JP3869746B2 - 改質ポリエステル組成物の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は改質ポリエステル組成物の製造方法に関し、更に詳しくは、吸水性と吸湿性とを高水準にて兼備し、かつ色相の良好な改質ポリエステル組成物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートは、多くの優れた特性を有しているため、各種衣料用途等に広く利用されている。
【0003】
しかし、綿、絹、羊毛のような天然繊維、レーヨン、アセテートのような半合成繊維に比べると、吸水性、吸汗性が低いという機能面での欠点を有している。この欠点を解消することを目的として、有機スルホン酸金属塩を添加したポリエステルからなる中空繊維をアルカリ水溶液で処理することにより、一部が中空部まで連通している微細孔を繊維表面に有する吸水性ポリエステル繊維が提案されている(特公昭61−60188号公報、特公昭62−44065号公報等)。
【0004】
しかしながら、繊維表面を微多孔化した中空ポリエステル繊維は、毛細管現象を利用した吸水機構であるが故に、天然繊維や半合成繊維に比べると吸水性が低く、必ずしも満足すべき水準には到達していなかった。
【0005】
一方では、有機スルホン酸金属塩、ポリアルキレンエーテルグリコールなどの親水性成分をポリエステルに共重合させることにより、吸水性能を高めたポリエステル繊維が提案されている(特開平7−150468号公報等)。しかしながら、この方法では、吸水性能が大幅に改善されているものの、吸湿性は一般的なポリエステルと大差無いレベルにあり、吸水性と吸湿性を兼ね備えたポリエステルは得られておらず、また色相についても十分なものではなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記従来技術が有していた問題を解決し、吸水性と吸湿性とを高水準で兼備し、かつ色相も良好な改質ポリエステル組成物の製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記従来技術に鑑み、鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の目的は、
テトラメチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とするポリエステルに下記式(I)で示されるポリアルキレンエーテルグリコール及び下記式(II)で示される有機スルホン酸金属塩が共重合されてなる改質ポリエステル組成物を製造するに際し、
該ポリエステルとして、重縮合触媒として、下記一般式(III)により表されるチタン化合物(a)及び、前記式(III)のチタン化合物(a)と下記一般式(IV)で表される多価カルボン酸又はその無水物とを反応させて得られたチタン化合物(b)、から選ばれた少なくとも一種からなるチタン化合物成分と、下記一般式(V)により表されるリン化合物(c)の少なくとも一種からなるリン化合物成分とを反応させて得られた反応生成物からなるものを用い、かつ前記触媒のチタン原子換算量を、ポリエステル重合出発原料中に含まれる二官能性芳香族カルボン酸成分の合計量に対して、10〜40ミリモル%として重縮合させたポリエステルを用いることを特徴とする、改質ポリエステル組成物の製造方法によって達成することができる。
【0009】
【化6】
Figure 0003869746
【0010】
【化7】
Figure 0003869746
【0011】
【化8】
Figure 0003869746
【0012】
【化9】
Figure 0003869746
【0013】
【化10】
Figure 0003869746
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の改質ポリエステル組成物の製造方法につき説明する。
【0015】
本発明における改質ポリエステル組成物は、通常の共重合ポリエステルの製造方法に従って製造することができ、具体的には、テレフタル酸を主とするジカルボン酸成分と、1,4−ブタンジオールを主とするグリコール成分及びポリアルキレンエーテルグリコールを反応器に入れ、触媒の存在下又は不存在下でエステル交換反応あるいはエステル化反応の反応を行い、更に、本発明で特定した重合触媒の存在下に、高真空下で重縮合反応を行って所望の重合度まで上げる方法を採用すればよく、有機スルホン酸金属塩は、任意の段階で配合すればよいが、エステル交換反応あるいはエステル化反応を開始する以前の段階で、系内に添加しておくことが好ましい。
【0016】
エステル交換反応触媒を用いる場合には、ナトリウム等のアルカリ金属塩、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属塩、チタン、亜鉛、マンガン等の金属化合物を使用するのが好ましい。
【0017】
なお、コバルト化合物は、使用しない方が良い。コバルト原子を含む改質ポリエステル組成物は、溶融熱安定性が低いため分解が起こりやすくなるという問題があり、更に、コバルト化合物は毒性も高く、前述の環境の観点からも使用しない必要がある。
【0018】
