JP3548821B2 - 積層コンデンサ、ならびにこれを用いた電子装置および高周波回路 - Google Patents

積層コンデンサ、ならびにこれを用いた電子装置および高周波回路 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、積層コンデンサに関するもので、特に、高周波回路において有利に適用され得る積層コンデンサに関するものである。
【0002】
この発明は、また、上述したような積層コンデンサを用いて構成される電子装置および高周波回路に関するものである。
【0003】
【従来の技術】
この発明にとって興味ある従来の積層コンデンサとして、たとえば実開昭49−127736号公報に記載されたものがある。ここに記載された積層コンデンサは、残留インダクタンスの低減化を図ることができる構造を有していて、高周波域での使用に適するような配慮がなされている。
【0004】
すなわち、この積層コンデンサは、長さ方向寸法とこの長さ方向寸法より短い幅方向寸法および厚み方向寸法とによって規定される直方体状をなすコンデンサ本体を備え、このコンデンサ本体における幅方向寸法および厚み方向寸法によって規定される相対向する2つの端面の各々上には端面端子電極が設けられ、長さ方向寸法および厚み方向寸法によって規定される相対向する2つの側面の各々上には側面端子電極が設けられている。
【0005】
また、コンデンサ本体の内部には、誘電体層を介して互いに対向する第1および第2の内部電極が形成され、これら第1および第2の内部電極のうち、第1の内部電極は、コンデンサ本体の2つの端面間を連結するように延び、その各端部において上述の端面端子電極に電気的に接続される。また、第2の内部電極は、コンデンサ本体の2つの側面間を連結するように延び、その各端部において上述の側面端子電極に電気的に接続される。
【0006】
このように、上記公報に記載された積層コンデンサは、コンデンサ本体の2つの端面および2つの側面上にそれぞれ設けられる4つの端子電極を備えているため、従来の典型的な積層コンデンサである2つの端子電極を備えるものに比べて、残留インダクタンスを小さくすることができる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述のような4つの端子電極を備える積層コンデンサによれば、従来の典型的な2つの端子電極を備える積層コンデンサに比較すれば、なるほど残留インダクタンスを小さくすることができるが、このような積層コンデンサが用いられる電子回路のさらなる高周波化に対応するためには、より一層の残留インダクタンスすなわち等価直列インダクタンス(ESL)の低減化が望まれるところである。
【0008】
そこで、この発明の目的は、等価直列インダクタンス(ESL)のさらなる低減化を可能にする積層コンデンサを提供しようとすることである。
【0009】
この発明の他の目的は、上述したような積層コンデンサを用いて構成される電子装置および高周波回路を提供しようとすることである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る積層コンデンサは、従来の積層コンデンサの場合と同様、その外形が長さ方向寸法、幅方向寸法および厚み方向寸法によって規定され、長さ方向寸法および幅方向寸法によって規定される相対向する第1および第2の主面、長さ方向寸法および厚み方向寸法によって規定される相対向する第1および第2の側面、ならびに、幅方向寸法および厚み方向寸法によって規定される相対向する第1および第2の端面を有する、コンデンサ本体を備える。
【0011】
このコンデンサ本体は、主面の方向に延びる複数の誘電体層、ならびにコンデンサユニットを形成するように特定の誘電体層を介して互いに対向する少なくとも1対の第1および第2の内部電極を備える。
【0012】
第1の内部電極は、第1および第2の端面間を連結するように延び、かつ、第2の内部電極は、第1および第2の側面間を連結するように延びる。
【0013】
また、第1および第2の端面上には、それぞれ、第1の内部電極の各端部に電気的に接続される第1および第2の端面端子電極が設けられ、かつ、第1および第2の側面上には、それぞれ、第2の内部電極の各端部に電気的に接続される第1および第2の側面端子電極が設けられる。
