JP3539459B2 - 強電解水測定用orpセンサ装置および強電解水のorp測定方法 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、酸化還元電位(以下、ORPという)センサを電解度検知手段とする電解水生成装置において、上記センサの測定応答時間の短縮に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電解水生成装置は電解槽内を隔膜によって陰極室と陽極室に分け、夫夫の極室内に電極を挿入し、極室内に供給した原水を電極間の通電によって電気分解することにより陰極室に陰極水を、陽極室に陽極水を電解生成するものである。
【0003】
更に、前記電解槽に供給する原水中に塩素系電解質を供給する供給手段を設け、該供給手段から塩素系電解質を原水に添加混合した後電解槽に供給しながら電解することにより強力な電解を行い強電解水を得るようにした装置がある。このような電解によって得られた強電解水、とりわけ陽極水はORPが高く、洗浄用水、消毒および殺菌水として使用される。
【0004】
上記の目的のために使用される強電解水は常に一定のORPをもった安定した状態で継続的に吐出することが望ましい。しかしながら、この強電解水のORPは電解に先立ち投入する電解質の量、原水の水質、電解中の流量変化、電解槽の陰陽極に印加される電圧の変動や電極の消耗、更に、陰陽極室や隔膜への金属塩の付着等によって絶えず変動し、一定の特性を有する強電解水として安定して得ることは困難である。このため、電解槽の陰陽極室側から吐出する強電解水を吐出管に配設したORPセンサで測定し、所望する水質が吐出されているかを測定し、測定値から、所望する水質が吐出されているときのみ上記目的の使用に供している。
【0005】
別に、ORPセンサで得た電位を電解水生成装置の制御部に入力し、所望する水質が吐出されているときは継続的に吐出させると共に、所望する水質が吐出されない場合は吐出を自動的に停止させるか、上記制御部が電解質を給水側に余剰に供給してその濃度を変えたり、電解電圧等の装置駆動条件を自動的に変えて、常に一定の所望するORP値の強電解水を得るようにしている。
【0006】
図6および図7は前記した従来のORPセンサ表示型強電解水生成装置と使用されているORPセンサの構造を示す図である。尚、図において、陽極水をORPセンサで測定しているが、陰極水についても同様に測定し得るものである。
【0007】
図6において、電解槽10は密閉構造をとり、室内を隔膜11によって分割し、一方に陰極電極22を挿入した陰極室21、他方に陽極電極12を挿入して陽極室13としている。陰極電極および陽極電極には所定の設定電圧を印加する電解電源20から電解電流の通電が行われる。電解槽10には底部に陰極室に通じる原水供給口23、陽極室に通じる原水供給口24が設けられ夫夫の供給口から原水が供給される。また、電解槽10の上部には陰極室に連通する吐出口25、陽極室に連通する吐出口14が形成している。
【0008】
電解槽10に供給される原水は水道水等が利用される。この原水の電気伝導度の調整を塩素系電解質の添加混合によって行う。前記電解槽に供給する原水中に塩素系電解質を供給し且つ混合して原水の電気伝導度を高め、原水に対して強い電解作用を与える。
電解質として、例えば、食塩が用いられ、水溶液として食塩水タンク26内に貯水され、これを定量ポンプ27によって食塩水注入装置28に供給する。供給された食塩水は注入装置によって通過する原水中に定量注入される。所望によって注入食塩水は更に図示していない混合装置によって撹拌混合され、十分に混合した状態で配管から電解槽10に供給される。
【0009】
原水は、電解槽10の入り口で分岐し、供給口23から陰極室に、他は供給口24から陽極室に供給される。電解槽10で電解生成された陰極水は陰極室吐出口25から吐出し、陽極水は陽極吐出口14から吐出する。陰極水は吐出口25に連通する管路を通って排水される。また、陽極水は吐出口14に連通する管路15から三方弁16を介してORPセンサ9に流水し、ORPセンサ9を経由して管口部33から吐水される。三方弁16は、電解吐出水の電解度合い、即ち、ORPが所定範囲内にあるとき吐水側管路に切り換わり、所定範囲外では排水管17に切り換わるので、所望されないORPの陽極水は三方弁16の排水管17から排水される。ORPセンサから得た信号は制御部19に構成されたCPUに入力し、演算処理により各部の制御が行われる。
【0010】
図7にORPセンサを示す。ORPセンサ9を構成する部体30はポリアセタール、ナイロンなどの絶縁性の高い部材で形成されている。部体内部33表面にはAgCl皮膜を形成した比較電極31とPtから形成された指示電極32からなるORPセンサが部体内部に流水を阻害しないように突出している。