また、安定剤としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート等のリン酸エステル類、トリフェニルホスファイト、トリスドデシルホスファイト等の亜リン酸エステル類、メチルアシッドホスフェート、ジブチルホスフェート、モノブチルホスフェート酸性リン酸エステル、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ポリリン酸等のリン化合物、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンなどのヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。
【0019】
エステル交換反応触媒の供給は、原料調製時の他、エステル交換反応の初期の段階において行うことができる。また、安定剤の供給は、重縮合反応初期までに行うことが出来るが、エステル交換反応終了時に添加することが好ましい。更に、重縮合触媒は重縮合反応工程の初期までに供給することができる。
【0020】
エステル交換反応時の反応温度は、通常180〜230℃であり、反応圧力は常圧〜0.3MPaである。また、重縮合時の反応温度は、通常200〜280℃であり、反応圧力は通常60〜0.1kPaである。この様なエステル交換反応及び重縮合反応は、一段で行っても、複数段階に分けて行っても良い。
【0021】
本発明における重縮合反応触媒は、下記に詳しく説明するチタン化合物成分とリン化合物成分との反応生成物を含むものである。
【0022】
本発明の重縮合反応に用いられるチタン化合物成分は、下記一般式(III)により表されるチタン化合物(a):
【0023】
【化11】
Figure 0003869746
【0024】
及び、前記一般式(III)のチタン化合物(a)と下記一般式(IV)で表される多価カルボン酸:
【0025】
【化12】
Figure 0003869746
【0026】
又はその無水物とを反応させて得られたチタン化合物(b)、
から選ばれた少なくとも一種からなるものである。
【0027】
また本発明の触媒に用いられるリン化合物成分は、下記一般式(V)で表されるリン化合物(c):
【0028】
【化13】
Figure 0003869746
【0029】
の少なくとも一種からなるものである。
【0030】
本発明の重縮合反応触媒に用いられる、前記チタン化合物成分と、前記リン化合物成分との反応生成物において、前記チタン化合物成分のチタン原子換算モル量(mTi)の、前記リン化合物成分のリン原子換算モル量(mP)に対する反応モル比(mTi:mP)が、(1:1)〜(1:4)の範囲内にあることが好ましく、(1:1.5)〜(1:2.5)の範囲内にあることがより好ましい。
【0031】
前記チタン化合物成分のチタン原子換算モル量とは、前記チタン化合物成分に含まれる各チタン化合物のモル量と、当該チタン化合物の1分子に含まれるチタン原子の個数との積の合計値であり、前記リン化合物成分のリン原子換算モル量とは、前記リン化合物成分に含まれる各リン化合物のモル量と、当該リン化合物の1分子に含まれるリン原子の個数との積の合計値である。ただし、式(V)のリン化合物は1分子当たり1個のリン原子を含むものであるから、リン化合物のリン原子換算モル量は当該リン化合物のモル量に等しい。
【0032】
反応モル比mTi/mPが(1:1)より大きくなると、すなわち、チタン化合物成分の量が過多になると得られる触媒を用いて得られるポリエステルの色調(b値)が、不良になり、かつその耐熱性が低下することがある。また、前記反応モル比が、(1:4)未満になると、すなわちチタン化合物成分の量が過少になると、得られる触媒のポリエステル生成反応に対する触媒活性が不十分になることがある。
【0033】
チタン化合物成分に用いられるチタン化合物(a)としては、チタンテトラブトキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトラエトキシドなどのチタンテトラアルコキシドや、オクタアルキルトリチタネート、ヘキサアルキルジチタネートなどのアルキルチタネートを挙げることができるが、なかでも本発明において使用されるリン化合物成分との反応性の良好なチタンテトラアルコキシドを用いることが好ましく、特にチタンテトラブトキシドを用いることがより好ましい。
【0034】
チタン化合物は、チタン化合物(a)と、一般式(IV)の多価カルボン酸又はその無水物との反応により得られる。一般式(IV)の多価カルボン酸及びその無水物としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ヘミメリット酸、フタル酸又はそれらの無水物を好ましく用いることができ、特にチタン化合物(a)との反応性がよいトリメリット酸酸無水物、フタル酸無水物を用いることが好ましい。
【0035】
チタン化合物(a)と多価カルボン酸又はその無水物との反応は、前記多価カルボン酸又はその無水物を溶媒に混合してその一部又は全部を溶媒中に溶解し、この混合液にチタン化合物(a)を滴下し、0℃〜200℃の温度で30分以上、好ましくは30〜150℃の温度に40〜90分間加熱することによって行われる。この際の反応圧力には特に制限はなく、常圧で充分である。なお、前記溶媒としては、多価カルボン酸又はその無水物の一部又は全部を溶解し得るものから適宜に選択することができるが、好ましくは、エタノール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ベンゼン、キシレン等から選ばれる。
【0036】