【0014】
このような構成を備える積層コンデンサにおいて、前述した技術的課題を解決するため、コンデンサ本体の長さ方向寸法との比率を種々に変え、ESLを求めたところ、これら長さ方向寸法と幅方向寸法とを互いに等しくすることによりESLを最も小さくできることを見出し、この発明をなすに至ったものである。
【0015】
なお、上述のように長さ方向寸法と幅方向寸法とを互いに等しくしたときにはESLを最も小さくできるものであるが、積層コンデンサを製造するにあたってコンデンサ本体を得ようとする場合、ばらつきなく、その長さ方向寸法と幅方向寸法とが互いに等しいものを常に安定して得ることは比較的困難である。したがって、「長さ方向寸法と幅方向寸法とが互いに等しい」と言うときは、いわゆる実質的に等しいという意味であり、上述の製造誤差が原因となって長さ方向寸法と幅方向寸法とがわずかに異なる場合も含むものと解釈すべきである。
【0016】
の発明では、長さ方向寸法と幅方向寸法とが互いに実質的に等しいという特徴に加えて、さらに、ESLを安定して小さくできる、積層コンデンサの各部の寸法についての適正範囲が提供される
【0017】
ず、第1および第2の内部電極の各幅はそれぞれ一様でありかつ互いに等しい寸法を有している。
【0018】
また、コンデンサ本体の長さ方向寸法および幅方向寸法は、1.5〜4.0mmの範囲内に選ばれる
【0019】
また、この発明では、コンデンサ本体の長さ方向寸法および幅方向寸法をaとし、第1の内部電極の幅および第2の内部電極の幅をbとしたとき、これらaおよびbは、0.45≦b/a≦0.90となるように選ばれ、より好ましくは、0.50≦b/a≦0.85となるように選ばれる。
また、この発明に係る積層コンデンサは、その1次共振周波数が1GHz以上であり、かつ2次共振周波数が1次共振周波数の1.5倍以上である。
また、この発明に係る積層コンデンサは、第1の内部電極から第1および第2の側面端子電極の方へ電流が流れるように、または、第2の内部電極から第1および第2の端面端子電極の方へ電流が流れるように用いられる。
【0020】
の発明において、誘電体層を構成する誘電体の比誘電率は50以下であることが好ましい。
【0021】
また、この発明に係る積層コンデンサにおいて高容量を取得するためには、第1および第2の内部電極を複数対設けるようにすればよい。
【0022】
また、第1および第2の内部電極は、コンデンサ本体の第1および第2の主面のいずれか側に片寄った位置に配置されてもよい。
【0023】
上述の場合、この積層コンデンサとこれを実装する配線基板とをもって電子装置を構成しようとするとき、第1および第2の内部電極が片寄った位置側にあるコンデンサ本体の第1および第2の主面のいずれかが配線基板に対向するように位置されることが好ましい。
【0024】
また、この発明に係る積層コンデンサは、その1次共振周波数が1GHz以上であり、かつ2次共振周波数が1次共振周波数の1.5倍以上であることが好ましい。
【0025】
上述のような積層コンデンサは、高周波回路において、たとえば、デカップリングコンデンサ、インピーダンスマッチング用コンデンサ、DCカット用コンデンサ、またはローパス/ハイパスフィルタ用コンデンサとして有利に用いることができる。
【0026】
この発明は、また、上述のような積層コンデンサと、コンデンサ本体の第1または第2の主面に対向するように位置されかつ積層コンデンサを実装する配線基板とを備える、電子装置にも向けられる。
【0027】
また、この発明は、上述のような積層コンデンサを備える、高周波回路にも向けられる。
【0028】
【発明の実施の形態】
図1は、この発明の一実施形態による積層コンデンサ1の外観を示す斜視図である。図2は、図1に示した積層コンデンサ1の内部構造を特定の断面をもって示す平面図であり、図2において、(1)と(2)とは互いに異なる断面を表わしている。
【0029】
積層コンデンサ1は、長さ方向寸法L、幅方向寸法W、および厚み方向寸法Tによって外形が規定されるコンデンサ本体2を備えている。コンデンサ本体2は、長さ方向寸法Lおよび幅方向寸法Wによって規定される相対向する第1および第2の主面3および4、長さ方向寸法Lおよび厚み方向寸法Tによって規定される相対向する第1および第2の側面5および6、ならびに、幅方向寸法Wおよび厚み方向寸法Tによって規定される相対向する第1および第2の端面7および8を有している。