【0011】
このORPセンサ9によって陽極水のORPが測定され、その検出測定信号は制御部19を形成するCPUに供給される。CPUには予め所定基準値が記録してあり、ORPセンサ9の測定信号との比較演算処理により三方弁16の流出方向を自在に切換え所望するORPの吐出のみを行う。この結果を制御部に帰還し、常に電解度合いが一定の陽極水を吐出する。
【0012】
従って、電解を開始した当初とか原水側の水圧変化等により原水流量が大きく変動しても、このようなときは三方弁16が排水管17に切り換わるので吐水する陽極水に所定外の水が混合する虞れはなく、電解の開始当初から一定のORP値の陽極水を吐水して利用することができる。
【0013】
しかしながら、上記構成の装置において、装置を駆動するにあたり、ORPセンサが正確な値を示すまでに立上り時間を要する。とりわけ、使用中止後長時間に亘りORPセンサが空気に触れていた場合、電極表面の強電解水へのなじみが悪く、しばらくの間、ORPセンサは正確な値を示さない。このため、実際は所望するORPの水が吐水されていても、ORPセンサが見掛け上正確な値を示していなければ、吐水されている強電解水は目的に合致していない水として排水されることになり、正確な値を示すまでの水は無駄になる。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、電解槽から吐出する強電解水のORPセンサの立上り時間を短縮するため、逆洗時間などの電解水吐出休止期間や装置駆動直後において、ORPセンサの比較電極、Ag/AgCl電極に陰電位を、指示電極Pt電極に陽電位を印加することにより、両電極の表面を活性化させて、電極表面の強電解水へのなじみをよくすることにより、立上り時間を短縮しようとするものである。両電極への上記電圧の印加によって電極表面が活性化することにより、使用を中止後長時間に亘りORPセンサが空気に触れていた場合でも立上り時間が短縮され、メインテナンスが容易でしかも経済性の高い強電解水測定用ORPセンサを提供することができる。
【0015】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明の請求項1の強電解水測定用ORPセンサ装置は、電解槽をイオン透過性隔膜によって陰極室と陽極室に分け夫夫の極室内に陰陽電極を設け、上記電極間に所定の直流電流を印加する電解電源を設けて前記電解槽内に供給される原水を電極間の通電によって電解し陰極室に陰極水、陽極室に陽極水を生成するにあたり、前記電解槽に供給する原水中に塩素系電解質水溶液を供給する供給手段を設け、前記供給手段によつて塩素系電解質水溶液を添加混合した原水を前記電解槽に供給させながら電解するようにした強電解水生成装置の前記電解槽の吐出側に電解度合いを検出する比較電極としてAg/AgCl、指示電極としてPtから成るORP感知部材を配設したものにおいて、
電解に先立ち、ORP感知部材の比較電極に陰電位、指示電極に陽電位を印加することを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項2の強電解水測定用ORPセンサ装置は、請求項1記載の強電解水測定用ORPセンサ装置であって、電源入力時もしくは電解水吐出休止期間に比較電極に陰電位、指示電極に陽電位を印加することを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項3の強電解水測定用ORPセンサ装置は、請求項1記載の強電解水測定用ORPセンサ装置であって、ORPセンサの立上りが遅いと判断されるとき、自動的に比較電極に陰電位、指示電極に陽電位を印加することを特徴とする。
【0018】
本発明の請求項4の強電解水測定用ORPセンサ装置は、請求項1、請求項2および請求項3記載の強電解水測定用ORPセンサ装置であって、比較電極と指示電極に印加する電圧が10V〜20V、印加時間が30秒〜3分であることを特徴とする。
【0019】
本発明の請求項5の強電解水測定用ORPセンサ方法は、電解槽をイオン透過性隔膜によって陰極室と陽極室に分け夫夫の極室内に陰陽電極を設け、上記電極間に所定の直流電流を印加する電解電源を設けて前記電解槽内に供給される原水を電極間の通電によって電解し陰極室に陰極水、陽極室に陽極水を生成するにあたり、前記電解槽に供給する原水中に塩素系電解質水溶液を供給する供給手段を設け、前記供給手段によつて塩素系電解質水溶液を添加混合した原水を前記電解槽に供給させながら電解するようにした強電解水生成装置の前記電解槽の吐出側に電解度合いを検出する比較電極としてAg/AgCl、指示電極としてPtから成るORP感知部材を配設したものにおいて、
