JP3602890B2 - 電子写真感光体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、感光層を形成するバインダー樹脂としてポリアリレートを用いた電子写真感光体に関する。さらに詳しくは機械的特性及び電気的特性に優れた電子写真感光体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
最近の電子写真感光体においては、積層型の電子写真感光体、すなわち、感光層が露光により電荷を発生させる電荷発生層(CGL)と電荷を輸送する電荷輸送層(CTL)との少なくとも2層を有する積層型の有機電子写真感光体(OPC)や、感光層が電荷発生物質及び電荷輸送物質をバインダー樹脂に分散させた単一層からなる単層型の電子写真感光体が提案され、利用されている。積層型の電子写真感光体の電荷輸送層及び単層型電子写真感光体の感光層のバインダー樹脂としては、両者とも2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下ビスフェノール−Aと略称する)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(以下ビスフェノール−Zと略称する)、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下ビスフェノール−Cと略称する)を原料としたポリカーボネート樹脂が広く利用されている。
【0003】
ビスフェノール−Aを原料としたポリカーボネート樹脂は、電荷輸送物質との相溶性が良好であるため、これをバインダー樹脂とした感光層を有する感光体とした場合に電気特性が良好であり、また比較的機械的強度が大きいという特徴を有している。
しかしながら、バインダー樹脂としてビスフェノール−Aを原料とするポリカーボネート樹脂を用いて感光層を形成した場合には、以下に示すような問題点があることが明らかになった。
【0004】
(1)感光体作成時において、感光層を塗布する際、使用する溶媒によっては塗工液がゲル化したり、感光層を形成するバインダー用樹脂が結晶化を起こすことがある。これらのゲル化や結晶化を起こした部分では、光減衰がなく、電荷は残留電位となって残り、画質上ディフェクトとなって出現する。
(2)通常の負帯電型電子写真感光体の場合、ビスフェノール−Aを原料とするポリカーボネート樹脂を用いた感光層は、下引層との密着性が悪いため、剥離し易かったり、表面硬度が不足しているので、傷ついたり、表面が摩耗して耐刷寿命が短くなるという欠点がある。ここで意味する下引層とは、積層型感光体の場合では電荷発生層を、単層型及び逆層型の感光体では導電性基板を指す。
またビスフェノール−Aを原料とするポリアリレートにおいても同様の問題があった。
【0005】
このような問題を解決するべく電荷輸送物質との相溶性を向上させるため、特殊なモノマーを共重合させたポリカーボネートを用いた例として特開平4−320420号公報、特開平5−222181号公報、特開平5−230202号公報、特開平6−56982号公報などが開示されている。
【0006】
ビスフェノール−Cを原料としたポリカーボネート樹脂は、一般的にビスフェノール−Zを原料としたポリカーボネートよりも耐摩耗性に優れることが一般的に知られているが、電子写真特性が十分でないという問題が存在する。
また、ビスフェノール−Zを原料としたポリカーボネートは、現在の有機電子写真感光体のバインダー樹脂に広く利用されているが、複写機、レーザープリンターの高性能化、高寿命化に伴い、バインダー樹脂に対する要求として更なる耐摩耗性の向上の要求が高まっている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような実状に鑑み、本発明の課題は、電子写真感光体の感光層作製時に、塗工液がゲル化したり、バインダーとして用いた樹脂が結晶化したりすることがなく、また感光層と下引層とが密着性に優れ、しかも感光層を形成するバインダー樹脂の耐摩耗性が高いため、長時間にわたって使用したとしても機械的強度に優れ、電子写真特性を維持し得る電子写真感光体を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、この様な課題を解決するべく鋭意研究を重ねた結果、電子写真感光体の感光層を形成するバインダー樹脂として、特定のポリアリレートを用いた電子写真感光体は、上記課題を達成することができるということを見いだし、本発明に到達した。
【0009】
すなわち、本発明の要旨は、導電性基板上に感光層を形成した電子写真感光体において、感光層を形成するバインダー用の樹脂が、下記式(1)で示される構成単位及び式(2)で示される構成単位のうち2,2−ビス(ヒドロキシフェニル)プロパン(略称、ビスフェノール−A)または1,1−ビス(ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(略称、ビスフェノール−Z)を二価フェノール成分とする構成単位よりなり、これら式(1)及び式(2)で示される構成単位のモル分率が0.05≦〔(1)/{(1)+(2)}〕≦1.00を満足し、テトラクロロエタンを溶媒とし、濃度1.0g/dl溶液の25℃におけるインヘレント粘度(ηinh.)が0.25〜1.00のポリアリレートであること特徴とする電子写真感光体である。
【0010】
【化3】
【0011】
【化4】
【0012】
〔式中、Xはベンゼン環であり、Yは、単結合、酸素原子、硫黄原子、アルキレン基、アルキリデン基、フェニルアルキリデン基及びシクロアルキレン基からなる群から選ばれ、R1 、R2 、R3 及びR4 は各々独立に水素原子、ハロゲン原子及び炭化水素基からなる群から選ばれる。〕