【0030】
また、コンデンサ本体2は、主面3および4の方向に延びる複数の誘電体層9、ならびにコンデンサユニットを形成するように特定の誘電体層9を介して互いに対向する第1および第2の内部電極10および11を備えている。第1および第2の内部電極10および11は、単に1対だけ設けられていても、後述する他の実施形態から明らかなように、複数対設けられていてもよい。
【0031】
図2(1)は、第1の内部電極10が通る断面を示し、また、図2(2)は、第2の内部電極11が通る断面を示している。
【0032】
図2(1)に示すように、第1の内部電極10は、コンデンサ本体2の第1および第2の端面7および8間を連結するように延びている。また、図2(2)に示すように、第2の内部電極11は、コンデンサ本体2の第1および第2の側面5および6間を連結するように延びている。
【0033】
また、この実施形態では、第1および第2の内部電極10および11の各幅はそれぞれ一様でありかつ互いに等しい寸法を有している。
【0034】
また、コンデンサ本体2の第1および第2の端面7および8上には、それぞれ、第1の内部電極10の各端部に電気的に接続される第1および第2の端面端子電極12および13が設けられ、第1および第2の側面5および6上には、それぞれ、第2の内部電極11の各端部に電気的に接続される第1および第2の側面端子電極14および15が設けられる。
【0035】
このような積層コンデンサ1において、コンデンサ本体2の幅方向寸法Wは、長さ方向寸法Lの0.9〜1.1倍の範囲内に選ばれる。このような長さ方向寸法Lと幅方向寸法Wとの好ましい比率は、以下の実験に基づいて求められたものである。
【0036】
表1に示すように、コンデンサ本体の長さ方向寸法LすなわちL寸法を2.0mmに固定しながら、幅方向寸法WすなわちW寸法を種々に変え、それによって、LとWの比を異ならせた試料1〜7に係る積層コンデンサを製造し、各積層コンデンサのESLを求めた。
【0037】
【表1】
Figure 0003548821
【0038】
この実験において、内部電極の幅は1.0mmに固定した。また、1対の第1および第2の内部電極を形成し、これら内部電極間の誘電体層の厚みを100μmとした。また、誘電体層を構成する誘電体として、比誘電率が25のものを用いた。
【0039】
表1を参照して、試料4のように、LとWの比が1:1であるとき、ESLを最も小さくすることができる。なお、試料3、4および5のように、LとWの比が1:1からわずかにずれても、1:0.9から1:1.1の範囲内にあれば、ESLは比較的低い値で安定している。
【0040】
このことから、ESLを低く安定させるためには、コンデンサ本体の幅方向寸法Wは、長さ方向寸法Lと等しく選ばれることが好ましいことがわかる。
【0041】
上述のように、幅方向寸法Wを長さ方向寸法Lと等しく選ぶことによってESLを小さくできるのは、次の理由によるものと考えられる。
【0042】
図2を参照して、第1および第2の内部電極10および11の各々には、互いに他の内部電極と重なり合う部分と重なり合わない部分とがある。内部電極10および11が重なり合う部分においては、異なる方向の電流(実線と点線の矢印で示す。)が流れるため、これら電流によって誘起される磁束が互いに相殺され、ESLを小さくすることができる。他方、内部電極10および11の各々の互いに重なり合わない部分においては、電流が一方向にしか流れないため、上述した重なり合う部分に比べると、ESLを大きくするように作用する。
【0043】
しかしながら、コンデンサ本体2の長さ方向寸法Lと幅方向寸法Wとが互いに等しい場合には、内部電極10および11における重なり合わない4つの領域は、互いに寸法が同一になるため、これら4つの重なり合わない領域に関連してそれぞれ流れる電流の経路長を互いに等しくすることができる。そのため、これら重なり合わない領域に関連して流れる電流によって誘起される磁束を全体として見たときには、互いに相殺するように作用し、ESLの増大をそれほど招かないようにすることができる。
【0044】
