JP4084179B2 - 配向結晶性の抑制されたポリエステル組成物、その製造方法及び繊維 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、紡糸口金を通して長時間連続的に紡糸しても口金付着物の発生量が非常に少なく、特に繊維、フィルム加工したときの配向結晶抑制性に優れるという優れた性能を有し、且つくすみがなく色相の改善された繊維を提供することのできる、ポリエステル組成物、その製造方法及び繊維に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート及びポリテトラメチレンテレフタレートは、その機械的、物理的、化学的性能が優れているため、繊維、フィルム、その他の成形物に広く利用されている。
【0003】
例えばポリエチレンテレフタレートは、通常テレフタル酸とエチレングリコールとを直接エステル化反応させるか、テレフタル酸ジメチルのようなテレフタル酸の低級アルキルエステルとエチレングリコールとをエステル交換反応させるか又はテレフタル酸とエチレンオキサイドとを反応さて、テレフタル酸のエチレングリコールエステル及び/又はその低重合体を生成させ、次いでこの反応生成物を重合触媒の存在下で減圧加熱して所定の重合度になるまで重縮合反応させることによって製造されている。
【0004】
これらの重縮合反応段階で使用する触媒の種類によって、反応速度および得られるポリエステルの品質が大きく左右されることはよく知られている。ポリエチレンテレフタレートの重縮合触媒としては、アンチモン化合物が、優れた重縮合触媒性能を有し、かつ、色調の良好なポリエステルが得られるなどの理由から最も広く使用されている。
【0005】
しかしながら、アンチモン化合物を重縮合触媒として使用した場合、ポリエステルを長時間にわたって連続的に溶融紡糸すると、口金孔周辺に異物(以下、単に口金異物と称することがある。)が付着堆積し、溶融ポリマー流れの曲がり現象(ベンディング)が発生し、これが原因となって紡糸、延伸工程において毛羽及び/又は断糸などを発生するという成形性の問題がある。また、近年、例えば紡糸工程においては、6000m/分を越える速度で生産されるようになってきており、製品歩留まり低下の要請および生産パフォーマンスのニーズがますます高まっている。従来のアンチモン系触媒では、高速成型したとき配向部分が結晶化し、内部応力むらが発生してしまい、品質、パフォーマンスの点で限界があった。成型性体質向上の指標として一層の配向結晶抑制が求められていた。
【0006】
該アンチモン化合物以外の重縮合触媒として、チタンテトラブトキシドのようなチタン化合物を用いることも提案されているが、このようなチタン化合物を使用した場合、上記のような、口金異物堆積に起因する成形性の問題は解決できるが、得られたポリエステル自身が黄色く着色されており、また、溶融熱安定性も不良であるという新たな問題が発生する。
【0007】
上記着色問題を解決するために、コバルト化合物をポリエステルに添加して黄味を抑えることが一般的に行われている。確かにコバルト化合物を添加することによってポリエステルの色調(b値)は改善することができるが、コバルト化合物を添加することによってポリエステルの溶融熱安定性が低下し、ポリマーの分解も起こりやすくなるという問題がある。
【0008】
また、他のチタン化合物として、水酸化チタンをポリエステル製造用触媒として用いること(例えば特許文献1参照。)、またα−チタン酸をポリエステル製造用触媒として用いること(例えば特許文献2参照。)が開示されている。しかしながら、前者の方法では水酸化チタンの粉末化が容易でなく、一方、後者の方法ではα−チタン酸が変質し易いため、その保存、取り扱いが容易でなく、したがっていずれも工業的に採用するには適当ではなく、更に、良好な色調(b値)のポリマーを得ることも困難である。
【0009】
また、チタン化合物とトリメリット酸とを反応させて得られた生成物をポリエステルの製造用触媒として用いること(例えば、特許文献3参照。)、またチタン化合物と亜リン酸エステルとを反応させて得られた生成物をポリエステル製造用触媒として使用すること(例えば、特許文献4参照。)が開示されている。
【0010】
確かに、これらの方法によれば、ポリエステルの溶融熱安定性はある程度向上しているものの、得られるポリマーの色調が十分なものではなく、したがってポリマー色調のさらなる改善が望まれている。
【0011】
また、口金異物を抑制するには、前記のように触媒としてアンチモンを使用しないことが有効な手段であるが、アンチモンを使用しない方法では、糸の色相が悪化してしまうため、従来は使用に供することができなかった。
【0012】
したがって触媒としてアンチモンを使用せず、配向結晶抑制性に優れ、かつ良好な色相を呈するポリエステル繊維が求められていた。
【0013】
【特許文献1】
特公昭48−2229号公報
【0014】
【特許文献2】
特公昭47−26597号公報
【0015】
【特許文献3】
特公昭59−46258号公報
