JP2004217751A - 常圧染色用ポリエステル及び繊維 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】重合時の触媒として、特定のチタン/リン反応物を用い、特定のジカルボン酸成分、グリコール成分及びポリオキシアルキレングリコール成分を共重合したポリエステル。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は常圧染色用ポリエステル及びその繊維に関し、更に詳しくは、特定のチタン化合物及びリン化合物を用いて重合した、色調に優れ、Sb金属を含まない常圧染色用ポリエステル及び繊維に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート及びポリテトラメチレンテレフタレートは、その機械的、物理的、化学的性能が優れているため、繊維、フィルム、その他の成形物に広く利用されている。しかしながらポリエステルは衣料用繊維としては染色性が良好とは言えず、分散染料を用いた染色では、通常は高圧条件下における染色工程が用いられており、生産工程上合理的な手法とは言えない。
【0003】
従来、このような欠点を補うため、脂肪族ジカルボン酸やポリアルキレングリコール等を共重合して常圧で染色性の優れた改質ポリエステルを製造する方法が知られている(例えば先行文献1、2等参照。)。
【0004】
このような常圧染色用ポリエステルは、通常テレフタル酸とエチレングリコールとを直接エステル化反応させるか、テレフタル酸ジメチルのようなテレフタル酸の低級アルキルエステルとエチレングリコールとをエステル交換反応させるか又はテレフタル酸とエチレンオキサイドとを反応さて、テレフタル酸のエチレングリコールエステル及び/又はその低重合体を生成させ、次いでこの反応生成物を重合触媒の存在下で減圧加熱して所定の重合度になるまで重縮合反応させて製造されている。
【0005】
これらの重縮合反応段階で使用する触媒の種類によって、反応速度および得られるポリエステルの品質が大きく左右されることはよく知られている。カチオン可染性ポリエステルは、既知のポリエステルと同様の重縮合触媒を使用して重縮合反応を行うことができ、例えばアンチモン化合物が、優れた重縮合触媒性能を有し、かつ、色調の良好なポリエステルが得られるなどの理由から最も広く使用されている。
【0006】
しかしながら、アンチモン化合物を重縮合触媒として使用した場合、ポリエステルを長時間にわたって連続的に溶融紡糸すると、還元されたアンチモン金属が異物となって紡糸濾過部の圧力(以下、単にパック圧と称することがある。)上昇が発生したり、口金孔周辺に異物(以下、単に口金異物と称することがある。
)が付着堆積し、溶融ポリマー流れの曲がり現象(ベンディング)が発生し、これが原因となって紡糸、延伸工程において毛羽及び/又は断糸などを発生するという成形性の問題があり、生産性を著しく低下させる原因となっていた。
【0007】
該アンチモン化合物以外の重縮合触媒として、チタンテトラブトキシドのようなチタン化合物を用いることも提案されているが、このようなチタン化合物を使用した場合、上記のような、口金異物堆積に起因する成形性の問題は解決できるが、得られたポリエステル自身が黄色く着色されており、また、溶融熱安定性も不良であるという新たな問題が発生する。
【0008】
上記着色問題を解決するために、コバルト化合物をポリエステルに添加して黄味を抑えることが一般的に行われている。確かにコバルト化合物を添加することによってポリエステルの色調(b値)は改善することができるが、コバルト化合物を添加することによってポリエステルの溶融熱安定性が低下し、ポリマーの分解も起こりやすくなるという問題がある。
【0009】
また、他のチタン化合物として、水酸化チタンをポリエステル製造用触媒として用いること(例えば特許文献3参照。)、またα−チタン酸をポリエステル製造用触媒として用いること(例えば特許文献4参照。)が開示されている。しかしながら、前者の方法では水酸化チタンの粉末化が容易でなく、一方、後者の方法ではα−チタン酸が変質し易いため、その保存、取り扱いが容易でなく、したがっていずれも工業的に採用するには適当ではなく、更に、良好な色調(b値)のポリマーを得ることも困難である。
【0010】
