JP3597932B2 - ポリエステル組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐加水分解性および耐熱性に優れた衣料用または工業用の芳香族ポリエスルに関する。さらに詳しくはアルカリ土類金属塩および特定のリン化合物を一定割合含有し、成形や湿熱処理による、極限粘度の低下や末端カルボキシル基濃度の増加が抑制された芳香族ポリエステルに関する。特に本発明は、エチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とする芳香族ポリエステルの耐加水分解性の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
芳香族ポリエステルは、繊維、フィルムおよび成形品の素材として広く利用されている。最近湿熱滅菌処理が必要な衣料用途や苛酷な加水分解条件下で使用される工業用途の素材として、その耐加水分解性に対する要求が非常に高まっている。
【0003】
例えば、工業用途では、濾過フィルターまたは抄紙用キャンバスとして、衣料用途では手術着または医薬品工場のユニフォームとしてポリエステルの耐加水分解性に対する改善が要望されている。
【0004】
従来、ポリエステルの耐加水分解性の向上に関して、ポリエステルの末端カルボキシル基濃度を低下させる技術が種々提案されている。例えば特公昭44―27911号公報および特開昭54―6051号公報には或る種のエポキシ化合物を添加してポリエステルの末端カルボキシル基濃度を低下させる方法が記載されている。しかしこれらの方法は、エポキシ化合物の反応性が低く、その効果は小さい。
【0005】
さらに特公昭38―152220号公報または特公昭46―5389号公報には、ポリカルボジイミドやビスカルボジイミドなどのカルボジイミドを添加してポリエステルの末端カルボキシル基を低下させる方法が開示されているが、カルボジイミドはそれ自体熱変成を起し易く、反応条件によってポリエステルの着色や物性の低下を起すことがあり、その使用には細かい注意が必要となる。
【0006】
また、特開昭55―7888号公報には、ポリエステルに或る特定の燐化合物を共重合させ、且つ酸化チタン(TiO2 )を添加した改質ポリエステルに対し、燐化合物を光安定化剤として含有させる方法が記載されている。さらに、特開昭55―7889号公報には、テレフタル酸とグリコールとから直接エステル化法によりポリエステルを製造する際に、光安定化のために特定の燐化合物を添加し、さらに酸化チタン(TiO2 )を加える方法が記載されている。これらの方法は、いずれも艶消し剤として使用する酸化チタンに起因するポリエステルの光安定性の低下を改善するために、燐化合物を添加する方法である。
【0007】
一方、工業用の太デニールから衣料用の細デニールに至るまでポリエステルの巾広い分野の用途に耐加水分解性を向上させるには、ポリエステル自体の特性の改善も必要となる。
【0008】
そこで、本発明者らは、芳香族ポリエステルに特定のリン酸エステルを含有せしめることによって得られた芳香族ポリエステルの耐加水分解性が改良されることを見出し既に出願した(特開平8―3428号公報)。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の第1の目的は、ポリエステルの成形時や加工時、或いはポリエステル製品の使用における湿熱処理時などにおいて、前記特開平8―3428号によって得られる芳香族ポリエステルよりもポリエステルの末端カルボキシル基の増加や重合度の低下が抑制された芳香族ポリエステル、つまり耐加水分解性および耐熱性に優れた芳香族ポリエステルを提供することにある。
【0010】
本発明の第2の目的は、成形や湿熱処理によっても強度の低下の少ない芳香族ポリエステルを提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、末端カルボキシル基を低下させるための特定の試薬を使用しなくとも、耐加水分解性の改良された芳香族ポリエステルを提供することにある。
【0012】
本発明のさらに他の目的は、工業的に優れた手段で、得ることができる耐加水分解性の向上した芳香族ポリエステルを提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは、前記本発明の目的を達成するため研究を重ねた結果、アルカリ土類金属塩と特定のリン化合物とを特定量組み合わせて芳香族ポリエステルに配合せしめることによって、得られた芳香族ポリエステルの耐加水分解性および耐熱性が更に向上することを見出し、本発明に到達した。
【0014】
すなわち、本発明は、(A)芳香族ポリエステル(A成分)に、
(B)アルカリ土類金属塩(B成分)および
(C)下記一般式[I]で表わされるリン化合物と下記一般式[II]で表わされるエポキシ化合物との反応生成物(C成分)