これに対して、コンデンサ本体の長さ方向寸法と幅方向寸法とが比較的大きく異なる場合には、内部電極における重なり合わない4つの領域の寸法が互いに大きく異なるため、これら4つの重なり合わない領域に関連してそれぞれ流れる電流の経路長に不均一を生じる。そのため、磁束の十分な相殺効果が得られず、ESLの増大を招くものと考えられる。
【0045】
なお、上述したように、内部電極10および11における重なり合わない4つの領域の寸法を互いに等しくして、ESLの増大を招かないようにするためには、図2に示すように、第1および第2の内部電極10および11の各幅がそれぞれ一様でありかつ互いに等しい寸法を有していることが好ましい。
【0046】
次に、図2に示した積層コンデンサ1のように、コンデンサ本体の長さ方向寸法Lと幅方向寸法Wとを互いに等しくしながら、これらLW寸法を1.0mm□から5.0mm□までの範囲で変え、それに応じて、第1および第2の内部電極の各幅を0.4mm〜2.5mmの範囲で変えて得られた種々の積層コンデンサについて、ESLを求める実験を実施した。この実験結果が以下の表2に示されている。なお、この実験において、その他の条件については前述した実験と同様とした。
【0047】
【表2】
Figure 0003548821
【0048】
表2を参照して、試料12〜15のように、LW寸法が1.5mm□から4.0mm□の範囲内にある場合において、ESLが安定して低くなっている。
【0049】
これに関連して、一般に、LW寸法を大きくすると、内部電極の幅を広くでき、内部電極と端子電極とが接続される箇所の電流集中の度合いを弱めることができる。そのため、LW寸法を大きくすることにより、ESLを小さくすることができる。
【0050】
しかしながら、試料16および17のように、LW寸法を4.0mm□より大きくすると、ESLが極端に高くなってしまう。これは、内部電極における重なり合わない部分の寸法が大きくなるためであると考えられる。また、このようにLW寸法が大きくなると、内部電極と端子電極との間で生じ得る浮遊容量を無視できなくなる問題も生じる。
【0051】
他方、試料11のように、LW寸法が1.5mm□より小さくなると、内部電極の形成領域において各側0.3mmのマージンをとるとすれば、内部電極の幅は0.4mmにまで小さくなり、そのため、ESLが極端に高くなる。
【0052】
以上のように、表2に示した実験結果によれば、LW寸法は、1.5mm□から4.0mm□の範囲内にあることが好ましく、また、内部電極の各幅の寸法は、0.9〜2.5mmの範囲内に選ばれることが好ましい。
【0053】
また、図3に示すように、コンデンサ本体2の長さ方向寸法および幅方向寸法をaとし、第1の内部電極10の幅および第2の内部電極11の幅をbとしたとき、これらaとbとの比率b/aに関して、好ましい範囲が存在する。
【0054】
すなわち、b/aは、0.45≦b/a≦0.90の範囲にあることが好ましく、0.50≦b/a≦0.85の範囲にあることがより好ましい。このようなb/aについての好ましい範囲は、以下のデータに基づいて求められたものである。
【0055】
表3には、aを1.0mm、2.0mm、3.0mmおよび4.0mmとした各場合において、b/aを0.3〜0.9の範囲で変えて得られた種々の積層コンデンサのESLが示されている。
【0056】
【表3】
Figure 0003548821
【0057】
また、表4には、表1においてESLを示した各積層コンデンサについての1次共振周波数、2次共振周波数および2次共振周波数/1次共振周波数の比率が示されている。
【0058】
【表4】
Figure 0003548821
【0059】
表3に示すように、b/aが小さくなるに従って、ESLがより高くなる傾向があり、特に、b/aが0.45を下回ると、ESLが急激に高くなる。
【0060】
上述のように、b/aが小さくなると、第1および第2の内部電極10および11のそれぞれにおいて、第1および第2の内部電極10および11が互いに重なり合わない部分の面積が大きくなり、端面端子電極12および13ならびに側面端子電極14および15のそれぞれへの引出し部分での電流集中の度合いが高くなる。前述したように、b/aが小さくなるに従って、ESLが高くなるのは、このような電流集中の度合いが高くなることによるものと考えられる。
【0061】
