本発明の特定の化工デンプン以外の公知の化工デンプン(例えば、通常のα化デンプン)、或はマルトデキストリンなどの各種デキストリン類などであっても良い。
上記膨化剤は、イーストを初め、炭酸水素ナトリウムなどのガス発生原料と酒石酸などの酸剤からなるベーキングパウダー、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウムなどであり、イースト、ベーキングパウダーが好ましい。イーストを用いると風味の向上に資する。
【0013】
本発明の膨化食品では、穀粉類及びα化架橋デンプンの合計量Aと、おからBの重量比率は、B/A=3/1〜1/5で配合される。即ち、湿潤状態のおからを基準として、穀粉類と化工デンプンの合計量に対しておからを300重量%〜20重量%の割合で配合し、好ましくは150重量%〜35重量%で配合する。本発明の膨化食品は食物繊維の豊富なおからを高率で含有することができるが、おからの配合率が低い場合にも、本発明は適用可能であり、食感、風味に優れた膨化食品が得られることはいうまでもない。
但し、おからが20重量%より少ないと、所期の目的と齟齬して、栄養バランスや健康指向性が低下する恐れがある。逆に、おからが300重量%を越えると、膨化性が低下するとともに、上記α化架橋デンプンを使用しても、食品のパサつき感やおから臭が増大して商品価値が低減する。
また、上記小麦粉などの穀粉類と上記α化架橋デンプンの配合率は、穀粉類100重量部に対してα化架橋デンプン5〜60重量部程度が好ましい。上記α化架橋デンプンの割合が少ないと食感と風味の改善が進まず、多すぎても食品の膨化性や食感(軟らかさ)を損なう恐れがある。
【0014】
常法により磨砕大豆を熱水抽出した濾液が豆乳であり、その濾別した残滓がおからである。
本発明の膨化食品生地は、このおからを必須成分とするが、おからに加えて、当該豆乳や、豆乳を凝固剤で固めた豆腐を配合することができる。
おからには食物繊維やビタミン類が豊富に含まれる一方、豆乳や豆腐には植物性タンパクが豊富であるため、豆乳、豆腐の補填は栄養バランスと健康増進の向上に資する。
豆乳はそのままで生地に配合すれば良いが、この場合には、生地全体への添加水分量を抑制する必要がある。豆腐は絹こし豆腐、木綿豆腐などの任意の豆腐を使用でき、粗く擂潰して配合すると良い。豆乳に替えて、大豆タンパク粉の調製液を使用することもできる。
また、おからと共に、食物繊維を配合強化する見地から、ポリデキストロース、コーンファイバー、ふすま、グルコマンナン、ペクチン、カラギナン、キサンタンガム、グアーガム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどの食物繊維を併用しても良い。
【0015】
本発明の膨化食品生地には、栄養バランス、食感、風味、或は膨化形態の改善などの見地から、起泡剤、油脂類、調味料又は風味料などを配合することができる。
上記起泡剤としては、卵白、卵白粉末、全卵系の卵系起泡剤、酵素分解大豆タンパク系起泡剤(バーサホイップ、ミラフォーム)、微粉末状セルロース系起泡剤などが挙げられる。また、起泡剤には、グアーガム、サイリウムシードガム、ローカストビーンガムなどの植物性ガム、寒天、水溶性デンプン、水溶性大豆タンパク、グルコマンナン、カルボキシメチルセルロース、キトサンなどの起泡安定剤を併用しても良い。これらのうち、植物性ガム、グルコマンナンなどのような増粘剤は、おからに含まれる食物繊維の食感をやわらげる効果がある。当該安定剤は、その安定化特性にもよるが、起泡剤100重量部に対して50〜1500重量部、好ましくは70〜1000重量部である。
上記油脂類としては、大豆油、菜種油、コーン油、綿実油、パーム油、ゴマ油、サフラワー油、サラダオイル、オニオンオイルなどの植物性油脂、牛脂、豚脂、バターなどの動物性油脂、或は、マーガリン、ショートニングなどが挙げられるが、植物性油脂が好ましい。
上記調味料又は風味料としては、甘味料、酸味料、フレーバー類、香辛料、食塩、化学調味料などが挙げられる。甘味料は砂糖(グラニュー糖など)、ブドウ糖、果糖、或はこれらの混合糖、コーンシロップなどであり、酸味料はレモン果汁などであり、フレーバー類は果実類又はその合成フレーバー、バター、チーズ、脱脂粉乳、全脂粉乳などの乳製品、バニラ、緑茶、ゴマ、チョコレートなどである。
