JP2004250571A - 深色染色用ポリエステル組成物及び繊維 - Google Patents

深色染色用ポリエステル組成物及び繊維 Download PDF

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亮二 塚本
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Abstract

【課題】色調に優れ、長時間連続的に紡糸しても、パック圧上昇および口金付着物の発生量が非常に少なく、成形性に優れ、高い生産性を具備した色相の改善された深色染色用ポリエステル組成物および繊維を提供すること。
【解決手段】重合時の触媒として、特定のチタン/リン未反応混合物を用いて得た、カルボキシル末端基含有量が25〜45当量/トンであるポリエステルであって、特定の粒度を有する不活性粒子を、ポリエステル組成物の全重量を基準として0.1〜5重量%含有する深色染色用ポリエステル組成物。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は深色染色用ポリエステル組成物及びその繊維に関し、更に詳しくは、特定のチタン化合物及びリン化合物を用いて重合した、色調に優れ、Sb金属を含まない深色染色用ポリエステル組成物及び繊維に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート及びポリテトラメチレンテレフタレートは、その機械的、物理的、化学的性能が優れているため、繊維、フィルム、その他の成形物に広く利用されている。しかしながらポリエステルは衣料用繊維としては染色性が良好とは言えず、色の深みに劣るものであった。
【0003】
従来、このような欠点を補うため、ポリエステル中に微粒子を含有させたり、重合反応中に該ポリエステルに不溶な粒子種を析出させたりして得られたポリエステル組成物を、製糸化した後にアルカリ減量等の方法で繊維表面に凹凸を形成させ、深色化されたポリエステル繊維を得る方法が知られている。(例えば特許文献1、2参照。)
このような深色染色用ポリエステルは、通常テレフタル酸とエチレングリコールとを直接エステル化反応させるか、テレフタル酸ジメチルのようなテレフタル酸の低級アルキルエステルとエチレングリコールとをエステル交換反応させるか又はテレフタル酸とエチレンオキサイドとを反応させ、テレフタル酸のエチレングリコールエステル及び/又はその低重合体を生成させ、次いでこの反応生成物を重合触媒の存在下で減圧加熱して所定の重合度になるまで重縮合反応させて製造されている。
【0004】
これらの重縮合反応段階で使用する触媒の種類によって、反応速度および得られるポリエステルの品質が大きく左右されることはよく知られている。例えばアンチモン化合物は、優れた重縮合触媒性能を有し、かつ、色調の良好なポリエステルが得られるなどの理由から最も広く使用されている。
【0005】
しかしながら、アンチモン化合物を重縮合触媒として使用した場合、ポリエステルを長時間にわたって連続的に溶融紡糸すると、還元されたアンチモン金属が異物となって紡糸濾過部の圧力(以下、単にパック圧と称することがある。)上昇が発生したり、口金孔周辺に異物(以下、単に口金異物と称することがある。)が付着堆積し、溶融ポリマー流れの曲がり現象(ベンディング)が発生し、これが原因となって紡糸、延伸工程において毛羽及び/又は断糸などを発生するという成形性の問題があり、生産性を著しく低下させる原因となっていた。
【0006】
該アンチモン化合物以外のポリエステル重縮合触媒として、チタンテトラブトキシドのようなチタン化合物を用いることも提案されているが、このようなチタン化合物を使用した場合、上記のような、口金異物堆積に起因する成形性の問題は解決できるものの、得られたポリエステル自身が黄色く着色されており、また、溶融熱安定性も不良であるという新たな問題が発生する。
【0007】
上記着色問題を解決するために、コバルト化合物をポリエステルに添加して黄味を抑えることが一般的に行われている。確かにコバルト化合物を添加することによってポリエステルの色調(b値)は改善することができるが、コバルト化合物を添加することによってポリエステルの溶融熱安定性が低下し、ポリマーの分解も起こりやすくなるという問題がある。
【0008】
