JP3569502B2 - 連続圧延機の板厚制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、板圧延をおこなう連続圧延機の板厚制御装置に関し、特に、制御出力のマス・バランスのくずれによる被圧延材の板幅精度への影響を考慮した上で、制御出力を調節可能にした連続圧延機の板厚制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図4はたとえば特公平6−71616号公報に記載された従来の連続圧延機の板厚制御装置を示すブロック構成図であり、板厚制御方式の中で最も代表的なゲージメータ方式板厚制御およびモニタ方式板厚制御の一例を示している。
【0003】
図4において、圧下装置1により制御される圧延機2での圧延現象は、演算要因3および8によって示されており、ゲージメータ方式板厚制御装置およびモニタ方式板厚制御装置は、それぞれフィードバック制御系を構成している。
【0004】
圧下装置1は、圧延機2の圧下位置を制御するための圧下位置SAを指定する。圧下位置SAは、以下の式により演算される。
【0005】
SA=exp(−τ1S)/{(TpS+1)S}
【0006】
ただし、上式において、Tpは圧下装置1の応答を近似した場合の速度を表す時定数であり、τ1は圧下装置1の応答を近似した場合の無駄時間である。
圧延機2は、圧下装置1から指示された圧下位置SAとミル定数Mとにより、圧延荷重FAを決定する。
【0007】
被圧延材は、圧延機2の圧延荷重FAと塑性係数Q+ΔQの要因3とによって板厚h+Δhに圧延される。このとき、圧延現象の外乱要因として、被圧延材の入側板厚偏差ΔHや温度による塑性変化ΔQなどがある。
【0008】
これらの変動ΔHおよびΔQによる被圧延材の出側板厚h+Δhの誤差Δhを、ゲージメータ方式板厚制御やモニタ方式板厚制御などにより無くするように構成されている。
【0009】
次に、図4に示した従来の連続圧延機の板厚制御装置による具体的な動作について説明する。
まず、ゲージメータ方式板厚制御装置において、スイッチ6は、被圧延材の圧延開始直後のタイミングによって一時的にオン動作する。
【0010】
これにより、基準圧下位置記憶装置4は、基準圧下位置SAOを記憶し、基準圧延荷重記憶装置5は、基準圧延荷重FAOを記憶する。
続いて、圧下位置SAと基準圧下位置SAOとの差分ΔSAと、圧延荷重FAと基準圧延荷重FAOとの差分ΔFAとを算出する。
【0011】
また、ゲージメータ方式板厚制御装置は、各差分ΔSAおよびΔFAと、ミル定数M、チューニング率αおよびゲインGとに基づいて、圧下位置修正量ΔS*を算出して圧下装置1に出力する。
【0012】
これにより、圧下装置1は、圧下位置修正量ΔS*を用いて、前述のように、被圧延材の板厚偏差Δhを無くするように圧下位置SAを制御する。
【0013】
一方、モニタ方式板厚制御装置は、圧延機2の後方に設置された板厚検出器9によって検出された板厚誤差Δhを取り込み、誤差Δhを積分器10により積分する。
【0014】
また、モニタ方式板厚制御装置内の計算装置11は、板厚誤差Δhを無くするための圧下位置修正量ΔS * M を計算して圧下装置1にフィードバックする。
このとき、圧下位置修正量ΔS * M は、以下の式により演算される。
【0015】
ΔS * M =(Mc+Qc)f(v)/Qc
ここで、Mcは制御で使用のミル定数、Qcは制御で使用の塑性係数、f(v)は板速度vを変数とする適切な関数である。
【0016】
このようなモニタ方式板厚制御装置は、ゲージメータ方式や絶対ゲージ確保方式の板厚制御と組み合わせて使用されることが多い。
【0017】
たとえば、上記公報記載のモニタ方式の板厚制御装置においては、複数の圧延機の相互干渉を防止することなどを目的として、既知のモニタ方式板厚制御装置に板厚データの遅延装置を設ける工夫を施している。