また、チタン化合物とトリメリット酸とを反応させて得られた生成物をポリエステルの製造用触媒として用いること(例えば、特許文献5参照。)、またチタン化合物と亜リン酸エステルとを反応させて得られた生成物をポリエステル製造用触媒として使用すること(例えば、特許文献6参照。)が開示されている。
【0011】
確かに、この方法によれば、ポリエステルの溶融熱安定性はある程度向上しているものの、得られるポリマーの色調が十分なものではなく、したがってポリマー色調のさらなる改善が望まれている。
【0012】
また、チタン化合物と特定のホスホン酸化合物を反応させた触媒を用いることも提案されポリマー色調は改良されたものの、ポリエステルの染色性の改良には至っていなかった(例えば、特許文献7参照。)。
【0013】
口金異物を抑制するには、前記のように触媒としてアンチモンを使用しないことが有効な手段であるが、アンチモンを使用しない方法では、糸のカラーが低下してしまうため、従来は使用に供することができなかった。
【0014】
したがって触媒としてアンチモンを使用せず、かつ色相に優れたポリエステル繊維が求められていた。
【0015】
【特許文献1】
特開平9−324322号公報
【0016】
【特許文献2】
特開平10−330467号公報
【0017】
【特許文献3】
特公昭48−2229号公報
【0018】
【特許文献4】
特公昭47−26597号公報
【0019】
【特許文献5】
特公昭59−46258号公報
【0020】
【特許文献6】
特開昭58−38722号公報
【0021】
【特許文献7】
国際公開第01/00706号パンフレット
【0022】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記従来技術が有していた問題点を解消し、色調に優れ、長時間連続的に紡糸しても、パック圧上昇および口金付着物の発生量が非常に少なく、成形性に優れ、高い生産性を具備した、色相の改善された常圧染色用ポリエステルおよび繊維を提供することにある。
【0023】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記従来技術が有していた問題を解決すべく前述の従来技術に鑑み鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。
【0024】
すなわち、本発明の目的は、
ポリエステルを構成する成分のうち少なくとも80モル%がエチレンテレフタレートであって、炭素数2〜20の飽和脂肪族鎖及び/又は飽和脂環族鎖を有するジカルボン酸成分(A)と、炭素数3〜15の飽和脂肪族鎖及び/又は飽和脂環族鎖を有するグリコール成分(B)と、炭素数20〜40の飽和脂肪族鎖及び/又は飽和脂環族鎖を有するジカルボン酸成分(C)と、分子量200〜6000のポリオキシアルキレングリコール成分(D)の、各々の共重合量が下記数式(1)〜(5)を同時に満足し、かつ、ポリエステル重合時の触媒として、下記一般式(I)で表されるチタン化合物と下記一般式(II)で表されるリン化合物をチタン元素のモル数に対するリン元素のモル数(P/Ti)が1〜4となる範囲の組成でエチレングリコール中で加熱反応せしめたチタン/リン反応物を用い、さらに、該ポリエステルに含まれるポリマーに可溶性のチタン元素量が全ジカルボン酸成分を基準として5〜70ppmの範囲にある、ガラス転移温度が25℃〜65の範囲にある、常圧染色用ポリエステルによって達成することができる。
【0025】
【数2】
【0026】
【化4】
【0027】
【化5】
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の常圧染色用ポリエステルは、ポリエステルを構成する繰り返し単位のうち少なくとも80モル%以上がエチレンテレフタレートである必要がある。該繰り返し単位が80モル%未満の場合、最終的に得られるポリエステル繊維の強度が低下する為好ましくない。
【0029】
本発明の常圧染色用ポリエステルは、炭素数2〜20の飽和脂肪族鎖及び/又は飽和脂環族鎖を有するジカルボン酸成分(A)と炭素数3〜15の飽和脂肪族鎖及び/又は飽和脂環族鎖を有するグリコール成分(B)と炭素数20〜40の飽和脂肪族鎖及び/又は飽和脂環族鎖を有するジカルボン酸成分(C)と分子量200〜6000のポリオキシアルキレングリコール成分(D)の各々の共重合量が下記数式(1)〜(5)を同時に満足する必要がある。
【0030】