ORP感知部材の比較電極に陰電位、指示電極に陽電位を印加した後ORP感知部材を動作させることを特徴とする。
【0020】
【発明の実施の形態】
図1は本発明のORPセンサの立上り時間を短縮するための実験に関する説明図であり、図2は上記実験結果に基づく、印加電圧と立上り時間の関係を示す図である。
【0021】
図1において、1は図4に示したORPセンサが配設された管に相当する容器であり、2は容器1に満たされたORP既知の電解水溶液であり、3および4はORPセンサを構成する比較電極、Ag/AgCl電極と、指示電極Pt電極である。5は切換えスイッチであり、6は両電極に直流電圧を供給するための電源であり、7はORP測定用電圧計であり、8は容器中の電解水などを排出するバルブである。
【0022】
いま、切換えスイッチ5を測定用電圧計7側に回路接続し、容器内の電解水に替え、ORP既知の電解水溶液をいれる。そしてORPに対してその値が既知のORPに近づくまでの時間を測定する。そのとき、図2に示す横軸に時間、縦軸に指示ORPからなる時間/指示ORPの関係を示す曲線A1 をプロットすることができる。次いで、容器内の水を再度入れ替え、切換えスイッチ5を電源6側に回路接続した後、Ag/AgCl電極に陰電位をPt電極に陽電位を接続して、所定時間電圧を印加する。印加が終了した後、上記と同じように切換えスイッチ5を測定用電圧計7側に回路接続し、容器内の水を替え、ORP既知の電解水溶液を入れ、そのORPの値が既知のORPに近づくまでの時間を測定する。そして、時間/指示ORPの関係を示す曲線A2 を得る。以下、同様に印加時間および印加電圧を変えて曲線A3 ----Anを得る。
【0023】
上記の実験結果から、前処理電圧を一定時間加えることにより、ORPの立上り時間を短縮することが可能となり、しかも上記指標をある値に設定することにより、好適な立上り時間を得ることができる。
【0024】
上記の手法による立上り時間の短縮の好適な例は、下記の通りである。
印加電圧10〜20V
印加時間30秒〜 3分
なお、印加電圧の極性を入れ替えると上記のような好適な結果を得ることはできない。
【0025】
上記の好適な実施例においては、ORPの立上り時間を20秒以内とすることができる。この結果、実用上待ち時間がなくなり、本来所定のORPがあるのに拘らず、吐水を排水するという無駄を除いた電解水生成器を構成することができる。
【0026】
【実施例】
図3は前記実験結果を電解水生成器の陽極水の測定に用いるORPセンサに適応した一実施例を示す図で、図6と対照されるものである。図6と同じ動作をする部材には同じ符号をつけ、重複する説明は省く。尚、図においてORPセンサは陽極水流路に配設しているが、陰極水流路に配設してもよく、勿論、陰陽極水流路に配設してもよい。
【0027】
図において、9はORPセンサであり、19−1は制御部であり、18は切換え部材であり、29はORPセンサ印加電源であり、35は記憶手段である。
【0028】
電解水生成装置を長時間使用するためには、陰極室および陰極水流路に堆積するデポジットを除去するため、陰陽極の印加電位を反転させる逆電解が行われる。図4は電解/逆電解とORP測定/ORP測定電極への電圧印加の関係を示す図で、逆電解中にORP測定電極への電圧印加が行われることを示す。
【0029】
逆電解中には陽極室から管路15を介して三方弁16に流れた電解水は制御部の指示で配水管17から排水される。従って、この逆電解中にはORPセンサには電解水は流れない。この期間に制御部19−1が作動して、切換え部材18がORPセンサ印加電源29からORPセンサ電極に前記した電圧を印加することができる。ORPセンサへの印加電圧および印加時間は記憶手段35に入力されている図1に示した実験結果に基づく基準値と対比されて行われる。従って、立上り時間の遅い場合には、逆電解の時間中印加時間(t1 )としてもよく、また、立上り時間の比較的速い場合には、逆電解の時間の一部を印加時間(t2 )としてもよい。何れの場合においても、印加時間が終わった直後においてORPセンサを表示させるとき、好ましい結果を得ることができる。
【0030】
図5は前記実験の結果を電解水生成器の作動開始時点で作動するように適応した事例を示すフローチャートの一実施例である。
【0031】
すなわち、ORPセンサの立上りが遅いと判断されるとき、自動的に比較電極に陰電位、指示電極に陽電位を印加するもので、これによって吐水は短時間の立上りが確保される。
【0032】
