JP3776024B2 - 共重合ポリエステル及びカチオン染料可染性繊維 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はポリエステル及び繊維に関する。さらに詳しくは、本発明は色調に優れ、紡糸口金を通して長時間連続的に紡糸しても口金付着物の発生量が非常に少なく、成形性に優れているという優れた性能を有する共重合ポリエステル、及びカチオン染料可染性を有する繊維に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート及びポリテトラメチレンテレフタレートは、その機械的、物理的、化学的性能が優れているため、繊維、フィルム、その他の成形物に広く利用されている。
【0003】
しかしながらポリエステルは衣料用繊維としては染色性が良好とはいえない。また、分散染料を用いた染色では限られた染料しか使用できず、染色物の鮮明性が劣るなどの欠点を有している。従来、このような欠点を補うため、スルホン酸塩基を有するイソフタル酸化合物を共重合して塩基性染料(以下、カチオン染料と称する)に可染性の改質ポリエステルを製造する方法が公知である(特公昭34−10497号公報参照)。
【0004】
このようなカチオン染料可染性ポリエステルは、通常テレフタル酸とエチレングリコールとを直接エステル化反応させるか、テレフタル酸ジメチルのようなテレフタル酸の低級アルキルエステルとエチレングリコールとをエステル交換反応させるか又はテレフタル酸とエチレンオキサイドとを反応さて、テレフタル酸のエチレングリコールエステル及び/又はその低重合体を生成させ、次いでこの反応生成物を重合触媒の存在下で減圧加熱して所定の重合度になるまで重縮合反応させて製造されている。
【0005】
これらの重縮合反応段階で使用する触媒の種類によって、反応速度および得られるポリエステルの品質が大きく左右されることはよく知られているが、カチオン可染性ポリエステルは、既知のポリエステルと同様の重縮合触媒を使用して重縮合反応を行うことができ、例えばアンチモン化合物が、優れた重縮合触媒性能を有し、かつ、色調の良好なポリエステルが得られるなどの理由から最も広く使用されている。
【0006】
しかしながら、アンチモン化合物を重縮合触媒として使用した場合、ポリエステルを長時間にわたって連続的に溶融紡糸すると、還元されたアンチモン金属が異物となって紡糸濾過部の圧力(パック圧)上昇が発生する、口金孔周辺に異物(以下、単に口金異物と称することがある。)が付着堆積し、溶融ポリマー流れの曲がり現象(ベンディング)が発生し、これが原因となって紡糸、延伸工程において毛羽及び/又は断糸などを発生する、といった成形性の問題があり、生産性を著しく低下させる原因となっていた。
【0007】
該アンチモン化合物以外の重縮合触媒として、チタンテトラブトキシドのようなチタン化合物を用いることも提案されているが、このようなチタン化合物を使用した場合、上記のような、口金異物堆積に起因する成形性の問題は解決できるが、得られたポリエステル自身が黄色く着色されており、また、溶融熱安定性も不良であるという新たな問題が発生する。
【0008】
上記着色問題を解決するために、コバルト化合物をポリエステルに添加して黄味を抑えることが一般的に行われている。確かにコバルト化合物を添加することによってポリエステルの色調(カラーb値)は改善することができるが、コバルト化合物を添加することによってポリエステルの溶融熱安定性が低下し、ポリマーの分解も起こりやすくなるという問題がある。
【0009】
また、他のチタン化合物として、特公昭48−2229号公報には水酸化チタンを、また特公昭47−26597号公報にはα−チタン酸を、それぞれポリエステル製造用触媒として使用することが開示されている。しかしながら、前者の方法では水酸化チタンの粉末化が容易でなく、一方、後者の方法ではα−チタン酸が変質し易いため、その保存、取り扱いが容易でなく、したがっていずれも工業的に採用するには適当ではなく、さらに、良好な色調(カラーb値)のポリマーを得ることも困難である。
【0010】
また、特公昭59−46258号公報にはチタン化合物とトリメリット酸とを反応させて得られた生成物を、また特開昭58−38722号公報にはチタン化合物と亜リン酸エステルとを反応させて得られた生成物を、それぞれポリエステル製造用触媒として使用することが開示されている。確かに、この方法によれば、ポリエステルの溶融熱安定性はある程度向上しているものの、得られるポリマーの色調が十分なものではなく、したがってポリマー色調のさらなる改善が望まれている。
【0011】
口金異物を抑制するには、前記のように触媒としてアンチモン化合物を使用しないことが有効な手段であるが、アンチモン化合物を使用しない方法では、糸のカラーが低下してしまうため、従来は使用に供することができなかった。
