JP4080221B2 - ポリエステル組成物及びそれよりなる繊維 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高い吸水性と熱安定性とを兼ね備えたポリエステル組成物及びそれよりなる繊維に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートは、多くの優れた特性を有しているため、各種衣料用途等に広く利用されている。しかし、綿、絹、羊毛のような天然繊維、レーヨン、アセテートのような半合成繊維に比べると、吸水性、吸汗性が低いという機能面での欠点を有している。この課題を改良する目的で、有機スルホン酸金属塩を添加したポリエステルからなる中空繊維をアルカリ水溶液で処理することによる、一部が中空部まで連通している微細孔を繊維表面に有する吸水性ポリエステル繊維が提案(特公昭61−60188号公報、特公昭62−44065号公報等)されている。
【0003】
しかしながら、繊維表面を微多孔化した中空ポリエステル繊維は、毛細管現象を利用した吸水機構であるが故に、天然繊維や半合成繊維に比べると吸水性が低く、必ずしも満足すべき水準には到達していなかった。
【0004】
一方、有機スルホン酸金属塩、ポリアルキレングリコールなどの親水性成分をポリエステルに共重合させることにより、吸水性能を高めたポリエステル繊維(特開平7−150468号公報)が提案されている。この方法では、吸水性能が大幅に改善されているが、有機スルホン酸金属塩、ポリアルキレングリコールの共重合ポリエステルは熱安定性が低いといった課題を抱えていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、高い吸水性と熱安定性を兼ね備えたポリエステル組成物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記した従来技術に鑑み、鋭意検討を重ねた結果本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の目的は、
アルキレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とし、アルキレンテレフタレート単位のグリコール成分がエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコールであり、下記式(I)で示される有機スルホン酸金属塩でありナトリウム塩である成分(A)と下記式(II)で示されるポリアルキレングリコール(B)とが共重合されたポリエステルに、下記式(III)で示される有機カルボン酸金属塩(C)が配合されてなる、ポリエステル組成物によって達成することができる。
【0008】
【化4】
【0009】
【化5】
【0010】
【化6】
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明において、後述する成分(A)及び成分(B)が共重合されるポリエステルは、アルキレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とするポリエステルである。ここで言う「主たる」とはアルキレンテレフタレート単位以外の繰り返し単位を、ポリエステルを構成する全繰り返し単位を基準として、20モル%以下、好ましくは15モル%以下、特に好ましくは10モル%以下の共重合成分を含有してもよいことを意味する。なお、アルキレンテレフタレート単位のグリコール成分としては、炭素数2〜4のアルキレングリコールが好ましく、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコールなどが必要とされる。
【0013】
共重合し得るテレフタル酸以外の二官能性カルボン酸成分としては、例えばイソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、β−ヒドロキシエトキシ安息香酸、P−オキシ安息香酸、アジピン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸のような芳香族、脂環族、脂肪族の二官能性カルボン酸を挙げることができる。
【0014】
また、共重合し得るアルキレングリコール以外のジオール成分としては、例えば、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールSのような脂肪族、脂環族、芳香族のジオール化合物を挙げることができる。
【0015】
さらに、本発明の目的の達成が実質的に損なわれない範囲内であれば、トリメリット酸、ピロメリット酸のような三官能性以上のポリカルボン酸、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールのような三官能性以上のポリオールを共重合成分として用いてもよい。