この反応におけるチタン化合物(a)と多価カルボン酸又はその無水物とのモル比は適宜に選択することができるが、チタン化合物(a)の割合が多すぎると、得られるポリエステルの色調が悪化したり、軟化点が低下したりする傾向があり、逆にチタン化合物(a)の量が少なすぎると重縮合反応が進みにくくなる傾向があるため、チタン化合物(a)と多価カルボン酸化合物又はその無水物との反応モル比は、チタン化合物(a):多価カルボン酸又はその無水物=2:1〜2:5とすることが好ましい。この反応によって得られる反応生成物は、そのまま前述のリン化合物(c)との反応に供してもよく、あるいはこれをアセトン、メチルアルコール及び/又は酢酸エチルなどによって再結晶して精製した後、これをリン化合物(c)と反応させてもよい。
【0037】
リン化合物成分に用いられる一般式(V)のリン化合物(c)において、R3により表されるC6〜C20アリール基、又はC1〜C20アルキル基は、未置換であってもよく、或は1個以上の置換基により置換されていてもよく、この置換基としては、例えば、カルボキシル基、アルキル基、ヒドロキシル基及びアミノ基などを包含する。
【0038】
リン化合物(c)は、例えば、フェニルホスホン酸、メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、イソプロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、トリルホスホン酸、キシリルホスホン酸、ビフェニルホスホン酸、ナフチルホスホン酸、アントリルホスホン酸、2−カルボキシフェニルホスホン酸、3−カルボキシフェニルホスホン酸、4−カルボキシフェニルホスホン酸、2,3−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,4−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,5−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,6−ジカルボキシフェニルホスホン酸、3,4−ジカルボキシフェニルホスホン酸、3,5−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,3,4−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,3,5−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,3,6−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,4,5−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,4,6−トリカルボキシフェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、メチルホスフィン酸、エチルホスフィン酸、プロピルホスフィン酸、イソプロピルホスフィン酸、ブチルホスフィン酸、トリルホスフィン酸、キシリルホスフィン酸、ビフェニリルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ジメチルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジプロピルホスフィン酸、ジイソプロピルホスフィン酸、ジブチルホスフィン酸、ジトリルホスフィン酸、ジキシリルホスフィン酸、ジビフェニリルホスフィン酸、ナフチルホスフィン酸、アントリルホスフィン酸、2−カルボキシフェニルホスフィン酸、3−カルボキシフェニルホスフィン酸、4−カルボキシフェニルホスフィン酸、2,3−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、2,4−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、2,5−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、2,6−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、3,4−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、3,5−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、2,3,4−トリカルボキシフェニルホスフィン酸、2,3,5−トリカルボキシフェニルホスフィン酸、2,3,6−トリカルボキフェニルホスフィン酸、2,4,5−トリカルボキシフェニルホスフィン酸、2,4,6−トリカルボキシフェニルホスフィン酸、ビス(2−カルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(3−カルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(4−カルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,3−ジカルボキシルフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,4−ジカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,5−ジカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