また、他のチタン化合物として、水酸化チタンをポリエステル製造用触媒として用いること(例えば特許文献3参照。)、またα−チタン酸をポリエステル製造用触媒として用いること(例えば特許文献4参照。)が開示されている。しかしながら、前者の方法では水酸化チタンの粉末化が容易でなく、一方、後者の方法ではα−チタン酸が変質し易いため、その保存、取り扱いが容易でなく、したがっていずれも工業的に採用するには適当ではなく、更に、良好な色調(b値)のポリマーを得ることも困難である。
【0009】
また、チタン化合物とトリメリット酸とを反応させて得られた生成物をポリエステルの製造用触媒として用いること(例えば、特許文献5参照。)、またチタン化合物と亜リン酸エステルとを反応させて得られた生成物をポリエステル製造用触媒として使用すること(例えば、特許文献6参照。)が開示されている。
【0010】
確かに、この方法によれば、ポリエステルの溶融熱安定性はある程度向上しているものの、得られるポリマーの色調が十分なものではなく、したがってポリマー色調のさらなる改善が望まれている。
【0011】
また、チタン化合物と特定のホスホン酸化合物を反応させた触媒を用いることも提案されポリマー色調は改良されたものの、ポリエステルの染色性の改良には至っていなかった(例えば、特許文献7参照。)。
【0012】
口金異物を抑制するには、前記のように触媒としてアンチモンを使用しないことが有効な手段であるが、アンチモンを使用しない方法では、糸のカラーが低下してしまうため、従来は使用に供することができなかった。
【0013】
したがって触媒としてアンチモンを使用せず、かつ色相に優れたポリエステル繊維が求められていた。
【0014】
【特許文献1】
特公昭62−28229号公報
【0015】
【特許文献2】
特開昭57−139118号公報
【0016】
【特許文献3】
特公昭48−2229号公報
【0017】
【特許文献4】
特公昭47−26597号公報
【0018】
【特許文献5】
特公昭59−46258号公報
【0019】
【特許文献6】
特開昭58−38722号公報
【0020】
【特許文献7】
国際公開第01/00706号パンフレット
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記従来技術が有していた問題点を解消し、色調に優れ、長時間連続的に紡糸しても、パック圧上昇および口金付着物の発生量が非常に少なく、成形性に優れ、高い生産性を具備した、色相の改善された深色染色用ポリエステルおよび繊維を提供することにある。
【0022】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記従来技術が有していた問題を解決すべく前述の従来技術に鑑み鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。
【0023】
すなわち、本発明の目的は、
ポリエステルを構成する成分のうち少なくとも80モル%がエチレンテレフタレートであり、カルボシキル末端が25〜45当量/トンの範囲であるポリエステルであって、平均粒径が0.01〜0.1μmの範囲であって、かつ0.1μmを超える粒子の頻度分率が20%以下である不活性粒子を、ポリエステル組成物の全重量を基準として0.1〜5重量%含有し、かつ、ポリエステル重合時の触媒として、下記一般式(I)で表されるチタン化合物、及び下記一般式(I)で表されるチタン化合物と下記一般式(II)で表される芳香族多価カルボン酸又はその無水物とを反応させた生成物からなる群から選ばれた少なくとも一種を含むチタン化合物成分と、下記一般式(III)により表されるリン化合物との未反応混合物から実質的になる触媒系を下記数式(1)及び(2)を同時に満足するように用いて得られた、該ポリエステルに含まれるポリマーに可溶性のチタン元素量が全ジカルボン酸成分を基準として5〜70ppmの範囲にある、深色染色用ポリエステル組成物によって達成することができる。
【0024】
【化4】
Figure 2004250571
【0025】
【化5】
Figure 2004250571
【0026】
【化6】
Figure 2004250571
【0027】
【数2】
Figure 2004250571
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の深色染色用ポリエステル組成物を構成するポリエステルは、ポリエステルを構成する繰り返し単位のうち少なくとも80モル%以上がエチレンテレフタレートである必要がある。該繰り返し単位が80モル%未満の場合、最終的に得られるポリエステル繊維の強度が低下する為好ましくない。
【0029】