【0016】
上記ポリエステルに共重合される成分(A)は前記式(I)で示される有機スルホン酸金属塩であり、式中、R1は芳香族炭化水素基又は脂肪族炭化水素基、X1はエステル形成性の官能基、X2はエステル形成性官能基又は水素原子である。ここでいうエステル形成性の官能基とは、反応してエステル結合を介してポリエステルに結合され得る官能基であり、一般にはヒドロキシル基、カルボキシル基又はそれらのエステルである。Mは、Naなどのアルカリ金属であり、なかでもNaであることが必要である。このような有機スルホン酸金属塩は、1種でも2種以上の混合物としても使用でき、好ましい具体例としては、5−ナトリムスルホイソフタル酸ジメチル、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ビス(β−ヒドロキシエチル)エステル等が必要とされる。
【0017】
有機スルホン酸金属塩のポリエステルへの共重合量は、ポリエステルを構成する全ジカルボン酸成分を基準として、0.1〜15モル%であることが好ましく、特に0.1〜10モル%であることが好ましい。
【0018】
次に、上記式(II)で示される成分(B)としてのポリアルキレングリコールは、ポリエステルの吸水性能を向上させる目的で共重合させるが、ポリエステルを構成する全ジカルボン酸成分を基準として、0.1〜20重量%共重合することが好ましく、特に好ましくは0.2〜15重量%である。
【0019】
かかるポリアルキレングリコールとしては、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール(分子量1000、2000、4000、8000、20000、50000)などを例示することができ、特に分子量が1000〜8000のポリエチレングリコールが好ましい。
【0020】
次に、上記共重合ポリエステル中に配合される前記式(III)で示される成分(C)としての有機カルボン酸金属塩としては、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸マグネシウム、安息香酸リチウム、安息香酸亜鉛、トルイル酸ナトリウム、トルイル酸カリウム、トルイル酸リチウムなどが挙げられる。このうち、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸マグネシウムが特に好ましく、該有機カルボン酸金属塩は、1種でも2種以上併用してもよい。また、該有機カルボン酸金属塩の配合量は、ポリエステル組成物中に0.01〜5重量%占めるように配合することが好ましく、さらに好ましくは0.05〜3重量%である。
【0021】
過少の配合では、ポリエステル組成物の結晶性促進効果や吸水性能改善効果が発現しない。一方、過剰の配合は製糸時のパック圧力上昇及びポリマーの強度低下という問題が生ずる。
【0022】
本発明のポリエステル組成物は、その固有粘度は通常0.76〜1.0の範囲が必要である。固有粘度が0.76未満であると、衝撃強度が低下したり、延伸成形性が低下したりするなどの物性低下が起こりやすく、一方、固有粘度が1.0を越えると、生産性が悪化するとともに、延伸などの成形性が低下しやすい。
【0023】
なお、本発明のポリエステル組成物は、上述の3つの成分割合を本発明の範囲内で適宜変更すると共に、固有粘度を調整することにより、250℃、剪断速度1000sec-1における溶融粘度を100〜500Pa・Sと設定することが好ましい。上記の範囲内にあるときには、該組成物を溶融紡糸する際の曳糸性と連続製糸安定性とを高い水準にて両立することができる。
【0024】
次に、本発明のポリエステル組成物の製造方法につき、エチレンテレフタレート単位を主たる繰返し単位とするポリエステルを例として、以下に説明する。
先ず、テレフタル酸ジメチルとエチレングリコールとを、エステル交換触媒の存在下のエステル交換反応させるか、テレフタル酸とエチレングリコールとを直接エステル化反応させるか又はテレフタル酸とエチレンオキサイドとを反応させるかして、ビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレ−ト及び/又はそのオリゴマ−を形成させ、その後、重縮合触媒及び安定剤の存在下で高温減圧下に溶融重縮合を行って、ポリエチレンテレフタレートを得るにあたり、下記式(I)で示される有機スルホン酸金属塩でありナトリウム塩である成分、下記式(II)及び(III)で示される成分をポリエステルの合成が完了する以前の任意の段階で反応系内に添加することによって達成される。好ましくは、下記式(I)で示される有機スルホン酸金属塩でありナトリウム塩である成分及び(II)成分はビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレ−ト及び/又はそのオリゴマ−を形成させる前の段階、(III)成分は重縮合反応中に添加するのが好ましい。