【数3】
【0031】
ここで、上記式Aで表される炭素数2〜20の飽和脂肪族鎖及び/又は飽和脂環族鎖を有するジカルボン酸成分(A)としては、具体的にはシュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等が例示されるが、特にセバシン酸が好ましく使用される。
【0032】
上記式Bで表される炭素数3〜20の飽和脂肪族鎖及び/又は飽和脂環族鎖を有するグリコール成分(B)としては、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ヘプタメチレングリコール、オクタメチレングリコール、ノナメチレングリコール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチレングリコール等が例示されるが、特にヘキサメチレングリコールが好ましく使用される。
【0033】
上記式Cで表される炭素数20〜40の飽和脂肪族鎖及び/又は飽和脂環族鎖を有するジカルボン酸成分(C)としては、具体的にはダイマー酸等が例示されるが、ダイマー酸としてはリノール酸やオレイン酸を出発原料として製造されたダイマー酸が好ましく使用される。
【0034】
上記式Dで表される分子量200〜6000のポリオキシアルキレングリコール成分(D)としてはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が例示されるが、特に分子量400〜4000のポリエチレングリコール、分子量400〜2000のポリテトラメチレングリコールが好ましく使用される。
【0035】
上記式A、Bで表されるジカルボン酸成分(A)、グリコール成分(B)の共重合量はそれぞれ20モル%以下である必要がある。該共重合量が20モル%を超えると得られるポリエステル繊維の強度や耐熱性が低下し好ましくない。該共重合量はそれぞれ17モル%以下の範囲が好ましく、15モル%の範囲が更に好ましい。また、上記式Cで表されるジカルボン酸成分(C)の共重合量は20重量%以下である必要がある。該共重合量が20重量%を超えると得られるポリエステル繊維の強度や耐熱性が低下する為好ましくない。該共重合量は17重量%以下の範囲が好ましく、15重量%の範囲が更に好ましい。更に上記式Dで表されるポリオキシアルキレングリコール成分(D)の共重合量は15重量%以下である必要がある。該共重合量が15重量%を超えると得られるポリエステル繊維の強度や耐熱性、耐光性が低下する為好ましくない。該共重合量は12重量%以下の範囲が好ましく、10重量%の範囲が更に好ましい。
【0036】
上記式A、B、C、Dの共重合量の合計は5%〜20%の範囲にある必要がある。該共重合量の合計量が5%未満の場合、最終的に得られる繊維の常圧染色性が不十分となり、また、20%を超える場合は得られるポリエステル繊維の強度や耐熱性、耐光性が低下する為好ましくない。該共重合量は6〜17%の範囲が好ましく、7〜15%の範囲が更に好ましい。
【0037】
本発明の常圧染色用ポリエステルはその特性を損なわない範囲、好ましくは5モル%以下の範囲でテレフタル酸成分、エチレングリコール成分、炭素数2〜20の飽和脂肪族鎖及び/又は飽和脂環族鎖を有するジカルボン酸成分(A)と炭素数3〜20の飽和脂肪族鎖及び/又は飽和脂環族鎖を有するグリコール成分(B)と炭素数20〜40の飽和脂肪族鎖及び/又は飽和脂環族鎖を有するジカルボン酸成分(C)、分子量200〜6000のポリオキシアルキレングリコール成分(D)以外の成分を共重合していても良く、例えばナフタレンジカルボン酸、オルトフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ベンゾフェノンジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸、5−スルホキシイソフタル酸金属塩、5−スルホキシイソフタル酸ホスホニウム塩等の芳香族ジカルボン酸成分、o−キシリレングリコール、m−キシリレングリコール、p−キシリレングリコール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシエトキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(2−ヒドロキシエトキシエトキシ)ビフェニル、