JP3888871B2 - ポリエステル繊維の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はポリエステル繊維の製造方法に関し、さらに詳しくは、良好な色調(カラーb値)を有し、優れた吸水性、吸湿性を呈し、さらに紡糸口金を通して長時間連続的に紡糸しても口金付着物の発生量が非常に少なく、成形性に優れているポリエステル繊維の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート及びポリテトラメチレンテレフタレートは、その機械的、物理的、化学的性能が優れているため、繊維、フィルム、その他の成形物に広く利用されている。
【0003】
例えばポリエチレンテレフタレートは、通常テレフタル酸とエチレングリコールとを直接エステル化反応させるか、テレフタル酸ジメチルのようなテレフタル酸の低級アルキルエステルとエチレングリコールとをエステル交換反応させるか又はテレフタル酸とエチレンオキサイドとを反応さて、テレフタル酸のエチレングリコールエステル及び/又はその低重合体を生成させ、次いでこの反応生成物を重合触媒の存在下で減圧加熱して所定の重合度になるまで重縮合反応させることによって製造されている。また、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレートも上記と同様の方法によって製造されている。
【0004】
これらの重縮合反応段階で使用する触媒の種類によって、反応速度及び得られるポリエステルの品質が大きく左右されることはよく知られている。ポリエチレンテレフタレートの重縮合触媒としては、アンチモン化合物が、優れた重縮合触媒性能を有し、かつ、色調の良好なポリエステルが得られるなどの理由から最も広く使用されている。
【0005】
しかしながら、アンチモン化合物を重縮合触媒として使用した場合、ポリエステルを長時間にわたって連続的に溶融紡糸すると、口金孔周辺に異物(以下、単に口金異物と称することがある。)が付着堆積し、溶融ポリマー流れの曲がり現象(ベンディング)が発生し、これが原因となって紡糸、延伸工程において毛羽及び/又は断糸などを発生するという成形性の問題がある。
【0006】
該アンチモン化合物以外の重縮合触媒として、チタンテトラブトキシドのようなチタン化合物を用いることも提案されているが、このようなチタン化合物を使用した場合、上記のような、口金異物堆積に起因する成形性の問題は解決できるが、得られたポリエステル自身が黄色く着色されており、また、溶融熱安定性も不良であるという新たな問題が発生する。
【0007】
上記着色問題を解決するために、コバルト化合物をポリエステルに添加して黄味を抑えることが一般的に行われている。確かにコバルト化合物を添加することによってポリエステルの色調(カラーb値)は改善することができるが、コバルト化合物を添加することによってポリエステルの溶融熱安定性が低下し、ポリマーの分解も起こりやすくなるという問題がある。
【0008】
また、他のチタン化合物として、特公昭48−2229号公報には水酸化チタンを、また特公昭47−26597号公報にはα−チタン酸を、それぞれポリエステル製造用触媒として使用することが開示されている。しかしながら、前者の方法では水酸化チタンの粉末化が容易でなく、一方、後者の方法ではα−チタン酸が変質し易いため、その保存、取り扱いが容易でなく、したがっていずれも工業的に採用するには適当ではなく、さらに、良好な色調(カラーb値)のポリマーを得ることも困難である。
【0009】
また、特公昭59−46258号公報にはチタン化合物とトリメリット酸とを反応させて得られた生成物を、また特開昭58−38722号公報にはチタン化合物と亜リン酸エステルとを反応させて得られた生成物を、それぞれポリエステル製造用触媒として使用することが開示されている。確かに、この方法によれば、ポリエステルの溶融熱安定性はある程度向上しているものの、得られるポリマーの色調が十分なものではなく、したがってポリマー色調のさらなる改善が望まれている。
【0010】
さらに、特開平7−138354号公報においては、チタン化合物とリン化合物との錯体をポリエステル製造用触媒とすることが提案されており、この方法によれば溶融熱安定性もある程度は向上するものの、得られるポリマーの色調は十分なものではない。
【0011】
なお、これらのチタン−リン系触媒は、その触媒自身がポリエステルポリマー中に異物として残留することが多く、この問題についても解決されることが望まれていた。
【0012】
また、一般にポリエステルは疎水性であるため、繊維とした場合、得られる繊維自体は吸水性、吸湿性に劣る欠点がある。
【0013】
従来、ポリエステル繊維に吸水性を付与する方法として、製糸以前の段階で、ポリエステルに、ポリアルキレンエーテル又はポリアルキレンエーテルと有機スルホン酸金属塩とを配合することが提案されている。
【0014】
しかし、これらの方法によって得られるポリエステル繊維は、親水性が充分でなく、しかもその親水性は洗濯等によって低下する。そのうえ得られる繊維の物性、特に耐光性、耐熱性が低下するという欠点もある。
【0015】