これらの補填材料の配合割合は、上記小麦粉などの穀粉類とα化架橋デンプンの合計100重量部に対して5〜60重量部程度が好ましい。
【0016】
本発明の膨化食品は生地を成形した後、加熱して膨化させることにより製造される。この際、熟成させることは必須ではなく、得られた生地を直ちに加熱しても良い。冷凍された生地は解凍しても良いが、解凍することなく加熱しても差し支えない。
上記膨化用加熱の方式は、おからを高率で含有してもパサつき感とおから臭を抑制するために、電磁波オーブン、電子レンジなどを使用したマイクロ波加熱に限定され、従って、オーブン加熱などは排除される。
上記マイクロ波加熱によれば、生地の内部から加熱することができ、ローブ容量が大きく、均一な膨化食品が得られる。この場合、マイクロ波加熱を送風条件で行えば、マイクロ波照射室壁への結露が防止できるとともに、水分を効率良く蒸発できるので有利である。送風量は生地の仕込み量に合わせて適宜選択される。また、生地に照射されるマイクロ波の出力を経時変化させると、膨化度を調整することができ、生地が過度に加熱されたり、焦げることを防止できる。
【0017】
上記マイクロ波加熱では、使用されるマイクロ波の周波数は特に限定はされず、数百Wの程度の市販の電子レンジを用いることも勿論できるが、周波数13MHz〜18,000MHz程度の業務用レンジが用いられる。使用されるマイクロ波の出力も生地中の水分量、照射時間などに合わせて適宜選択される。
マイクロ波の照射は、バッチ方式、連続方式を問わず、送風機付きの回転テーブル方式の装置を用いても良い。また、均一に加熱できるように、フッ素樹脂をコートしたガラス繊維や強化プラスチック等からなるメッシュやメッシュベルトなどのように、マイクロ波透過性の良い材質の上に生地を並べ、生地にマイクロ波を上下から照射する方法が好ましい。
【0018】
マイクロ波加熱装置としては、生地に照射したマイクロ波の出力を経時変化させて、脱水、膨化を行う方式のものが好ましく、具体的には、連続した複数の部屋からなり、照射初期の室のマイクロ波出力が大きく、それから順次小さくなるように設計されたマイクロ波照射装置が挙げられる。このような装置では、生地を連続的に第1室から通過させることにより、当初に大量の水分を蒸発させ、次いで膨化の程度によりマイクロ波の出力を調整するのである。
従って、各部屋の出力を制御するため、過剰照射による膨化食品の焦げ付きを防止したり、膨化度の異なる食品を容易に調製することができる。
【0019】
本発明の膨化食品は、食品生地を膨化させた後、焼成、フライ、蒸煮などの加熱調理を施されて、食膳に供される。
本発明の膨化食品は、膨化率5〜12程度のパン、ケーキ又はクッキー様の膨化食品であり、具体的には、パン(食パン、菓子パンなど)、蒸しパン(肉まん、あんまんなどを含む)、ピザ、ドーナツ、ホットケーキ、ピロシキ、スポンジケーキ、特殊パン(マフィン、グリッシーニ、ラスク)などのベーカリー食品、スナック菓子などであり、好ましくは、パン類、ピザ類、ドーナツ類などである。
【0020】
【発明の効果】
(1)本発明の膨化食品はおからを高率で配合できるため、食物繊維やビタミン類が豊富であり、栄養バランスの改善と健康増進を同時に図れるとともに、整腸作用、栄養の過剰摂取の抑制ばかりでなくガンの抑制作用なども期待でき、健康嗜好品として好適である。
【0021】
(2)本発明では、化工デンプンに特定の冷水膨潤度を有するα化架橋デンプンを使用するため、この特殊な化工デンプンの介在作用で小麦粉などの穀粉類とおからの配合の親和性が改善され、さらには、マイクロ波加熱で生地の内部から効率良く加熱するので、上記穀粉類とおからのなじみがより促進されると推定できる。このため、マイクロ波加熱と特殊な化工デンプンの使用により、おからを高率(穀粉類などに対して最大で300%)で配合しても、パサつき感やおから臭を抑制でき、優れた食感、風味の膨化食品を製造できる。
また、膨化食品をフライにして加熱調理した場合、吸油率を顕著に低減してコロステロールやカロリー摂取量を有効に軽減できる。
【0022】
【実施例】
以下、本発明のα化架橋デンプンの製造例、膨化食品の製造実施例、当該実施例で得られた膨化食品の食感と風味の官能試験例を順次説明する。下記の実施例、試験例中の「部」、「%」は重量基準である。