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシエトキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシエトキシ)ベンゼン、1,2−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,2−ビス(2−ヒドロキシエトキシエトキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ジフェニルスルホン、4,4’−ビス(2−ヒドロキシエトキシエトキシ)ジフェニルスルホン等の芳香族グリコール成分、ヒドロキノン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、レゾルシン、カテコール、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシビフェニル、ジヒドロキシジフェニルスルホン等のジフェノール類等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても2種以上を併用してもどちらでも良い。
【0038】
本発明の常圧染色用ポリエステルは下記一般式(I)で表されるチタン化合物と下記一般式(II)で表されるリン化合物とをチタン元素のモル数に対するリン元素のモル数(P/Ti)が1〜4となる範囲の組成で反応させたチタン/リン反応物を用いて重合されている必要がある。
【0039】
【化6】
【0040】
【化7】
【0041】
ここでチタン元素のモル数に対するリン元素のモル数(P/Ti)が1より小さい場合、得られるポリエステルの色調が、不良になり、かつその耐熱性が低下することがあり好ましくなく、4より大きい場合、ポリエステル生成反応に対する触媒活性が不十分になり好ましくない。チタン元素のモル数に対するリン元素のモル数(P/Ti)は1.2〜3.5の範囲が好ましく、1.5〜3.0の範囲が更に好ましい。
【0042】
また、チタン化合物(I)とリン化合物(II)との触媒調製は、エチレングリコール中で加熱反応されている必要があるが、反応方法としては例えばリン化合物(II)からなる成分とエチレングリコールとを混合して、リン化合物の一部又は全部を溶媒中に溶解し、この混合液にチタン化合物成分(I)を滴下し、反応系を0℃〜200℃の温度に30分間以上、好ましくは60〜150℃の温度に40〜90分間、加熱することによって行われる。この反応において、反応圧力については格別の制限はなく、通常常圧下で行われる。
【0043】
ここで上記式(I)で表されるチタン化合物としては例えば、チタンテトラブトキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトラエトキシドなどのチタンテトラアルコキシドや、オクタアルキルトリチタネート、ヘキサアルキルジチタネート、アルキルチタネート、酢酸チタン等を挙げることができる。
【0044】
また上記式(II)で表されるリン化合物としては式中のqが0の場合は、例えば、フェニルホスホン酸、メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、イソプロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、トリルホスホン酸、キシリルホスホン酸、ビフェニルホスホン酸、ナフチルホスホン酸、アントリルホスホン酸、2−カルボキシフェニルホスホン酸、3−カルボキシフェニルホスホン酸、4−カルボキシフェニルホスホン酸、2,3−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,4−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,5−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,6−ジカルボキシフェニルホスホン酸、3,4−ジカルボキシフェニルホスホン酸、3,5−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,3,4−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,3,5−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,3,6−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,4,5−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,4,6−トリカルボキシフェニルホスホン酸等を挙げることができるが、中でもモノアリールホスホン酸が好ましい。