さらに、上記の親水性繊維を、水又はアルカリ性水溶液中にて加熱して繊維表面に繊維軸方向のシワ状の微細孔を形成し、吸湿性、吸水性を改良する方法も提案されている。しかし、この方法によっても、得られる繊維の吸湿性、吸水性は充分でなく、さらに他の物性、特に強度などが著しく低下するという欠点を有していた。
【0016】
これらの問題点を解消するため、特公昭60−43858号公報では、ポリエステルの製糸以前の段階で、ポリアルキレンエーテルを使用することなく、特定の有機スルホン酸金属塩を配合し、紡糸後に該有機スルホン酸金属塩の一部を除去することによってその断面に均一に微細孔を有する新規なポリエステル繊維を得ることができることが報告されている。
【0017】
確かに、この方法によれば上述した問題点は解消される。しかしながら、このようなポリエチレンテレフタレートを用いた繊維は、その化学的な改質によって繊維自身が柔らかくなっており、前記口金異物による影響を受けやすい。
【0018】
口金異物の問題は、上述のようにアンチモン化合物を使用しないことで解決されるが、アンチモン化合物を使用しない方法では、糸の色調(カラーb値)が悪化してしまうため実際には使用に供することができない。したがって触媒としてアンチモン化合物を使用することなく、かつ色相に優れた吸湿性、吸水性に優れ、さらに紡糸口金を通して長時間連続的に紡糸しても口金付着物の発生量が非常に少なく、成形性に優れているポリエステル繊維が求められていた。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、優れた吸水性、吸湿性を呈するうえ、さらに紡糸口金を通して長時間連続的に紡糸しても口金付着物の発生量が非常に少なく、成形性に優れた繊維の製造方法を提供することにある。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記従来技術に鑑み鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0021】
すなわち、本発明の目的は、
二官能性芳香族カルボン酸のアルキレングリコールエステル及びその低重合体から選ばれた少なくとも一種からなる重合出発原料を、触媒の存在下に重縮合する工程を含み、前記触媒が、
(A)下記一般式(I)により表されるチタン化合物(1):
【0022】
【化5】
Figure 0003888871
【0023】
及び、前記式(I)のチタン化合物(1)と下記一般式(II)で表される多価カルボン酸又はその無水物とを反応させて得られたチタン化合物(2):
【0024】
【化6】
Figure 0003888871
から選ばれた少なくとも一種からなるチタン化合物成分と、
(B)下記一般式(III)により表されるリン化合物(3):
【0025】
【化7】
Figure 0003888871
【0026】
の一であってモノ−n−ブチルホスフェートからなるリン化合物成分とを反応させて得られた反応生成物からなるものであること、並びに、
前記触媒のチタン原子換算モル量が、前記重合出発原料中に含まれる前記二官能性芳香族カルボン酸成分の合計モル量に対して、10〜40ミリモル%であること、さらには、
該ポリエステルの合成が完了する以前の任意の段階で、下記一般式(IV)で表される有機スルホン酸金属塩を、該ポリエステルの重量を基準として、0.01〜40%となるように添加配合し、得られたポリエステル組成物を繊維化し、次いでアルカリ性化合物の水溶液によって、得られた該繊維中の有機スルホン酸金属塩の少なくとも一部を除去することによって、該繊維の横断面に均一に散在し、繊維軸方向に配列し、且つその少なくとも一部が連通している微細孔を該繊維に形成させることを特徴とする、ポリエステル繊維の製造方法によって達成される。
【0027】
【化8】
Figure 0003888871
【0029】
【発明の実施の形態】
以下本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明のポリエステル製造用触媒は、下記に詳しく説明するチタン化合物成分(A)と、リン化合物成分(B)との反応生成物を含むものである。
【0030】
本発明の触媒に用いられるチタン化合物成分(A)は、下記一般式(I)により表されるチタン化合物(1):
【0031】
【化9】
Figure 0003888871
【0032】
及び、前記一般式(I)のチタン化合物(1)と下記一般式(II)で表される多価カルボン酸又はその無水物とを反応させて得られたチタン化合物(2):
【0033】
【化10】
Figure 0003888871
から選ばれた少なくとも一種からなるものである。
また本発明の触媒に用いられるリン化合物成分(B)は、下記一般式(III)で表されるリン化合物(3):
【0034】
【化11】
Figure 0003888871
の一であってモノ−n−ブチルホスフェートからなるものである。
【0035】
本発明のポリエステル製造用触媒に用いられる、前記チタン化合物成分(A)と、前記リン化合物成分(B)との反応生成物において、前記チタン化合物成分(A)のチタン原子換算モル量(mTi)の、前記リン化合物成分(B)のリン原子換算モル量(mP)に対する反応モル比mTi/mPが、(1:1)〜(1:4)の範囲内にあることが好ましく、(1:1.5)〜(1:2.5)の範囲内にあることがより好ましい。
【0036】