【0016】
【特許文献4】
特開昭58−38722号公報
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の第1の目的は、紡糸口金を通して長時間連続的に紡糸しても口金付着物の発生量が非常に少なく、特に繊維、フィルム加工したときの配向結晶抑制性に優れるという優れた性能を有し、かつくすみがなく色相の改善されたポリエステル組成物を提供することである。本発明の第2の目的はポリエステル組成物の製造方法を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記従来技術に鑑み鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0019】
すなわち本発明の第1の目的は、
ポリエステルとポリエステルに可溶なアルカリ金属塩からなるポリエステル組成物であり、ポリエステルがポリエステル製造時の重縮合反応触媒として、下記一般式(I)で表されるチタン化合物、若しくは下記一般式(I)で表されるチタン化合物と下記一般式(II)で表される芳香族多価カルボン酸又はその無水物とを反応させた生成物と、下記一般式(III)で表されるリン化合物とを、チタン元素のモル数に対するリン元素のモル数(P/Ti)が1〜4となる範囲でグリコール中で加熱することにより得られた析出物を、ポリエステルに含まれるチタン元素量が、該ポリエステルを構成する全ジカルボン酸成分を基準として2〜40ミリモル%の範囲となるように用いて得た、全繰り返し単位を基準として80モル%以上をエチレンテレフタレート単位が占めるポリエステルであり、且つポリエステルに可溶なアルカリ金属塩を、該ポリエステルを構成する全ジカルボン酸成分を基準として2〜40ミリモル%含有する、配向結晶の抑制されたポリエステル組成物によって達成される。
【0020】
【化7】
【0021】
【化8】
【0022】
【化9】
【0023】
更に、本発明の第2の目的は、
ポリエステルとポリエステルに可溶なアルカリ金属塩からなるポリエステル組成物の製造方法であって、ポリエステル製造時の重縮合反応の触媒として、下記一般式(I)で表されるチタン化合物、若しくは下記一般式(I)で表されるチタン化合物と下記一般式(II)で表される芳香族多価カルボン酸又はその無水物とを反応させた生成物と、下記一般式(III)で表されるリン化合物とを、チタン元素のモル数に対するリン元素のモル数(P/Ti)が1〜4となる範囲でグリコール中で加熱することにより得られた析出物を、ポリエステルに含まれるチタン元素量が、該ポリエステルを構成する全ジカルボン酸成分を基準として2〜40ミリモル%の範囲となるように用いて得た、全繰り返し単位の少なくとも80モル%がエチレンテレフタレート単位であるポリエステルを、ベント付き溶融混練押出機へ供給しつつ、該押出機内に予め調製しておいたポリエステルに可溶なアルカリ金属塩を水および/または沸点が50〜240℃の範囲にある有機溶媒に溶解させた溶液を、該溶液中のアルカリ金属元素換算で該ポリエステルを構成する全ジカルボン酸成分を基準として2〜40ミリモル%の範囲となるように、該押出機内へ添加し該混練機内で溶融混練する、ポリエステルの製造方法によって達成される。
【0024】
【化10】
【0025】
【化11】
【0026】
【化12】
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明におけるポリエステルは、芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体とアルキレングリコールとを、触媒の存在下にエステル交換反応、次いで重縮合反応させて得られるポリエステルであって、全繰り返し単位の80モル%以上がエチレンテレフタレートであるポリエステルである。全繰り返し単位中のエチレンテレフタレート単位が80モル%未満であると、ポリエスエステルの特徴である高強度、高弾性力といった基本特性が失われるため好ましくない。
【0028】
本発明のポリエステル組成物は、ポリエステルを構成する全ジカルボン酸成分を基準
として、ポリエステルに可溶なアルカリ金属塩をポリエステルを構成する全ジカルボン酸成分を基準として2〜40ミリモル%の範囲で含有する必要がある。ここで、ポリエステルに可溶なアルカリ金属を例示すると、アルカリ金属元素の種類としてはLi、Na、Kを例示することができ、また塩根としてはポリエステルに使用されている公知の塩であれば特に問題はなく、酢酸根、リン酸根等が上げられるが、特に酢酸根が好ましく用いられる。アルカリ金属塩は一種を単独で用いても2種以上を併用してもどちらでもよい。該ポリエステルに可溶なアルカリ金属塩は、2ミリモル%未満では、配向結晶抑制効果を示さず、40ミリモル%を越えると、アルカリ性であることからポリエステルの分解、劣化を促進するようになるため好ましくない。
【0029】
