JP3513738B2 - ナノチューブ体のチタニアの製造方法 - Google Patents

ナノチューブ体のチタニアの製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、新規な結晶形状を有す
ナノチューブ体のチタニアの製造方法に関する。本明
細書でナノチューブ体のチタニアとは、結晶形状がナノ
チューブ体である結晶チタニアのことである。
【0002】
【発明の背景技術】チタニア(TiO2 )は、優れた紫
外線吸収性、吸着性等の作用特性を有する。このため、
それらを利用して、1.日焼け止め材・塗料・フィルム
等における紫外線吸収剤・遮蔽剤、及び、2.吸収・吸
着・脱臭剤、等の材料として多用されている。
【0003】さらに、昨今では、チタニアの優れた光触
媒活性が注目されている。チタニアの有する優れた酸化
力ないし還元力を利用して、炭酸ガスや窒素酸化物を分
解して環境浄化に利用されたりしている。
【0004】そして、結晶チタニアの上記の各種用途に
おける、上記チタニアの作用特性、特に光触媒活性の向
上が要求されつつある。
【0005】チタニアの作用特性を向上させるための従
来技術の一つとして「チタニアにSiO2 をドープする
と、比表面積を大きくすることができる」技術がある。
【0006】そして、本発明者らは、光触媒活性を向上
させるために、ゾル−ゲル法により得られた比表面積の
大きなSiO2 をドープしたTiO2 粉末の触媒活性の
向上に向けてのNaOH水溶液による化学処理の試みを
行った。そして、それらの内容について、本発明者らは
下記文献等により発表している。
【0007】1.「光がかかわる触媒化学シンポジウム
講演要旨集、1996年6月6日、理化学研究所/触媒
学会主催」p24〜25、及び2. 「日本セラミックス協会1996年年会講演予稿
集、1996年4月2日〜4日」p170参照。
【0008】
【発明の要約】本発明者らは、結晶チタニアの作用特性
である触媒作用の向上を目標として、更に研究開発をす
る過程で、結晶チタニアをアルカリ処理した場合、一定
の条件を満たせば、従来に知られていなかったナノチュ
ーブ体の結晶が生成することを発見し、本発明に想到し
た。
【0009】これまで結晶チタニアの結晶形状として
は、アナターゼ型、ルチル型を問わず、本発明者らが知
る限りにおいては、球状ないし針状しか存在しないとさ
れていた。
【0010】本願発明は、新規の結晶形状であるナノチ
ューブ体の結晶形状の結晶チタニアを提供するものであ
る。そのナノチューブ体の直径は製造条件等により異な
るが大部分において5〜80nmの範囲にある。また、
その結晶系は、得やすいものとしてアナターゼ型があ
る。
【0011】このナノチューブ体は、結晶チタニアをア
ルカリ処理することにより製造される。その収率を上げ
るため、前記アルカリ処理を水酸化ナトリウム濃度13
〜65外掛けwt%で温度18〜160℃の条件下で行う
ことができる。
【0012】ナノチューブ体の場合、中空結晶であるた
め、針状体等の中実結晶に比して、比表面積が増大し、
同一占有体積中の比表面積は格段に増大する。このた
め、結晶チタニアの作用特性は著しく向上することが期
待される。また、チューブ体であることの特徴を活かし
たフィルター等の新規な用途が期待される。
【0013】
【発明の実施の形態】A.本発明のナノチューブ体のチ
タニアは、その結晶形状が、図1のモデル図に示すよう
なナノチューブ体である結晶チタニアである。
【0014】このナノチューブ体の直径は、製造条件等
により異なるが、約5〜80nmである。長さも、製造
条件等により異なるが、通常、50〜150nmであ
る。なお、肉厚は、通常2〜10nmである。
【0015】そして、このナノチューブ体の結晶系は、
後述の表1・2に記載の如く、アナターゼ型が得易い。
【0016】B.以下、本発明のナノチューブ体のチタ
ニアの製造方法の説明をする。以下の説明で、アルカリ
濃度を示す「wt%」は、外掛け百分率(outer percent)
を意味する。
【0017】本発明の結晶形状がナノチューブ体である
結晶チタニア(ナノチューブ体のチタニア)は、チタニ
ア粉末をアルカリ処理して製造する。
【0018】(1) チタニア粉末の調製: ここで、使用するチタニア粉末(結晶チタニア)は、ア
ナターゼ型、ルチル型を問わず、通常、粒径2〜100
nm、望ましくは、粒径2〜30nmのものを使用す
る。
【0019】具体的には、鋭錐石(アナターゼ)、金紅
石(ルチル)、板チタン石(ブルッカイト)等のチタン