前記チタン化合物成分(A)のチタン原子換算モル量とは、前記チタン化合物成分(A)に含まれる各チタン化合物のモル量と、当該チタン化合物の1分子に含まれるチタン原子の個数との積の合計値であり、前記リン化合物成分(B)のリン原子換算モル量とは、前記リン化合物成分(B)に含まれる各リン化合物のモル量と、当該リン化合物の1分子に含まれるリン原子の個数との積の合計値である。ただし、式(III)のリン化合物は1分子当たり1個のリン原子を含むものであるから、リン化合物のリン原子換算モル量は当該リン化合物のモル量に等しい。
【0037】
反応モル比mTi/mPが(1:1)より大きくなると、すなわち、チタン化合物成分(A)の量が過多になると得られる触媒を用いて得られるポリエステルの色調(b値)が、不良になり、かつその耐熱性が低下することがある。また、前記反応モル比が、(1:4)未満になると、すなわちチタン化合物成分(A)の量が過少になると、得られる触媒のポリエステル生成反応に対する触媒活性が不十分になることがある。
【0038】
一般式(I)のチタン化合物(1)としては、チタンテトラブトキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトラエトキシドなどのチタンテトラアルコキシドや、オクタアルキルトリチタネート、ヘキサアルキルジチタネートなどのアルキルチタネートを挙げることができるが、なかでも本発明において使用されるリン化合物成分との反応性の良好なチタンテトラアルコキシドを用いることが好ましく、特にチタンテトラブトキシドを用いることがより好ましい。
【0039】
チタン化合物(2)は、チタン化合物(1)と、一般式(II)の多価カルボン酸又はその無水物との反応により得られる。該多価カルボン酸及びその無水物としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ヘミメリット酸、フタル酸又はそれらの無水物を好ましく用いることができ、特にチタン化合物(1)との反応性がよいトリメリット酸酸無水物、フタル酸無水物を用いることが好ましい。
【0040】
チタン化合物(1)と一般式(II)の多価カルボン酸又はその無水物との反応は、前記多価カルボン酸又はその無水物を溶媒に混合してその一部又は全部を溶媒中に溶解し、この混合液にチタン化合物(1)を滴下し、0℃〜200℃の温度で30分以上、好ましくは30〜150℃の温度に40〜90分間加熱することによって行われる。この際の反応圧力には特に制限はなく、常圧で充分である。なお、前記溶媒としては、式(II)の多価カルボン酸又はその無水物の一部又は全部を溶解し得るものから適宜に選択することができるが、好ましくは、エタノール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ベンゼン、キシレン等から選ばれる。
【0041】
この反応におけるチタン化合物(1)と式(II)の多価カルボン酸又はその無水物とのモル比は適宜に選択することができるが、チタン化合物(1)の割合が多すぎると、得られるポリエステルの色調が悪化したり、軟化点が低下したりする傾向があり、逆にチタン化合物(1)の量が少なすぎると重縮合反応が進みにくくなる傾向があるため、チタン化合物(1)と式(II)の化合物又はその無水物との反応モル比は、(2:1)〜(2:5)とすることが好ましい。この反応によって得られる反応生成物は、そのまま前述のリン化合物(3)との反応に供してもよく、あるいはこれをアセトン、メチルアルコール及び/又は酢酸エチルなどによって再結晶して精製した後、これをリン化合物(3)と反応させてよい。
【0042】
リン化合物成分(B)に用いられる一般式(III)のリン化合物(3)において、R3により表されるC6〜C20アリール基、又はC1〜C20アルキル基は、未置換であってもよく、あるいは1個以上の置換基により置換されていてもよい。しかし、リン化合物(3)はモノ−n−ブチルホスフェートからなるので、R 3 により表されるアルキル基は結局n−ブチル基を表す。
【0043】
一般式(III)のリン化合物(3)は、例えば、モノ−n−ブチルホスフェートなどから選ばれる。
【0044】
チタン化合物成分(A)とリン化合物成分(B)との触媒調製は、例えば、式(III)の少なくとも一種のリン化合物(3)からなる成分(B)と溶媒とを混合して、リン化合物成分(B)の一部又は全部を溶媒中に溶解し、この混合液にチタン化合物成分(A)を滴下し、反応系を0℃〜200℃の温度に30分間以上、好ましくは60〜150℃の温度に40〜90分間、加熱することによって行われる。この反応において、反応圧力については格別の制限はなく、加圧下(0.1〜0.5MPa)、常圧下、又は減圧下(0.001〜0.1MPa)のいずれであってもよく、通常は常圧下が選ばれる。
【0045】
また上記触媒調製反応に用いられる式(III)のリン化合物成分(B)用溶媒は、前記リン化合物成分(B)の少なくとも一部を溶解し得る限り格別の制限はないが、例えば、エタノール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ベンゼン、及びキシレン等から選ばれた少なくとも一種からなる溶媒が好ましく用いられる。特に、最終的に得ようとするポリエステルを構成しているグリコール成分と同じ化合物を溶媒として用いることが好ましい。
【0046】