【0012】
したがって触媒としてアンチモン化合物を使用せず、かつ色相に優れたポリエステル繊維が求められていた。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の第1の目的は、上記従来技術が有していた問題点を解消し、紡糸口金を通して長時間連続的に紡糸してもパック圧上昇及び口金付着物の発生量が非常に少なく、成形性に優れているという共重合ポリエステル及びその製造方法を提供することにある。
本発明の第2の目的は、上記従来が有していたチタン触媒使用時の色調の不良を解消すること。
【0014】
さらに、本発明の第3の目的は、色相の改善されたカチオン染料可染性繊維を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記従来技術に鑑み鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち、本発明の第1及び第2の目的は、
テレフタル酸のアルキレングリコールエステル及びその低重合体とスルホン酸塩基を有するイソフタル酸のアルキレングリコールエステル及びその低重合体とを重合出発原料とし、触媒の存在下に重縮合して共重合ポリエステルポリマーを得るに際し、
該触媒として、下記式(I)で表されるチタン化合物と下記式(II)で表されるリン化合物とを、チタン元素のモル数に対するリン元素のモル数(P/Ti)が1〜4となる範囲とし、グリコール中で加熱することにより得られた析出物を用いて、該共重合ポリエステルの全繰り返し単位を基準として、少なくとも80モル%をエチレンテレフタレート単位が占め、0.5〜10モル%をスルホン酸塩基を有するエチレンイソフタレートが占める共重合ポリエステルを得ることを特徴とする、共重合ポリエステルの製造方法によって達成される。
【0017】
【化4】
【0018】
【化5】
【0019】
本発明の第2の目的は、
請求項8記載の共重合ポリエステルを溶融紡糸して得られるカチオン染料可染性繊維維によって達成することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下本発明を詳しく説明する。
【0021】
本発明における共重合ポリエステルは、該共重合ポリエステルの全繰り返し単位を基準として、少なくとも80モル%以上をエチレンテレフタレート単位が占め、0.5〜10モル%をスルホン酸塩基を有するエチレンイソフタレートが占めていることが必要である。
【0022】
エチレンテレフタレート単位が80モル%未満であると、得られる繊維の強伸度等の基本物性が十分に保持できないため好ましくない。
【0023】
また、スルホン酸基を有するイソフタレートが0.5モル%未満であるとカチオン染料への染色性が著しく劣り、10モル%を越えると、吸湿率が高くなるために紡糸時の加水分解が著しくなるため得られる繊維の物性が劣るようになり、またスルホン酸塩基由来の分解性異物によりパック圧上昇が著しくなる。
【0024】
本発明におけるポリエステルは、上記のエチレンテレフタレート単位及びエチレンイソフタレート単位以外に、本発明の目的を奏する範囲内であれば第3成分が共重合されていてもよく、該第3成分は、ジカルボン酸成分又はグリコール成分のいずれでもよい。
【0025】
本発明において、第3成分として好ましく用いられるジカルボン酸成分としては、2,6−ナフタレンジカルボン酸、フタル酸等のような芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸等を例示することができ、一方のグリコール成分としてもテトラメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノールのようなジオールを例示することができる。これらは一種を単独で用いても、二種以上を併用してもどちらでもよい。
【0026】
本発明の共重合ポリエステルは下記一般式(I)で表されるチタン化合物と下記一般式(II)で表されるリン化合物と、グリコール中で加熱することによって得られた析出物を重縮合触媒として用いることが必要であり、その反応割合として、チタン元素のモル数に対するリン元素のモル数(P/Ti)が1〜4となる範囲とした後に加熱反応させて得られたものを用いることが必要である。
【0027】
【化6】
【0028】
【化7】
【0029】
ここで、チタン元素のモル数に対するリン元素のモル数(P/Ti)が1より小さい場合、得られるポリエステルの色調が、不良になり、かつその耐熱性が低下することがあり好ましくなく、4より大きい場合、ポリエステル生成反応に対する触媒活性が不十分になり好ましくない。チタン元素のモル数に対するリン元素のモル数(P/Ti)は1.2〜3.5の範囲であることが好ましく、1.5〜3.0の範囲がさらに好ましい。