【0045】
また、qが1の場合は例えば、モノメチルホスフェート、モノエチルホスフェート、モノトリメチルホスフェート、モノ−n−ブチルホスフェート、モノヘキシルホスフェート、モノヘプチルホスフェート、モノノニルホスフェート、モノデシルホスフェート、モノドデシルホスフェート、モノフェニルホスフェート、モノベンジルホスフェート、モノ(4−ドデシル)フェニルホスフェート、モノ(4−メチルフェニル)ホスフェート、モノ(4−エチルフェニル)ホスフェート、モノ(4−プロピルフェニル)ホスフェート、モノ(4−ドデシルフェニル)ホスフェート、モノトリルホスフェート、モノキシリルホスフェート、モノビフェニルホスフェート、モノナフチルホスフェート、モノアントリルホスフェート等が挙げられる。
【0046】
上記式(I)で表されるチタン化合物は予め下記式(III)の多価カルボン酸及び/又はその無水物と反応させて使用する方法も好ましく用いられる。その場合、チタン化合物と多価カルボン酸及び/又はその無水物の反応モル比は(2:1)〜(2:5)の範囲が好ましく、特に好ましい範囲は(1:1)〜(1:2)である。
【0047】
【化8】
【0048】
本発明の常圧染色用ポリエステルに含まれるポリマーに可溶性のチタン元素量は全ジカルボン酸成分に対し5〜70ppmの範囲にあるようにする必要がある。ここでポリマーに可溶性のチタン元素量とは酸化チタンのような粒子を除く。
該チタン元素量が5ppm未満の場合は重合反応が遅くなり、70ppmを超える場合は得られるポリエステルの色調が、不良になり、かつその耐熱性が低下することがあり好ましくない。チタン元素量は7〜60ppmの範囲が好ましく、10〜50ppmの範囲が更に好ましい。
【0049】
本発明の常圧可染用ポリエステルの固有粘度については特に限定はないが、オルトクロロフェノール溶媒中35℃で測定した固有粘度が、0.40〜0.80の範囲のものが好ましく使用される。
【0050】
本発明の常圧可染用ポリエステル中には、必要に応じて少量の添加剤、例えば滑剤、顔料、染料、酸化防止剤、固相重合促進剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、遮光剤、艶消剤等を含んでいてもよい。
【0051】
本発明の常圧染色用可染性ポリエステル繊維を製造するにあたっては特に限定はなく、従来公知の溶融紡糸方法が用いて製造することができる。例えばポリエステルを270℃〜300℃の範囲で溶融紡糸して製造することが好ましく、溶融紡糸の速度は400〜5000m/分で紡糸することが好ましい。紡糸速度がこの範囲にあると、得られる繊維の強度も十分なものであると共に、安定して巻き取りを行うこともできる。また延伸はポリエステル繊維を巻き取ってから、あるいは一旦巻き取ることなく連続的に延伸処理することによって、延伸糸を得ることができる。更に本発明のポリエステル繊維は風合を高める為に、アルカリ減量処理も好ましく実施される。
【0052】
本発明のポリエステル繊維を製造する際において、紡糸時に使用する口金の形状について制限は無く、円形、異形、中実、中空等のいずれも採用することができる。
【0053】
本発明におけるポリエステル繊維は、従来使用される分散染料で染色することができ、鮮明かつ色調に優れたポリエステル繊維を得ることができる。
【0054】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれにより何ら限定を受けるものでは無い。なお実施例中の部は重量部を示す。また各種値は下記の方法に従って求めた。
(1)固有粘度:
オルトクロルフェノールを溶媒として35℃で測定し、その相対粘度から常法により求めた。
(2)色調(L値及びb値):
ポリマーチップを160℃、1時間乾燥結晶化処理後、日本電色工業株式会社製測色色差計Z−1001DPを用いて測定した。L値は明度を示し、その数値が大きいほど明度が高いことを示し、b値はその値が大きいほど黄色味の度合いが大きいことを示す。