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の電子写真感光体の感光層のバインダーに用いるポリアリレートは、式(1)及び式(2)で示される構成単位よりなり、これら式(1)及び式(2)で示される構成単位のモル分率が0.05≦〔(1)/{(1)+(2)}〕≦1.00、好ましくは0.1≦〔(1)/{(1)+(2)}〕≦1.00である。式(1)で示す構成単位のモル分率が0.05未満である場合には、ポリアリレート樹脂の表面硬度の向上効果が発現せず、電子写真感光体の寿命の延長という効果が得られ難い。
【0014】
さらに,ポリアリレートのテトラクロロエタンを溶媒とする濃度1g/dlの溶液の25℃におけるインヘレント粘度(ηinh.)は、0.25〜1.00、好ましくは0.3〜0.8である。インヘレント粘度が0.25未満では機械的強度が低く、バインダー樹脂とする層の表面強度が不足し、感光体が摩耗して耐刷寿命が短くなることがある。一方、インヘレント粘度が1.0を超えるとポリアリレートの溶液粘度が上昇し、溶液塗工法による感光体製造が困難になることがある。
【0015】
ポリアリレートの構成単位(2)を形成するための二価フェノールを具体的に例示すると、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−メチル−2−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビスフェノール−Z、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、ビスフェノール−A、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、4,4’−ビフェノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−sec−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビスフェノールフローレン、1,1−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)−2−メチルプロパン、4,4’−〔1,4−フェニレン−ビス(2−プロピリデン)−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)〕、1,1−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシフェニルエーテル、1,1−ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、2,4’−メチレンビスフェノール、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチル−ブタン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、3,3−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、3,3−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノナン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、テルペンジフェノール、1,1−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)−2−メチルプロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(3,5−ジtert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(3,5−ジsec−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジtert−ブチルフェニル)エタン、1,1−ビス(3−ノニル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3,5−ジtert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジtert−ブチル−6−メチルフェニル)メタン、1,1−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン酸、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸ブチルエステル、1,1−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−5−フルオロフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルメタン、1,1−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)−1−(p−フルオロフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−(p−フルオロフェニル)メタン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ニトロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチル−4,4’−ビフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、3,3’−ジフルオロ−4,4’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラフルオロ−4,4’−ビフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)チオエーテル、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)チオエーテル、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)チオエーテル、