本発明におけるポリエステルは、その特性を失わない範囲でエチレンテレフタレート単位を構成する成分以外の第3成分を共重合した、共重合ポリエチレンテレフタレートであってもよい。第3成分(共重合成分)は、ジカルボン酸成分またはグリコール成分のいずれでもよい。第3成分として好ましく用いられるジカルボン酸成分としては、2,6−ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、フタル酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、グリコール成分としては、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が例示でき、これらは一種を単独でまたは二種以上を併用して用いることができる。
【0030】
本発明のポリエステルは、下記一般式(I)で表されるチタン化合物と下記一般式(III)で表されるリン化合物とをチタン元素のモル数に対するリン元素のモル数(P/Ti)が1〜4となる範囲の組成で反応せしめたチタン/リン反応物を用いて重合されている必要がある。
【0031】
【化13】
【0032】
【化14】
【0033】
ここでチタン元素のモル数に対するリン元素のモル数(P/Ti)が1より小さい場合、得られるポリエステルの色調が、不良になり、かつその耐熱性が低下することがあり好ましくなく、4より大きい場合、ポリエステル生成反応に対する触媒活性が不十分になり好ましくない。チタン元素のモル数に対するリン元素のモル数(P/Ti)は1.2〜3.5の範囲が好ましく、1.5〜3.0の範囲が更に好ましい。
【0034】
また、チタン化合物成分(I)とリン化合物成分(III)との触媒調製は、エチレングリコール中で加熱反応されている必要があるが、反応方法としては例えばリン化合物(III)からなる成分とエチレングリコールとを混合して、リン化合物成分の一部又は全部を溶媒中に溶解し、この混合液にチタン化合物成分(I)を滴下し、反応系を0℃〜200℃の温度に30分間以上、好ましくは60〜150℃の温度に40〜90分間、加熱することによって行われる。この反応において、反応圧力については格別の制限はなく、通常常圧下で行われる。
【0035】
ここで上記式(I)で表されるチタン化合物としては例えば、チタンテトラブトキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトラエトキシドなどのチタンテトラアルコキシドや、オクタアルキルトリチタネート、ヘキサアルキルジチタネート、アルキルチタネート、酢酸チタン等を挙げることができる。
【0036】
また上記式(III)で表されるリン化合物としては式中のpが0の場合は、例えば、フェニルホスホン酸、メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、イソプロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、トリルホスホン酸、キシリルホスホン酸、ビフェニルホスホン酸、ナフチルホスホン酸、アントリルホスホン酸、2−カルボキシフェニルホスホン酸、3−カルボキシフェニルホスホン酸、4−カルボキシフェニルホスホン酸、2,3−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,4−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,5−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,6−ジカルボキシフェニルホスホン酸、3,4−ジカルボキシフェニルホスホン酸、3,5−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,3,4−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,3,5−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,3,6−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,4,5−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,4,6−トリカルボキシフェニルホスホン酸等を挙げることができるが、中でもモノアリールホスホン酸が好ましい。
【0037】
また、pが1の場合は例えば、モノメチルホスフェート、モノエチルホスフェート、モノトリメチルホスフェート、モノ−n−ブチルホスフェート、モノヘキシルホスフェート、モノヘプチルホスフェート、モノノニルホスフェート、モノデシルホスフェート、モノドデシルホスフェート、モノフェニルホスフェート、モノベンジルホスフェート、モノ(4−ドデシル)フェニルホスフェート、モノ(4−メチルフェニル)ホスフェート、モノ(4−エチルフェニル)ホスフェート、モノ(4−プロピルフェニル)ホスフェート、モノ(4−ドデシルフェニル)ホスフェート、モノトリルホスフェート、モノキシリルホスフェート、モノビフェニルホスフェート、モノナフチルホスフェート、モノアントリルホスフェート等が挙げられる。