この触媒調製反応において、反応系中のチタン化合物成分(A)とリン化合物成分(B)との配合割合は、得られる触媒に含まれる、チタン化合物成分(A)と、リン化合物成分との反応生成物において、チタン化合物成分(A)のチタン原子換算モル量(mTi)の、リン化合物成分(B)のリン原子換算モル量(mP)に対する反応モル比mTi/mPが(1:1)〜(1:4)の範囲になるように設定される。好ましい反応モル比mTi/mPは(1:1)〜(1:3)である。
【0047】
チタン化合物成分(A)と、リン化合物成分(B)との反応生成物は、それを反応系から、遠心沈降処理又は濾過などの手段により分離した後、又は分離することなくそれをそのままポリエステル製造用触媒として用いてもよく、あるいは、この分離された反応生成物を、再結晶剤、例えばアセトン、メチルアルコール及び/又は水などにより再結晶し精製した後、この精製物を触媒として用いてもよい。
【0048】
本発明のポリエステル製造方法において、二官能性芳香族カルボン酸のアルキレングリコールエステル、及びその低重合体(オリゴマー)から選ばれた少なくとも一種からなる重合出発原料が、前記触媒の存在下に重縮合される。このとき、触媒のチタン原子換算モル量は、前記重合出発原料中に含まれる二官能性芳香族カルボン酸成分の合計モル量に対して、10〜40ミリモル%に設定される。この触媒量は、10〜25ミリモル%であることが好ましい。
【0049】
この触媒量が、10ミリモル%未満であると、重合出発原料の重縮合反応に対する触媒の促進効果が不十分になり、ポリエステル製造効率が不十分になり、かつ所望の重合度を有するポリエステルを得ることができない。また、触媒量が40ミリモル%を越えると、得られるポリエステルの色調(カラーb値)が、不十分になり黄味を帯びるようになり、その実用性が低下する。
【0050】
本発明のポリエステル製造方法に用いられる、重合出発原料として用いられる二官能性芳香族カルボン酸のアルキレングリコールエステルにおいて、前記二官能性芳香族カルボン酸はテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルメタンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、及びβ−ヒドロキシエトキシ安息香酸から選ばれることが好ましく、特にテレフタル酸及びナフタレンジカルボン酸が好ましく用いられる。
【0051】
一方、前記アルキレングリコールは、エチレングリコール、トリメチレングリコート、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、及びヘキサメチレングリコールから選ばれることが好ましい。
【0052】
上記の二官能性芳香族カルボン酸のアルキレングリコールエステル及び/又はその低重合体は、いかなる方法によって製造されたものであってもよいが、通常、二官能性芳香族カルボン酸又はそのエステル形成性誘導体とアルキレングリコール又はそのエステル形成性誘導体とを加熱反応させることによって製造される。
【0053】
例えばポリエチレンテレフタレートの原料であるテレフタル酸のエチレングリコールエステル及び/又はその低重合体について説明すると、テレフタル酸とエチレングリコールとを直接エステル化反応させるか、テレフタル酸の低級アルキルエステルとエチレングリコールとをエステル交換反応させるか、又はテレフタル酸にエチレンオキサイドを付加反応させる方法が一般に採用される。
【0054】
なお、上記の二官能性芳香族カルボン酸のアルキレングリコールエステル及び/又はその低重合体には、本発明方法の効果が実質的に損なわれない範囲内において、具体的には酸成分合計モル量を基準として10モル%以下、好ましくは5モル%以下の範囲で、それと共重合可能な他の二官能性カルボン酸エステルが追加成分として含まれていてもよい。
【0055】
好ましく用いられる共重合可能な追加成分は、酸成分として、例えば、アジピン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂肪族及び脂環式の二官能性ジカルボン酸、並びにヒドロキシカルボン酸、例えば、β−ヒドロキシエトキシ安息香酸、p−オキシ安息香酸などの一種以上とグリコール成分として、例えば、構成炭素数が2個以上のアルキレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールSのような脂肪族、脂環式、芳香族のジオール化合物及びポリオキシアルキレングリコール、の一種以上とのエステル又はその無水物から選ぶことができる。上記追加成分は一種を単独で用いてもよく、あるいは二種以上を併用してもよい。ただし共重合は上記の範囲内であることが必要である。
【0056】
本発明のポリエステル製造方法において、触媒を重合出発原料に添加する時期は、二官能性芳香族カルボン酸アルキレングリコールエステル及び/又はその低重合体の重縮合反応が開始される以前の任意の段階であればよく、さらに、その添加方法は従来公知の任意の方法をいずれも採用することができ、例えば、二官能性芳香族カルボン酸エステルの調製後に、この反応系内に触媒の溶液又はスラリーを添加して重縮合反応を開始してもよいし、あるいは、当該二官能性芳香族カルボン酸エステルの調製前に、触媒溶液又はスラリーを出発原料と同時に、又はその仕込み後に反応系に添加してもよい。