【0015】
【化3】
【0016】
[式中、R1 は水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基または炭素原子数6〜12のアリール基を示す。R2 は水素原子または―OR3 を示し、ここでR3 はR1 と同じ定義から選ばれた原子または基を示す。]
【0017】
【化4】
【0018】
[式中、l1 、l2 およびl3 は、それぞれ同一または異なり、水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基を示し、l4 は炭素原子数1〜15のアルキル基または炭素原子数6〜12のアリール基を示す。]
を配合してなる芳香族ポリエステル組成物であって、該C成分をリン(P)の含有量に換算して3〜100ppm含有し、かつ該B成分および該C成分のリン(P)の含有割合が下記式(III )
P′−M′≦10 …(III )
[式中、P′はポリエステルを構成する二塩基酸成分に対するリン酸エステルの含有量(mmol%)を示し、M′はアルカリ土類金属塩の含有量(mmol%)を示す。ただしM′は0ではない。]
を満足することを特徴とする芳香族ポリエステル組成物である。
【0019】
以下、本発明方法についてさらに詳細に説明する。
【0020】
本発明における芳香族ポリエステル(A成分)は、通常繊維、フィルムまたは成形品の素材として使用されているポリエステルであればよく、特にエチレンテレフタレート単位を主たる繰返し単位とするポリエステル、ブチレンテレフタレート単位を主たる繰返し単位とするポリエステル、またはエチレンナフタレート単位を主たる繰返し単位とするポリエステルであるのが好ましい。前記エチレンテレフタレート単位、ブチレンテレフタレート単位またはエチレンナフタレート単位は、全繰返し単位中少なくとも80モル%、特に少なくとも90モル%であるポリエステルがとりわけ好ましい。特に本発明の芳香族ポリエステルは、芳香族ジカルボン酸成分およびグリコール成分より実質的に形成されているポリエステルであるのが望ましい。
【0021】
前記ポリエステルに共重合することができる二塩基酸成分としては、イソフタル酸、2,6―ナフタレンジカルボン酸、1,4―シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸およびセバチン酸などを挙げることができ、またグリコール成分としては、1,4―ブタンジオール、ネオペンチレングリコール、1,4―シクロヘキサンジオール、1,4―シクロヘキサンジメタノールおよびポリアルキレングリコールなどを挙げることができる。本発明のポリエステルは、前記ジカルボン酸のジアルキルエステルとグリコールとをエステル交換反応させ次いで重縮合反応して得られた所謂エステル交換反応によって得られたポリエステルが特に適している。
【0022】
さらに本発明の目的を損なわない範囲でトリメリット酸、トリメシン酸およびピロメリット酸の如きポリカルボン酸;グリセリン、トリメチロールプロパンおよびペンタエリスリトールの如きポリオールも少割合共重合することもできる。
【0023】
本発明における芳香族ポリエステルは、通常のポリエステルと同様に、酸化チタン、カーボンブラックなどの顔料のほか、抗酸化剤、着色防止剤、耐光剤、制電防止剤などの添加剤が含有されていてもよい。
【0024】
本発明における芳香族ポリエステルは、極限粘度[η]が0.45dl/g以上であることが好ましく、0.50dl/g以上であることが特に好ましい。極限粘度の上限は、1.3dl/gであることが好ましく、1.0dl/gであることが特に好ましい。また芳香族ポリエステルの末端カルボキシル基濃度は、15eq/106 g以下であることが好ましく、10eq/106 gであることが特に好ましい。
【0025】
本発明におけるアルカリ土類金属塩(B成分)は、周期表第II族の元素のうち、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムおよびラジウムが塩を形成しているものをいう。好ましいアルカリ土類金属としてはマグネシウム、カルシウムである。
【0026】
アルカリ土類金属塩の具体例としては、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム等が挙げられる。また、これらは、一般的にエステル交換触媒として用いられているものを挙げることができる。更に、それは1種でも2種以上を混合して用いてもよい。
【0027】
本発明において、前記A成分に配合されるのは、前記B成分の他に下記一般式[I]で表わされるリン化合物(C―1成分)と下記一般式[II]で表わされるエポキシ化合物(C―2成分)との反応生成物(C成分)である。
【0028】
【化5】
【0029】