1,1−ビス(2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、1,1−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(3,5−ジtert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジtert−ブチルフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸メチルエステル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸エチルエステル、イサチンビスフェノール、イサチンビスクレゾール、2,2’,3,3’,5,5’−ヘキサメチル−4,4’−ビフェノール、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、2,4’−メチレンビスフェノール、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(2−ヒドロキシ−3−アリルフェニル)メタン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)エタン、ビス(2−ヒドロキシ−5−フェニルフェニル)メタン、1,1−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタデカン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタデカン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタデカン、1,2−ビス(3,5−ジtert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジtert−ブチルフェニル)メタン、2,2−ビス(3−スチリル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−(p−ニトロフェニル)エタン、ビス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルメタン、ビス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3’,5,5’−テトラtert−ブチル−2,2’−ビフェノール、2,2’−ジアリル−4,4’−ビフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチル−5−メチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチル−5,5−ジメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチル−4−メチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチル−5−エチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチル−5−メチル−シクロペンタン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチル−5−メチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジフェニル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチル−5−メチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチル−5−メチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチル−5−メチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチル−5−メチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチル−5−メチル−シクロヘキサン、レゾルシノール、ハイドロキノン、1,2−ジヒドロキシベンゼンなどが挙げられ、これらのうち、1種類もしくは2種類以上共重合して用いてもよい。中でも式(2)で示される構成単位を構成するために好ましい二価のフェノールとしては、ビスフェノール−A、ビスフェノール−Zが挙げられる。
【0016】
ポリアリレートを構成するための二価のカルボン酸を例示すると、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェン酸、4、4′−ジカルボキシジフェニルエーテル、ビス(p−カルボキシフェニル)アルカン、4,4′−ジカルボキシフェニルスルホン、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。これらの二価のカルボン酸は、1種類で用いることもできるし、2種類以上で併用することも可能である。これらの中で好適に用いられる二価のカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸が挙げられる。
また、本発明において、ポリアリレートは線状の樹脂である必要はなく、三官能以上のモノマーを共重合させることによって、分岐を有するポリアリレートとして用いるとができる。
【0017】
ポリアリレートの製造方法としては、二価のカルボン酸ハライドと二価のフェノールを有機溶剤中で反応させる溶液重合法(A.Conix Ind.Eng.Ohem.51 147 1959年、特公昭37−5599号公報)、二価のカルボン酸と二価のフェノールを無水酢酸の存在下で加熱する溶融重合法、二価のカルボン酸と二価のフェノールをジアリルカーボネートの存在下で加熱する溶融重合法(特公昭38−26299号公報)、水と相溶しない有機溶剤に溶解せしめた二価のカルボン酸ハライドとアルカリ水溶液に溶解せしめた二価のフェノールとを混合する界面重合法(W.M.EARECKSON J.Poly.Sci.XL399 1959年、特公昭40−1959号公報)等が挙げられ、本発明で用いるポリアリレートは上記のごとき公知の方法で製造することができるが、特に界面重合法で製造したものが好適に用いられる。