(3)ポリエステル中のチタン、リン、アンチモン含有量:
ポリエステル中の残留触媒金属濃度は、粒状のポリマーサンプルをアルミ板上で加熱溶融した後、圧縮プレス機で平坦面を有する試験成形体を作成し、蛍光X線装置(理学電機工業株式会社製3270E型)を用いて求めた。
(4)ポリエステル中の共重合成分量:
サンプルを重水素化トリフルオロ酢酸/重水素化クロロホルム=50/50重量比の混合溶媒に溶解後、日本電子株式会社製JEOL A−600 超伝導FT−NMRを用いて核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR)を測定し、そのスペクトルパターンから常法に従って共重合成分量を定量した。
(5)ガラス転移温度:
示差走査熱量計(DSC)としてTA Instruments社製 DSC2010 Differential Scanning Calorimeterを用いて、10℃/分の昇温速度で260℃まで昇温したサンプルを0℃に冷却した試験管中で急冷し非晶状態にしたサンプルを更に10℃/分の昇温速度で昇温し、JIS K7121に準じて中間点ガラス転移温度を測定した。
(6)パック圧上昇評価:
紡糸口金直上に2400メッシュの径25mmの金網を装着した紡糸機に285℃でポリエステルチップを30g/分で7日間連続的に供給した前後のパック圧の上昇度合いを、1日当たりのパック圧昇圧に換算して求めた。
(7)紡糸口金に発生する付着物の層:
ポリエステルをチップとなし、これを285℃で溶融し、孔径0.15mmφ、孔数12個の紡糸口金から吐出し、600m/分で2日間紡糸し、口金の吐出口外縁に発生する付着物の層の高さを測定した。この付着物層の高さが大きいほど吐出されたポリエステルメルトのフィラメント状流にベンディングが発生しやすく、このポリエステルの成形性は低くなる。すなわち、紡糸口金に発生する付着物層の高さは、当該ポリエステルの成形性の指標である。
(8)常圧染色性評価:
繊維を布帛に形成した試験片を市販の分散染料Sumikaron NavyBlue S−2GL(住友化学工業株式会社製)の4%owf溶液中、95℃で1時間、浴比1:50で染色を行い、次式により染着率を求めた。染着率は次式より求めた。
【0055】
【数4】
染着率=(OD0−OD1)÷OD0 × 100 (%)
式中、OD0は染色前染液の576nmの吸光度を、OD1は染色後染液の576nmの吸光度をそれぞれ表す。本発明では、染着率95%以上のものを常圧可染性良好と判断する。
【0056】
[参考例1]
エチレングリコール131重量部中にフェニルホスホン酸3.6重量部を120℃に10分間加熱して溶解した。このエチレングリコール溶液134.5重量部に、更にエチレングリコール40重量部を加えた後、これにチタンテトラブトキシド3.8重量部を溶解させた。得られた反応系を120℃で60分間撹拌し、チタン化合物とフェニルホスホン酸とを反応させ、反応生成物を含む触媒の白色スラリーを得た。この触媒スラリーのチタン含量は0.3重量%であった。
【0057】
[参考例2]
エチレングリコール131重量部中にモノ−n−ブチルホスフェート3.5重量部を120℃に10分間加熱して溶解した。このエチレングリコール溶液134.5重量部に、更にエチレングリコール40重量部を加えた後、これにチタンテトラブトキシド3.8重量部を溶解させた。得られた反応系を120℃で60分間撹拌し、チタン化合物とモノ−n−ブチルホスフェートとを反応させ、反応生成物を含む触媒の白色スラリーを得た。この触媒スラリーのチタン含量は0.3重量%であった。
【0058】
[参考例3]
エチレングリコール2.5重量部に無水トリメリット酸0.8重量部を溶解し、この溶液にチタンテトラブトキシド0.7重量部(後記ポリエステルの製造に用いられる無水トリメリット酸のモル量を基準として0.5モル%)を滴下し、この反応系を空気中、常圧下、80℃に60分間保持してチタンテトラブトキシドと無水トリメリット酸とを反応させ、反応生成物を熟成させた。その後反応系を常温に冷却し、これにアセトン15重量部を加え、析出物をNo.5ろ紙で濾過し、採取し、これを100℃の温度で2時間乾燥した。得られた反応生成物のチタン含有量は11.2重量%であった。
【0059】