本発明におけるポリエスエル組成物を構成するポリエステルは、カルボキシル末端基含有量が25〜45当量/トンの範囲にある必要がある。25当量/トン以下では耐熱性に劣り、ポリマーを製糸化するときに生成するオリゴマー類が多くなり、これが昇華物として口金異物となるため、本発明の目的を達成できない。一方、45当量/トンを超えると紡糸時、溶融した際に、含有する粒子が凝集粒子を形成しやすく、パック圧上昇や断糸を起こしやすくなるので好ましくない。
【0030】
本発明の深色染色用ポリエステル組成物は、平均粒径が0.01〜0.1μmの範囲にあり、かつ0.1μmを超える粒子の頻度分率が20%以下である不活性粒子を、ポリエステル組成物の全重量を基準として0.1〜5重量%含有している必要がある。
【0031】
ここで、不活性粒子としては、シリカゾル、変性シリカゾル、微粒子状シリカ、アルミナゾル、粒子状アルミナ、極微粒子酸化チタン、炭酸カルシウム等を挙げることができ、特にシリカゾル、変性シリカゾル、微粒子状シリカゾルが好ましく使用される。
【0032】
本発明における不活性粒子は平均粒径が0.01〜0.1μmの範囲にある必要がある。0.1μmを超えるとゾルまたはポリエステル反応原液中で沈降しやすく、ポリエステル組成物を安定に供給することができない。一方、0.01μm未満では、粒子の比表面積が大きすぎ、ポリエステル反応中に容易に凝集粒子を形成し、製糸時の断糸が増大する。
【0033】
本発明における不活性粒子は、平均粒径が0.1μmを超える粒子が20重量%以下である必要がある。0.1μmを超える粒子が20重量%を超えると、が得られたポリエステル組成物を製糸化後、アルカリ減量しても、繊維表面に形成される微細孔が大きくなりすぎて、染色時の深色効果が得られない。
【0034】
本発明における不活性粒子含有量の合計は0.1〜5重量%の範囲にある必要がある。該含有量が0.1重量%未満の場合、最終的に得られる繊維の深色染色性が不十分となり、また、5重量%を超える場合は得られるポリエステル繊維の強度や耐熱性、耐光性が低下する為好ましくない。該含有量は0.15〜1重量%の範囲が好ましく、0.2〜0.8重量%の範囲が更に好ましい。
【0035】
本発明の深色染色用ポリエステル組成物はその特性を損なわない範囲でポリエチレンテレフタレート以外の成分を共重合または含有していても良く、例えばナフタレンジカルボン酸、オルトフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ベンゾフェノンジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸、5−スルホキシイソフタル酸金属塩、5−スルホキシイソフタル酸ホスホニウム塩等の芳香族ジカルボン酸成分、o−キシリレングリコール、m−キシリレングリコール、p−キシリレングリコール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシエトキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(2−ヒドロキシエトキシエトキシ)ビフェニル、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシエトキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシエトキシ)ベンゼン、1,2−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,2−ビス(2−ヒドロキシエトキシエトキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ジフェニルスルホン、4,4’−ビス(2−ヒドロキシエトキシエトキシ)ジフェニルスルホン等の芳香族グリコール成分、ヒドロキノン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、レゾルシン、カテコール、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシビフェニル、ジヒドロキシジフェニルスルホン等のジフェノール類等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても2種以上を併用してもどちらでも良い。
【0036】
本発明の深色染色用ポリエステル組成物を構成するポリエステルは、下記一般式(I)で表されるチタン化合物、及び下記一般式(I)で表されるチタン化合物と下記一般式(II)で表される芳香族多価カルボン酸又はその無水物とを反応させた生成物からなる群から選ばれた少なくとも一種を含むチタン化合物成分と、下記一般式(III)により表されるリン化合物との未反応混合物から実質的になる触媒系を下記数式(1)及び(2)を同時に満足するように用いて重合されている必要がある。