【0018】
界面重合法での製造方法をさらに詳細に説明すると、ビスフェノール−Cと一般式(2)の原料となるビスフェノールのアルカリ水溶液を調製し、続いて、重合触媒、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミンなどの第三級アミン、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、トリブチルベンジルアンモニウムクロライドなどの第四級アンモニウム塩などを添加する。一方、水と相溶せず、かつポリアリレートを溶解する様な溶媒、例えば塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、クロロベンゼンなどの塩素系溶媒、トルエン、ベンゼン、キシレンなどの芳香族系炭化水素などに二価のカルボン酸ハライドを溶解させた溶液を先のアルカリ溶液に混合する。次いで、25℃以下の温度で1時間〜5時間攪拌しながら反応を行うことによって所望のポリアリレート(共重合体)を得ることができる。ここで用いることができるアルカリには、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等が挙げられる。
【0019】
ポリアリレートの分子量を調節する方法としては、上記に記した製造方法によらず、重合時に一官能の物質を添加して行うことができる。ここで言う分子量調節剤として用いられる一官能物質としては、フェノール、クレゾール、p−tert−ブチルフェノールなどの一価フェノール類、安息香酸クロライド、メタンスルホニルクロライド、フェニルクロロホルメートなどの一価酸クロライド類が挙げられる。
【0020】
本発明においては、上記のポリアリレートを単層型あるいは積層型感光体(及び逆層型感光体)の感光層のバインダー樹脂として、いかなる形式の電子写真感光体に用いることも可能であるが、上記のポリアリレートを積層型感光体の電荷輸送層のバインダー樹脂として用いることが特に好ましい。
本発明の電子写真感光体において、本発明の効果を阻害しない範囲で他のバインダー樹脂を上記ポリアリレートに混合するなどの方法で使用することもできる。また、酸化防止剤などを添加することも可能である。
【0021】
本発明の電子写真感光体を構成する導電性基板材料としては、公知のものを各種使用することができる。例えば、アルミニウム、真鍮、銅、ニッケル、鋼などの金属板、ドラム若しくは金属シート、プラスチックシート上にアルミニウム、ニッケル、クロム、パラジウム、グラファイトなどの導電性物質を蒸着、スパッタリング、塗布などによりコーティングするなどして導電化処理を施したもの、金属ドラムの表面を電極酸化などにより金属酸化物処理したもの、あるいはガラス、プラスチック板、布、紙などの基板に導電化処理を施したものなどを使用することができる。
【0022】
積層型電子写真感光体の電荷発生層はその下地となる基板上に真空蒸着、スパッタ法などにより電荷発生物質の層を形成するか、又はその下地となる基板上に電荷発生物質をバインダー樹脂を用いて結着してなる層を形成することによって得ることができる。バインダー樹脂を用いた場合の電荷発生層の形成方法としては、公知の方法など各種の方法を用いることができるが、通常、電荷発生物質をバインダー樹脂と共に適当な溶媒に分散又は溶解した塗工液を、下地となる基板上に塗布し、乾燥させる方法が好適に使用される。
【0023】
電荷発生物質としては、公知のものなど各種使用することができる。具体的には、非晶質セレン、三方晶セレンなどのセレン単体、セレン−テルルなどのセレン合金、As2 Se3 などのセレン化合物若しくはセレン含有組成物、酸化亜鉛、CdS−Seなどの第II族及び第IV族元素からなる無機材料、酸化チタンなどの酸化物系半導体、アモルファスシリコンなどのシリコン系材料などの各種無機材料、金属もしくは無金属フタロシアニン、シアニン、アントラセン、ビスアゾ化合物、ピレン、ペリレン、ピリリウム塩、チアピリリウム塩、ポリビニルカルバゾール、スクエアリウム顔料などの各種有機材料が挙げられる。これらの電荷発生物質を1種類だけで用いることもできるし、複数以上混合するなどして併用しても差し支えない。
【0024】
電荷発生層におけるバインダー樹脂としては、特に制限がなく、公知のものなど各種使用することができる。例えば、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアセタール、アルキッド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、スチレン−アクリロニトリル共重合体、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアリレート、ポリエステル、ポリケトン、ポリアクリルアミド、ブチラール樹脂、ABS樹脂などの熱可塑性樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂を使用することができる。なお、上記電荷発生層におけるバインダー樹脂として、本発明のポリアリレートを使用することもできる。
【0025】
積層型電子写真感光体における電荷輸送層は、下引層上に電荷輸送物質をバインダー樹脂で結着してなる層を形成することによって得られる。電荷輸送層の作製方法としては、公知の種々の方法を使用することができる。通常、電荷輸送物質を前記ポリアリレートを適当な溶媒に分散若しくは溶解した塗工液を下引層上に塗布し、乾燥する方式が使用される。
また、この電荷輸送層において、本発明の効果を阻害しない範囲で他のバインダー樹脂を本発明のポリアリレートに混合するなどの方法で使用することもできる。