【0018】
しかし、上記制御においては、マス・バランスのくずれによる被圧延材の板幅への影響を考慮した上での制御出力調節方法までは考慮されていない。
【0019】
図5は一般的な連続圧延機を通過中の被圧延材の状態を示す側面図である。
図5において、3台の圧延機n−1、n、n+1は、矢印方向に圧延される被圧延材に対して連続的に設置されている。
【0020】
ここでは、各圧延機n−1、n、n+1における圧下位置の差分ΔSn−1、ΔSn、ΔSn+1の違いにより、各圧延機間の張力が変動している状態を示している。
【0021】
上記従来装置のように板厚を制御した場合、モニタ方式板厚制御装置に限らず、圧下位置修正量ΔS*およびΔS*Mが、各圧延機によって偏りがあった場合、たとえば、ある圧延機間の張力が急激に大きくなり、図5のように、製品の板幅制御精度が劣化するおそれがある。
【0022】
この場合、圧延機n−1とnとの間では張力が大きく、圧延機nとn+1との間では張力が小さくなっており、圧延機n−1とnとの間において、被圧延材に異常に大きい張力が印加されて板幅不安定が生じている。
【0023】
このような板幅精度の劣化を防止するために、従来装置においては、たとえば必要以上の制御出力が生成されないように、制御出力限界値を定数で設定するという方法が採用されている。
【0024】
また、補助装置として各圧延機間にルーパと呼ばれる張力制御装置を設置したり、圧下位置修正量(または、圧下位置修正量に相当する変量)を監視して、張力に与える影響を考慮した上でミル速度を変更するための制御装置を設置するという方法も提案されている。
【0025】
しかしながら、上記補助装置による張力制御も必要であるが、まず、板厚制御装置の出力限界値を、圧延機間の張力増大に起因した板幅精度への悪影響を考慮した上で、制御出力を設定することが必要である。
【0026】
【発明が解決しようとする課題】
従来の連続圧延機の板厚制御装置は以上のように、圧延機間の張力増大に起因した板幅精度への悪影響を考慮した上で制御出力を設定することが要求されているにもかかわらず、これを実現することができないので、結局、十分な板幅制御精度を得ることができないという問題点があった。
【0027】
この発明は上記のような問題点を解決するためになされたもので、圧下位置修正量が圧延機間の張力に与える影響を定式化することにより、出力限界値の設定を容易にして板幅制御精度を向上させた連続圧延機の板厚制御装置を得ることを目的とする。
【0028】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る連続圧延機の板厚制御装置は、複数の圧延機が連続的に配列された連続圧延機に対する板厚制御出力を調節する板厚制御装置であって、第1の圧延機から被圧延材が出た直後の第1の板速度変化量を計測する第1の板速度変化量計測手段と、第1の圧延機の出側に位置する第2の圧延機に被圧延材が入る直前の第2の板速度変化量を計測する第2の板速度変化量計測手段と、第1の圧延機における第1の圧下位置修正量を計測する第1の圧下位置修正量計測手段と、第2の圧延機における第2の圧下位置修正量を計測する第2の圧下位置修正量計測手段と、第1および第2の板速度変化量、第1および第2の圧下位置修正量に基づいて、被圧延材の板幅精度に影響を与える状態を検知するための測度量を算出する測度量算出手段と、測度量を用いて、被圧延材の圧延中に板厚制御出力を調節する制御出力調節手段とを備えたものである。
【0029】