【0057】
本発明方法におけるポリエステル製造反応条件には格別の制限はないが、重縮合反応は一般に230〜320℃の温度において、常圧下、又は減圧下(0.1Pa〜0.1MPa)において、あるいはこれらの条件を組み合わせて、15〜300分間重縮合することが好ましい。
【0058】
本発明の製造方法においては、さらに特定の有機スルホン酸金属塩を配合し、繊維化した後、該スルホン酸金属塩の少なくとも一部を溶出させる必要があるが、ここで使用する有機スルホン酸金属塩は下記一般式(IV)で表される。
【0059】
【化12】
Figure 0003888871
【0060】
該一般式(IV)においてR4としてアルキル基を用いる場合は、直鎖状であっても、また側鎖を有してもよい。なおポリエステルとの相溶性の観点から、Rがアルキル基、アルキルアリール基である有機スルホン酸金属塩が好ましい。
【0061】
MはNa、K、Li等のアルカリ金属、Mg、Ca等のアルカリ土類金属等が挙げられ、なかでもNa、Kが好ましい。なお、有機スルホン酸金属塩の使用に際しでは、単一の化合物である必要はなく、各種のアルキル基を有する有機スルホン酸金属塩の混合物であってもよい。
【0062】
このような有機スルホン酸金属塩としては具体的には、ステアリルスルホン酸ソーダ、オクチルスルホン酸ソーダ、ドデシルスルホン酸ソーダ、ステアリルベンゼンスルホン酸ソーダ、オクチルベンゼンスルホン酸ソーダ、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ又は構成炭素数の平均が14個であるアルキルスルホン酸ソーダの混合物等が好ましいものとして挙げられる。
【0063】
該有機スルホン酸金属塩のポリエステルへの配合量は、繊維重量を基準として、0.01〜40重量%の範囲にある必要がある。該配合量が0.01重量%より少ないと、後述するように有機スルホン酸金属金属塩を溶出除去後に得られるポリエステル繊維の吸水性、吸湿性が充分でなく、40重量%より多いと混合操作、紡糸等が困難となるので好ましくない。
【0064】
このような有機スルホン酸金属塩は紡糸工程完了以前の任意の段階でポリエステルに添加配合される。例えば、ポリエステル製造の原料に予め添加しても、第1段反応時又はこれに続く第2段の重縮合反応時に添加することも可能であり、また重縮合反応後に得られるポリマーと有機スルホン酸金属塩とを、例えば溶融押出機を用いて溶融混合する方法、溶融成形機の出口以前の段階でポリマーに添加し混合する方法等を採用することも可能である。有機スルホン酸金属塩を配合したポリエステルを紡糸するに当たっては、特別な条件を採用する必要はなく、任意の条件を採用することが可能である。
【0065】
かくして製造されるポリエステル繊維から有機スルホン酸金属塩を除去するには、種々の方法が採用されるが、特にポリエステル繊維をアルカリ性化合物の水溶液に浸漬処理するのが好ましく、こうすることによって容易に有機スルホン酸金属塩を溶出除去することができる。アルカリ性化合物としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が用いられる。なかでも水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい.このようなアルカリ性化合物の水溶液の濃度は、アルカリ性化合物の種類、処理方法等によって異なるが、通常0.01〜40重量%の範囲で行われ、特に0.1〜30重量%の範囲が好ましい。処理温度は常温〜100℃程度の範囲が好ましく、処理時間は通常1分間〜4時間の範囲で行われる。
【0066】
ポリエステル繊維は、紡糸延伸して得られる繊維、又はこの繊維からなる布帛を前述したアルカリ性化合物の水溶液に浸漬処理すればよく、有機スルホン酸金属塩を溶出させる割合は、配合した有機スルホン酸金属塩の量及び要求される吸水性能によって異なるが、好ましくは配合量を基準として少なくとも10%を溶出させることが好ましい。
【0067】
本発明の製造方法によって得られた繊維には微細孔が存在する。該微細孔は、繊維横断面全体に均一に散在している。繊維の表面近辺に微細孔が集中し、断面全体に均一に散在していない場合にはポリエステル繊維の吸水性、親水性が不充分であり、さらに他の物性も低下する。また該微細孔は、微細孔同士が連通していることにより、繊維全体として、表面と内部とが微細孔を介して通じている、いわば”多孔質海綿状態”を形成している。このような繊維形態となっていることで、初めて充分な吸水性、親水性を発揮する繊維となるものであることは明らかである。
【0068】
さらに、繊維表面はフィブリル化されておらず、糸条としての形状を維持し、微細孔は繊維軸方向に配列されている。これに対し従来のいわゆる微細孔を有する繊維は、繊維表面近辺にのみに微細孔を有しており、繊維横断面の全体にわたって均一に存在するものではない。しかも、従来の繊維はその表面がフィブリル化し、強度が著しく低下したものである。
【0069】
以上に述べたように本発明の製造方法によって得られたポリエステル繊維には、断面全体に均一に微細孔が存在するが、該微細孔はその直径が0.001〜5μmの範囲にあることが好ましい。該直径が上記の範囲にある場合には吸水性の効果と繊維強度とをさらに高い水準で兼備することが可能となる。特に該微細孔の大きさはその直径が0.01〜1μmの範囲であることが好ましい。ここで、”微細孔の直径”とは、該微細孔の長径と短径との平均径のことであり、電子顕微鏡写真により容易に求められる。