次に、エチレングリコール131重量部中にモノ−n−ブチルホスフェート3.5重量部を120℃に10分間加熱して溶解した。このエチレングリコール溶液134.5重量部に、更にエチレングリコール40重量部を加えた後、これに上記チタン化合物5.0重量部を溶解させた。得られた反応系を120℃で60分間撹拌し、チタン化合物とモノ−n−ブチルホスフェートとを反応させ、反応生成物を含む触媒の白色スラリーを得た。この触媒スラリーのチタン含量は0.3重量%であった。
【0060】
[実施例1]
テレフタル酸100部、セバシン酸9部、エチレングリコール50部を240℃においてエステル化反応させ、次いで得られた反応生成物を精留塔付き重縮合用フラスコへ入れ、重縮合触媒として参考例1で製造したスラリー0.63重量部及び整色剤としてテラゾールブルー0.000055重量部を加え、得られた反応生成物を温度285℃、30Paの高真空下で重縮合反応を行い、常法に従いチップ化した。得られたポリマーの固有粘度は0.700であった。チップを160℃×4時間乾燥した後、285℃で溶融紡糸し、延伸倍率4.0倍になるように延伸して83.25dtex/36filのマルチフィラメントを得た。
更に得られたマルチフィラメントは常法により筒編みにした後、常圧染色性評価を実施した。結果を表1に示す。
【0061】
[実施例2〜3、比較例1〜2]
実施例1において、触媒を表1記載のとおりに変更したこと以外は同様の操作を行った。結果を表1に示す。
【0062】
[実施例4〜8、比較例3〜4]
実施例1において、共重合成分を表1記載のとおりに変更したこと以外は同様の操作を行った。結果を表1に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
【発明の効果】
本発明によれば、チタン化合物を触媒として使用した際の従来技術の欠点であった色相の悪化を解消し、口金異物の少ない安定した紡糸を可能とし、ポリエステルが持つ、優れた特性を保持しながら、色相が優れた常圧染色用ポリエステル繊維を提供することができる。
Claims (12)
- ポリエステルを構成する成分のうち少なくとも80モル%がエチレンテレフタレートであって、炭素数2〜20の飽和脂肪族鎖及び/又は飽和脂環族鎖を有するジカルボン酸成分(A)と、炭素数3〜15の飽和脂肪族鎖及び/又は飽和脂環族鎖を有するグリコール成分(B)と、炭素数20〜40の飽和脂肪族鎖及び/又は飽和脂環族鎖を有するジカルボン酸成分(C)と、分子量200〜6000のポリオキシアルキレングリコール成分(D)の、各々の共重合量が下記数式(1)〜(5)を同時に満足し、かつ、ポリエステル重合時の触媒として、下記一般式(I)で表されるチタン化合物と下記一般式(II)で表されるリン化合物をチタン元素のモル数に対するリン元素のモル数(P/Ti)が1〜4となる範囲の組成でエチレングリコール中で加熱反応せしめたチタン/リン反応物を用い、更に、該ポリエステルに含まれるポリマーに可溶性のチタン元素量が全ジカルボン酸成分を基準として5〜70ppmの範囲にある、ガラス転移温度が25℃〜65の範囲にある、常圧染色用ポリエステル。
- 前記式(II)中のqの数値が0であるリン化合物を用いた請求項1記載のポリエステル。
- 前記式(II)のリン化合物がモノアリールホスホン酸である請求項1記載のポリエステル。
- 前記式(II)中のqの数値が1であるリン化合物を用いた請求項1記載のポリエステル。
- 前記式(II)のリン化合物がモノアルキルホスフェートである請求項1記載のポリエステル。
- 前記式(I)のチタン化合物が、チタンテトラアルコキシド類、オクタアルキルトリチタネート類、及びヘキサアルキルジチタネート類から選ばれる、請求項1記載のポリエステル。
- ジカルボン酸成分(A)がセバシン酸である、請求項1記載のポリエステル。
- グリコール成分(B)がヘキサメチレングリコールである、請求項1記載のポリエステル。
- ジカルボン酸成分(C)がダイマー酸である、請求項1記載のポリエステル。
- ポリオキシアルキレングリコール成分(D)が、ポリエチレングリコール、及びポリテトラメチレングリコールから選ばれる、請求項1記載のポリエステル。
- 請求項1〜10のいずれか記載のポリエステルを溶融紡糸して得られる常圧染色用ポリエステル繊維。
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