JP5350814B2 - ポリエステル組成物およびポリエステル繊維 - Google Patents

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Description

本発明はポリエステル組成物に関する。さらに詳しくは、製糸性に優れ、特にワンステップ(1つの工程で実施する)の製糸工程において、高い強度を発現する繊維を安定して製造することが出来る配向結晶化が抑制された製糸性に優れたポリエステル組成物に関する。
ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートおよびポリテトラメチレンテレフタレートは、その機械的、物理的および化学的性能が優れているため、繊維、フィルムまたはその他の成形物に広く利用されている。その中でも特にポリエチレンテレフタレートは、機械的特性、化学的特性、成形性等に優れており、古くからポリエステル繊維用に利用されている。近年ではこのポリエステル繊維製造工程において、その生産性を向上させる為に、紡糸速度や延伸、加工速度などを上げたり、紡糸−延伸工程を一段階で行うようなことが一般的に行われてきている。
一方で、ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステルはテレフタル酸やテレフタル酸ジメチルのごときジカルボン酸とエチレングリコールのごときグリコールとをエステル化反応あるいはエステル交換反応せしめた後、三酸化アンチモンのごとき重合触媒の存在下重合反応せしめる工程を用いることが一般的である。しかしながら、アンチモン化合物を重合触媒として使用したポリエステルを例えば長時間にわたって連続的に溶融紡糸し繊維化しようとした場合、口金孔周辺に異物(以下、単に口金異物と称することがある。)が付着堆積し、溶融ポリマー流れの曲がり現象(ベンディング)が発生することがある。するとこれが原因となって紡糸、延伸工程において毛羽および/または断糸などを発生するという成形性の問題が生じる。
そこで、このような問題を解決する為に、ポリエステルの重合触媒としてチタンテトラブトキシドを変性させたようなチタン系化合物を用いることが提案されている(例えば、特許文献1および特許文献2参照。)。このような方法によって製造されたポリエチレンテレフタレートは確かに口金孔周辺の堆積物が大幅に減少し、繊維製造工程を安定化させることが可能である。
しかしながら、このようにチタン系触媒を用いて製造されたポリエステルは特に繊維製造工程の紡糸速度を高めることにより、繊維の配向結晶化が促進され、その結果、得られた繊維の品質が安定しにくい、という欠点を有している。すなわち、紡糸速度が速くなるにつれて繊維の配向度は高くなり、同時に結晶化が進展していくが、チタン系触媒をはじめとする非アンチモン系触媒は、この結晶化が非常に速いことが知られている。配向結晶化が速すぎると、配向が充分に進展しないうちに結晶化が進んでしまうため、最終的に得られる糸の配向度は低く、ゆえに強度も低くなる。この配向結晶性は、例えば一般的なポリエステルの糸として知られる中間配向糸(以下POYと称す)と称される3,000〜4,000m/分で紡糸される糸においては特に非常に重要な特性であり、POYそのものの品質低下のみならず、POYを加工する際にも加工断糸や品質の低下につながってしまう。
上記のような紡糸工程での繊維の結晶化を抑制する手段としては、例えばジフェニル化合物とアルカリ金属塩化合物を添加する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。しかしながらこの方法はアンチモン化合物を触媒として用いたポリエチレンテレフタレートには効果的であるものの、チタン化合物を触媒として用いたポリエチレンテレフタレートにはほとんど効果を示さない。
また、アンチモン化合物を触媒として用いたポリエチレンテレフタレートのベンディング防止対策として、スルホン酸ホスホニウム塩化合物を添加する方法が提案されているが、チタン化合物を触媒として用いたポリエチレンテレフタレートについては言及されていない(例えば、特許文献4参照。)。
さらに、チタン系触媒を用いた際の配向結晶化を抑制し、より品質を安定化させることを目的として、ポリエステルに非金属イオン性化合物を含有せしめる方法が提案されている。この方法により配向結晶性はある程度抑制されるものの、アンチモン系触媒を用いた場合と比較すればまだ配向結晶性は高く、十分なものではなかった。(例えば、特許文献5および特許文献6参照。)。
なお、ポリエステルを重合するチタン系触媒としては、これまでに多くの検討がなされており、テトラアルキルチタネートまたはテトラアルキルチタネートと芳香族カルボン酸に特定のホスホン酸類と金属化合物をあらかじめ反応させた触媒により色相、透明性、アセトアルデヒド含量を低減させたり(例えば、特許文献7参照。)、公知のチタン化合物、ホスホン酸類を含む公知のリン化合物とアルカリまたはアルカリ土類金属を特定の比率で含有させることにより色調を改善またはオリゴマーや触媒に起因する異物を低減させる(例えば、特許文献8〜10参照。)など、多くの技術が知られている。しかしながら、これらの特許は口金孔周辺の異物低減による製糸性改善効果にはふれているものの、チタン触媒によって促進される繊維の配向結晶化、さらにはこの配向結晶化促進により繊維の品質が不安定になることについてはふれられていない。