尚、本発明は下記の実施例、試験例などに拘束されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意の変形をなし得ることは勿論である。
【0023】
《α化架橋デンプンの製造例》
(1)α化リン酸架橋デンプン
硫酸ナトリウム10部を溶解した水120部に市販の馬鈴薯デンプン100部を加えたスラリーを調製し、3%の水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH11.2〜11.5に維持しながら、トリメタリン酸ナトリウムを下記の割合で各スラリーに配合し、42〜45℃で8時間架橋反応を行った後、塩酸で中和し、水洗してリン酸架橋デンプンを得た。
この架橋デンプンをドラムドライヤーでα化し、粉砕することにより、冷水膨潤度の異なる製造例1〜3及び比較製造例1〜2のα化リン酸架橋デンプンを夫々製造した。
【0024】
製造例1〜3及び比較製造例1〜2のα化リン酸架橋デンプンにおけるトリメタリン酸塩の配合率と冷水膨潤度は次の通りである。
Figure 0003840639
【0025】
(2)アセチル化したα化架橋デンプン
上記(1)の製造例において、馬鈴薯デンプンをタピオカデンプンに替え、トリメタリン酸ナトリウムの配合率を0.2部とし、それ以外の条件を同様にして架橋反応を行い、塩酸でpH9.0に調整して25℃に冷却した。次いで、3%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH8.0〜9.5に維持しながら、無水酢酸4部を加えてアセチル化し、塩酸で中和、水洗してアセチル化架橋デンプンを調製した。そして、この架橋デンプンをドラムドライヤーでα化し、粉砕して、製造例4のアセチル化したα化架橋デンプンを製造した。
この製造例4のα化架橋デンプンの冷水膨潤度は11.3であった。
【0026】
《α化架橋デンプンの種類を変えた膨化食品の製造実施例》
(1)実施例1
湿潤状態にある生おから55部、強力小麦粉45部、上記製造例1のα化架橋デンプン10部、マルトデキストリン10部、ベーキングパウダー2部、イースト2部、水38部をミキサーで低速3分、中高速2分混捏した後、サラダオイル10部を加えてさらに低速2分、中高速7分混捏して生地を調製し(生地の混捏温度は26℃)、シーターテーブルで厚み4mmに圧延した後、型抜きして直径13cmの円形の生地とした。
この生地を二つ折にしてピザトッピング用の具材を包み、周辺を閉じて500Wの電子レンジで3分間加熱して膨化させた後、1分間フライしてピザ風の膨化食品を得た。
尚、小麦粉、α化架橋デンプン及びマルトデキストリンの合計に対する生おからの配合率は55/65=85%であった。また、上記マルトデキストリンは松谷化学工業社製のTK−16を用いた。
【0027】
(2)実施例2〜4
上記実施例1を基本としながら、α化架橋デンプンを前記製造例1で得られたものから下記に示す通りに代替し(配合量は共に10部)、それ以外の条件を実施例1と同様に処理してピザ風の膨化食品を製造した。
Figure 0003840639
【0028】
(3)比較例1〜3
上記実施例1を基本としながら、比較例1においてはα化架橋デンプンを製造例1から比較製造例1に、比較例2においてはα化架橋デンプンを製造例2から比較製造例2に夫々代替し、それ以外の条件を実施例1と同様に処理してピザ風の膨化食品を製造した。
また、比較例3においては、上記実施例1を基本として、前記製造例1のα化架橋デンプンを、架橋処理されていない通常のα化デンプン(松谷工業化学社製;マツノリンM−22)に代替し、それ以外の条件を実施例1と同様に処理してピザ風の膨化食品を製造した。
【0029】
《α化架橋デンプンを変化させた膨化食品の食感及び風味の官能試験例》
そこで、上記実施例1〜4及び比較例1〜3で得られた各膨化食品について、食感及び風味を下記の基準に従って夫々評価した。
(1)食感の評価基準
◎:粉っぽさやぼそつき感がなく、口溶けや喉越しも優良。
○:粉っぽさやぼそつき感が殆どなく、口溶けや喉越しも良好。
△:粉っぽさやぼそつき感が多少あり、口溶けや喉越しがやや悪い。
×:粉っぽさやぼそつき感が強く、口溶けや喉越しが悪い。
(2)風味
◎:おから臭がなく、優良。
