JP2011148880A - ポリエステル組成物の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の目的は、主にチタン触媒を用いて製造されたポリエステルを用いた繊維を製造する際に、配向結晶性が抑制された、特にワンステップの製糸工程において、高い強度を発現する繊維を安定して製造することが出来る製糸性に優れたポリエステルの製造方法を提供することである。
【解決手段】テレフタル酸ジメチルとエチレングリコールからポリエステルを製造するに際して、エステル化反応又は重縮合反応においてMg、Mn、Co、Znのカルボン酸金属塩をポリエステルの繰り返し単位当たり10〜1000ミリモル%添加し、その添加の前後にホスホン酸化合物を添加して層状構造粒子を形成させ、ホスホン酸化合物を添加した後5分以上経過した後にチタン化合物をポリエステルを構成する全繰返し単位に対してチタン原子として3〜30ミリモル%になるように添加し、エステル化反応、重縮合反応を行うポリエステル組成物の製造方法によって上記目的が達成される。
【選択図】なし

Description

本発明はポリエステル組成物の製造方法に関する。さらに詳しくは、製糸性に優れ、特にワンステップ(1つの工程で実施する)の製糸工程において、高い強度を発現する繊維を安定して製造することが出来る配向結晶化が抑制された製糸性に優れたポリエステル組成物の製造方法に関する。
ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートおよびポリテトラメチレンテレフタレートは、その機械的、物理的および化学的性能が優れているため、繊維、フィルムまたはその他の成形物に広く利用されている。その中でも特にポリエチレンテレフタレートは、機械的特性、化学的特性、成形性等に優れており、古くからポリエステル繊維用に利用されている。近年ではこのポリエステル繊維製造工程において、その生産性を向上させる為に、紡糸速度や延伸、加工速度などを上げたり、紡糸−延伸工程を一段階で行うようなことが一般的に行われてきている。
一方で、ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステルはテレフタル酸やテレフタル酸ジメチルのごときジカルボン酸とエチレングリコールのごときグリコールとをエステル化反応あるいはエステル交換反応せしめた後、三酸化アンチモンのごとき重合触媒の存在下重合反応せしめる工程を用いることが一般的である。しかしながら、アンチモン化合物を重合触媒として使用したポリエステルを例えば長時間にわたって連続的に溶融紡糸し繊維化しようとした場合、口金孔周辺に異物(以下、単に口金異物と称することがある。)が付着堆積し、溶融ポリマー流れの曲がり現象(ベンディング)が発生することがある。するとこれが原因となって紡糸、延伸工程において毛羽および/または断糸などを発生するという成形性の問題が生じる。
そこで、このような問題を解決する為に、ポリエステルの重合触媒としてチタンテトラブトキシドを変性させたようなチタン系化合物を用いることが提案されている(例えば、特許文献1および特許文献2参照。)。このような方法によって製造されたポリエチレンテレフタレートは確かに口金孔周辺の堆積物が大幅に減少し、繊維製造工程を安定化させることが可能である。
しかしながら、このようにチタン系触媒を用いて製造されたポリエステルは特に繊維製造工程の紡糸速度を高めることにより、繊維の配向結晶化が促進され、その結果、得られた繊維の品質が安定しにくい、という欠点を有している。すなわち、紡糸速度が速くなるにつれて繊維の配向度は高くなり、同時に結晶化が進展していくが、チタン系触媒をはじめとする非アンチモン系触媒を用いて製造されたポリエステルは、この結晶化が非常に速いことが知られている。配向結晶化が速すぎると、配向が充分に進展しないうちに結晶化が進んでしまうため、最終的に得られる糸の配向度は低く、ゆえに強度も低くなる。この配向結晶性は、例えば一般的なポリエステルの糸として知られる中間配向糸(以下POYと称す)と称される3,000〜4,000m/分で紡糸される糸においては特に非常に重要な特性であり、POYそのものの品質低下のみならず、POYを加工する際にも加工断糸や品質の低下につながってしまう。
上記のような紡糸工程での繊維の結晶化を抑制する手段としては、例えばジフェニル化合物とアルカリ金属塩化合物を添加する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。しかしながらこの方法はアンチモン化合物を触媒として用いたポリエチレンテレフタレートには効果的であるものの、チタン化合物を触媒として用いたポリエチレンテレフタレートにはほとんど効果を示さない。
また、アンチモン化合物を触媒として用いたポリエチレンテレフタレートのベンディング防止対策として、スルホン酸ホスホニウム塩化合物を添加する方法が提案されているが、チタン化合物を触媒として用いたポリエチレンテレフタレートについては言及されていない(例えば、特許文献4参照。)。さらに、チタン系触媒を用いた際の配向結晶化を抑制し、より品質を安定化させることを目的として、ポリエステルに非金属イオン性化合物を含有せしめる方法が提案されている。この方法により配向結晶性はある程度抑制されるものの、アンチモン系触媒を用いた場合と比較すればまだ配向結晶性は高く、十分なものではなかった(例えば、特許文献5および特許文献6参照。)。