以上のことから、これまでに行われた数多くの非アンチモン系触媒、特にチタン系触媒に関する数多くの研究によっても、配向結晶性を改善できる有効な技術は得られていなかった。
特公昭59−046258号公報 国際公開第03/027166号パンフレット 特公平08−019566号公報 特許第2915208号公報 特開2007−238703号公報 特開2007−238704号公報 特開2004−217750号公報 特開2002−179781号公報 特開2004−210874号公報 特開2004−197075号公報
本発明の目的は、主にチタン系触媒を用いて製造されたポリエステルを用いた繊維を製造する際に、配向結晶性が抑制された、特にワンステップの製糸工程において、高い強度を発現する繊維を製造することが出来る製糸性に優れたポリエステル組成物を提供することである。換言すると、チタン触媒を用いて得られたポリエステル(組成物)をPOYを得る条件で繊維を製造した場合に、繊維強度がある一方で乾熱収縮率、複屈折率が適度に大きく配向結晶化が抑制されたポリエステル繊維を得るのに適したポリエステル組成物を提供することにある。
本発明者は、上述の従来技術に鑑み鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、ポリエステル、ポリエステル可溶性のチタン原子、金属原子、ホスホン酸化合物および層状構造を有する粒子を含むポリエステル組成物であって、
ポリエステルはポリエステルを構成する全繰返し単位の90モル%以上がエチレンテレフタレート単位である固有粘度が0.55dL/g以上のポリエステルであって、ポリエステル可溶性のチタン原子含有量がポリエステルを構成する全繰返し単位に対してTi金属原子として3〜30ミリモル%であり、マンガン、マグネシウムおよび亜鉛よりなる群から選ばれる1種または2種以上の金属原子含有量がポリエステルを構成する全繰返し単位に対して10〜1000ミリモル%であり、アンチモン元素含有量がポリエステル組成物に対して15質量ppm未満であり、
下記一般式(I)
[上記一般式(I)中、Rは未置換のもしくは置換された6〜20個の炭素原子を有するアリール基または未置換のもしくは置換された1〜20個の炭素原子を有するアルキル基を表す。]
で示されるホスホン酸化合物を下記数式(1)を満たす範囲で含有し、
0.9≦P/M≦2.0 ・・・・・(1)
[上記数式(1)中、Pはポリエステル組成物中のポリエステルを構成する全繰返し単位に対する該ホスホン酸化合物の総モル量、Mはポリエステル組成物中のポリエステルを構成する全繰返し単位に対するマンガン原子、マグネシウム原子および亜鉛原子の総モル量を表す。]
さらにポリエステル組成物中にポリエステル可溶性のチタン原子を含有しているチタン化合物を含み、該チタン化合物が、下記一般式(II)で表わされる化合物と下記一般式(III)で表わされる芳香族多価カルボン酸もしくは酸無水物とを反応させた生成物であり、且つ、層間隔が1〜100nmである層状構造を有する粒子を含むポリエステル組成物であり、これによって上記の課題が解決できる。
[上記一般式(II)中、R は、2〜10個の炭素原子を有するアルキル基またはフェニル基を表し、pは1〜3の整数を表す。]
[上記一般式(III)中、nは2〜4の整数を表す。]
本発明によれば、チタン触媒を用いて得られたポリエステルについて、通常POYを得る条件で紡糸を行っても、繊維強度がありながら配向結晶が抑制されたポリエステル繊維を得ることができる。その結果その後の種々の糸加工操作により、高品質の繊維を安定して生産することができる。すなわち繊維生産工程の能力を高め、コストダウンを行うことが可能となる。
実施例4と比較例5について、紡糸速度に対する複屈折すなわち配向度の変化を示した図である。 実施例4と比較例5について、紡糸速度に対する乾熱収縮率すなわち結晶化度の変化を示した図である。 実施例4のポリエステル組成物を透過型電子顕微鏡(TEM)による観察をした結果観察された、層状構造を有する粒子の電子顕微鏡写真である。
以下本発明を詳しく説明する。
本発明におけるポリエステルとは、ポリエステルを構成する全繰返し単位の90モル%以上がエチレンテレフタレート単位であるポリエステルのことである。エチレンテレフタレート単位が少ないと引張強度などの力学的物性が低下することがある。また本発明におけるポリエステルは、その固有粘度が0.55dL/g以上であることが必要である。固有粘度が0.55dL/gより小さいと、同様に引張強度などの力学的物性が低下し、繊維等の用途として使用に供することができない。より好ましくは95モル%以上がエチレンテレフタレート単位であり、固有粘度は0.60dL/g以上である。また、本発明のポリエステル組成物は固相重合によって固有粘度を高めてもよい。固有粘度を測定する際には通常オストワルド粘度計、ウベローデ粘度計等を用いるが、ポリエステル組成物中にこれらの粘度計を使用する際に障害になるような粒子が含まれている場合には、溶媒に溶解した後濾過操作を行うことも採用することができる。また固有粘度が高すぎると溶融成形が困難になる等の理由で、高固有粘度が好ましくない用途に用いる場合には0.55〜0.90dL/gの範囲が好ましく、0.60〜0.80dL/gの範囲が更に好ましい。