また、この発明に係る連続圧延機の板厚制御装置は、複数の圧延機が連続的に配列された連続圧延機に対する板厚制御出力を調節する板厚制御装置であって、第1の圧延機の出側における被圧延材の第1の出側板厚偏差を計測する第1の出側板厚偏差計測手段と、第1の圧延機の出側に位置する第2の圧延機の出側における被圧延材の第2の出側板厚偏差を計測する第2の出側板厚偏差計測手段と、第1の圧延機のミルモータにおける第1のロール速度変化量を測定する第1のロール速度変化量測定手段と、第2の圧延機のミルモータにおける第2のロール速度変化量を測定する第2のロール速度変化量測定手段と、第1の圧延機における第1の圧下位置修正量を計測する第1の圧下位置修正量計測手段と、第2の圧延機における第2の圧下位置修正量を計測する第2の圧下位置修正量計測手段と、第1および第2の出側板厚偏差、第1および第2のロール速度変化量、第1および第2の圧下位置修正量に基づいて、被圧延材の板幅精度に影響を与える状態を検知するための測度量を算出する測度量算出手段と、測度量を用いて、被圧延材の圧延中に板厚制御出力を調節する制御出力調節手段とを備えたものである。
【0030】
また、この発明に係る連続圧延機の板厚制御装置による測度量算出手段は、第1の速度変化量が負の状態が続く場合に大きくなる第1の測度量と、第2の速度変化量が正の状態が続く場合に大きくなる第2の測度量とを算出し、制御出力調節手段は、第1および第2の測度量の加算値があらかじめ設定された定数よりも大きい場合に、板厚制御出力を抑制方向に調節するものである。
【0034】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
以下、図面を参照しながら、この発明の実施の形態1について詳細に説明する。
まず、図1を参照しながら、この発明の実施の形態1による制御原理について説明する。
【0035】
図1はこの発明の実施の形態1により制御される連続圧延機を示す側面図であり、スタンド番号nの圧延機12と、スタンド番号n+1の圧延機13との間の張力σをモデル化して模式的に示している。以下、代表的に、圧延機12、13間の被圧延材の張力σを調節する場合について説明する。
【0036】
図1において、圧延方向(矢印参照)は被圧延材の進行方向であり、各圧延機12、13の圧下荷重により、圧下位置の差分ΔSn、ΔSn+1が生じている。
また、圧延機12の出側においては先進率fnが示され、圧延機13の入側においては、後進率bn+1が示されている。
【0037】
各圧延機12および13間の張力σは、圧延機12の出側板速度Vout nと、圧延機13の入側板速度Vout n+1との差分の積分値に比例すると考えることができ、以下の(1)式により表される。
【0038】
【数1】
【0039】
ただし、(1)式において、Eはヤング率、Lは各圧延機間の距離である。
また、(1)式において、右上の添字n、n+1は、圧延機12、13のスタンド番号である。
【0040】
ここで、圧延機12の圧下位置修正量ΔSnが正の状態が続くことによって、入側板速度変化量ΔVin nが正の状態が続く場合に、大きくなる測度関数すなわち測度量Pin,n+1 (+)として、以下の(2)式を提示する。
【0041】
【数2】
【0042】
ただし、(2)式において、関数l{x}は、以下の(3)式で定義される。
【0043】
【数3】
【0044】
また、(2)式において、t0は現在時刻、Δtはサンプリング周期、Kは適当な整数である。
同様に、圧延機12の圧下位置修正量ΔSnが負の状態が続くことによって、出側板速度変化量ΔVout nが負の状態が続く場合に、大きくなる測度関数すなわち測度量Pout,n (−)として、以下の(4)式を提示する。
【0045】
【数4】
【0046】
ここで、圧延機12と圧延機13のとの間の被圧延材の張力σが大きくなる条件は、以下の(5)式で表される。
【0047】
【数5】
【0048】
ただし、(5)式において、cn(>0)は適当な正の定数である。
したがって、cnを設定した上で、(5)式が成立したときに、以下の(6)式を満たすようにすればよい。
【0049】
【数6】
【0050】