なお、ポリエステルを重合するチタン系触媒としては、これまでに多くの検討がなされており、テトラアルキルチタネートまたはテトラアルキルチタネートと芳香族カルボン酸に特定のホスホン酸類と金属化合物をあらかじめ反応させた触媒により色相、透明性、アセトアルデヒド含量を低減させたり(例えば、特許文献7参照。)、公知のチタン化合物、ホスホン酸類を含む公知のリン化合物とアルカリまたはアルカリ土類金属を特定の比率で含有させることにより色調を改善またはオリゴマーや触媒に起因する異物を低減させる(例えば、特許文献8〜9参照。)など、多くの技術が知られている。しかしながら、これらの文献は口金孔周辺の異物低減による製糸性改善効果にはふれているものの、チタン触媒によって促進される繊維の配向結晶化、さらにはこの配向結晶化促進により繊維の品質が不安定になることについてはふれられていない。
以上のことから、これまでに行われた数多くの非アンチモン系触媒、特にチタン系触媒に関する数多くの研究によっても、配向結晶性を改善できる有効な技術は得られていなかった。
特公昭59−046258号公報 国際公開第03/027166号パンフレット 特公平08−019566号公報 特許第2915208号公報 特開2007−238703号公報 特開2007−238704号公報 特開2004−217750号公報 特開2002−179781号公報 特開2004−210874号公報
本発明の目的は、主にチタン系触媒を用いて製造されたポリエステルを用いた繊維を製造する際に、配向結晶性が抑制された、特にワンステップの製糸工程において、高い強度を発現する繊維を製造することが出来る製糸性に優れたポリエステル組成物の製造方法を提供することである。換言すると、チタン触媒を用いて得られたポリエステル(組成物)からPOYを得る条件でポリエステル繊維を製造した場合に、繊維強度がある一方で乾熱収縮率、複屈折率が適度に大きく配向結晶化が抑制されたポリエステル繊維を得るのに適したポリエステル組成物の製造方法を提供することにある。
本発明者は、上述の従来技術に鑑み鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、テレフタル酸ジメチル成分と、エチレングリコール成分をエステル交換反応槽にてエステル交換反応を行いテレフタル酸のエチレングリコールエステルおよび/またはオリゴマーを生成する工程と、得られた生成物を重縮合反応槽にて重縮合反応を行う工程を有する製造工程にてポリエステルを製造するに際して、
該エステル交換反応槽に該テレフタル酸ジメチル成分と該エチレングリコールを仕込んだ後エステル交換反応前、もしくはエステル交換反応途中に、エステル交換反応槽に下記一般式(I)で表されるカルボン酸金属塩の1種または2種以上の混合物を、ポリエステルを構成する全繰返し単位に対して金属原子換算で10〜1000ミリモル%添加し、
(R−COO)−M (I)
[上記式(I)中、Rは1〜10個の炭素原子を有するアルキル基もしくは6〜10個の炭素原子を有するアリール基を表し、Mはマンガン、マグネシウム、コバルトおよび亜鉛よりなる群から選ばれる金属原子を表す。]
該カルボン酸金属塩の添加後に、下記一般式(II)で表されるホスホン酸化合物を下記数式(1)を満たす範囲でエステル交換反応槽に添加してポリエステル内部に層状の粒子を形成させるとともに、
[上記式(II)中、Rは未置換のもしくは置換された6〜20個の炭素原子を有するアリール基、または未置換のもしくは置換された1〜20個の炭素原子を有するアルキル基を表す。]
0.8≦P/Mc≦2.0 ・・・・・(1)
[上記数式(1)中、Pはポリエステル組成物中のポリエステルを構成する全繰返し単位に対する該ホスホン酸化合物の総モル量、Mcはポリエステル組成物中のポリエステルを構成する全繰返し単位に対するマンガン原子、マグネシウム原子、コバルト原子および亜鉛原子の総モル量を表す。]
該ホスホン酸化合物の添加が完了した後、少なくとも5分以上経過した後に、重縮合触媒としてチタン化合物を、ポリエステルを構成する全繰返し単位に対してチタン原子として3〜30ミリモル%になるようにエステル交換反応槽または該重縮合反応槽へ添加することを特徴とする、層間隔が1〜100nmである層状構造を有する粒子を含むポリエステル組成物の製造方法であり、これによって上記の課題が解決できる。
本発明によれば、チタン触媒を用いて得られたポリエステルについて、通常POYを得る条件で紡糸を行っても、繊維強度がありながら配向結晶が抑制されたポリエステル繊維を得ることができる。その結果その後の種々の糸加工操作により、高品質の繊維を安定して生産することができる。すなわち繊維生産工程の能力を高め、コストダウンを行うことが可能となる。
実施例4と比較例5について、紡糸速度に対する複屈折すなわち配向度の変化を示した図である。 実施例4と比較例5について、紡糸速度に対する乾熱収縮率すなわち結晶化度の変化を示した図である。 実施例4のポリエステル組成物を透過型電子顕微鏡(TEM)による観察をした結果観察された、層状構造を有する粒子の電子顕微鏡写真である。