本発明のポリエステルは物性・特性に影響が出ない範囲内、且つ全繰り返し単位の10モル%以下の範囲で他の成分を共重合されていても良い。その共重合成分としては、一般にポリエステルで用いられているジカルボン酸成分、ジオール成分(グリコール成分)、ヒドロキシカルボン酸成分を挙げることができる。
本発明におけるポリエステルの製造方法は、通常知られている製造方法が用いられる。すなわち、まずテレフタル酸のごとき芳香族ジカルボン酸成分とエチレングリコールのごときグリコール成分とを直接エステル化反応させる方法、またはテレフタル酸ジメチルのごとき芳香族ジカルボン酸成分の低級アルキルエステルとエチレングリコールのごときグリコール成分とをエステル交換反応触媒の存在下エステル交換反応させる方法などにより、芳香族ジカルボン酸のグリコールエステルおよび/またはその低重合体を製造する。次いでこの反応生成物を重合触媒の存在下で減圧加熱して所定の重合度になるまで重縮合反応させることによって、目的とするポリエステルが製造される。上述したエステル交換反応触媒としてはマンガン化合物、マグネシウム化合物、亜鉛化合物、チタン化合物が好ましく例示される。
なお本発明のポリエステル組成物には、マンガン、マグネシウム、および亜鉛よりなる群から選ばれる1種または2種以上の金属原子を、ポリエステルを構成する全繰返し単位に対して10〜1000ミリモル%の範囲で含有している必要がある。すなわちエステル交換反応触媒を用いる場合には、これらの金属化合物をエステル交換反応触媒として用いれば、本発明の目的を達成するのみならず、触媒としても活用できるため効率的である。
一方、テレフタル酸のごとき芳香族ジカルボン酸成分と、エチレングリコールのごときグリコール成分とを直接エステル化反応させる方法においては、エステル交換触媒やその直接エステル化反応の際の触媒は不要であるが、本発明の効果を発現させるために、あえてマンガン、マグネシウム、亜鉛のうちの1種または2種以上の金属成分を、ポリエステルを構成する全繰返し単位に対して10〜1000ミリモル%の範囲で含有せしめることが必要である。
これらの金属元素の含有量が10ミリモル%未満の場合には、本発明の効果を充分に発現させることができず、また1000ミリモル%を超えると、これらの金属化合物が粗大な粒子を形成し、例えば該ポリエステルを製糸する際に異物となり、著しく成形性を悪化させるため望ましくない。これらの金属元素の含有量の合計は20〜500ミリモル%が望ましく、30〜100ミリモル%がさらに好ましい。
本発明のポリエステル組成物に含有されるマンガン、マグネシウム、亜鉛はそれぞれの金属原子を含む化合物としてポリエステル組成物の製造工程のいずれかにおいて添加される。その添加されるマンガン化合物、マグネシウム化合物、亜鉛化合物としては、有機金属化合物であれば特に限定するものではないが、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸もしくはステアリン酸などの脂肪族モノカルボン酸塩、シュウ酸、マロン酸もしくはコハク酸などの脂肪族ジカルボン酸塩、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸もしくはテレフタル酸などの芳香族カルボン酸塩、またはグリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸もしくはヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸塩が好ましく用いられ、とくに酢酸塩がもっとも好ましく用いられる。
また本発明のポリエステル組成物には、下記一般式(I)
[上記一般式(I)中、Rは未置換のもしくは置換された6〜20個の炭素原子を有するアリール基または未置換のもしくは置換された1〜20個の炭素原子を有するアルキル基を表す。]
で示されるホスホン酸化合物を、下記数式(1)の範囲で含有することが必要である。
0.8≦P/M≦2.0 ・・・・・(1)
[上記数式(1)中、Pはポリエステル組成物中のポリエステルを構成する全繰返し単位に対する該ホスホン酸化合物の総モル量、Mはポリエステル組成物中のポリエステルを構成する全繰返し単位に対するマンガン原子、マグネシウム原子および亜鉛原子の総モル量を表す。]
で示される官能基は具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ベンジル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ジメチルフェニル基等を挙げることができる。更にこれらの炭化水素基中の1または2以上の水素原子がカルボキシル基等に置換されていても良い。
そして、ホスホン酸化合物の具体例としては、フェニルホスホン酸、メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、ノルマルプロピルホスホン酸、イソプロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、トリルホスホン酸、キシリルホスホン酸、ビフェニルホスホン酸、ナフチルホスホン酸、アントリルホスホン酸、2−カルボキシフェニルホスホン酸、3−カルボキシフェニルホスホン酸、4−カルボキシフェニルホスホン酸、2,3−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,4−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