[式中、R1 は水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基または炭素原子数6〜12のアリール基を示す。R2 は水素原子または―OR3 を示し、ここでR3 はR1 と同じ定義から選ばれた原子または基を示す。]
【0030】
【化6】
【0031】
[式中、l1 、l2 およびl3 は、それぞれ同一または異なり、水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基を示し、l4 は炭素原子数1〜15のアルキル基または炭素原子数6〜12のアリール基を示す。]
【0032】
このC成分の合成に使用される一般式[I]のリン化合物の具体例としては、正リン酸;リン酸モノメチル、リン酸モノエチル、リン酸モノプロピル、リン酸モノブチル、リン酸ジメチル、リン酸ジエチル、リン酸ジプロピル、リン酸ジブチル等のリン酸アルキルエステル酸;リン酸モノフェニル、リン酸ジフェニル等のリン酸アリールエステル酸;亜リン酸;亜リン酸モノメチル、亜リン酸モノエチル、亜リン酸モノブチル等の亜リン酸アルキルエステル類および亜リン酸モノフェニル、亜リン酸ジフェニル等の亜リン酸アリールエステル類が挙げられ、好ましくは正リン酸、リン酸モノメチル、リン酸モノエチル、リン酸モノフェニルが良い。すなわち、式(I)においてR2が―OR3 の場合である。これらは2種以上の混合物であってもよい。
【0033】
また一般式[II]のエポキシ化合物(C―2成分)としては、l1 、l2 およびl3 はそれぞれ同一または異なり、水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基であり、好ましくは水素原子である。また14は炭素原子数1〜15、好ましくは1〜10のアルキル基または炭素原子数6〜12のアリール基好ましくはフェニル基である。これらは基の間にエーテル結合を有していてもよい。かかるエポキシ化合物の具体例としては、例えば1,2―エポキシプロパン、1,2―エポキシブタン、1,2―エポキシペンタン、1,2―エポキシヘキサン、1,2―エポキシオクタン、1,2―エポキシノナン、1,2―エポキシデカン、1,2―エポキシシクロヘキサン、1,2―エポキシエチルベンゼンおよび2,3―エポキシプロピルメチルエーテル等が挙げられるが、中でも1,2―エポキシプロパン、1,2―エポキシブタン、1,2―エポキシオクタンが望ましい。また、これらは2種以上の混合物であってもよい。
【0034】
前記リン化合物(C―1成分)とエポキシ化合物(C―2成分)との反応生成物を得る反応条件は、リン化合物(C―1成分)を70〜130℃、好ましくは80〜120℃の温度に加熱し、そこにエポキシ化合物(C―2成分)を、滴下終了後、反応混合物を1〜7時間、好ましくは2〜6時間加温を続行するのが望ましい。反応温度が70℃より低いと、反応が充分に進行せず、一方130℃を超えると反応が急激になり危険であるばかりでなく、反応生成物が着色するので好ましくない。加熱反応時間が一時間未満の場合反応が充分に進まず、一方、7時間を超えると、反応生成物が着色する傾向がある。
【0035】
C―1成分とC―2成分の反応割合はモル比で1:1〜1:5、好ましくは1:2〜1:4の範囲が有利である。
【0036】
本発明におけるC成分の配合割合はリン(P)原子の含有量に換算して3〜100ppm、好ましくは4〜50ppmの範囲である。この範囲よりも少ないと熱安定性の効果が達成されず、またこの範囲を越えると耐加水分解性の効果はむしろ低下する傾向が認められる。
【0037】
また、A成分に含有されている前記B成分と前記C成分との含有割合を下記式(III )
P′−M′≦10 …(III )
[式中、P′はポリエステルを構成する二塩基酸成分に対するリン酸エステルの含有量(mmol%)を示し、M′はアルカリ土類金属塩の含有量(mmol%)を示す。ただしM′は0ではない。]
を満足する範囲とすることにより、優れた耐加水分解性を優するものとなる。
【0038】
前記C成分は、ポリエステルの安定剤としても使用され、前記B成分のM′と反応し、そのエステル交換作用を失活させたり、またそのような触媒を使用しない直接エステル化法によるポリエステル中では少量の添加により安定性を向上させ、ポリエステルのポテンシャルを高めるものと考えられる。そのためC成分はリン(P′)の量に換算して少なくとも3ppm、好ましくは少なくとも4ppmが必要である。一方、触媒(M′)の失活に使用されなかったり、過剰に添加されると、C成分は、いくらか加水分解性触媒として作用することになるため、前記式(II)の(P′−M′)の値が10mmol%以下、好ましくは8mmol%以下であるのが適当である。
【0039】