【0026】
電荷輸送物質としては、従来用いられている電子輸送物質や正孔輸送物質が挙げられる。
電子輸送物質を例示すると、クロラニル、ブロマニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,7−トリニトロ−9−ジシアノメチレンフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,9−トリニトロチオキサントンその他に、3,5−ジメチル−3′,5′−ジ−tert−ブチル− 4′,4′−ジフェノキノンなどのジフェノキノン誘導体などの電子吸引物質やこれらの高分子物質などが挙げられる。なお、これらは1種類で使用してもよく複数以上混合するなどして使用してもよい。
【0027】
正孔輸送物質を例示すると、ピレン、N−エチルカルバゾール、N−イソプロピリカルバゾール、N−メチル−N−フェニルヒドラジノ−3−メチリデン−9−エチルカルバゾール、N,N−ジフェニルヒドラジノ−3−メチリデン−9−エチルカルバゾール、N,N−ジフェニルヒドラジノ−3−メチリデン−10−エチルフェノチアジン、N,N−ジフェニルヒドラジノ−3−メチリデン−10−エチルフェノキサジン、p−ジエチルアミノベンズアルデヒド−N,N−ジフェニルヒドラゾン、p−ジエチルアミノベンズアルデヒド−N−α−ナフチル−N−フェニルヒドラゾン、p−ピロリジノベンズアルデヒド−N,N−ジフェニルヒドラゾン、1,3,3−トリメチルインドレニン−ω−アルデヒド−N,N−ジフェニルヒドラゾン、p−ジエチルベンズアルデヒド−3−メチルベンズチアゾリノン−2−ヒドラゾン、1−フェニル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−6−カルボキシアルデヒド−1′,1′−ジフェニルヒドラゾンなどのヒドラゾン類、2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、1−フェニル−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノフェニル)ピラゾン、1−〔キノリル(2)〕−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン、1−〔レピジル(2)〕−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン、1−〔6−メトキシ−ピリジル(2)〕−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン、1−[ピリジル(5)〕−3−(p−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン、1−〔ピリジル(2)〕−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン、1−〔ピリジル(2)〕−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−4−メチル−5−(p−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン、1−[ピリジル(2)]−3−(α−メチル−p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン、1−フェニル−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−4−メチル−5−(p−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン、1−フェニル−3−(α−ベンジル−p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリン、スピロピラゾリンなどのピラゾリン類、2−(p−ジエチルアミノスチリル)−δ−ジエチルアミノベンズオキサゾール、2−(p−ジエチルアミノフェニル)−4−(p−ジメチルアミノフェニル)−5−(2−クロロフェニル)オキサゾールなどのオキサゾール化合物、2−(p−ジエチルアミノスチリル)−6−ジエチルアミノベンゾチアゾールなどのチアゾール系化合物、ビス(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタンなどのトリアリールメタン系化合物、1,1−ビス(4−N,N−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)ヘプタン、1,1,2,2−テトラキス(4−N,N−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)エタンなどのポリアリールアミン類、N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(メチルフェニル)ベンジジン、N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(エチルフェニル)ベンジジン、N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(プロピルフェニル)ベンジジン、N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(ブチルフェニル)ベンジジン、N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(イソプロピルフェニル)ベンジジン、N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(tert−−ブチルフェニル)ベンジジン、N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(イソブチルフェニル)ベンジジン、N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(クロロフェニル)ベンジジンなどのベンジジン系化合物、あるいはブタジエン系化合物、トリフェニルアミン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルピレン、ポリビニルアントラセン、ポリビニルアクリジン、ポリ−9−ビニルフェニルアントラセン、有機ポリシラン、ピレン−ホルムアルデヒド樹脂、エチルカルバゾール−ホルムアルデヒド樹脂などが挙げられる。これらは、1種類で使用しても複数以上混合するなどして使用することも可能である。
