JP3519187B2 - 免疫力増強物質及びその製造方法 - Google Patents

免疫力増強物質及びその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の技術分野】本発明は、免疫力を増強させる物
質、及び、それを得るための例えばイネ科植物、特に米
などの植物組織原料の水溶性多糖体を糸状菌の産生す
る酵素複合体によって修飾を行う方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】免疫力増強物質は食品として、又は薬品
として広い用途がある。加齢やストレス等により免疫力
が低下し、種々の疾病に罹病しやすくなることは一般的
に知られている。日常の食生活において免疫力を強化さ
せようとする新しい栄養化学の考え方が、予防医学の重
要性と相まって、新たな展開を見せている。また、癌の
治療において化学療法剤、放射線治療法と免疫増強剤の
併用が高い治療効果をあげている。
【0003】本発明者は免疫系におけるナチュラルキラ
ー細胞(NK−細胞)を増加させ、活性化させるために
天然の素材を糸状菌を用いて修飾させたものが有効であ
ることを見いだした。
【0004】天然の素材、すなわち、植物繊維素材を糸
状菌の培養液で資化する方法がすでに知られている(特
開平1−153701)。この従来技術では素材として
米糠を用い、これを脱脂し、且つ脱グニングした後、
低濃度アルカリで処理して米糠粗へミセルロースを作成
し、これを用いて糸状菌を培養することによってヘミセ
ルロースを資化させ部分分解している。
【0005】上記方法によって得た物質が人体に対して
様々な有効な効果を期待し得る。しかしながら、上記文
献に記載された方法では植物繊維素材を資化により得て
いるので、品質の安定したものが得られない。また、得
られた製品もNK−細胞の増加、活性化に関しては充分
ではなかった。さらに、上記方法では、糸状菌を培養す
るのに時間がかかりすぎ、工業的に製造する方法として
は必ずしも適切とは言えない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、NK−細胞
を増加させ、活性化させることができる安定した物質を
提供すると共に、それを製造する工業的に利用し得る方
法を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明方法は、以下の3
工程からなっている。 1) 植物組織ヘミセルロースの調整 イネ科などの植物組織、特に米糠を熱水で抽出し、不溶
物を濾別し、その濾液をグルコアミラーゼで処理してで
んぷんを分解してヘミセルロースを得る。 2) 糸状菌の細胞外酵素の調整 アスペルギルス属の黄麹菌、バシディオミセテス属の
イタケ菌を10日ないし14日間培養した培養濾液に硫
酸アンモニウムを加え、その沈澱物から酵素の複合体を
得る。 3) 上記1)で得たヘミセルロースと上記2)で得た
酵素の複合体とを加えpH4.5で30〜60分反応さ
せ、さらにpH6.0で30〜60分反応させることに
よって1)で得たヘミセルロースに生物学的装飾を施
す。上記方法によって得た物質はβ−1.4キシロピラ
ノース鎖を主とするキシランである。
【0008】
【作用】上記のように、本発明方法では植物組織のヘミ
セルロースを得る工程と、酵素の複合体を得る工程とを
別々の工程として、それらを一定の条件のもとで反応さ
せている。したがって、本発明による生物学的装飾は酵
素反応、炭水化物分解酵素群による加水分解あるため、
この製法によって得られる物質は一定の構成糖のものが
得られ、その活性は一定している。また、10日〜14
日ほどかかる培養工程を必要とする酵素の複合体を得る
工程を植物組織のヘミセルロースを得る工程とは別に行
うことになり、酵素の複合体を予め準備しておくことが
可能となり、時間の短縮を図り、コスト低減に役立てる
ことができる。
【0009】さらに、本発明方法で得られた物質はβ−
1.4キシロピラノース鎖を主とするキシランである。
本発明においてはキシロース結合を分解するものは含有
されていないので、上記酵素を作用させることにより、
キシロース結合以外の結合が加水分解され、キシロース
結合が残るので、本発明方法で生物学的修飾がすすむほ
ど製品にはキシロースが高い割合で含まれる。
【0010】
【実施例】米糠1000gに水5リットルを加え、10
0℃で60分熱水抽出を行った後、不溶物を濾別する。
濾液中のでんぷんをグルコアミラーゼで加水分解するこ
とにより、米糠ヘミセルロース抽出液を得る。米糠以外
にもヘミセルロースであれば使用し得る。特にイネ科の
植物のヘミセルロースは原料として優れている。
【0011】本実施例においては2種類の酵素複合体を
作成した。その一つはアスペルギルス属のアスペルギル
スオリゼー(Asp Oryzae)を培養した酵素複
合体であり、他はバシディオミセテスレンチナスエ
ドデス(Lentinusedodes)を培養した酵
素複合体である。これらの培地組成は以下の通りであ
る。
【0012】1) Asp Oryzaeの培地組成 蒸留水 1リットル、 ブドウ糖 40g、 ペプトン 6g、 kH2PO4 0.1g、 NaCl 小量、 CaCl2 小量、 FeCl3 小量、 培養条件pH3.5、30℃、14日間。
【0013】2) Lentinus edodesの
培地組成 蒸留水 1リットル、 ショ糖 5g、 NA4VNO3 10g、 KH2PO4 5g、 MgSO4 2.5g、 FeSO4 小量、 培養条件 pH4.5、20℃、14日間。
【0014】これらの培地での培養の後、培養濾液に硫
酸アンモニウムを50%飽和となるように加え、生じた
沈澱物を分別し、Asp Oryzaeの酵素複合体
(Enzyme−AO)とLentinus edod
esの酵素複合体(Enzyme−LE)を得る。