,6−ジカルボキシルフェニル)ホスフィン酸、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(3,5−ジカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,3,4−トリカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,3,5−トリカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,3,6−トリカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,4,5−トリカルボキシフェニル)ホスフィン酸、及びビス(2,4,6−トリカルボキシフェニル)ホスフィン酸などから選ばれるが、中でもフェニルホスホン酸、2,5−ジカルボキシフェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、ジメチルホスフィン酸が好ましく用いられる。
【0039】
チタン化合物成分とリン化合物成分との触媒調製は、例えば、式(V)の少なくとも一種のリン化合物(c)からなる成分と溶媒とを混合して、リン化合物成分の一部又は全部を溶媒中に溶解し、この混合液にチタン化合物成分を滴下し、反応系を0℃〜200℃の温度に30分間以上、好ましくは60〜150℃の温度に40〜90分間、加熱することによって行われる。この反応において、反応圧力については格別の制限はなく、加圧下(0.1〜0.5MPa)、常圧下、又は減圧下(0.001〜0.1MPa)のいずれでもよいが、必要となる設備等の観点からく通常、常圧下で行われる。
【0040】
また上記触媒調製反応に用いられるリン化合物(c)用溶媒は、前記リン化合物成分の少なくとも一部を溶解し得る限り格別の制限はないが、例えば、エタノール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ベンゼン、及びキシレン等から選ばれた少なくとも一種からなる溶媒が好ましく用いられる。特に、最終的に得ようとするポリエステルを構成しているグリコール成分と同一の化合物を溶媒として用いることが好ましい。
【0041】
この触媒調製反応において、反応系中のチタン化合物成分とリン化合物成分との配合割合は、得られる触媒に含まれる、チタン化合物成分と、リン化合物成分との反応生成物において、チタン化合物成分のチタン原子換算モル量(mTi)の、リン化合物成分のリン原子換算モル量(mP)に対する反応モル比mTi/mPが(1:1)〜(1:4)の範囲になるように設定される。好ましい反応モル比mTi/mPは(1:1)〜(1:3)である。
【0042】
チタン化合物成分と、リン化合物成分との反応生成物は、それを反応系から、遠心沈降処理又はろ過などの手段により分離した後、又は分離することなくそれをそのまま重縮合反応触媒として用いてもよく、あるいは、この分離された反応生成物を、再結晶剤、例えばアセトン、メチルアルコール及び/又は水などにより再結晶し精製した後、この精製物を触媒として用いてもよい。
【0043】
本発明にかかるポリエステルの製造法においては、二官能性芳香族カルボン酸のアルキレングリコールエステル、及びその低重合体(オリゴマー)から選ばれた少なくとも一種からなるポリエステル重合出発原料が、前記触媒の存在下に重縮合される。
【0044】
このとき、触媒のチタン原子換算量は、前記重合出発原料中に含まれる二官能性芳香族カルボン酸成分の合計量を基準として、10〜40ミリモル%に設定され、10〜25ミリモル%であることが好ましい。
【0045】
該触媒量が、10ミリモル%未満であると、重合出発原料の重縮合反応に対する触媒の促進効果が不十分になるためポリエステル製造効率が不十分になり、かつ所望の重合度を有するポリエステルを得ることができない。
【0046】
一方、該触媒量が40ミリモル%を越えると、得られるポリエステルの色調(b値)が、不十分になり黄味を帯びるようになり、その実用性が低下する。
【0047】
本発明において、エラストマーの構成成分となるポリエステルは、テトラメチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とするポリエステルである。ここで言う「主たる」とはテトラメチレンテレフタレート成分以外の繰り返し単位を、ポリエステルを構成する全繰り返し単位に対して、20モル%以下、好ましくは15モル%以下、特に好ましくは10モル%以下共重合により含有してもよいことを意味する。
【0048】
共重合しうるテレフタル酸以外の二官能性カルボン酸成分としては、例えばイソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルキシエタンジカルボン酸、β−ヒドロキシエトキシ安息香酸、P−オキシ安息香酸、アジピン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸のような芳香族、脂環族、脂肪族の二官能性カルボン酸を挙げることができる。
【0049】
また、共重合しうるテトラメチレングリコール以外のジオール成分としては、例えばトリメチレングリコール、エチレングリコール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールSのような脂肪族、脂環族、芳香族のジオール化合物を挙げることができる。