【0037】
【化7】
Figure 2004250571
【0038】
【化8】
Figure 2004250571
【0039】
【化9】
Figure 2004250571
【0040】
【数3】
Figure 2004250571
【0041】
本発明の製造方法において、重合反応に触媒として用いられるチタン化合物成分は、触媒に起因する異物を低減する観点から、ポリマー中に可溶なチタン化合物を使用することが必要であり、該チタン化合物成分としては、下記一般式(I)で表される化合物、若しくは一般式(II)で表される化合物と下記一般式(II)で表される芳香族多価カルボン酸又はその無水物とを反応させた生成物である必要がある。
【0042】
【化10】
Figure 2004250571
【0043】
【化11】
Figure 2004250571
【0044】
ここで、一般式(I)で表されるチタン化合物としては、具体的にはテトライソプロポキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラフェノキシチタン、オクタアルキルトリチタネート、及びヘキサアルキルジチタネートなどが好ましく用いられる。
【0045】
また、本発明の製造方法において、該チタン化合物と反応させる一般式(II)で表される芳香族多価カルボン酸又はその無水物としては、フタル酸、トリメリット酸、ヘミメリット酸、ピロメリット酸及びこれらの無水物が好ましく用いられる。
【0046】
上記チタン化合物と芳香族多価カルボン酸又はその無水物とを反応させる場合には、溶媒に芳香族多価カルボン酸又はその無水物の一部または全部を溶解し、この混合液にチタン化合物を滴下し、0〜200℃の温度で少なくとも30分間、好ましくは30〜150℃の温度で40〜90分間加熱することによって行われる。この際の反応圧力については特に制限はなく、常圧で十分である。なお、芳香族多価カルボン酸またはその無水物を溶解させる溶媒としては、エタノール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ベンゼン及びキシレン等から所望に応じていずれを用いることもできる。
【0047】
ここで、チタン化合物と芳香族多価カルボン酸またはその無水物との反応モル比には特に限定はないが、チタン化合物の割合が高すぎると、得られるポリエステルの色調が悪化したり、軟化点が低下したりすることがあり、逆にチタン化合物の割合が低すぎると重合反応が進みにくくなることがある。このため、チタン化合物と芳香族多価カルボン酸又はその無水物との反応モル比は、2/1〜2/5の範囲内とすることが好ましい。
【0048】
本発明の製造方法に重合触媒として用いる触媒系は、上記のチタン化合物成分は、下記一般式(III)により表されるリン化合物との未反応混合物から実質的になるものである。
【0049】
【化12】
Figure 2004250571
【0050】
上記一般式(III)のリン化合物(ホスホネート化合物)としては、カルボメトキシメタンホスホン酸、カルボエトキシメタンホスホン酸、カルボプロポキシメタンホスホン酸、カルボプトキシメタンホスホン酸、カルボメトキシ−ホスホノ−フェニル酢酸、カルボエトキシ−ホスホノ−フェニル酢酸、カルボプロトキシ−ホスホノ−フェニル酢酸およびカルボブトキシ−ホスホノ−フェニル酢酸のジメチルエステル類、ジエチルエステル類、ジプロピルエステル類およびジブチルエステル類から選ばれることが好ましい。
【0051】
上記のホスホネート化合物は、通常安定剤として使用されるリン化合物に比較して、チタン化合物との反応が比較的緩やかに進行するので、反応中における、チタン化合物の触媒活性持続時間が長く、結果として該チタン化合物のポリエステルへの添加量を少なくすることができる。また、一般式(III)のリン化合物を含む触媒系に多量に安定剤を添加しても、得られるポリエステルの熱安定性を低下させることがなく、その色調を不良化することが無い。
【0052】
また、上記の触媒系は下記数式(1)及び(2)を同時に満足するものである必要がある。
【0053】
【数4】
Figure 2004250571
【0054】