すなわち、(6)式を満たすようにすれば、圧下位置修正量の必要以上の出力を抑制することにより、張力に影響を与えることを防止することができる。
【0051】
以下、(7)〜(22)式において、圧延機12での出側板速度変化量ΔVout nと圧下位置修正量ΔSnとの関係式、および、圧延機13での入側板速度変化量ΔVin n+1と圧下位置修正量ΔSn+1との関係式を、それぞれ求める。
【0052】
まず、圧延機12の出側板速度Vout nは、ロール速度Vrol nおよび先進率fnを用いて、以下の(7)式のように表される。
【0053】
【数7】
【0054】
また、圧延機13の入側板速度Vin n+1は、ロール速度Vrol n+1および後進率bn+1を用いて、以下の(8)式のように表される。
【0055】
【数8】
【0056】
ここで、圧延機12の出側板速度変化量ΔVout nを整理すると、以下の(9)のように表される。
【0057】
【数9】
【0058】
また、圧延機13の入側板速度変化量ΔVin n+1を整理すると、以下の(10)のように表される。
【0059】
【数10】
【0060】
以下、圧延機12の圧下位置修正量ΔSnが先進率偏差Δfnに与える影響と、圧延機13の圧下位置修正量ΔSn+1が後進率偏差Δbn+1に与える影響とを定式化する。
【0061】
すなわち、まず、マスフロー保存則より、以下の(11)式が導かれる。
【0062】
【数11】
【0063】
また、(11)式から、以下の(12)式が導かれる。
【0064】
【数12】
【0065】
したがって、以下の(13)式が成立する。
【0066】
【数13】
【0067】
ただし、(11)〜(13)式において、Hは第1の圧延機12における入側板厚、hは第1の圧延機12における出側板厚、fは第1の圧延機12における先進率、bは第1の圧延機12における後進率である。
また、先進率を近似する関係式は、以下の(14)のように表される。
【0068】
【数14】
【0069】
(14)式から、以下の(15)が導かれる。
【0070】
【数15】
【0071】
ただし、(15)式において、Cは定数である。
また、圧延理論の関係式より、以下の(16)式が成り立つ。
【0072】
【数16】
【0073】
ただし、(16)式において、Aは以下の(17)式のように表される。
【0074】
【数17】
【0075】
ただし、(17)式において、Mはミル定数計算式、Qは塑性係数計算式である。
(17)式を用いて(16)式を変形すると、以下の(18)が導かれる。
【0076】
【数18】
【0077】
以上の(7)〜(18)式より、先進率偏差Δfnを、圧下位置修正量ΔSnおよび板厚偏差Δhnを用いて表すと、以下の(19)式のように表される。
【0078】
【数19】
【0079】
ただし、(19)式において、右下の添字nは、圧延機12のスタンド番号である。
また、圧延機13における後進率偏差Δbn+1は、圧下位置修正量ΔSn+1および板厚偏差Δhn+1を用いて、前述の(13)式と同様に、以下の(20)式のように表される。
【0080】
【数20】
【0081】
また、圧延機13における先進率偏差Δfn+1は、前述の(15)式と同様に、以下の(21)式のように表される。
【0082】
【数21】
【0083】
さらに、圧延機13における先進率fn+1は、前述の(14)式と同様に、以下の(22)式のように表される。
【0084】
【数22】
【0085】
以上の(7)〜(22)式により、圧延機12の出側板速度変化量ΔVout nは、ΔSn、ΔhnおよびΔVrol nから求められ、圧延機13の入側板速度変化量ΔVin n+1は、ΔSn+1、Δhn+1およびΔVrol n+1から求められる。
【0086】
図2はこの発明の実施の形態1を示すブロック構成図であり、圧下位置修正量ΔSn *の調節手段(後述する)を用いた演算制御部19(破線ブロック)が示されている。