このことから、b/aは0.45以上であることが好ましく、より安定して低ESL化を図るためには、b/aが0.50以上であることが好ましい。
【0062】
他方、表4において、b/aが大きくなるに従って、1次共振と2次共振とのそれぞれの共振周波数がより近くなる現象が見られる。なお、1次共振は、積層コンデンサ1本来の容量とESLとによる共振であり、2次共振は、第1の内部電極10とこれに接続されない側面端子電極14および15との間に発生する浮遊容量および第2の内部電極11とこれに接続されない端面端子電極12および13との間に発生する浮遊容量によって生じる共振である。
【0063】
特に、b/aが0.9を超えるとき、たとえばb/aが0.95である場合であって、aが2.0mm、3.0mmおよび4.0mmの各場合には、1次共振と2次共振とがほぼ重なってしまう。これは、aが比較的大きい場合において、bが大きくなることによって、前述した浮遊容量が大きくなり、2次共振周波数が低周波数側へ移動することにより生じるものである。
【0064】
このように、2次共振点が1次共振点に近づくと、積層コンデンサ1の周波数特性が悪くなり、低周波数側にシフトするため、コンデンサとして使用可能な周波数域が下がってしまい、高周波用途に適さなくなってしまう。
【0065】
上述のことから、使用周波数域が1GHz以上、特に5GHz以上の使用周波数域の高周波回路においては、2次共振周波数が1次共振周波数の1.5倍以上であることが好ましいと言える。このことを満たすためには、b/aは0.9以下とするのが好ましく、より確実に満たすためには、0.85以下とするのが好ましい。
【0066】
以上のことから、ESLを安定して低くするとともに、高周波用途に適したものとするためには、b/aは、0.45≦b/a≦0.90の範囲であることが好ましく、0.50≦b/a≦0.85の範囲とすることがより好ましい。
【0067】
上述のように、積層コンデンサ1は、使用周波数域が1GHz以上、特に好ましくは、5GHz以上といった高周波用途に有利に向けられる。
【0068】
このような周波数域において、従来の最も典型的な2端子コンデンサが使用されると、ESLが高く、共振点が低周波数側に位置するため、コンデンサとして機能し得ず、たとえ機能し得るとしても、機能し得るコンデンサは、容量が極めて小さいものに限られる。このことから、容量が大きくかつ低ESLのコンデンサが求められており、この実施形態に係る積層コンデンサ1は、この要望を満たすものである。
【0069】
積層コンデンサ1は、高周波回路において、たとえば、デカップリングコンデンサ、インピーダンスマッチング用コンデンサ、DCカット用コンデンサ、またはローパス/ハイパスフィルタ用コンデンサとして有利に用いられる。
【0070】
また、使用周波数域が1GHz以上の高周波回路は、たとえば、携帯電話あるいはその基地局などにおいて用いられ、使用周波数域が5GHz以上の高周波回路は、たとえば、無LAN(5〜30GHz)、衛星通信(10〜20GHz)、ETC(5GHz〜)などにおいて用いられている。図4は、その具体例を示すもので、ここに示した高周波回路は、衛星通信用携帯電話(使用周波数12GHz)の受信側の増幅器の回路である。
【0071】
図4を参照して、入力端子16から出力端子17へ至る信号の直流成分をカットするため、DCカット用コンデンサ18および19が接続されている。また、この信号ラインに関連して、インピーダンスマッチングのためのコンデンサ20および21が接続されている。また、トランジスタ22のソース−ドレイン間には、直流電圧Vccが印加されている。
【0072】
上述した高周波回路において、DCカット用コンデンサ18および19ならびにインピーダンスマッチング用コンデンサ20および21として、この発明の実施形態による積層コンデンサ1を有利に用いることができる。特に、DCカット用コンデンサ18および19にあっては、より優れた周波数特性が要求されるので、このようなDCカット用コンデンサ18および19として、前述したように、2次共振周波数が1次共振周波数の1.5倍以上といった特性を有するものを用いることが望ましい。
【0073】
また、積層コンデンサ1において、誘電体層9を構成する誘電体の比誘電率は50以下であることが好ましい。このような比誘電率の好ましい条件は、以下の実験に基づいて求められたものである。