【0025】
【化7】
【0026】
【化8】
【0027】
【化9】
【0028】
これらの反応には必要に応じて任意の触媒を使用することができるが、なかでもエステル交換反応させる際に用いる触媒としては、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属塩、チタン、亜鉛、マンガン等の金属化合物を使用するのが好ましく、重縮合触媒としては、ゲルマニウム化合物、アンチモン化合物、チタン化合物、コバルト化合物、錫化合物を使用するのが好ましい。
【0029】
触媒の使用量は、エステル交換反応、重縮合反応を進行させるために必要な量であるならば特に限定されるものではなく、また、複数の触媒を併用することも可能である。
【0030】
また、安定剤としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート等のリン酸エステル類、トリフェニルホスファイト、トリスドデシルホスファイト等の亜リン酸エステル類、メチルアシッドホスフェート、ジブチルホスフェート、モノブチルホスフェート酸性リン酸エステル、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ポリリン酸等のリン化合物を用いることが好ましい。
【0031】
エステル交換反応触媒の供給は、原料調製時の他、エステル交換反応の初期の段階において行うことができる。また、安定剤の供給は、重縮合反応初期までに行うことができるが、エステル交換反応終了時に添加することが好ましい。さらに、重縮合触媒は重縮合反応工程の初期までに供給することができる。
【0032】
エステル交換反応時の反応温度は、通常200〜260℃であり、反応圧力は常圧〜0.3MPaである。また、重縮合時の反応温度は、通常250〜300℃であり、反応圧力は通常60〜0.1kPaである。この様なエステル交換反応及び重縮合反応は、一段で行っても、複数段階に分けて行ってもよい。
【0033】
得られたポリエステル組成物は常法によりチップ化される。該チップの平均粒径は、通常2.0〜5.5mm、好ましくは2.2〜4.0mmの範囲とされる。
【0034】
本発明のポリエステル組成物は、幅広い成形条件下で安定して成形することができ、通常の溶融紡糸方法を適用することができる。繊維の横断面形状は丸断面に限定されるものでは無く、扁平形状、三角断面及び多葉断面形状などの異形断面としてもよく、さらに、中空部を設けても何等問題は無い。本発明のポリエステル組成物を溶融紡糸する際の温度は、200〜270℃、好ましくは220〜250℃が適当である。ここで200℃未満では温度が低すぎて安定した溶融状態となり難く、また270℃を越えるとポリエステル組成物の熱分解が生じ、また紡出糸の冷却が不足するために、単糸同士での融着が発生する等の問題が発生する。次いで、紡出糸は所定の速度で引き取った後、一旦巻き取り、得られた未延伸糸を別途延伸機で延伸してもよいし、紡出糸を引き取った後、巻き取ること無く連続して延伸を行い巻き上げる直接紡糸延伸法を適用してもよい。直接紡糸延伸法としては、例えば紡出糸を1000〜4000m/分の速度で引き取り、続いて1500〜5000m/分の速度で延伸・熱セットする方法が挙げられる。ここで熱セットのローラー温度としては130〜170℃が好ましく、この範囲にあると、熱セット性が十分であるとともに繊維が溶融切断することもない。また、5000m/分以上の高速で紡糸し、用途によっては延伸工程を省略する方法などの製糸条件も採用することができ、いずれの方法であっても安定して製糸することができ、上述の方法に従って得られる繊維は、吸水率が30〜500%、35℃95%RH環境下24時間保持後の吸湿率が12〜50%の範囲にある。
【0035】
このようにして得られた本発明の繊維の糸条形態は、フィラメント、ステープルのいずれでもよく、総糸繊度、単糸繊度、撚数、交絡数などは繊維の使用目的に応じて適宜設定することができる。
【0036】
更に、本発明の繊維を布帛となすにあたっては、本発明の繊維100%使いとしてもよく、他の繊維と併せて使用してもよい。ここで、他繊維と併用するにあたって、複合糸として使う場合には、混繊糸、複合仮撚糸とすればよく、このような併用できる繊維としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、アクリル、パラ型又はメタ型アラミド、およびこれらの改質及び/又は複合繊維、さらには天然繊維、再生繊維、半合成繊維などから自由に選択して用いることが出来る。
【0037】