鉱石から下記公知の液相法により調製したものや、下記
公知の気相法で合成したものを挙げることができる。ま
た、公知のゾル・ゲル法で合成したものでもよい。
【0020】ここで、「気相法」とは、チタン鉱石を、
硫酸等の強酸で、加熱加水分解して得られる含水酸化チ
タンを800〜850℃で焼成してチタニアを製造する
方法のことである。
【0021】「液相法」とは、TiCl4 にO2 及びH
2 を接触させて、チタニアを製造する方法のことであ
る。
【0022】「ゾル・ゲル法」とは、Ti(OR)4
を含むチタンアルコキシドをアルコール水溶液中で加水
分解させてゾルを生成させ、さらに、該ゾルに加水分解
触媒を加えて、放置してゲル化させ、該ゲル化物を焼成
してチタニアを製造する方法である。
【0023】(2) アルカリ処理: アルカリ処理は、通常、水酸化ナトリウム濃度13〜6
5wt%で温度18〜160℃の条件下で、1〜50時
間、チタニア粉末を浸漬して行う。望ましくは、水酸化
ナトリウム濃度18〜55wt%で温度18〜120℃の
条件下で、更に望ましくは、水酸化ナトリウム濃度30
〜50wt%で温度50〜120℃の条件下で、2〜20
時間行う。このとき、アルカリ濃度が高ければ、温度が
低くてもよく(試料No.1-9、2-4 参照)、温度が高けれ
ば、アルカリ濃度は相対的に低くてもよい(試料No.1-
8、2-3参照)。
【0024】水酸化ナトリウムの濃度が13wt%未満で
は、チューブを形成するのに反応時間が長くなりすぎ、
工業的見地から効率的ではない。また、65wt%を越え
るとチューブ状のものが生成されにくくなる。18℃以
下の温度ではチューブ生成のための反応時間が長くな
り、160℃を越えるとチューブ状のものが生成されに
くくなる。
【0025】後述の実施例で示す如く、上記以外の範囲
では、ナノチューブ体の結晶集合体を製造し難い。この
際、アルカリ処理は、開放容器内で、即ち、常圧(大気
圧)下の条件でも良いが、密閉容器内で行うことが望ま
しい。密閉容器内では水の蒸発が抑制されてアルカリ濃
度が安定化する。また、密閉容器内で100℃以上に昇
温させた場合、加圧の条件となり、開放容器内で行う場
合に比して、小さな直径のナノチューブ体を得易い。な
お、密閉容器内で、計算上1.5atmの加圧下でアル
カリ処理を行った場合、5〜10nmの小さな直径のも
のが得られている。
【0026】また、各アルカリ処理後は、水洗してお
く。さらには、水洗後、希塩酸等の無機酸で中和処理し
ておくことが望ましい。この、中和処理方法は、通常、
浸漬・噴霧等の方法で行う。
【0027】(3) 加熱処理: 上記のようにして調製したナノチューブ体のチタニア
は、必要により、さらに、200〜1200℃×10〜
400分、望ましくは、300〜800℃×60〜16
0分の温度で加熱処理を行ってもよい。この加熱処理に
より、TiO2 の結晶性が向上して、触媒活性が向上す
ることが期待できる。この加熱処理により、ナノチュー
ブ体は崩壊しない。また、粉砕機にかけても崩壊しな
い。
【0028】(4) 用途: 上記のようにして調製した本発明のナノチューブ体のチ
タニアは、結晶形状が球状や針状のものに比して、比表
面積が格段に大きい。
【0029】このため、紫外線吸収剤・遮蔽剤、吸着剤
や光活性触媒等に使用した場合、比表面積の増大が期待
でき、従来に比して、それらの作用の向上が、特に単位
体積当たりの大幅な作用の向上として期待できる。
【0030】なお、触媒として使用する場合には、通
常、白金、ニッケル、銀等の金属を担持して使用するこ
とができる。
【0031】また、チューブ体である特徴を利用して、
1.フィルター、2.有機・無機・金属材料等を挿入し
て新たな機能性を有する材料、3.磁性材料を挿入して
新たな磁性特性を有する磁性材料、等の用途も期待でき
るものである。 <実施例> 以下、本発明の効果を確認するために行った実施例につ
いて説明をする。
【0032】(1) 原料結晶チタニアの調製: 組成がxTiO2 ・(1−x)SiO2 (x=1または
0.8)となるように、市販のテトライソブトキシチタ
ン及びテトラエトキシシランをエタノール水溶液中に溶
解させて加水分解により生じたゾルに、希塩酸を加水分
解触媒として添加し放置してゲル化させた。
【0033】各ゲル化物を電気炉により600℃×2h
の条件で焼成後、該焼成体をめのう乳鉢で粉砕して微粉
末とした。
【0034】このゾル・ゲル法によって、下記1、2
2種類の原料結晶チタニアを調製した。