図において、装置電源がON101されると共に、ORPセンサの応答速度調査102が行われる。そして、短時間内に図2に示した時間/指示ORP曲線の係数dθ/dtがROMに収納されている適正値の範囲、指示値範囲103内にあるか確認される。指示値範囲内にあるときは通水開始104となる。指示値範囲外にあるときは通水は開始されず応答速度調査回路は切断105され、前記の直流電圧が両電極に印加106され、しかる後ORPセンサの応答速度調査102が行われる。
【0033】
このように本発明によれば、所定のORP値の電解水が素速く測定され、容易に連続して生成できる。
【0034】
【発明の効果】
電解槽から吐出する強電解水のORPセンサの立上り時間を短縮するため、逆洗時間などの電解水吐出休止期間や装置駆動直後において、ORPセンサの比較電極、Ag/AgCl電極に陰電位を、指示電極Pt電極に陽電位を印加することにより、両電極の表面を活性化させて、電極表面の強電解水へのなじみをよくすることにより、立上り時間を短縮させることができる。両電極への上記電圧の印加によって電極表面が活性化することにより、使用中止後長時間に亘りORPセンサが空気に触れていた場合でも立上り時間が短縮され、電解水の真のORP値を素速く測定することができる。この結果、装置の使用当初における無駄な排水をしなくてもよいので経済的である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に関わるORPセンサの立上り時間を短縮するための実験に関する説明図である。
【図2】本発明に関わるORPセンサの印加電圧と立上り時間の関係を示す図である。
【図3】本発明に関わる電解水生成装置と陽極水の測定に用いるORPセンサの配置とその動作を示す一実施例である。
【図4】本発明に関わる電解/逆電解とORP測定/ORP測定電極への電圧印加の関係を示す図である。
【図5】本発明に関わる電解水生成器の作動開始時点で作動するように適応した事例を示すフローチャートの一実施例である。
【図6】従来の強電解水生成装置の構成とORPセンサの動作を説明する図である。
【図7】従来の強電解水生成装置に使用されているORPセンサの構造を示す図である。
【符号の説明】
2 比較電極
3 指示電極
9 ORPセンサ
18 切換え部材
19−1 制御部
29 ORPセンサ印加電源
35 記憶手段
Claims (5)
- 電解槽をイオン透過性隔膜によって陰極室と陽極室に分け夫夫の極室内に陰陽電極を設け、上記電極間に所定の直流電流を印加する電解電源を設けて前記電解槽内に供給される原水を電極間の通電によって電解し陰極室に陰極水、陽極室に陽極水を生成するにあたり、前記電解槽に供給する原水中に塩素系電解質水溶液を供給する供給手段を設け、前記供給手段によつて塩素系電解質水溶液を添加混合した原水を前記電解槽に供給させながら電解するようにした強電解水生成装置の前記電解槽の吐出側に電解度合いを検出する比較電極としてAg/AgCl、指示電極としてPtから成るORP感知部材を配設したものにおいて、
電解に先立ち、ORP感知部材の比較電極に陰電位、指示電極に陽電位を印加することを特徴とする強電解水測定用ORPセンサ装置。 - 請求項1記載の強電解水測定用ORPセンサ装置であって、電源入力時もしくは電解水吐出休止期間に比較電極に陰電位、指示電極に陽電位を印加することを特徴とする強電解水測定用ORPセンサ装置。
- 請求項1記載の強電解水測定用ORPセンサ装置であって、ORPセンサの立上りが遅いと判断されるとき、自動的に比較電極に陰電位、指示電極に陽電位を印加することを特徴とする強電解水測定用ORPセンサ装置。
- 請求項1、請求項2および請求項3記載の強電解水測定用ORPセンサ装置であって、比較電極と指示電極に印加する電圧が10V〜20V、印加時間が30秒〜3分であることを特徴とする強電解水測定用ORPセンサ装置。
- 電解槽をイオン透過性隔膜によって陰極室と陽極室に分け夫夫の極室内に陰陽電極を設け、上記電極間に所定の直流電流を印加する電解電源を設けて前記電解槽内に供給される原水を電極間の通電によって電解し陰極室に陰極水、陽極室に陽極水を生成するにあたり、前記電解槽に供給する原水中に塩素系電解質水溶液を供給する供給手段を設け、前記供給手段によつて塩素系電解質水溶液を添加混合した原水を前記電解槽に供給させながら電解するようにした強電解水生成装置の前記電解槽の吐出側に電解度合いを検出する比較電極としてAg/AgCl、指示電極としてPtから成るORP感知部材を配設したものにおいて、
ORP感知部材の比較電極に陰電位、指示電極に陽電位を印加した後ORP感知部材を動作させることを特徴とする強電解水のORP測定方法。
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