,5−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,6−ジカルボキシフェニルホスホン酸、3,4−ジカルボキシフェニルホスホン酸、3,5−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,3,4−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,3,5−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,3,6−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,4,5−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,4,6−トリカルボキシフェニルホスホン酸が例示されるが、中でもフェニルホスホン酸がもっとも好ましく用いられる。またホスホン酸化合物のポリエステル中への添加時期としては特に限定はなく、重合反応が終了するまでの任意の段階で添加することができるが、エステル交換反応を含むポリエステル製造工程の場合は、エステル交換反応終了後に添加することが好ましい。
数式(1)で示されるP/Mが0.8未満では、金属化合物濃度Mが過剰となり、過剰金属原子成分がポリエステルの熱分解を促進し、熱安定性を著しく損なうため好ましくない。一方、P/Mが2.0を超えると、逆にホスホン酸化合物が過剰となり、過剰なホスホン酸化合物成分がポリエステルの重合反応を著しく阻害するため好ましくない。好ましくはP/Mは0.9〜1.8である。
なお詳細は後述するが、本発明において含有するホスホン酸化合物とマンガン化合物、マグネシウム化合物、亜鉛化合物は、ポリエステルの重合反応中に特異的に層間隔が1〜100nmの微細な粒子を形成し、この粒子が本発明における優れた配向結晶抑制効果を発現せしめていると考えられている。ゆえに数式(1)でP/Mとして示されるモル比率は、本発明のポリエステル組成物を製造・特定する際において非常に重要なファクター(因子)である。微細な粒子の好ましい層間隔は1.1〜50.0nmであり、より好ましい層間隔は1.2〜10.0nmであり、最も好ましい層間隔は1.3〜5.0nmである。層状構造は層間隔に対してほぼ直角方向に、層間隔の5倍以上の連続層が3層以上連なっている状態を表す。
本発明のポリエスエテル組成物においては、ポリエステル可溶性のチタン元素の含有量がポリエステルを構成する全繰返し単位に対してTi金属として3〜30ミリモル%であることが必要であり、このポリエステル可溶性のチタン元素を含む化合物はポリエステル製造工程における触媒として添加されることが好ましく採用される。ここでポリエステル可溶性のチタン元素とは、艶消し目的で添加される二酸化チタンのような無機のチタン化合物は含まれず、通常触媒として用いられている有機のチタン化合物や艶消し剤として使用される二酸化チタンに不純物として含有されている有機チタン化合物を指す。なお、ポリエステル可溶性のチタン元素の含有量は、好ましくはポリエステルを構成する全繰返し単位に対してTi金属として4〜20ミリモル%であることが必要であり、さらに好ましくは4〜15ミリモル%である。
ポリエステル可溶性のチタン元素の含有量がポリエステルを構成する全繰返し単位に対してTi金属として3ミリモル%未満の場合には、他のマンガン原子、マグネシウム原子および亜鉛原子といった金属成分、ホスホン酸成分との相互作用とあいまって本発明の効果を実現することができない。一方で30ミリモル%を超える場合には、熱劣化・熱分解が促進される傾向があり、加熱時、溶融時等のポリエステルの固有粘度の低下が著しくなり好ましくない。
そのポリエステル可溶性のチタン元素を含む有機チタン化合物としては、チタン錯体化合物であることが好ましく、より具体的には炭素数1〜10のアルキル基を有するテトラアルコキシチタンまたはテトラフェノキシキシチタン、ヘキサアルキルジチタネート、またはオクタアルキルトリチタネート等が挙げられる。テトラアルコキシチタンの具体的な化合物の例としては、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、またはテトラ−n−ブトキシチタンが挙げられる。他のチタン化合物としては、テトラフェノキシチタン、ヘキサブチルジチタネート、またはオクタブチルトリチタネート等が好ましく挙げることができる。
他のチタン錯体化合物として、乳酸チタン、酢酸チタン、テトラキスアセチルアセトナトチタン、テトラキス(2,4−ヘキサンジオナト)チタン、テトラキス(3,5−ヘプタンジオナト)チタン、ビスアセチルアセトナトジメトキシチタン、ビスアセチルアセトナトジエトキシチタン、ビスアセチルアセトナトビス(n−プロポキシ)チタン、ビスアセチルアセトナトジイソプロポキシチタン、ジアセチルアセトナトジブトキシチタン、チタニウムジヒドロキシビスグリコレート、チタニウムジヒドロキシビスラクテート、チタニウムジヒドロキシビス(2−ヒドロキシプロピオネート)、ジメトキシビス(トリエタノールアミナト)チタン、ジエトキシビス(トリエタノールアミナト)チタン、ジイソプロポキシビス(トリエタノールアミナト)チタン、ジノルマルプロポキシビス(トリエタノールアミナト)チタン、またはジブトキシビス(トリエタノールアミナト)チタンを好ましく挙げることができる。これらの化合物はポリエステル製造時の重合触媒として用いることができる。