【0030】
また、チタン化合物成分(I)とリン化合物成分(II)との触媒調製は、エチレングリコール中で加熱反応されている必要があるが、反応方法としては例えばリン化合物(II)からなる成分とエチレングリコールとを混合して、リン化合物成分の一部又は全部を溶媒中に溶解し、この混合液にチタン化合物成分(I)を滴下し、反応系を0℃〜200℃の温度に30分間以上、好ましくは60〜150℃の温度に40〜90分間、加熱することによって行われる。この反応において、反応圧力については格別の制限はなく、通常常圧下で行われる。
【0031】
ここで、上記式(I)で表されるチタン化合物としては例えば、チタンテトラブトキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトラエトキシドなどのチタンテトラアルコキシドや、オクタアルキルトリチタネート、ヘキサアルキルジチタネート、アルキルチタネート、酢酸チタン等を挙げることができる。
【0032】
また上記式(II)で表されるリン化合物には該当しないが、式中のpが0の場合には、例えば、フェニルホスホン酸、メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、イソプロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、トリルホスホン酸、キシリルホスホン酸、ビフェニルホスホン酸、ナフチルホスホン酸、アントリルホスホン酸、2−カルボキシフェニルホスホン酸、3−カルボキシフェニルホスホン酸、4−カルボキシフェニルホスホン酸、2,3−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,4−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,5−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,6−ジカルボキシフェニルホスホン酸、3,4−ジカルボキシフェニルホスホン酸、3,5−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,3,4−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,3,5−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,3,6−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,4,5−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,4,6−トリカルボキシフェニルホスホン酸、等が挙げられる。
【0033】
また、式中のpが1の場合は例えば、モノメチルホスフェート、モノエチルホスフェート、モノトリメチルホスフェート、モノ−n−ブチルホスフェート、モノヘプチルホスフェート、モノヘキシルホスフェート、モノノニルホスフェート、モノデシルホスフェート、モノドデシルホスフェート、モノフェニルホスフェート、モノベンジルホスフェート、モノ(4−ドデシル)フェニルホスフェート、モノ(4−メチルフェニル)ホスフェート、モノ(4−エチルフェニル)ホスフェート、モノ(4−プロピルフェニル)ホスフェート、モノ(4−ドデシルフェニル)ホスフェート、モノトリルホスフェート、モノキシリルホスフェート、モノビフェニルホスフェート、モノナフチルホスフェート、モノアントリルホスフェート等が挙げられるが、これらのうち、モノアルキルホスフェートを用いることが好ましい。
【0034】
本発明においては、上記式(1)で表されるチタン化合物は予め下記式(III)の多価カルボン酸及び/又はその無水物と反応させて使用する方法も好ましく用いられる。その場合、チタン化合物と多価カルボン酸及び/又はその無水物の反応モル比は(2:1)〜(2:5)の範囲が好ましい。特に好ましい範囲は(1:1)〜(1:2)である。
【0035】
【化8】
【0036】
上述した方法によって得られる本発明の共重合ポリエステルはチタン元素量が全ジカルボン酸成分を基準として2〜40ミリモル%の範囲である。チタン元素量が2ミリモル%未満であるような場合には重合反応が遅くなるため、生産性に劣り、一方、40ミリモル%を越えると、ポリエステルの色調が不良になるとともに、かつ耐熱性が低下することもある。該チタン元素量は5〜35ミリモル%の範囲が好ましく、10〜30ミリモル%の範囲がさらに好ましい。