以下本発明を詳しく説明する。本発明におけるポリエステル組成物を構成するポリエステルとは、ポリエステルを構成する全繰返し単位の90モル%以上がエチレンテレフタレート単位であるポリエステルのことである。エチレンテレフタレート単位が少ないと引張強度などの力学的物性が低下することがある。また本発明の製造方法によって得られるポリエステルは、その固有粘度(IV)が0.55dL/g以上であることが好ましい。固有粘度が0.55dL/gより小さいと、同様に引張強度などの力学的物性が低下し、繊維等の用途として使用に供することができない。より好ましくは95モル%以上がエチレンテレフタレート単位であり、固有粘度は0.60dL/g以上である場合である。また、本発明のポリエステル組成物は固相重合によって必要に応じて固有粘度を高めてもよい。固有粘度を測定する際には通常オストワルド粘度計、ウベローデ粘度計等を用いるが、ポリエステル組成物中にこれらの粘度計を使用する際に障害になるような粒子が含まれている場合には、溶媒に溶解した後濾過操作を行うことも採用することができる。また固有粘度が高すぎると溶融成形が困難になる等の理由で、高固有粘度が好ましくない用途に用いる場合には0.55〜0.90dL/gの範囲が好ましく、0.60〜0.80dL/gの範囲が更に好ましい。
本発明のポリエステルの製造方法は、まずテレフタルジメチル酸成分とエチレングリコール成分とをエステル交換反応させ、テレフタル酸のエチレングリコールエステルおよび/またはその低重合体のオリゴマーを製造し、次いでこの反応生成物を重縮合触媒の存在下で減圧加熱して所定の重合度になるまで重縮合反応させる、いわゆるポリエステルの製造方法の中のエステル交換反応法によるものである。本発明においては、まずテレフタルジメチル酸成分とエチレングリコール成分とをエステルを1)エステル交換反応槽に仕込んだ後であってエステル交換反応を行う前もしくは2)そのエステル交換反応の途中の段階で、エステル交換反応槽に下記一般式(I)で表されるカルボン酸金属塩の1種または2種以上の混合物を、ポリエステルを構成する全繰返し単位に対して金属原子換算で10〜1000ミリモル%添加することが必要である。
(R−COO)−M (I)
[上記式(I)中、Rは1〜10個の炭素原子を有するアルキル基もしくは6〜10個の炭素原子を有するアリール基を表し、Mはマンガン、マグネシウム、コバルトおよび亜鉛よりなる群から選ばれる金属原子を表す。]
これらの特殊なマンガン、マグネシウム、コバルト、亜鉛等のカルボン酸金属塩によってのみ、後述する層状構造を有する微粒子をポリエステル組成物中に形成することができる。またカルボン酸金属塩の添加量がポリエステルを構成する全繰返し単位に対して金属原子換算で10ミリモル%以下の場合は、層状構造を有する微粒子を形成することができないか、または生成したとしてもごく微量であるため本発明の効果を充分に発現させることができない。一方1000ミリモル%を超えると、これらの金属化合物が粗大な粒子を形成し、例えば該ポリエステル組成物を製糸する際に異物となり、著しく成形性を悪化させるため望ましくない。これらのカルボン酸金属塩の含有量の合計は金属原子換算で20〜500ミリモル%が望ましく、30〜100ミリモル%がさらに好ましい。
またそのカルボン酸金属塩を構成する官能基Rは1〜10個の炭素原子を有するアルキル基または6〜10個の炭素原子を有するアリール基であることが必要である。具体的な官能基としては、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、(o−,m−,p−)メチルフェニル基、(o−,m−,p−)エチルフェニル基等を挙げることができる。
本発明のポリエステル組成物に含有されるマンガン、マグネシウム、コバルトおよび亜鉛はそれぞれのカルボン酸塩としては、前記一般式(I)に示されたカルボン酸金属塩であれば特に限定するものではないが、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、安息香酸が好ましく用いられ、とくに酢酸塩が入手が容易で効果の発現が明瞭な点でもっとも好ましく用いられる。すなわち本発明においては、上記カルボン酸金属塩としてはギ酸マンガン、ギ酸マグネシウム、ギ酸コバルト、ギ酸亜鉛、酢酸マンガン、酢酸マグネシウム、酢酸コバルト、酢酸亜鉛、プロピオン酸マンガン、プロピオン酸マグネシウム、プロピオン酸コバルト、プロピオン酸亜鉛、安息香酸マンガン、安息香酸マグネシウム、安息香酸コバルト、安息香酸亜鉛などを好ましく用いることができる。
また本発明のポリエステル組成物の製造方法においては、上述のカルボン酸金属塩の添加後に、下記一般式(II)で表されるホスホン酸化合物を下記数式(1)を満たす範囲でエステル化反応槽へ添加してポリエステル内部に層状の粒子を形成させることがさらに必要である。
[上記式(II)中、Rは未置換のもしくは置換された6〜20個の炭素原子を有するアリール基、または未置換のもしくは置換された1〜20個の炭素原子を有するアルキル基を表す。]
0.8≦P/Mc≦2.0 ・・・・・(1)
[上記数式(1)中、Pはポリエステル組成物中のポリエステルを構成する全繰返し単位に対する該ホスホン酸化合物の総モル量、Mcはポリエステル組成物中のポリエステルを構成する全繰返し単位に対するマンガン原子、マグネシウム原子、コバルト原子および亜鉛原子の総モル量を表す。]