芳香族ポリエステルの耐加水分解性をさらに向上させるという観点からみれば、重合触媒の種類や触媒量も少なからず関与している。重合触媒として重合活性および色相の点から通常アンチモン化合物、特に三酸化アンチモンが使用される。その使用量はアンチモン金属(Sb)に換算して500ppm以下、好ましくは400ppm以下が望ましい。特に150〜450ppmが適当である。この理由は、ポリエステルの溶融成形時に過剰の重合触媒が存在すると、溶融劣化性が高くなり、結局、末端カルボキシル基濃度が高くなってしまうからである。そこで重合触媒量は、生産性と目標重合度のバランスを考慮した上で出来る限り、添加量を抑えることが好ましい。
【0040】
本発明のC成分中には、ポリオキシアルキレングリコール基を有機基として含有しているため、これが耐熱性に悪影響を与えることが懸念されたが、実際に使用してみると、正リン酸を安定剤として添加したポリエステルを同一条件で重合し、紡糸し、チップと糸の品質を比較したところ驚くべきことに本発明のポリエステルの方が極限粘度の低下や末端カルボキシル基濃度の増加が小さいことが認められた。
【0041】
本発明は、従来のようにポリエステル中の末端カルボキシル基濃度を低下させることのみによらず、さらにB成分およびC成分の使用、さらに必要により触媒種とその量を特定することにより、湿熱条件下での極限粘度の低下や末端カルボキシル基濃度の増加が抑制された耐熱性、耐加水分解性に優れた芳香族ポリエステルが得られる。むろん耐加水分解性を向上させるのには従来からの知見通り、末端カルボキシル基濃度を低下されることも重要であり、そのためポリエステルの重合工程の適正化、固相重合による高極限粘度および低末端カルボキシル基濃度化、各種エポキシ化合物やカルボジイミド化合物など、公知の低カルボキシル化剤を任意の方法で添加しても良い。
【0042】
B成分およびC成分は、A成分に配合されるが、その配合時期は、ポリエステルの製造が終了する任意の段階にB成分およびC成分を同時にまたは別々にその製造工程に添加する。好ましい方法としては、エステル交換反応を重縮合反応による製造方法において、エステル交換反応の初期、すなわち、エステル交換反応によって低級アルキルアルコールが実質的に発生する前の段階でB成分をエステル交換触媒として添加し、C成分をエステル交換反応の末期以降、すなわち、低級アルキルアルコール理論発生量に対して80%以上発生した以降の段階で安定剤として添加する方法である。
【0043】
本発明の改質ポリエステル組成物から繊維を製造する場合には、任意の製糸条件を何等の支障なく採用することができる。例えは500〜2,500m/分の速度で溶融紡糸し、延伸・熱処理する方法、1,500〜5,000m/分の速度で溶融紡糸し、延伸と仮撚加工とを同時にまたは続いて行う方法、5,000m/分以上の高速で溶融紡糸し、用途によっては延伸を省略する方法等の任意の製糸条件を採用することができる。
【0044】
また、本発明の改質ポリエステル組成物を用いて引取速度2,000m/分以上、特に4,000m/分以上の高速で、溶融紡糸を行った場合、不溶性異物の量が少ないため、紡糸時の糸切れの大幅な減少が認められる。ここで、紡糸条件としてはポリエステルの溶融紡糸条件を任意に採用することができる。
【0045】
また、本発明の改質ポリエステル組成物は、フィルムやシートの製造にも使用することができ、この際任意の形成条件を何らの支障なく採用することができる。例えば製膜後一方向のみに張力を作用させて異方性膜を製造する方法、同時にまたは任意の順序で膜を二方向に延伸する方法、および膜を二段以上に多段延伸する方法等を任意の条件で採用することができる。
【0046】
【発明の効果】
以上に詳述した本発明によれば、従来のようにポリエステル中の末端カルボキシル基濃度を低下させることのみによらず、A成分中に、B成分とC成分とを特定量配合することにより、耐加水分解性および熱安定性に優れ、ポリエステル中不溶性異物の少ないポリエステルが提供される。その理由は未だ解明されていないが、以下の如く推定される。すなわち、B成分とC成分との組み合わせにより、それぞれをエステル交換反応触媒および安定剤として使用した場合、それらの組み合わせによるエステル交換触媒活性の失活効果の高さによるものと思われる。従来安定剤として用いられていたリン酸、亜リン酸、リン酸エステル等は、そのままの状態でポリエステル中に残留すると酸として働き、湿熱条件下で加水分解触媒として働くことが予想できる。これに対して、本願発明の安定剤は、本特許で規定したエステル交換触媒と速やかに反応し、酸触媒としての作用が著しく低くなるため加水分解を促進しないと考えられる。
【0047】
【実施例】
以下、実施例をあげて本発明を具体的に説明する。
【0048】
実施例において、「部」は全て重量部を示す。なお、芳香族ポリエステルの特性は、下記の方法によって測定した。
1.極限粘度[η]
0.6g/50mlのオルソクロロフェノール溶液により35℃で測定した値から算出した。
2.末端カルボキシル基濃度