【0035】1.TiO2 …平均粒径:約15nm、比
表面積:50m2/g2. 0.8TiO2 ・0.2SiO2 …平均粒径:約6
nm、比表面積:100m2/g また、下記の市販品の結晶チタニアAを原料結晶とし
て使用した。
【0036】3.市販品結晶チタニアA イルナイト鉱を、硫酸と反応させて気相法により製造し
たアナターゼ型の結晶チタニアTiO2 (平均粒径:約
20nm、比表面積:50m2/g) (2) 化学処理条件 各チタニア粉末を使用して、表1・2に示す条件でアル
カリ処理(還流処理した試料No.1-12 、2-7 以外は密閉
容器内で処理)をした。各アルカリ処理したものについ
て、0.1Nの塩酸水溶液で中和処理を行った。
【0037】各試料粉末をエタノール水溶液中に分散さ
せた分散液を、ピペットで試料台の上に一滴たらして、
透過形電子顕微鏡で観察して各結晶チタニアの形状を判
定した。
【0038】それらの結果を表1・2に示すが、アルカ
リ濃度が低過ぎても高すぎてもナノチューブ形状の結晶
チタニア(ナノチューブ体のチタニア)が得られないこ
とが分かる。
【0039】なお、表1・2における評価「X」は、本
発明の範囲に含まれない例を、「△」は、本発明の範囲
に含まれるものの内、チューブ体の生成が不十分な例
を、「○」「◎」は、チューブ体が良好に生成する例
を、夫々示す。そして、当該「○」「◎」は、比表面積
を基準にして行った評価である。このため比表面積以外
の特性が要求されるような場合は、必ずしも当該評価は
当てはまらない場合がある。
【0040】表1・2において、各用語の意味は下記の
通りである。
【0041】「%」:外掛け重量百分率 「チューブ/粒状」:チューブ体の中に粒状物が混在し
ている。
【0042】「粒状/チューブ」:粒状物の中にチュー
ブ体が混在している。
【0043】なお、表1における結晶チタニアは、アル
カリ処理によりSiO2 成分がx=約0.01に減少し
ていた。表2のとおり原料結晶チタニアがTiO2 10
0%でも、ナノチューブ体のチタニア結晶が得られるこ
とから、チタニアナノチューブの析出はSiO2 の添加
の有無に関係ないことが分かった。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の結晶チタニアの形状を示すモデル図
【図2】実施例(表1試料No.1-11:40%×110℃×
20h)における透過型電子顕微鏡写真
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平6−293519(JP,A) Langmuir,Vol. 12, No. 6, 20,p1411−1413 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C01G 23/053 C01G 23/04

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 結晶チタニア原料を水酸化ナトリウム濃
    度13〜65外掛けwt%で温度18〜160℃の条件下
    でアルカリ処理して、結晶形状がナノチューブ体である
    結晶チタニアを製造することを特徴とするナノチューブ
    体のチタニアの製造方法。
  2. 【請求項2】 前記アルカリ処理を、水酸化ナトリウム
    濃度18〜55外掛けwt%で温度18〜120℃の条件
    下で行うことを特徴とする請求項1記載のナノチューブ
    体のチタニアの製造方法。
  3. 【請求項3】 前記アルカリ処理を、水酸化ナトリウム
    濃度30〜50外掛けwt%で温度50〜120℃の条件
    下で行うことを特徴とする請求項2記載のナノチューブ
    体のチタニアの製造方法。
  4. 【請求項4】 前記アルカリ処理を密閉容器内の加圧下
    で行うことを特徴とする請求項1、2又は3記載のナノ
    チューブ体のチタニアの製造方法。
  5. 【請求項5】 前記アルカリ処理における水洗後、更
    に、中和処理を行うことを特徴とする請求項1、2、3
    又は4記載のナノチューブ体のチタニアの製造方法。
  6. 【請求項6】 前記請求項1、2、3、4又は5記載の
    方法で製造した結晶チタニアを、さらに、200〜12
    00℃×10〜400分の条件で加熱処理することを特
    徴とするナノチューブ体のチタニアの製造方法。
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