○:おから臭が殆どなく、良好。
△:おから臭があって、えぐみを感じる。
×:おから臭が強く、えぐみが大きい。
【0030】
下表はその試験結果である。
Figure 0003840639
【0031】
上表によると、α化架橋デンプンの冷水膨潤度が4〜35の特定範囲内にある実施例1〜4では、小麦粉やα化架橋デンプンなどの合計量に対して約85%のおからを含有する膨化食品にあっても、粉っぽさやぼそつき感がなく、おから特有の臭気もなかったが、冷水膨潤度が35を越える比較例1では食感が劣り、冷水膨化度が4より少ない比較例2では食感、風味共に劣った。また、通常のα化デンプンを使用した比較例3では、比較例1〜2より評価がさらに低く、特に食感が悪かった。
以上のことから、おからを多く配合した膨化食品の食感と風味を改善するためには、化工デンプンとしてα化架橋デンプンを選択すること、また、このα化架橋デンプンは特定範囲の冷水膨化度を有することが重要である点が確認できた。
【0032】
《おからの配合率を変えた膨化食品の製造実施例》
(1)実施例5
前記実施例1を基本としながら、下表に示すように、生おから、強力小麦粉、α化架橋デンプン、マルトデキストリンの合計量を固定したまま、生おからと強力小麦粉の配合率を変化させ、それ以外の成分の配合率を同じに設定して、膨化食品を製造した。
従って、本実施例5では、強力小麦粉、α化架橋デンプン、マルトデキストリンの合計量に対する生おからの配合率は75/35=214%であった。
Figure 0003840639
【0033】
(2)実施例6
上記実施例5を基本としながら、下表に示すように、生おからと強力小麦粉(及び水)の配合率を変化させ、それ以外の条件を実施例5と同様に設定して、実施例6の膨化食品を製造した。
Figure 0003840639
従って、本実施例6では、強力小麦粉、α化架橋デンプン、マルトデキストリンの合計量に対する生おからの配合率は50/60=83%であった。
【0034】
(3)実施例7
上記実施例5を基本としながら、下表に示すように、生おからと強力小麦粉(及び水)の配合比を変化させ、それ以外の条件を実施例5と同様に設定して、実施例7の膨化食品を製造した。
Figure 0003840639
従って、本実施例7では、強力小麦粉、α化架橋デンプン、マルトデキストリンの合計量に対する生おからの配合率は30/80=38%であった。
【0035】
(4)比較例4
上記実施例5を基本としながら、下表に示すように、生おからと強力小麦粉(及び水)の配合比を変化させ、それ以外の条件を実施例5と同様に設定して、比較例4の膨化食品を製造した。
Figure 0003840639
従って、本比較例4では、強力小麦粉、α化架橋デンプン、マルトデキストリンの合計量に対する生おからの配合率は85/25=340%であった。
【0036】
(5)比較例5
上記実施例5を基本としながら、下表に示すように、生おからと強力小麦粉(及び水)の配合比を変化させ、それ以外の条件を実施例5と同様に設定して、比較例5の膨化食品を製造した。
Figure 0003840639
従って、本比較例5では、強力小麦粉、α化架橋デンプン、マルトデキストリンの合計量に対する生おからの配合率は10/100=10%であった。
【0037】
(6)比較例6
上記実施例5を基本としながら、下表に示すように、生おからと強力小麦粉(及び水)の配合比を変化させ、α化架橋デンプンを添加せず、それ以外の条件を実施例5と同様に設定して、比較例6の膨化食品を製造した。
Figure 0003840639
従って、本比較例6では、強力小麦粉、マルトデキストリンの合計量に対する生おからの配合率は50/60=83%であった。
【0038】
《おから配合率を変えた膨化食品の食感及び風味の官能試験例》
そこで、上記実施例5〜7及び比較例4〜6で得られた各膨化食品について、食感及び風味を前記官能試験の基準に従って夫々評価した。
下表はその試験結果である。
Figure 0003840639
【0039】
上表によると、おからの配合率が20〜300%の特定範囲内にある実施例5〜7では、粉っぽさやぼそつき感がなく、おから特有の臭気もなかった。特に、おからの配合率が多い実施例5(214%)においても、食感、風味は良好であった。