さらに本発明に用いるポリエステル可溶性のチタン元素を含むチタン化合物としては、下記一般式(II)で表わされる化合物、または一般式(II)で表わされる化合物と下記一般式(III)で表わされる芳香族多価カルボン酸もしくはその無水物とを反応させた生成物を用いることも好ましく挙げることができる。
[上記一般式(II)中、Rは、2〜10個の炭素原子を有するアルキル基またはフェニル基を表し、pは1〜3の整数を表す。]
[上記一般式(III)中、nは2〜4の整数を表す。]
一般式(II)で表わされるテトラアルコキサイドチタンおよび/またはテトラフェノキサイドチタンとしては、Rがアルキル基および/またはフェニル基であれば特に限定されないが、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラメトキシチタン、テトラフェノキシチタンなどが好ましく用いられる。また、かかるチタン化合物と反応させる一般式(III)で表される芳香族多価カルボン酸またはその無水物としては、フタル酸、トリメリット酸、ヘミメリット酸、ピロメリット酸またはこれらの無水物が好ましく用いられる。上記チタン化合物と芳香族多価カルボン酸またはその無水物とを反応させる場合には、溶媒に芳香族多価カルボン酸またはその無水物の一部または全部とを溶解し、これにチタン化合物を滴下し、0〜200℃の温度で30分以上反応させれば良い。このようにして得られた反応生成物も同様にポリエステル製造時の重合触媒として用いることができる。
重合触媒として用いるチタン化合物の量は特に限定はないが、上述のようにポリエステルを構成する全繰返し単位に対してTi金属原子として3〜30ミリモル%の範囲にあることが好ましい。より好ましい使用量は上述の通りである。また、これらチタン化合物からなる触媒は重合触媒としてだけではなく、エステル交換反応触媒としても同時に使用することが出来る。上述した重合触媒の中では特にチタン化合物を重合触媒として用いた場合に、本発明の効果を特に発揮することが可能となるが、重合触媒として用いるチタン化合物としてより好ましいのは上述の一般式(II)で表される化合物、または一般式(II)で表わされる化合物と下記一般式(III)で表わされる芳香族多価カルボン酸もしくはその無水物とを反応させた生成物を用いることである。
本発明においてポリエステルを製造する際に用いる重合触媒は、上記のようなチタン化合物を用いる他、更にゲルマニウム化合物およびアルミニウム化合物のいずれか1種以上を用いることも好ましい。ここで、ゲルマニウム化合物、アルミニウム化合物としては特に限定されず、ポリエステルの重合触媒として一般的なものが挙げられる。例えば二酸化ゲルマニウムまたはゲルマニウムテトラアルコキシド、アルミニウムアセチルアセトナートなどが挙げられ、これらの中でも二酸化ゲルマニウム、アルミニウムアセチルアセトナート等が特に好ましく選定される。
一方、ポリエステルの重合触媒としては一般的にアンチモン化合物が使用されているが、本発明のポリエステル組成物は、含有されているアンチモン元素量が15質量ppm未満である必要がある。ポリエステル組成物中のアンチモン元素含有量が15質量ppm以上の場合、特に製糸工程においてアンチモン化合物が口金周辺に異物となって付着し、長期間の連続成形性に悪影響を与える為好ましくない。ポリエステル組成物中のアンチモン元素量は10質量ppm未満が好ましく、5質量ppm未満が更に好ましい。
本発明のポリエステル組成物は、必要に応じて少量の添加剤、例えば滑剤、酸化防止剤、固相重合促進剤、整色剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、遮光剤または艶消剤等を含んでいてもよい。これらの内で熱安定剤としてのリン酸系化合物、艶消剤としての酸化チタンなどは好ましく添加され、特にチタン化合物を重合触媒として用いた場合、得られるポリエステル組成物の色相を優れたものにする為には、ホスホン酸化合物のほかにリン酸エステル等のリン化合物をさらに添加してもよい。
また本発明のポリエステル組成物は、溶融温度290℃、紡糸速度4000m/分の条件で溶融紡糸した際に得られる繊維の引張強度が2.5cN/dtex以上、150℃の乾熱収縮率が30%以上かつ複屈折率が0.055以上であることが好ましい。ここで複屈折率が0.055未満の場合、繊維中の分子鎖が十分に配向していない為、強力が低下し、引張強度も2.5cN/dtex以下となってしまう。乾熱収縮率が30%未満の場合、繊維の結晶化が進みすぎていることから、その後の加工性に劣る為好ましくない。引張強度は2.7cN/dtex以上、150℃における乾熱収縮率は35%以上であることが更に好ましい。
ここで本発明における、溶融温度290℃、紡糸速度4000m/分で溶融紡糸した際に得られる繊維の引張強度を2.5cN/dtex以上、150℃の乾熱収縮率を30%以上かつ複屈折率が0.055以上とするためには、ポリエステル組成物中に上述したように、マンガン、マグネシウム、亜鉛のうちの1種または2種以上の金属成分を、ポリエステルを構成する全繰返し単位に対して10〜1000ミリモル%の範囲で含有し、かつ下記一般式(I)
[上記一般式(I)中、Rは未置換のもしくは置換された6〜20個の炭素原子を有するアリール基または未置換のもしくは置換された1〜20個の炭素原子を有するアルキル基を表す。]