【0037】
本発明のカチオン可染性繊維は、上述の共重合ポリエステルを従来公知の溶融紡糸方法を用いて製造することができる。例えばポリエステルを270℃〜300℃の範囲で溶融紡糸して製造することが好ましく、溶融紡糸の速度は400〜5000m/分で紡糸することが好ましい。紡糸速度がこの範囲にあると、得られる繊維の強度も十分なものであるとともに、安定して巻き取りを行うこともできる。また延伸はポリエステル繊維を巻き取ってから、あるいは一旦巻き取ることなく連続的に延伸処理することによって、延伸糸を得ることができる。さらに本発明のポリエステル繊維は風合いを高める為に、アルカリ減量処理も好ましく実施される。
【0038】
本発明のポリエステル繊維を製造する際において、紡糸時に使用する口金の形状について制限は無く、円形、異形、中実、中空等のいずれも採用することができる。
【0039】
本発明におけるポリエステル繊維は、従来使用される染料で染色することができ、鮮明かつ色調に優れたポリエステル繊維を得ることができる。
【0040】
【実施例】
以下、実施例を挙げてさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお実施例中の部は重量部を示す。また各種特性は下記の方法により評価した。
【0041】
(1)固有粘度:
オルトクロルフェノールを溶媒として35℃で測定し、その相対粘度から常法により求めた。
【0042】
(2)色調(L値及びb値):
ポリマー試料を290℃、真空下で10分間溶融し、これをアルミニウム板上で厚さ3.0±1.0mmのプレートに成形後ただちに氷水中で急冷し、該プレートを160℃、1時間乾燥結晶化処理後、色差計調整用の白色標準プレート上に置き、プレート表面のハンターL値及びb値を、ミノルタ社製ハンター型色差計CR−200を用いて測定した。L値は明度を示し、その数値が大きいほど明度が高いことを示し、b値はその値が大きいほど黄着色の度合いが大きいことを示す。
【0043】
(3)金属元素含有量:
リガク社製蛍光X線測定装置3270を用いて測定した。
【0044】
(4)紡糸圧上昇評価:
紡糸口金直上に2400メッシュの径25mmの金網を装着した紡糸機に290℃でポリエステルチップを30g/分で7日間放流し、1日当たりの濾過昇圧として求めた。
【0045】
(5)紡糸口金に発生する付着物の層:
ポリエステルをチップとなし、これを290℃で溶融し、孔径0.15mmφ、孔数12個の紡糸口金から吐出し、600m/分で2日間紡糸し、口金の吐出口外縁に発生する付着物の層の高さを測定した。この付着物層の高さが大きいほど吐出されたポリエステルメルトのフィラメント状流にベンディングが発生しやすく、このポリエステルの成形性は低くなる。すなわち、紡糸口金に発生する付着物層の高さは、当該ポリエステルの成形性の指標である。
【0046】
[参考例1]
エチレングリコール131重量部中にフェニルホスホン酸3.6重量部を120℃に10分間加熱して溶解した。このエチレングリコール溶液134.5重量部に、さらにエチレングリコール40重量部を加えた後、これにチタンテトラブトキシド3.8重量部を溶解させた。得られた反応系を120℃で60分間撹拌し、チタン化合物とフェニルホスホン酸とを反応させ、反応生成物を含む触媒の白色スラリーを得た。この触媒スラリーのチタン含量は0.3重量%であった。
【0047】
[参考例2]
エチレングリコール2.5重量部に無水トリメリット酸0.8重量部を溶解し、この溶液にチタンテトラブトキシド0.7重量部(無水トリメリット酸のモル量を基準として0.5mol%)を滴下し、この反応系を空気中、常圧下、80℃に60分間保持してチタンテトラブトキシドと無水トリメリット酸とを反応させ、反応生成物を熟成させた。その後反応系を常温に冷却し、これにアセトン15重量部を加え、析出物をNo.5ろ紙で濾過し、採取し、これを100℃の温度で2時間乾燥した。得られた反応生成物のチタン含有量は11.2重量%であった。
【0048】
次に、エチレングリコール131重量部中にフェニルホスホン酸3.6重量部を120℃に10分間加熱して溶解した。このエチレングリコール溶液134.5重量部に、さらにエチレングリコール40重量部を加えた後、これに上記チタン化合物5.0重量部を溶解させた。得られた反応系を120℃で60分間撹拌し、チタン化合物とフェニルホスホン酸とを反応させ、反応生成物を含む触媒の白色スラリーを得た。この触媒スラリーのチタン含量は0.3重量%であった。
【0049】
[参考例3]