【0038】
上記式(I)で表されるチタン化合物は予め下記式(II)の多価カルボン酸及び/又はその無水物と反応させて使用する方法も好ましく用いられる。その場合、チタン化合物と多価カルボン酸及び/又はその無水物の反応モル比は(2:1)〜(2:5)の範囲が好ましい。特に好ましい範囲は(1:1)〜(1:2)である。
【0039】
【化15】
【0040】
以下、本発明のポリエステル組成物の製造方法について説明する。
【0041】
本発明のポリエステルの製造方法において、チタン元素量は全ジカルボン酸成分に対し2〜40ミリモル%の範囲にあるように添加することが好ましい。チタン元素量が2ミリモル%未満の場合は重合反応が遅くなり、40ミリモル%を超える場合は得られるポリエステルの色調が、不良になり、かつその耐熱性が低下することがあり好ましくない。チタン元素量は3〜30ミリモル%の範囲が好ましく、4〜20ミリモル%の範囲が更に好ましい。
【0042】
本発明の製造方法においては、チタン化合物、リン化合物、アルカリ金属塩を重合反応系内に一度に添加すると、アルカリ金属塩が重合反応を抑制するため、生産性が十分でないものとなるが、ポリエステル重合時の触媒としてチタン化合物とリン化合物とをチタン元素のモル数に対するリン元素のモル数(P/Ti)が1〜4となる範囲の組成でエチレングリコール中で加熱反応させたチタン/リン反応物を用い、且つ該ポリエステルに含まれるチタン元素量が全ジカルボン酸成分を基準として2〜40ミリモル%の範囲にあるポリエステルプレチップをひとまず製造し、このチップをベント付き押出機に供給して、ポリエステルに可溶なアルカリ金属塩を水および/または沸点が50〜240℃の範囲有機溶媒に溶解させ、該ポリエステルを構成する全ジカルボン酸成分を基準として2〜40ミリモル%の範囲で含有するように供給し、混練させれば、生産性を損なうことなく、製造することができる。
【0043】
上記のポリエステルプレチップの製造方法について説明すると、エステル交換反応触媒の存在下に、芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体とアルキレングリコールとをエステル交換反応させることによって製造するが、このエステル交換反応時の反応系内圧力については、通常は常圧で行われるが、必要に応じて加圧下での反応を実施してもよく、加圧下でのエステル交換反応を実施する場合、圧力を0.20MPaより高くすると、副生成物として発生するジエチレングリコールのポリマー中の含有量が著しく増加し、ポリマーの熱安定性等の特性が劣ってしまう為、0.20MPa以下、好ましくは0.06〜0.10MPaの範囲で実施することが好ましい。
【0044】
次いで、得られたポリエステルプレチップはベント付き溶融混練押出機に供給し、更に、予め調整しておいた、ポリエステルに可溶なアルカリ金属塩を水および/または沸点50〜240℃の範囲にある有機溶媒に溶解した溶液を添加する。
【0045】
ここで、用いるベント式溶融混練押出機は、少なくとも一箇所のベント孔を備えた溶融混練押出機であればよく、該押出機の機能に特に制限はなく、1軸スクリュータイプ、2軸スクリュータイプのいずれも用いることができるが、不活性ガスの添加や減圧保持が可能であるように、ベント機能を2箇所以上有する溶融混練押出機であることが好ましい。また、混練性能が高く、短時間に反応が完結するように、2軸スクリュー型のベント付き溶融混練押出機を用いることが好ましい。尚、2軸スクリュー型ベント付き溶融混練押出機を用いる場合には、2軸の回転方向は同一でも逆方向でもよいが、同一方向の回転が、原料の熱劣化を抑える観点から好ましい。
【0046】
また、その混練性能を高めるため、混練セグメントが具備されていることが好ましく、例えば、ニーディングディスク、ローターディスクが挙げられる。
【0047】
ニーディングディスクとは、略楕円形のディスクを数枚、一定の位相でずらしながら組み合わせた混練用のスクリューセグメントであり、スクリューの回転にともなってポリエステルの混合物を狭いクリアランスへ強制的に通過させることで極めて高い剪断力を付与することができる。
【0048】
一方、ローターディスクとは、多角形のディスクであり、その稜線を一定の角度でねじってあるスクリューセグメントであり、クリアランスがセグメントの全位置で一定であるという特徴がある。スクリュー軸に対する稜線のねじりの向きが順送りのものと逆送りのものとの二通りのセグメントがあり、これらのセグメントを組み合わせることで、高い剪断力を均一に付与することができ、剪断によるポリエステルの劣化を抑制しつつ、溶融混練を進めることが可能となる。
【0049】