【0074】
図3に示したaを2.0mmとし、bを1.7mmとした積層コンデンサ1において、誘電体層9を構成する誘電体の比誘電率εを、表5に示すように、10〜100の範囲で変えながら、同一容量を得るように設計したときの1次共振周波数、2次共振周波数および2次共振周波数/1次共振周波数の比率をそれぞれ求めた。
【0075】
【表5】
Figure 0003548821
【0076】
表5に示すように、比誘電率εが大きくなるに従って、1次共振周波数に2次共振周波数がより近づく現象が見られる。
【0077】
εが50を超え、たとえば100になると、2次共振周波数/1次共振周波数の比率が1.08となり、前述した高周波用途に向けられる場合の好ましい条件の下限である1.5を下回る。このことから、高周波用途において積層コンデンサ1をより安定して使用できるようにするためには、比誘電率εは50以下とすることが好ましい。
【0078】
図5には、積層コンデンサ1と、この積層コンデンサ1のコンデンサ本体2のたとえば第2の主面4に対向するように位置されかつ積層コンデンサ1を実装する配線基板23とを備える、電子装置の一部が示されている。
【0079】
たとえば、図5に示したように、積層コンデンサを配線基板上に実装するとき、積層コンデンサとしては、図6に示した積層コンデンサ1aのように、第1および第2の内部電極10および11が、コンデンサ本体2のたとえば第2の主面4側に片寄った位置に配置されているものを用い、この第1および第2の内部電極10および11が片寄った位置側にある第2の主面4に対向するように配線基板23を位置させた状態で、配線基板23上に積層コンデンサ1aを実装するようにすることが好ましい。
【0080】
図6に示した実装構造によれば、内部電極10および11を配線基板23により近接させて配置することができるため、端子電極12〜15を通して流れる電流の距離を、図5に示した積層コンデンサ1の場合に比べて短くすることができ、それによって、ESLをより小さくすることができる。
【0081】
図7は、この発明のさらに他の実施形態による積層コンデンサ1bを図解的に示す断面図である。
【0082】
図7に示した積層コンデンサ1bにおいては、3対の第1および第2の内部電極10および11が互いに対向するように設けられている。
【0083】
図7に示した積層コンデンサ1bのように、第1の内部電極10と第2の内部電極11との対向する部分の数が複数とされることによって、複数のコンデンサユニットを形成するようにされ、これら複数のコンデンサユニットが図示した端子電極14および15ならびに図示しない端子電極12および13(図2参照)によって並列接続されることによって、より大きな静電容量を得ることができる。
【0084】
以上、この発明を図示した実施形態に関連して説明したが、この発明の範囲内において、その他、種々の変形例が可能である。
【0085】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、第1の内部電極がコンデンサ本体の幅方向寸法および厚み方向寸法によって規定される相対向する第1および第2の端面間を連結するように延び、かつ、この第1の内部電極に対して誘電体層を介して対向する第2の内部電極が、コンデンサ本体の長さ方向寸法および厚み方向寸法によって規定される相対向する第1および第2の側面間を連結するように延び、第1および第2の端面上には、それぞれ、第1の内部電極の各端部に電気的に接続される第1および第2の端面端子電極が設けられ、第1および第2の側面上には、それぞれ、第2の内部電極の各端部に電気的に接続される第1および第2の側面端子電極が設けられている、積層コンデンサにおいて、コンデンサ本体の幅方向寸法が長さ方向寸法と実質的に等しくされているので、積層コンデンサに流れる電流によって誘起される磁束を効果的に相殺できるようになり、積層コンデンサのESLを小さくすることができる。
【0086】
そのため、積層コンデンサの共振周波数を高めることができ、積層コンデンサのコンデンサとして機能する周波数域を高周波化でき、このような積層コンデンサが適用される電子回路の高周波化に十分対応することができるようになる。
【0088】