【0050】
本発明において用いられる下記式(I)で示されるポリアルキレンエーテルグリコールは、改質ポリエステル組成物の吸水性能を向上させる目的で共重合させるものであり、ポリエステル中に5〜90重量%共重合させるが好ましく、特に10〜80重量%共重合させるのが好ましい。
【0051】
【化14】
Figure 0003869746
【0052】
該式(I)で示されるポリアルキレンエーテルグリコールとして、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのとの共重合体などを例示することができる。ポリアルキレンエーテルグリコールの数平均分子量としては、400〜6000が好ましく、中でも600〜4000が特に好ましい。
【0053】
本発明の改質ポリエステル組成物に共重合される、下記一般式(II)で示される有機スルホン酸金属塩は式(II)中、R2は芳香族炭化水素基又は脂肪族炭化水素基であり、X1はエステル形成性の官能基、X2はエステル形成性官能基又は水素原子、Mはアルカリ金属又はアルカリ土類金属であり、iは1又は2である。
【0054】
【化15】
Figure 0003869746
【0055】
該有機スルホン酸金属塩は、1種でも2種以上の混合物としても使用でき、好ましい具体例としては、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、4−ナトリウムスルホテレフタル酸、4−ナトリウスルホ安息香酸などを挙げることができる。
【0056】
有機スルホン酸金属塩のエラストマーへの共重合量は、ポリエステルを構成する二官能性カルボン酸成分を基準として0.1〜20モル%であり、特に0.2〜15モル%が好ましい。
【0057】
なお、本発明にかかるポリエステルには、更に、本発明の目的の達成が実質的に損なわれない範囲内で、トリメリット酸、ピロメリット酸の如き三官能性以上のポリカルボン酸;グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールの如き三官能性以上のポリオールを共重合成分として用いてもよい。
【0058】
この様にして得られる改質ポリエステル組成物は、固有粘度が通常0.5〜1.1である。固有粘度が0.5未満であると、衝撃強度が低下したり、延伸成形性が低下するなどの物性低下があり好ましくない。固有粘度が1.1を超えると、生産性が悪化するとともに、延伸成形性が低下して好ましくない。
【0059】
改質ポリエステル組成物は常法によりチップ化され、平均粒径は、通常2.0〜5.5mm、好ましくは2.2〜4.0mmの範囲とされる。
【0060】
かくして、本発明の改質ポリエステル組成物は、幅広い成形条件下で安定して成形することができる。例えば製糸に関しては、500〜2500m/分の速度で防止し、延伸、熱処理する方法、1500〜5000m/分の速度で紡糸し、延伸、仮撚加工を同時に又は続いて行う方法、5000m/分以上の高速で紡糸し、用途によっては延伸工程を省略する方法などの製糸条件が採用され、安定して製糸することができる。
【0061】
また、フィルムやシートに成形する際においても、製膜後一方向のみに張力をかけて異方性を持たせる方法、同時に又は任意の順序で二方向に延伸する方法、二段以上の多段延伸する方法などに所望の条件を何等支障なく採用することができ、本発明の工業的意義は極めて大である。
【0062】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。なお、例中の特性は下記の方法で測定した。
(1)固有粘度(以下、IVと略記する):
ポリマーを一定量計量し、o−クロロフェノールに0.012g/mlの濃度に溶解し、35℃にて、常法に従って測定した。
(2)Col−b:
160℃×60分乾燥機中で熱処理し乾燥させたポリマーを、ミノルタ(株)社製CR−200型色彩色差計で測定した。
(3)吸水率:
得られたポリマーチップ(粒径2.2〜4.0mm)を水中に10分間浸漬した後に、吸取り紙で挟み込んだ上に2kgの分銅を乗せて1分間脱水を実施した。水中浸漬前のチップ重量と脱水後のチップ重量との変化より、下記式に従って求めた。
吸水率(%)=(水中浸漬前重量−脱水後重量)/水中浸漬前重量
(4)吸湿率:
得られたポリマーチップ(粒径2.2〜4.0mm)を20℃、RH65%の条件下で24時間放置し、放置前後のチップ重量の変化より、下記式に従って求めた。
吸湿率(%)=(放置後重量−放置前重量)/放置前重量
【0063】
[実施例1]
触媒(A)の調製:
エチレングリコール2.5重量部に無水トリメリット酸0.8重量部を溶解し、この溶液にチタンテトラブトキシド0.7重量部(後述の無水トリメリット酸の使用量を基準として0.5モル%)を滴下し、この反応系を空気中、常圧下、80℃に60分間保持してチタンテトラブトキシドと無水トリメリット酸とを反応させ、反応生成物を熟成させた。
【0064】
その後反応系を常温に冷却し、これにアセトン15重量部を加え、析出物をNo.5ろ紙で濾過し、採取し、これを100℃の温度で2時間乾燥した。得られた反応生成物(チタン化合物(b))のチタン含有量は11.2重量%であった。
【0065】
次に、エチレングリコール131重量部中にフェニルホスホン酸3.6重量部を120℃に10分間加熱して溶解した。このエチレングリコール溶液134.5重量部に、更にエチレングリコール40重量部を加えた後、これに上記チタン化合物(b)5.0重量部を溶解させた。得られた反応系を120℃で60分間撹拌し、チタン化合物(b)とフェニルホスホン酸とを反応させ、反応生成物を含む触媒(A)の白色スラリーを得た。この触媒(A)スラリーのチタン含量は0.3重量%であった。