ニーディングディスクあるいはローターディスクは、目標とする組成物の物性により、適宜選択することができ特に制限はないが、これらの装着数を、ディスク又はセグメント長(L)及びスクリュー径(D)の比L/Dで表したとき、ニーディングディスク及びローターディスクの装着数はそれぞれ、L/D=1〜30の範囲とすることが好ましく、より好ましくはL/D=2〜20の範囲である。L/Dがこの範囲内にあるときには、更に良好な溶融混練を行うことができ、この時、該スクリューの回転数は、20〜500rpm程度に設定すればよく、好ましくは50〜300rpmである。
【0050】
尚、該押出機の温度は用いるポリマーの融点より10〜40℃高い温度、好ましくは用いるポリマーの融点より20〜40℃高い温度である。
【0051】
また、ベント付き溶融混練押出機へ添加するためアルカリ金属塩溶液は、予め水および/または沸点が50〜250℃の範囲にある有機溶媒に溶解させたものを用いる。ここで、有機溶媒を使用する場合、沸点が50℃未満であると、揮発性が高くて添加溶媒として使用することが困難であり、250℃を越えると添加した後、ポリエステルからの留去が困難になる。該有機溶媒として好ましくは、メタノール、エタノール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、2−メチル−1,3−ジオキソラン等の有機溶媒を挙げることができるが、安価であること、安全性が高いことから水が最も好ましく用いられる。
【0052】
本発明の製造法方法において、ベント付き溶融混練押出機は、ベント孔の少なくとも1箇所は、真空ポンプ又はスチームエジェクターを用いて減圧下にすることが好ましく、通常は10kPa以下、好ましくは5kPa以下、1kPa以下に設定することが更に好ましく、溶融混練操作において副次的に生成され得る水、メタノール等のアルコール、あるいは極少量の副生物等を留去することが好ましい。反応時間は1〜60分間、特に5〜30分間であることが好ましい。
【0053】
本発明のようなベント付き押出機を用いれば、短時間で反応を完結することができ、結果として、副生成物を激減させ、同時に改善された色相を有するポリマーを得ることができる。
【0054】
本発明において製造されるポリエステル組成物の固有粘度(o−クロロフェノール、35℃)は、0.50〜1.00の範囲にあることが好ましく、更に0.60〜0.70の範囲が好ましい。固有粘度が0.50未満であると、繊維の強度が不足するため好ましくない。他方、固有粘度が1.00を超えると、原料ポリマーの固有粘度を過剰に引き上げる必要があり不経済である。
【0055】
本発明において、必要に応じて少量の添加剤、例えば滑剤、顔料、染料、酸化防止剤、固相重合促進剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、遮光剤、艶消剤等を含んでいてもよい。特に艶消剤としての酸化チタンは好ましく添加され、その場合平均粒径が0.01〜2μmの酸化チタンを最終的に得られるポリエステル組成物中に0.01〜10重量%含有させるよう添加することが好ましい。
【0056】
尚、上述したような溶融混練操作を経てベント付き溶融混練押出機から出たポリエステル組成物は、水冷バス等の冷却工程を通過後、チップカッターを用いてチップ化されるか、あるいは、冷却・チップ化をすること無く、そのまま紡糸機に供してもよい。
【0057】
本発明のポリエステル繊維を製造する時の製造方法としては特に限定はなく、従来公知の溶融紡糸方法が用いられるが、例えばポリエステルを270〜300℃の範囲で溶融紡糸して製造することが好ましく、溶融紡糸の速度は400〜5000m/分で紡糸することが好ましい。紡糸速度がこの範囲にあると、得られる繊維の強度も十分なものであると共に、安定して巻き取りを行うこともできる。また延伸はポリエステル繊維を巻き取ってから、あるいは一旦巻き取ることなく連続的に延伸処理することによって、延伸糸を得ることができる。更に本発明のポリエステル繊維は風合いを高める為に、公知の方法によるアルカリ減量処理も好ましく実施される。
【0058】
本発明のポリエステル繊維を製造する際において、紡糸時に使用する口金の形状について制限は無く、円形、異形、中実、中空等のいずれも採用することができる。
【0059】
【実施例】
本発明を更に下記実施例により具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例により限定されるものではない。尚、固有粘度、色相、チタン、リン、カルシウム、マグネシウム含有量及び紡糸口金に発生する付着物の層については、下記記載の方法により測定した。
【0060】
(1)固有粘度:
ポリエステル組成物の固有粘度は、o−クロロフェノール溶液中、35℃において測定した粘度の値から求めた。
【0061】
(2)色調(L値及びb値):
ポリマー試料を290℃、真空下で10分間溶融し、これをアルミニウム板上で厚さ3.0±1.0mmのプレートに成形後ただちに氷水中で急冷し、該プレートを160℃、1時間乾燥結晶化処理後、色差計調整用の白色標準プレート上に置き、プレート表面のハンターL値及びb値を、ミノルタ社製ハンター型色差計CR−300を用いて測定した。L値は明度を示し、その数値が大きいほど明度が高いことを示し、b値はその値が大きいほど黄着色の度合いが大きいことを示す。