【0070】
さらに、任意の繊維横断面を基準としたときに、微細孔の総断面積が占める割合は、0.01〜50%であることが好ましい。上記の範囲にある場合には、吸水性の効果と繊維強度とをさらに高い水準で兼備することができる。該面積割合は、特に0.1〜30%の範囲であることが好ましい。
【0071】
なお、本発明の製造方法において、繊維の断面形態は、本発明の目的とする効果を奏する限り任意に選択することができ、丸形、異形など、適宜選択すればよく、また断面の大きさ(繊度)にも制限はない。
【0072】
また、本発明の製造方法において得られるポリエステル繊維には必要に応じて触媒、着色防止剤、耐熱剤、蛍光剤、難燃剤、染料、顔料、不活性微粒子等が含まれていてもよい。
【0073】
さらに、得られるポリエステルのカラーを微調整するために、反応系にポリエステルの製造段階において、アゾ系、トリフェニルメタン系、キノリン系、アントラキノン系、フタロシアニン系等の有機青色顔料及び無機青色顔料の一種以上からなる整色剤を添加することができる。なお、本発明の製造方法においては、当然のことながらポリエステルの溶融熱安定性を低下させるコバルト等を含む無機青色顔料を整色剤としては用いる必要はなく、したがって得られるポリエステルには実質的にコバルトを含まないことが好ましい。
【0074】
本発明方法によって得られるポリエステルは、通常、ハンター型色差計より得られるL値が80.0以上、b値が−2.0〜5.0の範囲にあるものである。ポリエステルのL値が80.0未満であると、白色度が低くなるため実用に供し得る高白色度成形物を得ることができないことがある。また、b値が−2.0未満であると、このポリエステルの黄味は少ないが、青味が増し、一方、b値が5.0を越えると、得られるポリエステルの黄味が強くなるため、実用上有用な成形物の製造に供することができないことがある。本発明方法により得られるポリエステルのL値は好ましくは82以上、特に好ましくは83以上であり、b値の好ましい範囲は−1.0〜4.5であり、特に好ましくは0.0〜4.0である。
【0075】
なお、本発明方法により得られるポリエステルのL値及びb値は、下記の方法により測定される。すなわち、ポリエステルの試料を290℃、真空下で10分間溶融し、これをアルミニウム板上において、厚さ3.0±1.0mmのプレートに成形し、このプレートをただちに氷水中で急冷し、このプレートを160℃、1時間乾燥し、次に結晶化処理を施し、その後、プレートを色差計調整用の白色標準プレート上に置き、供試プレート表面の色調を、ミノルタ社製ハンター型色差計CR−200を用いて測定した。
【0076】
本発明のポリエステルは、実質的に、整色用コバルト化合物に由来するコバルト原子を含まないものである。コバルト原子を含むポリエステルには、溶融熱安定性が低く、分解が起こりやすくなるという欠点がある。なお、ここで“実質的に含まない”とは、整色剤若しくは重縮合触媒としてコバルト化合物を使用せず、したがって、得られるポリエステルが、上記コバルト化合物に由来するコバルト原子を含まないことを意味する。したがって、本発明のポリエステルは、整色剤及び触媒以外の目的をもって添加されたコバルト化合物に由来するコバルト原子を含むことがあってもよい。
【0077】
本発明におけるポリエステルの固有粘度は適宜選択すればよいが、0.55〜1.0の範囲にあることが好ましい。該固有粘度がこの範囲内にあると、溶融成形が容易でかつ成形物の強度も高いものとなる。該固有粘度のさらに好ましい範囲は、0.60〜0.90であり、特に好ましくは0.62〜0.80である。
【0078】
【実施例】
本発明をさらに下記実施例により具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例により限定されるものではない。ただし上述の通り、固有粘度、色相、チタン含有量、吸水率及び紡糸口金に発生する付着物の層については、下記記載の方法により測定された。
【0079】
(1)固有粘度:
ポリエステルポリマーの固有粘度は、35℃オルソクロロフェノール溶液中、常法に従って測定した粘度の値から求めた。
【0080】
(2)色調(L値及びb値):
ポリマー試料を290℃、真空下で10分間溶融し、これをアルミニウム板上で厚さ3.0±1.0mmのプレートに成形後ただちに氷水中で急冷し、該プレートを160℃、1時間乾燥結晶化処理後、色差計調整用の白色標準プレート上に置き、プレート表面のハンターL値及びb値を、ミノルタ社製ハンター型色差計CR−200を用いて測定した。L値は明度を示し、その数値が大きいほど明度が高いことを示し、b値はその値が大きいほど黄着色の度合いが大きいことを示す。
【0081】
(3)触媒のチタン含有量:
触媒化合物中のチタン濃度は、リガク社製蛍光X線測定装置3270を用いて測定した。
【0082】
(4)吸水率測定法:
試料をアニオン性洗剤(花王石鹸(株)製「ザブ」)の0.3%水溶液を用いて家庭用電気洗濯機にて40℃、30分間洗濯した後、試料を乾燥させた。