これに対して、おからの配合率が340%に達する比較例4では、当然に食感と風味が劣り、逆に、おからの配合率が10%と少ない比較例5では食感が劣り、また、おからの配合率が本発明の範囲内であっても、α化架橋デンプンを添加しない比較例6では、特に食感が悪かった。
以上のことから、おから配合の膨化食品の食感と風味を改善するためには、化工デンプンとしてα化架橋デンプンを選択すること、また、強力小麦粉、α化架橋デンプンなどの合計量に対する生おからの配合率が過剰でも過小でもだめであり、適正範囲を保持することが重要である点が確認できた。
【0040】
《マイクロ波加熱の有無による膨化食品の対比試験例》
食品生地をマイクロ波加熱した後に油で揚げて(フライにより)加熱調理した場合と、食品生地をマイクロ波加熱しないで直接にフライした場合を比較した。
即ち、前記実施例2では、食品生地を電子レンジにより3分間マイクロ波加熱した後に1分間フライしたが、本試験例では、食品生地をマイクロ波加熱しないで直接に3分間フライして得られた膨化食品(他の条件はすべて実施例2と同様とする)を比較例7として、実施例2との対比において食品の食感、風味を比べた。
前述したように、実施例2は食感及び風味共に優良の評価であったが、この比較例7の膨化食品は油っぽくてボソついた食感を有し、おから臭も強く違和感のある風味であった。
【0041】
そこで、この実施例2と比較例7の吸油率(%)を下式に基づいて測定したところ、実施例2の吸油率は12.7%と低かったが、比較例7では27.4%と多かった。
吸油率(%)=
{(フライ前の油量(g)−フライ後の油量(g))/製品重量(g)}×100
従って、おから配合の膨化食品の食感と風味を改善するためには、膨化用加熱にマイクロ波加熱を選択することが重要であることが確認できた。また、食品生地をマイクロ波加熱してからフライすると、吸油率を顕著に低減でき、コレステロールやカロリー摂取量の軽減が図れるため、健康食品として好適であることが判明した。
【0042】
次いで、本発明のα化架橋デンプンの配合下に、おからと豆腐を併用添加した膨化食品を製造し、その食感及び風味を調べた。
《おからと豆腐を併用添加した膨化食品の実施例》
前記製造例2のα化架橋デンプンの存在下に、下記の組成で食品材料を混捏して生地を調製し、30gに分割してベンチタイムを30分とり、成形した後、電子レンジ(500W)で3分間加熱・膨化した。次に、182℃で2分フライして、おからと絹こし豆腐を配合したケーキドーナツを製造した。
おから 30部
絹こし豆腐 20部
薄力小麦粉 30部
α化架橋デンプン(製造例2) 15部
エステル化タピオカデンプン 5部
グラニュー糖 5部
マルトデキストリン 20部
脱脂粉乳 3部
食塩 0.5部
ショートニング 8部
乳化気泡油 0.5部
ベーキングパウダー 2部
全卵 20部
水 20部
【0043】
上記エステル化タピオカデンプンは松谷化学工業社製の松谷桜2、マルトデキストリンは同社製のTK−16を使用した。絹こし豆腐は常法により豆乳を凝固した後、これを粗砕したものを使用した。また、本実施例では、小麦粉、タピオカデンプン、マルトデキストリン及びα化架橋デンプンの合計量に対するおから及び豆腐の配合比は50/70=71%であった。
得られたドーナツ風の膨化食品は、粉っぽさやぼそつき感がなく、口溶けや喉越し共に良好であるうえ、豆乳臭、おから臭がなく、好ましい風味であった。
従って、本発明のα化架橋デンプンを使用することにより、おからと共に豆腐を配合しても、食感と風味に優れた膨化食品を製造できることが判明した。

Claims (2)

  1. おからと、小麦粉などの穀粉類と、化工デンプンと、膨化剤とを配合して食品生地を調製し、当該食品生地を加熱して膨化したおから配合膨化食品において、
    上記化工デンプンが冷水膨潤度4〜35のα化架橋デンプンであり、
    穀粉類と化工デンプンの合計量AとおからBの重量比率が、B/A=3/1〜1/5で配合するとともに、
    上記膨化用の加熱がマイクロ波加熱であることを特徴とするおから配合膨化食品。
  2. 食品生地に、さらに豆乳と豆腐の少なくともいずれかを配合した請求項1に記載のおから配合膨化食品。
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