なお、本発明のポリエステル組成物をフィルムやシートに成形してもよく、製膜後一方向のみに張力をかけて異方性を持たせる方法、同時に又は任意の順序で二方向に延伸する方法、二段以上の多段延伸する方法などに所望の条件を何等支障なく採用することができる。
【0038】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれによって何等限定を受けるものでは無い。なお、例中の特性は下記の方法で測定した。
【0039】
(1)固有粘度(以下、IVと略記する):
ポリマーを一定量計量し、35℃のo−クロロフェノールに0.012g/mlの濃度に溶解してから、常法に従って求めた。
【0040】
(2)Col−b:
160℃、60分間、乾燥機中で乾熱処理したポリマーを、ミノルタ(株)社製CR−200型色彩色差計を用いて求めた。
【0041】
(3)末端カルボキシル基濃度:
Makromol.chem.,26,226(1958)記載の方法に準拠して求めた。
【0042】
(4)ジエチレングリコール(以下、DEGと略記する)含有量:
サンプルをヒドラジンにて分解し、ガスクロマトグラフィーにて求めた。
【0043】
(5)引張伸度、引張強度:
JIS L1070記載の方法に準拠して求めた。
【0044】
(6)熱安定性(乾熱収縮率):
サンプル原糸を筒状の編物にした後、120℃で10分間加熱乾燥し、筒編布の収縮率を求めて、熱安定性の指標とした。
【0045】
(7)吸水速度:
サンプル原糸を筒状の編物にした後、常法に従って精練、プリセットを施し、1%水酸化ナトリウム水溶液を用いて120℃で減量処理を実施した。このようにして得られた筒編地を105℃で2時間乾燥した後、水吸い上げ法により吸水性能を評価した。
【0046】
(8)吸水率:
サンプル筒編地を105℃で2時間乾燥した後、水中に1時間浸漬し、家庭用電気洗濯機の脱水機で5分間脱水した。乾燥後の筒編地と脱水後の筒編地の重量より、下記式に従って求めた。
【0047】
【数1】
吸水率(%)=(脱水後筒編地重量−乾燥後筒編地重量)/乾燥後筒編地重量
【0048】
(9)吸湿率:
サンプル筒編地を105℃で2時間乾燥した後、35℃95%RHの環境に保ったデシケーター中に24時間放置した。放置前後の筒編地の重量より、下記式に従って求めた。
【0049】
【数2】
吸湿率(%)=(放置後筒編地重量−放置前筒編地重量)/放置前筒編地重量
【0050】
(10)溶融粘度:
定荷重押出し形 細管式レオメータ フローテスター((株)島津製作所社製CFT−500D 使用ダイ直径0.5mm、ダイ長さ1mm)を用いて、温度250℃で試験圧力0.98MPa、1.96MPa、2.94MPaでの溶融粘度を測定し、剪断速度に対する溶融粘度をプロットした。このプロットから剪断速度に対する溶融粘度の近似式を算出し、剪断速度1000sec-1における溶融粘度を算出した近似式から求めた。
【0051】
[参考例1]
テレフタル酸ジメチル100重量部、エチレングリコ−ル64重量部、5−ナトリウムスルホイソフタル酸10重量部(成分(A))及びポリエチレングリコール(分子量:4000)5重量部(成分(B))を、エステル交換反応触媒として酢酸マンガン4水和塩を用い、副生するメタノールを系外に留去しつつ、エステル交換反応を実施する。
【0052】
さらに、重合触媒として二酸化ゲルマニウムを添加したのちに、285℃まで加熱昇温しながらエステル交換反応させ、メタノールの留去がほぼ終了した段階で、安定剤として正リン酸、結晶化促進剤として安息香酸ナトリウム1重量%(成分(C))を添加して、エステル交換反応を終了させた。
【0053】
次いで、反応生成物を高温高真空下で重縮合反応させて、固有粘度0.40、Col−b値17.8、末端カルボキシル基濃度38eq/ton、DEG3.2wt%、溶融粘度140Pa・Sの改質ポリエチレンテレフタレ−ト組成物を得た。
【0054】
得られたポリエチレンテレフタレ−トを乾燥機にて160℃で5時間乾燥させた後、24ホールの口金を装備した溶融紡糸装置にて、ポリマー温度280℃、吐出速度400m/分で溶融紡糸を行い、引き続いて、加熱ローラーで110℃、プレートヒーターで160℃に予熱し、小型延伸機にて延伸倍率3.4倍で延伸して、93dtex/24フィラメントの延伸糸を得た。
【0055】
得られた延伸糸を筒編み布となしたところ、120℃における乾熱収縮率は20%であり、熱安定性は良好であった。また、延伸糸の筒編み布の吸水速度は28mm/10分、吸湿率は1.7%、吸水率0.6%であり、吸水性、吸湿性ともに良好なものであった。
【0056】
[参考例2]
参考例1において、5−ナトリウムスルホイソフタル酸の添加量を10重量部から5重量部に変更したこと以外は同様の操作を行ったところ、固有粘度0.54、Col−b値16.9、末端カルボキシル基濃度29eq/ton、DEG2.7wt%、溶融粘度135Pa・Sの改質ポリエチレンテレフタレ−ト組成物を得た。