【0087】
図2において、各圧延機12、13には、前述(図4参照)と同様の圧下装置1と、圧下荷重を計測するロードセル14と、ゲージメータ方式板厚制御装置およびモニタ方式板厚制御装置の両機能を備えた板厚制御装置31、32とが設けられている。
【0088】
板厚制御装置31、32は、板厚検出器9からの板厚誤差Δhと、ロードセル14からの圧下荷重とに基づいて、圧延機12、13の圧下装置1に対する圧下位置修正量ΔSn *、ΔSn+1 *を出力する。
【0089】
速度検出器15は、被圧延材が圧延機12から出た直後の板速度を計測し、速度検出器16は、被圧延材が圧延機13に入る直前の板速度を計測する。
速度検出器15により検出される圧延機12の出側板速度変化量ΔVout nと、速度検出器16により検出される圧延機13の入側板速度変化量ΔVin n+1とは、それぞれ、演算制御部19内の測度量計算装置17に入力される。
【0090】
圧延機12の圧下装置1は、圧延機12における圧下位置修正量ΔSnを計測する圧下位置修正量計測手段を含み、圧延機13の圧下装置1は、圧延機13における圧下位置修正量ΔSn+1を計測する圧下位置修正量計測手段を含む。
各圧下位置修正量ΔSn+1、ΔSn+1は、演算制御部19内の測度量計算装置17に入力される。
【0091】
この発明の要部を構成する演算制御部19は、測度量計算装置17および制御出力調節手段18を備えている。
ここでは、圧延機12に対する圧下位置修正量ΔSn *を調節する演算制御部19のみを示しているが、圧延機13に対する圧下位置修正量ΔSn+1 *を調節する同一構成の演算制御部が同様に設けられていることは言うまでもない。
【0092】
測度量計算装置17は、各板速度変化量ΔVout n、ΔVin n+1と、各圧下位置修正量ΔSn、ΔSn+1とに基づいて、被圧延材の板幅精度に影響を与える状態を検知するための測度量Pout,n (−)、Pin,n+1 (+)を算出する。
【0093】
制御出力調節手段18は、圧延機12に対する板厚制御装置31からの圧下位置修正量ΔSn *を一旦取り込み、加算された測度量Pout,n (−)+Pin,n+1 (+)を用いることにより、板幅精度への影響を考慮して、被圧延材の圧延中に圧下位置修正量ΔSn *を調節するようになっている。
【0094】
測度量計算装置17は、各測度量Pout,n (−)、Pin,n+1 (+)を以下のように計算する。
まず、圧延機12側の圧下装置1から得られる圧下位置修正量ΔSnと、速度検出器15から得られる板速度偏差すなわち出側板速度変化量ΔVout nとを用いて、前述の(4)式と同様に、以下の(23)式から測度量Pout,n (−)を算出する。
【0095】
【数23】
【0096】
また、圧延機13側の圧下装置1から得られる圧下位置修正量ΔSn+1と、速度検出器16から得られる板速度の偏差である入側板速度変化量ΔVin n+1とを用いて、(2)式と同様に、以下の(24)式から測度量Pin,n+1 (+)を算出する。
【0097】
【数24】
【0098】
制御出力調節手段18は、測度量P out,n (−) と測度量P in,n+1 (+) との加算値(=P out,n (−) +P in,n+1 (+) )を板厚制御装置31で使用する測度量として、この値とあらかじめ設定された定数cn とを比較して、以下の(25)式を満たすか否かを判定する。
【0099】
【数25】
【0100】
もし、(25)式を満たせば、さらに、以下の(26)式を満たすように、圧下位置Sn *を設定する。
【0101】
【数26】
【0102】
これにより、被圧延材の圧延中において、圧下位置修正量が板幅精度に影響を与えている状態を検知し、板厚制御装置31の制御出力が必要以上に圧下装置1に入力されないように調節することができる。
【0103】
実施の形態2.