【0028】
本発明の電子写真感光体の感光層を作製する際に使用することができる溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどの芳香族系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブなどのアルコール系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチルなどのエステル系溶媒、四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、テトラクロロエタン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロパノールなどのハロゲン系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒やそのほかアセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチルホルムアミドなどが挙げられ、これらは単独で使用しても複数以上混合するなどして使用してもよい。
【0029】
各層の塗布は公知のものなど各種塗布装置を使用して行うことができる。例えば、アプリケーター、スプレーコーター、バーコーター、チップコーター、ロールコーター、ディップコーター、ドクタブレードなどが挙げられる。
単層型電子写真感光体の感光層はバインダー樹脂として、前記ポリアリレート中に前記電荷発生物質と電荷輸送物質とを含有するものであり、この感光層の作製方法としては、各種公知の方法を用いることができるが、通常、電荷発生物質、電荷輸送物質をバインダー樹脂と共に適当な溶媒に分散もしくは溶解させ、その塗工液を所定の下引層に塗布し、乾燥させる方法などが好適に用いられる。また、本発明の効果を阻害しない範囲で他のバインダー樹脂を前記ポリアリレートに混合するなどの方法で使用することも可能である。
【0030】
なお、逆層型の場合は積層型電子写真感光体の電荷発生層と電荷輸送層を逆にして積層型電子写真感光体と同様にして製造できる。
本発明の電子写真感光体は、前記ポリアリレートをバインダー樹脂に用いたことによって、電荷発生物質や電荷輸送物質との相溶性や溶媒との親和性が向上するため、電子写真感光体の感光層作製時に塗工液がゲル化したり、樹脂が結晶化したりすることがなく、また感光層と下引層との密着性能に優れ、しかも樹脂の耐摩耗性が高いため、長時間にわたって使用したとしても機械的強度及び電子写真特性を維持することができ、実用上優れた電子写真感光体であり、種々の電子写真分野に好適に使用することができる。
【0031】
【実施例】
次に、本発明を実施例及び比較例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、本発明の思想を逸脱しない範囲で種々の変形及び応用が可能である。
なお、本発明の電子写真感光体の作製方法、評価項目及び評価方法を以下に示す。
【0032】
・電子写真感光体の作製方法
電荷輸送物質として式(3)に示した構造のトリフェニルアミン化合物を用い、下記実施例及び比較例のごとく合成したポリアリレートを用い、ポリアリレート:電荷輸送物質:塩化メチレン=1:1:8(重量比)である溶液を調製して塗工液とした。このような塗工液を、アルミニウム製導電性基板上に形成されたオキソチタニウムフタロシアニンの約0.5μmの電荷発生層上に、浸漬塗工法により塗布し、乾燥した後、20μmの電荷輸送層を設け、電子写真感光体を製造した。
【0033】
【化5】
【0034】
(a)塗工液の安定性
塗工液を1ヶ月間放置し、液が白濁又はゲル化したか否か目視にて判断した。
(b)塗布時の結晶化の有無
電荷発生層に塗工液を塗布した後、膜が白濁したか否かを目視で判断した。
(c)電子写真特性評価
川口電気製作所(株)製静電気帯電試験装置を用いて、−6kVのコロナ放電を行い、初期表面電位(V0 )、5秒間の光照射後の残留電位(VR )、半減露光量(E1/2 )を測定した。
(d)電荷輸送層の耐摩耗性
スガ試験機(株)製、スガ摩耗試験機を用い、200gの荷重をかけた摩耗紙上に試料を1200回往復させ、その後の摩耗量の変化を測定した。
【0035】
実施例1
1500mlの容器に600mlの水を添加した後、水酸化ナトリウム7.95g、ビスフェノール−C19.57g、p−tert−ブチルフェノール0.34gを溶解させ、さらに二価フェノールに対し0.5重量部の重合触媒(トリメチルベンジルアンモニウムクロライド)を添加し、激しく攪拌する。別に、テレフタル酸クロライドとイソフタル酸クロライドの等量混合物(以下にMPCと略称)を15.75g測り取り、300mlの塩化メチレンに溶解させる。この塩化メチレン溶液を先に調製した攪拌下のアルカリ水溶液に添加し、重合を開始した。重合反応温度は25℃以下になるように調整した。重合時間は3時間行い、その後、系内に酢酸を添加することによって重合反応を終了した。水相が中性になるまで水で洗浄を繰り返した。洗浄終了後、攪拌下のメタノール中にゆっくり添加し、ポリアリレートを沈澱させた。さらにろ別、乾燥することによって、ポリアリレート30gを得た。得られたポリアリレートをテトラクロロエタン溶媒を用いて、25℃でインヘレント粘度を測定したところ、0.833であった。
【0036】
実施例2