で示される官能基は具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ベンジル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ジメチルフェニル基等を挙げることができる。更にこれらの炭化水素基中の1または2以上の水素原子がカルボキシル基、エステル基、ハロゲン基等に置換されていても良い。
そしてホスホン酸化合物の具体例としては、フェニルホスホン酸、メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、ノルマルプロピルホスホン酸、イソプロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、トリルホスホン酸、キシリルホスホン酸、ビフェニルホスホン酸、ナフチルホスホン酸、アントリルホスホン酸、2−カルボキシフェニルホスホン酸、3−カルボキシフェニルホスホン酸、4−カルボキシフェニルホスホン酸、2,3−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,4−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,5−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,6−ジカルボキシフェニルホスホン酸、3,4−ジカルボキシフェニルホスホン酸、3,5−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,3,4−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,3,5−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,3,6−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,4,5−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,4,6−トリカルボキシフェニルホスホン酸が例示されるが、中でもフェニルホスホン酸がもっとも好ましく用いられる。
またホスホン酸化合物のポリエステル中への添加時期は、上述のカルボン酸金属塩の添加後であれば任意の段階で添加してよい。ただしエステル交換反応では、前記一般式(I)で表されるカルボン酸金属塩がエステル交換触媒として働き、ホスホン酸化合物がエステル交換反応を阻害することがあるため、できるだけエステル交換反応が進捗する、すなわちエステル交換反応の反応率が上昇した段階で添加することが望ましい。ホスホン酸化合物はエステル交換反応によりテレフタル酸ジメチルを用いた場合のメタノールの溜出量が理論溜出量の80モル%を越えた時点で添加するのが好ましく、90モル%を越えた時点で添加するのがさらに好ましい。
さらに、ホスホン酸化合物はカルボン酸金属塩と反応して層状構造を有する粒子を形成するため、ホスホン酸化合物は、カルボン酸金属塩に対して数式(1)に示す比率で添加する必要がある。数式(1)のP/Mcが0.8未満では、金属化合物成分の濃度Mcが過剰となり、カルボン酸金属塩に含まれている過剰金属原子成分がポリエステルの熱分解反応を促進し、ポリエステル組成物の熱安定性を著しく損なうため好ましくない。一方、P/Mcが2.0を超えると、逆にホスホン酸化合物が過剰となり、過剰なホスホン酸化合物成分がポリエステルの重縮合反応を著しく阻害するため好ましくない。好ましくはP/Mcは0.9〜1.8、さらに好ましくは1.0〜1.5である。
なお前述のとおり、本発明において含有するホスホン酸化合物とマンガン、マグネシウム、コバルトおよび亜鉛よりなる群から選ばれる金属のカルボン酸金属塩は、本発明のポリエステル組成物の製造方法のように適切な化合物を適正な時期に添加を行うことにより、ポリエステルの重合反応中に特異的に層間隔が1〜100nmの微細な粒子を形成し、この粒子が本発明における優れた配向結晶抑制効果を発現せしめていると考えられている。ゆえに数式(1)でP/Mcとして示されるモル比率は、本発明のポリエステル組成物を製造・特定する際において非常に重要なファクター(因子)である。微細な粒子の好ましい層間隔は1.1〜50.0nmであり、より好ましい層間隔は1.2〜10.0nmであり、最も好ましい層間隔は1.3〜5.0nmである。層状構造は層間隔に対してほぼ直角方向に、層間隔の5倍以上の連続層が3層以上連なっている状態を表す。
本発明のポリエスエテルの製造方法においては、ポリエステルを構成する全繰り返し単位に対してTi金属原子として3〜30ミリモル%となるようにチタン化合物を添加することが必要であり、そのチタン化合物はポリエステル可溶性のチタン化合物であることが好ましい。このポリエステル可溶性のチタン元素を含むチタン化合物はポリエステル製造工程における触媒として添加されることが好ましく採用される。ここでポリエステル可溶性のチタン化合物とは、艶消し目的で添加される二酸化チタンのような無機のチタン化合物は含まれず、通常触媒として用いられている有機のチタン化合物を指す。なお、ポリエステル組成物に添加されるチタン化合物の量は、ポリエステルを構成する全繰り返し単位に対してTi金属原子として3〜30ミリモル%であることが必要であり、好ましくは4〜20ミリモル%、さらに好ましくは4〜15ミリモル%である。