乾燥後の試料を水中に30分間以上浸漬させた後、家庭用電気洗濯機の脱水機で5分間脱水する。水に浸漬させる前の試料重量と脱水処理後の試料重量とから、下記式を用いて得た。
【0083】
【数1】
Figure 0003888871
【0084】
(5)紡糸口金に発生する付着物の層:
ポリエステルをチップ形状となし、これを290℃で溶融し、孔径0.15mmφ、孔数12個の紡糸口金から吐出し、600m/分で2日間紡糸し、口金の吐出口外縁に発生する付着物の層の高さを測定した。この付着物層の高さが大きいほど吐出されたポリエステルメルトのフィラメント状流にベンディングが発生しやすく、このポリエステルの成形性は低くなる。すなわち、紡糸口金に発生する付着物層の高さは、当該ポリエステルの成形性の指標である。
【0085】
[実施例1]
触媒(A)の調製:
エチレングリコール2.5重量部に無水トリメリット酸0.8重量部を溶解し、この溶液にチタンテトラブトキシド0.7重量部(無水トリメリット酸のモル量を基準として0.5mol%)を滴下し、この反応系を空気中、常圧下、80℃に60分間保持してチタンテトラブトキシドと無水トリメリット酸とを反応させ、反応生成物を熟成させた。その後反応系を常温に冷却し、これにアセトン15重量部を加え、析出物をNo.5ろ紙で濾過し、採取し、これを100℃の温度で2時間乾燥した。得られた反応生成物(チタン化合物(2))のチタン含有量は11.2重量%であった。
【0086】
また、エチレングリコール131部にモノ−n−ブチルホスフェート3.5部を120℃で10分間溶解した。このエチレングリコール溶液134.5部にさらにエチレングリコール40部を加えた後、上記チタン化合物5.0部を溶解させ、120℃で60分間撹拌し、反応生成物を含む触媒(A)の白色スラリーを得た。この触媒(A)スラリーのチタン含量は0.3%であった。
ポリエステルの製造:
テレフタル酸166重量部とエチレングリコール75重量部とを240℃においてエステル化反応させ、次いで得られた反応生成物を精留塔付き重縮合用フラスコへ入れ、重縮合触媒として上記触媒(A)スラリー0.95重量部(テレフタル酸のモル量を基準として、チタン原子のモル量換算で20×10-3%)及び整色剤としてテラゾールブルー0.0002重量部を加え、得られた反応系を温度285℃、常圧で30分間加熱し、温度280℃、大気圧下で30分間反応させ、次いで4kPaの減圧下で15分間反応させた後、一旦大気圧下に戻し、炭素数8〜20で平均炭素数が14であるアルキルスルホン酸ソーダの混合物を10部添加した後、系内を徐々に減圧し、撹拌下80分間反応させた。最終内温は280℃、最終内圧は42Paであり、得られたポリマーの固有粘度は0.640であった。
【0087】
反応終了後ポリマーを常法に従いチップ化し、乾燥した。次にこの乾操したチップを用い、常法にしたがって333dtex/36filの原糸を作り、4.0倍に延伸して83.25dtex/36filのマルチフィラメントを得た。
【0088】
このフィラメントをメリヤス編地となし、常法により精練、乾燥後0.5%のカセイソーダ水溶液で沸騰温度にて180分間処理し、メリヤス編地を得た。結果を表1に示す。
【0089】
[実施例2]
ポリエステルの製造:
テレフタル酸ジメチル194重量部、エチレングリコール124重量部及び酢酸カルシウム0.12重量部を精留塔付き反応槽に投入し、220℃においてエステル交換反応を行い、生成した理論量のメタノールを留出除去した後、この反応混合物にリン酸0.09重量部を加えて第1段階の反応を終了した。次いで前記反応混合物を精留塔付き重縮合用フラスコへ入れ、この反応混合物に、重縮合触媒として、実施例1と同じ方法により得られた触媒(A)スラリー3.2重量部(テレフタル酸ジメチルのモル量を基準として、チタン化合物(2)の含有量はチタン原子モル量換算で20×10-3%)、及び整色剤としてテラゾールブルー0.0002重量部を加えた。
【0090】
この反応系を温度280℃、大気圧下で30分間反応させ、次いで4kPaの減圧下で15分間反応させた後、一旦大気圧下に戻し、炭素数8〜20で平均炭素数が14であるアルキルスルホン酸ソーダの混合物を10部添加した後、系内を徐々に減圧し、撹拌下80分間反応させた。最終内温は280℃、最終内圧は42Paであり、得られたポリマーの固有粘度は0.640であった。
【0091】
反応終了後ポリマーを常法に従いチップ化し、乾燥した。次にこの乾操したチップを用い、常法にしたがって333dtex/36filの原糸を作り、4.0倍に延伸して83.25dtex/36filのマルチフィラメントを得た。
【0092】
このフィラメントをメリヤス編地となし、常法により精練、乾燥後0.5%のカセイソーダ水溶液で沸騰温度にて180分間処理し、メリヤス編地を得た。結果を表1に示す。
【0093】
[比較例1]
実施例2のポリエステルの製造法と同様にしてポリエステルを製造した。ただし、重縮合触媒として、チタンテトラブトキシドのみを用い、この触媒の添加量を、テレフタル酸ジメチルのモル量を基準として、チタン原子モル量換算で20×10-3%となるように、触媒スラリーの濃度及び添加量を調整した。結果を表1に示す。
【0094】
[比較例2]
触媒(B)の調製:
無水トリメリット酸0.80重量部をエタノールに溶解し、この溶液にチタンテトラブトキシド0.64重量部を滴下し、得られた反応系を空気中、常圧の下、80℃の温度に60分間保持して、チタンテトラブトキシドとトリメリット酸無水物とを反応させ、熟成した。反応熟成後、反応系を常温に冷却し、これにアセトン15重量部を加え、生成した沈殿を濾取した。このようにして得られた触媒(B)のチタン含量は11.4重量%であった。
ポリエステルの製造:
実施例2のポリエステルの製造法と同様にしてポリエステルを製造した。ただし、重縮合触媒として、上記触媒(B)を用い、この触媒(B)の添加量が、テレフタル酸ジメチルのモル量を基準としてチタン原子モル量換算で20×10-3%となるようスラリーの触媒濃度及び添加量を調整した。結果を表1に示す。
【0095】
[比較例3]
実施例2のポリエステルの製造法と同様にして、ポリエステルを製造した。ただし、重縮合触媒として、三酸化アンチモンを用い、この触媒の添加量を、テレフタル酸ジメチルのモル量を基準として、アンチモン原子モル量換算で25×10-3%となるようスラリーの濃度及び添加量を調整した。結果を表1に示す。
【0096】
【表1】
Figure 0003888871
【0097】
【発明の効果】
本発明によれば、良好な色調(b値)を有し、優れた吸水性、吸湿性を呈するポリエステル繊維を提供することができる。また、該ポリエステル繊維の製造時に、紡糸口金を通して長時間連続的に紡糸しても口金付着物の発生量が非常に少なく、成形性に優れているという優れた性能を有する。

Claims (11)

  1. 二官能性芳香族カルボン酸のアルキレングリコールエステル及びその低重合体から選ばれた少なくとも一種からなる重合出発原料を、触媒の存在下に重縮合する工程を含み、前記触媒が、
    (A)下記一般式(I)により表されるチタン化合物(1):
    Figure 0003888871
    及び、前記式(I)のチタン化合物(1)と下記一般式(II)で表される多価カルボン酸又はその無水物とを反応させて得られたチタン化合物(2):
    Figure 0003888871
    から選ばれた少なくとも一種からなるチタン化合物成分と、(B)下記一般式(III)により表されるリン化合物(3):
    Figure 0003888871
    の一であってモノ−n−ブチルホスフェートからなるリン化合物成分とを反応させて得られた反応生成物からなるものであること、並びに、
    前記触媒のチタン原子換算モル量が、前記重合出発原料中に含まれる前記二官能性芳香族カルボン酸成分の合計モル量に対して、10〜40ミリモル%であること、さらには、
    該ポリエステルの合成が完了する以前の任意の段階で、下記一般式(IV)で表される有機スルホン酸金属塩を、該ポリエステルの重量を基準として、0.01〜40%となるように添加配合し、得られたポリエステル組成物を繊維化し、次いでアルカリ性化合物の水溶液によって、得られた該繊維中の有機スルホン酸金属塩の少なくとも一部を除去することによって、該繊維の横断面に均一に散在し、繊維軸方向に配列し、且つその少なくとも一部が連通している微細孔を該繊維に形成させることを特徴とする、ポリエステル繊維の製造方法。
    Figure 0003888871
  2. 微細孔の直径が0.001〜5μmである、請求項1記載の製造方法。
  3. 任意の繊維横断面積を基準として、微細孔の総断面積が0.01〜50%を占める、請求項1記載の製造方法。
  4. チタン化合物成分とリン化合物との反応が、チタン化合物成分のチタン原子換算モル量(mTi)の、リン化合物成分のリン原子換算モル量(mP)に対する反応モル比mTi/mPが、(1:1)〜(1:4)の範囲内にある、請求項1記載の製造方法。
  5. チタン化合物(1)が、チタンテトラアルコキシド類、オクタアルキルトリチタネート類、及びヘキサアルキルジチタネート類から選ばれた少なくとも一種の化合物である、請求項1記載の製造方法。
  6. 多価カルボン酸又はその無水物が、トリメリット酸、フタル酸又はそれらの無水物から選ばれた少なくとも一種の化合物である、請求項1記載の製造方法。
  7. チタン化合物(2)が、チタン化合物(1)と多価カルボン酸又はその無水物との、反応モル比(2:1)〜(2:5)における反応生成物である、請求項1記載の製造方法。
  8. チタン化合物成分とリン化合物成分との反応を、0〜200℃の温度で行う、請求項1記載の製造方法。
  9. 二官能性芳香族カルボン酸がテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルメタンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、及びβ−ヒドロキシエトキシ安息香酸から選ばれた少なくとも一種のカルボン酸である、請求項1記載の製造方法。
  10. アルキレングリコールが、エチレングリコール、トリメチレングリコート、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、及びヘキサメチレングリコールから選ばれた少なくとも一種のグリコールである、請求項1記載の製造方法。
  11. 重縮合工程を230〜320℃の温度において行う、請求項1記載の製造方法。
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