なお、上記実施の形態1では、出側板速度Vout nおよび入側板速度Vin n+1を演算するために、速度検出器15、16を用いたが、他の検出情報に基づいて出側板速度Vout nおよび入側板速度Vin n+1を演算してもよい。
【0104】
以下、図面を参照しながら、速度検出器15、16を省略したこの発明の実施の形態2について説明する。
図3はこの発明の実施の形態2を示すブロック構成図であり、前述(図2参照)と同様のものについては、同一符号を付して詳述を省略する。
【0105】
図3において、各圧延機12、13の出側には、被圧延材の板厚を計測する板厚検出器20、21が設置されている。板厚検出器20、21により検出された板厚偏差Δhn、Δhn+1は、演算制御部23内の速度変化量計算装置22に入力される。
【0106】
同様に、各圧延機12、13のミルモータ33、34のロール速度Vrol n、Vrol n+1、および、ロール速度変化量ΔVrol n、ΔVrol n+1は、演算制御部23内の速度変化量計算装置22に入力される。
【0107】
演算制御部23は、前述の測度量計算装置17および制御出力調節手段18に加えて、出側板速度変化量ΔVout nおよび入側板速度変化量ΔVin n+1を演算するための速度変化量計算装置22を備えており、板厚制御装置31からの圧下位置修正量ΔSn *を、板幅精度への影響を考慮して圧延中に調節するようになっている。
【0108】
速度変化量計算装置22は、速度検出器15、16(図2参照)を使用せずに、圧延機12の出側板速度変化量ΔVout n、および、圧延機13の入側板速度変化量ΔVin n+1とを算出する。
【0109】
すなわち、速度変化量計算装置22は、各板厚検出器20、21(または、それに代わる演算方法)により得られる板厚偏差Δhn、Δhn+1と、各ミルモータ33、34から計測されるロール速度変化量ΔVrol n、ΔVrol n+1と、圧下位置修正量ΔSn、ΔSn+1とを用いて、出側板速度変化量ΔVout nおよび入側板速度変化量ΔVin n+1を算出する(前述の(7)式〜(22)式を参照)。
【0110】
出側板速度変化量ΔVout nの算出には、前述の(9)式および(19)式が用いられ、入側板速度変化量ΔVin n+1の算出には、前述の(10)式、(20)式、(21)式および(22)式が用いられる。
【0111】
これにより、速度検出器15、16を設置することなく、比較的に容易に得られる情報に基づいて、ローコストで速度修正量(変化量)を算出することができる。
【0112】
また、前述のように求めた出側板速度変化量△Vout n を(2)式に代入することにより求められる測度量Pout,n (−) と、入側板速度変化量△Vin n+1 を(4)式に代入することにより求められる測度量Pin,n+1 (+) と、を使用して、前述と同様に、圧延中に、圧下位置修正量が板幅精度に影響を与えている状態を検知して、板厚制御装置31の制御出力が必要以上に圧下装置1に入力されないように調節することができる。
【0128】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、複数の圧延機が連続的に配列された連続圧延機に対する板厚制御出力を調節する板厚制御装置であって、第1の圧延機から被圧延材が出た直後の第1の板速度変化量を計測する第1の板速度変化量計測手段と、第1の圧延機の出側に位置する第2の圧延機に被圧延材が入る直前の第2の板速度変化量を計測する第2の板速度変化量計測手段と、第1の圧延機における第1の圧下位置修正量を計測する第1の圧下位置修正量計測手段と、第2の圧延機における第2の圧下位置修正量を計測する第2の圧下位置修正量計測手段と、第1および第2の板速度変化量、第1および第2の圧下位置修正量に基づいて、被圧延材の板幅精度に影響を与える状態を検知するための測度量を算出する測度量算出手段と、測度量を用いて、被圧延材の圧延中に板厚制御出力を調節する制御出力調節手段とを備え、圧下位置修正量が圧延機間の張力に与える影響を定式化して調節するようにしたので、出力限界値の設定を容易にして板厚制御精度を向上させた連続圧延機の板厚制御装置が得られる効果がある。
【0129】