ここで、(P/Ti)が0.65未満の場合、ポリエステルの色相が黄味を帯びたものであり、好ましくない。また、(P/Ti)が5を越えるとポリエステルの重合反応性が大幅に低下し、目的とするポリエステルを得ることが困難となる。この(P/Ti)の適正範囲は通常の金属触媒系よりも狭いことが特徴的であるが、適正範囲にある場合、本発明のような従来にない効果を得ることができる。
【0055】
一方、(Ti+P)が10に満たない場合は、製糸プロセスにおける生産性が大きく低下し、満足な性能が得られなくなる。また、(Ti+P)が200を越える場合には、触媒に起因する異物が少量ではあるが発生し好ましくない。
【0056】
上記式(1)、(2)の範囲は好ましくは(1)式中の(P/Ti)は1.0〜4.5の範囲、(2)式中の(Ti+P)は12〜150の範囲であり、更に好ましくは、(1)式中の(P/Ti)は2.0〜4.0の範囲、(2)式中の(Ti+P)は15〜100の範囲である。
【0057】
本発明の製造方法において、前記触媒系を用いて行われる重合反応は、230〜320℃の温度において、常圧下、又は減圧下、好ましくは0.05Pa〜0.2MPaにおいて、これらの条件を組み合わせて、15〜300分間重合反応させることが好ましい。
【0058】
本発明の深色染色用ポリエステル組成物を構成するポリエステルに含まれるポリマーに可溶性のチタン元素量は全ジカルボン酸成分に対し5〜70ppmの範囲にあるようにする必要がある。ここで、「ポリマーに可溶性のチタン元素量」とは酸化チタンのような粒子を除いたチタン元素の量を意味し、該チタン元素量が5ppm未満の場合は重合反応が遅くなり、70ppmを超える場合は得られるポリエステルの色調が、不良になり、かつその耐熱性が低下することがあり好ましくない。チタン元素量は7〜60ppmの範囲が好ましく、10〜50ppmの範囲が更に好ましい。
【0059】
本発明の深色染色用ポリエステル組成物の固有粘度については特に限定はないが、オルトクロロフェノール溶媒中35℃で測定した固有粘度が、0.40〜0.80の範囲のものが好ましく使用される。
【0060】
本発明の深色染色用ポリエステル組成物中には、必要に応じて少量の添加剤、例えば滑剤、顔料、染料、酸化防止剤、固相重合促進剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、遮光剤、艶消剤等を含んでいてもよい。
【0061】
上述した本発明のポリエステルを製造するにあたっては、重合触媒として前記の触媒系を用いる限り、特に限定はなく、テレフタル酸をエチレングリコールと直接エステル化させた後、重合させる方法、テレフタル酸のエステル形成性誘導体をエチレングリコールとエステル交換反応させた後、重合させる方法のいずれを採用しても良いが、芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体を原料とし、エステル交換反応を経由する製造方法とすることが好ましい。該方法は、テレフタル酸を原料とする製造方法に比較し、重合反応中に安定剤として添加したリン化合物の飛散が少ないという利点がある。
【0062】
また、テレフタル酸ジメチルを出発原料とする製造方法では、チタン化合物成分の一部及び/又は全量をエステル交換反応開始前に添加し、エステル交換反応触媒と重合反応触媒との二つの触媒として兼用させる方法が、チタン化合物成分の添加量を低減できることから好ましく、この場合、テレフタル酸ジメチルは使用するテレフタル酸成分の90モル%以上とすることが好ましい。
【0063】
なお、該エステル交換反応を行う場合には通常は常圧下で実施されるが、0.05〜0.20MPaの加圧下に実施すると、チタン化合物成分の触媒作用による反応が更に促進され、かつ副生物のジプロピレングリコールが大量に発生することもないので、熱安定性などの特性が更に良好なものとなる。
【0064】
本発明の深色染色用ポリエステル組成物より繊維を製造するにあたっては特に限定はなく、従来公知の溶融紡糸方法が用いて製造することができる。例えばポリエステルを270℃〜300℃の範囲で溶融紡糸して製造することが好ましく、溶融紡糸の速度は400〜5000m/分で紡糸することが好ましい。紡糸速度がこの範囲にあると、得られる繊維の強度も十分なものであると共に、安定して巻き取りを行うこともできる。また延伸はポリエステル繊維を巻き取ってから、あるいは一旦巻き取ることなく連続的に延伸処理することによって、延伸糸を得ることができる。更に本発明のポリエステル繊維は、アルカリ減量処理が好ましく実施され、繊維表面に微細孔を形成させることにより、風合を高めることができる。
【0065】