ポリエステル可溶性のチタン元素の含有量がポリエステルを構成する全繰返し単位に対してTi金属として3ミリモル%未満の場合には、他の上記カルボン酸金属塩に含まれるマンガン原子、マグネシウム原子、コバルト原子および亜鉛原子といった金属成分、ホスホン酸成分との相互作用とあいまって本発明の効果を実現することができない。一方で30ミリモル%を超える場合には、熱劣化・熱分解が促進される傾向があり、加熱時、溶融時等のポリエステルの固有粘度低下が著しくなり好ましくない。またチタン化合物のポリエステル中への添加は、カルボン酸金属塩とホスホン酸化合物による層状構造を有する粒子の形成が阻害され、かつチタン化合物の触媒活性が失われてしまうため、カルボン酸金属塩およびホスホン酸化合物双方の添加が完了した後、少なくとも5分の間隔をあけた後に添加することが必要である。前述の通り本発明においては、カルボン酸金属塩とホスホン酸化合物により層状構造を有する粒子を形成するが、この時間の間隔が5分未満の場合、粒子の形成が不十分となり、本発明の効果を発現させることはできない。
ここで本発明のポリエステル組成物に含まれ得るポリエステル可溶性のチタン元素を含む有機チタン化合物としては、チタン錯体化合物であることが好ましく、より具体的には2〜10個の炭素原子を有するアルキル基を有するテトラアルコキシチタンまたはテトラフェノキシキシチタン、ヘキサアルキルジチタネート、または2〜10個の炭素原子を有するアルキル基を有するオクタアルキルトリチタネート等が挙げられる。テトラアルコキシチタンの具体的な化合物の例としては、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、またはテトラ−n−ブトキシチタンが挙げられる。他のチタン化合物としては、テトラフェノキシチタン、ヘキサブチルジチタネート、またはオクタブチルトリチタネート等が好ましく挙げることができる。
他のチタン錯体化合物として、乳酸チタン、酢酸チタン、テトラキスアセチルアセトナトチタン、テトラキス(2,4−ヘキサンジオナト)チタン、テトラキス(3,5−ヘプタンジオナト)チタン、ビスアセチルアセトナトジメトキシチタン、ビスアセチルアセトナトジエトキシチタン、ビスアセチルアセトナトビス(n−プロポキシ)チタン、ビスアセチルアセトナトジイソプロポキシチタン、ジアセチルアセトナトジブトキシチタン、チタニウムジヒドロキシビスグリコレート、チタニウムジヒドロキシビスラクテート、チタニウムジヒドロキシビス(2−ヒドロキシプロピオネート)、ジメトキシビス(トリエタノールアミナト)チタン、ジエトキシビス(トリエタノールアミナト)チタン、ジイソプロポキシビス(トリエタノールアミナト)チタン、ジノルマルプロポキシビス(トリエタノールアミナト)チタン、またはジブトキシビス(トリエタノールアミナト)チタンを好ましく挙げることができる。これらの化合物はポリエステル製造時の重合触媒として用いることができる。
さらに本発明に用いるポリエステル可溶性のチタン元素を含むチタン化合物としては、下記一般式(III)で表わされる化合物、または一般式(III)で表わされる化合物と下記一般式(IV)で表わされる芳香族多価カルボン酸もしくはその無水物とを反応させた生成物を用いることも好ましく挙げることができる。
[上記式(III)中、Rは、2〜10個の炭素原子を有するアルキル基またはフェニル基を表し、pは1〜3の整数を表す。]
[上記式(IV)中、nは2〜4の整数を表す。]
一般式(III)で表わされるテトラアルコキサイドチタンおよび/またはテトラフェノキサイドチタンとしては、Rがアルキル基および/またはフェニル基であれば特に限定されないが、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラメトキシチタン、テトラフェノキシチタンなどが好ましく用いられる。また、かかるチタン化合物と反応させる一般式(IV)で表される芳香族多価カルボン酸またはその無水物としては、フタル酸、トリメリット酸、ヘミメリット酸、ピロメリット酸またはこれらの酸無水物が好ましく用いられる。上記チタン化合物と芳香族多価カルボン酸またはその酸無水物とを反応させる場合には、溶媒に芳香族多価カルボン酸またはその無水物の一部または全部とを溶解し、これにチタン化合物を滴下し、0〜200℃の温度で30分以上反応させれば良い。このようにして得られた反応生成物も同様にポリエステル製造時の重合触媒として用いることができる。
本発明においてポリエステルを製造する際に用いる重合触媒は、上記のようなチタン化合物を用いる他、更にゲルマニウム化合物およびアルミニウム化合物のいずれか1種以上を用いることも好ましい。ここで、ゲルマニウム化合物、アルミニウム化合物としては特に限定されず、ポリエステルの重合触媒として一般的なものが挙げられる。例えば二酸化ゲルマニウムまたはゲルマニウムテトラアルコキシド、アルミニウムアセチルアセトナートなどが挙げられ、これらの中でも二酸化ゲルマニウム、アルミニウムアセチルアセトナート等が特に好ましく選定される。
一方、ポリエステルの重合触媒としては一般的にアンチモン化合物が使用されているが、本発明のポリエステルの製造方法においては、アンチモン化合物は使用していない。ポリエステル組成物中にアンチモン元素を含むと、特に製糸工程においてアンチモン化合物が口金周辺に異物となって付着し、長期間の連続成形性に悪影響を与える為好ましくない。