ビスフェノール−C19.36g、p−tert−ブチルフェノール0.57g、MPC15.73g、水酸化ナトリウム7.86g使用した以外は実施例1と同様の方法でポリアリレート30gを得た。この試料のインヘレント粘度は0.605であった。
【0037】
実施例3
ビスフェノール−C19.15g、p−tert−ブチルフェノール0.79g、MPC15.71g、水酸化ナトリウム7.78g使用した以外は実施例1と同様の方法でポリアリレート30gを得た。この試料のインヘレント粘度は0.441であった。
【0038】
実施例4
ビスフェノール−C10.03g、ビスフェノール−A8.93g、p−tert−ブチルフェノール0.59g、MPC16.30g、水酸化ナトリウム7.21g使用した以外は実施例1と同様の方法でポリアリレート30gを得た。この試料のインヘレント粘度は0.613であった。
【0039】
実施例5
ビスフェノール−C2.07g、ビスフェノール−A16.57g、p−tert−ブチルフェノール0.61g、MPC16.80g、水酸化ナトリウム7.30g使用した以外は実施例1と同様の方法でポリアリレート30gを得た。この試料のインヘレント粘度は0.617であった。
【0040】
実施例6
ビスフェノール−C9.73g、ビスフェノール−Z10.19g、p−tert−ブチルフェノール、MPC15.53g、水酸化ナトリウム8.51g使用した以外は実施例1と同様の方法でポリアリレート30gを得た。この試料のインヘレント粘度は0.596であった。
【0041】
比較例1
ビスフェノール−C19.90g、MPC15.70g、水酸化ナトリウム8.08g使用した以外は実施例1と同様の方法でポリアリレート30gを得た。この試料のインヘレント粘度は1.241であった。
【0042】
比較例2
ビスフェノール−C18.85g、p−tert−ブチルフェノール1.10g、MPC15.69g、水酸化ナトリウム7.66g使用した以外は実施例1と同様の方法でポリアリレート30gを得た。この試料のインヘレント粘度は0.241であった。
【0043】
比較例3
ビスフェノール−A18.55g、p−tert−ブチルフェノール0.61g、MPC16.93g、水酸化ナトリウム6.83g使用した以外は実施例1と同様の方法でポリアリレート30gを得た。この試料のインヘレント粘度は0.659であった。
【0044】
比較例4
三つ口フラスコに攪拌機、温度計、ガス導入管、排気管をつける。この三つ口フラスコに600mlの水を添加した後、水酸化ナトリウム11.26g、ビスフェノール−A26.09g、p−tert−ブチルフェノール0.86gを溶解させ、さらに二価フェノールに対し0.5mol%分の重合触媒(トリメチルベンジルアンモニウムクロライド)を添加した。その後、300mlの塩化メチレンを系内に添加し、これを激しく攪拌しながらホスゲンガスを導入した。ホスゲンはボンベから空の洗気びん、水を入れた洗気びん、空の洗気びんを通してフラスコ内に導入した。ホスゲンガス導入中の反応温度は25℃以下になるように調整した。重縮合反応の進行と共に系内の有機相の粘度が上昇してくる。ホスゲンガスは、ホスゲン−塩化水素錯体の黄色が消えるまで添加した。その後、酢酸を添加することによって重縮合反応を終了し、水相が中性になるまで水で洗浄を繰り返した。洗浄終了後、攪拌下のメタノール中にゆっくり添加し、ポリカーボネートを沈澱させた。さらにろ別、乾燥することによって、ポリカーボネート30gを得た。得られたポリカーボネートをテトラクロロエタン溶媒を用いて、25℃でインヘレント粘度を測定したところ、0.662であった。
【0045】
比較例5
ビスフェノール−Z26.61g、p−tert−ブチルフェノール0.74g、水酸化ナトリウム11.91gを用いた以外は比較例4と同様の方法でポリカーボネート30g得た。この試料のインヘレント粘度は、0.651であった。
【0046】
上記実施例1〜5、比較例1〜5で合成したポリアリレート又はポリカーボネートをバインダー樹脂に用いた塗工液の安定性の結果、塗工液塗布時の結晶化 の有無を表1に示す。また、電子写真感光体における初期表面電位(V0 )、5秒間の光照射後の残留電位(VR )、半減露光量(E1/2 )を表2に示し、表3には、電荷輸送層の耐摩耗性の結果を示した。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
【表3】
【0050】
【発明の効果】
以上のように構成されているので、本発明の電子写真感光体は、特定のポリアリレートをバインダー樹脂に用いたことによって、電荷発生物質や電荷輸送物質との相溶性や溶媒との親和性が良好であるため、電子写真感光体の感光層作製時に塗工液がゲル化したり、樹脂が結晶化したりすることがない。また感光層と下引層とが密着性能に優れており、しかもバインダー樹脂の耐摩耗性が高いため、長時間にわたって使用したとしても機械的強度及び電子写真特性を維持することができる。したがって、本発明の電子写真感光体は、実用上優れた電子写真感光体であり、種々の電子写真分野に好適に使用することができる。
Claims (1)
- 導電性基板上に感光層を形成した電子写真感光体において、感光層を形成するバインダー用の樹脂が、下記式(1)で示される構成単位及び式(2)で示される構成単位のうち2,2−ビス(ヒドロキシフェニル)プロパン(略称、ビスフェノール−A)または1,1−ビス(ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(略称、ビスフェノール−Z)を二価フェノール成分とする構成単位よりなり、これら式(1)及び式(2)で示される構成単位のモル分率が0.05≦〔(1)/{(1)+(2)}〕≦1.00を満足し、テトラクロロエタンを溶媒とし、濃度1.0g/dl溶液の25℃におけるインヘレント粘度(ηinh.)が0.25〜1.00のポリアリレートであること特徴とする電子写真感光体。
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