で示されるホスホン酸化合物を、下記数式(1)の範囲で含有させるようにポリエステル組成物を製造すればよい。
0.8≦P/M≦2.0 ・・・・・(1)
[上記数式(1)中、Pはポリエステル組成物中のポリエステルを構成する全繰返し単位に対する該ホスホン酸化合物の総モル量、Mはポリエステル組成物中のポリエステルを構成する全繰返し単位に対するマンガン原子、マグネシウム原子および亜鉛原子の総モル量を表す。]
本発明のポリエステル繊維を溶融紡糸により製造する時の製造方法としては特に限定はなく、従来公知の溶融紡糸方法が用いられる。例えば乾燥したポリエステル組成物を270℃〜300℃の範囲で溶融紡糸して製造することが好ましく、溶融紡糸の速度は400〜9000m/分で紡糸することができ、必要によって延伸工程などを経て繊維の強度を十分なものに高めることが可能である。しかしながら、本発明の効果をより高く発現させる為には紡糸速度は3000〜9000m/分、更に好ましくは3500〜8000m/分の範囲で溶融紡糸することが好ましく選択される。
また紡糸時に使用する口金の形状についても特に制限は無く、円形、異形、中実または中空などのいずれも採用することが出来る。更に本発明のポリエステル繊維は風合を高める為に、アルカリ減量処理も好ましく実施される。
本発明をさらに下記実施例により具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例により限定されるものではない。また各種特性は下記の方法により測定した。
(ア)固有粘度:
ポリエステル組成物チップを100℃、60分間でオルトクロロフェノールに溶解した希薄溶液を、35℃でウベローデ粘度計を用いて測定した値から求めた。
(イ)ポリエステル組成物中のリンおよび金属元素含有量:
ポリエステル組成物中のリン金属元素量、金属元素量は粒状のポリエステル組成物サンプルをスチール板上で加熱溶融した後、圧縮プレス機で平坦面を有する試験成形体を作成した。この試験成形体を使って蛍光X線装置(理学電機工業株式会社製3270E型)を用いて求めた。触媒としてチタン化合物を使用したものについては、サンプルをオルトクロロフェノールに溶解した後、0.5規定塩酸で抽出操作を行った。この抽出液について日立製作所製Z−8100型原子吸光光度計を用いて定量を行った。ここで0.5規定塩酸抽出後の抽出液中に酸化チタンの分散が確認された場合は遠心分離機で酸化チタン粒子を沈降させた。次に傾斜法により上澄み液のみを回収して、同様の操作を行った。これらの操作によりサンプル中に酸化チタンを含有していても触媒として添加しているポリエステルに可溶性のチタン元素の定量が可能となる。また含有量が1ppm未満の測定限界未満であった場合には、「ND」と表記した。
(ウ)繊維の引張強度、繊度:
JIS L1013記載の方法に準拠して測定を行った。
(エ)繊維の乾熱収縮率:
JIS L1013 8.18.2記載の測定方法(A法)において、150℃で測定を行った。乾熱収縮率は、繊維の結晶化度の指標として用いられ、乾熱収縮率が低いほど繊維の結晶化が進んでいることを示す。
(オ)繊維の複屈折率
光学顕微鏡とコンペンセーターを用いて、繊維の表面に観察される偏光のリターデーションから求めた。複屈折率は、繊維の配向の指標値として用いられ、複屈折の値が大きいほど配向が進んでいることを示す。
(カ)紡糸口金に発生する付着物層の高さ:
ポリエステルチップを290℃で溶融し、孔径0.15mmφ、孔数12個の紡糸口金から吐出し、600m/分で2日間紡糸し、口金の吐出口外縁に発生する付着物の層の高さを測定した。この付着物層の高さが大きいほど吐出されたポリエステル組成物の溶融物のフィラメント状流にベンディングが発生しやすく、このポリエステルの成形性は低くなる。すなわち、紡糸口金に発生する付着物層の高さは、当該ポリエステルの成形性の指標である。
(キ)層状構造を有する粒子の解析
層状構造を有する粒子の有無等は以下の手法に従って行った。ポリエステルチップ又は繊維サンプルから常法により50〜100nmの超薄切片を作製し、透過型電子顕微鏡(FEI社製 TECNAI G2)加速電圧120kVで観察した。得られた画像から層状構造を有する粒子の層間隔を算出した。
(ク)ポリエステルの繰り返し単位、含有化合物の化学構造
ポリエステル組成物サンプルを重水素化トリフルオロ酢酸/重水素化クロロホルム=1/1混合溶媒に溶解後、沈殿を濾過により除き、得られた溶液を日本電子(株)製JEOL A−600 超伝導FT−NMRを用いて核磁気共鳴スペクトル(H−NMR)を測定した。そのスペクトルパターンから常法に従ってポリエステルの繰り返し単位の化学構造を同定した。またポリエステル組成物の溶液にメタノールを添加しポリエステル成分を沈殿させた後、上澄み液を濃縮して核磁気共鳴スペクトル分析を行うことによりチタン化合物、ホスホン酸化合物の化学構造を同定した。
[参考例]チタン触媒Aの合成
無水トリメリット酸のエチレングリコール溶液(0.2重量%)にテトラブトキシチタンを無水トリメリット酸に対して1/2モル添加し、空気中常圧下で80℃に保持して60分間反応せしめた。その後常温に冷却し、10倍量のアセトンによって生成触媒を再結晶化させた。析出物をろ紙によって濾過し、100℃で2時間乾燥せしめ、目的の化合物を得た。得られた化合物のチタン含有量は11.5重量%であった。これをチタン触媒Aとする。
[実施例1]