エチレングリコール131重量部中にモノ−n−ブチルホスフェート3.5重量部を120℃に10分間加熱して溶解した。このエチレングリコール溶液134.5重量部に、さらにエチレングリコール40重量部を加えた後、これにチタンテトラブトキシド3.8重量部を溶解させた。得られた反応系を120℃で60分間撹拌し、チタン化合物とモノ−n−ブチルホスフェートとを反応させ、反応生成物を含む触媒の白色スラリーを得た。この触媒スラリーのチタン含量は0.3重量%であった。
【0050】
[参考例4]
エチレングリコール2.5重量部に無水トリメリット酸0.8重量部を溶解し、この溶液にチタンテトラブトキシド0.7重量部(後記ポリエステルの製造に用いられる無水トリメリット酸のモル量を基準として0.5mol%)を滴下し、この反応系を空気中、常圧下、80℃に60分間保持してチタンテトラブトキシドと無水トリメリット酸とを反応させ、反応生成物を熟成させた。その後反応系を常温に冷却し、これにアセトン15重量部を加え、析出物をNo.5ろ紙で濾過し、採取し、これを100℃の温度で2時間乾燥した。得られた反応生成物のチタン含有量は11.2重量%であった。
【0051】
次に、エチレングリコール131重量部中にモノ−n−ブチルホスフェート3.5重量部を120℃に10分間加熱して溶解した。このエチレングリコール溶液134.5重量部に、さらにエチレングリコール40重量部を加えた後、これに上記チタン化合物5.0重量部を溶解させた。得られた反応系を120℃で60分間撹拌し、チタン化合物とモノ−n−ブチルホスフェートとを反応させ、反応生成物を含む触媒の白色スラリーを得た。この触媒スラリーのチタン含量は0.3重量%であった。
【0052】
[参考例5]
テレフタル酸90部、イソフタル酸10部、及びエチレングリコール55部を0.1MPa、250℃にてエステル化反応させ、次いで得られた反応生成物を精留塔付き重縮合用フラスコへ入れ、20%の酸化チタンエチレングリコールスラリーを1.7部、重縮合触媒として参考例1で製造したスラリー1.92重量部(テレフタル酸+イソフタル酸の物質量を基準として、チタン原子換算量で20ミリモル%)を加え、得られた反応系を温度285℃、30Paの高真空下で重縮合反応を行い、得られたポリエステルを常法に従いチップ化した。
【0053】
得られたポリマーの固有粘度は0.50であった。チップを160℃×4hrの条件で乾操後、290℃にて溶融紡糸し、得られた未延伸糸を4.0倍に延伸して83.25dtex/24filのマルチフィラメントを得た。結果を表1に示す。
【0054】
[参考例6、実施例1〜2、比較例1]
参考例5において、触媒種類、を表1記載のとおりに変更したこと以外は同様の操作を行った。結果を表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
【発明の効果】
本発明によれば、ポリエステルの重縮合触媒として、チタン化合物を触媒として使用しつつ、従来技術の欠点であった色相の悪化を解消し、口金異物の少ない安定した紡糸を可能とし、ポリエステルが持つ、優れた特性を保持しながら、色相の優れたカチオン染料可染性ポリエステル繊維を提供することができる。
Claims (7)
- テレフタル酸のアルキレングリコールエステル及び又はその低重合体とスルホン酸塩基を有するイソフタル酸のアルキレングリコールエステル及び又はその低重合体とを重合出発原料とし、触媒の存在下に重縮合して共重合ポリエステルポリマーを得るに際し、
該触媒として、下記式(I)で表されるチタン化合物と下記式(II)で表されるリン化合物とを、チタン元素のモル数に対するリン元素のモル数(P/Ti)が1〜4となる範囲とし、グリコール中で加熱することにより得られた析出物を用いて、該共重合ポリエステルの全繰り返し単位を基準として、少なくとも80モル%をエチレンテレフタレート単位が占め、0.5〜10モル%をスルホン酸塩基を有するエチレンイソフタレートが占める共重合ポリエステルを得ることを特徴とする、共重合ポリエステルの製造方法。
- 前記式(II)中のpの数値が1であるリン化合物を用いる、請求項1記載の製造方法。
- リン化合物がモノアルキルホスフェートである、請求項2記載の製造方法。
- チタン化合物として、チタンテトラアルコキシド類、オクタアルキルトリチタネート類、及びヘキサアルキルジチタネート類から選ばれた少なくとも一種のチタン化合物を用いる、請求項1記載の製造方法。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の方法によって得られた、チタン元素量が全ジカルボン酸成分を基準として2〜40ミリモル%の範囲である、共重合ポリエステル。
- 請求項6記載の共重合ポリエステルを溶融紡糸して得られるカチオン染料可染性繊維。
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