改質ポリエステル組成物の製造:
テレフタル酸ジメチル100重量部、テトラメチレングリコ−ル64重量部、エチレングリコール10重量部、ポリエチレングリコール(数平均分子量4000)200重量部及び5−ナトリウムスルホイソフタル酸10重量部を仕込み、エステル交換反応触媒として酢酸ナトリウム3水和塩を更に添加して、副生するメタノールを系外に留去しつつ、エステル交換反応を実施した。水の留去がほぼ終了した段階で、重合触媒として、上記の触媒(A)スラリー3.2重量部(テレフタル酸ジメチルのモル量を基準として、チタン化合物(b)の含有量はチタン原子量換算で39ミリモル%)及び整色剤としてテラゾールブルー0.0002重量部を添加した。その後、250℃まで加熱昇温して、反応生成物を高温高真空下で重縮合反応させることにより,固有粘度0.81、Col−b値12.2の改質ポリエステル組成物を得た。得られた組成物を常法によって、粒径2.4mmのチップにカッティング後、乾燥機にて160℃で5時間乾燥させた。チップの吸水率は105%、吸湿率は11.5%であった。
【0066】
[実施例2]
実施例1において、ポリエチレングリコール(数平均分子量4000)の添加量を200重量部から220重量部に変更したこと以外は同様に行ったところ、固有粘度0.87、Col−b値11.3の改質ポリエステル組成物を得た。
【0067】
実施例1と同様に、カッティングと乾燥を行って測定した、チップの吸水率は110%、吸湿率は10.4%であった。
【0068】
[比較例1]
実施例1において、重縮合触媒としてチタンテトラブトキシドのみを用い、この触媒の添加量を、テレフタル酸の量を基準として、チタン原子量換算で20ミリモル%となるように、触媒スラリーの濃度及び添加量を調整して得られたポリエステルを用いたこと以外は同様の操作を行って、固有粘度0.89、Col−b値18.6の改質ポリエラストマーを得た。
【0069】
実施例1と同様に、カッティングと乾燥を行って測定した、チップの吸水率は105%、吸湿率は10.2%であった。吸水率、吸湿率は遜色ないものの、色相が劣るものであった。

Claims (8)

  1. テトラメチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とするポリエステルに下記式(I)で示されるポリアルキレンエーテルグリコール及び下記式(II)で示される有機スルホン酸金属塩が共重合されてなる改質ポリエステル組成物を製造するに際し、
    該改質ポリエステル組成物の重縮合触媒として、下記一般式(III)により表されるチタン化合物(a)及び、前記式(III)のチタン化合物(a)と下記一般式(IV)で表される多価カルボン酸又はその無水物とを反応させて得られたチタン化合物(b)、から選ばれた少なくとも一種からなるチタン化合物成分と、下記一般式(V)により表されるリン化合物(c)の少なくとも一種からなるリン化合物成分とを反応させて得られた反応生成物からなるものを用い、かつ前記触媒のチタン原子換算量を、ポリエステル重合出発原料中に含まれる二官能性芳香族カルボン酸成分の合計量に対して、10〜40ミリモル%とすることを特徴とする、改質ポリエステル組成物の製造方法。
    Figure 0003869746
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    Figure 0003869746
    Figure 0003869746
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  2. 前記チタン化合物成分と、前記リン化合物との反応生成物において、前記チタン化合物成分のチタン原子換算モル量(mTi)の、前記リン化合物成分のリン原子換算モル量(mP)に対する反応モル比(mTi:mP)が、(1:1)〜(1:4)の範囲内にある、請求項1記載の製造方法。
  3. チタン化合物(a)が、チタンテトラアルコキシド類、オクタアルキルトリチタネート類、及びヘキサアルキルジチタネート類から選ばれた少なくとも1種の化合物である、請求項1記載の製造方法。
  4. 式(IV)の多価カルボン酸又はその無水物が、トリメリット酸、フタル酸又はそれらの無水物から選ばれた少なくとも1種の化合物である、請求項1記載の製造方法。
  5. チタン化合物(b)が、チタン化合物(a)と、式(IV)の多価カルボン酸又はその無水物との反応モル比がチタン化合物(a):多価カルボン酸又はその無水物=2:1〜2:5である反応生成物である、請求項1記載の製造方法。
  6. 前記式(V)のリン化合物(c)が、フェニルホスホン酸、2,5−ジカルボキシフェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、ジメチルホスフィン酸から選ばれた化合物である、請求項1記載の製造方法。
  7. 前記チタン化合物成分と前記リン化合物成分との反応生成物が、0〜200℃の反応温度で生成したものである、請求項1記載の製造方法。
  8. 前記重縮合反応が、200〜280℃の温度において行われる、請求項1記載の製造方法。
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