・ポリエステル組成物チップの製造
テレフタル酸ジメチル100質量部とエチレングリコール70質量部との混合物に、酢酸マグネシウム・4水和物0.022質量部をSUS製容器に仕込んだ。常圧下で140℃から240℃に昇温しながらエステル交換反応させた後、フェニルホスホン酸0.020質量部を添加し、エステル交換反応を終了させた。その後、反応生成物に参考例で調製したチタン触媒A0.011質量部(ポリエステルを構成する全繰返し単位に対してTi金属原子として4.8ミリモル%に相当する)、整色剤としてC.I.Solvent Blue45を0.0003質量部、C.I.Solvent Violet36を0.0002質量部、二酸化チタンの20質量%エチレングリコールスラリー1.5質量部を添加して、撹拌装置、窒素導入口、減圧口および蒸留装置を備えた反応容器に移した。反応容器内温を285℃まで昇温し、30Pa以下の高真空で重縮合反応を行い、固有粘度0.64dL/gであるポリエステル組成物を得た。さらに常法に従いチップ化した。結果を表1に示した。
またポリエステルチップサンプルを薄片状にカットしてサンプリングし、透過型電子顕微鏡観察(TEM観察)により、層間隔が1.9nmの粒子が含まれていることが確認できた。
・ポリエステル繊維の製造
チップを160℃、4時間乾燥後、紡糸温度290℃、巻取速度4000m/分で100dtex/36filの繊維を得た。結果を表2に示した。
[実施例2〜8、参考例9,比較例1〜4]
実施例1において、酢酸マグネシウム、フェニルホスホン酸の添加量等を表1記載の量に変更したこと以外は実施例1と同様に実施した。結果を表1および表2に示した。実施例9においては、重合触媒として参考例で調整したチタン触媒の代わりにテトラブトキシチタネートをTi金属原子の量としては同量になるように用いた。また実施例2〜8、参考例9において実施例1と同様な操作にてTEM観察を行った結果、実施例1と同様に、層間隔が1.9nmの粒子がいずれの例にも含まれていることが確認できた。
[比較例5]
実施例4において、フェニルホスホン酸0.020質量部をトリメチルホスフェート0.061質量部に変更した以外は実施例4と同様に実施した。結果を表1および表2に示した。
[比較例6]
実施例4において、フェニルホスホン酸0.020質量部をリン酸0.042質量部に変更した以外は実施例4と同様に実施した。結果を表1および表2に示した。
[実施例10,11,比較例7]
実施例4において、酢酸マグネシウム・4水和物0.022質量部をそれぞれ酢酸マンガン・4水和物0.088質量部、酢酸亜鉛・2水和物0.079質量部、酢酸カルシウム・1水和物0.064質量部に変えた以外は実施例4と同様に実施した。結果を表1および表2に示した。また実施例10〜11において実施例1と同様な操作にてTEM観察を行った結果、実施例1と同様に、いずれの例も層間隔が1.9nmの粒子が含まれていることが確認できた。
[実施例12]
実施例4のエステル交換反応を終了後に、反応生成物に参考例で調製したチタン触媒A、整色剤、二酸化チタンのエチレングリコールスラリーに加え、さらに三酸化二アンチモン0.0011質量部を添加した以外は実施例4と同様に実施した。結果を表1および表2に示した。また実施例12において実施例1と同様な操作にてTEM観察を行った結果、実施例1と同様に、層間隔が1.9nmの粒子が含まれていることが確認できた。
[比較例8]
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール70重量部との混合物に、反応生成物に参考例で調製したチタン触媒A0.011質量部を加圧反応が可能なステンレス製容器に仕込み、0.07MPaの加圧を行い140℃から240℃に昇温しながらエステル交換反応させた後、フェニルホスホン酸0.020質量部を添加し、エステル交換反応を終了させた。その後、反応生成物に参考例で調製したチタン触媒A0.011質量部、整色剤としてC.I.Solvent Blue45を0.0003質量部、C.I.Solvent Violet36を0.0002質量部、二酸化チタンの20質量%エチレングリコールスラリー1.5質量部を添加して、撹拌装置、窒素導入口、減圧口および蒸留装置を備えた反応容器に移した。反応容器内温を285℃まで昇温し、30Pa以下の高真空で重縮合反応を行い、固有粘度0.64dL/gであるポリエステル組成物を得た。さらに常法に従いチップ化した。
また実施例1と同様にチップを160℃、4時間乾燥後、紡糸温度290℃、巻取速度4000m/分で100dtex/36filの繊維を得た。結果を表1および表2に示した。
[比較例9]
実施例4において、重合反応時間を短縮し、得られたポリエステルの固有粘度を0.54dL/gとした以外は実施例4と同様に実施した。結果を表1および表2に示した。
[比較例10]
テレフタル酸ジメチル100質量部とエチレングリコール70質量部との混合物に、酢酸マグネシウム・4水和物0.077質量部をSUS314製容器に仕込んだ。常圧下で140℃から240℃に昇温しながらエステル交換反応させた後、フェニルホスホン酸0.068質量部を添加し、エステル交換反応を終了させた。その後、反応生成物に三酸化二アンチモン0.041質量部、整色剤としてC.I.Solvent Blue45を0.0003質量部、C.I.Solvent Violet36を0.0002質量部、二酸化チタンの20質量%エチレングリコールスラリー1.5質量部を添加して、撹拌装置、窒素導入口、減圧口および蒸留装置を備えた反応容器に移した。反応容器内温を285℃まで昇温し、30Pa以下の高真空で重縮合反応を行い、固有粘度0.64dL/gであるポリエステル組成物を得た。さらに常法に従いチップ化し、実施例4と同様、チップを160℃、4時間乾燥後、紡糸温度290℃、巻取速度4000m/分で100dtex/36filの繊維を得た。結果を表1および表2に示した。