また、この発明によれば、コンデンサ本体の長さ方向寸法と幅方向寸法とが互いに等しいか実質的に等しくされるとともに、2つの端面および2つの側面の各々上に端子電極が設けられ、各端子電極はいずれかの内部電極の端部に接続された構造を有しているので、コンデンサ本体の長さ方向および幅方向に関する方向性を実質的になくすことができる。したがって、積層コンデンサの取り扱いや端子電極の形成のための工程を能率的に進めることができる。
【0089】
また、この発明によれば、第1および第2の内部電極の各幅がそれぞれ一様でありかつ互いに等しい寸法を有しているので、内部電極において他の内部電極と重なり合わない4つの領域を互いに実質的に等しい寸法とすることができる。したがって、これら重なり合わない部分において流れる電流によって誘起される磁束を全体として互いに相殺するように作用させることができるので、ESLのさらなる低減化を図ることができる。
【0090】
また、上述のように、内部電極の各幅がそれぞれ一様であるとき、すなわち内部電極が周縁部において角を形成しないときには、各内部電極の特定の部分で電界集中が生じにくくなるので、積層コンデンサの耐電圧を向上させることができる。
【0091】
また、この発明によれば、コンデンサ本体の長さ方向寸法および幅方向寸法を1.5〜4.0mmの範囲内に選んでいるので、上述したようなESLの低減効果をより確実に達成することができる
【0092】
また、この発明によれば、コンデンサ本体の長さ方向寸法および幅方向寸法をaとし、第1の内部電極の幅および第2の内部電極の幅をbとしたとき、0.45≦b/a≦0.90となるように選ばれるので、ESLをより安定して低くすることができるとともに、浮遊容量による2次共振と本来の1次共振とのそれぞれの共振周波数が近づくことによって引き起こされる周波数特性の低下をより確実に防止することができる。この場合、より好ましくは、0.50≦b/a≦0.85となるように選ばれる。
【0093】
また、この発明において、誘電体層を構成する誘電体の比誘電率を50以下とすることにより、1次共振周波数に対して2次共振周波数が近くなる現象を生じにくくすることができ、高周波用途に適した積層コンデンサとすることができる。
【0094】
また、この発明において、複数の第1および第2の内部電極を備えるようにすれば、より大きい静電容量を与える積層コンデンサとすることができる。
【0095】
また、第1および第2の内部電極が、コンデンサ本体の第1および第2の主面のいずれか側に片寄った位置に配置されているとき、この片寄った位置側にある第1および第2の主面のいずれかに対向するように配線基板を位置させることにより、端子電極を通して流れる電流の距離をより短くすることができ、それによる低ESL化を図ることもできる。
【0096】
また、この発明に係る積層コンデンサの1次共振周波数が1GHz以上であり、かつ2次共振周波数が1次共振周波数の1.5倍以上であるので、2次共振が1次共振に影響を及ぼし、周波数特性を低下させ、1次共振点が低周波側にシフトすることを確実に防止できるため、高周波用途に適したコンデンサとすることができる。したがって、このような積層コンデンサは、高周波回路において、たとえば、デカップリングコンデンサ、インピーダンスマッチング用コンデンサ、DCカット用コンデンサ、またはローパス/ハイパスフィルタ用コンデンサとして有利に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態による積層コンデンサ1の外観を示す斜視図である。
【図2】図1に示した積層コンデンサ1の内部構造を示す平面図であり、(1)は第1の内部電極10が通る断面をもって示し、(2)は第2の内部電極11が通る断面をもって示している。
【図3】図1に示した積層コンデンサ1に備えるコンデンサ本体2を示す平面図であり、コンデンサ本体2の長さ方向寸法および幅方向寸法としてのaと、内部電極10および11の幅bとの関係を説明するためのものである。
【図4】図1に示した積層コンデンサ1が有利に適用される高周波回路の一例としての、衛星通信用携帯電話の受信側の増幅器の回路を示す図である。
【図5】図1に示した積層コンデンサ1の配線基板23への実装構造を説明するための正面図である。
【図6】この発明の他の実施形態による積層コンデンサ1aの配線基板23への実装構造を説明するための正面図である。