0.10g/ベンジルアルコール10mlを200℃にして溶解し、自動カルボキシル基測定装置(セイワ技研社製)で滴定法で測定した。
3.金属分析
チップを湿式分化したのち、希塩酸溶液として誘導結合プラズマ分析(ICP)により金属量を測定した。そのICPは Jarell−Ash Division, Fisher Scientific Company 社製の“Atom Comp. Series 800 ”を使用して行った。
4.強度
糸サンプル25cmを25℃、湿度65%の雰囲気下でオートグラフによりストレッチスピード20cm/minにて、破断点の強度を測定した。
5.強度保持率
糸サンプルを135℃×60hrで湿熱分解条件下で処理し、その強度を測定し、原糸(湿熱分解処理前の糸)の強度に対する割合として強度保持率で評価した。
【0049】
[実施例1〜4および比較例1〜7]
ジメチルテレフタレート100部、エチレングリコール64部、および表1に示すB成分の混合物を除々に230℃まで加熱し、メタノールを留出してエステル交換反応をせしめた後、表1に示すC成分を添加し、5分後三酸化アンチモン、次いで二酸化チタン0.4部をエチレングリコールスラリーにして添加し低重合体を得た。得られた低重合体は、265℃まで昇温させ、減圧による重合反応を開始した。重合反応は30分かけて30mmHg、次の30分で1mmHg以下として極限粘度[η]が約0.60dl/gまで重合度をあげて、重合反応を終了した。得られたポリマーは、160℃で4時間乾燥後、紡糸温度290℃、巻き取り速度400m/分で紡糸し、次いで予熱80℃、熱セット160℃で5倍に延伸して24/40deのマルチフィラメントを得た。紡糸工程の極限粘度[η]の変化、末端カルボキシル基濃度の増加、耐加水分解性(強度保持率)は表2に示す通りであった。
【0050】
なお表2中、チップの[η]c および[COOH]c は、それぞれ重合によって得られたポリエステルチップの極限粘度(dl/g)および末端カルボキシル基濃度(eq/106 g)を示し、紡糸サンプルの[η]f および[COOH]f は、それぞれ紡糸によって得られたマルチフィラメントの極限粘度(dl/g)および末端カルボキシル基濃度(eq/106 g)を示す。また品質変化における[η]f−c は、紡糸による極限粘度の低下量([η]f −[η]c )を示し、また[COOH]f−c は紡糸による末端カルボキシル基濃度の増加量([COOH]f −[COOH]c )を示す。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
これらの結果から明らかなように、本発明のポリエステル(実施例1〜4)は紡糸時の極限粘度の低下、末端カルボキシル基濃度の増加が小さく耐熱性に優れさらに耐加水分解性も高いことがわかる。それに耐して、本発明以外のリン化合物(比較例1、2および7)では、十分な耐熱性と耐加水分解性が得られない。
【0054】
一方、アルカリ土類金属塩以外の化合物をエステル交換触媒として用いた場合、本発明のリン安定剤を所定量添加することによって、多少の耐加水分解性向上の効果はみうけられるがいまだ満足のいくレベルからは遠い(比較例3、4)。
【0055】
また、本発明のリン安定剤を使用したとしても、その添加量が、エステル交換触媒(M′)に比べて一定割合より多すぎると、その触媒の失活に費やされなかったリン安定剤が加水分解を促進させる傾向が認められる(比較例5、6)。
Claims (4)
- (A)芳香族ポリエステル(A成分)に、
(B)アルカリ土類金属塩(B成分)および
(C)下記一般式[I]で表わされるリン化合物と下記一般式[II]で表わされるエポキシ化合物との反応生成物(C成分)
を配合してなる芳香族ポリエステル組成物であって、該C成分をリン(P)の含有量に換算して3〜100ppm含有し、かつ該B成分および該C成分のリン(P)の含有割合が下記式(III )
P′−M′≦10 …(III )
[式中、P′はポリエステルを構成する二塩基酸成分に対するリン酸エステルの含有量(mmol%)を示し、M′はアルカリ土類金属塩の含有量(mmol%)を示す。ただしM′は0ではない。]
を満足することを特徴とする芳香族ポリエステル組成物。 - 該芳香族ポリエステル(A成分)の極限粘度が0.45dl/g以上であり、かつ末端カルボキシル基濃度が15eg/106 g以下である請求項1記載のポリエステル組成物。
- 該反応生成物(C成分)は、該リン化合物と該エポキシ化合物とを、モル比で1:1〜1:5の割合でかつ70〜130℃の温度で反応させた生成物である請求項1記載のポリエステル組成物。
- 該リン化合物が、前記一般式[I]において、R2 が―OR3 で表わされる化合物である請求項1記載のポリエステル組成物。
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