本発明のポリエステルの製造においては、物性・特性に影響が出ない範囲内、且つポリエステルを構成する全繰り返し単位の10モル%以下の範囲で他の成分を共重合されていても良い。その共重合成分としては、一般にポリエステルで用いられているジカルボン酸成分、ジオール成分(グリコール成分)、ヒドロキシカルボン酸成分を挙げることができる。具体例としては、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、イソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、4−ヒドロキシ安息香酸、4−ヒドロキシメチル安息香酸が好ましく例示される。
本発明のポリエステルの製造においては、必要に応じて少量の添加剤、例えば滑剤、酸化防止剤、固相重合促進剤、整色剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、遮光剤または艶消剤等を添加してもよい。これらの内で熱安定剤としてのリン酸系化合物、艶消剤としての酸化チタンなどは好ましく添加され、特にチタン化合物を重合触媒として用いた場合、得られるポリエステル組成物の色相を優れたものにする為には、ホスホン酸化合物のほかにリン酸エステル等のリン化合物をさらに添加してもよい。
また本発明の製造方法で得られたポリエステルは、溶融温度290℃、紡糸速度4000m/分の条件で溶融紡糸した際に得られる繊維の引張強度、乾熱収縮率、複屈折率が高いという特徴を有している。これらはすなわち、紡糸時の配向結晶化が抑制され、より配向が進んだ高強力糸が得られることを示している。
本発明のポリエステル繊維を溶融紡糸により製造する時の製造方法としては特に限定はなく、従来公知の溶融紡糸方法が用いられる。例えば乾燥したポリエステル組成物を270℃〜300℃の範囲で溶融紡糸して製造することが好ましく、溶融紡糸の速度は400〜9000m/分で紡糸することができ、必要によって延伸工程などを経て繊維の強度を十分なものに高めることが可能である。しかしながら、本発明の効果をより高く発現させる為には紡糸速度は3000〜9000m/分、更に好ましくは3500〜8000m/分の範囲で溶融紡糸することが好ましく選択される。
また紡糸時に使用する口金の形状についても特に制限は無く、円形、異形、中実または中空などのいずれも採用することが出来る。更に本発明のポリエステル繊維は風合を高める為に、アルカリ減量処理も好ましく実施される。
本発明をさらに下記実施例により具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例により限定されるものではない。また各種特性は下記の方法により測定した。
(ア)固有粘度(IV):
ポリエステル組成物チップを100℃、60分間でオルトクロロフェノールに溶解した希薄溶液を、35℃でウベローデ粘度計を用いて測定した値から求めた。
(イ)ポリエステル組成物中のリンおよび金属元素含有量:
ポリエステル組成物中のリン金属元素量、金属元素量は粒状のポリエステル組成物サンプルをスチール板上で加熱溶融した後、圧縮プレス機で平坦面を有する試験成形体を作成した。この試験成形体を使って蛍光X線装置(理学電機工業株式会社製3270E型)を用いて求めた。触媒としてチタン化合物を使用したものについては、サンプルをオルトクロロフェノールに溶解した後、0.5規定塩酸で抽出操作を行った。この抽出液について日立製作所製Z−8100型原子吸光光度計を用いて定量を行った。ここで0.5規定塩酸抽出後の抽出液中に酸化チタンの分散が確認された場合は遠心分離機で酸化チタン粒子を沈降させた。次に傾斜法により上澄み液のみを回収して、同様の操作を行った。これらの操作によりサンプル中に酸化チタンを含有していても触媒として添加しているポリエステルに可溶性のチタン元素の定量が可能となる。また含有量が1ppm未満の測定限界未満であった場合には、「ND」と表記した。
(ウ)繊維の引張強度、繊度:
JIS L1013記載の方法に準拠して測定を行った。
(エ)繊維の乾熱収縮率:
JIS L1013 8.18.2記載の測定方法(A法)において、150℃で測定を行った。乾熱収縮率は、繊維の結晶化度の指標として用いられ、乾熱収縮率が低いほど繊維の結晶化が進んでいることを示す。
(オ)繊維の複屈折率:
光学顕微鏡とコンペンセーターを用いて、繊維の表面に観察される偏光のリターデーションから求めた。複屈折率は、繊維の配向の指標値として用いられ、複屈折の値が大きいほど配向が進んでいることを示す。
(カ)紡糸口金に発生する付着物層の高さ:
ポリエステルチップを290℃で溶融し、孔径0.15mmφ、孔数12個の紡糸口金から吐出し、600m/分で2日間紡糸し、口金の吐出口外縁に発生する付着物の層の高さを測定した。この付着物層の高さが大きいほど吐出されたポリエステル組成物の溶融物のフィラメント状流にベンディングが発生しやすく、このポリエステルの成形性は低くなる。すなわち、紡糸口金に発生する付着物層の高さは、当該ポリエステルの成形性の指標である。
(キ)層状構造を有する粒子の解析:
層状構造を有する粒子の有無等は以下の手法に従って行った。ポリエステルチップまたは繊維サンプルから常法により50〜100nmの超薄切片を作製し、透過型電子顕微鏡(FEI社製 TECNAI G2)加速電圧120kVで観察した。得られた画像から層状構造を有する粒子の層間隔を算出した。
(ク)ポリエステルの繰り返し単位、含有化合物の化学構造:
ポリエステル組成物サンプルを重水素化トリフルオロ酢酸/重水素化クロロホルム=1/1混合溶媒に溶解後、沈殿を濾過により除き、得られた溶液を日本電子(株)製JEOL A−600 超伝導FT−NMRを用いて核磁気共鳴スペクトル(H−NMR)を測定した。そのスペクトルパターンから常法に従ってポリエステルの繰り返し単位の化学構造を同定した。またポリエステル組成物の溶液にメタノールを添加しポリエステル成分を沈殿させた後、上澄み液を濃縮して核磁気共鳴スペクトル分析を行うことによりチタン化合物、ホスホン酸化合物の化学構造を同定した。
[参考例]チタン触媒Aの合成
無水トリメリット酸のエチレングリコール溶液(0.2重量%)にテトラブトキシチタンを無水トリメリット酸に対して1/2モル添加し、空気中常圧下で80℃に保持して60分間反応せしめた。その後常温に冷却し、10倍量のアセトンによって生成触媒を再結晶化させた。析出物をろ紙によって濾過し、100℃で2時間乾燥せしめ、目的の化合物を得た。得られた化合物のチタン含有量は11.5重量%であった。これをチタン触媒Aとする。
[実施例1]
・ポリエステルポリマーの製造
エステル交換反応槽にテレフタル酸ジメチル97重量部とエチレングリコール60重量部とを仕込んだ後、酢酸マグネシウム・4水和物の4%エチレングリコ−ル溶液0.80質量部(ポリエステルを構成する全繰返し単位に対してマグネシウム原子として30ミリモル%)を添加した。温度を240℃まで徐々に上げながら常圧下で120分間、発生するメタノールを溜去しながらエステル交換反応を行い、オリゴマーを得た。このときのメタノール溜出量は32重量部であった(理論溜出量に対して100%)。得られたオリゴマーに、フェニルホスホン酸の10%エチレングリコール溶液0.285質量部(全酸成分に対してフェニルホスホン酸として36ミリモル%)を添加した。さらにその10分後に参考例で調製したチタン触媒A0.050質量部(ポリエステルを構成する全繰返し単位に対してTi金属原子として12ミリモル%に相当する)、整色剤としてC.I.Solvent Blue45を0.0006質量部、C.I.Solvent Violet36を0.0003質量部を添加した後、重縮合反応釜に送液した。その後反応容器内温を285℃まで昇温し、30Pa以下の高真空で重縮合反応を行い、固有粘度0.64dL/gであるポリエステル組成物を得た。さらに常法に従いチップ化した。結果を表1、表2に示した。
またポリエステルチップサンプルを薄片状にカットしてサンプリングし、透過型電子顕微鏡観察(TEM観察)により、層間隔が1.9nmの粒子が含まれていることが確認できた。
・ポリエステル繊維の製造
チップを160℃、4時間乾燥後、紡糸温度290℃、巻取速度4000m/分で100dtex/36filの繊維を得た。結果を表1、表2に示した。
[実施例2〜9,比較例1〜4]
実施例1において、酢酸マグネシウム、フェニルホスホン酸の添加量等を表1記載の量に変更したこと以外は実施例1と同様に実施した。結果を表1、表2に示した。実施例9においては、重合触媒として参考例で調整したチタン触媒の代わりにテトラブトキシチタネートをTi金属原子の量としては同量になるように用いた。また実施例2〜9において実施例1と同様な操作にてTEM観察を行った結果、実施例1と同様に、層間隔が1.9nmの粒子がいずれの実施例にも含まれていることが確認できた。
[比較例5]
実施例4において、フェニルホスホン酸のエチレングリコール溶液をトリメチルホスフェート0.059質量部に変更した以外は実施例4と同様に実施した。結果を表1、表2に示した。
[比較例6]
実施例4において、フェニルホスホン酸のエチレングリコール溶液をリン酸0.041質量部に変更した以外は実施例4と同様に実施した。結果を表1、表2に示した。
[実施例10,11,12,比較例7]
実施例4において、酢酸マグネシウム・4水和物の4%エチレングリコール溶液を、それぞれ酢酸マンガン・4水和物の2.5%エチレングリコール溶液1.47質量部、酢酸亜鉛・2水和物の1%エチレングリコール溶液3.29質量部、酢酸コバルト・4水和物の2%エチレングリコール溶液1.87質量部、酢酸カルシウム・1水和物の4%エチレングリコール溶液1.54質量部に変えた以外は実施例4と同様に実施した。結果を表1、表2に示した。また実施例10〜12において実施例1と同様な操作にてTEM観察を行った結果、実施例1と同様に、いずれの例も層間隔が1.9nmの粒子が含まれていることが確認できた。
[実施例13、比較例8]
フェニルホスホン酸の10%エチレングリコール溶液添加完了後20分後(実施例13とする。)又は3分後(比較例8とする。)に参考例で調製したチタン触媒Aを添加した以外は、実施例4と同様に実施した。結果を表1、表2に示した。このうち実施例13では層間隔が1.9nmの粒子が含まれていることが確認できた。
[比較例9]
参考例で調製したチタン触媒Aにかえて三酸化二アンチモンの1%エチレングリコール溶液3.35質量部を用いた以外は、実施例4と同様に実施した。結果を表1、表2に示した。