【0062】
(3)ポリマー中のチタン、リン及びアンチモン含有量:
ポリマー試料を加熱溶融して円形ディスクを作成し、リガク社製蛍光X線測定装置3270を用いて測定した。ただし、艶消し剤として酸化チタンを添加したもののチタン元素量については、ポリマー試料をヘキサフルオロイソプロパノールに溶解し、遠心分離機で酸化チタン粒子を沈降させ、傾斜法により上澄み液のみを回収し、溶剤を蒸発させた後に測定した。
【0063】
(4)引張強度、引張伸度:
JIS L1013記載の方法に準拠して測定を行った。
【0064】
(5)熱水収縮率:
孔径0.3mmの円形紡糸孔を36個備えた紡糸口金を有する押出紡糸機を用いて287℃で溶融し、紡糸紡糸温度292℃、紡糸速度4000m/分で紡糸サンプルを採取、沸水で30分保持したときの収縮率を測定した。収縮率が高いほど配向結晶が抑制されていることを示す。
【0065】
(6)紡糸口金に発生する付着物の層:
ポリエステル組成物をチップとなし、これを290℃で溶融し、孔径0.15mmφ、孔数12個の紡糸口金から吐出し、600m/分で2日間紡糸し、口金の吐出口外縁に発生する付着物の層の高さを測定した。この付着物層の高さが大きいほど吐出されたポリエステル組成物メルトのフィラメント状流にベンディングが発生しやすく、このポリエステル組成物の成形性は低くなる。すなわち、紡糸口金に発生する付着物層の高さは、当該ポリエステル組成物の成形性の指標である。
【0066】
[参考例1]触媒の調整:
エチレングリコール131重量部中にフェニルホスホン酸3.6重量部を120℃に10分間加熱して溶解した。このエチレングリコール溶液134.5重量部に、更にエチレングリコール40重量部を加えた後、これにチタンテトラブトキシド3.8重量部を溶解させた。得られた反応系を120℃で60分間撹拌し、チタン化合物とフェニルホスホン酸とを反応させ、反応生成物を含む触媒の白色スラリーを得た。この触媒スラリーのチタン含量は0.3重量%、チタン元素のリン元素に対するモル比(P/Ti)は2.0であった。
【0067】
[参考例2]触媒の調整:
エチレングリコール2.5重量部に無水トリメリット酸0.8重量部を溶解し、この溶液にチタンテトラブトキシド0.7重量部(無水トリメリット酸のモル量を基準として0.5mol%)を滴下し、この反応系を空気中、常圧下、80℃に60分間保持してチタンテトラブトキシドと無水トリメリット酸とを反応させ、反応生成物を熟成させた。その後反応系を常温に冷却し、これにアセトン15重量部を加え、析出物をNo.5濾紙で濾過し、採取し、これを100℃の温度で2時間乾燥した。得られた反応生成物のチタン含有量は11.2重量%であった。 次に、エチレングリコール131重量部中にフェニルホスホン酸3.6重量部を120℃に10分間加熱して溶解した。このエチレングリコール溶液134.5重量部に、更にエチレングリコール40重量部を加えた後、これに上記チタン化合物5.0重量部を溶解させた。得られた反応系を120℃で60分間撹拌し、チタン化合物とフェニルホスホン酸とを反応させ、反応生成物を含む触媒の白色スラリーを得た。この触媒スラリーのチタン含量は0.3重量%、チタン元素のリン元素に対するモル比(P/Ti)は2.0であった。
【0068】
[参考例3]触媒の調整:
エチレングリコール131重量部中にモノ−n−ブチルホスフェート3.5重量部を120℃に10分間加熱して溶解した。このエチレングリコール溶液134.5重量部に、更にエチレングリコール40重量部を加えた後、これにチタンテトラブトキシド3.8重量部を溶解させた。得られた反応系を120℃で60分間撹拌し、チタン化合物とモノ−n−ブチルホスフェートとを反応させ、反応生成物を含む触媒の白色スラリーを得た。この触媒スラリーのチタン含量は0.3重量%、チタン元素のリン元素に対するモル比(P/Ti)は2.0であった。
【0069】
[参考例4]触媒の調整:
エチレングリコール2.5重量部に無水トリメリット酸0.8重量部を溶解し、この溶液にチタンテトラブトキシド0.7重量部(後記ポリエステルの製造に用いられる無水トリメリット酸のモル量を基準として0.5mol%)を滴下し、この反応系を空気中、常圧下、80℃に60分間保持してチタンテトラブトキシドと無水トリメリット酸とを反応させ、反応生成物を熟成させた。その後反応系を常温に冷却し、これにアセトン15重量部を加え、析出物をNo.5濾紙で濾過し、採取し、これを100℃の温度で2時間乾燥した。得られた反応生成物のチタン含有量は11.2重量%であった。
【0070】
次に、エチレングリコール131重量部中にモノ−n−ブチルホスフェート3.5重量部を120℃に10分間加熱して溶解した。このエチレングリコール溶液134.5重量部に、更にエチレングリコール40重量部を加えた後、これに上記チタン化合物5.0重量部を溶解させた。得られた反応系を120℃で60分間撹拌し、チタン化合物とモノ−n−ブチルホスフェートとを反応させ、反応生成物を含む触媒の白色スラリーを得た。この触媒スラリーのチタン含量は0.3重量%、チタン元素のリン元素に対するモル比(P/Ti)は2.0であった。