【0057】
参考例1と同様に紡糸、延伸して得られた延伸糸を筒編みとしたところ乾熱収縮率は23%で、熱安定性は良好であった。また、吸水速度は75mm/10分、吸水率は0.5%、吸湿率は1.5%であり、吸水性吸湿性ともに良好なものであった。
【0058】
[比較例1]
参考例1において、ポリエチレングリコールを添加しなかったこと以外は同様の操作を行ったところ、固有粘度0.33、Col−b値17.7、末端カルボキシル基濃度39eq/ton、DEG3.2wt%、溶融粘度155Pa・Sの改質エチレンテレフタレ−ト組成物を得た。
【0059】
参考例1と同様に紡糸、延伸して得られた延伸糸を筒編みとしたところ、120℃における乾熱収縮率は45%で、熱安定性は不十分であった。また、筒編み布の吸水速度は17mm/10分、吸水率は0.6%、吸湿率は1.7%であり、必ずしも十分ではなかった。
【0060】
[比較例2]
参考例2において、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウムを添加しなかったこと以外は同様の操作を行ったところ、固有粘度0.43、Col−b値5.0、末端カルボキシル基濃度37eq/ton、DEG4.0wt%、溶融粘度150Pa・Sの改質エチレンテレフタレ−トを得た。
【0061】
参考例1と同様に紡糸、延伸して得られた延伸糸を筒編みとなしたところ、120℃における乾熱収縮率は78%で、熱安定性は不十分であった。また、筒編み布の吸水速度は15mm/10分であり、吸水率は0.4%、吸湿率は1.5%であり、必ずしも十分ではなかった。
【0062】
[実施例3]
テレフタル酸ジメチル90重量部、テトラメチレングリコール68重量部、エチレングリコ−ル20重量部、5−ナトリウムスルホイソフタル酸16重量部(成分(A))及びポリエチレングリコール(分子量:4000)120重量部(成分(B))を、エステル交換反応触媒として酢酸マンガン4水和塩を用い、副生するメタノールを系外に留去しつつ、エステル交換反応を実施する。
【0063】
さらに、重合触媒として二酸化ゲルマニウムを添加したのちに、285℃まで加熱昇温しながらエステル交換反応させ、メタノールの留去がほぼ終了した段階で、安定剤として正リン酸、結晶化促進剤として安息香酸ナトリウム1重量%(成分(C))を添加して、エステル交換反応を終了させた。
【0064】
次いで、反応生成物を高温高真空下で重縮合反応させて、固有粘度0.82、Col−b値4.5、末端カルボキシル基濃度45eq/ton、溶融粘度180Pa・Sの改質ポリエチレンテレフタレ−ト組成物を得た。
【0065】
得られた改質ポリエチレンテレフタレ−トを乾燥機にて160℃で5時間乾燥させた後、24ホールの口金を装備した溶融紡糸装置にて、紡糸温度230℃、紡糸速度3000m/分の条件で溶融紡糸した後、冷却固化、油剤付与し、引き取りローラーを介して引き取って、135dtex/36フィラメントの繊維を安定して得た。得られた繊維の筒編地の吸水速度は75mm/10分、吸水率は68%、吸湿率は14%であり、吸水性吸湿性ともに良好なものであった。
【0066】
[実施例4]
実施例3において、5−ナトリムスルホイソフタル酸の量を16重量部から代えて7重量部としたこと以外は同様の操作を行ったところ、固有粘度0.76、Col−b値5.5、末端カルボキシル基濃度35eq/ton、溶融粘度140Pa・Sの改質ポリエチレンテレフタレ−ト組成物を得た。また、筒編地の吸水速度は70mm/10分、吸水率は59%、吸湿率は12%であり、吸水性吸湿性ともに良好なものであった。
【0067】
【発明の効果】
本発明によれば、高い吸水性と熱安定性とを兼ね備えたポリエステル組成物を提供することができ、さらに、該組成物を溶融紡糸することによって、高い吸水性と吸湿性とを有する繊維を提供することができる。
Claims (6)
- 有機スルホン酸金属塩の共重合量が、ポリエステルを構成する全ジカルボン酸成分を基準として、0.1〜15.0モル%である、請求項1記載のポリエステル組成物。
- ポリアルキレングリコールの共重合量が、ポリエステルを構成する全ジカルボン酸成分を基準として、0.1〜20重量%である、請求項1記載のポリエステル組成物。
- 有機カルボン酸金属塩の配合量が、該ポリエステル組成物の重量を基準として、0.01〜5重量%である、請求項1記載のポリエステル組成物。
- 250℃、剪断速度1000sec-1における溶融粘度が100〜500Pa・Sである、請求項1記載のポリエステル組成物。
- 請求項1〜5のいずれか記載のポリエステル組成物を溶融紡糸して得られる、吸水率が30〜500%、35℃95%RH環境下24時間保持後の吸湿率が12〜50%である、繊維。
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