表1からも明らかなように、本発明の製造方法によって良好な性能を有するポリエステルが得られたが、本発明の範囲を外れるものは得られた糸の特性(固有粘度、強度、収縮率、複屈折率、付着物高さ)が不十分であった。更に本発明の請求項を満たすものは、口金異物の堆積が少ないために長期間安定した製糸が可能であっただけでなく、4,000m/分の紡糸速度においても、配向度は高く維持され、かつ乾熱収縮率が高い、すなわち配向結晶化が抑制されることが示される。
この特性をさらに明確に説明するために、本発明の実施例4と比較例5について、図1には紡糸速度に対する複屈折すなわち配向度の変化を、図2には紡糸速度に対する乾熱収縮率すなわち結晶化度の変化を示した。このように、実施例4は比較例5に比して複屈折は高く、乾熱収縮率は高く維持されており、配向結晶化が抑制されていることがわかる。
その結果、本発明のポリエステル組成物を用いて得られた繊維はその後の延伸加工、仮撚加工、複合仮撚加工、合撚糸、カバリング糸等の混繊糸、複合糸の製造にも適している。
本発明によれば、チタン触媒を用いて得られたポリエステルについて、通常POYを得る条件で紡糸を行っても、繊維強度がありながら配向結晶が抑制されたポリエステル繊維を得ることができる。その結果その後の種々の糸加工操作により、高品質の繊維を安定して生産することができる。
本発明の効果の発現メカニズムは、まだ詳細には明らかになっていないが、本発明で得られるポリエステル組成物を透過型電子顕微鏡で観察すると、図3に示すような、従来のポリエステル組成物にはみられない、積層状の構造を有する数十ナノメートルの微細な層状構造を有する粒子が存在していることがわかっている。この積層粒子が本発明の特異な機能を発現していると考えられる。またこの粒子はポリエステル樹脂の製造時に反応系(反応器)内で生成しており、これが粒子の微細化に寄与していると考えられる。つまり、上述した特定の金属原子と特定のホスホン酸化合物によってのみ特異な層状の構造をもった粒子を形成し、かつその粒子はポリエステルの反応時に個々に添加された該金属原子とホスホン酸化合物が適切な条件下で徐々に反応することによってはじめて均一な粒子を形成していくと考えられるである。本発明は特定の化合物によってのみ得られる微粒子を含有したポリエステル組成物によって、従来技術では得ることのできなかった新たな特性を発現させることができたものと考えられる。

Claims (3)

  1. テレフタル酸ジメチル成分と、エチレングリコール成分をエステル交換反応槽にてエステル交換反応を行いテレフタル酸のエチレングリコールエステルおよび/またはオリゴマーを生成する工程と、得られた生成物を重縮合反応槽にて重縮合反応を行う工程を有する製造工程にてポリエステルを製造するに際して、
    該エステル交換反応槽に該テレフタル酸ジメチル成分と該エチレングリコールを仕込んだ後エステル交換反応前、もしくはエステル交換反応途中に、エステル交換反応槽に下記一般式(I)で表されるカルボン酸金属塩の1種または2種以上の混合物を、ポリエステルを構成する全繰返し単位に対して金属原子換算で10〜1000ミリモル%添加し、
    (R−COO)−M (I)
    [上記式(I)中、Rは1〜10個の炭素原子を有するアルキル基もしくは6〜10個の炭素原子を有するアリール基を表し、Mはマンガン、マグネシウム、コバルトおよび亜鉛よりなる群から選ばれる金属原子を表す。]
    該カルボン酸金属塩の添加後に、下記一般式(II)で表されるホスホン酸化合物を下記数式(1)を満たす範囲でエステル交換反応槽に添加してポリエステル内部に層状の粒子を形成させるとともに、
    [上記式(II)中、Rは未置換のもしくは置換された6〜20個の炭素原子を有するアリール基、または未置換のもしくは置換された1〜20個の炭素原子を有するアルキル基を表す。]
    0.8≦P/Mc≦2.0 ・・・・・(1)
    [上記数式(1)中、Pはポリエステル組成物中のポリエステルを構成する全繰返し単位に対する該ホスホン酸化合物の総モル量、Mcはポリエステル組成物中のポリエステルを構成する全繰返し単位に対するマンガン原子、マグネシウム原子、コバルト原子および亜鉛原子の総モル量を表す。]
    該ホスホン酸化合物の添加が完了した後、少なくとも5分以上経過した後に、重縮合触媒としてチタン化合物を、ポリエステルを構成する全繰返し単位に対してチタン原子として3〜30ミリモル%になるようにエステル交換反応槽または該重縮合反応槽へ添加することを特徴とする、層間隔が1〜100nmである層状構造を有する粒子を含むポリエステル組成物の製造方法。
  2. ホスホン酸化合物がフェニルホスホン酸である請求項1に記載のポリエステル組成物の製造方法。
  3. チタン化合物が、下記一般式(III)で表わされる化合物、または下記一般式(III)で表わされる化合物と下記一般式(IV)で表わされる芳香族多価カルボン酸もしくは酸無水物とを反応させた生成物である請求項1または2に記載のポリエステル組成物の製造方法。
    [上記式(III)中、Rは、2〜10個の炭素原子を有するアルキル基またはフェニル基を表し、pは1〜3の整数を表す。]
    [上記式(IV)中、nは2〜4の整数を表す。]
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