【0071】
[参考例5]
テレフタル酸ジメチル100部とエチレングリコール70部の混合物に重合触媒として参考例1で調製したチタン触媒0.82部を添加して撹拌機、精留塔及びメタノール留出コンデンサーを設けた反応器に仕込み、140℃から240℃まで徐々に昇温しつつ、反応の結果生成するメタノールを系外に留出させながら、エステル交換反応を行った。その後、56重量%濃度のリン酸水溶液0.0505部を添加し、エステル交換反応を終了させた。
【0072】
このエステル交換反応物を撹拌装置、窒素導入口、減圧口、蒸留装置を備えた反応容器に移し、285℃まで昇温し、30Pa以下の高真空にて重縮合反応を行って、固有粘度0.65、ジエチレングリコール量が1.0%であるポリエステルプレチップを得た。
【0073】
このプレチップをロス・イン・ウェート式計量フィーダーで計量し、チップ投入口から下流へ向けてオープンベントを2箇所、真空ベント2箇所を備え、かつニーディングディスクをL/D換算で5、ローターディスクをL/D換算で5、有する同方向回転型二軸押出機へ供給し、280℃で溶融させた。
【0074】
さらに、酢酸ナトリウムの10wt%水溶液を調製し、最終ポリマー中での含有量がポリエステルの重量に対して15mmol%になるように設定し、プランジャーポンプを用いて押出機のポリマー溶融部へ注入した。ポリエステル総重量に対して、27℃、大気圧で1倍に相当する体積の窒素をオープンベントより吹き込み、他方のオープンベントより排出させた。
【0075】
その後、押出機に備え付けられた真空ベント孔から20Paの圧力で減圧し、滞留時間15分、回転数は200rpmで溶融混練した。混練後、ポリマーをストランド状に押し出して水冷バスで固化した後、チップカッターでチップ化した。
【0076】
得られたチップを常法により乾燥した後、孔径0.3mmの円形紡糸孔を36個備えた紡糸口金を有する押出紡糸機を用いて287℃で溶融し、引取速度1400m/分で紡糸し、333dtex/36filの未延伸糸を作り、次いで85℃の加熱ローラーと160℃のプレートヒーターとを有する延伸処理機に供し、4.0倍で延伸処理し、83dtex/36filの延伸糸を得た。結果を表1に示す。
【0077】
[実施例3〜4、参考例6]
参考例5において、チタン化合物とリン化合物とを表1記載の通りに変更したこと以外は同様の操作を行った。結果を表1に示す。
【0078】
[参考例7]
テレフタル酸ジメチル100部とエチレングリコール70部の混合物に重合触媒として参考例1で調製したチタン触媒0.82部を添加して撹拌機、精留塔及びメタノール留出コンデンサーを設けた反応器に仕込み、140℃から240℃まで徐々に昇温しつつ、反応の結果生成するメタノールを系外に留出させながら、エステル交換反応を行った。その後、20%の二酸化チタンエチレングリコールスラリー14.5重量部を添加し、エステル交換反応を終了させた。
【0079】
このエステル交換反応物を撹拌装置、窒素導入口、減圧口、蒸留装置を備えた反応容器に移し、285℃まで昇温した後、30Pa以下の高真空にて重縮合反応を行って、固有粘度0.65、ジエチレングリコール量が1.0%であるポリエステルプレチップを得た。
【0080】
参考例5と同様に、プレポリマー溶融体を345kg/hで放流できるラインを設け、このラインに圧入できるよう、オープンベントを2箇所、真空ベント2箇所を備え、かつニーディングディスクをL/D換算で5、ローターディスクをL/D換算で5、有する同方向回転型二軸押出機の先端を繋ぎ込んだ。上記で製造した二酸化チタン含有ポリエステルプレチップをロス・イン・ウェート式計量フィーダーで10kg/h計量し、チップ投入口から下流へ向けて、280℃で溶融させた。酢酸ナトリウムの10wt%水溶液を調製し、最終ポリマー中での含有量がポリエステルの重量に対して15mmol%になるように設定し、プランジャーポンプを用いて押出機のポリマー溶融部へ注入した。ポリエステル総重量に対して、27℃、大気圧で1倍に相当する体積の窒素をオープンベントより吹き込み、他方のオープンベントより排出させた。
【0081】
その後、押出機に備え付けられた真空ベント孔から20Paの圧力で減圧させた。滞留時間は15分、回転数は200rpmであった。混練後、ポリマーはストランド状に押し出され、水冷バスで固化された後、チップカッターでチップ化し得られたチップを常法により乾燥した後、孔径0.3mmの円形紡糸孔を36個備えた紡糸口金を有する押出紡糸機を用いて287℃で溶融し、引取速度1400m/分で紡糸し、333dtex/36filの未延伸糸を作り、ついで85℃の加熱ローラーと160℃のプレートヒーターとを有する延伸処理機に供し、4.0倍で延伸処理し、83dtex/36filの延伸糸を得た。結果を表1に示す。
【0082】
[比較例1]
参考例5においてプレチップを溶融混練すること無く、そのまま使用した。