本発明におけるポリエステル繊維をアルカリ減量すると、従来使用される分散染料で染色することができ、繊維表面に形成される微細孔が繊維表面への入射光を乱反射させるため、鮮明かつ深みのある、色調に優れたポリエステル繊維を得ることができる。
【0066】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれにより何ら限定を受けるものでは無い。なお実施例中の部は重量部を示す。また各種値は下記の方法に従って求めた。
【0067】
(1)固有粘度:
オルトクロルフェノールを溶媒として35℃で測定し、その相対粘度から常法により求めた。
【0068】
(2)色調(L値及びb値):
ポリマーチップを160℃、1時間乾燥結晶化処理後、日本電色工業株式会社製測色色差計ZE−2000を用いて測定した。L値は明度を示し、その数値が大きいほど明度が高いことを示し、b値はその値が大きいほど黄色味の度合いが大きいことを示す。
【0069】
(3)ポリエステル中の可溶性チタン、リン、アンチモン含有量:
サンプルをオルトクロロフェノールに溶解した後、0.5規定塩酸で抽出し、株式会社日立製作所製Z−8100形原子吸光光度計を用いて定量した。リン、アンチモン濃度は、粒状のポリマーサンプルをアルミ板上で加熱溶融した後、圧縮プレス機で平坦面を有する試験成形体を作成し、理学電機工業株式会社製3270E型蛍光X線装置を用いて測定した。
【0070】
(4)ポリエステル中のカルボキシル末端基含有量測定:
サンプルをベンジルアルコールに溶解後、水酸化ナトリウムベンジルアルコール溶液により、フェノールレッドを指示薬として酸塩基滴定して求めた。
【0071】
(5)粒径測定:
微粒子の平均粒径及び粒度分布は、大塚電子株式会社製DLS−7000で測定し、粒度分布より0.1μmを超える頻度分率を算出した。
【0072】
(6)パック圧上昇評価:
紡糸口金直上に2400メッシュの径25mmの金網を装着した紡糸機に285℃でポリエステルチップを30g/分で7日間連続的に供給した前後のパック圧の上昇度合いを、1日当たりのパック圧昇圧に換算して求めた。
【0073】
(7)紡糸口金に発生する付着物の層:
ポリエステルをチップとなし、これを285℃で溶融し、孔径0.15mmφ、孔数12個の紡糸口金から吐出し、600m/分で2日間紡糸し、口金の吐出口外縁に発生する付着物の層の高さを測定した。この付着物層の高さが大きいほど吐出されたポリエステルメルトのフィラメント状流にベンディングが発生しやすく、このポリエステルの成形性は低くなる。すなわち、紡糸口金に発生する付着物層の高さは、当該ポリエステルの成形性の指標である。
【0074】
(8)深色染色性評価:
繊維を布帛に形成した試験片を、住友化学工業株式会社製分散染料Sumikaron Navy Blue S−2GLの2%owf溶液で浴比1:50に調製し、130℃で1時間染色した。染色布をグレタマクベス社製測色色差計CE−3000により測色し、クベルカ・ムンクの式により、深色度(K/S)を求めた。本発明においては深色度23以上を良好と判断した。
【0075】
【数5】
K/S = max[(1−R)/2R]
(式中、Kは吸収係数、Sは散乱係数である。Rは分光反射率を示し、このスペクトルを測定し、最大値を深色度とする。)
【0076】
[参考例]トリメリット酸チタンの合成方法:
無水トリメリット酸のエチレングリコール溶液(0.2%)にテトラ−n−ブチルチタネートを無水トリメリット酸に対して1/2モル添加し、空気中常圧下で80℃に保持して60分間反応させて、その後、常温に冷却し、10倍量のアセトンによって生成触媒を再結晶化させ、析出物をろ紙によって濾過し、100℃で2時間乾燥させて、目的とする化合物を得た。
【0077】
[実施例1]
テレフタル酸ジメチル100部とエチレングリコール70部との混合物に、テトラ−n−ブチルチタネート0.009部を加圧反応が可能なステンレス製容器に仕込み、0.07MPaに加圧し、140℃から昇温しながらエステル交換反応させた。内温が220℃へ到達した時点で、NYACOL Nanotechnologies社製「NYACOL DP5540」(平均粒径0.10μm)をエチレングリコールで10%に希釈し、日本ポール株式会社製「ポールフィルターHDC−II」(絶対目開0.6μm)へ導通し、流径0.1μmを超える粒子の頻度分布が12%となったことを確認したコロイダルシリカのエチレングリコールスラリーを、5部添加し、更に昇温を行った。
【0078】
内温が240℃に到達した時点で、テトラ−n−ブチルチタネート0.006部、トリエチルホスホノアセテート0.035部、テラゾールブルー0.000055重量部を添加し、エステル交換反応を終了させた。