また、この発明によれば、複数の圧延機が連続的に配列された連続圧延機に対する板厚制御出力を調節する板厚制御装置であって、第1の圧延機の出側における被圧延材の第1の出側板厚偏差を計測する第1の出側板厚偏差計測手段と、第1の圧延機の出側に位置する第2の圧延機の出側における被圧延材の第2の出側板厚偏差を計測する第2の出側板厚偏差計測手段と、第1の圧延機のミルモータにおける第1のロール速度変化量を測定する第1のロール速度変化量測定手段と、第2の圧延機のミルモータにおける第2のロール速度変化量を測定する第2のロール速度変化量測定手段と、第1の圧延機における第1の圧下位置修正量を計測する第1の圧下位置修正量計測手段と、第2の圧延機における第2の圧下位置修正量を計測する第2の圧下位置修正量計測手段と、第1および第2の出側板厚偏差、第1および第2のロール速度変化量、第1および第2の圧下位置修正量に基づいて、被圧延材の板幅精度に影響を与える状態を検知するための測度量を算出する測度量算出手段と、測度量を用いて、被圧延材の圧延中に板厚制御出力を調節する制御出力調節手段とを備え、圧下位置修正量が圧延機間の張力に与える影響を定式化して調節するようにしたので、容易な計測情報に基づいて、出力限界値の設定を容易にして板厚制御精度を向上させた連続圧延機の板厚制御装置が得られる効果がある。
【0130】
また、この発明によれば、測度量算出手段は、第1の速度変化量が負の状態が続く場合に大きくなる第1の測度量と、第2の速度変化量が正の状態が続く場合に大きくなる第2の測度量とを算出し、制御出力調節手段は、第1および第2の測度量の加算値があらかじめ設定された定数よりも大きい場合に、板厚制御出力を抑制方向に調節するようにしたので、出力限界値の設定を容易にして板厚制御精度を向上させた連続圧延機の板厚制御装置が得られる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態1により制御される圧延機間の張力モデル模式的に示す説明図である。
【図2】この発明の実施の形態1を示すブロック構成図である。
【図3】この発明の実施の形態2を示すブロック構成図である。
【図4】従来の連続圧延機の板厚制御装置を示すブロック構成図である。
【図5】従来の連続圧延機の板厚制御装置により制御される圧延機間の張力過大状態を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
1 圧下装置、9、20、21 板厚検出器、12、13 圧延機、14 ロードセル、15、16 板速度検出器、17 測度量計算装置、18 制御出力調節手段、19、23 演算制御部、22 速度変化量計算装置、33、34 ミルモータ、Pout,n (−)、Pin,n+1 (+) 測度量、Pout,n (−)+Pin,n+1 (+) 加算値、Δh 板厚偏差(板厚誤差)、ΔSn *、ΔSn+1 * 圧下位置修正量、ΔVout n 出側板速度変化量、ΔVin n+1 入側板速度変化量。
Claims (2)
- 複数の圧延機が連続的に配列された連続圧延機に対する板厚制御出力を調節する板厚制御装置であって、
第1の圧延機から被圧延材が出た直後の第1の板速度変化量を計測する第1の板速度変化量計測手段と、
前記第1の圧延機の出側に位置する第2の圧延機に前記被圧延材が入る直前の第2の板速度変化量を計測する第2の板速度変化量計測手段と、
前記第1の圧延機における第1の圧下位置修正量を計測する第1の圧下位置修正量計測手段と、
前記第2の圧延機における第2の圧下位置修正量を計測する第2の圧下位置修正量計測手段と、
前記第1および第2の板速度変化量、前記第1および第2の圧下位置修正量に基づいて、前記被圧延材の板幅精度に影響を与える状態を検知するための測度量を算出する測度量算出手段と、
前記測度量を用いて、前記被圧延材の圧延中に前記板厚制御出力を調節する制御出力調節手段と
を備えたことを特徴とする連続圧延機の板厚制御装置。 - 複数の圧延機が連続的に配列された連続圧延機に対する板厚制御出力を調節する板厚制御装置であって、
第1の圧延機の出側における被圧延材の第1の出側板厚偏差を計測する第1の出側板厚偏差計測手段と、
前記第1の圧延機の出側に位置する第2の圧延機の出側における前記被圧延材の第2の出側板厚偏差を計測する第2の出側板厚偏差計測手段と、
前記第1の圧延機のミルモータにおける第1のロール速度変化量を測定する第1のロール速度変化量測定手段と、
前記第2の圧延機のミルモータにおける第2のロール速度変化量を測定する第2のロール速度変化量測定手段と、
前記第1の圧延機における第1の圧下位置修正量を計測する第1の圧下位置修正量計測手段と、
前記第2の圧延機における第2の圧下位置修正量を計測する第2の圧下位置修正量計測手段と、
前記第1および第2の出側板厚偏差、前記第1および第2のロール速度変化量、前記第1および第2の圧下位置修正量に基づいて、前記被圧延材の板幅精度に影響を与える状態を検知するための測度量を算出する測度量算出手段と、
前記測度量を用いて、前記被圧延材の圧延中に前記板厚制御出力を調節する制御出力調節手段と
を備えたことを特徴とする連続圧延機の板厚制御装置。
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