【0083】
[比較例2]
テレフタル酸ジメチル100部とエチレングリコール70部の混合物にエステル交換触媒として酢酸カルシウム0.05部を添加して撹拌機、精留塔及びメタノール留出コンデンサーを設けた反応器に仕込み、140℃から240℃まで徐々に昇温しつつ、反応の結果生成するメタノールを系外に留出させながら、エステル交換反応を行った。その後、56重量%濃度のリン酸水溶液0.0505部を添加し、エステル交換反応を終了させた。
【0084】
このエステル交換反応物を撹拌装置、窒素導入口、減圧口、蒸留装置を備えた反応容器に移し、二酸化アンチモン0.035部を添加し、285℃まで昇温、30Pa以下の高真空下にて重縮合反応を行って、固有粘度0.65、ジエチレングリコール量が1.0%であるポリエステルチップを得た。
【0085】
【表1】
【0086】
【発明の効果】
本発明によれば、Ti触媒を使用し従来技術の欠点であった色相の悪化を解消し、ポリエステルが持つ、優れた特性を保持しながら、配向結晶抑制性に優れ、色相が優れたポリエステル繊維を提供することができる。
Claims (10)
- ポリエステルとポリエステルに可溶なアルカリ金属塩からなるポリエステル組成物であり、ポリエステルがポリエステル製造時の重縮合反応触媒として、下記一般式(I)で表されるチタン化合物、若しくは下記一般式(I)で表されるチタン化合物と下記一般式(II)で表される芳香族多価カルボン酸又はその無水物とを反応させた生成物と、下記一般式(III)で表されるリン化合物とを、チタン元素のモル数に対するリン元素のモル数(P/Ti)が1〜4となる範囲でグリコール中で加熱することにより得られた析出物を、ポリエステルに含まれるチタン元素量が、該ポリエステルを構成する全ジカルボン酸成分を基準として2〜40ミリモル%の範囲となるように用いて得た、全繰り返し単位を基準として80モル%以上をエチレンテレフタレート単位が占めるポリエステルであり、且つポリエステルに可溶なアルカリ金属塩を、該ポリエステルを構成する全ジカルボン酸成分を基準として2〜40ミリモル%含有する、配向結晶性の抑制されたポリエステル組成物。
- ポリエステルに可溶なアルカリ金属塩が酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムからなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物である、請求項1記載のポリエステル組成物。
- 前記式(III)中のpが1である、請求項1記載のポリエステル組成物。
- 前記式(III)で表されるリン化合物がモノアルキルホスフェートである、請求項3記載のポリエステル組成物。
- 前記式(I)で表されるチタン化合物が、チタンテトラアルコキシド類、ヘキサアルキルジチタネート類及びオクタアルキルトリチタネート類からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物である、請求項1記載のポリエステル組成物。
- 請求項1〜5のいずれか記載のポリエステル組成物を溶融紡糸して得られるポリエステル繊維。
- ポリエステルとポリエステルに可溶なアルカリ金属塩からなるポリエステル組成物の製造方法であって、ポリエステル製造時の重縮合反応の触媒として、下記一般式(I)で表されるチタン化合物、若しくは下記一般式(I)で表されるチタン化合物と下記一般式(II)で表される芳香族多価カルボン酸又はその無水物とを反応させた生成物と、下記一般式(III)で表されるリン化合物とを、チタン元素のモル数に対するリン元素のモル数(P/Ti)が1〜4となる範囲でグリコール中で加熱することにより得られた析出物を、ポリエステルに含まれるチタン元素量が、該ポリエステルを構成する全ジカルボン酸成分を基準として2〜40ミリモル%の範囲となるように用いて得た、全繰り返し単位の少なくとも80モル%がエチレンテレフタレート単位であるポリエステルを、ベント付き溶融混練押出機へ供給しつつ、該押出機内に予め調製しておいたポリエステルに可溶なアルカリ金属塩を水および/または沸点が50〜240℃の範囲にある有機溶媒に溶解させた溶液を、該溶液中のアルカリ金属元素換算で該ポリエステルを構成する全ジカルボン酸成分を基準として2〜40ミリモル%の範囲となるように、該押出機内へ添加し該混練機内で溶融混練する、ポリエステル組成物の製造方法。
- 前記式(I)のチタン化合物を予め下記一般式(II)の多価カルボン酸及び/又はその酸無水物と反応モル比(2:1)〜(2:5)の範囲の組成で反応させた後、前記式(III)のリン化合物と反応させる、請求項7記載の製造方法。
- ベント付き溶融混練押出機が、少なくともニーディングディスクを有する2軸ベント付き溶融混練押出機である、請求項7記載の製造方法。
- ベント付き溶融混練押出機が、少なくともローターディスクを有する2軸ベント付き溶融混練押出機である、請求項7記載の製造方法。
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