【0079】
その後、反応生成物を重合容器に移し、290℃まで昇温し、27Pa以下の高真空で重縮合反応を行い、固有粘度0.64であるポリエステルを得た。チップを160℃×4hr乾操した後、285℃で紡糸し、延伸倍率4.0倍になるように延伸して83dtex/36filのマルチフィラメントを得た。これを常法により筒編みにした後、アルカリ減量処理(20重量%減)を行い、深色染色性評価を実施した。結果を表1に示す。
【0080】
[実施例2、比較例1]
実施例1において、触媒種及び添加量を表1記載のとおりに変更したこと以外は同様の操作を行った。結果を表1に示す。
【0081】
[実施例3、4]
実施例2において、微粒子投入量を、該含有量が表1記載のとおりになるように変更したこと以外は同様の操作を行った。結果を表1に示す。
【0082】
[実施例5]
実施例1において、微粒子を日産化学工業株式会社製「スノーテックス 50」(平均粒径0.025μm)とし、水で10%に希釈後、実施例1に用いたポールフィルターで濾過したコロイダルシリカ水スラリーに、表1に記載した通り変更したこと以外は同様の操作を行った。結果を表1に示す。
【0083】
[実施例6]
実施例1において、微粒子を日産化学工業株式会社製「スノーテックス XL」(平均粒径0.050μm)とし、水で10%に希釈後、実施例1に用いたポールフィルターで濾過したコロイダルシリカ水スラリーに、表1に記載した通り変更したこと以外は同様の操作を行った。結果を表1に示す。
【0084】
[比較例2]
実施例1において、粒子の濾過を行うことなく、表1記載の性状とした以外は同様の操作を行った。結果を表1に示す。
【0085】
【表1】
Figure 2004250571
【0086】
【発明の効果】
本発明によれば、チタン化合物を触媒として使用した際の従来技術の欠点であった色相の悪化を解消し、口金異物の少ない安定した紡糸を可能とし、ポリエステルが持つ、優れた特性を保持しながら、色相が優れた深色染色用ポリエステル組成物及び繊維を提供することができる。

Claims (3)

  1. ポリエステルを構成する成分のうち少なくとも80モル%がエチレンテレフタレートであり、カルボシキル末端が25〜45当量/トンの範囲であるポリエステルであって、平均粒径が0.01〜0.1μmの範囲であって、かつ0.1μmを超える粒子の頻度分率が20%以下である不活性粒子を、ポリエステル組成物の全重量を基準として0.1〜5重量%含有し、かつ、ポリエステル重合時の触媒として、下記一般式(I)で表されるチタン化合物、及び下記一般式(I)で表されるチタン化合物と下記一般式(II)で表される芳香族多価カルボン酸又はその無水物とを反応させた生成物からなる群から選ばれた少なくとも一種を含むチタン化合物成分と、下記一般式(III)により表されるリン化合物との未反応混合物から実質的になる触媒系を下記数式(1)及び(2)を同時に満足するように用いて得られた、該ポリエステルに含まれるポリマーに可溶性のチタン元素量が全ジカルボン酸成分を基準として5〜70ppmの範囲にある、深色染色用ポリエステル組成物。
    Figure 2004250571
    Figure 2004250571
    Figure 2004250571
    Figure 2004250571
  2. 不活性粒子がシリカゾル、変性シリカゾル、微粒子状シリカ、アルミナゾル、粒子状アルミナ、極微粒子酸化チタン、炭酸カルシウムからなる群から選ばれた少なくとも1種を含有する、請求項1記載の組成物。
  3. 請求項1記載のポリエステル組成物を溶融紡糸して得られる深色染色用ポリエステル繊維。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2006089511A (ja) * 2004-09-21 2006-04-06 Daiwa Can Co Ltd ポリエステル樹脂ならびにそれよりなる成形品
JP2008024747A (ja) * 2006-07-18 2008-02-07 Teijin Ltd ポリエステル組成物およびその製造方法
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CN112812286A (zh) * 2020-12-31 2021-05-18 浙江恒逸石化有限公司 一种以溶胶-凝胶法制备聚酯钛系催化剂的方法

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