表1および表2からも明らかなように、本発明のポリエステル組成物は良好な性能が得られたが、本発明の範囲を外れるものは得られた糸の特性(固有粘度、強度、収縮率、複屈折率、付着物高さ)が不十分であった。更に本発明の請求項を満たすものは、口金異物の堆積が少ないために長期間安定した製糸が可能であっただけでなく、4,000m/分の紡糸速度においても、配向度は高く維持され、かつ乾熱収縮率が高い、すなわち配向結晶化が抑制されることが示される。
この特性をさらに明確に説明するために、本発明の実施例4と比較例5について、図1には紡糸速度に対する複屈折すなわち配向度の変化を、図2には紡糸速度に対する乾熱収縮率すなわち結晶化度の変化を示した。このように、実施例4は比較例5に比して複屈折は高く、乾熱収縮率は高く維持されており、配向結晶化が抑制されていることがわかる。その結果、本発明のポリエステル組成物を用いて得られた繊維はその後の延伸加工、仮撚加工、複合仮撚加工、合撚糸、カバリング糸等の混繊糸、複合糸の製造にも適している。
本発明によれば、チタン触媒を用いて得られたポリエステルについて、通常POYを得る条件で紡糸を行っても、繊維強度がありながら配向結晶が抑制されたポリエステル繊維を得ることができる。その結果その後の種々の糸加工操作により、高品質の繊維を安定して生産することができる。
本発明の効果の発現メカニズムは、まだ詳細には明らかになっていないが、本発明で得られるポリエステル組成物を透過型電子顕微鏡で観察すると、図3に示すような、従来のポリエステル組成物にはみられない、積層状の構造を有する数十ナノメートルの微細な層状構造を有する粒子が存在していることがわかっている。この積層粒子が本発明の特異な機能を発現していると考えられる。またこの粒子はポリエステル樹脂の製造時に反応系(反応器)内で生成しており、これが粒子の微細化に寄与していると考えられる。つまり、上述した特定の金属原子と特定のホスホン酸化合物によってのみ特異な層状の構造をもった粒子を形成し、かつその粒子はポリエステルの反応時に個々に添加された該金属原子とホスホン酸化合物が適切な条件下で徐々に反応することによってはじめて均一な粒子を形成していくと考えられるである。本発明は特定の化合物によってのみ得られる微粒子を含有したポリエステル組成物によって、従来技術では得ることのできなかった新たな特性を発現させることができたものと考えられる。

Claims (3)

  1. ポリエステル、ポリエステル可溶性のチタン原子、金属原子、ホスホン酸化合物および層状構造を有する粒子を含むポリエステル組成物であって、
    ポリエステルはポリエステルを構成する全繰返し単位の90モル%以上がエチレンテレフタレート単位である固有粘度が0.55dL/g以上のポリエステルであり、ポリエステル可溶性のチタン原子含有量がポリエステルを構成する全繰返し単位に対してTi金属原子として3〜30ミリモル%であり、マンガン、マグネシウムおよび亜鉛よりなる群から選ばれる1種または2種以上の金属原子含有量がポリエステルを構成する全繰返し単位に対して10〜1000ミリモル%であり、アンチモン元素含有量がポリエステル組成物に対して15質量ppm未満であり、
    下記一般式(I)
    [上記一般式(I)中、Rは未置換のもしくは置換された6〜20個の炭素原子を有するアリール基または未置換のもしくは置換された1〜20個の炭素原子を有するアルキル基を表す。]
    で示されるホスホン酸化合物を下記数式(1)を満たす範囲で含有し、
    0.9≦P/M≦2.0 ・・・・・(1)
    [上記数式(1)中、Pはポリエステル組成物中のポリエステルを構成する全繰返し単位に対する該ホスホン酸化合物の総モル量、Mはポリエステル組成物中のポリエステルを構成する全繰返し単位に対するマンガン原子、マグネシウム原子および亜鉛原子の総モル量を表す。]
    さらにポリエステル組成物中にポリエステル可溶性のチタン原子を含有しているチタン化合物を含み、該チタン化合物が、下記一般式(II)で表わされる化合物と下記一般式(III)で表わされる芳香族多価カルボン酸もしくは酸無水物とを反応させた生成物であり、且つ、層間隔が1〜100nmである層状構造を有する粒子を含むポリエステル組成物。
    [上記一般式(II)中、R は、2〜10個の炭素原子を有するアルキル基またはフェニル基を表し、pは1〜3の整数を表す。]
    [上記一般式(III)中、nは2〜4の整数を表す。]
  2. ホスホン酸化合物がフェニルホスホン酸である、請求項1に記載のポリエステル組成物。
  3. 請求項1〜のいずれかに記載のポリエステル組成物を溶融紡糸することにより得られる引張強度2.5cN/dtex以上、150℃の乾熱収縮率が30%以上、複屈折率が0.055以上であるポリエステル繊維。
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