【0015】最後に前記米糠水溶性多糖体抽出液4.5
リットルにEnzyme−AOを3g加え、最初にpH
を4.5に調整し、40℃で30分反応させて、さらに
pHを6.0に調整して30分反応させてAsp Or
yzaeの菌体外酵素によって修飾された米糠水溶性多
糖体(RBX−AO)を作成した。米糠ヘミセルロース
抽出液にEnzyme−LEを加えて同様に反応させて
Lentinus edodesの菌体外酵素によって
修飾された米糠ヘミセルロース(RBX−LE)を作成
した。これらの物質の主成分はβ−1.4キシロピラノ
ース鎖を主とするキシランである。
【0016】これを除菌、滅菌してそのまま濃縮し、液
剤として使用することができ、さらに凍結乾燥やスプレ
ードライによって粉体化して錠剤、顆粒として使用する
こともできる。
【0017】これらのRBX−AOとRBX−LEの理
化学的性質は以下の通りである。 RBX−AO RBX−LE 平均分子量 65万ダルトン 60万ダルトン 構成糖 アラビノース 22% アラビノース 26% キシロース 54% キシロース 48% ガラクトース 5% ガラクトース 7% グルコース 6% グルコース 6% マンノース 8% マンノース 9% その他 5% その他 4%
【0018】上記したRRBX−LEならびにRRBX
−AOの効果を測定するため患者のNK細胞の活性化を
測定した。最初、他の薬による影響を除くため1カ月間
あらゆる薬の投与を中止し、その後RBX−LEを経口
で1日6g与えた結果、当初のNK細胞の活性化が3
4.5LUであったのが、2週間後66.5LUに上昇
していた。その後投与を中止しても6カ月間高レベル
(64LU)に保たれた。RBX−AOでもほぼ同様で
あった。
【0019】酵素反応の進行状況を判定するにはキシロ
ースの割合を調べればよい。そこでこのキシロースが最
高の値を示す米糠抽出液4.5リットルに対するRBX
−LEならびにRBX−AOの割合について検討した結
果を以下に示す。前記実施例同様最初にpH4.5、6
0℃で30分反応させ、その後pH6.0で30分反応
させた。
【0020】 RBX−AOの場合のキシロースの含有割合 1.5g 38% 3.0g 48% 4.5g 49% 6.0g 48%
【0021】 RBX−LEの場合キシロースの含有割合 1.5g 31% 3.0g 43% 4.5g 44% 6.0g 44%
【0022】上記のように、いずれも3.0gで最高値
に達しそれ以上のRBX−LEやRBX−AOを作用さ
せても、キシロースの含有量は増加しない。
【0023】次に、反応時間について検討した結果は以
下の通りであった。時間はいずれもpH4.5の場合と
pH6.0の場合それぞれが示された時間通り行われた
ことを示す。 時間 30 60 90 120分 RBX−LE 48% 54% 55% 53% RBX−AO 43% 48% 49% 48% いずれも、60分で最高値に達し、60分以上反応させ
てもキシロースの含有量は増加しなかった。
【0024】
【発明の効果】本発明方法は、植物繊維の水溶性多糖体
を得る工程と、酵素の複合体を得る工程とを別々の工程
とし、酵素反応を行わせているので、炭水化物分解酵素
群による加水分解であるため、本発明の製法によって得
られる物質は一定の構成糖のものとなり、その活性は一
定している。本発明においては、10日〜14日必要と
する培養工程を多糖体を得る工程とは別にしてあるの
で、酵素の複合体を予め準備しておくことが可能とな
り、製品を得るための工程としては実質的に多糖体を得
る工程の時間と酵素反応の時間だけでよいので全体とし
ての時間の短縮を図り、コスト低減に役立てることがで
きる。
【0025】さらに、本発明方法で得られた物質はβ−
1.4キシロピラノース鎖を主とするキシランであっ
て、キシロースを多量に含み、NK−細胞を増加させ、
活性化させることができる。
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C12N 9/14 101 C12N 9/14 101 C12P 19/20 C12P 19/20 //(C12N 9/14 C12N 9/14 C12R 1:69) C12R 1:69 (C12N 9/14 1:645 C12R 1:645) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C12P 19/00 - 19/64

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 1) 米糠を熱水で抽出し、不溶物を濾
    別し、その濾液をグルコアミラーゼで処理してでんぷん
    を分解して水溶性多糖体抽出液を得る過程と、 2) アスペルギルス属のアスペルギルスオリゼー(A
    sp Oryzae)及びバシディオミセテスレン
    チナスエドデス(Lentinus edodes)
    いずれかを培養した培養濾液に硫酸アンモニウムを加
    え、その沈澱物から酵素の複合体を得る過程と、 3) 上記1)で得た水溶性多糖体抽出液と上記2)で
    得た酵素の複合体とを加えpH4.5で30〜60分反
    応させ、さらにpH6.0で30〜60分反応させるこ
    とによって1)で得た水溶性多糖体抽出液に生物学的装
    飾を施すことを特徴とする免疫力増強物質を生成する方
    法。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の方法で生成した免疫増強
    物質。
JP28304795A 1995-07-12 1995-10-31 免疫力増強物質及びその製造方法 Expired - Lifetime JP3519187B2 (ja)

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