【図7】この発明のさらに他の実施形態による積層コンデンサ1bの内部構造を示す正面図である。
【符号の説明】
1,1a,1b 積層コンデンサ
2 コンデンサ本体
3 第1の主面
4 第2の主面
5 第1の側面
6 第2の側面
7 第1の端面
8 第2の端面
9 誘電体層
10 第1の内部電極
11 第2の内部電極
12 第1の端面端子電極
13 第2の端面端子電極
14 第1の側面端子電極
15 第2の側面端子電極
18,19 DCカット用コンデンサ
20,21 インピーダンスマッチング用コンデンサ
23 配線基板

Claims (9)

  1. その外形が長さ方向寸法、幅方向寸法および厚み方向寸法によって規定され、前記長さ方向寸法および前記幅方向寸法によって規定される相対向する第1および第2の主面、前記長さ方向寸法および前記厚み方向寸法によって規定される相対向する第1および第2の側面、ならびに、前記幅方向寸法および前記厚み方向寸法によって規定される相対向する第1および第2の端面を有する、コンデンサ本体を備え、
    前記コンデンサ本体は、前記主面の方向に延びる複数の誘電体層、ならびにコンデンサユニットを形成するように特定の前記誘電体層を介して互いに対向する少なくとも1対の第1および第2の内部電極を備え、
    前記第1の内部電極は、前記第1および第2の端面間を連結するように延び、かつ、前記第2の内部電極は、前記第1および第2の側面間を連結するように延び、
    前記第1および第2の端面上には、それぞれ、前記第1の内部電極の各端部に電気的に接続される第1および第2の端面端子電極が設けられ、
    前記第1および第2の側面上には、それぞれ、前記第2の内部電極の各端部に電気的に接続される第1および第2の側面端子電極が設けられ、
    前記コンデンサ本体の前記幅方向寸法は、前記長さ方向寸法と実質的に等しく
    前記第1および第2の内部電極の各幅はそれぞれ一様でありかつ互いに等しい寸法を有し、
    前記コンデンサ本体の前記長さ方向寸法および前記幅方向寸法は、1.5〜4.0mmの範囲内に選ばれ
    記長さ方向寸法および前記幅方向寸法をaとし、前記第1の内部電極の幅および前記第2の内部電極の幅をbとしたとき、前記aおよび前記bは、
    0.45≦b/a≦0.90
    となるように選ばれ、
    当該積層コンデンサの1次共振周波数が1GHz以上であり、かつ2次共振周波数が1次共振周波数の1.5倍以上であり、
    前記第1の内部電極から前記第1および第2の側面端子電極の方へ電流が流れるように、または、前記第2の内部電極から前記第1および第2の端面端子電極の方へ電流が流れるように用いられる、
    積層コンデンサ。
  2. 前記aおよび前記bは、
    0.50≦b/a≦0.85
    となるように選ばれる、請求項に記載の積層コンデンサ。
  3. 前記誘電体層を構成する誘電体の比誘電率は50以下である、請求項1または2に記載の積層コンデンサ。
  4. 複数対の前記第1および第2の内部電極を備える、請求項1ないしのいずれかに記載の積層コンデンサ。
  5. 前記第1および第2の内部電極は、前記コンデンサ本体の前記第1および第2の主面のいずれか側に片寄った位置に配置されている、請求項1ないしのいずれかに記載の積層コンデンサ
  6. 請求項1ないしのいずれかに記載の積層コンデンサと、前記第1または第2の主面に対向するように位置されかつ前記積層コンデンサを実装する配線基板とを備える、電子装置。
  7. 請求項に記載の積層コンデンサと、前記第1および第2の内部電極が片寄った位置側にある前記コンデンサ本体の前記第1および第2の主面のいずれかに対向するように位置されかつ前記積層コンデンサを実装する配線基板とを備える、電子装置。
  8. 請求項1ないしのいずれかに記載の積層コンデンサを備える、高周波回路。
  9. 請求項1ないし5のいずれかに記載の積層コンデンサを、デカップリングコンデンサ、インピーダンスマッチング用コンデンサ、DCカット用コンデンサ、またはローパス/ハイパスフィルタ用コンデンサとして用いている、高周波回路。
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